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別添


平成15年7月24日

厚生労働大臣 坂口 力 殿

中央最低賃金審議会
会長  渡辺 章


平成15年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)

 平成15年5月14日に諮問のあった平成15年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。

 平成15年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。


別紙1

平成15年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解


 平成15年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、各ランクとも0円とする。

(1) 目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成12年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。

(2) 目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。


別紙2

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告

平成15年7月17日

 はじめに
 平成15年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。

 労働者側見解
 労働者側委員は、現下の経済情勢についてマクロ的には企業業績を含め改善の兆しもあるものの、中小・零細企業を取り巻く環境は依然厳しい状況にあり、雇用の不安定化と所得減が進んでいるとし、こうした環境の中で、景気・雇用対策の強化はもちろん、賃金構造に直接影響を及ぼす最低賃金制度の役割が重要であると主張した。
 現在の地域別最低賃金の額については、法定労働時間の上限まで労働したとしても全国加重平均で月額115,500円程度の水準でしかなく、女性パートタイム賃金の平均時給891円や高卒女性初任給の平均額148,700円、さらには連合で試算した単身労働者の必要最低生活費を賄うに必要な月例収入148,000円と比較しても、最低賃金の水準が著しく低位にあることを指摘した。
 また、賃金改定状況調査結果の第4表には、労働者構成の変化によって平均賃金が低下することが含まれる点を指摘した上で、第2表に示されている事業所の平均賃金改定率も考慮すべきと主張し、加えて、日本の法定最低賃金の影響率が先進諸外国と比較して極端に低い点についても言及し、最低賃金水準の改善が必要であるという考え方を表明した。
 さらに、国民家計所得や勤労者可処分所得が引き続き減少していることが、個人消費の冷え込みの大きな要因となっていることにふれ、デフレ克服に向けても、低賃金層の生活の下支えと底上げに向けた最低賃金の引上げが必要であると主張した。
 最低賃金の水準を改善することは、消費マインドを刺激し、日本経済を本格的な回復基調にのせる一助となり、加えて、賃金低下に歯止めをかけ、勤労者の生活の底割れを防ぐという最低賃金のセーフティネットとしての機能を果たすことになる。そのため、今年度の目安については、社会的に影響力のある水準への「目に見える」改善に繋がる決定をするべきであると最後まで強く主張した。

 使用者側見解
 使用者側委員は、現下の経済状況は昨年より悪化しており、足下の不安定さが増している認識であると表明した。名目GDPは平成13年以降マイナスであり、企業の倒産件数も高い水準にある。雇用面では、完全失業率が5%半ばで高止まりし、有効求人倍率も厳しい状況である。消費者物価も平成11年以降マイナスで、賃金が上がっていなくても実質賃金は高くなっている状況であると主張した。
 また、企業の景況判断は、特に中小企業について、厳しい状況が続いており、日銀短観においても、中小企業は先行き不安で不透明な状況であるとともに、中小企業はグローバル化やデフレ傾向の中、長期にわたる熾烈な競争で疲弊しきっており、国内産業の空洞化も深刻化している。このような状況が好転する見通しはなく、構造改革や不良債権処理が進展すると短期的には更に悪化する可能性があり、極めて厳しい状況にあると主張した。
 さらに、賃金決定状況について、中小企業の賃上げ状況は日本経団連の中間集計において、史上最低であった昨年の結果とほぼ横ばいで推移しており、初任給の調査においても大手企業については2年連続凍結であり、また、賃金一般の動向として、昨年の人事院勧告において引下げ勧告が出されていることなどを重く受け止める必要があると主張した。
 加えて、これまで目安審議で最も重要な指標として使われてきた賃金改定状況調査結果は、今年、第1表において凍結事業所割合が60%近くとなり、製造業では70%近くになるとともに、引き下げ事業所割合が増加している。また、第4表の賃金上昇率がマイナスとなっており、従来から目安を第4表のみで決めるべきものではないと主張し続けてきたところではあるものの、この数字をかなり重く受け止めるべきであると主張した。
 以上のことを総合的に判断し、企業の存続と雇用の維持を最重要課題として、今年の目安については、据置きに留まらず引下げの目安を示すべき時期に来ていると最後まで強く主張した。

 意見の不一致
 本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。

 公益委員見解及びこれに対する労使の意見
 公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、極めて厳しい経済状況における小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。

(以下、別紙1と同じ。)


(参考1)

最低賃金制度と地域別最低賃金額の改定に係る目安制度の概要

 最低賃金制度とは
 最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度である。
 仮に最低賃金額より低い賃金を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる。

 最低賃金の種類
 最低賃金には、産業に関わりなく地域内のすべての労働者に適用される都道府県別の「地域別最低賃金」と、例えば電気機械器具製造業、自動車小売業など特定の産業に働く労働者に適用される「産業別最低賃金」の二種類が設定されている。

 最低賃金の決定と最低賃金審議会
 最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分参考にしながら審議が行われ、
 (1)労働者の生計費
 (2)類似の労働者の賃金
 (3)通常の事業の賃金支払能力
の3要素を考慮して決定又は改定されることとなっている。
 最低賃金審議会は、厚生労働省に中央最低賃金審議会が、都道府県労働局に地方最低賃金審議会が置かれており、都道府県別に適用される地域別最低賃金は、各地方最低賃金審議会の審議を経て、決定又は改定することとなっている。

 地域別最低賃金にかかる目安制度の概要
 昭和53年から、地域別最低賃金の全国的整合性を図るため、中央最低賃金審議会が、毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作成し、地方最低賃金審議会へ提示している。
 また、目安は、地方最低賃金審議会の審議の参考として示すものであって、これを拘束するものでないこととされている。
 なお、地域別最低賃金額の表示については、従来、日額・時間額併用方式となっていたが、平成14年度以降時間額単独方式に移行されており、目安についても、平成14年度以降、時間額で示すこととなっている。


(参考2)

目安審議及び地方別最低賃金審議の流れ

図


(参考3)

地域別最低賃金額改定の目安の推移

(単位:円)
  (1)日額による目安 (2)時間額による目安
平成
6年度
7 8 9 10 11 12 13 14 15
引上げ率(%) 2.4 2.3 2.1 2.2 1.8 0.9 0.8 0.68 0.0
Aランク 118 116 108 116 97 49 44 38 注3 0
Bランク 114 110 103 110 92 47 42 36
Cランク 108 106 99 106 89 45 40 35
Dランク 102 100 93 100 84 43 38 33

(注) 各ランクごとの改定の目安は、最低賃金(平成13年度までは日額、平成14年度から時間額)に対する金額である。
 A〜Dのランクは、各都道府県の経済実態に基づき区分分けしたもの。詳細は参考5参照。
 平成14年度の目安は、「現行の水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当」である。


(参考4)

地域別最低賃金の全国加重平均額と引上げ率の推移

(単位:円、%)
年度

最低賃金額
平成5年度 10 11 12 13 14
時間額 583 597 611 623 637 649 654 659 664 664
(前年比、%) (3.19) (2.40) (2.35) (1.96) (2.25) (1.88) (0.77) (0.76) (0.76) (0.00)
日額 4,644 4,757 4,866 4,965 5,075 5,167 5,213 5,256 5,292
(前年比、%) (3.11) (2.43) (2.29) (2.03) (2.22) (1.81) (0.89) (0.82) (0.68)

(注) 1 金額は適用労働者数による加重平均額である。
 2 (  )内は引上げ率(%)を示す。
 3 地域別最低賃金については、平成14年度から時間額表示のみとなった。


(参考5)

平成14年度地域別最低賃金額

(単位:円)
目安が適用されるランク 最低賃金額 発効日
東京 708 平成14年10月1日
神奈川 706 平成14年10月1日
大阪 703 平成14年9月30日
Bランク 愛知 681 平成14年10月1日
埼玉 678 平成14年10月1日
京都 677 平成14年10月1日
千葉 677 平成14年10月4日
兵庫 675 平成14年9月30日
静岡 671 平成14年10月1日
滋賀 651 平成14年9月29日
栃木 648 平成14年10月1日
長野 646 平成14年10月1日
広島 644 平成14年10月1日
Cランク 岐阜 668 平成14年10月1日
三重 667 平成14年10月1日
山梨 647 平成14年10月1日
奈良 647 平成14年10月1日
茨城 647 平成14年10月1日
石川 645 平成14年10月1日
和歌山 645 平成14年10月1日
富山 644 平成14年10月1日
群馬 644 平成14年10月1日
福岡 643 平成14年10月1日
福井 642 平成14年10月1日
新潟 641 平成14年9月30日
岡山 640 平成14年10月1日
北海道 637 平成14年10月1日
山口 637 平成14年10月1日
香川 618 平成14年10月1日
宮城 617 平成14年10月2日
福島 610 平成14年10月1日
Dランク 徳島 611 平成14年10月1日
愛媛 611 平成14年10月1日
高知 611 平成14年10月1日
鳥取 610 平成14年10月1日
島根 609 平成14年10月1日
熊本 606 平成14年10月1日
大分 606 平成14年10月1日
長崎 605 平成14年10月6日
山形 605 平成14年10月1日
青森 605 平成14年10月1日
佐賀 605 平成14年10月1日
鹿児島 605 平成14年10月1日
岩手 605 平成14年10月1日
秋田 605 平成14年9月30日
宮崎 605 平成14年10月1日
沖縄 604 平成14年10月1日


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