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事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(案)


第1 趣旨
 この指針は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第3条第1項の事業主が講ずべき適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善(以下「雇用管理の改善等」という。)のための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。

第2  事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっての基本的考え方
 事業主は、短時間労働者について、労働基準法(昭和22年法律第49号)、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきである。中でも、その職務が通常の労働者と同じ短時間労働者について、通常の労働者との均衡を考慮するに当たっては、事業主は、次に掲げる考え方を踏まえるべきである。
 人事異動の幅及び頻度、役割の変化、人材育成の在り方その他の労働者の人材活用の仕組み、運用等(2において「人材活用の仕組み、運用等」という。)について、通常の労働者と実質的に異ならない状態にある短時間労働者については、当該短時間労働者と通常の労働者との間の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講じた上で、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常の労働者との均衡の確保を図るように努めるものとすること。
 人材活用の仕組み、運用等について、通常の労働者と異なる状態にある短時間労働者については、その程度を踏まえつつ、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡を図るように努めるものとすること。

第3  事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置
 事業主は、第2の基本的考え方に立って、特に、次の点について適切な措置を講ずるべきである。

1 短時間労働者の適正な労働条件の確保
(1)労働条件の明示
  イ  事業主は、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、当該短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、次に掲げる労働条件に関する事項を明らかにした文書を交付するものとする。
   (イ)  労働契約の期間
   (ロ)  就業の場所及び従事すべき業務
   (ハ)  始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
   (ニ)  賃金(ロの(ロ)に定めるものを除く。以下この(ニ)において同じ。)の決定、計算及び支払の方法並びに賃金の締切り及び支払の時期
   (ホ)  退職
  ロ  事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、次に掲げる労働条件に関する事項その他の労働条件に関する事項を明らかにした文書(雇入通知書)を交付するように努めるものとする。ただし、当該労働条件が、イにより交付する文書において、又は就業規則を交付することにより明らかにされている場合は、この限りでない。
   (イ)  昇給
   (ロ)  退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
   (ハ)  所定労働日以外の日の労働の有無
   (ニ)  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
   (ホ)  安全及び衛生
   (ヘ)  教育訓練
   (ト)  休職

(2)就業規則の整備
  イ  短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則を作成するものとする。
  ロ  事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者(ハ及びニにおいて「過半数代表者」という。)の意見を聴くように努めるものとする。
  ハ  過半数代表者は、次のいずれにも該当する者とする。
   (イ)  労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
   (ロ)  就業規則の作成又は変更に係る意見を事業主から聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
  ニ  事業主は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとする。
(3)労働時間
  イ  事業主は、短時間労働者の労働時間及び労働日を定め、又は変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を十分考慮するように努めるものとする。
  ロ  事業主は、短時間労働者について、できるだけ所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させないように努めるものとする。
(4) 年次有給休暇
 事業主は、短時間労働者に対して、労働基準法の定めるところにより、別表に定める日数の年次有給休暇を与えるものとする。
(5)期間の定めのある労働契約
  イ  事業主は、期間の定めのある労働契約の更新により1年を超えて引き続き使用するに至った短時間労働者について、労働契約の期間を定める場合には、当該期間をできるだけ長くするように努めるものとする。ただし、当該期間は1年(満60歳以上の短時間労働者との契約については3年)を超えないものとする。
  ロ  事業主は、期間の定めのある労働契約の更新により1年を超えて引き続き短時間労働者を使用するに至った場合であって当該労働契約を更新しないときは、少なくとも30日前に更新しない旨を予告するように努めるものとする。
(6)解雇の予告
  イ  事業主は、短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前にその予告をするものとする。30日前に予告をしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払うものとする。
  ロ  イの予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができるものとする。
(7) 退職時の証明
 事業主は、短時間労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、労働基準法の定めるところにより、遅滞なくこれを交付するものとする。
(8) 賃金、賞与及び退職金
 事業主は、短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。
(9) 健康診断
 事業主は、短時間労働者に対し、労働安全衛生法の定めるところにより、次に掲げる健康診断を実施するものとする。
  イ  常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
  ロ  深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
  ハ  一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
  ニ  その他必要な健康診断
(10) 妊娠中及び出産後における措置
 事業主は、妊娠中及び出産後1年以内の短時間労働者に対し、労働基準法及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。
  イ  産前及び産後の休業の措置
  ロ  健康診査等を受けるために必要な時間の確保及び健康診査等に基づく医師等の指導事項を守ることができるようにするために必要な措置
  ハ  その他必要な措置
 短時間労働者の教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善
(1) 教育訓練の実施
 事業主は、短時間労働者の職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練については、その就業の実態に応じて実施するように努めるものとする。
(2) 福利厚生施設
 事業主は、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、短時間労働者に対して通常の労働者と同様の取扱いをするように努めるものとする。
(3) 育児休業及び介護休業に関する制度等
 事業主は、短時間労働者について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずるものとする。なお、イの(ロ)に掲げる者に該当するかどうかに関し、期間を定めないで雇用される者と実質的に異ならない状態となっているかどうかを判断するに当たっては、子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成14年厚生労働省告示第13号)に定める事項に留意するものとする。
  イ  育児休業又は介護休業に関する制度(次に掲げる者に対するものを除く。)
  (イ)  日々雇用される者
  (ロ)  期間を定めて雇用される者
  ロ  小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者又は要介護状態にある家族を介護する者に対する時間外労働の制限の措置又は深夜業の制限の措置(イの(イ)に掲げる者に対するものを除く。)
  ハ  1歳に満たない子を養育する者に対する勤務時間の短縮等の措置若しくは1歳から3歳に達するまでの子を養育する者に対する育児休業の制度に準ずる措置若しくは勤務時間の短縮等の措置又は要介護状態にある家族を介護する者に対する勤務時間の短縮その他の措置(イの(イ)に掲げる者に対するものを除く。)
(4) 雇用保険の適用
 事業主は、雇用保険の被保険者に該当する短時間労働者について、雇用保険法の定めるところにより、必要な適用手続をとるものとする。
(5) 高年齢者の短時間労働の促進
 事業主は、短時間労働を希望する高年齢者に適当な雇用の場を提供するように努めるものとする。
(6) 通常の労働者への応募機会の付与等
 事業主は、通常の労働者を募集しようとするときは、現に雇用する同種の業務に従事する短時間労働者に対し、あらかじめ当該募集を行う旨及び当該募集の内容を周知させるとともに、当該短時間労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望するものに対し、これに応募する機会を優先的に与えるよう努めるものとする。
(7) 通常の労働者への転換に関する条件の整備
 事業主は、短時間労働者の通常の労働者への転換について、これを希望し、かつ、その能力を有する短時間労働者のニーズが自らのニーズに合致する場合において、当該事業所の実情に即して、これが可能となる制度の導入、必要な条件の整備等をするように努めるものとする。
 職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実施
 事業主は、短時間労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置を講ずるように努めるものとする。
 所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ労働者の取扱い
 事業主は、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労働者のうち通常の労働者と同様の就業の実態にあるにもかかわらず、労働条件その他の処遇について通常の労働者と区別して取り扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。
 労使の話合いの促進のための措置の実施
(1) 事業主は、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者から当該短時間労働者の処遇について説明を求められたときは、その求めに応じて説明するように努めるものとする。
(2) 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっては、 当該事業所における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
(3) 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した処遇について、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
 短時間雇用管理者の選任等
(1) 短時間雇用管理者の選任
 事業主は、常時10人以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに、短時間雇用管理者を選任し、次に掲げる業務を担当させるよう努めるものとする。
  イ  本指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、事業主の指示に基づき必要な措置を検討し、実施すること。
  ロ  短時間労働者の労働条件等に関し、短時間労働者の相談に応ずること。
(2) 短時間雇用管理者の氏名の周知
 事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、当該短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとする。


別表(第3の1の(4) 関係)
短時間労働者の週所定労働時間   雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分に応ずる年次有給休暇の日数
短時間労働者の週所定労働日数 短時間労働者の1年間の所定労働日数(週以外の期間によって労働日数が定められている場合)
6箇月

1年
6箇月

2年
6箇月

3年
6箇月

4年
6箇月

5年
6箇月

6年
6箇月
以上
30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間未満 5日以上 217日以上
4日 169日から216日まで 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日から168日まで 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日から120日まで 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日から 72日まで 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
備考  上に掲げるもののほか、所要の経過措置が労働基準法施行規則の一部を改正する省令(平成12年労働省令第49号)において定められている。


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