03/06/12 第20回社会保障審議会年金部会議事録              第20回社会保障審議会年金部会                               議事録                                  平成15年6月12日                         第20回 社会保障審議会 年金部会 議事録          日時  :平成15年6月12日(金) 10:00〜12:10 場所  :日本教育会館 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大山委員、岡本委員、      翁委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、山口委員、山崎委員、若杉委員、      渡辺委員 ○ 高橋総務課長  定刻になりましたので、ただいまより、第20回社会保障審議会年金部会を開催いたし ます。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。  資料1−1、「企業年金等について」、資料1−2、「企業年金関係参考資料」でご ざいます。資料2、「公的年金等に係る税制について」、資料3、「第20回年金部会委 員提出資料」、参考資料といたしまして、前回お配りいたしました「給付と負担の在り 方に関する意見の整理」、これにつきましては、委員からのご指摘を踏まえまして修正 を加えたものを配布しております。  委員の出欠の状況でございますが、本日は大澤委員、堀委員、矢野委員がご欠席とい うふうに伺っています。山口委員が少し遅れていらっしゃるようでございます。ご出席 いただいております委員の皆様方は三分の一を超えておりますので、会議は成立いたし ております。  それから、局長は審議会に出席する予定だったのですが、急遽用事ができてしまいま して、欠席になりますが、ご容赦賜りたいと思います。  それから、本日は12時半までのご予定というふうにご案内申し上げておりましたが、 委員からいただいております意見書の分量が少ないため、今日は大体12時ぐらいで終わ るだろうと思いますが、そのこともご了承いただきたいと思います。  それでは、以降の進行につきましては、宮島部会長にお願いいたします。 ○ 宮島部会長  それでは、これから会議を開催いたしますが、今回は、「企業年金」と「税制」の議 論を行いたいと思います。もちろん両者が関連する重要な点もございますけれども、一 応テーマとしては2つに分けて議論を行いたいと考えております。この企業年金につき ましては、当部会では議論をするのは初めてということでありますので、事務局の説明 を少し丁寧にしていただき、議論を含めて、1時間か1時間15分程度で考えております 。  ただいま、総務課長からも説明がございましたように、別に2時間半やることが、目 的ではなくて、無論議論があれば、2時間超えてやることもやぶさかではありませんが 、議論の流れによっては2時間程度で本日の会議を終わることも可能であります。今日 は休憩をとらずに進めさせていただきたいと考えておりますので、審議の方にご協力を お願いしたいと思います。  それでは、まず企業年金についての議論に入りますが、事務局の方で資料を用意して おりますので、その説明を受けたいと思います。それでは事務局から40分ぐらいで説明 をお願いいたします。 ○矢崎企業年金国民年金基金課長   企業年金国民年金基金課長でございます。資料を2種類ご用意させていただいており ます。薄手の資料1−1「企業年金等について」、それから、少し厚めのもので、資料 1−2「企業年金等関係参考資料集」です。参考資料集はいろいろなデータを載せてい るものですので、ご説明自体は、資料1−1に沿ってさせていただきたいと考えており ます。  まず、資料1−1でございます。企業年金等についての全般的状況、そして厚生年金 基金制度、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度、それぞれにつきまして、現在の 課題と思われます事項について載せてございます。最後の(参考)で、これ以外の私的 年金の状況について簡単にご紹介申し上げたいと考えております。  1ページ目の「企業年金等の全般的状況」ですが、まず「企業年金の役割」を載せて おります。基本的には、老後生活を支えるのは基礎年金等の公的年金ということであろ うかと思いますが、企業年金には、公的年金を補完して多様化した老後ニーズに対応す るという役割があろうと思います。そういった意味で、公的年金を土台として、このよ うな私的年金、企業年金を組み合わせて老後の収入を確保していくというのが基本的イ メージであろうかと思います。  企業年金の全体像を下の図に入れております。1階部分と呼ばれます基礎年金、そし て2階部分と呼ばれます、サラリーマンの方が加入する厚生年金がございます。その上 に企業年金がありますが、厚生年金の一部分を代行しつつ上乗せ給付を行う厚生年金基 金については、加入者は1,000万人強です。そして税制上の制度でございます適格退職年 金の加入員は1,000万人弱となっており、両者の重複もございますが、併せてサラリーマ ンの方の概ね5割をカバーとしている状況でございます。  それに加えまして、新しいタイプの企業年金として、「DC」と書いてございます確 定拠出年金、そして「DB」と書いてございます確定給付企業年金も新しく導入されて おります。  2ページの「制度改革後の企業年金等の状況」でございますが。企業年金の分野では 、平成13年度に非常に大きな改革が行われました。従来の厚生年金基金のほかに、確定 給付企業年金、確定拠出年金といった新しいタイプの年金もできまして、企業年金の領 域が多様化して、個々の企業において、労使合意の下に様々な組み合わせで従業員の老 後保障に取り組むことが可能になってきているということでございます。  現下の状況を簡単に図で示しております。まず確定給付タイプの企業年金につきまし て、従来の厚生年金基金が代行部分を国に返上いたしまして、上乗せだけの確定給付企 業年金になるというルートがつくられました。4月末データでございますが、現在まで で520の基金が代行返上しておられるということでございます。  また、税制上の措置でございます適格退職年金は10年以内に廃止されることになって おりまして、確定給付企業年金の方に移っていくというルートがつくられております。 全く新しいタイプの確定拠出年金、「日本版401k」というような言われ方もするもので ございますが、企業型で申しますと、発足以来1年半程度経った3月末のデータで361規 約が承認されています。この中には複数の企業で1つの規約を実施しているものもござ いますので、事業所数はこれより多くなってきております。企業型の加入者は32万5,000 人でございます。それから自営業の方ですとか、企業年金のない企業で働いていらっし ゃる方については個人で入るというタイプのものもつくられておりますが、この加入者 につきましては、3月末データで1万4,000人という状況になっておりまして、着実に増 加してきております。  3は「取り巻く状況」でございます。  まず1点目が、「運用環境の悪化」でございます。非常に経済情勢の厳しい中で、運 用環境も悪化しております。お示ししておりますのは、厚生年金基金の最近の運用状況 でございますが、11年度は13.1%という非常に高利の運用結果でございましたが、12年 度は−9.8%、13年度は−4.2%、そして14年度でございますが、役所としての確定デー タを持っておりませんが、一部の調査機関等によりますと、−12%以上のマイナスにな るというような調査結果もございます。この主たる原因といたしましては、その下の方 に(注)書きでTOPIXの収益率を載せてございますが、株式市場の低迷が大きく影響して いるという状況でございます。   取り巻く状況の2点目は、「雇用・退職制度の変化」でございます。雇用が終身雇用 から流動化していくといった最近の流れの中で、退職給付制度、企業年金というものも 、こういった状況に対応できるようにしていくべきだというニーズが益々大きくなって きているということでございます。  3ページでございます。ここからそれぞれの制度についての論点ということになりま す。まず「厚生年金基金制度」でございます。  厚生年金基金制度の最大の課題が「免除保険料率の凍結問題への対応」でございます 。まず、厚生年金基金制度について、このページの下の方の図を用いまして簡単にご説 明させていただきたいと思います。この図の左側が一般のサラリーマンの方でございま して、保険料13.58%全額を国へ納付いたしまして、1階部分、2階部分合わせて国から 支給されます。  一方、基金に加入しておられる方の場合が右側でございますが、厚年の給付のうち、 物価スライド、賃金再評価部分については厚年本体から支給されます。これらは世代と 世代の支え合いという公的年金でなければできないものでありますので、本体の方で行 っています。それ以外の部分、いわば名目値の世界については、基金が代行給付を行う ということであります。  一方、ファイナンスの方でございますが、保険料につきまして、一般の方は全額国に 保険料を納付するわけでございますが、基金加入者の場合は、その右側にございますと おり、2.4%から3%の一定の保険料については国への給付が免除され、基金にその資金 が流れます。そういった意味で「免除保険料」というような言い方をしてございます。  2.4%から3%で波を打ってございますのは、各基金の年齢構成等の状況によって、こ の免除保険料率が異なっているということでございます。基金は代行部分をベースにい たしまして、さらに独自の上乗せ給付に必要な保険料を独自に取るという仕組みでござ います。  この免除保険料率をどうやって算定するかというのが、このページの一番上の「○」 でございます。基金制度というものは、事前積立、完全積立を原則とする財政の仕組み になってございますが、代行部分について将来必要な給付を、現時点から将来にわたっ て一定の保険料で賄うとしたら、保険料はどれくらいになるか、つまり平準保険料率か ら、この免除保険料率をはじくということでございます。このためには当然ながら、一 定の平均寿命ですとか予定利子率というものが算定の基礎になっております。  2つ目の「○」でございます。従来、この免除保険料率は、厚年本体の財政再計算に 伴います改正の際に、その時点での平均寿命等を考慮して見直しが行われてきておりま す。  ところが、3つ目の「○」でございますが、直近の平成12年改正では、厚年本体の保 険料自体が凍結されたということがございまして、これに連動して基金に渡されます免 除保険料率も、凍結されております。  なお、(注)のところでございますが、こういった免除保険料率の凍結措置に伴いま して、基金財政上のバランスをとるため、基金が代行給付に必要なものとして持ってい ただかなければならない最低責任準備金も11年9月末時点で凍結しました。以降は、免 除保険料として入ってきます収入から、代行給付分の支出を引いたの差額を、さらに厚 年本体の運用利回りの実績で付利していくといった形で、財政上のバランスをとってい るという状況でございます。  4ページでございます。それでは、こういった免除保険料率の凍結がどういった影響 をもたらしているかということでございます。当然ながら、直近の平均寿命ですとか、 直近の運用環境とはそぐわない状況になっておりまして、厚生年金基金にとってみます と、事前積立に必要な免除保険料率とはなっていないという状況でございます。これを 図示したものが下のイメージ図でございます。  先ほど申しましたように、免除保険料率は、将来の代行給付に必要なものを現時点か ら将来にわたって、一定の保険料で賄うという考え方で設定しております。現在は引上 げが凍結されておりますので、予定利子率は5.5%という数値になっております。仮に予 定利子率を現下の運用状況に合わせまして下げるということにいたしますと、このイメ ージ図でいいますと、割り引くときの斜線がより水平に近くなるということになりまし て、免除保険料率を上げる方向に作用することになります。  一方、死亡率改善というものが右側にございますが、より長生きするということであ れば、将来の給付も膨らみますので、こちらも免除保険料率を押し上げる方向に作用し ます。  一方で、12年の改正では、厚年本体の給付が支給開始年齢の引上げですとか、給付乗 率の見直しということで縮小しております。したがいまして、凍結を解除する際には、 基金の代行部分もこれに合わせて縮小、整理するということが考えられますが、こうい うことをいたしますと、当然ながら将来代行する範囲が縮小いたしますので、この点に つきましては、免除保険料率を押し下げる方向に作用します。つまり、予定利子率、死 亡率、基金の代行範囲、こういったいろいろな要素が相まって、免除保険料率を動かす ことになるということでございます。  総じて言えば、予定利子率の引下げを行った場合の効果は大きゅうございますので、 今申し上げた要素を勘案しても、やはり免除保険料率は引き上げる方向に作用するとい うことでございます。  「最低責任準備金」についても同じような絵が下に書いてございます。こちら11年9 月末時点で凍結されまして、以降はそこに数字が書いてございますが、厚生年金本体の 利回りで付利されるということでございます。ここでも予定利子率、死亡率、給付の代 行範囲の見直しというもので変化いたしますが、作用する方向は、免除保険料率と基本 的に同じでございます。  5ページでございます。以降、それぞれの要因をもう少し詳しく説明させていただく べく用意した資料でございます。  まず、「予定利率の変更」でございますが、予定利率は、現時点は5.5%となっており ます。12年改正で厚年本体の予定利率(名目値)は4%と見直されておりますが、免除 保険料率算定上の予定利率は、5.5%のままでございます。  仮に、この凍結を解除しまして、予定利率を引き下げた場合、どういった現象が生ず るかということでございますが、これにつきましては、下の方の図を見ていただきたい と思います。まず将来の加入期間についてでございますが、これは先ほど申し上げまし たように、免除保険料率を引き上げる方向に作用いたします。  一方、予定利率の引き下げというものは、割引率が小さくなりますので、既に加入し ていた期間に基づきます給付債務を増加させることになります。この図中、斜線を引い ておりますBという領域でございます。  したがいまして、予定利率を考える場合にも、将来期間についての免除保険料につい てどう考えるかという点と、過去の加入期間に係ります給付債務を増大するという点に ついてどう考えるかという点の2つの問題があるということでございます。  (注1)でございますが、今は予定利率の引下げ局面についての議論でありますが、 逆に将来予定利率を引き上げるという局面では、今申し上げたのと全く反対の状況が惹 起するということでございます。  (注2)でございますが、過去の給付債務の増大という点に関しましては、現在は最 低責任準備金は凍結されており、厚年本体の運用利回りで付利するという仕組みでござ いますので、予定利率と本体の運用実績との乖離分というのは、自動的に調整されてお ります。  6ページでございます。「死亡率の改善」、つまり平均寿命の伸びという要素でござ います。これも、予定利率と同様に、将来の話と過去の加入期間の話とを分けて議論す る必要があろうかと思います。将来の加入期間について申し上げますと、これも直近の 生命表とは乖離しておりますので、見直すということになりますと、免除保険料率を上 昇させる要因になります。この点についてどう考えるかということでございます。  これも下の方に図がございますが、前回改正で凍結しておりますので、前回までの平 均寿命の伸びと、今回改正までの平均寿命の伸び、この2回分について対応するという ことになろうかと思います。  (2)が、「過去の加入期間分」でございます。これも下の方にイメージを書いてござい ますが、端的な事例で申し上げますと、既に受給しておられる方につきましても、当初 予定したよりも長生きされるということになりますので、当初よりも給付債務が増大す るということになります。この点についてどう対応するかということでございます。  7ページでございます。「免除保険料率の上下限」という問題でございます。冒頭申 し上げましたように、免除保険料率は各基金によって異なってございます。経緯を申し 上げますと、1つ目の「○」でございますけれども、従来は全基金一律の免除保険料率 となっておりましたが、平成6年改正におきまして、各基金の代行を行うコストに合っ たような形で免除保険料率も設定しようということで、法律改正が行われました。  各基金の代行コストに合ったというのはどういう意味かということが(注)でござい ます。例えば、年齢構成の高い基金の場合には、受給までの期間が短く利子を享受する 期間が短いため、相対的に代行に要するコストは高くなります。逆に年齢構成の若い基 金ですと、受給までの期間が長く、利子を相対的に多く得られるということになりまし て、代行コストは相対的に低くなるということでございます。   平成6年の改正の際に、こういった個別化が図られたわけでありますが、上限と下限 というのが設けられています。現在、各基金が上限と下限の中にどのように分布してい るかというのが下の表でございます。左側の料率というのは、総報酬ベースの料率でご ざいます。右側の15年4月1日現在の欄を見ていただくと、全基金1,163という数字があ りますが、これは既に代行返上されておる基金を除外したデータでございまして、むし ろ、これで見ていただくのがよろしいかと思います。例えば、代行コストが23‰以下の 基金は50基金、占めるシェアは4.3%ということでございます。  一方、上限を超える基金、一番下の31‰以上のものでございますが、これが143基金、 シェアは12.3%ということでございます。こういった上下限を超えている基金の存在を どう考えるかということでございます。  この免除保険料率の上下限の問題は、当然ながら免除保険料率自体をどうするかとい う中で議論していく必要があります。  8ページ(5)の「最低責任準備金」でございます。免除保険料率の凍結解除の問題 と最低責任準備金の凍結解除の問題は裏腹の問題になりますので、代行範囲、予定利率 、死亡率等の要素を勘案した免除保険料率の見直し内容に応じまして、最低責任準備金 の見直し方も考えていく必要があるということでございます。  ただ、この場合、2つ目の「○」でございますが、仮に最低責任準備金を見直し、凍 結を解除した場合、基金ごとに見直すと、現在責務とされております最低責任準備金の 額より大分大きくなってしまうというケースがあり得ます。そういったケースについて どう考えるか。技術的な話でもございますが、経過措置的なものをどう考えるかという 点があろうかと思います。  参考のところで、「厚生年金基金連合会への対応」というものを挙げさせていただい ております。厚生年金基金連合会は、各基金が集まってつくっているものですが、この 連合会におきまして、会社を途中でやめられて基金から脱退される方を引き受けたり、 「制度終了時」と書いてございますが、基金を解散された方の原資を引き受け、老後に 年金として支払うといった仕事をしております。この連合会につきましても、予定利子 率の見直し、あるいは平均寿命の伸びによる見直しといったものは各基金と同様に生じ ますので、併せてどう考えていくかという点が必要ということでございます。  9ページでございます。厚生年金基金制度のもう一つ大きな課題として、「厚生年金 基金の解散への対応」という点を挙げさせていただいております。  まず、(1)「基金の解散の状況」で、時系列的に数字を挙げさせていただいており ます。平成13年度では59基金、平成14年度では73基金が解散されております。これもや はり運用環境の悪化ですとか、母体企業の経営状況が苦しいといったものが主たる原因 でございます。  ただ、(注)のところで書いてございますが、括弧書きの数字、13年度では1基金、14 年度では9基金でございますが、これは解散後、確定拠出年金に移行するというケースで ございますので、ここは少し意味するところが違うと思われます。いずれにせよ、60前 後の基金が近時解散されておるということでございます。  (2)で「厚生年金基金の財政状況」というものをお示ししてございます。この下の 表の左側でございますが、積立金水準と言われているものでございます。これは代行給 付を行うのに持っていただかなければいけない最低責任準備金に対します、時価評価し ました純資産の比率ということでございます。これが1.0未満であるということは、代行 を行うための準備金が不足している状況ということになります。俗に代行割基金と呼ば れる状況でございます。  右側の数字は基金数でございます。はだかで書いてある数字が全基金でございまして 、カギ括弧の中に入れております数字は、その後代行返上か解散した基金を除いたもの の状況でございます。したがいまして、むしろ代行返上か解散した基金を除いたカギ括 弧の中の数字をご紹介した方がよろしいかと思いますが、1,162基金のうち、1.0を下回 るものが247基金となっております。  この状況を設立形態別に見てまいります。右側の総合型と申しますのは、中小企業が 、県単位あるいは全国単位で集まりまして基金を形成しておるタイプでございます。こ の総合型で見ますと、609のうち217が積立水準1.0未満といった状況になってきておりま す。なおこのデータは、表の上の方に書いてございますが、14年3月末のデータでござ います。もちろん各基金は給付設計の見直しですとか、掛金の引き上げといったような 経営努力はしておられますが、昨年度(14年度)は冒頭ご紹介しましたように、非常に 運用状況が厳しいということを考え合わせますと、この時点よりも、現在はより厳しい 状況になっていると考えられるのではないかと思われます。  10ページでございます。基金が解散した場合、どうなるかということでございます。  まず、アでございますが、受給者はどうなるかということでございます。下の方の図 を見ていただきたいと思いますが、基金が解散した場合、代行部分に必要な最低責任準 備金というのは、厚生年金基金連合会の方に移管されます。そして代行部分の年金は厚 生年金基金連合会から支給するということになります。上乗せ部分につきましては、解 散した際の残余財産を各自に分配いたします。(注)のところに書いてございますが、 これを一時金として本人が受給することも可能でありますし、分配されました残余財産 を厚生年金基金連合会の方に移管いたしまして、老後に年金として支給されるといった 選択もございます。  一方、解散時に最低責任準備金に不足がある場合、どうなるかというのが下の方のイ でございます。当然ながら、これまで加入しておられた方、あるいは既に受給されてお られる方の代行部分の年金の支給のために必要な原資でございますので、解散される際 にも、最低責任準備金は必ず確保していただくということになっております。仮にこの 部分につきまして、積立不足があった場合には、不足相当額を母体企業から一括して徴 収するという仕組みになってございます。  11ページでございます。こういった基金の状況の中で、「課題」だと考えられる事項 を挙げさせていただいております。  1つ目が積立不足額の納付方法でございます。先ほど申しましたように、現行法上は 、不足額がある場合は母体企業が一括して不足分を拠出していただくことになってござ いますが、現実問題としまして、この不足額を一度で埋めるというのは困難であるとい うご要望がございます。そのため、不足額の納付を、長期的に分割して支払うような方 法がとれないかというご要望がございます。  こういった方法を検討する場合には、分割期間をどの程度とするか、利子の問題をど う考えるか、あるいは徴収体制をどう考えるかといったような課題があろうかと思いま す。  もう一つ、納付すべき額が課題としてございます。解散時に納付すべき額について、 特例的な措置がとれないかというご要望がございます。具体的にどんな考え方があり得 るかについては(注)のところに記載させていただいております。 現在の解散時に納付していただきます最低責任準備金は、将来に必要な給付原資を事前 に積み立てるという考え方に基づいております。一方、特例的な措置として考えられま すのは、(注)の2行目でありますが、仮にこういった基金集団が、当初から厚年本体 にだけいたとしたら、厚年本体でどれだけの積立金が形成されたであろうかということ であります。具体的には、基金が免除保険料として得ていた収入と国に代わって支給し ます代行給付の差額分が、積立金として形成され得たというふうに考えられます。その 部分を発足時から積み重ね、厚年本体が現実に得ていた利回りを付すといった考え方で ございます。 これをイメージ化したものが下の図でございます。このイメージ図の右側が現在のルー ルでございますが、将来の給付というものを一定の予定利子率等で現在価値に割引いて 最低責任準備金を出してございます。特例的な方法として考えられ得ると申し上げたも のが左側でございます。すなわち、基金創設当初から免除保険料として得た収入と国に 代わって支払った代行給付、この差額分を本体の運用利回り実績も付利しつつ積み重ね ていくというものでございます。 この最低責任準備金と特例的な方法のどちらが大きくなるかということは、個々の基金 によって異なります。また、どの程度の差が出るかということも、個々の基金によって 異なります。ただ、(注)の最後の「なお」書きで書いてございますが、一般的には、 こういった特例的な方法をとりますと、年齢構成の高い基金ですとか、長くからやって いる歴史の古い基金におきましては、この特例的な方法の方が額は小さ目に出るという ふうに考えられております。  特例的な方法を考える際にも論点がございます。一番下の「○」でございます。  まず、基金の一般原則というのは事前積立ということでございますから、そういった 一般原則とのバランスをどう考えるかというのが1点目でございます。  2点目は、こういった措置を仮にとるとしましても、特例的な話でございますので、 対象基金をどうするかというご議論は当然あろうかと思います。例えば、これまで、掛 金の引上げ等どういった経営努力をしておられたのか。あるいは、母体企業の状況や、 加入員数の大幅な減少といったような状況をどう考えるかといったものが、論点として あるだろうということでございます。  12ページでございます。「確定給付企業年金制度」の論点でございます。  1番目の論点としてございますが、「ポータビリティへの対応」ということでござい ます。ここで申し上げておりますポータビリティというのは、会社を変わられる場合、 年金制度の持ち運びができるかということでございます。(注)のところに書いてござ いますが、各企業におきましては、厚生年金基金から確定給付企業年金、あるいは企業 の中の一部のセクター、事業所での企業年金制度を変えるといったような制度の変更に つきましては、13年の企業年金改革の中でほぼ対応済みでございます。ここで問題提起 させていただいておりますのは、個人の話でございます。  それでは、こういった転職された場合の年金の持ち運びの状況が現在はどうなってい るかというのが下の表で書いてございます。「○」が可能、「×」はできないというこ とでございます。  まず厚生年金基金について見ていただきますと、途中でやめられた方は、先ほどご説 明申し上げましたように、中途脱退として年金原資を厚生年金基金連合会の方に移管し て、老後に年金としてもらうという道はございます。ただ、それ以外に、確定給付企業 年金のある企業に移られた場合、あるいは確定拠出年金のある企業に移られた場合は持 ち運びができていないということでございます。  一方、確定給付企業年金の欄でございますが、これは厚生年金基金の企業、あるいは 確定給付企業年金の企業に移られた場合、(注1)で書いてございますが、双方の基金 間で受け渡しをしますということをあらかじめ規約で定めている場合には、可能という ふうになってございます。しかし、確定給付企業年金につきましても、確定拠出年金へ の移行というのはできないということになってございます。  この点につきましては、このページの下の(参考)で書いてございますが、規制改革 という観点からもご議論があるところでございまして、給付建てタイプの年金のポータ ビリティについても検討すべしというご指摘をいただいているところでございます。  13ページでございます。今、申し上げました現状を踏まえまして、具体的にどういっ た課題があるかというものを整理させていただいておるものでございます。  まず、(1)でございますが、確定給付企業年金のある企業から途中で抜けられた方の年 金化の問題がございます。まず(注)のところをご覧いただきたいと思いますが、厚生 年金基金の場合には、厚生年金年金基金連合会が、いわば年金通算センターとしての役 割を果たしておりまして、年金原資を受け入れ、年金化する道が開かれているというこ とでございますが、確定給付企業年金については、現在こういった道がない。これにつ いてどういった対応をしていくべきかということが(1)でございます。  (2)は、厚生年金基金と確定給付企業年金間の移動という問題でございます。そこの1 つ目の「○」に書いてございますが、厚生年金基金のある企業から厚生年金基金あるい は確定給付企業年金のある企業に転職した場合、原資期間をどうするかという問題がご ざいます。この点につきましては(注)のところをご覧いただきたいと思いますが、一 般的に給付建てタイプの企業年金というのは、個々の企業の労使が合意して給付設計が なされておりますので、ポータビリティというのは困難だと言われております。ただ、 系列企業間等であらかじめ規約を結んで移動できるようにしたいといったニーズはござ います。  また、最後のポツでございますが、キャッシュバランスと呼ばれる新しいタイプのも のについては、個人別の仮想的な資産区分が可能でございますので、このキャッシュバ ランスが普及してくれば、ニーズも広がっていくだろうとは考えられます。こういった 観点から、確定給付タイプの年金間のポータビリティをどう考えるかということでござ います。  この点につきましては、(2)の2つ目の「○」でございますが、厚生年金基金から確定 給付企業年金へ移行するという場合は、厚生年金基金の代行部分についてどう取り扱う かというものが技術的論点として挙げられます。考えられる方法といたしましては、代 行部分については厚生年金基金連合会の方に移管して対応するといったことがございま す。  14ページでございます。これは厚生年金基金や確定給付企業年金等の給付建ての企業 年金から確定拠出年金へ移行する際のポータビリティについてでございます。これにつ きましても、先ほどと同様に、2つ目の「○」でございますが、厚生年金基金から移行 するケースの場合には代行部分をどう取り扱うかという点がございます。  以上につきまして、全体をイメージ化したものが下の図でございます。もちろん元の 企業から転職先の企業へダイレクトで移管するといったことも考えられます。その一方 で、すぐに再就職先が決まらないといったようなケース等も考えられますので、厚生年 金基金連合会等、年金を通算化してポータビリティの仲介的な役割を果たすセンターが 必要ではなかろうかというものを図式化したものでございます。  15ページでございます。確定給付企業年金についての2つ目の論点として挙げさせて いただいておりますのが、「支払保証」という問題でございます。これも(注1)のと ころをまずご覧いただきたいと思いますが、厚生年金基金につきましては、各基金が拠 出金を拠出して行う共済的な支払保証制度を、厚生年金基金連合会の方で実施しており ます。もちろん限度額等はございます。  この支払保証につきまして、確定給付企業年金の世界でどう考えるかという論点でご ざいます。この点につきましては、13年度の確定給付企業年金法制定時にもご議論があ ったところでございます。1つのご意見としましては、こういった支払保証を設けます と、モラルハザードを惹起するので、適切ではないというご意見。もう一方のご意見と しましては、受給権保護を図るセーフティネットという観点から、こういった支払保証 はつくるべきだと、こういったご意見がございました。こういった両用のご意見がある 中で、この問題についてどう考えるかということでございます。  なお(注2)でございますが、アメリカでは、政府機関であります年金給付保証公社 というのがございまして、ここで倒産時等の給付義務の引受け等を行っております。こ れにつきまして直近の数字を見ますと、米国でも企業倒産等の増大に伴いまして、支払 事業が急増し、財政状況としては債務超過に陥っているという状況でございます。  16ページでございます。「確定拠出年金制度」でございます。   1番目の論点として挙げさせていただいておりますのが、拠出限度額の見直しという ことでございます。確定拠出年金制度のコアの部分というのは、まさに税制上の優遇措 置、非課税措置ということでございます。この拠出限度額は、こちらに挙げさせていた だいておりますけれども、例えば全くほかに企業年金がない企業にお勤めの方の場合は 月額3万6,000円が上限とされております。  ここの数字につきましては、上の方の「○」で書いてございますが、厚生年金基金の 望ましい給付水準から定められております。この望ましい給付水準というのは、55歳以 上の方の退職前給与の6割という基本的な考え方を基に、代行給付の2.7倍という1つの 目標水準がございます。これを1つのベースにいたしまして、拠出時の生額ベースに換 算すればどうなるかといった考え方で、今ご紹介申し上げましたような限度額が定めら れているということでございます。  これにつきましては、片や公的年金の給付の在り方についてもご議論をいただいてい るところでありまして、その動向も見つつ、この確定拠出年金の限度額の問題について どう考えていくのかというのが1つの論点であろうかと思われます。  2として、「制度的事項」ということで、確定拠出年金に係りますいくつかの事項を 挙げさせていただいております。1つ目が「マッチング」と呼ばれるものでございます 。我が国の企業型の確定拠出年金制度では、拠出するのは事業主のみとされております 。これにつきまして、従業員本人も事業主と併せて拠出するマッチングが可能になるよ うに制度を見直すべきではないかというご意見がございます。  ただ、この点につきましては、確定拠出年金制度の法制定時にも、税制上優遇措置を 行うのであれば、それは貯金といったような形態ではなくて、年金というのにふさわし い形態でなければならないといったご議論があったところでございます。  こういった観点から、下の方の「○」でございますが、従業員ご本人が任意に上乗せ をする仕組みにいたしますと、年金というよりは、貯金ではないかと考えられ、マッチ ングというものは現在認められていないということでございます。  ちなみにアメリカの401kプランではマッチングと呼ばれるものがございますが、あく まで税法上の位置付けとしては、事業主拠出と位置付けられていると承知しております 。  17ページてございます。制度的事項の2つ目の論点として挙げさせていただいており ます「中途引出し」という問題でございます。現在、確定拠出年金を中途で引き出す要 件は非常に限定的に設けられております。具体的要件は(注)のところで書いてござい ますが、加入期間が極めて短い場合、あるいは専業主婦になられて確定拠出年金に加入 できなくなる場合について特例的に認められております。この点につきまして、中途引 出しをより容易にすべしというご意見があるところでございます。これにつきましても 、法制定時ご議論があったところでございますが、中途引出しを容易にいたしますと、 貯金と何ら変わらないのではないか、そういうことであれば、税制上の優遇措置を伴い ますこういった確定拠出年金制度として位置付けがたいのではないか、こういったご議 論があったところでございます。  なお書きですが、少額資産しか有しておられないような方の場合、現在の運用状況を かんがみますと、手数料はそこそこかかりますので、資産の減少といった事態にもなり かねないといった状況がございまして、ここについては議論が必要ではないかと思われ ます。  最後、3点目として挙げさせていただいていますのが、「3号被保険者の取扱い」で ございます。現在3号被保険者は、確定拠出年金の加入対象外となっております。これ につきましては、1つはそもそも公的年金制度におきまして、自ら保険料を負担してお られないという点、もう一つは、専業主婦の方が典型事例かとは思われますが、そもそ も税制優遇をしようと考えた場合にも、所得自体がないのではないか、こういったご議 論がございまして、対象になっていないということでございます。  ただ、これにつきましても、現在公的年金について、3号問題についてもご議論いた だいているところでございまして、それを踏まえ、確定拠出の世界でどう考えるかとい うことであろうかと思われます。  18ページでございます。ご紹介だけにとどめさせていただきたいと思いますが、今、 ご説明申し上げました制度以外の周辺的な私的年金の状況について簡単に概要を記述し たものでございます。  まず適格退職年金、これは税法上の措置でございます。これにつきましては、先ほど ご説明申し上げましたように、10年以内に廃止されるということになっております。現 実問題としても減少傾向にございます。  2つ目が、国民年金基金でございます。これは自営業の方の2階、3階に相当する部 分でございまして、都道府県単位あるいは職域単位で設立されております。  そして、財形年金でございます。  一番下が、純粋に民間の生保会社、郵便局等がやっておられます個人年金の領域でご ざいます。  最後、19ページでございますが、これはもう少し外縁を広げまして、退職金の領域で どんな制度があるかというご紹介でございます。  まず1つは、中小企業退職金共済ということでございまして、中小企業向けに社外積 立で行う制度でございます。  2つ目が、特定退職金共済ということで、商工会議所等の団体が行うものでございま す。  3つ目が小規模企業共済でございまして、これは小規模企業の事業主さんに向けた制 度でして、事業主の退職金制度というふうに呼ばれております。  最後はそれぞれの会社にございます社内留保型の退職金でございます。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、本日、企業年金に関して、井手委員、岡本委員 、堀委員、矢野委員、若杉委員からご意見をいただいております。このうち、井手委員 、岡本委員、矢野委員は連名でいただいておりますので、岡本委員から代表してご説明 していただきたいと思っておりますが、若杉委員、お時間にご都合があれば、最初にま ず意見書の説明していただければと思いますが。 ○ 若杉委員  勝手で申し訳ありませんが、一番最後の1枚を読ませていただきます。 1.公的年金、基金年金、および個人年金という年金の三本柱は、個人の退職後の所得 を保証するという意味では目的は同じであるが、原資を拠出する動機は、(1)公的年金で は相互扶助、(2)企業年金では、業績向上を目的とする従業員へのインセンティブ、(3) 個人年金では自助努力ということでそれぞれ異なる。年金財政を安定化し、受給権を確 保するためには、この動機を合理的、効率的に満たすような制度が不可欠である。 2.企業年金は、2001年に確定拠出年金が導入されるまでは、企業内の終身雇用に代表 される長期雇用制度を前提に、確定給付型年金のみが制度的に認知されてきた。ポータ ビリティは乏しいが、年功序列の下で長く同一企業にいるほど有利になる確定給付型年 金は、長期雇用を促進する絶好の企業年金制度であった。 3.しかるに、グローバリゼーションおよび技術進歩の進展により、企業の経営環境の 変化は急速になり、企業が必要とする人材も絶え間なく変化している。一方で、従来ど おり企業に長くいることが望ましい人材がいると同時に、他方では、企業にとって一定 期間だけ必要であるという人材を増加している。このことは、人材の流動化を意味し、 確定拠出型年金の導入はまさに時宜にかなったものであった。確定拠出型の年金は、従 業員にとって年金資産運用のリスクを従業員が負うというデメリットがある反面、ポー タビリティが確保されており、人材の流動化を阻害しないからである。 4.繰り返しになるが、現代の企業は、一般に、固定的な人材と流動的な人材の両方を 同時に必要としている。一方、従業員の中にも、従来通り長期雇用を望む人材が依然と しているが、むしろ固定されてない雇用を望む人材も増加しつつある。両者のニーズを 満たす最適な制度は、一つの企業の中で、企業あるいは従業員のニーズにより、従業員 一人一人が、確定給付型年金と確定拠出型年金の最適な組み合わせを選択できる制度で あ ろう。 5.確定給付型年金のポータビリティが現状のままであれば、この選択問題の本質は、 確実な給付とポータビリティとのトレードオフ問題である。他方、制度が改められ確定 給付型の年金においても、ポータビリティが確保されるならば、この選択の問題は、企 業、従業員のいずれが、みずから運用のリスクをとり、そのリターンを享受するかとい う問題である。 6.いずれにせよ、企業にとっても従業員にとっても、どれだけを確定給付型年金にし 、どれだけを確定拠出型年金にするのが最適かは従業員ひとりごとに異なる。企業が、 年金のために従業員一人ごとに出せる拠出額は一定の方式で定め、その額の中で、いく らを確定給付型年金の原資に振り向け、いくらを確定拠出型年金の原資に割り当てるか は、従業員と企業との交渉によって決められる方式が望ましいと考えられる。その意味 で、現行の制度のように、確定拠出型年金の拠出限度額を、他の制度との組み合わせ方 を考慮しているとはいえ、固定的に決めているのは望ましくない。 7.企業年金の異議を、従業員へのインセンティブとしてきちんと性格付けるともに、 その定義と整合的な制度に再構築することが必要があると考える。  ということでして、今は確定給付型年金と確定拠出型年金が全くインディペンデント に存在しているわけですが、それを全体としてとらえて、企業にとっても、従業員にと っても、自分の望ましい比率で持てるような、そういうフレキシビリティーが必要なの ではないか、そういう意見でございます。 以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、今度は岡本委員に代表してご説明いただきたい と思います。 ○ 岡本委員  今日、制度のご説明と、課題、論点のご提示をいただいたのですが、私の方からご説 明させていただきます内容は、今日ご提示いただきました論点に対する見解と、従来か ら経済界なり産業界の皆さんが共通的に要望しておられたような問題点の整理でござい ます。ひとつその点、ご理解賜ってお聞きいただきたいと思っております。  まず、年金税制でございますが、第1番目は、公的年金等の控除につきましては、原 則として廃止すべきである、このように考えております。これは従来から給付と負担の 問題で、この審議会でも議論してきたわけでございますが、現役に比べて相当余裕のあ る高齢者層も出てきているという現在の社会情勢を踏まえて、このように考えているわ けでございます。  第2番目は、特別法人税について廃止をしていただきたいという要望でございまして 、これは従来から産業界、経済界から共通して要望しております。これは運用時非課税 の原則にかんがみてぜひともご検討をいただきたいと思っているわけでございます。  3番目でございますが、当局のご努力によりまして、平成13年に確定拠出年金法が立 派にできたわけでございますが、この5年間の運用を見ながら、また論点を整理して法 の内容の整備をしていくことになってございます。その中で、拠出限度額につきまして は、やはり自助努力を支援するという視点からは、今の金額ではやはり低いのではない かと理解をしておりまして、この引上げをお願いしたい。今日、マッチングにつきまし ては、貯蓄かあるいは年金の原資の拠出かというようなご提議もございました。その辺 の性格論の議論というのは、これからやっていく必要がございますが、できればご本人 の自助努力をサポートするような格好で確定拠出年金があればいいと、こんなふうに思 っておりまして、マッチング拠出につきましても、ぜひとも道を開いていくべきではな かろうか、こんなふうに思っております。  第4でございますが、確定給付の企業年金でございます。厚生年金基金と確定給付企 業年金とで、拠出に対する税の取扱いが全く違います。もちろん年金制度そのものが違 いますので、いろんな考え方がございますが、できれば、確定給付の企業年金の中で自 助努力で拠出しておられる方々の本人の拠出につきましても、課税上、配慮をしていた だこうかと、こんなふうに考えておるわけでございます。  次に2ページでございます。制度運営ということでございますが、現在の制度は経済 が成長し生産性が上がっている環境の中ででき上がっておりまして、これから10年、15 年あるいは20年を展望しますと、その前提条件が相当変わってきているということを理 解しなければならず、既存の制度の設計の変更等々も含めて、経済情勢の変化に柔軟に 対応できるようにしていくべきではなかろうか、こんなふうに思っております。  それから、これは極めて実務的なことでございますが、先般の企業年金法の中には、 手続についても非常に厳格な規定がいろいろとございますが、内容の本質とあまり関係 ないような手続上の問題であれば、できるだけ簡素な制度運用ができるようにしてはど うか、こんなふうに考えております。  4番目に免除保険料でございます。今日ご説明がございましたので、これから議論し ていく必要があるわけでございますが、厚生年金基金の健全性を維持し、今後とも維持 していただく企業が多い方がいいだろうと、こんなふうに考えておりますので、免除保 険料の凍結については、解除していくというような方向で、今後議論はしていきたいと 思っております。ただ、厚生年金本体の保険料の引上げと絶えずリンクさせた議論では なく、これはこれとして議論していくというようなことも必要ではなかろうかと思って おるところでございます。  今日はあまり具体的なご説明にはなっておりませんでしたが、厚生年金の代行返上に つきましては、これからどのような条件で代行返上が可能なのかということが具体的に 決められていくようになっていくわけでございます。その条件次第では、時期によって 有利、不利が生じます。これでは混乱いたしますので、そのあたりについては配慮した 取扱いを決める必要があるだろうと思っております。  5と6につきましては、特にご説明する必要はございませんが、特に6の支払保証制 度のところにつきましては、先般、確定給付企業年金の議論が行われましたときから、 モラルハザードについては、懸念しております。軽々に支払保証制度をつくることにつ いては、極めて慎重といいますか、できれば私どもは反対と考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。あと、堀委員から意見書が出ておりますが、本日はご欠席 でございますので、企業年金に関する部分についてだけ、事務局からご紹介いただけれ ばと思います。 ○ 高橋総務課長  堀委員からは、「企業年金等」・「公的年金等に係る税制」についての意見をいただ いておりますが、関連部分だけご紹介申し上げます。  第1 企業年金等について、全体的な意見。  企業年金・個人年金の充実を図る施策が必要で、(1)少子高齢化が進む社会では、自助 努力・企業努力が必要、(2)公的年金の給付水準の引下げに対応する。政策の例としまし て、(1)確定拠出年金の拠出限度額の引上げと(2)特別法人税の廃止が挙げられておりま す。 個別の制度についてのご意見ですが、 2厚生年金基金について ・免除保険料率引上げの凍結を解除する。 ・平成16年の改正による将来の免除保険料率には、予定 利率の引下げ・死亡率の改善 ・給付引下げ分を反映させる。 ・免除保険料率凍結期間中、予定利率の引下げ・死亡率の改善・給付引下げ分を免除保  険料率に反映させ得なかった分を、厚生年金本体と厚生年金基金の間で調整する。 ・免除保険料率の上下限を撤廃する。 ・免除保険料率の見直しに当たって、最低責任準備金の見直しも必要。 ・厚生年金基金が解散した場合の最低責任準備金は、厚生年金基金連合会にではなく、  国に移換すべきでは ないか。 3 確定給付企業年金についての意見 ・確定給付企業年金のポータビリティの実現は困難な面があるが、厚生年金基金連合会  による中途脱退者の通算制度の拡大、企業型・個人型確定拠出年金への資産移換とい  った形で、できるだけ年金として受け取ることができるようにすることが必要。 ・確定給付企業年金について支払保証制度を設ける必要があるのではないか。 4 確定拠出年金についての意見 ・年金として受け取ることを条件に、マッチング拠出を認めるべきではないか。 ・課税されていなかった分を納税することを条件に、途中引出しを認めるべきではない  か。 ・第3号被保険者も制度の対象にすべきではないか。これに対しましては、(1)確定拠出  年金の対象となっていた第1号・第2号が第3号になった場合に、継続して掛金が納  められないのは不都合、(2)自助努力により老後に備えるのは望ましい、という理由  を挙げられております。  そのほか、企業年金関係の税でございますが、2ページにまいります。第2 税制で  すが、3、4、5が企業年金の関係の税制でございます。 3 特別法人税  ・特別法人税を廃止する−廃止には公的年金等控除の見直しが必要。 4 確定拠出年金  ・拠出限度額を引き上げる。 5 一時金  ・一時金として受給する場合の課税を、10〜15年の有期年金として受給する場合の課  税と同じにすべきではないか。←年金として受給する場合と比べて課税が不公平。  こういうご意見をいただいております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。今回、本格的に議論するのは初めてでございますし、企業 年金については、制度的にも少し複雑な面もあり、特に税制との関わり合いが非常に大 きいので、何かご意見があれば、ぜひ伺っておきたいと思います。いかがでしょうか。  それでは、近藤委員、小島委員、渡辺委員の順で発言をいただきたいと思います。 ○近藤委員   本日、ペーパー用意できなかったんですけれども、技術的な問題にも関わりますので 、次回までにペーパーを用意したいと思います。  まず、企業年金制度を取り巻く環境というのは、皆さん既にご承知のとおり非常に厳 しく、企業年金危機と言われるような時代になっています。企業年金は、機関投資家と して、資本市場を通じまして投資を行っております。ですから企業年金の規模が縮小す るということは、企業にとりまして、資金調達の道を狭め、マクロ経済的に見ても決し て好ましい状態ではないというふうに考えております。  老後の所得については、公的年金、企業年金、自助努力による個人年金によって充足 するということになりますが、この役割と度合につきましては、個人個人の欲求により 非常に多様化しております。現在議論しております公的年金の改革の方向によっては、 年金の水準として所得代替率の低下も考えられ、結果としまして企業年金への期待は高 まります。  ただ、企業年金の置かれています現状は大変に厳しいもので、これを理解した上で、 公的年金の改革と併せてより信頼の置ける制度にする必要があります。例えば基金制度 については、これまで凍結されてきた事柄への対応を明確にし、また、税制適格年金を 含めた企業年金制度全体について、普及策を検討する必要があります。  諸外国の例では、こういう低金利の状況の中、企業経営の戦略の大切な柱である人事 戦略の中で企業の再構築を図り、従業員給付に関する見直しが積極的に進められており ます。ですから、日本でももう一度体系を整理した上で、積極的に退職給付の見直しを 展開していく必要があるのではないかと思います。  老後の所得保証機能として最も必要とされる終身年金にプラスアルファして支給する この代行制度をいま一度明確に位置付けて、その役割と機能について、再検討して大切 に育てていきたいと考えております。世界的にこういう低金利が続く中で、年金のコス トが賃金等に比較しまして、相対的に上昇する傾向があります。その中で受給権の保護 をどう図るか、財政運営をどのように行うか、非常に重要な課題であります。  本日いろいろご説明いただきました内容その他を含めまして、免除保険料率の考え方 、諸計算利率と市場利回りとの連動などにつきまして、後ほどペーパーを出させていた だきたいと思います。それぞれ大変重要な点なので、ぜひ改善する方向で進めていただ きたいと考えております。  最後に、この企業年金危機を起こした1つの原因であります企業年金制度、特に代行 制度を再構築するためにも、企業会計基準の修正を早急に実施すべきであると考えてお ります。以上です。 ○ 宮島部会長  はい、わかりました。それでは、小島委員、どうぞ。 ○ 小島委員  私も今日はペーパーを用意できなかったものですから、発言した内容を整理して、改 めてまた文章で意見書として出したいと思っています。  企業年金の基本的な考え方でありますけれども、私どもとしましては、公的年金と企 業年金、すなわち私的年金の役割を明確にすべきだと思っております。厚生年金基金の 持っている代行制度の役割をどう考えるかということになりますけれども、基本的には 公的年金の一部を企業年金に肩代わりさせるということはやめるべきだと思っておりま す。そういう意味では、代行制度の廃止が必要です。この点、前回の企業年金法の改正 で、代行を返上できることにしたことについては一歩前進かと思います。基本的には代 行は厚年本体に戻して廃止すべきであり、企業年金は私的年金としての役割を担うべき だと思っております。  そういう中で、今日いただいております資料の中で、いくつか課題として気がついた ところを述べておきたいと思います。  まず厚生年金基金制度の保険料凍結の解除の問題です。これについては、予定利率に ついて、本体の保険料凍結に伴って基金の免除保険率等も凍結されております。ここは 質問なのですが、本体は予定利率を5.5%から4%に引き下げたわけですが、なぜ基金は 5.5%のまま据え置いたのか。多分これは予定利率を引き下げると免除保険料率を上げな ければならないからではないかと思います。本体の厚生年金の保険料率を凍結している 中で、その調整をどう図るかという判断があったのだろうと思います。その辺の事情、 判断について、お答えいただきたいです。  それと基金の解散についてです。確かに解散が増えていますが、積立不足、最低責任 準備金が不足している状況で解散もできないという基金もいくつかあると伺っておりま す。そういった場合の対応策として、11ページに課題として出されている、不足分を分 納して支払うという考え方も検討は必要かと思います。ただ、その際に、果たして分割 して支払うだけのきちんとした返済計画が担保されるのか、あるいは分納している間に 母体企業が倒産してしまった場合、それは誰が保証するのかという問題もありますので 、その辺も含めた検討が必要ではないかと思います。  また、納付すべき額の特例措置ということで、準備金が不足している基金については 、準備金を少なくできる特例の考え方がここで示されております。そういうことを考え た場合に、積立金を満たしている基金は準備金をそのまま支払うということで、不公平 感が出てこないのかと思います。まさにここはモラルハザードの問題として少し検討す る必要があるのではないかと考えております。  次に12ページの確定給付企業年金についてですけれども、13ページで課題等が出され ております。日本の企業年金は、これまで確定給付企業年金が中心でしたが、その性格 は、大方退職一時金を年金化したものということです。それは賃金の後払いと言った方 が正確だと認識しておりますので、これについては、中途退職者の通算制の問題につい て考えることも必要ではないかと思っております。  それと確定給付企業年金相互間のポータビリティの問題を解決できるような仕組みを 考えるべきではないかと思います。その場合に、どこが受け皿になるかということが問 題になるわけですが、例えばここでは厚年基金連合会が想定をされておりますけれども 、それも1つの考え方ではないかと思っております。また、15ページの支払保証制度は 企業年金法の法案改正のときにも私たちは主張してきましたけれども、確定給付企業年 金については、支払保証制度をきちんと位置付けるべきではないかと思います。アメリ カの事例が出ておりますけれども、ドイツ、イギリスなどでも、一定の企業年金の支払 保証制度を持っておりますので、ドイツやイギリス等の事例なども参考にしながら検討 すべきだと思っております。  また、16ページの確定拠出企業年金ですけれども、ここで出されております限度額 の引上げ、あるいはマッチング拠出等に対しては私どもとしては、確定給付から確定拠 出への移行ということも含めて基本的には反対してきた立場です。先ほど言いましたよ うに、日本の従来の企業年金は、退職一時金を横倒ししたものであり、それはまさに賃 金の後払いということですので、賃金の後払いである企業年金を確定拠出に移行するこ とについては反対です。全く新しい確定拠出という形でつくるということであれば、検 討の余地があると思いますけれども、従来の確定給付型、いわば賃金の後払いという性 格のものを、運用の結果でしか年金額が確定しないというものにすべきではないと考え ます。そのような観点から、現時点で拠出限度額の引上げについては慎重に考えるべき であると思っております。  そして、もう一つは、マッチング拠出の問題について、現時点では認めるべきではな いと思います。マッチング拠出をする、いわゆる従業員が拠出することをどう位置付け るかによって、変わってくると思います。これは年金か貯蓄かという論点もありますけ れども、そもそも企業拠出されている分も、賃金の後払いでありますので、そのような 性格から言って、賃金の後払い分を積み立てて年金として、将来受け取るということに なります。それに従業員が更に自分の賃金を積み増しすることについて、もう一度きち んと整理する必要があるだろうと思います。そういう観点からして、現時点でのマッチ ング拠出については実施すべきでないと思っております。  少し長くなりましたが、18ページにあるその他の問題についてです。税制適格年金制 度を、10年後に廃止するということで、特に中小企業では適年を解散・廃止するという 動きがあります。その受け皿として、中小企業退職金共済に移しかえるということが可 能になっておりますけれども、その場合の受入れ限度額に一定の制限があります。しか し、適年で積み立てている水準がすべては中退金に移行できないという問題があります 。年金の受給権の確保という観点からすれば、その中退金の受入れ限度額の引上げが必 要ではないかと思っております。以上であります。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。質問の部分は最後にまとめますので、翁委員、よろしくお 願いします。 ○ 翁委員  まず、厚生年金基金に関しましては、今いろいろな問題が免除保険料率の凍結という ことを通じて出てきていると思います。厚生年金基金の財政の健全性を回復するために も、凍結を解除することが非常に急がれるべきではないかと思います。それから厚生年 金本体との財政の中立性というのが全く確保されておらず、本体の利回りと基金の利回 りの間で発生する利差損といったものも反映されていないので、それぞれの基金の事情 とは無関係な形でいろいろなコストを負担せざるを得ないという状況になっています。 その意味でも、負担分も免除保険料率に反映させ、個々の基金によって変わる年齢構成 等の事情についても対応できるような制度を考えていくことがまず重要ではないかと思 います。  それから、確定給付年金の通算制度についてですけれども、今の日本の雇用の流動化 や多様化の流れを考えますと、中途脱退者についても、一時金を将来年金として受給で きるような仕組みを考えていくことが必要なのではないかと思います。厚生年金基金連 合会は、もともと厚生年金基金のいろいろな通算等のためにできたものですけれども、 これだけ企業年金が多様化しているわけですから、そういった経験や実績を活かして、 確定給付年金についても対応できるような組織に変えていくことが必要なのではないか と思います。  それから、支払保証制度の問題ですけれども、アメリカのPBGCを調べたことがあ るのですがこの制度は、設計を間違えると、ものすごく基金にとってコストの大きいも のになりかねないという問題を持っています。アメリカでもこの危機は、第2のS&L 危機と言われたほど大きな問題です。アメリカは公的な仕組みで実施していますので、 日本とは少し違うんですけれども、いずれにせよ、まず健全性の確保のために重要なこ とは、企業年金制度の設計や人事制度といったものは、経営スタンスそのものですから 、やはり市場に対してそういったものをきちんと開示していき、それによって規律付け されていくことが重要だと思います。また、確定給付ですから早期是正の仕組みをきち んと付けていくという設計が非常に重要なのではないかと思います。仮に、そういった 制度をつくるにしても、保険料をリスクに応じて可変化するというような対策をとって いかないと、非常にコストの高いものになりかねないので、その設計は気をつける必要 があるのではないかと思います。  それから、確定拠出年金についてでございます。私は公的年金が徐々にスリムになっ ていく中で、拠出限度額を引上げ、税制上の優遇措置をもっと広げていくという形で、 確定拠出年金を広げていくことは重要なのではないかと思っております。  こういった観点は、資本市場全体にとっても意味のあることだと思いますし、多様な 確定拠出型年金などを通じた形で、株式市場に資金が長期のタームで流れていく形をつ くっていくことは、金融市場の観点からも非常に重要なのではないかと思っております 。以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは渡辺委員。 ○ 渡辺委員  私自身も、今の企業年金を取り巻く環境は、3年連続マイナス運用という、非常に厳 しい、ある意味では異例な状況だと思います。そういった意味から言いますと、先ほど 岡本委員からも発言がありましたが、柔軟に対応しないと、企業年金、私的年金として の役割を発揮できないといった状況になると思います。特に総合型基金を見ると、単連 はまだ解散、代行部分の返上ができますけれども、総合型は解散、返上さえできないと いう大変危機的な状況にあるので、柔軟に対応すべきだと考えます。そういった観点か ら4点について意見を申し上げたいと思います。  最初は免除料率でございます。これは先ほどお話があったとおり、凍結解除は当然な んですが、先ほど矢崎課長からの資料の7ページの説明にあったとおり、上限が2割と いうのはどう考えても異常です。ましてや1000分の31を超えているところが12%あると いうのはどう考えても異常です。平成6年にこれまでの1段階から7段階に変わったわ けですが、7段階でもまだ足りません。やはり上下限を極力撤廃するか、もしくはもっ と多段階にすべきだと考えます。それが第1点です。  2点目は、財政検証についてです。非継続基準及び継続基準があるわけですが、非継 続基準による財政運営の債務はこれまで7年で償還するはずだったのが、今度10年に延 ばされたと思いますけれども、10年でも現実問題としてはかなり企業にとって厳しいと 思います。ましてや適格退職年金があと9年で廃止されて、7万件の適年が確定給付に 移行したら継続基準及び非継続基準の財政検証を受けなければいけなくなるわけで、償 還期限を、ただ7年から10年に延ばしただけでいいのだろうかと思います。やはり企業 にとって、ある意味では無理なく償還できるといった期間を設定すべきではないでしょ うか。  3番目は、今、給付削減に伴う手続が非常に複雑であり、企業が事実上削減できない 状態にあることから考えますと、この給付削減に伴う手続の簡素化、あるいは規制緩和 が求められると思っております。  最後に4番目としましては、確定拠出年金でございますが、導入して2年近く経つわ けでありますが、非常に使い勝手が悪い制度であることは確かです。先ほど言ったよう に確定給付企業年金も非常に厳しい中で、企業にとってみますと、確定拠出に移行する か、あるいはキャッシュバランスに移行するかといった極めて狭い選択しかない状況で は、確定拠出年金は非常に使いにくい。  その使いにくさを解消するためには、まず途中解約を認めるべきだと考えます。ただ 、無条件にということではなかなか問題も多いでしょうから、現状では、特別法人税が 凍結されているといえ、その他の金融機関に対する手数料を考えますと、途中解約でき なければ、やめられないわけでありまして、途中からずっと払わなければいけません。 つまり元本割れさえあり得るという非常に矛盾する仕組みになりかねないということで 、条件付きの途中解約を認めるべきではないでしょうか。  2番目はそれに関連しますが、今、凍結されております特法税は直ちに廃止すべきで す。もちろんその見返りとして給付時課税である公的年金等控除等との関連を十分考慮 する必要があると思います。  3番目は、これも出ましたので簡単にしますが、限度額の低さにつきましても、やは り見直すべきだと考えます。  確定拠出の最後の問題点として、やはり第3号被保険者、つまり専業主婦が加入でき ないということが挙げられます。やはり2004年の年金改正における3号問題の解決に合 わせて、専業主婦もこの確定拠出年金に加入できる道を開くべきだと思います。以上で あります。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。神代委員からも発言がありますので、どうぞ。簡潔にお願 いします。 ○ 神代部会長代理  2点だけですが、今、基金課長からご説明のあった資料の2ページと9ページに関連 する問題です。厚生年金基金の惨憺たる状況というのは、マクロ経済から来ている問題 が非常に多いことは確かなのですけれども、最近、例えば今出ている文藝春秋に伊藤忠 商事の社長の丹羽さんが論文を書いて、いろいろな提言をなさっています。時価評価制 度を導入してない国は他にもたくさんあるではないかといった議論や、銀行の持ち合い の解消も急いでやることはないだろうといった議論が、私はとても大事な問題として底 流にあると思います。特に厚生年金基金連合会として、厚生年金基金の基盤を揺るがし ているような問題に対して、どのように政府に対して、あるいは政治家に対して意見を おっしゃっているのか、あまりよくわかりません。この審議会の場では言えないことな のかも知れないけれども、根本の問題を抜きにした議論になってしまわないかなと懸念 されますので、ぜひ少し視野を広げて考えた方がいいというのが私の個人的な感想です 。  もう一つは、16ページの確定拠出の望ましい給付水準のご説明の際に、課長の方から 言及があったと思いますが、現在の拠出の限度額を非常に低い水準に抑えられているこ とについては多くの委員からご指摘がありまして、引き上げるのに反対の方もいらっし ゃるようですけれども、私の理解では、この限度額は退職時の平均的な所得代替率を60 %程度にすることが1つの根拠になって低く設定されたと聞いております。平均的な所 得代替率で、確定拠出年金全体の限度額を設定するというのはものすごい乱暴な考え方 で、確定拠出年金の本来の趣旨と全く反するのではないかと思います。  アメリカの401kはもともと退職一時金制度がない中で、所得給付をどうやって確保す るかというところから始まっていて、実際に一時金をもらっている人が今でも非常に多 いです。確定拠出年金は、特に所得階層別に公的年金の所得代替率が大きく異なります 。特に平均所得以上の所得代替率が非常に低いという現実に対して補完的な役割を期待 されている面が多いので、そういう本来の性格を無視した形で、所得代替率を拠出の上 限にするというのは、一体どういう考え方だったのか、私はその経緯をよく知らないで すけれども、非常に奇異な感じを抱いておりますので、ぜひご検討いただきたいと思い ます。 ○ 宮島部会長  まだ少しご意見はあると思いますが、次の議題がございますので、一たんここで企業 年金についての意見は終わりにさせていただきます。ただ、先ほど小島委員から、例え ば5ページのところの予定利率の据え置きの経緯について質問があったと思いますし、 大変貴重なご意見と、それから質問の両方あったと思います。何か事務局で、これまで の一連の議論の中で、どうしても答えておくものがあれば、5分ぐらいでお答えいただ けますでしょうか。 ○ 矢崎課長  1つは、小島委員から、本体の予定利子率4%と基金の予定利子率5.5%の関係につい てご質問がございました。本体の方は、前回の財政再計算で、当時の金利情勢等を見て 4%という長期見通しを出しています。厚生年金基金の免除保険料率を算定するときは 、現在と同じ2.4〜3%の免除保険料率が算定されていましたが、前回改正で免除保険料 率が凍結されておりますので、現在の免除保険料率の算定根拠の利子はそのままの5.5を ベースにしている状況です。結果的に、免除保険料率が凍結されたということによって 、本体の予定利率と差が生じているというふうなご理解をいただければいいのではない かということでございます。  あと神代先生から、確定拠出年金の上限の考え方、平均値についてのお話がございま した。説明をはしょって申し訳なかったのですが、16ページでございます。3.6万円など の限度額設定の考え方は、簡単にしか書いてございませんが、厚生年金基金の免除保険 料率は当時は月収ベースでしたので1000分の35ですが、それで拠出ベースでは代行部分 を賄っているというふうに概念します。厚生年金基金の望ましい水準は代行給付の2.7倍 、上積みだけですと、1を引きますから1.7倍というような考え方になります。これをベ ースにして、当時の標準報酬月額の上限は月収ベースで62万でありまして、これらの数 字から算出しています。ご質問の趣旨に的確に答えているどうかわかりませんけれども 、拠出限度額の金額ベースに換算するときに、標準報酬の「上限」という数字を用いて いるということでございます。 ○ 宮島部会長  それでは、ほかにもまだご意見、ご質問あると思いますけれども、今回の件は、今日 の議論を踏まえて、改めてもう一度総括的な意見書をお出しください。その際は、事務 局の方にも、本日のいろいろな指摘を踏まえて、少し資料をリバイズしていただくよう なこともお願いするというつもりでおります。  それでは時間がやや押してはおりますが、次の議題に入りたいと思います。次の議題 は、公的年金に係る税制についての議論でございます。これに関しましては、これまで もいくつかのテーマで取り上げてまいりましたので、今日は事務局から改めて総括的に 説明をいただいた後、少し時間をとりまして議論したいというふうに思っております。  それから、先ほど堀さんの意見書の中に、税制に関する議論の部分がございましたの で、そのとき、ご紹介していただくということにしたいと思います。それではよろしく お願いします。 ○ 高橋総務課長  資料の2にございます「公的年金等に係る税制について」でございます。最初に現行 の年金関係の課税の仕組みをご紹介しております。まず拠出段階においては、ご本人の 拠出が社会保険料控除により課税対象から除外されております。ここには書いてござい ませんが、事業主の拠出は損金算入して本人の所得とはみなさないということになって おります。老後まで繰り延べていくという格好になっています。  給付の段階におきましては、老齢年金は課税対象となっておりますけれども、公的年 金等は、老年者控除の適用もあり、実際に課税対象になっているのは非常にわずかであ るということでございます。  3ページをご覧いただきたいと思います。「公的年金に係る課税の仕組み」でござい ますが、まず掛金段階では社会保険控除で、給付時は、年金の収入は雑所得の分類にな ります。公的年金等控除ができた昭和62年より前は、年金の収入はみなし給与所得とい うことで、給与所得としてみなされていたのですけれども、62年改正によりまして雑所 得へ分類が変わっております。  その際に、給与と一緒に給与所得控除を受けていたものが分類が変わりましたので、 今度は雑所得の分類になって、控除をどうするのかという議論があり、この公的年金等 控除が出てきたということでございます。  その仕組みは右側に四角で囲ってございますが、定額控除、定率控除がございます。 公的年金等控除を引いた後、雑所得としての年金の所得というものをはじき出しまして 、それを他の所得と合算し、さらに人的控除、老年者控除、その他の所得控除を引くと 課税所得が出てまいりますので、その課税所得に税率を掛けて税額を出すという仕組み になっています。  次のページにまいります。何が公的年金等控除の対象になっているかというものでご ざいます。2番目に、対象とされる公的年金等の範囲がございまして、国民年金、厚生 年金、国民年金基金、厚生年金基金、共済、その他、3階部分の制度がかなりございま して、農業者年金基金、確定給付企業年金、特定退職金共済、中退共、小規模企業共済 、適格年金、確定拠出年金等が入っております。  一時金制度もございますが、一時金制度についての公的年金等控除は、一時金を年賦 払いにしてもらう場合にのみこの控除がかかるということでございます。  具体的な仕組みは5ページにございます。これは控除のラインがどういうふうになっ ているかというものを記したものでございますが、横軸が収入、縦軸が控除額になりま す。これでご覧いただきますと、ラインが3つありますけれども、参考で挙げている給 与所得控除のラインとほぼ同じようにずっと線が伸びていくのが、65歳未満の控除額で あります。それから上の方に一本ラインがずっと伸びていきますけれども、これは65歳 以上の公的年金等控除のラインであります。仕組みはその四角の左側の方に書いてあり ますが、まず年齢によって違う定額控除、それから定額控除後の年金収入を3ランクに 分けまして、それぞれ違うレートを掛けていって控除額を決める定率控除があります。 かつ最低保障もつけています。これによるラインをグラフにしているわけでありますが 、先ほど申し上げましたように、昭和62年前はみなし給与所得の扱いを受けていたため 、その経緯を若干引きずっておりまして、65歳未満の場合には、給与所得控除とほぼ同 じラインをたどるような設計になっているわけであります。それから、65歳以上の方に ついては、このみなし給与所得の時代には、65歳以上につきましては、租税特別措置法 によりまして78万円の上乗せがございました老齢者年金特別控除があり、現在もその78 万円が65歳以上の方については上乗せになって、ラインが上にシフトしていると、その ようにご理解をいただければいいと思います。従前の制度を引きずった格好になってい るというものでございます。  1ページに戻ります。1番の「○」の2つ目でございますが、こういった仕組みにな っていることから、65歳以上の年金生活者の課税最低限は、現役世代の給与所得者の場 合よりもかなり高い水準になっているということでございます。資料3のご説明は省き ますが、参考で申し上げますと、モデル年金は世帯単位で見ておりますけれども、税の 場合には個人単位ですから、夫分、妻分は分解されますが、ご夫婦とも70以上というよ うなケースでは、モデル年金の場合にはご夫婦とも非課税になっています。  2番にまいりますが、昨年12月に出しました「方向性と論点」での公的年金等に係る 部分の整理でございます。読み上げます。 ○世代間の公平や高齢世代内の公平の視点に立って公的年金に対する課税(公的年金等 控除)を見直すべきではないかという意見が多い。 ○年金課税を見直した場合には、現在の年金受給者の対象として年金水準を調整するの と同様の効果が結果として生ずる。この場合、高額年金受給者や他の所得を有する者に とって、より大きな効果が生じ得る。 ○また、これにより得られる財源を、世代間扶養を基本として運営されている年金制度 の趣旨にかんがみ、年金制度に還元することが考えられる。  2枚目にまいりますが、「議論のポイント」ということでございます。昨年の「方向 性と論点」の整理を踏まえまして、まず1つが、社会保障に係る負担が現役世代に集中 しているといった観点から、この公的年金等控除をどう考えるか。これは世代間の視点 ということでございます。  「○」の最初にございますが、年金の保険料は老齢等に伴う所得喪失に備えるという 性格であり、医療や介護と異なり現役世代のみが負担するものでございますけれども、 今後の保険料の引上げの中で、ライフサイクルの中で特定の時期に過重な負担とならな いよう、負担の平準化が必要なのではないかということでございます。  7ページをちょっとご覧いただきたいと思います。7ページ、8ページ似たような資 料でございますが、7ページは社会保障審議会、親審議会の方で以前に出された資料「 ライフサイクルでみた社会保険及び保育・教育等サービスの給付と負担」でございます 。縦軸の真ん中の0の線が見えるかと思いますが、0より上が給付であります。0の下 が負担であります。給付の方をご覧いただきますと、義務教育の給付、高校、大学、あ と、それ以前の保育所・幼稚園、こういったものが子どもの時代にもあるわけでありま すが、総じて、こういったベネフィットというのは、60才以上の世代に集中していると いうことであります。それに対して、負担は現役時代にかなりあるということでありま す。さらに負担の構造を見たものが8ページでございます。これは7ページの25歳以上 について、負担のみを取り出したものでございますけれども、縦軸の0よりも上が社会 保険料、税として広く負担している部分、その下は介護や医療のサービスを受けたとき の自己負担を書いてあるわけであります。これによってもかなり現役のところに負担が 重くなっていると、こういう格好になっているわけでありまして、2ページにまいりま すけれども、そういった観点から見直しが要るのではないかということであります。  「○」の2つ目でございますが、課税を見直して、負担能力を有する高齢者に負担を 求めるというのは、こういった負担の平準化という観点に沿うのではないか。それから 、3つ目の「○」でございますけれども、「方向性と論点」の中にも書いてございます が、課税による収入を年金の財源に充当するという考え方があり得るけれども、どう考 えるかということでございます。9ページでございますが、アメリカの例をちょっとご 紹介いたしたいと思います。「米国における公的年金課税による税収の年金財政への移 管」というふうに書いてございますが、アメリカにおきましては、1983年の社会保障法 の改正による措置により、年金以外の総所得と公的年金給付、これはソーシャル・セキ ュリティと呼ばれている通常の年金、鉄道退職年金、労災給付が含まれておりますけれ ども、この半分に相当する額の合計額が一定額を超えた場合に、原則として公的年金給 付の半分を対象に課税をされるというものでございます。  この半分という意味につきましては、アメリカにおきましては、拠出の段階で、事業 主拠出分は損金算入でそのまま老後に繰り延べていく格好になっておりますけれども、 本人分につきましては、日本のような社会保険料控除の適用がございません。したがい まして、本人拠出分につきましては、拠出段階で課税が終わっておりますので、出口の 段階では課税しない。半分というのは、事業主拠出に相当する分も出口段階で課税して いるということのようであります。  その課税によって増えた収入につきましては、「○」の2つ目でございますが、83年 の社会保障法の規定によりまして、国庫から社会保障や鉄道退職給付それぞれの信託フ ァンドへの移管が行われております。予算で見込みを立てて、後で内国歳入庁が実績を きちんと計算をし、調整しているということのようであります。  2ページに戻りますが、公的年金課税に関する議論のポイントの2つ目といたしまし ては、高齢世代内における公平をどう考えるかということでございます。高所得者であ る高齢者に対して年金の給付を制限すべきとの考え方がありますが、それと課税との関 係をどう考えるかということでございます。年金の中でも高所得である高齢者に対して は、むしろ給付を制限するべきではないかというような意見もありますので、そういう ふうなやり方でいくのか、そうではなくて、むしろ課税一本でいくのか。まずは支給を して、むしろ課税できちんと対処すべきではないかというような見方もあるわけでござ いますけれども、その辺をどう考えるかということでございます。  それから、年金課税の見直しに当たっては、低所得の高齢者に対する配慮が必要では ないかということでございます。細かい箇所は飛ばします。  それから、3つ目の論点につきまして、今までは老齢年金の問題だけを言っておりま したが、遺族年金などについては、年金給付として支給された金銭を標準として公租公 課を課することは禁じられております。12ページの資料7でございますが、厚生年金保 険法と国民年金法の規定を掲げております。共済法などにも全部このような規定がござ いますが、例えば厚生年金保険法の場合には、41条で、「租税その他の公課は、保険給 付として支給を受けた金銭を標準として、課することはできない。ただし、老齢厚生年 金については、この限りではない」という規定があります。  「支給を受けた金銭の標準として、課することはできない」の中の、「標準」という のは、税の世界で「課税標準」という言葉がございますが、そこを対象にして税を課す るという意味でございます。その公租公課を課することはできないことで、非課税だと いうことを言っております。これが今後ともそのままやっていけるのかどうかというの が議論のポイントかと思います。  あと参考でございますけれども、その他、現在の老齢年金からは介護保険料の特別徴 収を行っておりますけれども、その対象を広げられないかというような要望がございま す。現在のところは、介護保険料の特別徴収は、老齢年金のみに限っているということ でございます。  そのほか、これは企業年金との関係でございますが、今まで拠出段階の社会保険料控 除や事業主の損金算入、出口、給付段階における公的年金等控除あるいは非課税の話を しましたが、企業年金におきましては、その途中の運用段階における運用資産、積立金 に対する課税であります特別法人税があります。これは先ほどの企業年金の方の参考資 料1−2「企業年金等関係資料」の45ページでございますが、厚生年金基金、確定給付 企業年金、確定拠出年金、適格退職年金については、原則として、積立金に対しまして1 .173%の特別法人税がかかっています。これは現在凍結されておりますけれども、出口 の課税の強化を行った場合には、中途段階における特別法人税の取扱いをどう考えるか ということでありまして、私どもとしても、そろそろこれは廃止の方向ではないのかな というふうに考えております。それについてのご議論をお願いできればと思っておりま す。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  それでは、堀さんの分も併せて紹介をしてください。 ○ 高橋総務課長  堀委員から出されております公的年金関係の税制について、いただいた意見をご紹介 いたします。資料3、2ページでございます。  第2の「税制」でございます。まず公的年金等控除につきましては、見直しが必要だ ということがありまして、その理由として、(1)高齢者が働いて得た給与と比べて不公平 。(2)65歳未満の年金課税は給与所得課税とほぼ同じであるが、経費の概算控除という給 与所得控除の意味は公的年金にはない、(3)拠出段階で社会保険料控除を認めている、(4 )介護保険料、国民健康保険料等他の制度に悪影響を及ぼしている、ということでありま す。  その他の論点といたしまして、高所得者の年金を減額・不支給とすべきとの議論があ るが、むしろ公的年金等控除を見直すことによって対応すべきということです。この所 得制限導入反対の理由につきましては、同じ額の保険料を同じ期間拠出した2人につい て、老後の所得・資産によって、一方は全額支給し、他方は減額・不支給とするのは、( 1)保険料拠出意欲をなくし、(2)自助努力によって老後に備えた者を不当に差別するもの であり、社会保険としての意義をなくすと、こういう理由で所得制限反対であるという ことでございます。  それから、社会保険料控除によって所得税・住民税の課税ベースが狭くなっていると いう議論があるが、公的年金等控除の見直しによって公的年金額の多くを課税対象とす れば、この問題は解決できる、公的年金等控除の見直しに伴う増税分は、基礎年金国庫 負担率引上げの財源にすべきだというご意見でございます。  それから、2番目に、遺族年金・障害年金につきまして、寡婦・障害者についての配 慮は必要であるが、寡婦(寡夫)控除・障害者控除と統合するなど、非課税措置以外の 方法もあり、遺族・障害者が働いていた給与との公平の観点から、寡婦(寡夫)控除・ 障害者控除と統合する方が合理的。  こういうご意見をいただいております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。初めに申し上げましたように、年金、特に公的年金に係る 税制の問題は、これまで何度か議論してまいりまして、意見書を既にいただいたりして いることもございます。今日は総括的に公的年金と税制の関係の問題につきましてまと めていただいたわけでございますが、論点は2ページのところで提示をしてあります。 堀委員の意見も含め、最後の4番については、既にいくつかご意見をいただいたところ でございますが、何かご質問なり、ご意見があれば、改めて伺っておきたいと思います 。  先ほどの企業年金の議論の際に、特別法人税をどうするかという議論がございまして 、その際、給付時課税原則というような観点から見直したらどうかという意見もござい ました。そういう点も含めて、企業年金にわたる話でも結構でございますので、何かご ざいましたらお願いいたします。小島委員、どうぞ。 ○ 小島委員  時間もありますので、簡単に結論だけ申し上げます。2ページに議論のポイントがあ りますけれども、特に老齢年金の課税問題についてこれまでも何度か意見を述べており ますが、基本的にはこれは見直す必要があるだろうと思っております。どこを具体的に 見直すかというのはなかなか難しい問題がありますけれども、やはり現役勤労者の給与 所得控除をにらみながら検討すべきではないか思っております。  そこで課税見直しで出てきた税収については、当然年金財政に繰り入れるというのが 前提であろうというふうに思っております。今後、基礎年金の財源等の一部にも充てる ことも考える必要があるのではないか。こうすれば、年金受給者も、今の公的年金を支 えていくということにもつながってくるのではないかと思っております。それが1つで す。  2ページにあります(3)の遺族年金の課税問題をどう考えるかについてです。ご説明あ りましたように、現在は遺族年金、障害年金については非課税扱いとなっております。 基本的には、所得税の総合課税という観点を基本に据えた場合に、初めから非課税扱い ということをどう考えるかという問題があります。遺族年金について検討する際には、 遺族年金受給者の生活実態、所得実態等を把握する必要があるのではないかと思います 。  最後の企業年金の運用段階の特別法人税について、これも私どもとしては従来から主 張しておりますとおり、廃止すべきだというふうに思っておりますので、そこは付け加 えておきます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかには例えば、アメリカでは年金の税収は、内国歳入法 典の中でトラスト資金に組み入れるという考え方、日本で言えば、目的税、特定財源税 的な発想をしているわけですけれども、日本において年金課税増収分の使い方の論拠等 についても何か議論があれば伺っておきたいと思います。ほかの点でも結構です。いか がでしょうか。 ○ 岡本委員  議論がもとに戻ってよろしゅうございますか。私のペーパーの補足ということでお願 いしたいのですが、支払保証制度につきまして、私はモラルハザードを起こすのでむし ろ反対であると申し上げました。小島委員からのご説明に反対するので申し訳ないので すけど、補足ということでお聞きいただきたいと思います。  セーフティネットをどうつくるかということですが、公的な制度のセーフティネット と私的な制度のセーフティネットというのは、基本的には区別して議論すべきだという ふうに考えておるわけです。確定給付の企業年金につきましては、労使の理念というも のがあって、その合意の下でつくり上げているというような背景が1つありますから、 ベネフィットや給付利率等々についても全部違います。そういう意味で、同じ企業年金 といっても、内容は個々ばらばらであるというのが実態であります。  そういう中で、数年前に企業年金会計が導入されまして、積立不足の償却を労使で一 生懸命やっているとか、あるいは現下であれば利差損の償却を一生懸命やっているとい うことで、労使は自分たちの責任で確定給付企業年金の維持に取り組んでいるという状 況であります。そういう意味では、確定給付企業年金の性格というのは、基本的には自 己完結的で自己責任を貫徹すべき制度であり、軽々に横断的なセーフティネットをつく るというのは、性格上あまりなじまないと思っておりまして、反対であると申し上げま した。ペーパーには書いておりませんが、補足させてもらってご理解ちょうだいしたい と思います。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  わかりました。今日は場合によっては時間を延ばしてもいいと思っていましたもので すから、もう一度戻りまして、公的年金と税制との問題について、何かご意見があれば 、杉山委員、それから、翁委員。 ○ 杉山委員  税制の方なんですけれども、ペーパーの1ページにあるように、「方向性と論点」の 整理で、「世代間の公平や高齢世代内容の公平の視点に立って公的年金に対する課税を 見直すべきではないかという意見」に関しては、私どもも何度かペーパーを出して申し 上げている次第です。年金制度に還元するという方向でいいと思うんですけれども、せ んだっても、合計特殊出生率がまた下がって過去最低になったというようなこともござ いますので、現役世代の子どもを育てるに当たっての負担というものを考えていくとい うことは必要ではないかと思っております。そのあたりも考えていければなというふう に思っております。  以上です。 ○ 宮島部会長  今のご趣旨をもう一度お願いできますか。申し訳ありません。 ○ 杉山委員  年金制度に還元ということなんですけれども、子育て支援や次世代支援というものに 関しても見ていくということが選択肢としてはあるということです。 ○ 翁委員  公的年金控除を縮減して、これを財源としていくということに関しては、3分の1か ら2分の1に引上げるための対応としては、その財源として有力な手段かなというよう に思います。次の財政再計算への対応ということを考えれば、こういったやり方という のは同一世代の中での所得再分配にも資しますし、税の方から考えると、所得税の課税 ベースが少し上がるという面もあると思います。ただ、将来的な制度設計として考えた 場合には、例えばスウェーデン方式のように国庫負担は最低保障の部分にやっていくよ うな形がいいのかとか、または基礎年金というものをどう位置付けていくのか、税方式 でやるのか、財源はどうするのか、などにも非常に密接に絡む議論だと思いますのでま た別途の議論が必要ではないかと思っております。 ○ 宮島部会長  長期的な視点での位置付けをも同時に考えておくということになりますね。 ○ 吉武年金局長  先ほどの杉山委員のご指摘ですが、実は配偶者特別控除が今年から段階的に縮小にな っております。その際に、与党協議の中で、配偶者特別控除の縮小で1兆円近い課税増 が生じますけれども、その一部の2,500億円程度を16年度予算で措置をして、児童関係あ るいは育児支援関係に充てるという合意ではできております。ただ、これを16年度予算 に本当にどうするかというのは、まさにこれからの議論でありますが、育児支援関係は 相当大きな金額の増要素が16年に向けては出てきておるということです。来年度予算編 成も非常に大変でしょうから、その与党合意が現実にどういう形で実現するかというの は、むしろこれからの議論になるだろうという印象です。 ○ 宮島部会長  いかがでしょうか。それでは、今日の公的年金と税制に関する議論はこの程度にいた します。今のところ、私が考えておりますのは、前回もお話いたしましたように、遺族 年金の問題等が残っておりますので各論的な議論をもう一度ぐらいする必要があると思 います。各論的なものが終わりました後、秋の取りまとめで一本化するという意味では ないのですが、この年金部会としての意見を包括的にまとめるに当たり改めて委員の方 々からは、これまでのすべての各論にわたりまして言い残した点、あるいはその後の議 論で出てきた論点についてご意見をいただくつもりでございますので、その際にまたも う一度お願いをしたいと考えております。  それでは、本日の議事そのものはここで終了させていただきますが、今後のことにつ いて、総務課長から何か連絡事項があれば、お願いいたします。 ○ 高橋総務課長  次回は、遺族年金などの給付に係る各論的な事項についてご議論いただきたいと考え ております。開催日時につきましては、私ども実は大変忙殺されておりまして、日程を もう一回内部でよく調整した上で、改めてご連絡申し上げたいと思います。 ○ 宮島部会長  それでは、どうもありがとうございました。これにて散会いたします。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3316)