03/06/04 薬事・食品衛生審議会平成15年6月4日(水)血液事業部会議事録           薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年6月4日(水) 14:00〜   浜松町東京會舘チェリールーム 2.出席委員(16名)五十音順   池田 康夫、 大平 勝美、 岡田 義昭、 小幡 純子、   川西  徹、 倉田  毅、 櫻井 秀也、 白幡  聡、   高橋 孝喜、 中村 雅美、 花井 十伍、 比留間 潔、  ○水柿 道直、◎溝口 秀昭、 三星  勲、 宮崎 久義   (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(7名)五十音順   清水  勝、 田中  滋、 平澤 博之、 幕内 雅敏、   森 眞由美、 吉倉  廣、 吉澤 浩司 3.行政機関出席者   鶴田 康則(大臣官房審議官)、 橋爪  章(血液対策課長)、   別井 弘始(血液対策企画官)、 関根  豊、 辻阪 高子、   田中 一成、 丈達 泰史、 石橋 牧代  他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○血液対策課長  それでは定刻となりましたので、ただいまから平成15年度第1回血液事業部会を開催 いたします。なお、本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願い申し 上げます。現時点で委員数23名中14名の御出席を頂いております。定足数に達しました ので、薬事・食品衛生審議会令第九条により本部会が成立しましたことを御報告申し上 げます。  まず委員に異動がありましたので、お知らせいたします。日本医師会の人事異動に伴 い菅谷忍委員から櫻井秀也委員に代わりましたので、御紹介いたします。  次に事務局に異動がありましたので、お知らせいたします。本年4月1日付けで医薬 局血液対策課に血液対策企画官が新設され、別井弘始が就任いたしました。また、課長 補佐として石橋牧代が着任いたしました。よろしくお願い申し上げます。  なお、今日は医薬局長が出席の予定でしたが、急務が入りまして出席できませんの で、御了承ください。この後の進行については溝口部会長、よろしくお願いいたしま す。 ○溝口部会長  それでは血液事業部会を始めさせていただきます。本日は大変議題が多うございます が、この会場は定刻に終わらないといけないというかなり厳しい制限がございますの で、御協力のほどよろしくお願いいたします。  それでは早速議事に入りますが、まず議題1でございます。3月25日と4月23日に安 全技術調査会が開催されまして、幾つかの事項が部会に上げられましたので、これらに ついて皆様の御意見を頂き、この部会としての意見をまとめさせていただきたいと思い ます。議題はお配りしてあります資料B-1〜B-5にあるものがすべて議題でございまし て、資料B-1の「TSE対策に係る採血制限について」、資料B-2の「保存前白血球除去 について」、資料B-3の「HTLV-1抗体検査の在り方について」、資料B-4の「NATガイ ドラインの検討状況について」、資料B-5の「SARSへの対応状況について」、以上 の5項目でございます。  それではまず資料B-1の「TSE対策に係る採血制限について」に基づきまして、事 務局から御説明願いたいと思います。 ○事務局  それでは資料B-1を御覧いただきたいと思います。これまでの経過でございますけれ ども、3ぺージを御覧いただきたいと思います。横表になっておりまして、これまでの 日本における英国等長期滞在経験者の供血停止措置という経緯が書かれております。そ れから6ぺージまでにわたりまして、各国の同様の措置について資料をまとめさせてい ただいております。これまで日本におきましては、BSEが発生して以来三つの考え方 に基づいて献血を御遠慮いただくということにしてまいりました。一つ目はヒトにおい てvCJDが発生している国、二つ目としてウシBSEが相当発生している国、三つ目 としましてはウシBSE発生数が増加傾向にある国。これらの条件に合致した国に6か 月以上滞在したことのある方からは、当面献血を御遠慮いただくという措置を採ってき ております。3ぺージに書いてございますけれども、2001年11月30日以来、ヨーロッパ における10か国についてこのような措置を採ってきたという経緯がございます。  4ページを御覧いただきたいと思いますが、米国の対応についてまとめた資料になっ ております。上から二段目ですが、FDAが2002年10月31日以降、それまで英国、フラ ンスのごく一部の国に対して採っていた献血制限について、欧州全体に拡大するという 措置を採ったということがございます。この経緯をもちまして、我が国ではどう対応す るかということを3月25日に開催いたしました安全技術調査会において御審議いただい たわけでございます。  2ページにお戻りいただきたいと思いますが、ここはBSEの発生数等についてまと めた資料になっておりますけれども、全体の流れとしては、欧州等でかなりのBSE発 生が見られるという資料となっております。1ページにお戻りいただいて、この表を御 覧いただきたいと思いますが、一番左端に「現行」ということで、先ほど御説明させて いただきましたアイルランドからポルトガルまでの10か国について、6か月間以上滞在 経験のある方については献血を御遠慮いただくという措置でございます。米国の措置が 真ん中にあるわけですが、こういう措置が海外で採られているということをかんがみま して、日本でどうするかを御議論いただきました。安全技術調査会におきましては、一 つの意見としてはあくまでも予防する措置ということもありまして、米国が対象を広げ たからといって同じように広げる必要はないのではないかという御意見と、それからま た一応それに倣ったような形でやるべきではないかという御意見、この二通りがいろい ろ議論されたわけでございます。最終的にはここにございます「案1」でございますけ れども、従来の10か国の6か月の制限に加えまして、欧州は地続きでございますので、 BSEが発生している国と発生していない国がございますけれども、地理的な事情を考 えてその10か国以外にここにあります国については、米国同様5年としてはいかがかと いう御意見を頂きました。  それに加えまして、7ページを開けていただきたいと思います。こちらに欧州の地図 を付けさせていただいておりますが、先ほど言いました地続きのところで地理的なこと を考えましたところ、少し分かりづらい部分はございますけれども、この黒で塗ってお りますリトアニア、ラトビア、エストニアのちょうど左のところに、黒いラインが縦に 一本ずっと入っておりますが、この線よりも西側の諸国がございます。米国の規制はア イスランド、それから下の方に小さな国がございますが、アンドラ、モナコ、バチカ ン、マルタ、サンマリノが入っておりませんので、この線より左ということになります と、米国の対象としている30か国にこの6か国を加えると。リトアニア、ラトビア、エ ストニアは加えないということでございますが、この6か国を加えて計36か国に対して 地理的な制限を設けてはどうかという御意見が、最終的には取りまとまった次第でござ います。ただし、その際にこれだけたくさんの国を制限するということがありますの で、実際に献血の現場においてそういう対応ができるかどうかを日本赤十字社に対し意 見を求めて、その回答を添えてこの場で御審議いただいたらどうかという結果になって おります。  8ページを御覧いただきたいと思いますが、その審議が終わった後に私どもの方から 日本赤十字社に対して、今御説明させていただきましたような制限をかけるとした場合 に、献血現場での実施の可能性について御意見を求めたところでございます。その回答 が返ってきておりまして、次の9ページを御覧いただきたいと思いますが、上段のとこ ろにございますけれども、従来どおりこういう措置が必要ということであれば対応して いただけるという御回答を頂いたところでございますので、この方針について本日は御 審議いただきたいと考えております。  それから先日カナダにおきまして、BSEが一頭発生したという新しい事実がござい ました。これについての献血制限の部分につきましては、これまでの方針で行きます と、まだ一頭目ということでございますので、制限を設けるかどうかについては今後の 増加の傾向等を見て、引き続き必要なときに改めて御審議いただくことになろうかと考 えております。  それから同じくカナダのBSE発生の件について、他の血液製剤への影響ということ で見ましたところ、血液製剤関連分野においては遺伝子組換えの第VIII因子製剤でバク スター社が供給しておりますリコネイト、また遺伝子組換え第VII因子製剤でノボノル ディスク社が供給しておりますノボセブンについては、培養の段階でウシ由来の血清を 使っているという事実が分かっておりますので、これについてどのように考えるかとい うことが一つの課題としてあるかと思っております。それについての今後の方針につい ては、課長の方から御説明させていただきます。             ── 説明途中、小幡委員着席 ── ○血液対策課長  今の2製剤について、培地ではございますが、遺伝子組換え製剤にカナダのウシ由来 の血清が使われているということが分かりました。このような場合の対処方針につい て、平成13年10月16日付けで医薬局審査管理課長通知が出ておりますので、それに従っ て対応したく思っております。基本的にはそういう原料は輸入停止の措置を採るわけで すが、新たな原料の製造に相当の時間を要する、かつ医療上非常に必要性が高い製剤に ついての措置の仕方がその通知に書いてございます。これは安全性に関する確保措置、 及び使用者に対する情報提供を講じた上で、医療上の必要を満たすために原材料の切替 えがなされるまでの間、製造輸入を一律禁止するものではないと。繰り返しますが、使 用者に対する情報提供等を講じるという考え方で、医療上の必要性が非常に高く、かつ 原料の切替えがすぐにできないという製剤についての取扱いは平成13年に定めておりま すので、それに準じた取扱いを至急各製造業者に対して指示をしたく思っているところ でございます。なお、現在既に流通している製剤については、やはり製造業者を通じて 使用者に対する情報提供を徹底していただくように、併せて指導したく思っているとこ ろでございます。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。それではただいまの事務局の御説明に対しまして、 御意見、御質問のある方はどうぞお願いいたします。何かございませんか。どうぞ、花 井委員。 ○花井委員  この赤十字の回答にございますように、後から判明した場合の原料血漿又は輸血用血 液製剤の対応については、どのような結論になったのでしょうか。 ○溝口部会長  いかがでしょうか。最後のパラグラフ…。 ○血液対策課長  これはリスクの度合いによって、ケース・バイ・ケースで判断をしなければいけない ものではないかと思います。この場合は非常にリスクが低い中で可能性をできる限り排 除するという措置でございますので、日本赤十字社の御回答のとおり、後から判明した からといって、回収をしなさい、伝えなさいという指示をする考え方はございません。 しかし、これが具体的なリスクということになりますと、要するにこれには間違いなく 病原体が混じっていましたというような具体的なものが出ましたら、当然のことながら 回収、破棄になるかと思います。これは可能性をできる限り低減するという措置でござ いますので、回収及び破棄には及ばないのではないかと考えます。 ○溝口部会長  よろしいですか。測定法がない時期の問題の取扱いですね。致し方ないのかなと思い ますが、どうですか。 ○大平委員  今のお話の可能性のところで安全性をかなり重視しますと、やはり混入が判明した時 点で通知するというのではかなり遅いと思いますので、それ以前に状況としてどういう 把握をしているかというのは刻々ときちんと調査していただいて、そのリスクの範囲を きちんと提示していただきたいと思います。ですから、今どの程度の危険度があるかと いう、全体として汚染される危険度が高いのかどうかというところは、やはり情報とし て早く開示していただきたいと思います。  それからまた、先ほどのカナダのBSE対策の問題でまず的確な判断をしていただく ということで、情報をもう少し早く仕入れていただいて、そして培地で使っていたとい うところと、それがマスターセルで使っているのかどうかとか、リコネイトとノボセブ ンとの取扱いというのは、多分少し違うのではないかと思うのです。市場占有というの でしょうか、代替製剤の可能性としての問題と代替製剤が見付からない製剤についての 取扱いの問題では、若干違うところがあるのではないかということ。やはりもう少し早 く情報をきちんと取っていただいて、メーカー側からきちんと安全情報を取っていただ きたいと思います。 ○溝口部会長  よろしいですか。ほかにどなたか…。アッセイ系が確立すれば一歩進めるのですが、 今の段階ではちょっともどかしいのですが、こういう措置しかないのではないか。大事 なことは早め早めに情報を提供して、今後設置される運営委員会などでそれが検討され るのが望ましいのではないかと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。それで はTSE対策に係る採血制限の対応につきまして、事務局よろしくお願いいたします。  次に保存前白血球除去について、事務局から御説明願いたいと思います。 ○事務局  それではお手元の資料B-2に基づきまして、御説明させていただきたいと思います。 まず1ページを御覧いただきたいのですが、「保存前白血球除去の必要性等について」 を御説明させていただきます。現在、輸血ということで輸血療法がかなり幅広く行われ ているわけでございますけれども、この輸血用血液に含まれている白血球に起因する有 害事象といたしまして、まず患者に及ぼす副作用としまして、非溶血性発熱反応、抗H LA抗体の産生、また非常に重篤な結果を招く輸血関連急性肺障害、こちらの場合は対 処が遅れますと患者の死亡につながるということで、学会等においても死亡例の報告が なされております。それから輸血に関連いたしますGVHD、免疫修飾、また感染症の 問題についてもサイトメガロウイルス等のウイルス、細菌についてはエルシニア等、こ ういったものの感染リスクがどうしても高くなってしまうといったことが知られており ます。また、単に輸血による副作用という問題以外に、いわゆる輸血用血液製剤の品質 に関しましても、混入している白血球によって凝血塊を造る、あるいは溶血性の反応が 起こるということで、現在この輸血用製剤においては混入する白血球数は少なければ少 ないほどいいということでございます。したがいまして、こういう状況を受け現在諸外 国におきましては、フランスにおいては赤血球製剤、血小板製剤、またFFPについて も100%の白血球除去が行われております。英国、イタリア、ドイツ、カナダ、米国に おける状況は表に示すとおりでございますが、基本的に現在欧米諸国においては保存前 白血球除去が制度としてほぼ行われているという状況にございます。  現在の我が国における白血球除去の導入に関する検討経緯については、次のページを 御覧いただきたいと思います。「血液事業部会等における検討」でございますが、平成 11年6月28日、当時は「血液製剤特別部会」と申しておりましたけれども、こちらにお きまして保存前の白血球除去フィルターの導入を進めていくべきであるということで、 既に御結論を頂いたところでございます。この部会の結論を受けまして、白血球除去に 関する小委員会を設置するとともに、安全技術調査会において縷々この検討を続けてい ただいたところでございます。平成15年7月23日に4ページにございます「保存前白血 球除去の基準について(意見)」ということで、安全技術調査会より意見書が提出されて おります。これはすべての輸血用血液製剤について保存前白血球除去を行うこととす る、白血球除去の基準は当該一バッグ一製剤当たり白血球数1×106個以下とすること が適当である。さらに原料血漿についても、混入する白血球数を低減させることが適当 であるといった御意見でございます。  こちらの方がこの部会等における検討経緯でございますが、これに併せて厚生労働省 においても、まず「白血球除去に関する経済的効果に関する検討」といたしまして、輸 血関係情報研究事業の方で実施をしてきたところでございます。また厚生労働科学研究 におきましても、「血液白血球除去技術の臨床評価:前方視野的検討」ということで、 平成13年度から3年間の事業で現在検討を行っている状況でございます。また、こうい った白血球除去を導入した場合に、多少血小板製剤の方で小分けの単位の製剤に影響が 出るのではないかということが言われておりまして、これについては日本未熟児新生児 学会の方へ照会をするなどいたしまして、現場への影響の度合いを調査等していたとこ ろでございます。  関係機関からの情報収集等につきまして、まず日本赤十字社に対しましては、保存前 白血球除去導入に関する検討の申入れを平成14年3月に行っております。また昨年5月 9日には、白血球除去フィルターを組み込んだ採血キットを用いずに成分採血装置の性 能のみで白血球数を低減化できる装置の整備についての検討を申し入れたところでござ います。それから、先ほど御紹介いたしました平成15年4月23日の調査会の意見を受け まして、実際にこの意見書に基づき今後の白血球導入スケジュールについて意見照会を 行ったところでございます。また、この白血球除去を実際にやるとなりますと、様々な 機器等が必要になってまいります。これは後ろの方にデータを付けておりますが、日本 赤十字社の方からの回答におきましても、いろいろと関連する業者、機器に関して情報 収集をしていただきたいといったような形の回答が来ておりますので、この5月27日に 関係業者、これはフィルターのメーカー、あるいは測定機器の業者等に対しまして現在 ヒアリングを行い、意見の提出を求めているという状況にございます。  2枚めくっていただきまして、5ページが4月23日の調査会の意見を踏まえた上での 日赤に対する意見照会の通知。また6ページ以降には、この意見書に対する日赤側から の回答を添付させていただきました。時間の都合上細かい説明の方は割愛させていただ きますが、御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○溝口部会長  ありがとうございました。ただいまの事務局の御説明について、御意見、御質問ござ いますでしょうか。どうぞ、櫻井委員。 ○櫻井委員  教えてほしいのですが、まず今の資料4ぺージの意見のところですけれども、ここに 「すべての輸血用血液製剤について保存前白血球除去を行うこととする」という文章 と、もう一つ、「白血球除去の基準は…」という文章と、「さらに、原料血漿について も…」という三つの文章がここに入っているのですが、これは「さらに」以降は全然別 の文章といいますか、どこがどこにかかっているかという三つの文章の関連を教えてく ださい。 ○血液対策課長  お答えいたします。まず三つの文章それぞれが基本的には独立しておりまして、一つ 目の結論として、輸血用血液製剤、赤血球製剤、血小板製剤、FFPについて保存前白 血球除去を行いますと。これがまず一つの結論として調査会から出まして、白血球除去 というのはゼロにせよというのではなくて、ある水準以下にせよという目安を示さない と除去にならないので、最初の文章を受けましてその除去の基準は1×106個以下とす るのが適当であるという御意見です。ですから、最初の文章の付随的文章として二番目 の文章がございます。三番目の文章は全く切り離されまして、輸血用製剤について議論 しておりますけれども、原料血漿の方も白血球除去は必要かどうかということは議論と してありましたので、これは少なければ少ないほどいいでしょうという考え方を述べた だけで、ここには何個以下にしなさいという基準はつながらないということになりま す。 ○溝口部会長  どうぞ、櫻井委員。 ○櫻井委員  今の文章は分かります。そうしますと、同じ資料の1ぺージに白血球による副作用の ことが書いてあって、(1)と(2)で患者に及ぼす影響と保存する血液そのものに対する 副作用が書いてあります。そこで一つの質問は、ここに書いてある副作用がどのくらい の頻度で起きているか分かっていたら教えていただきたい。恐らくそれは輸血用血液製 剤についての副作用なのかなという気もするのですが、原料血漿の問題としても、この 副作用がどのくらいの頻度で起きているか分かっているのだったら教えてください。 (2)は原料にしてしまえば関係ないでしょうから、患者に及ぼす影響になると思うので すが。つまり、原料血漿についても混入する白血球を低減させた方がいいのだという根 拠がどこかにあったらそれを教えてください。 ○溝口部会長  事務局、どうぞお願いします。 ○血液対策課長  原料血漿に関してはエビデンスがほとんどございません。ここにあります副作用は文 献的には…、頻度が分かるものについては後ほど事務局の方から発表させますが、いず れも文献的には輸血用製剤で起きた副作用の報告がされているものでございます。ただ 中には、TRALIに関しては免疫グロブリン製剤で出たという報告が症例報告レベルでご ざいますので、TRALIの発生機序は今確実に解明されたわけではありませんけれども、 発生機序的にはそれは起こり得るのかなというところはございます。  ただもう一つは、これもエビデンスがほとんどありませんが、白血球の中にこれらに ある感染症の原因菌が取り込まれるという傾向がありまして、その取り込まれるものの 中にプリオン等も取り込まれ得ると。これらの細菌、ウイルス等は取り込まれても不活 化されるということで、基本的には原料血漿に混じったとしてもその危険性は排除され るのですが、まだ不活化の技術が確立していないものについては、理論的にはあり得る ということになります。 ○溝口部会長  よろしゅうございますか。 ○櫻井委員  そうすると、先ほどの4ぺージの意見というところの文章については、前半の二つは くっついていて除去しろと。輸血用製剤についてははっきり副作用のエビデンスがあっ て数字も出ているので除去が妥当であり、かつこれ以下にした方がいいということを述 べて、その次の原料血漿については、はっきりした証拠はないけれども少ない方がいい だろうと考えてよろしいですか。 ○血液対策課長  そのとおりでございます。 ○櫻井委員  分かりました。 ○溝口部会長  ほかに…、副作用発生の頻度についてはどうですか。 ○事務局  白血球除去に関しまして、例えば非溶血性発熱反応、こちらの方は報告者により多少 数値のばらつきがございますが、人によっては1%前後、また多いところでは保存前の 場合に10%という報告もございまして、報告者により意外とばらつきがございますけれ ども、そういった一定の副作用が発生しているということ。それからTRALIについては、 輸血学会の方では4年間追跡をした場合に確実に2例の死亡例を見たということを、さ きの安全技術調査会の方で参考人として来た際に報告されております。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。どうぞ、比留間委員。 ○比留間委員  今の副作用の防止に関することですが、事務局がおっしゃったとおりだと思うのです けれども、保存前白血球除去をするのは赤血球製剤、全血製剤、血小板製剤、それと新 鮮凍結血漿ということで、この効果がどのくらいだったかというのは随分はっきりしな いままであったとは思うのです。しかし、フランスの方でいわゆるヘモビジランスとい うのが数年前から始まって、その間に保存前白血球除去が導入されたものですので、保 存前白血球除去前後の副作用がどのくらい起こったかというデータがかなりnの多い形 で出たと。先ほど事務局がおっしゃった数字は多分そこからだと思うのですが、それを 見ますと発熱反応は32.9%ぐらいあったということです。それが保存前白血球除去が導 入されることで25.8%に減っていると。多分今お手元にお配りしているのだろうと思い ますが、そのように発熱反応が32.9%から25.8%に減っているとか、それから感染症な どが保存前白血球除去で3分の1ぐらいに減っているということで、やっとかなりのエ ビデンスが保存前白血球除去で出てきたのではないかと思います。ですから、やはり患 者さんにとって非常に有効な安全対策ではないかと私は思います。  それからもう一点、櫻井先生がおっしゃった原料血漿の件ですが、私も安全技術調査 会の委員で議論に参加してきた者として言わせていただきます。先ほど血液対策課長が おっしゃっていたとおりでありまして、プリオンに対する予防策として、現在エビデン スはないけれども、恐らく現場にそれほど影響を与えないでできるだけのことをしよう という範囲で、原料血漿も低減化した方がいいだろうという結論ではないかと思いま す。ただ、これは実際に考えますと、例えば新鮮凍結血漿を白血球除去しようと考えた 場合には、今日赤で採った全血をフィルターにかけて、その後FFPと赤血球MAPに しますので、そのときの血漿を原料血漿に使えば自動的に白血球除去原料血漿になって しまうのです。そうなると何が白血球除去できないかとなると、もう少したくさんの部 分をフェレーシスで採る血漿に関しては、今の機械では原料血漿に回る部分が白血球除 去できないという問題があると思います。しかし、それは基本的に白血球除去しなくて もいいということになるのではないかと思います。そういうことで、きちんと輸血用血 液製剤の白血球除去を導入すれば、原料血漿もすべてこの基準を満たすとは言わないま でも、低減化がなされると理解していいのではないかと思いますので、現実的には輸血 用血液製剤を保存前白血球除去すれば、この基準は現実的にほとんど可能ではないかと 考えております。ちょっと補足させていただきました。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。池田委員、どうぞ。 ○池田委員  この保存前白血球除去の検討については、かなり前から輸血学会あるいは専門会議等 でもコンセンサスが得られているし、国際的にもそういう方向になっていると思うので す。実は私はこの時期に出てきたのがむしろ遅いぐらいだと思っております。赤十字の 方々が日本の輸血用血液の安全性のために非常に努力されているというのは、私どもも よく理解をしておりまして敬意を表していますが、この回答を見ますとそれについて進 めていこうというより、むしろ問題点を列挙することに終始しているような気がして、 私は全体を見て日本における輸血用血液の取組がもう少し早く進んでもいいのではない かなという印象をむしろ持ったわけで、是非早い時期にこの基準を策定していただい て、進めていただきたいと私個人は思いました。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。何かほかに御意見ございますか。どうぞ、三星委 員。 ○三星委員  技術的な面については、今の諸先生方のお話どおりでどんどん進めていただければい いし、大変必要なことのように思うのですが、資料の6ぺージ以降にそれに対する日赤 からの回答の文書が入っていますね。ところが、この中に低減化をするに当たっては費 用がかなり掛かるように書いてありますね。ずっと合計しないと分かりませんが、何百 億か掛かるのではないかと思いますけれども、これはやらないわけにはいかないわけで すから、それに関しては国の予算から早く出していただけるようなことになるのだと思 うのですが、その辺のところをお願いしたいと思います。また、採血に当たっては6時 間、時間がいわゆる個人に掛かりますので、採血後6時間以内に原料血液を製造所に持 って帰れない移動採血車が出たりすることがあると思いますが、この辺のところの影響 や、離島や遠隔地への問題などいろいろな問題が出てくるはずでございます。その辺の ところは、はっきりとした指示をしていただいた方がよろしいのではなかろうかと思い ますので、ひとつよろしくお願いいたします。 ○溝口部会長  事務局から、どうぞ。 ○血液対策課長  具体的な白血球除去進捗のための対応については、当然のことながら製造業者である ところの日本赤十字社と私どもで、綿密に話し合いながら進めさせていただきたく思っ ております。その中で全く不可能なことをやっていただくというチョイスはないかと思 います。経費については、新しい血液法の中にも、また薬事法の体系の中でもそうです が、安全性の向上は製造業者の責務であるというのが基本としてございますので、その 中で経費の負担等については考えていきたく思っております。 ○溝口部会長  どうもありがとうございます。何回か前の薬事食品衛生審議会で、ノンメディカルな 方がイギリスではどういう方の血液を使っているのでしょうかと、みんなが非常に疑問 に思っていたことを質問されたのですが、課長がイギリス人の血液を使っていると答え ました。一つ抜けていたのは、日本と違って白血球除去してあるということだったの で、真実の答えではあるけれども、その辺がちょっと違う点があるなとあのとき聞いて いて思っておりました。そういった点では一歩進んだように私は思いますが、いかがで しょうか。どうぞ。 ○大平委員  やはり技術などがいろいろ進んでいく中で、血液のクオリティーというものを高めて いくということは大切なことだろうと思うのです。ですから、そういった点での輸血用 血液の白血球除去というのはちょっと遅いのかなと感じましたが、それは進めていただ くということ。ただ、ここで日赤からも出ていますように、いろいろな取組、新たな取 組も…、例えば原料血漿について保存前白血球低減化の導入を進めると。これは国際的 に一番早い導入になるのかもしれません。そういう試みというのはどんどんやっていっ ていただければ一番いいかなと思います。それと研究的なバックアップ、その辺は日本 では採血と輸血用血液は日本赤十字社が独占して取り扱っているというところで、国と きちんと話し合って、患者、医療者の方たちがやはり戸惑わないような形で、いいもの をきちんと提供していただくようにしていただきたいと思います。 ○溝口部会長  ありがとうございます。どうぞ、中村委員。 ○中村委員  私も同じ意見です。先ほどの課長の御返事はかなり優等生的な御返事だったものです から、もう少し突っ込んでお伺いしたいのは、事業者がコストを負担するとなると、現 在でもかなり高コスト体質が更に高コストになるのではないかという懸念があります。 その辺を国が支援をするというお考えがあるのかどうかということを確認してたい。そ れから、単に日本赤十字社だけに任せておくと、早く導入しなければならないものにか なり時間が掛かってしまうのではないかということ。かなり時間が掛かりますよという ことは回答に書かれておりますので、そういう懸念がないのかどうかということです。 それから第三点は、1ぺージにイタリアとアメリカでしたか、白血球除去が必ずしも 100%ではないとありますね。これはコスト上の問題なのかあるいは体制の問題なのか、 設備の問題なのか、分かる範囲で教えていただきたい。それから諸外国はどういうコス ト負担になっているのか教えてください。 ○血液対策課長  諸外国については分からないことが多いのですが、基本的に100%が早く進んだ国と いうのは強くBSEを意識した国でございます。というのは、仮説ではありますが、や はりプリオンが白血球の中に集約されるのではないかということがありまして、予防的 措置として進んだという側面があるかと思いますので、BSE対策を強く意識した国が 早く進んでいるというのが現実ではなかろうかと。それに対してはそれなりのコストが 掛かっているというのは研究報告の中でも出ていますけれども、要するに「コスト」と いうのはフィルターのコストでございます。あとは労務のコストとかいろいろあります が、主たるコストはフィルターのコストでありまして、現実に100%化が進んだところ は大量生産のメリットでコストが非常に低減しております。ですから、現在のベースで コストを計算しますとかなり大きな額になりますけれども、現実に100%普及した場合 を想定しますと、コスト的にはかなり低減化するのではないかということが一つ。  それから、日本赤十字社の血液事業を動かすためのトータルコストが当然傾いてはい けないわけで、これは今製造供給体制の在り方検討会と別の検討会で進めております検 討の中で、大きな枠組みで考えていくべきものであろうかと思います。原料血漿のコス ト、輸血用製剤のコスト、各論ではなく全体のコストをトータルして…、もちろん高コ スト体質は改めていただかなければいけませんし、全体のコストの中で損得なく、また 開発の再投資や安全性の投資に回すだけのコストも生むという形で、血液事業全体、日 本赤十字社が行う採血事業全体がうまく回るような形で経営というのは見なければいけ ないと思いますので、この製剤のみに着目してコストを単純にオンするというレベルの 話ではないかと思います。そういう意味でこれはコスト負担、その他に関しては考える べきことは非常にたくさんありますけれども、これは別の検討会等も通じて検討を進め ていくものではないかと思っております。 ○溝口部会長  よろしゅうございますか。池田委員、どうぞ。 ○池田委員  もう一つお話ししますと、今白血球除去というのは各医療施設で個々にフィルター等 をやっています。これはかなりばらつきがあるのです。同じフィルターを使っていても やり方その他で白血球除去の効率が結構変わっていたりしますので、やはりこれは輸血 の安全性という面から考えると、保存前に一定の基準で方法も同一にしてやっていくと いうのは、国家事業というか、血液事業の在り方ではないかと私は思っております。そ れだけちょっと追加します。 ○溝口部会長  比留間委員、どうぞ。 ○比留間委員  池田委員がおっしゃったことに追加のような感じですが、もう一点。日赤の優秀なフ ェレーシスマシーンで採った血小板というのは、実はもう既に1×106以下でできてい るのです。ところが、それが保存前白血球除去製剤として売り出されていないものです から、病院ではそれをまたフィルターをかけているということです。このフィルターの 全く無駄なコスト代というのは、恐らく年間数十億円になるだろうと思います。この無 駄な数十億円はここのところずっと放置されっぱなしになっているわけです。これを導 入することによって、そういった無駄も解消できるということは以外と知られていない ので、一言。フィルター会社に恨まれてしまうかもしれませんが、これは患者さんのた めと我が国の医療費の節減のためで、あえて大所高所で言わせていただきました。 ○溝口部会長  よろしゅうございますか。では安全技術調査会からのいわゆる提言について、お認め いただいたということでよろしゅうございますね。それではすべての輸血用血液製剤に ついて、1バッグ当たりの白血球数を1×106個以下とするよう生物学的製剤基準を改 正すべきことを、この基準を所管する医薬品第二部会に申し送ることにいたします。事 務局におきましては、白血球除去の実施に向けまして、輸血用血液製剤の製造業者であ る日本赤十字社と十分に調整を行っていただきたいと思います。また、実施のスケジュ ールあるいは進捗状況については、適宜この部会に御報告願いたいと思います。よろし くお願いいたします。  次にHTLV-1抗体検査の在り方について、御説明お願いいたします。 ○事務局  それでは資料B-3の「HTLV-1抗体検査の在り方について」を用いまして、御説明させ ていただきます。現在HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)は、まれに成人T細胞白血病 を起こすことが知られているレトロウイルスの一種でございまして、輸血による感染の おそれがあるということから、昭和61年9月に「献(供)血血液に対するAIDS及びA TL抗体検査の実施について」、及び平成11年3月の「HTLV-1抗体検査陽性献血者に対 する結果通知及び相談事業について」といったことで、現在国内で採血されましたすべ ての血液に対して抗体検査を行うよう指導しているところでございます。  一方、血漿分画製剤の原料血漿については、現在輸入されるものについて抗体検査を 要しないと。言ってみますと、国内の血液と国外から入ってくる血液の原料血漿の部分 については二重の基準がありまして、ある意味国内の血液に対しては上乗せ的な抗体検 査を求めている状況にございます。  今般薬事法の改正、生物由来原料基準の制定に伴いまして、お手元の資料の3ページ を御覧いただきたいのですが、日本赤十字社より本年1月8日付けで国内献血による血 漿分画製剤の原料として用いる血液にHTLV-1の血清学的検査を求めるものでないのであ ればこの通知を廃止して、この「HTLV-1抗体陽性血液の血漿分画製剤製造への使用禁止 について」を廃止していただきたいということ。また、国内の献(供)血血液を原料とす る場合に求められている抗体検査を行うことと、陰性のもののみを使用する規定につい て廃止していただきたいといった形の要請がございました。審議の結果、この生物由来 原料血漿の基準においては、抗体検査を要しないという形になったわけでございまし て、現在上乗せ的に行われている部分についてどうすべきかということを、安全技術調 査会の方で御検討いただいたということでございます。  結論を申し上げますと、安全技術調査会の方からは現在行われているものを廃止する 理由はないということで、現状のままでいいのではないかという結論が得られたところ でございます。理由といたしましては、このHTLV-1については主に白血球の一種である T細胞により感染するということが知られているわけでございますけれども、現在国内 で採血された血液に由来する原料血漿は、先ほどお話しいただきましたとおり、現在制 度として白血球除去を行っていない状況でございますので、そういったものが諸外国に 比べて多く含まれているということ。また、御存じのとおり我が国においてはHTLV-1陽 性者の数が他国と比べて高いということ。こういったことを踏まえまして、現状におい ては上乗せ的な部分について廃止する理由はないだろうということでございます。した がいまして、今後もこの原料血漿に係る白血球除去の実施状況、あるいはHTLV-1に係る 知見の集積を図りつつ、引き続きこの抗体検査の在り方を検討するということでござい ます。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。ただいまの御説明に対して、御意見、御質問ござい ますでしょうか。花井委員、どうぞ。 ○花井委員  ちょっと分からないのですが、先ほど白血球除去のところで、原料血漿に関してはレ ギュレーションとしないと。輸血用血液製剤で普通採血したものを血漿に回す分につい ては事実上できていると。フェレーシスについては基準化はしないのですが、先ほどの 日赤の資料を見ると、国が同時にできる機械を導入すればいいということで、なるべく できるような形でやっていらっしゃるようなのですが、輸入用血漿に関しては白血球除 去がされているかどうか確認されているのかというのが一点。つまり前ページに戻って (1)の海外から輸入している原料血漿については白血球が少ないということは確認され ているのかどうかということ。  それから、陽性者が他国より高いということの意味ですが、HTLV-1ですので日本でも 地域差もあるし、それから海外においても例えばオーストラリアの一部であるとか、 HTLV-1の陽性率が高い地域があるわけですね。というと、他国に比べて高いからこれは 必要だということは、そういう意味ではサイエンスとしては余りにも大ざっぱな論理で はないかと思うわけです。もしHTLV-1のリスクを日本で考えるのであれば、リスクの高 い地域というのはやはり世界でもあるわけで、今事実上はアメリカとヨーロッパからし か入っていないということがあるかもしれませんが、その辺のことはもう少し精密に議 論しないと、今までやってきたからこのままやっていればいいという議論ではちょっと まずいのではないかなという気はしますが、その辺はいかがでしょうか。 ○溝口部会長  いかがですか、事務局。 ○血液対策課長  まず前段の、諸外国から入ってきているものの白血球数はどうなっているかというの は、実は基準に定めていませんので分かりません。ですから、少ないと言い切ることは できませんが、先ほどの白血球除去を導入している国、又はフェレーシスの機械の新し い機械への置き換えが進んでいるとか、いろいろなことを加味した類推はできるかと思 いますが、他国の方が白血球が少ないというエビデンスは基準にない以上、抑えられて おりません。今現在少なくても明日多いものが入ってくることはあり得る話ですので、 そこのところは根拠の乏しい説明となっております。おわびいたします。  もう一つ、日本において非常に陽性率が高いのでどうかというところですが、まず現 在原料血漿が入っているのは陽性率の低い国からですので、歴然とした陽性率の差はあ るかと思います。陽性率が高い低いですけれども、血漿分画製剤の不活化というのはウ イルスの数をゼロにするのではなくて、10の何乗という形で十分低減されるだろうとい うことが、少なくともHTLV-1に関しては文献的にはいろいろ出ております。ただ、海外 文献です。十分低減されるのでリスクはゼロであろうということが文献的には言われて おりますが、絶対量が多い日本の血漿にありましては、低減されたからといってゼロで あるとは限らないという仮説は成り立つかと思います。日本においてこの通知を廃止す るのに、そこのところが今一つエビデンスがないというところで、安全技術調査会とし てはやはり不活化が進んで低減されるとはいっても量的に多いので、まだもう少し検討 が必要ではないかということでこの結論に至っています。 ○溝口部会長  ほかにどなたか…。どうぞ、大平委員。 ○大平委員  ちょっと理解しにくいところがあって、採血の段階で白血球除去が進んでいく中で は、このHTLV-1の検査の問題というのは将来的には必要がなくなっていくのでしょう か。私も素人なのでちょっとそこのところはよく分かりません。それからフェレーシ ス、原料血漿も含めて白血球除去が進んでいけば、日本ではこの検査自体が必要ないの かどうか。あとは、外国とのダブルスタンダードの問題ということが、今花井委員が言 われたように、米国でも少ないとは言えない地域もありますし、そこは最近いろいろと 出ていると思います。そういった面で、原料血漿で不活化されているからいいのだとい うことになると、そこの説得力が少しないのかなということがあるのですが、私たち患 者から見ればきちんと検査していただいて、それこそ国内も国外もきちんと検査してい ただくという証明ができていることが一番ふさわしいのですが、その辺をちょっと御説 明いただければと思います。 ○溝口部会長  いかがですか。 ○血液対策課長  安全技術調査会の前に医薬品第二部会の方でこの議論は一度なされたわけですが、そ ちらの方の議論では、凍結をした時点でもう活性がなくなって感染力がなくなっている であろうと、そのエビデンスはこれですと。かつ、不活化工程があるので、もうリスク はゼロであろうと。それがあるので製剤基準からは省いたという経緯があります。その 流れからしますと、通知で更に上乗せの規制をしているというのは、どちらかというと この規制は外してもいいのではないかという意見が大勢でございました。そのような中 で安全技術調査会を開きましたところ、先ほど私が言いましたような意見が出まして、 まだ時期尚早であるということで、この通知はまだ生かしておいた方がいいのではない かという意見が出ました。そういうわけでダブルスタンダードの状態は解消されていな いのですが、流れとしては今後エビデンスが積み重なり、かつ白血球数が少なくなっ て、かつ献血者の中でのHTLV-1の陽性者の率が十分低くなって、海外の原料血漿と何ら 変わらない状況になりましたら、ダブルスタンダードであること自体をもう一度見直さ なければいけない事態になるかと思います。ただ、あくまでもエビデンスに基づいて判 断しなければいけないと思いますので、エビデンスに基づいて判断をするには国内血に 関してはまだ情報が不足していたので、過剰規制かもしれませんが、今までの規制を続 けるという判断を安全技術調査会の方でされたということです。 ○溝口部会長  事態は流動的でありますし、今の白血球除去のこともこれから決定されていくわけで すから、それを見てということでもいいかなという気がします。ですから、結局将来的 には運営委員会でしょっちゅう議論されることになるのではないかと思いますので、そ れでよろしゅうございますでしょうか。どうぞ、比留間委員。 ○比留間委員  原料血漿の白血球除去の現状について、もう少し調査すれば分かるのではないかとい う気がするのです。と申しますのは、恐らく海外の原料血漿メーカーの多くはアフェレ ーシスマシーンで採っていると思うのですが、アフェレーシスマシーンの中でバクスタ ー社のオートフェレシスCでしたか、それで採ると膜型なのでほとんど白血球は入って いないはずなのです。多分このバクスター社のシェアというのは結構大きいのではない かと思うので、そう考えると現実的には海外由来の原料血漿はかなり白血球除去がされ ているのではないかと。少なくともフランスなどでは実際に国家規模として原料血漿か ら白血球除去しようという動きはあったと思います。そういう論文があったので、今や っているのではないかと思います。それをやったからHTLV-1が本当に安全になるか、あ るいはやらなくてももともと安全かという議論はまた別物として、原料血漿の白血球除 去の率に関しては、もう少し調査されたら分かるのではないかなと思いまして…、ちょ っと意見だけですが。 ○溝口部会長  そういうことも含めて今後検討するということで、よろしゅうございますか。どう ぞ。 ○小幡委員  ダブルスタンダードの問題は、やはりもし日本人に多いというだけの理由だとなかな か難しいかなと思うのですが、大体リスクはないだろういうことで、むしろ非常に上乗 せであるという理解しか多分できないのではないかなと思います。この結果通知の話で すけれども、陽性献血者に対する結果通知というのは、これを希望者にすることによっ てこの方々がこれ以降献血なさらない可能性があるということでされているということ ですね。それについてちょっと伺いたいのですが、結果通知の希望者というのは、もし HTLV-1抗体陽性であれば通知を希望しますかという欄に事前に○を付けた方ということ ですか。 ○血液対策課長  そのとおりでございます。前段の趣旨もそのとおりでございまして、「陽性」と言わ れた方は次回からは遠慮していただくという趣旨で、結果通知という制度でやっており ます。また、これは一応リスクは低いとはいえ、陽性と言われた方は白血病のリスクが あるということですので、インフォームド・コンセント体制が十分ではない中で、結果 通知を安易にやるわけにもいきませんので、希望者のみという形になっているのが現状 でございます。 ○小幡委員  個別にやっているかということを伺いたかったのですが。 ○血液対策課長  はい、個別です。 ○溝口部会長  我々医師の側から言うと、自分だけ知っていることをその人に伝えないというのは非 常に悪いなと思ったのですが、この議論では医療行為ではなくてただの検査であるとい うことで、希望者にだけ伝えるということになったといういきさつがあります。その方 がほかの方にうつす可能性もあるし、しかしその方が将来病気になる可能性を知ってお きながら知らせないということは、医師としてはちょっといけないことだと思うのです が、あのときの議論は医療行為ではないということで全員ではなくなったと理解してお ります。どうぞ。 ○橋委員  ダブルスタンダードということもございますけれども、日赤の幹部の一部の御意見で は、やはり外国由来のものと日本のものでは大分違うのではないかと。それを同様に扱 うのはおかしいという御意見もあるわけです。私自身は今の白血球除去の問題で言え ば、輸入されたものについて抜取り調査をして、それが実際にどうなっているかを義務 付けるということを、例えば国内献血に関して白血球除去由来の血漿分画製剤が出た暁 にはやっていいのではないかと思うのですが、そういうのはいかがですか。 ○溝口部会長  「献血由来」という記載や採取した国の記載も今度加わりますよね。それから採取し た国も、患者さんにとってはかなり大事な情報のように感じますが。それから、今先生 がおっしゃったように研究はできると思いますが、いかがでしょうか。 ○血液対策課長  抜取り調査というのはできるかと思いますが、それが制度として担保できているかと いうのは別問題で、例えば白血球基準を非常に厳しくした国がたくさん現れると、基準 のない国に白血球の多い原料が流れてくるという、国際的なマーケットの動きの中で血 漿が動きますので、日本国は少なくとも原料血漿に関する基準は設けておりません。で すから、抜取り検査をやって白血球数が少ないとしても、明日白血球数の多いものが流 れ込んでくるというのはあり得る話です。これに関しては、国際的に基準を定めている 国はまだないかと思います。この手の基準を定めるに当たっては十分なエビデンスがな いと、先ほどの原料血漿に白血球数がどれだけあるとどれだけの悪さをするというエビ デンスがないと、基準を定めて国際的に公言することはなかなかできません。ですか ら、エビデンスが出た暁には、何らかの基準を設けてこの数以下にしなさいという対応 を日本国としても対応を採らなければいけないかと思います。現時点ではまだそういう 基準を設けるという判断には至っておりません。 ○橋委員  今後は国内献血由来の血漿分画製剤に関しても、原料血漿の白血球混入の基準はでき るわけですよね。国内献血由来だと白血球除去したものから造って、大本ではこのくら いで、最終製品としてはこのくらいの混入率だと。それがバイオアベイラビリティがあ るかないかは別としてですね。ですから、もし徹底するのであれば国内献血由来のもの はこのくらいであると、外国のものはどのくらいなのですかと。そういう表示を求める というやり方は別におかしくないのではないかなと思うのですが。 ○溝口部会長  国内自給を目指すわけですから、やはり日本はより良いものを持っていないと、それ からきちんとそれが分かるようになるわけですから、今申し上げたように流動的なとこ ろがありますので、それは継続的に情報を得ながら運営委員会その他で検討して、部会 に上げていただくのがいいのではないかなと思います。よろしゅうございますか。それ ではそういうことで、これに関しましては安全技術調査会の御意見をお認めいただいた こととさせていただきます。この事項については、ただいまの御意見を十分念頭に置き まして、安全技術調査会で引き続き調査検討していただくとともに、その御意見をまた 運営委員会などに上げていただこうと思っております。  次に移らせていただきます。次はNATガイドラインの検討状況についてです。事務 局、よろしくお願いいたします。 ○事務局  資料B-4の「NATガイドラインの検討状況について」を御説明させていただきます。 御案内のとおり、現在NAT検査ということで日赤、その他において血液に関するNA T検査を実施していただきまして、ウインドウ期にあるウイルス等の検出に役立ってい るところでございます。ただ、現在行っているNAT検査については、NAT検査をせ よということではいろいろと規制があるわけでございますけれども、検査そのものの精 度管理という点については、実施者の方にお任せしているという現状にあるわけでござ います。したがいまして、検査の精度をいかに向上させていくか、また行われている検 査そのものの精度を担保していくかということで、このNATガイドラインを現在作成 しているところでございます。  そもそも小委員会を平成11年3月に設置いたしまして、1〜2ページにございますよ うに、現在専門家の御意見を踏まえつつ検討を進めてまいったところでございます。現 在の進捗状況でございますけれども、この4月に安全技術調査会の方で、3ページ以下 にございますようなガイドラインの骨子まで、委員の先生方に御了承いただいたところ でございます。引き続き安全技術調査会の方におきまして、この骨子に基づいてガイド ラインの作成を進めていきたいと考えているところでございます。 ○溝口部会長  引き続きまして、SARSの対応状況についても御説明願いたいと思います。 ○事務局  それでは資料B-5の「SARSへの対応状況について」ということで、現在輸血用血 液その他において私どもが採っております、SARS(重症急性呼吸器症候群)への対応 状況を御説明させていただきたいと思います。このSARSについては、現在輸血によ って新型のコロナウイルスが伝播したという明らかな証拠はございませんけれども、W HOの勧告においてSARSの患者においてウイルス血症が起こり得るということ。ま た、そういったウイルス血症の血液を輸血した場合に、感染のセオリティカルリスクが あるということが述べられているところでございます。そういったことから、血液事業 においても何らかの対応を採っていく必要があるものと認識しているところでございま す。  まず1ページを御覧いただきたいのですが、これは本年2月21日でございますけれど も、昨年の11月5日に開催されました本部会において、この時点ではまだSARSとい う疾患は私どもは全く想定していなかったわけでございますけれども、ウエストナイル 熱、あるいはその他、我が国におきまして流行はないのだけれども、一定の地域におい て流行している感染症に対して対応を採るという観点から、「輸入感染症対策に係る問 診の強化について」ということで行った措置でございます。  具体的には次のページを御覧いただきたいと思いますが、対象国といたしまして、日 本を除くすべての国から我が国に帰国された方々については、帰国後3週間の献血禁止 期間を設けるという措置を本年3月28日から実施しているという状況にございます。こ れはいろいろな感染症のいわゆる潜伏期を勘案した上で、本部会において御意見を頂い たものによって採った措置でございます。現在この措置を採っておりまして、このSA RSにおいても潜伏期間は約10日間と言われておりまして、そういった意味では水際的 に現在この通知において対応を採っていると。もちろんこの対象者の方については、自 覚症状、発熱等がない場合においても3週間といういわゆる検疫期間を設けてやってお ります。当然採血現場において発熱等のある方については、現在もそうですが、それ以 前より献血は御遠慮願っているという状況にあるわけでございます。これがSARSを 含む輸入感染症への一般的な対応でございます。  次の4ページを御覧いただきたいのですが、SARSに関して採った初めての措置で ございます。SARSに関しまして、4月4日付けで血液製剤の安全性の確認を現在行 っているところでございます。特に我が国では流行がございませんが、先ほど来何度か 議論になっておりますけれども、そういった採血地においてこのSARSが流行した場 合に、原料血漿という形で入ってくる可能性があると。そういったものを原料として製 造された分画製剤は大丈夫かということで、現在SARSの発生国で採血された血漿を 輸入して血液製剤を製造している業者、またそういったところの原料血漿を用いて製造 された製品を輸入している業者に対しまして、SARSに関する安全性の所見を提出す るようにということで、現在情報の報告を求めているところでございます。ちょっと時 間はたっておりますが、出されてきた情報については事務局の方で、例えばバリデーシ ョンデータについて追加のデータを求めたりということで、何度か追加の出し直しをさ せておりますので、現在そういったものが集まりつつある状況にございます。また情報 についてはしかるべき時期に安全技術調査会の方に御相談申し上げて、一定の結論を頂 きたいと考えているところでございます。  続きまして、8ページを御覧いただきたいと思います。これは5月20日付けで出しま した対策でございますが、一定の医療機関でSARSあるいはSARS疑いの患者さ ん、あるいは可能性例の患者さんに対する医療従事者への対応ということで、日本赤十 字社あてに出しました通知が8〜9ページ、また医療関係団体に出した通知が10〜11ペ ージでございます。こちらの方はいわゆる可能性例、疑い例に対しまして、直接の治療 に当たる医療従事者、これは例の台湾人医師の問題もございまして、ある意味医療従事 者という方々は業務上濃厚接触者という形になるわけでございますので、そういった方 々からの一定期間の献血を御遠慮いただくといったことで通知をしたものでございま す。また、SARSを疑った患者さんの問診の過程で、過去に献血を行っていたという 既往歴に医療関係者が気付いた場合は、そういった情報を最寄りの赤十字血液センター の方に適切に通知をしていただきたいということで求めた通知でございます。我が国の 場合、患者が比較的早い段階で医療機関の方に搬送されてくるという現状がございます ので、まず順序的に医療機関の方から安全対策として通知をしたものでございます。  続きまして、12ページを御覧いただきたいと思います。一方で医療従事者が対応をし た後での通知でございますけれども、実際に疑い例あるいは可能性例との接触者といっ た方々についても、都道府県の方において疫学調査を実施することになっております。 そういった調査の過程において献血歴を一定期間確認していただきまして、その期間内 に献血をしたという事実が判明した場合は、赤十字の血液センターの方にその旨を連絡 をしていただくということ。この情報を受けたセンターにおきましては、患者さんの結 果が判明するまでの間は、血液製剤の流通を止めていただくことをお願いしたものでご ざいます。こういったことで、現在このSARSに関しましては新型コロナウイルスと いうことで、なかなか性質その他不明な点も多いということで、措置についてはある程 度過剰な形になっているかなという気もいたしますけれども、当面ここに出しました通 知に基づいて安全対策を図っていきたいと考えているところでございます。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。ただいまの御報告に、何か御意見、御質問ございま すでしょうか。御報告でございますからよろしいかと思います。どうぞ。 ○大平委員  一点よろしいでしょうか。SARSもそうなのですが、ウエストナイルの方で、前の 部会でも感染症の専門の先生から、多分抗体検出か何かのキットを今開発中というお話 を伺ったと思います。やはりアメリカでも今年の夏に向けてかなり広範な感染の予測が 情報として出ていますので、血漿分画製剤の問題ではなくて、輸血の問題としては日本 でも大変重要な問題になるかと思いますので、もしキットとかそういうものが今開発さ れる段階でありましたら、やはり早めにそういうものが導入されるような形を採ってい ただければ安心だと思うのですが。 ○溝口部会長  事務局、どうぞ。 ○血液対策課長  まずアメリカの動きについては、当然のことながら注目しているところでございま す。情報も適宜得ようと思います。ただ、アメリカと我が国の違いは、アメリカは既に ウエストナイルウイルスというウイルスが土着化してしまった国であると。それに対し て、日本はまだ水際でせき止めている国であると。ですから、おのずと対応は異なるか と思いますので、一般論として申し上げます。まず血液を通じた感染があり得る病気、 ウイルス血症を起こす病気はすべてそうですが、数が非常に多うございます。ウエスト ナイルとよく似たものに日本脳炎、デング熱があります。それからウイルス血症を起こ して重篤に至るものにインフルエンザがあります。そのほかウイルス血症を起こす病気 というのはたくさんあるわけですが、これらすべてを検査するわけにはいかないので、 おのずと検査項目を選ばなければいけません。理由としては、検査をするのに検査用の 血液量の方が献血の血液量より多くなってもいけませんので、おのずと検査用の血液量 の制限の問題、それからコストの問題、公衆衛生的な意義の問題、いろいろなことを考 えて、たくさんある病気の中から検査すべき病気を選ばなければいけないという考え方 に立っております。  現在検査項目に入れておりますものは、考え方としては主たる感染ルートが血液であ るもの、それからウイルス血症の期間が長い、持続感染しているというような病気につ いて、日本の献血制度の中では感染症に関して検査を行っているというのが現状でござ います。そういう意味で、例えばSARS、ウエストナイルウイルスという新しい病気 が出てきて、当然のことながら検査方法は後ほど出てくるわけですが、それに対する対 応はやはりケース・バイ・ケースでじっくりと考えていかなければいけないものである かと思います。今後こういう新しい病気に対する導入を検討すべき検査項目について は、安全技術調査会又は運営委員会でじっくり検討して導入を決定していくべきもので あるというのが私どもの考え方でございます。 ○溝口部会長  よろしいですか。どうぞ、橋委員。 ○橋委員  12〜13ぺージに関しては、疑い例及び可能性例に接触した者についての供血液の確認 ということが書いてあるのですが、逆に8ぺージの方には医療従事者について注意する となっているのですね。例えば海外渡航歴から3週間という、その人に対する供血中止 というのでしょうか、猶予をするわけですが、かなりの感染力があるという話ですの で、私としては、同居家族などある程度の接触者に関しても、問診の際に確認してもら ってやめていただいた方がいいのではないかと思うのですが。これでは一応同居家族に ついては触れていないですね。結構商社マンか何かで中国から帰ってきて、その商社の 指示で会社に広がっては困るというので自宅待機にさせるらしいのです。その自宅待機 の間には、その御家族はかなり濃密に接触するわけですから。そういうSARSの疑い 例が出て、その御家族が献血していたらどうするかという話なのですが、もし可能だっ たらSARSの可能性が普通の方より多いかもしれないと、その人と同居している人に ついてもどうするかと。それをはっきりさせた方がいいのではないかと思うのですが。 まだSARSの全容が分からないので、相当ひどいことになるかもしれません。 ○溝口部会長  なかなか難しいですね。仮定の話がたくさんあるので分からないですね。我々は急性 感染症だと思っているわけですよね。今課長がおっしゃったように、キャリアのように 無症状で菌を排出している人がいるということになると、事態はまた別だと思うので す。これはもう少し様子を見ないと分からないのではないですか。一応今はSevere Acute Respiratory Syndromeですから、急性という気持ちを医師はみんな持っていま す。 ○血液対策課長  これは疫学調査の方にも絡むのですが、私どもは通知を出すのは非常に簡単なのです が、通知を受けた側はそれの広がりで調査する対象人口が非常に増えたりなど、非常に 影響力が大きいものですから、やはりある程度のエビデンスをにらみながらこういう通 知を出してございます。SARSの感染力はニュース上は非常な広がりを見せておりま すが、エビデンスとしてはかなりの濃厚接触でないと感染しない。それから、血中でウ イルスが増える時期というのは、潜伏期間中はほとんど増えずに、発症してからグッと 増えるようだとか、感染力が大きくなるのは熱が出た後であるとか、これに付随するエ ビデンスがいろいろございまして、その辺をにらみながら、また疫学調査なり、赤十字 社の問診の方の労力なり、そういうものを総合的に勘案して、こういう接触者の範囲と かハイリスク者の範囲をそれなりに行政的に考えて出した通知でございます。ですか ら、更に拡大して考えるというのは予防的措置としてはあり得るのですが、実際にそれ を実行に移すとなりますと、やはりその辺の現場の人たちの労力を考えながらやらなけ ればいけないのではないかと思います。こういう通知は適宜改正いたしますので、もう 少し流行の状況を見て判断していきたいと思っております。 ○溝口部会長  LANCETにBarry Bloomという元のNIHの人が書いていましたが、HIVウイルスの 同定には2年掛かったけれども、コロナウイルスは2週間でできたと。この国際協力と 技術的進歩は大きいものであるということで、このように測定法ができると、今課長が おっしゃったようなことが全部分かってくると思うのです。それはやはり流動的です し、一応今は急性感染症として対応すればいいのではないかと私は思っておりますが、 先生はどうですか。 ○倉田委員  今ほとんど出ていると思うのですが、きちんとしたアッセイ系にまだ問題があると。 特に早期のPCRの問題ですね。時間がたってしまった後も抗体では非常にきれいに測 定できます。これはいいのですが、一番最初の、特に今血液の問題にかかってくるとこ ろではPCRで遺伝子を見付けると、これが非常に安定しにくいという問題がありま す。検体にもよると思いますが。それから分離されたウイルスは、これは少し前に起こ ったバイオテロの問題、いろいろ警戒されていることもあって非常に厳重な扱いになっ ていて、世界中どこでも使える格好になっていません。また、分離されている率が非常 に限られています。そういうことで、今課長がおっしゃったようにエビデンスが余りに も少な過ぎる。何が少ないか、患者があれだけ出ているのに。先週の29日の段階で750 人が死亡して、8,250人の患者が出ているという数字になっております。いつからいつ までウイルス血症が起きているのか、これはエビデンスが全くありません。それからキ ャリアの問題も、例えば治った後1週間してピンピンした後に尿の中にウイルスがいた と。これは結果論ですが、ではそれがいつまでキャリアとしてあるかというのは全く個 別の話であって、全体の1,000人の患者の中で測定したときにこういう事実があるとい うことになっていないのです。国によっても大きく異なります。  それからもう一つ、この感染には二つあります。一つは、医療関係者がなぜ感染する か。非常に細かな事実がないので我々専門家としても不思議だったのですが、その現場 で細かく見た人の論文が最近出始めました。これは非常にはっきりしていまして、医療 関係者はごく近いところでネブライザーとかベンチレーターそのほかで呼吸管理をしま すが、そのときの汚染です。あれは非常に濃厚なものが飛び出してきます。それが完全 なマスクの装置ができていないとか…、もっともそれをやるには、例えばレベル4の病 原体を扱う病院の施設の中で、宇宙服を着たようなレベルのことをやれば多分パーフェ クトですが、今のマスクをする程度ではいろいろな問題が起きるのではないかというこ とが推測されます。そういう一方的に空気が供給されるような装置を頭に付けてしまえ ば、医療関係者への感染というのも減るだろうと思われます。もう一つは、香港で起こ ったように尿を含めた糞便からの感染というのが、要するにトイレのノブであるとか、 便座であるとか、非常に激しい下痢を起こしている場合にはそういうところからの感染 というのが現実に起こったことが分かっています。ですから、院内感染として医療従事 者が感染するという話と、もう一つの家庭の中あるいはホテル等で感染した話はちょっ と違うのです。  もう一つは、私が患者で熱があってどんどん排出しているときに、私の目の前にいて 私のつばを浴びる人は感染するチャンスがありますが、遠くにいる人が感染するチャン スはほとんどないと。要するに、飛沫及びエアゾールで感染する率は極めて近い範囲に いる人だけだということも大体調査で分かってきています。今の8,000人に関する調査 が多分あと1、2か月するとかなり綿密に出てくると思います。そうしますと、今の問 題は非常に明快に分かり、そうしたら患者と接触のあった人、あるいは家族との…、そ の人が帰国して感染したかどうかは分からないけれども、どの範囲まで注意すればその 問題は消えるかということが分かってくると思います。今はこういう措置は仕方がない と思いますし、1例でも血液関係からそういうトラブルが起きることを防ぐにはそれし かないだろうと思います。 ○溝口部会長  結論みたいなお話でしたが、そういうことでまだ流動的なので、継続的に検討してい ただきたいと思います。  時間があと30分しかありませんが、四つ議題が残っておりまして、次の議題に移らせ ていただきます。次は運営委員会の設置についてですが、昨年度第1回血液事業部会で 設置を御了承いただきましたが、運営委員会の詳細について、事務局から御説明願いた いと思います。 ○事務局  資料Cに沿って御説明いたします。まず4ページのところに「新しい審議会構成」と いう図がございますが、これは前にも御説明した資料でございますけれども、薬事・食 品衛生審議会の中に血液事業部会がございまして、そこに三つの調査会が今置かれてお りますが、今度新しく設置しようと思っている運営委員会というのは血液事業部会の中 に設置しようと思っております。  1ページに戻っていただきますが、この運営委員会はそもそも今度の7月30日に施行 されることになります、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の国会審議の 中で、このようなものを設置すべきだという議論が出てまいりました。ここはその中で 出てきた点を簡単にまとめたものでございます。まず二段落目のところですが、HIV 感染等の危険を踏まえて血液事業を定期的にチェックし、緊急時には迅速に対応できる ように、厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会の血液事業部会に運営委 員会を設置して危機管理対応を行うということが国会の審議の中で決まっております。 その中でいろいろ出てきたことですが、まずその下の開催頻度として、少なくとも四半 期に一回は開催し、緊急事態が発生したとき、また委員が必要と認める場合には開催す ると。運営委員会の職務といたしましては、定期的に開催して血液事業の運営状況を確 認・評価し、また緊急事態が起こったときには機動的に開催し、状況を速やかに共有す ると。それから、厚生労働省医薬局以外の他部局や関係機関からも幅広くその説明を求 め、情報を収集する。そして、血液製剤と代替性のある遺伝子組換え製剤についてもそ の対象とするということが審議の中で決まっております。それからメンバー構成です が、血液製剤を使用する患者の代表者を加えることとなっております。また設置の方法 ですが、血液事業部会の部会長が血液事業部会の中に恒常的な組織として設置するとい うことを踏まえまして、2ページの「薬事分科会血液事業部会運営委員会規程」という ものを部会に定めてはいかがかということを考えております。  条項立てになっておりまして、第2条の所掌でございますが、あくまでもこの運営委 員会というのは意思決定をする機関ではなくて、意思決定は当然従来どおり血液事業部 会が行います。ここにございますように、部会が調査すべき血液製剤に係る事項を検討 するために運営委員会を置くということを考えております。さらに、具体的に運営委員 会で確認すべき事項といたしまして、一〜四号を掲げております。これは後ほど御説明 いたしますけれども、一号目は需給計画に関係しまして血液製剤の製造又は輸入の実績 についての報告を製造業者等に求めることになっておりますが、これを運営委員会にお いて確認する。二号目は感染症定期報告についても受けた報告について確認する。三号 目といたしましては、先ほど御説明しました三つの調査会の審議状況について確認す る。四号目はその他事項について確認するということを主要な所掌事項と考えておりま す。第3条になりますが、委員会に所属すべき委員については、部会に所属される委員 の中から部会長に指名していただくと。2項には患者の代表や医療関係者、血液事業の 専門家を含めて数名で構成するということを規定しております。第5条ですが、先ほど 定期的にと申しましたが、四半期ごとに開催すると。次のページに行っていただきまし て、さらには委員が必要と認めるときは適宜委員会を開催するということです。それか ら第7条ですけれども、議事は血液事業部会同様に公開で行うということを考えており ます。  また1ページに戻っていただきまして、一番下の「今後の予定」ですが、次回の第2 回血液事業部会において、部会長に指名していただいた委員について御報告いただく と。それから法施行後速やかに第1回運営委員会を開催することを予定しております。 また、こういう委員会を設置したということについては、次回の薬事分科会で報告を行 いたいと考えております。以上でございます。               ── 池田委員退室 ── ○溝口部会長  どうもありがとうございました。何か御意見、御質問ございますか。どうぞ、橋委 員。 ○橋委員  これは先ほどの、日赤とよく調整しながらやっていかなければいけない白血球除去の 進捗状況というようなものを、オブザーバーになるのでしょうか、日赤の方も呼んで適 宜議論するということもあるのでしょうか。血液事業の運営状況というと、白血球除去 は決めたけれどもそれがいつぐらいにできるのかとか、それにかかわる問題は何かと か、目下のところそういうことが私は非常に気になるのですが。 ○血液対策課長  委員の方が気になることは何でも運営委員会でお諮りすると。といいますのは、先ほ どの委員会の開催の第5条の2、「前項に規定する場合のほか、委員が必要と認めると きは委員会を開催することができる」と。要するに我々事務局ではちょっと及ばないこ ととか、危機管理上の組織ですので、ここにおられる先生方がちょっとこれはどうなっ ているのかと、危機管理上必要だという発言をされましたら、しかるべき手続によって 委員会を招集いたします。 ○溝口部会長  よろしゅうございますか。非常に小回りが利いて緊急時に対応する運営委員会という ことになります。お認めいただけますれば、この薬事分科会血液事業部会の運営委員会 規定案を部会決定とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは これに基づきまして運営委員会を開催することにいたします。運営委員会の設置につい ては、先ほどのお話にありましたように、次回の薬事分科会に御報告することにしま す。また、先ほど事務局からございましたように、この規定に基づいて運営委員会の委 員を指名させていただきまして、次回の血液事業部会に御報告したいと思います。どう ぞ、よろしくお願いいたします。  次に議題3、「平成15年度の献血の推進について」ですが、これは前回部会での委員 からの御指摘や都道府県、採血事業者の御意見を聴いて事務局が修正したものでござい ます。委員の皆様にはもう既に都道府県、採血事業者の御意見と共に、この案をお送り して御了解を頂いているところであります。更にこの上に追加する御意見が何かありま すれば、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特になければお認めいただい たものとさせていただきます。あと、法令的な観点から審査を受けまして、最終的に決 定することとさせていただきます。その法令的な修正については、部会長にお任せいた だきたいと思います。何かありますか。どうぞ。               ── 池田委員入室 ── ○大平委員  ちょっと補足ですが、やはり献血者の献血動向とか、そういうものをきちんと調べて いただくようなところをこの中で…、多分読み込めば中にあるのだろうと思いますが、 やはりそういう研究事業みたいなものをきちんとやっていただいて、そして複数回数の 献血者に献血の推進とか、動向をきちんと調べて社会に提示して、そして献血の推進を 図っていくことが大切だろうと思いますので、是非そういった研究をお願いしたいと思 います。 ○溝口部会長  いろいろな厚生労働省の研究班がございますね。そういうものでよろしくお願いした いと思います。  それでは次の議題、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の施行につい て」をよろしくお願いいたします。 ○事務局  資料Eでございます。先ほども御説明しましたように、血液法が7月30日に施行され ますので、それに伴いまして表紙にございます2本の省令を整備したいと思っておりま す。まず一つ目が「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律施行規則」という ことで、これは従来からあります法律の施行規則を改正するという形のもの。もう一つ が「採血の業務の管理及び構造設備に関する基準(仮称)」ということで、これは今回新 しく省令として定めるものでございます。従来は構造設備や業務管理については通知で その基準を定めておりましたので、今度はこれを省令レベルに引き上げて整備するとい うことを予定しております。  まずスケジュールから御説明しますと、その下にありますように、今回のこの2本の 省令の中には規制的な要素が含まれておりますので、まず省令についてパブリックコメ ントを実施いたしまして、できるだけ早い段階で省令を公布して、7月30日の法律の施 行のときに併せて省令も施行するということをイメージしております。  では資料の2ページを御覧ください。まず法律の施行規則の方ですが、これは法律の 施行に関して細目を定めるものでございまして、大きく分けて四点ございます。まずは 血液製剤の範囲、血液製剤代替医薬品の範囲、そして需給計画関係、それから採血事業 者の監督関係でございます。  まず「I.血液製剤の範囲」でございますけれども、これは血液法の対象となる血液製 剤で、従来は法律の別表という形で定められておりました。今までは保存血液や赤血 球、人血漿など非常に大ざっぱな分類で行われていたのですが、今回法律の対象を明確 にするということで、省令で製剤ごとに規定するということを考えております。具体的 には5ページを見ていただきたいのですが、「〈別表〉」とございまして、血液製剤は 大きく三つに分けられますけれども、まず一つ目が輸血に用いるもの、すなわち輸血用 血液製剤。二つ目が人血漿で、これはいわゆる原料血漿でありまして、「中間体」と言 われているようなものも含む概念として人血漿というものを規定しております。三つ目 が血漿分画製剤でございまして、これは1〜39まで製剤ごとに記しております。また2 ページに戻っていただきまして、考え方といたしましては血液法の基本理念を適用する にふさわしいものということで、人の血液又はこれから得られたものを有効成分とする 医薬品として定めたものでございます。  続きまして、「II.血液製剤代替医薬品の範囲」でございます。これは基本方針の議 論の中で何度も出てきたものでございますが、これをはっきり省令において定める必要 があると思いますので、遺伝子組換えの第VII因子、第VIII因子を省令で規定したいと 思っております。  続きまして「III.需給計画関係」ですが、需給計画については資料が飛んで恐縮です けれども、資料Fを御覧ください。需給計画については、血液法の趣旨にかんがみて国 が需要を的確に把握して、供給が計画的に行われているかを毎年度把握する必要がある ということで定めるものでございます。3ページを見ていただきますと、これは血液法 の中の需給計画に関する部分の抜粋でございます。需給計画の第二十五条がございます けれども、厚生労働大臣は基本方針に基づき毎年度、翌年度の血液製剤の安定供給に関 する計画を定めるとなっております。需給計画に定めるものとしては、一つ目は当該年 度に必要と見込まれる血液製剤の種類及び量、二つ目は国内で製造され又は輸入される 血液製剤の種類及び量、三つ目として確保されるべき原料血漿の量、四つ目として原料 血漿から製造されるべき血液製剤の種類及び量。五つ目はその他重要事項ということを 需給計画には定めることになります。この3項ですが、需給計画の作成のために製造業 者及び輸入販売業者から毎年度供給すると見込まれる原料血漿の量や、製造・輸入する と見込まれる血液製剤の量などを厚生労働大臣に届け出てもらうことになります。ま た、5項ですが、この需給計画を定めるためには薬事・食品衛生審議会の意見、具体的 には需給調査会、血液事業部会の意見を聴くということになっております。飛んで7項 ですが、採血事業者及び血液製剤の製造業者、輸入販売業者は、製造若しくは輸入に当 たっては需給計画を尊重しなければならないとなっておりまして、4ページでございま すけれども、その製造又は輸入の実績を厚生労働大臣に報告すると規定されておりま す。  第二十六条の2項ですが、それが需給計画に照らして著しく適正を欠くと認められる ときは、厚生労働大臣は勧告することができることになっております。以上が需給計画 の大ざっぱな枠組みでございます。  また資料Eに戻っていただきますが、これを受けまして需給計画の関係といたしまし て、2ページのIIIの(1)ですけれども、まず需給計画を作成する対象となる製剤は具体 的に何かということを省令で規定することとしております。先ほども御説明いたしまし た需給計画の趣旨にかんがみまして、需給計画の対象とする血液製剤は血漿分画製剤と 血液製剤の代替医薬品である遺伝子組換え型の2種類を想定しております。あと2ペー ジの真ん中辺りに幾つか製剤が載っておりますけれども、これは具体的にはアルブミン とグロブリンの需給状況を把握することによって需給状況を把握できるということか ら、あえて需給計画の対象とする必要はないということで、これは除外したいと考えて おります。  (2)ですけれども、先ほど御説明した需給計画に記載する事項に加えまして、原料血 漿を血液製剤の製造業者に販売するときの標準価格と配分量も需給計画に定めることに なります。これは今まで御議論いただきました基本方針の中で定められたことでござい ます。それから(3)ですが、需給計画を作成するために製造業者及び輸入販売業者から 届けてもらう事項を列挙しております。その次は3ページの(4)ですが、需給計画を作 成した後でその実績はどうなっているのかということで、製造業者から報告していただ く事項としまして、原則として毎月報告していただくべき事項と、毎年度報告していた だく事項を分けて規定しようと考えております。毎月報告書を作成すべきものは製造し たもの、若しくは輸入したものの種類や量、毎年度を考えておりますのは原料血漿の種 類ごとの量や価格でございます。  その次の「IV.採血事業者の監督関係」ですが、従来の法律におきましては採血や採 血所に係る規制だけでしたが、今回の血液法では採血事業者の責務や採血事業者に対す る規制が新設されたことに伴いまして、採血事業者に関する規定がかなり多く盛り込ま れております。まず(1)としては、先ほどお認めいただきました献血推進計画を受けて、 今度は献血受入計画を採血事業者の方で作成いたしますけれども、その認可申請のとき の手続若しくは計画に書き込むべき事項を省令で規定しようと思っております。続いて (2)ですが、採血所の休廃止の許可申請のときに許可申請書に書いていただく事項。そ れから(3)は業務規程に認可申請ということで、業務規程に書いていただくべき事項と いうのが次の4ページの(1)〜(7)になります。また(4)と(5)ですが、これも新設され たものですけれども、採血業務に関する事業計画及び収支予算、それに対応しまして事 業報告書及び収支決算書も法律で提出していただくことになっておりますが、その詳細 について何を書くのかということを省令で規定したいと思っております。ちょっと内容 が細かいのですが、以上が法律の施行規則関係でございます。  次に7ページを見ていただきますと、これが先ほど御説明しました「採血の業務の管 理及び構造設備に関する基準(仮称)(案)について」ということで、従来は通知レベルで 基準を定めて、また日本赤十字社の方においても内規を定めてやっていた事項でござい ます。これはまず「I.採血の業務の管理」の(1)として採血責任者を任命するというこ とで、採血事業者は採血所ごとに採血責任者を置くと。さらに必要に応じて地域ごとに 採血統括者のようなものを置いても構わないと。(2)といたしましては、採血事業者は 採血に係る業務を適正に行うために採血基準書、自己点検、苦情処理、教育訓練の手順 に関する文書を作成するということ。(3)としまして、そのような業務が適正に実施さ れたかどうか確認することと、その記録を作成して保存するということを規定しており ます。また(4)ですが、これは自己点検を定期的に行い、その記録を保存すると。(5)と しましては、苦情処理についても苦情に係る原因を究明して措置を講じ、またその記録 も保存すると。さらに採血事業者は、採血によって献血者当人の健康が害された場合に 備えて、あらかじめ必要な措置を講じておく必要があるということを規定しておりま す。(6)としましては、教育訓練についても計画的に実施して、記録の作成、保存をす ると。  「II.採血所の構造設備」ですが、これは採光や照明、換気が適正であること、不潔 な場所から明確に区分されていること、適切な広さがあること。さらには、必要な器具 が備えられている必要があるということを省令で定めております。具体的には、9ペー ジ以降に今考えている省令案の全文を載せておりますので、説明は駆け足になりました が、後ほど御参照していただければと思います。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。何か御意見、御質問ございますか。どうぞ、白幡委 員。 ○白幡委員  需給計画の立案で、血液製剤については以前から毎年度需給計画を立てていたのです が、特定の患者さんが使う製剤についてはそれができると思うのですけれども、アルブ ミンやγグロブリンなど不特定の患者さんが使う需給計画がきちんと立てられるものか どうかということを一つ心配します。  もう一つは実績報告のところで、2ページの「需給計画について」の一番下のところ ですが、需給計画に照らして著しく適正を欠くと認めるときには厚生労働大臣が勧告す ることができるという、この「適正を欠く」というのが釈然としないのですが。例え ば、実際に患者さんが医者と相談してこの製剤を使いたいと、特殊な病気になると別な のかもしれませんが、それに対して厚生労働大臣が勧告するというのがどういう意味な のかちょっと分からないのですが。 ○溝口部会長  いかがですか、事務局。 ○血液対策課長  厚生労働大臣の勧告の場面というのはほとんど想定されないだろうとは思います。と いうのは、計画どおり運ばなかったとしても何らかの合理的な理由があるはずで、それ は指導の対象ではありませんので、そういう意味でほとんどないかと思います。例えば 事業者が適正使用指針に逆らって非常に精力的に営業活動をやった結果として、すごく シェアを拡大してしまったという場合はこれに当たるかもしれません。しかし、基本的 にそういうことがなければ、合理的な医師と患者の関係の中で使われていく製剤が合理 的な理由の中で計画どおりに運ばなかったとしても、厚生労働大臣の指導にはならない と思います。  この需給計画は何のために作るかということですが、国内自給の進捗状況を確かめつ つ、計画的に国内自給、法にいう献血血液による国内自給を推進していくことをモニタ ーするための一つの指標製剤として、やはりアルブミン、グロブリンというのは欠かせ ませんので、非常に困難な部分はありますけれども、需給計画の一番のかなめとなる製 剤であるという認識をしております。 ○溝口部会長  よろしゅうございますか。ほかにどなたか、御意見、御発言ございますか。それでは 事務局はこれらの先生方の御意見を踏まえまして、施行の準備をお願いしたいと思いま す。  最後になりましたが、議題5、6を合わせまして、需給調査会及び適正使用調査会の 審議状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  資料Fですが、需給調査会は今まで2回開催しておりまして、まず1回目は主に制度 の説明や今後調べるべき事項について御議論いただいております。また、2回目は病院 における備蓄の状況や、さらに調査結果等について検討が行われました。「需給計画の 策定について」という議題の中で、骨子案を事務局から提示しております。それが資料 Fの7ぺージでございます。先ほど申し上げました需給計画に掲げる事項として、こう いう形で需給計画を作ってはどうかということで、この骨子案を提示させていただきま した。これに基づいて、これを更に膨らませた形で再度需給調査会で御議論いただい て、需給計画案を策定していただきたいと考えております。調査会で出た御意見につい ては、需給計画案をこの部会にお諮りするときにまとめて御紹介したいと思いますけれ ども、今まで出ました意見としましては、例えば血球試薬についても今は輸入に頼って いる状況なので、血液製剤の対象として需給計画を立てた方がいいのではないかとか、 あとは今後の国内自給推進のための方策を具体的に検討するべき必要があるのではない かという御意見が出ております。いずれにいたしましても、次回の血液事業部会には需 給計画案という形でお示しできるように調査をするということになっております。以上 でございます。 ○溝口部会長  適正使用調査会もお願いします。 ○事務局  適正使用調査会については、平成15年5月21日に15年度の第1回調査会を開催させて いただきました。本調査会におきましても、適正使用の今後の推進、方策についていろ いろと意見交換がございましたけれども、現段階では成果物というものが出ておりませ んので、本日は口頭での御報告ということにさせていただきたいと思います。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。取りあえず途中経過を御報告いただいたわけです が、ここまでで何か御注文や御意見、御質問はありますか。御協力いただいたので、や っと4時に終わることができました。御議論いただいた内容を十分念頭に置きまして、 調査会で引き続き調査、検討をお願いしたいと思います。  次回は7月16日水曜日、午後3時からということでございます。場所はまた追って御 連絡させていただきます。本日は大変活発な御議論を得ながら時間どおりに終わらせて いただきまして、本当にありがとうございました。                                    ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 血液対策課 課長補佐 中山(内線2905)