03/06/03 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会議事録   薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 乳肉水産食品・毒性合同部会 議事録 日時 : 平成15年6月3日(火) 14:00〜18:30 場所 : 厚生労働省専用第18会議室 出席者:   委員:熊谷委員(部会長)、小川委員、塩見委員、品川委員、清水委員、      鈴木(久)委員、西尾委員、伏谷委員、丸山委員、三森委員、山本委員、      井上委員、香山委員、鈴木(勝)委員、寺本委員、長尾委員、成田委員、      林委員、廣瀬委員、福島委員   参考人:国立水俣病総合研究センター疫学研究部調査室 坂本室長、       東北大学大学院医学系研究科 佐藤教授、       (独)国立健康・栄養研究所研究企画評価主幹       吉池氏、東京水産大学資源管理学科 馬場助教授   関係省庁:水産庁水産庁増殖推進部漁場資源課 小松課長   事務局:遠藤食品保健部長、小出企画官、中垣基準課長、宮川補佐、太齊専門官、       鶴身係長、南監視安全課長、美上専門官、他 議題 (1) 魚介類に含まれる水銀に関する安全確保について (2) その他 ○事務局  それでは、ただいまから薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 乳肉水産食品及び 毒性の合同部会を開催いたします。本日は御多忙のところ、お集まりいただきまして誠 にありがとうございます。  早速、議事の方に入らせていただきたいと思います。初めに定足数の確認でございま すが、乳肉水産食品部会より11名中11名の委員の方が、毒性部会より12名中10名の委員 の方が御出席をいただいております。過半数に達しておりますので、合同部会が成立し ておりますことを初めに御報告申し上げます。  本日は、参考人といたしまして、国立水俣病総合研究センターの坂本先生、東北大学 大学院の佐藤先生、独立行政法人国立健康栄養研究所の吉池先生、東京水産大学資源管 理学科の馬場先生に参考人として出席をいただいております。それから、関係省庁とい たしまして、水産庁から小松課長に御出席をいただいております。  本日の合同部会の座長でございますが、乳肉水産食品部会の部会長でいらっしゃいま す熊谷先生、毒性部会の部会長でいらっしゃいます福島先生のいずれかにお願いしたい のですが、本日の議題が魚介類中の水銀にかかる安全性確保ということでございますの で、熊谷部会長にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。  それでは、議事の進行を進めさせていただきたいと思います。御協力のほどをよろし くお願いいたします。それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○熊谷部会長  それでは、早速議事を進行させていただきたいと思います。まず、配付資料の確認に ついて、事務局の方からお願いいたします。 ○事務局  お手元にお配りしてございます資料は、クリップどめになっている資料と本になって いる資料がございます。本になっている方の資料は、1ページめくっていただきます と、部会の各委員の方々のお名前に続きまして、配付資料1から6、参考資料の1から 7が1冊の本にまとまってございます。この本の方を見ていただきますと、そちらでご ざいます。配付資料No.1が我が国の規制の現状、配付資料No.2が各国の規制の現状、 それから資料No.3といたしまして我が国の魚介類の水銀実態調査、資料No.4といたし まして水銀の毒性に関する資料、資料No.5といたしまして各国の食事指導の取り組み、 資料No.6といたしまして魚介類による水銀摂取量の試算、参考資料No.1から7がVI CHのガイドラインの概要としてございます。  それで、これとは別にお手元にクリップどめで配付いたしました資料がございまし て、一番最初に座席表がございまして、その次に国立水俣病総合研究所で行いました総 水銀、メチル水銀の検査結果、それからその次に佐藤先生の説明資料がございまして、 その次に資料No.4−4という英語の資料がついてございます。この冊子の方にも資料 No.4−4がございますが、こちらはサマリーの方のみでございまして、配付した資料 No.4−4がランセットの論文すべてでございます。  なお、傍聴人の方々には資料No.4−4は配付してございません。  それから、資料No.6が魚介類の水銀の摂取量について、最後に「水銀と健康」とい う資料がお手元に配付されていると思います。  以上でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。資料の不足はございませんでしょうか。全部そろっ ていますでしょうか。  それでは、最初に事務局から、各国の規制と実態調査結果について御説明をお願いし ます。 ○事務局  それでは、資料に基づきまして御説明させていただきます。資料の1ページ目、資料 No.1というところになります。我が国の規制の現状ということで、現在通知されており ます暫定的規制値の通知について、まず御紹介させていただきたいと思います。  こちらの通知書は昭和48年に水俣病の発生を受けまして、各都道府県あてに通知をし たものでございます。1ページ目の下側、アンダーラインを引いているところですが、 現在の水銀の暫定的規制値は総水銀として0.4ppmとし、参考としてメチル水銀0.3ppmと したと。ただし、この暫定的規制値は、マグロ類(マグロ、カジキおよびカツオ)およ び内水面水域の河川産の魚介類については適用しないものであるというふうなことに なっております。  次のページを開けていただいて、2ページ目、上段の左端ですが、「この暫定的規制 値は正しい運用によって一般的には十分な安全性が確保されるものであるが、妊婦およ び乳幼児に対しては、各方面の魚介類の調査結果と食生活の実態を考慮のうえ適切な食 事指導にあたられたい。また、マグロ類その他の魚介類を多食する者についても食生活 の適正な指導を行われたい」というふうな記載になっております。  これらの暫定的規制値についての根拠ですが、5ページ目をごらんいただけますで しょうか。別添として、魚介類の水銀に関する専門家会議の意見がついております。上 段の左側の方、メチル水銀の暫定的摂取量限度ということで、「成人(体重50kg)に対 し1週メチル水銀0.17mg(水銀として)とする」と。この週間耐容摂取量に基づいて暫 定的基準値を設定しているというものでございます。この暫定的週間耐容摂取量です が、下段のところになりますが、(1)FAO/WHO合同食品添加物専門家会議、J ECFAですが、1972年においても同様な考え方をしていること、それから(2)です が、熊本大学で水俣病患者等についての調査で、最低発症量から求められたもの、 (3)国立衛生試験所においてサルの慢性毒性試験から得られたもの、これらに基づい て暫定的な週間耐容摂取量を求めているというものでございます。  それから、10ページ目をごらんいただきたいんですが、先ほどマグロ類は対象外とす るというようなただし書きがございましたが、深海性魚介類についてもこちらの方で対 象外としております。具体的には、メヌケ類、キンメダイ、ギンダラ、ベニズワイガ ニ、エッチュウバイガイ及びサメ類、これらについてもその摂取量からかんがみて、対 象としなくてもよいでしょうという当時の専門家会議の結論を得ているというものでご ざいます。こちらが現在の我が国の規制の状況でございます。  続きまして、資料No.2−1というもので、13ページになりますが、各国の水銀の基 準値を表にしたものでございます。  まず、コーデックスではどうなっているかというと、現在ガイドラインですが、捕食 性のものを除く魚類ですが、メチル水銀として0.5 mg/kg、ppm ですね。それから、捕 食性の魚類、サメ、メカジキ、マグロ、カマス他については1ppmというふうな基準値が 設定されております。これらは暫定的な摂取限度量として、体重1キロ当たり、1日当 たり0.48マイクログラム・メチル水銀というものに基づいて設定がされている。  日本は先ほど申しましたとおりでございます。  米国、FDAですが、魚介類についてはメチル水銀として1ppmの基準値が設定されて いる。ただ、最近、EPAの方でリファレンス・ドーズ参照要領というんでしょうか、 見直しがございまして、0.1マイクログラム・メチル水銀/kg b.w./day というもの が提示されているところです。  英国については総水銀で0.3ppm。EUでは、こちらにございますようなアンコウ、ナ マズ、バス等につきまして総水銀が1ppm、その他の魚類で0.5ppm。カナダですが、サ メ、メカジキ、マグロを除く魚類について0.5ppm、魚類を多食する方で0.2ppm。オース トラリアですが、こちらにございますメカジキ、ミナミマグロ、バラマンディ、リング 等の魚については総水銀1.0ppm、その他の魚介類0.5ppm。韓国も、魚類について総水銀 として0.5ppmの基準値を設定しているというものでございます。  次のページ、資料No.2−2というところですが、2002年にUNEP、国連環境計画 で取りまとめられました水銀のアセスメントのレポートになります。それぞれトキシコ ロジーとか各国の規制等が掲載されておりますので、サマリーの部分と毒性に関する部 分、それから現在の水銀の暴露に関する部分、ヒトへの評価等の部分について抜粋をし て掲載させていただいております。先ほど申しました資料No.2−1の資料についても、 こちらの資料から再掲したものになっております。  簡単ですが、以上でございます。 ○事務局  続きまして御説明いたします。資料No.3では、我が国の魚介類の水銀実態調査をま とめております。79ページの資料No.3−1でございますが、これは昨年度の厚生労働 科学研究、食品中の有害物質等の評価に関する研究の中の分担研究報告書でございま す。昨年末に、水銀試験法の開発に関する研究班に対しまして、マグロ類における水銀 の実態調査を依頼したところでございまして、その結果が報告されております。  83ページの表1をごらんください。ここでは日本で主に食べられておりますインドマ グロ、キハダマグロ、メバチマグロ、本マグロを分析試料といたしまして、総水銀及び メチル水銀の濃度を測定しております。結果は次の84ページにございます。マグロの種 別に見ていきますと、メチル水銀のところを申し上げますと、インドマグロでは平均値 が1.08ppm 、キハダマグロについては0.24ppm 、メバチマグロにつきましては0.96ppm、 本マグロ、クロマグロにつきましては0.99ppmということで、キハダマグロで比較的低 い値を示しておりますが、それ以外の3種は概ね平均1ppmというレベルでございます。  続きまして、99ページをごらんください。資料No.3−2でございます。魚介類中の 水銀濃度調査結果というタイトルでございまして、括弧書きに平成12年と13年に各都道 府県において実施した検査結果を取りまとめたとございますけれども、冒頭で資料No.1 の昭和48年の水銀暫定的規制値に関する通知について御説明いたしましたけれども、そ の中で魚介類の水銀濃度に関するモニタリング検査を実施するということで、各都道府 県等自治体におきまして、暫定的規制値の対象となっている魚種につきまして検査が行 われておりまして、その結果を取りまとめたものでございます。しかしながら、マグロ 類につきましては規制値の対象外でございますので、この調査結果には含まれておりま せんでしたので、この表の中には先ほど3−1で示しましたマグロの測定結果も含めた 形で比較できるように表にいたしました。  魚種はあいうえお順に並んでございます。概要につきましては、ほとんどの魚種では 暫定的規制値、これはメチル水銀が0.3ppm、総水銀では0.4ppmという目安がございます けれども、平均値のところをごらんいただきますと、0.4ppmを下回っているという状況 でございますが、0.4ppmを超えておりますのは先ほどのマグロ類ですね。インドマグロ やクロマグロなどのほか、1ページ目ではウスメバルというのが真ん中辺にございます けれども、次のページではキンメダイ、これは深海性魚介類で、これもまた暫定的規制 値から外れております。それから、マカジキ、これは102ページの上の方でございます けれども、というようなものが0.4を超えているものもございます。  続きまして、105ページでございますが、資料No.3−3でございます。これは水産庁 において、平成14年、15年度に実施されました魚類におきます水銀の実態調査結果でご ざいます。  1ページめくっていただきまして、106ページに結果の概要がございます。メチル水 銀のところをごらんいただきますと、キハダでは低い値が出ておりますけれども、クロ マグロですとか、あとはメカジキというものはメチル水銀が比較的高い方になっており ます。一方で、下から2番目のマカジキについては低い値を示しているという状況でご ざいます。また、クロカジキ、下から3つ目ですが、総水銀は高いという結果が出てお ります。  続きまして、117ページをごらんください。資料No.3−4でございますけれども、こ れは外国でのデータということで、117ページにアメリカ、119ページにはイギリスにお ける測定値が示されています。  117ページのアメリカの方でございますが、アメリカでは、表1の上の方ですが、高 水銀レベルといたしまして、アマダイ、カジキ、サワラ、サメという4種類が挙げられ てございます。そして、下の方に低い水銀レベルの魚介類としてハタ、マグロ、アメリ カロブスターなどが挙げられております。  また、119ページのイギリスの例でございますけれども、こちらも総水銀が挙げられ ておりますが、表をごらんいただいて、平均値が比較的高いのが真ん中辺のサメ、マカ ジキ、メカジキというのが1ppmのオーダー、低いものではタラ、サケ、シーバス、マダ イといったものや、あとはエビとかイカという甲殻類などは低い値が出ております。  続きまして、121ページをごらんください。資料No.3−5でございますけれども、こ の資料につきましては本年1月の毒性・ダイオキシン特別合同部会にて御報告させてい ただきましたが、鯨由来食品のPCB・水銀の汚染実態調査結果でございます。表1の 結果の要約がございます。暫定的規制値を超えるものにつきましては網かけで表してご ざいます。水銀に関して見てみますと、検体数は少ないのでございますが、魚を食べる ハクジラ類というものに属するツチクジラ、ハンドウイルカ、イシイルカ、コビレゴン ドウ、それから一番下のマッコウクジラにつきましては暫定的規制値を超えるものが見 られているということでございます。一方、プランクトンを主に食べるヒゲクジラ類に 属しますミンククジラ、ニタリクジラというものについては水銀濃度は低いレベルでし た。  続きまして、125ページに資料No.3−6がございます。これは論文でございまして、 1997年の日本人の魚介類からの総水銀摂取に関する研究論文ということでございますけ れども、これの127ページの部分にTable 1というものがございまして、魚介類可食部 での総水銀濃度が示されてございます。平均値のppmで見ますと、上の方からTuna(マ グロ)、Swordfish(メカジキ)、Salmon(サケ)というところが1ppmのオーダーでご ざいますが、それ以外のところについては比較的低い値が出ているという状況でござい ます。  以上でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。 ○事務局  資料の方には間に合わなかったんですが、クリップどめしているものの2枚目の方 で、国立水俣病総合研究センターの坂本室長の方で取りまとめられているデータがござ いますので、御紹介させていただきたいと思います。  全部で34検体実施されておりますが、ごらんいただけるように、本マグロ、クロマグ ロの蓄養の大トロであるとか、メバチマグロ、キハダマグロ、メカジキ、バチマグロ、 インドマグロ等にそれなりの高レベルでの水銀の含有が認められるというものでござい ます。  各国の規制の状況について先ほど御説明いたしましたので、併せて冊子になっていま す資料の183ページ、資料No.5−1の各国の最近の取り組みというところを簡単に御説 明させていただきたいと思います。  先ほどアメリカ、イギリス等のデータについても御紹介させていただきましたが、 2001年からこれらの国でそれぞれ食事指導等の対応がとられているところでございま す。2001年にはFDAでサメ、メカジキ、サワラ、アマダイ等を妊婦や妊娠を考えてい る女性、また授乳中の母親や乳幼児も同様に、これらの魚の摂取を避けるとともに、そ の他の魚種については週に340グラムとすべきとか、イギリスでは2回にわたって指導 が出されております。サメ、メカジキ、マカジキ、マグロの缶詰、マグロステーキにつ いて、妊婦等または幼児、更に16歳以下の子どもについて、それぞれ以下のような食事 指導が出されています。  カナダも2002年5月、メカジキ、サメ、マグロについて、すべての人は週に1食とす べきとか、幼児、妊娠の可能性のある年齢の女性については月に1食とすべきであると か、オーストラリア、ニュージーランドでは、サメ、エイ、カジキ、こちらにございま すような魚について、妊婦、妊娠を考えている女性は週に4食以下とすべきと。ノル ウェーについては、クジラ、カマス、パーチ、マス、イワナ、サメ、カジキ、マグロに ついて、妊娠、授乳中の母親について食事の指導を行っているというようなところでご ざいます。  以上です。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。非常に膨大な資料を非常に短時間で御説明いただき ましてありがとうございました。御質問、あるいは御意見をお願いできますでしょう か。  私の方から資料についてちょっとお聞きしたいことがあるんですが、183ページです が、「各国での食事指導の比較」というところで米国でサワラというのが出ていますけ れども、我が国の先ほどの100ページのデータを見ますと、総水銀としては非常に低い んですけれども、米国のデータというのはもしかすると高いデータで、それでこれを入 れているのかどうかということと、ノルウェーでイワナを入れていますが、これはどう いうことなのかなというのがもし情報がありましたら。 ○中垣基準課長  まず、サワラの関係でございますが、後で御説明しようかと考えていたのでございま すけれども、これはサワラとしか書いてなく、学名までアメリカのデータにも書かれて いないということから、あくまで推測ということになってまいりますけれども、どうも アメリカでサワラと言っておりますのは、 1メートルあるいは2メートルもあるような 非常に大型の魚でございまして、我が国でみそ漬けにされているようなサワラとはちょ っと物が違うようでございます。それと同じようなことが実はアマダイでも起こってお りまして、アマダイも外国のデータというのは非常に高いわけでございますけれども、 我が国でぐじとか、いろいろな形で食べられているアマダイとはどうも違うようでござ います。  もう一つの御質問のイワナの点については、ノルウェーがデータを公表しておりませ んので、ちょっとつかみかねております。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。 ○丸山委員  一つ教えていただきたいんですが、各国での食事指導というのを183ページでお示し いただいたんですが、我が国では今までこういう食事指導ということがどういうふうに やられてきたのか、ちょっと説明がなかったので教えていただきたいんですが、これは 昭和48年の一番最初に御説明があった暫定的規制値についてというところに、「食事指 導にあたられたい」という条文があるので、既にやってきたんだろうと思うんですが、 ここについて御説明いただきたいんですが。 ○中垣基準課長  この資料の2ページをごらんいただきたいと思います。2ページの線を引いている部 分、(3)でございますが、確かにここに今丸山委員御指摘の妊婦、乳幼児に対して、 調査結果あるいは食生活の実態を考慮のうえ適切な食事指導にあたられたい、あるいは マグロ類その他の魚介類を多食する者についても食生活の適正な指導を行われたいとい うようなことがあるわけでございますが、正直申し上げて、先ほどの部会においてもあ る委員から御指摘のあったように、余り具体的な形での指導というのは、残念ながら、 厚生労働省として今まで取り組みはなかったんだろうと思っております。  もしよろしければ、今の丸山委員の御指摘に合わせてと申しますか、参考人で来てい ただいております水俣病研究センターの方でパンフレットを出されておりますので、こ れについて坂本参考人の方から説明していただければと思うんですけれども、よろしゅ うございますか。 ○坂本参考人  では、説明させていただきます。このパンフレットは特に専門家の方を対象にしてつ くったものではなくて、うちの研究所を訪れてくださる一般の方を対象に、メチル水銀 というのはどういうものか、どういう健康的な問題があるのかということをお示しする ためにつくった資料でございます。  まず、1ページですけれども、ここでWHOが健康に影響がないレベルとしてという ことで一応50ppmを挙げておりますけれども、これは最も感受性の高い大人で最初の症 状が出るレベルとして一応50というものが出ております。それから、妊婦の場合ははっ きりとしたレベルは決まっておりませんが、フェローやセイシェルの研究等を考えまし て、大体10前後に安全なレベルがあるのではないかというふうに考えております。  それから、3ページの方に移っていきますけれども、メチル水銀がどうして体の中に 入ってくるかということの簡単な説明でありまして、脳にはブラッド・ブレーン・バリ アがあって、胎児の方にはプラセンタ・ブラッド・バリアがあって、そういうふうな有 害物質は余り入り込まないということになっておりますが、メチル水銀の場合はシステ インというアミノ酸と結合しまして、メチル水銀システイン化合物として中性アミノ酸 トランスポート、すなわち中性アミノ酸として脳や胎児が要求する分だけ脳や胎児の方 に入って、そこで悪さをするということになります。  それから、次の5ページに入りますと、これは典型的な水俣病の方々の症状というこ とで、感覚障害、小脳失調症、視野狭窄、特に胎児の場合には母親に全く水俣病の症状 がないにもかかわらず、子どもの方に脳性小児麻痺や知能障害が起こるということに よって、世界に胎児の方がいかにメチル水銀に対する感受性が高いか、いかにメチル水 銀の毒性が恐ろしいものであるかということを日本が示したということになります。  それから、右の方に移りますと、メチル水銀はシステインと結合しまして体内に入っ ていきまして、特に問題になりますのは胎児脳はメチル水銀に対する感受性というのが 成人によりも高いと言われております。その上に、蓄積性としまして、母親よりも胎児 の方に約1.5倍から2倍のメチル水銀が蓄積するということが知られております。そう いう意味で、胎児の脳というのはメチル水銀の毒性に対する感受性が非常に高い、しか も濃度的にも高くなるということで問題であるということになるかと思います。  そして、各魚の大体の水銀濃度が書いてありますが、今までの説明にもございました ように、食物連鎖の頂点に近い魚、本マグロとかマカジキ、それからクジラ類がメチル 水銀の蓄積量が高くて、そういう魚は妊娠期間中には避けた方がいいのではないかとい うことはうちの方では一応来た方々には伝えております。  以上です。 ○中垣基準課長  今、坂本参考人の方から御紹介があったように、魚介類の摂取について国あるいは国 の機関が出しているものとしては、今御紹介いただいた文章しか私どもは承知しており ません。  なお、毒性、例えば胎児期のメチル水銀中毒によって脳性麻痺、知能障害が起こると か、あるいは母親の毛髪水銀値が10ppm以下が望ましいという点につきましては、毒性評 価の関係でございますから、後で時間をとって佐藤参考人の方からも発表していただい た上でディスカッションを賜ればと思います。 ○熊谷部会長  よろしいでしょうか。それでは、先に進ませていただきます。それでは、事務局から 毒性につきまして御説明願います。 ○事務局  資料No.4、131ページになります。簡単に概略を説明させていただきます。資料No.4 −1、WHOのIPCSで取りまとめました環境保健クライテリアEHCの101、メチ ル水銀のサマリーの部分だけを掲載しております。  資料No.4−2でございますが、141ページ、今日参考人として御出席いただいており ます東北大学の佐藤教授の方で取りまとめられております環境省の委託研究として、 「水俣病に関する総合的研究」の分担研究、有機水銀の健康影響に関する文献レビュー ということで、3年間にわたりレビューをされているものがございますので、こちらの 方について後ほど佐藤参考人の方から御説明いただきたいと考えております。  資料No.4−3ですが、1999年にJECFAの方でメチル水銀について評価がなされ た際のサマリーになっております。  資料No.4−4、セイシェル諸島での疫学調査の結果の論文というふうになっており ます。  以上です。 ○熊谷部会長  それでは、今お話の中で御紹介いただきました佐藤先生から、もう少し詳しい毒性に ついて御説明いただけますでしょうか。 ○佐藤参考人  液晶プロジェクタを使わせていただいてよろしいでしょうか。では、その準備をさせ ていただきたいと思います。 ○熊谷部会長  どうぞ。事務局、お願いします。 ○事務局  申し訳ございません。御説明の前に、若干誤りがございますので訂正させていただき たいんですが、資料とは別にお配りしている「佐藤先生 説明用資料」というもので、 ページ数が変わっておりますので、ページ数を変更していただきたいのですが、4の 「さらに低濃度での影響の探索」のところですが、「New Zealand 」のところが「資料 4−2、3ページ右」となっていますが、「143 ページ」になります。「Faroe Islands 」のところの「資料4−2、7ページ」が「147 ページ」になります。その右側の「8 ページ」が「148 ページ」になります。その下の「Seychelles」ですが、「資料4− 2、16ページ」が「156 ページ」になります。その右側の「18ページ」が「158 ページ 」になります。  以上です。 ○佐藤参考人  東北大学の佐藤でございます。先ほど3部会合同のときは委員として出席させていた だいたんですけれども、今は参考人ということで、何か参考人というのは国会だと余り いいことをした人が呼ばれるようではないんですけれども、今日は基準課の方から胎児 期暴露の影響について説明せよということでございますので説明させていただきます。 準備の時間が余りなかったものですから、今まであったスライドとか、あとは資料等を ごちゃまぜで説明させていただきますけれども、20分と言われておりますので、大体そ れで終わるようにいたしたいと思っております。  説明資料と書いた、今御訂正いただいたところと、その裏に「メチル水銀の基準摂取 量のゆくえ」というのが3枚ついた全部で4枚紙のものと、それから今参照していただ くことになっております141ページからの資料No.4−2というのを随時使わせていただ きたいと思います。  先ほど国水研の坂本室長の方からお話がありましたけれども、水銀の話をするに当た って、やはり水俣病というのを忘れてはいけなくて、多分そこがスタートになるんだろ うと思います。ここにお示しいたしましたのは、水俣病患者さんが痙攣を起こしている ところです。御承知のように、水俣病というのはメチル水銀に起因する神経変性疾患と いうか、神経細胞が死んでしまうことによって起こるというようなことで、昭和29年に 初発の患者さんが見つかって、熊本県の水俣市を中心にして数千人に及ぶ被害があった ということになります。次のスライドをお願いいたします。 (スライド)  普通の食べ物の原因とするいろいろな健康被害の中でも水俣病は極めてユニークなも のだったわけです。それは工場からの排水の中にメチル水銀があって、それが生態系の 食物連鎖の中で生物濃縮され、そしてかなりの濃度になった魚を人々が結構たくさん食 べたというふうに伺っております。700グラムとか1キロという話も伺っておりますけ れども、そういう食べた方々が犠牲になられたというようなところです。その生態系を 通して暴露が起こったという意味で、非常にユニークな出来事だったろうというふうに 考えられています。次をお願いします。 (スライド)  犠牲になられたのは大人ばかりではなくて、先ほどもちょっと話が出ましたけれど も、赤ちゃんたちが犠牲になっています。赤ちゃんというか、妊婦さんが魚を食べて、 生まれてきた赤ちゃんたちがどうも生後の発達がおかしいと。生まれたときは特に異常 は見つかっていないようでございますけれども、生まれてきた後の発達がどうも遅い。 このお子さんなんかも当然座れていい時期なのに、お座りができないというようなこと だったわけです。次のスライドをお願いします。 (スライド)  それは、お母さんが食べた魚の中のメチル水銀が胎盤を通して胎児の方へ行ってしま ったという、先ほど坂本室長からも御紹介があったことなわけです。次のスライドをお 願いします。 (スライド)  お母さん方は症状がない方、あるいはあってもしびれ程度の方々だというふうに記載 されております。そういう赤ちゃんがここにずらっと検診のときに並ばれているようで すけれども、重そうな方、軽そうな方、いろいろいらっしゃいますけれども、何となく よく見ると似たような感じの方々がいらっしゃるわけです。これを称して脳性麻痺様と か、あるいは知的障害が出ているということになっているわけです。  ここで、先ほど坂本室長がおっしゃいましたように、胎児期の暴露というのは大人に 対してよりも感受性が高いので、その健康影響も大きいのだということが明らかになっ たんだというふうに考えられます。次のスライドをお願いします。 (スライド)  その後、1971年の冬が中心だったと思いますが、イラクで大規模なメチル水銀中毒が 起きています。イラクで起きたことというのは、小麦の種子消毒にメチル水銀を使った ことに起因しています。私もここで初めて勉強したんですけれども、種子というのは消 毒しておかないと発芽率が非常に低いということらしいんですけれども、そのために小 麦をメチル水銀で消毒した。カビが生えないようにしたということなんですね。それを イラクの飢饉のときに援助したわけなんですけれども、本来ならばそれは翌年まいて食 べるというための援助だったわけですが、それがうまくいきませんでして、援助のあっ た小麦を小麦粉にして食べてしまったんですね。それによって水俣を上回る6,000人以 上の患者さんと500 人の死亡が出たというふうに考えられています。  このとき、後から出てまいりますセイシェルの調査をやっているロチェスター大学の グループと、今テレビに治安が悪いんだというふうに盛んに出ておりますが、バクダッ ド大学の先生方が調査チームを組んでいろいろ調査をやったおかげで、例えば量−影響 関係、量−反応関係といわれるものの解析ができています。量の指標として、毛髪中の 水銀濃度がいいんだというようなことが明らかにされたわけです。次をお願いいたしま す。 (スライド)  これは一例ですけれども、横軸が時間で、縦軸が対数でございますけれども、水銀の 濃度です。青っぽいのがお母さんの毛髪中の水銀濃度ですけれども、この方は1971年の 冬ぐらいから妊娠なさって、黄色いところは妊娠の期間です。それとともに、その前後 から毛髪中の水銀濃度が上がっている。援助が始まってその小麦を食べ始めた時期だろ うと思います。ずっと上がってきて、具合が悪くなって実は入院したわけですね。そこ から実線になっておりますけれども、その実線になっているところからは病院に入って 水銀の暴露はなくなったので下がっている。同時に血液中の水銀を測ったり、子どもが 生まれたら子どもの水銀を測っているということになります。  ここからわかることは、髪の毛はメチル水銀の暴露の履歴を後ろにさかのぼってわか るということなんですね。それはなぜかというと、メチル水銀の血中濃度が毛髪ができ るときに反映されるわけなんですけれども、それはそのまま育っていくとほとんど変わ らない。実は若干変わるんですけれども、変わらないというふうに考えていったわけで す。ですから、根元から何センチか、大体1か月に1センチ伸びるそうですけれども、 その長さによって過去の暴露をリキャプチャーできるというメリットがあるわけです。 この方は妊娠中にあそこまで上がったということなんですね。それとともに、血中との パラレルの相関の具合は非常にいい。それから、先ほど坂本室長が言われましたけれど も、ここからわかるのは、ピンクっぽいのが子どもの血中濃度ですけれども、母親の血 中濃度よりも高いということなんですね。パラレルできているということは、後から問 題になりますけれども、髪の毛と血中のメチル水銀濃度に一定の関係があるということ を示していることになります。次をお願いいたします。 (スライド)  こういう量−影響関係、量−反応関係の調査ができておりますので、実は子どもに とって母親がどれくらい水銀をとったら危険なのか、そういう計算ができたわけなんて すね。これはロチェスター大学のグループのやった計算なので、後から出てくるWHO の根拠の基になったものです。  遠い方はごらんになれないかもしれませんけれども、プラスの印がグラフの上と下に あります。このプラスの印は、上の方にあるのは子どもを神経学的に検査して異常が あった、この場合は歩くのが18か月以上かかった、歩き始めるのが遅れたということで す。下の方にあるのは、それが正常に行われたということです。母親の毛髪中の髪の毛 との関係から量−反応関係を推定したわけなんですね。  モデルが2つあるんですけれども、見ていただきますと、母親のところが10から20ぐ らいのところでどれも上がり始めているということがおわかりになるかと思います。薄 緑色のものは振れ幅ですけれども、非常に高い濃度、例えば400を超えると、確率とし ては80%以上の人たちが異常であるというようなことなんですね。一番高いところだ と、ここだと7、800 ぐらいまであるということなんですけれども、集団として見た場 合のドーズレスポンスとしては10から20ぐらいで上がり始めるだろうということです。 次のスライドをお願いいたします。 (スライド)  その結果が、先ほども御紹介があったWHOのEnvironmental Health Criteriaの中 で、妊娠中のピークのマーキュリーレベルが10から20を超えると5%のリスクがあるだ ろうというふうに考えられてきたわけです。そういうふうなWHOのステートメントが 出ているということになったわけです。  イラクの研究の結果、そうなったわけですけれども、それを今度、翻って考えてみま すと、これくらいの髪の毛の毛髪中水銀を持った集団というのは実はいるんだというこ とに、多くの人が気がつき始めたわけです。次をお願いします。 (スライド)  それはなぜかというと、水銀のグローバル・リサイクリングというか、地球科学的な 目で見ると、水銀というのは大気中に水銀蒸気の形で存在したり、あるいはそれが水の 中に入ってメチル化されてメチル水銀として存在したりとか、化学的な形態を変えて地 球の中を動いているということになるわけです。それで、でき上がったメチル水銀が食 物連鎖によって、先ほど来いろいろデータが出ていますけれども、肉食で大型の魚とい うふうに一般的に考えられますけれども、そういう魚にかなりの程度蓄積しているんだ ということがわかってきたわけです。その結果、それを食べている人たちというのは何 らかの影響を受けているかもしれない。10を超えている人、あるいは場合によると20を 超えている人たちもいるんだということになったわけですね。  水俣病のようなけいれん性の症状が出れば、それは見てわかるわけなんですけれど も、あるいはイラクのような発達の遅延が臨床神経学的にとらえられればわかるわけな んですけれども、このレベルだと、そういう現在の普通に暮らしている集団でなおかつ 魚を多食する集団の中では、なかなかそういうレベルではとらえられないということも わかってきまして、あるいろいろな対象を探しながら、幾つかのグループが世界じゅう で調査を始めたというのが大体1990年前後からです。  そのレビューを私は環境省の委託研究の中でやりまして、資料No.4−2、141ページ から書いてあります。時間の関係もありますので代表的なものだけ御紹介いたします と、1つはニュージーランドでございます。これは143ページというふうに先ほど直し ていただきましたけれども、143ページにその記述がございます。  ニュージーランドは、これはイギリスの文化の影響だと思いますが、サメをフィッ シュアンドチップスで食べているようなんですね。特に社会階層の低い方々は、食事と してそういうものへの依存がかなり大きいというようなことがあったわけです。これも 簡単に結果だけを申し上げますけれども、母親の毛髪水銀を測って、高い人たち子ども を追いかけたというのがニュージーランドの調査でございます。その結果、デンバー・ ディベロップメント・スクリーニングというテストで、発達の検査でございますけれど も、幾つか異常が見られたというふうに出てきたわけですね。ただ、これは集団の一部 の高い人たちだけを追いかけてやった調査で、全体をとらえているわけではないし、デ ータとして余りきれいなデータだというふうには思えなかったんです。  その後、セイシェルとフェローで調査が始まっています。フェローの調査結果につい ては147ページから記述があります。フェローというのはデンマーク領ですけれども、 北海のかなり孤立した島です。コペンハーゲンから飛行機で2時間ぐらい行ったところ ですけれども、ここの写真を持ってくればよかったんですが、岩肌に草が張りついてい るような非常に地味のやせたところです。ここで多くの人たちがクジラに依存してい る。それも先ほど御紹介があったハクジラですね。ゴンドウクジラといわれていますけ れども、それにタンパク源を依存している生活をしていたわけです。毛髪中の水銀も高 い人たちは20ppmを超えるというような人たちもいたわけなので、そこでデンマークの グランジャンという方が調査を始めました。  最初に妊婦さんを登録して髪の毛の水銀をとったり、あるいは、後で出てくるかもし れませんけれども、生まれたときに臍帯血をとったりとか、そういう調査を行って、7 歳になったときにいろいろな神経生理学、神経行動学的なテストをやっております。そ の結果が148ページの真ん中からちょっと上ぐらいから書いてあって、BAEPという のは、耳に刺激を与えた後、脳波がどう出てくるかというような検査ですけれども、そ ういう神経生理学的な試験とか、タッピングとか、あるいは物の名前を挙げさせるとい うようなテストとか、そういうようなもので「影響があり」というようなことを出した わけです。それがフェローの調査です。また、このフェローの調査はこういう検査なの で、7歳になって初めてできたわけですね。その後も検査が続いていて、14歳のときの 検査というのが後の方にまた出てまいりますけれども、それは後でごらんいただきたい と思います。  もう一方で、セイシェルというのは北インド洋にある島でして、ナイロビから飛行機 で3時間ぐらいで、インドやシンガポールからも行けると思うんですけれども、不便な ところです。そこでは、オーシャンフィッシュというか、大洋の魚ですね。魚の名前と いうのは非常に難しくて、私もどの魚ということはよくわからないんですけれども、魚 を多食する集団であるというようなことになっています。髪の毛の平均水銀濃度は6前 後ぐらいの集団で、20を超える人たちもおります。そういう人たちをロチェスターのグ ループが調査したわけです。  9年度の報告書にも書いてあるんですけれども、メインコホートの調査が156ページ の右の下の方から書いてあります。ここでは発達に偏った検査で、フェローでやってい た検査よりも、神経行動機能というよりも知能の発達を見るような検査のようですけれ ども、それをやった結果、157ページの表1にありますけれども、必ずしもメチル水銀 の影響が見られていないという結果を出しています。メチル水銀の結果は、例えばマッ カーシーのテストなんかを見ますと、メチル水銀濃度が高い方がむしろ成績がいいとい うような結果も出しているわけです。  これは大きな論争になりまして、何でフェローの結果とセイシェルの結果が違うのか というような論争がまだ続いております。幾つか原因はあるんでしょうけれども、例え ばやっている検査が違うんだから精度が違うんだとか、あるいはフェローは例えばクジ ラが主なメチル水銀のソースであるのに対して、セイシェルはそうではなくてオーシャ ンフィッシュであるというような違いとか、そのオーシャンフィッシュ、魚の中には、 御承知のようにいろいろな不飽和脂肪酸がありますし、特にオメガ3というようなもの は子どもの脳の発達にいいんだからとか、そういうこともありますけれども、その決着 はまだついていないというふうに私どもは理解しております。  こういったところで見ているのは非常に微細な変化でして、例えば検査をかけてみな いとわからないというような変化だというふうに理解していただきたいと思います。水 俣では見ただけでもう異常というのはわかりますし、イラクの場合もこの子は発達が遅 いねという感じで出てきたんだと思いますけれども、そういうものではなくて、いろい ろな検査、心理学的な検査をやり、機能検査の負荷をかけて出てくるようなものである というふうに理解していただければと思います。だからといって、放っておいていい問 題かということもないんだろうと思いますけれども、通常、社会の中で生活していく上 に不便があるような症状ではないということになります。  ところが、どういうわけか、アメリカのEPAはイラクの水銀の問題について非常に センシティブになりまして、お配りした資料の「メチル水銀の基準摂取量のゆくえ」と いうのを見ていただきたいと思うんですけれども、先ほどの世界でどんな規制があるか というようなことにも出てまいりましたけれども、EPAがRfD、リファレンス・ド ーズとして0.1マイクログラム/kg/dayという値を出しております。これはイラクの研 究を見て、ベンチマークドースという方法である値を決めて、そこから一生とり続けて も大丈夫だろうという基準を算定したというのがこのRfDです。これが0.1マイクロ グラムというのはかなり低いということで、我々も初めこの話を聞いたときに大分びっ くりしたわけです。これが妥当なのかどうなのかというのは議論のあるところだと思う んですけれども、では日本においてどうなのかというのを最後にお見せしたいと思いま す。 (スライド)  これは秋田で我々の仲間が調査したものですけれども、髪の毛の濃度で平均で2ppmぐ らいになっています。ただし、幅はかなり広いというふうにお考えいただきたいと思い ます。住む場所が町なのか、村なのか、あるいは漁業をやっているところなのか、そう でないのかという差は余りないようですね。これもどれくらい精度があるかという問題 はあるかと思うんですけれども、食品の摂取頻度からどういう魚をどれくらい食べるの かというのを聞いておりまして、それでもって計算したインテークを大体出してありま す。そうすると、これは大体16から20ぐらいの間に存在するということです。これはお 母さん1人当たりです。次のスライドをお願いします。 (スライド)  体重を55キロというふうに想定しまして、それから魚の中のメチル水銀割合というの は、これは実は非常に問題になるんだろうと思いますけれども、先ほど御紹介があった 暫定基準値と同じように0.75、4分の3がメチルだと考えて、毎日毎日の摂取量を計算 しますと、EPAのRfDに相当する0.1以下の人というのは、この調査では何と8.4% しかいないんですね。ということは、90%以上の方々がRfDを超えているということ なので、我々からしてみると、アンリアリスティックな値なのかという感じがいたしま す。次のを出していただきたいと思います。 (スライド)  それから、RfDを計算しているときに、髪の毛の水銀だったらどれくらいだろうか というようなことを計算しているところに書いてあるんですけれども、0.1マイクログ ラム/kg/dayをとり続けた場合に、多分髪の毛は1ppmぐらいだろうと想定しているわ けですね。これは日本じゅうの何箇所かから髪の毛をいただいて国水研の方が測った データなんですけれども、これを見ましても、日本人の女性、各地ですから日本人と言 わせていただきますけれども、1ppm以下の方というのは27.9%しかいない。70%以上の 方がRfDから考えられる毛髪中の濃度を超えているということはRfDを超えている ということになるんだろうと思います。それから、15から49歳ぐらいのいわゆるチャイ ルドベアリングエイジ、妊娠可能な年代の方々も34%が1以下であって、66%の方、3 分の2がRfDで考えられるような髪の毛の濃度を超えているということになります。 次をお願いいたします。 (スライド)  先ほども申し上げましたけれども、魚の中には体にいいものもあるんだし、また逆 に、メチル水銀が今日の話題でございますけれども、ダイオキシンなり、PCBなりも 当然あるんでしょうし、あるいはそれ以外の環境汚染物質も蓄積していることというの は、先ほどカドミの話もありましたけれども、当然あるわけですし、そういうものに対 してどう考えていくかというのは非常に難しいんだろうというふうに思っております。  それともう一つ、今の我々が議論しているような、あるいは研究の対象としているよ うなレベルというのはけいれん性の症状ではないわけですね。非常に微細なものを見て いるわけです。それに対して、魚のメリット、デメリットとか、あるいはほかの食生活 の影響、例えば今日は申しませんでしたけれども、セレンの摂取量などがそういった症 状の出方に関係するというデータも出ておりますので、食生活全体の中で考えていかな ければいけないのではないかというふうに思っております。ただ、食生活というのは地 方、地方でも違いますし、一つの文化ですから、科学の世界からどれくらい切り込んで いくのかというのは私自身もよくわかりませんし、あるいはもう少し割り切って考えた 方がいいという御意見もあるのかもしれませんけれども、今のところ、私どもがこんな ふうに考えているというのを最後にして、一応研究の流れの御説明にさせていただきた いと思います。お約束の時間を過ぎまして、済みませんでした。 ○熊谷部会長  佐藤先生、どうもありがとうございました。ただいまの毒性の部分の御説明に関しま して、どなたか御質問あるいは追加発言等がございますでしょうか。 ○坂本参考人  佐藤先生のお話にありましたように、EPAのリファレンス・ドーズが0.1マイクロ グラム/kg/day というのは、毛髪水銀濃度に換算しますと1ppmということになりま す。日本の暫定基準が決められましたときには、50ppmに発症最低レベルに10倍の安全 率を掛けて5ppmということになっておりますので、それは5ppmに相当するというふうに 考えていただければいいかと思います。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございます。非常に初歩的な質問をさせていただきたいんですけれ ども、この頭髪のメチル水銀含量、それから魚介類のメチル水銀濃度というのは、これ は地球規模といいますか、非常に長い年月、1世紀とか2世紀の間で増えているとか、 そういうことはどうなんでしょうか。 ○佐藤参考人  私の方からお答えさせていただきます。それは非常に難しい問題だと思うんですね。 人間がかなりエネルギーを使うようになって、化石燃料を持つようになってから、地球 全体の水銀の負荷というのは上がっているんだろうと思います。ただし、その前から、 例えば火山活動であるとか、あるいは表層が流れることによって海の中で水銀が溶けだ すとか、幾らでもあったんだろうと思うんですね。  我々が今手にしているデータというのは、例えば鳥の毛の中のメチル水銀、特に剥製 になったもの、要するに、昔生きていた鳥を剥製のまま何十年ぐらいかとってあるわけ ですが、それを測ったデータがあると、上がってきたというデータはあります。ただ、 それはどうもパルプ工場の影響で環境中の水銀が上がったせいだろうというふうに解釈 されているんですね。人間が地球環境に負荷を与えているのを全体として見ると、そん なには大きくないので、やはりある程度水銀レベルというのはあったんだと思います し、先ほど申し忘れましたけれども、恐らく大洋の魚の水銀の素というのは自然界由来 のものであって、水俣で起こったことは非常に狭い湾内に汚染された排水が流されたわ けですけれども、今我々が対象としているような地域の水銀のソースというのは自然界 由来のものだというふうに考えられています。 ○熊谷部会長  ほかに御意見、あるいは御質問はございますか。  それでは、時間もかなりたっていますので、先に進ませていただきたいと思います。 各国の取り組み、それから水銀摂取量の試算の部分について、事務局の方から御説明い ただけますでしょうか。 ○中垣基準課長  それでは、お手元の資料No.6、本日クリップどめでお配りしたものでございますけ れども、このNo.6に基づいて御説明したいと思います。タイトルとして、「魚介類に よる水銀の摂取量について」としておりますが、まず、1番で1日摂取量の調査結果、 これは先ほど見ていただいた数字でございますが、トータルダイエットスタディによる と、平均で8.4マイクログラム/人/日ということでございまして、これは注に書いて おりますように、あくまで総水銀の摂取量でございますが、仮にこれがすべてメチル水 銀であると仮定した場合において、既に決められております週間耐容摂取量、これはJ ECFAのものと全く同じでございますが、これと比較すると35%程度になるというこ とでございます。  2番で、今回いろいろな水銀の摂取量を試算していく上で、その比較となる数字をど こに置くのかということで、3つの試算を行ってみました。まず最初の試算が(1)の (1)及び(2)でございますが、先ほど申し上げた我が国あるいはJECFAの週間耐容摂 取量が0.17ミリグラム/人/週でございますので、これを7で割って1日当たりに換算 する。その上で、(1)でございますが、トータルダイエットスタディの結果を見てみま すと、総水銀の摂取量のうち魚介類が占める割合が87.6%でございますから、今回魚介 類からの摂取を試算する上で対象とするには魚介類以外のものを除かなければならない ということから、魚介類以外のものを除いたというのが23マイクログラムでございま す。これが(1)でございます。したがって、この数字は、例えば1週間に今から試算す る魚だけしか食べないという前提に基づいておりますので、若干数字としては過大なも のだろうと思います。  (2)でございますが、同じ試算の上で、総水銀の平均摂取量8.4マイクログラムという のをすべて除く、すなわち平均的な食生活からとっている総水銀をすべて除くというこ とでございますから、これを試算しますと15.6という目安が出てくるわけでございまし て、これは値としては、すべて除いておりますから、当然そこで平均的にとっている魚 からの水銀も除いておりますので、そういう意味では値としては過少なものだろうとい うふうに考えております。  (2)でございますが、先ほど来佐藤先生から非現実的なものではなかろうかという ような御紹介もいただいたわけでございますが、仮にアメリカのEPAが出しましたリ ファレンス・ドーズ、これを基に先ほどの(1)でございますが、すなわち魚介類以外か らの摂取量を除くと4マイクログラム/人/dayというのが目安とする数値として出て まいるわけでございます。  (3)でございますが、これは用語を改めていただきたいんですが、ここでは1から 6歳を試算しておりますので、そういう意味では「小児」ではなくて、「幼児」という 言葉の方が適当だろうと思います。1歳から6歳の試算ということです。それを同様に 行ったわけでございます。  一方、用いましたデータは、先ほど紹介させていただいたデータを、3ページの表の 右下に注がございまして、厚生労働科学研究の調査結果、各都道府県の調査結果、水産 庁の調査結果、これをすべて合わせております。約300種、約2,600検体の調査結果にな ります。文献も報告しましたし、国水研のデータも報告させていただいたわけですが、 ほぼ似通っておりますから、大体これで総枠はとらえているんだろうと考えておりま す。これにアメリカとイギリスの検査結果を合わせた上で、メチル水銀ですと0.3ppm、 総水銀ですと0.4ppmを超えるものを一覧表にしたものがこの表でございます。すなわ ち、全体をまとめて、その上で一定数字以上のものをここにリストアップしたというこ とになっております。  これをごらんいただきますと、まず最初はアマダイでございまして、アマダイは右に *1となっておりますが、先ほど申し上げましたように、外国と日本で違うようでござ いまして、左側の日、米、英のデータをまとめたものの総水銀量の平均が1.31に対し て、日本のデータは0.09と大きな差があるというようなことでございます。  カジキについては、クロカジキ、メカジキ、また下を見ていただきますと、*3にマ カジキのデータがありますが、カジキの種類によってかなり違うようでございます。  次にギンダラでございますが、ギンダラは総水銀とメチル水銀のデータが大きく逆転 をしております。メチル水銀が非常に多くなっているということから、データとしての 信頼性がちょっとあるんだろうと考えております。  更に、サワラ、あるいはニジマス、ブリ、マダイ、メロというような右に*1、*2 と書いたものについては若干の問題があるんだろうと考えています。その上で、4ペー ジでございますが、今見ていただいた調査結果の中から*印があるものを除いたものに ついて分析をしております。すなわち、一番左に魚種を書いて、その次が国民栄養調査 の平成10年から12年の調査結果、3万9,000人弱の中で、例えば1番目のクロカジキで すと、カジキを食べたというふうに答えた方の平均の摂食量65.3グラムを書いておりま す。その次の欄が、食べた人は210人、そのパーセンテージ、更に先ほどの調査結果の 数字、水銀濃度がここに出ております。それを掛け合わせた上で、赤と黄色と薄い緑の 3色に分けておりますが、一番下で書いておりますとおり、赤が我が国の現在の耐容摂 取量から魚介類以外の摂取量を除いた目安として23マイクログラム、黄色が魚介類も含 めてすべて平均的な摂食、水銀の摂取量を除いた目安として15マイクログラム、薄い緑 がEPAのリファレンス・ドーズから魚介類以外のものを除いた目安として4マイクロ グラム、これを超えるかどうかというのを試算しているわけでございます。  例えばクロカジキですと、平均的な摂食者平均の1日65.3グラムで水銀濃度の平均で ございます0.44という数字です。それを1週間毎日食べると、28.73マイクログラムを 摂取することになるということを示しております。したがって、1つの目安としては、 週6日食べると最初の目安であります23マイクログラムを超える。次に、週4回食べま すと、次の目安である15マイクロを超える。週1回食べますと、EPAのリファレンス ・ドーズから計算した目安を超えるというふうに見ていただければありがたいと思いま す。  この中で御注意願いたいと考えておりますのは、検体数というのがある程度限られた ものが一つはある。例えばメヌケとか、ウスメバルは2例とか3例のデータ、あるいは マンボウですと1例のデータであということが1点です。  2点目には、ちょうど中ほどにございますが、インドマグロ、クロマグロ、メバチマ グロとございますけれども、こういったマグロ類というのは、この摂食者平均というの は魚種ごとに出ておりまして、刺身で食べるのか、焼いて食べるのか、煮て食べるのか までのデータはとられておりません。推測するに、マグロ類は刺身で食べられる率が非 常に多くて、そのために摂食量というのが少ないのだろう。それ以外の魚というのは1 切れが60グラムから80グラムありますから、そういう意味で摂食者平均というのは60か ら80グラムになっているんだろうというふうに考えております。  一方、下の表が90%tileを表したものでございますが、この点につきましては前回の 部会で伏谷先生の方から御指摘があったように若干の問題があるんだろうと思いますけ れども、この特徴というのは、大体の魚種が平均と90%tileを比べますと2倍程度であ るのに対して、マグロが5倍程度になっているという点でございます。勿論、マグロに ついて申し上げますと、キハダでございますとか、ビンチョウでございますとか、そう いうものというのはこの解析の対象となっていないように非常に低い値を示しておりま す。  次のページが妊婦の摂食量を基に解析した数字でございますが、左から3番目の摂食 者数の欄を見ていただきますとおわかりいただけますように、3年分を合わせても181 人しかございません。また、それぞれの魚種にしますと、マグロは多うございますけれ ども、カジキとかは1例のデータでございますので、これはそれほど参考にならないの かなと思っております。  その次のデータが幼児、1から6歳を同じように分析したデータでございます。この データも、やはり1から6歳ですと余り魚を食べないのか、マグロ類を除くと余り量的 に多くないので、余り参考にならないのかなと思っております。  その次の7ページのデータは、先ほどごらんいただきました結果が日、米、英のデー タをまとめたものと日本のデータのみのものに分かれておりましたけれども、これを日 本のデータのみのもので解析したわけでございますけれども、傾向としては日、米、英 をまとめたものとそう変わりはないというふうに考えております。それが普通の摂食者 全体、妊婦、幼児とございます。  最後の10ページをごらんいただきたいと思います。これがクジラ類について同様に試 算したものでございまして、ツチクジラ、バンドウイルカ、イシイルカ、コビレゴンド ウ、ミンク、ニタリ、マッコウという形で、先ほど御説明申し上げました実態調査結果 から同じような試算を行ったものでございます。  以上でございます。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。御質問、あるいは追加御意見はございますでしょう か。 ○坂本参考人  国水研の坂本ですけれども、マグロが3種類ありますのがすべて摂取量が同じになっ ていますね。それとクジラもいろいろな種類がありますけれども、市場に出ているのは ほとんどがミンククジラだと思うんですが、すべてが同じ摂取量になっているのはどう いう理由でしょうか、お教えください。 ○中垣基準課長  説明が足りずに申し訳ございません。4ページをごらんいただきたいと思います。ま ず、最初にカジキから御説明いたします。カジキは、先ほど申し上げましたように、大 きく分けるとクロカジキ、メカジキ、ここには出ておりませんが、マカジキと3種類あ るんだろうと思いますけれども、国民栄養調査上はカジキとしてしか集計しておりませ ん。カジキとしての摂食量が65.3グラムであったということでございます。同様に、マ グロも高級と申しますか、高価と申しますか、インドマグロ、クロマグロのほか、メバ チマグロ、キハダマグロ、ビンチョウとあるんだろうと思いますけれども、マグロとい うことで集計しておりますので、その内訳までわかっていないというのが一つございま す。クジラについても同様でございます。 ○熊谷部会長  よろしいでしょうか。 ○佐藤参考人  先ほどアメリカのRfDの話が出て、私も非現実的だと言ったんですけれども、その 非現実的という意味は、日本にそのまま持ってくるのは非現実的だろうというつもりで 申し上げました。  RfDの計算する基になったベンチマークドースそのものは、非常に科学的によく考 えられて出されているんだろうと思います。ただ、それに不確定係数というんでしょう か、安全性を保つためにいろいろな計算をするわけですけれども、それのつくり方が、 これはポリシーの問題だというふうに言っていますので、我々が口を挟むことではない んですけれども、少し大きいのかなという感じです。ですから、ベンチマークドースそ のものはかなりきちんと計算されたものですし、あるいは我々もそれ自身は、ベンチマ ークドースというのは集団の中で何か起こり始める値でしょうというふうに考えられる わけですけれども、そういう意味では正しいものだと思います。  魚の話になりますと、先ほども課長がおっしゃったように、魚種の特定とか何かは難 しい話だろうと思いますけれども、あと大きさに注意する必要があるんだろうというふ うに思います。というのは、魚のメチル水銀の代謝というのは、ヒトとか哺乳類とは 違っていてかなりゆっくりなわけで、場合によっては恐らくたまり込む一方という可能 性もありますので、大きいものは水銀の濃度が高いということになっておりますので、 ここではそこまでデータをとるのが非常に難しいのかもしれませんけれども、大きさを 注意しないと違うことを見る可能性もあるというふうに思います。  以上です。 ○熊谷部会長  先ほど魚の実態調査の方で、水銀の汚染濃度は10倍ぐらい最小値と最大値に開きがあ るのが結構ありましたけれども、そういう個体差というのはエージでほとんどいくと考 えてよろしいんでしょうか。 ○佐藤参考人  多分年齢だけではないと思いますけれども、年齢というか、大きさでかなり規定され るものだというふうに思います。例えば1から10まであるうちのどれくらい説明するか というのはちょっとわかりませんけれども、例えば3とか4ぐらいの割合では説明し得 るものだろうというふうには考えております。 ○熊谷部会長  例えば、エージか、あるいはサイズかはわかりませんけれども、十分な実態調査をし た上ですと、可能性として、例えば何キロ未満を食べるようにしましょうとか、そうい う話になり得るものなんでしょうか。データがないとわからないでしょうけれども。 ○佐藤参考人  それは私はよくわかりません。むしろ吉池先生の方が御専門なのかもしれませんけれ ども、実際に市場に出てくるものはほとんど切り身ですよね。だから、大きさを考えな ければいけないと言いながら、それを考えるのは非常に難しいとしかお答えのしようが ないんですけれども。 ○吉池参考人  今の話の前に、摂取量データのマグロのところで補足をさせていただきたいと思いま す。摂取者の平均値が比較的低いことのもう一つの理由として、国民栄養調査の学校給 食の取扱いで、これは詳細に何を食べたかまでは聞けませんもので、もともとの目的が 栄養素や食品群の摂取量の国民の平均値を求めるということがあるため、学校給食とい うコードの中ではマグロが魚の中では比較的多く使われているためにマグロを食べたと いうような形でコード化されているということがございます。そういう意味で、ここで のサブグループの解析にはございませんが、学童・生徒での摂取量を見るときには、そ の辺も勘案しなければいけないと思います。  国民平均で見たときにも、若干そのようなことが影響している可能性があるかと思い ます。学校給食のデータだけを分離してということも、無理をすればできなくはないの ですが、特に少し古いデータセット上では分離することができないので、今のような形 の整理になっているといます。  もう一つは、先ほどのマグロだけではなくて、クジラとかイルカの摂取量のデータに ついては、そもそもそれに適合するものがないわけで、恐らく個々のものについて正確 な摂取量のデータから積み上げて暴露量の数値を細かく出すということではなく、むし ろ情報提供として、こういう食品に対して平均的にこのぐらいの残留量があって、それ を通常の食べ方をしたときには、プラスでこのぐらいの暴露が予測されるということを 示すような形が有用ではないかなと思います。  そういうような情報提供をするとともに、魚等についてもかなり地域とか季節によっ ての変動もありますので、個人の暴露量を評価するための質問票や、調査法少し工夫し ていく必要があるのではないかと感じております。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。今のおっしゃったお話で、食事指導というような形 なんだと思うんですが、要するに、問題は暫定基準値を超えるものがぽつぽつあるとい う実態があるということ、それからお示しいただきました耐容週間摂取量を3通り置い ていただきまして、それを超えないレベルというのは週に何回というようなまとめの図 をお示しいただいたわけですけれども、こうした部分で従来の規制に加えて新たな規制 が必要かどうか。先ほど食事指導、情報の提供というお話がありましたけれども、そう いった仕方での対応が必要かどうか、それでよろしいかどうか、その部分に議論を進め たいんですけれども。 ○井上委員  結論が出ていないむだな質問をすることになるのかもしれませんけれども、佐藤先生 のお話で、ホッケースティックタイプのカーブが書いてありましたけれども、もう一方 で、米国はベンチマークで求めたリファランス・ドーズを求めているわけですね。ス レッシュホールド(閾値)があるのかないのか、立場の違いがあるんだろうと思うんで すけれども、これは先生のお立場ではどう考えるべきなんでしょうか。というのは、こ れをベンチマークで求める立場から考えると、先生も日本への適用は非現実的だとおっ しゃっているように、実際問題としては国民の摂取量をみんなカバーしてしまうわけで すね。そういう意味で、どう考えるべきなのか。毒性学の問題としていかがなのか、伺 いたいと思います。 ○佐藤参考人  随分難しい質問をいただいて、私もどう答えていいか困るんですけれども、何を対象 として見るかによって、検査するかによって、バックグラウンドがあるかどうかという のは恐らく違うんだろうと思います。ただ、今我々が問題にしているようなレベルとい うのは、恐らくいろいろな外乱というか、環境要因の暴露で起こり得ることで、例えば これがメチル水銀のスペシフィックな症状だという、例えば水俣病における中心性視野 狭窄のようなものではないんだと思うんですね。そういう意味では、バックグラウンド があるというふうに考えておいた方がいいのかなと思いますし、それからベンチマーク でやった方がいいのかなという気もします。  ただ、イラクのデータでお示ししましたように、もう一つロジットモデルというのも あって、あれはバックグラウンドを想定しているモデルなんですね。ただ、あれでやっ ても、要するに10から20の間で5%のリスクというのは変わらないんですね。  実は、今、ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスがRfDの見直しを図ってい るようですけれども、これが先ほど御紹介したニュージーランドの調査をアナライシス したりとか、フェロー、セイシェルのデータ、セイシェルはちょっとポジティブな結果 がないので問題はあるんですけれども、いろいろなエンドポイントでベンチマークドー ズをやってみると、ベンチマークドーズのエルが大体似たような値に実はなっているん ですね。それは我々が考えてもリーズナブルな値で、母親の毛髪中だと大体10くらいだ ということなので、何をやっても10とか11ぐらいが一つの値として出てくるという意味 で、余り私はバックグラウンドがあるかないかということも気にはしていないんですけ れども、どうも井上先生のサイエンティフィックな質問に余りお答えできなくて申し訳 ありません。 ○熊谷部会長  よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。 ○馬場参考人  これから議論に入るに当たって、先ほどの資料6の4ページからの表をもう一度確認 しておきたいんですけれども、摂食者数3万8,849人中何人というのは、これはどういう 調査を使ったんでしょうか。 ○吉池参考人  では、私の方から説明させていただきます。国民栄養調査が毎年毎年独立したサンプ リングで日本全国をカバーするような形で行われておりまして、約1万3,000から4,000 名程度になります。サブグループの分析、あるいは非常に摂取頻度の少ない食品を分布 まで見ようということで、3年分を合わせて約4万名程度のデータセットとして解析し ているということでございます。ですから、その4万人の1日の食事のデータがあっ て、4万人中、任意のある1日でその食品を摂取した人が何%であって、その摂取した 人の中での摂取量の平均値、あるいは90%tileというようなものが示されているという 形です。 ○馬場参考人  地域性はランダムサンプリングか何かで。 ○吉池参考人  もともとは国勢調査の地区に当たりますけれども、全国からランダムに300 地区を選 び出して、そこに属する世帯を抽出しているということです。 ○熊谷部会長  マグロについては、例えば90%tileで1日100グラムちょっとですね。それの意味す るところは、この3万8,000人中で1,038人以上が1回に100グラムよりたくさん食べる という理解でよろしいんですね。 ○吉池参考人  ここで、1万名ぐらいが摂食者としてカウントされて、その中の90%tileですから、 その上位の1,000名ぐらいは100グラム以上とっているという理解です。 ○熊谷部会長  その場合に、もしかすると毎日とっている人もいるだろうし、そういう人はまれかも しれないし、1週間に1回ぐらいの人もあるポピュレーションで、ある頻度でいるだろ うという理解でよろしいんですか。 ○吉池参考人  個人の習慣的な摂取量、食事というのは1日だけの調査では測れません。日間、個人 内の変動はあるにしても、個人の特徴もあるかと思うので、なかなか評価が難しいとこ ろです。今回1日だけのデータしかないということで、仮にこのデータから週に1回、 週に2回ということを、各々の摂取がインディペンデントに行われたと仮定して、積み 上げとしてこういう整理をされているんだろうと思います。より本質的には、習慣的な 多量摂取者を把握されると望ましいということになります。 ○水産庁  この調査の制約から、例えばマグロ類が1本で、項目別にインドマグロ、クロマグ ロ、メバチマグロ、それから一般の消費者が食べる代表的なマグロにキハダマグロがあ るんですが、マクロで見ますと、国内では外国からの輸入ものと国内生産を合わせて、 クロマグロが約1万9,000トン、ミナミマグロが1万1,000トン、メバチマグロが14万 7,000トン、それからキハダマグロが14万4,000トンでございます。ですから、ほとんど がメバチマグロ、キハダマグロでございます。  ですから、理屈の上では、インドマグロはインド洋で初めてとられたものですからイ ンドマグロという商標名がついていますが、学名上はミナミマグロですが、このインド マグロとクロマグロをこれだけ食べている人は、確率上、量的に見てもまずないだろう と思いますし、それから値段の方からいっても、最近ぼちぼち蓄養ものがスーパーに出 ていますけれども、少なくとも私どもは年に一、二回食べるかどうかですので、まずな いだろうと思います。  したがいまして、もしこういうふうにたくさん食べるという人がいるとすれば、メバ チマグロとキハダマグロだろうと思います。これはマクロの話でございまして、ミクロ の話ではございません。 ○熊谷部会長  課長、御意見はございますか。 ○中垣基準課長  先ほどの部会でも伏谷先生から言われたとおり、摂食量にも分布があって、汚染量に も分布があって、その中でこういった90%tileの持つ意味というものについて、伏谷先 生から疑義が提示されたところでございます。  一方では、このデータを見てみますと、平均と90%tileではマグロのところだけ大き く五、六倍というぐらいで、それ以外のところは二、三倍程度で収まっているという大 きな違いがあるということで、そういう意味から申し上げると、魚の専門家、あるいは 調理の専門家に御解釈いただけるとありがたいなというふうに思っているところでござ います。 ○吉池参考人  もともとのデータの質というか、どういうところまでの情報が得られているのかとい うことも考えなければいけないかと思います。私は先ほど、個々の魚の種類で数値を当 てはめるのは、そもそもしんどいことであるという話をさせていただきました。1つに は、こういう食事の調査は、かなり詳細に記録をしていただいているわけですが、とは 言いながら、マグロというところまでわかっているけれども、種類までわかって食べて いない場合もかなりある。そうしたとき、現実的には、調査を行う管理栄養士等が実際 の流通の状況その他を勘案して、比較的頻度の高いものをはめているというような状況 もあります。ですから、摂取量のデータを見るときにも余り細かい話というよりは、一 つのまとまったカテゴリーで見ていく方がより妥当であろうと考えられると思います。  情報提供という話をしたときも、これも結局消費者が区別できる範囲で示さないと、 余り細かく言っても、食事指導的なことがなかなかやりにくいということもありますの で、その両者を考えてある程度のくくり、整理をする必要があるかなと感じます。 ○馬場参考人  先ほどのマグロの件ですが、公的な統計としては、家計調査年報の家計調査というの がありまして、それもマグロ類一括になっています。ただ、これは全国の県庁所在地レ ベルで年間の家庭の消費ですけれども、各サンプル家庭に家計簿をつけてもらうという ようになっていまして、購入量と金額を記録するということになっています。  マグロは、勿論魚介類の中では比較的摂取量が平準化しつつある魚種ですけれども、 それでも非常に差がありまして、一番食べる県は静岡県で、これは県庁所在地レベルで すけれども、次が山梨県だと思うんです。これは静岡に漁港がありますから、非常に安 いマグロが出ていっているという実態なんですけれども、それに対して西の方、九州で すとかは非常に少ない。  あと、地域別にマグロの種類もある程度決まっていまして、関東から東はメバチ、東 海から近畿にかけましてはキハダで、九州は非常に少ないです。それでも種類としては メバチで、これは私も昨年から今年にかけて大手の量販店の調査を都市圏でしましたけ れども、非常にきれいに傾向が出てきました。  その中でも、これは今の景気もありますけれども、安いマグロに消費が移っていまし て、メバチは多少高いんですけれども、いわゆる大バチといって100キロを超えるような バチマグロは非常に高いですから、スーパーにはほとんど出てきません。差別化商品と して棚の小さなスペースを占めるだけで、ほとんどが中バチ、小バチ、いわゆる業界で 言う言葉ですけれども、そういう価格帯でしか出てきません。キハダマグロもそういう 価格帯ですし、クロマグロ、インドマグロは誕生日か何かの晴れの日にしか出てこない という程度で、スーパーでも差別化として置いてあるけれども、商品としてはいわゆる 一般的に出回るものではない。それが流通とか消費から見た実態だと思います。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございました。 ○鈴木(久)委員  魚に関して、いわゆる食生活指導をこれまでしているかということは、恐らく水銀の 問題との兼ね合いで食生活指導というのはほとんどされていないという現実がございま す。むしろ、魚というのは食べましょうというのが今の違った意味での魚の効用がうた われてきていて、むしろ肉よりも魚という形になっている中で、例えばここで議論され たものがそのまま出てきたときに非常に混乱するだろうということが1つございます。  もう一つは、先ほどからマグロが話題になっておりますが、確かに最近は表示をきち っとするようになりまして、それが正しいかどうかは別として、スーパーですべて何マ グロという表示がされております。ですから、大体消費者は値段との兼ね合いの中でそ の辺を選択しているということが1つ。  それから、摂食者の平均値といったようなものが、先ほど吉池先生のお話で学校給食 が関与しているからこういう値になっているんだというお話がございましたけれども、 それとは別に、普通食事としてマグロを食べるとすれば大体刺身でございまして、そう すると、刺身は一人分盛りつけたときに、たっぷり食べれば100グラムはごく普通に私 どもは酒を飲みながら食べている量でございます。その辺のところと実際の実感とこの 数値とがずれがあるような気がしております。  もう一つは、これらのものがどのような形で、例えば妊婦に対してある程度この辺の 規制をした方がいいということについては、何かあるらしいけれども、まだ科学的にき ちんと説明されていないんだとすれば、下手な情報を流したときにむしろマイナスの効 果が出るのかなということを含めまして、情報の提供の仕方について、先ほどのカドミ と同じようなことで少し御配慮いただいた方が今の段階ではよろしいかなと考えます。 ○熊谷部会長  ほかにございますでしょうか。 ○佐藤参考人  話を戻してしまうようで申し訳ないんですけれども、先ほど水産庁の方がマクロの話 をされたので、ミクロの話なんですけれども、静岡がマグロの消費が多いという話です けれども、私自身の調査の研究で、静岡県の方が大変高い血中水銀値を持っていたこと がありました。その方に、後でというか、その測定値を見てあわてて連絡しましたら、 毎日マグロを食べて酒を飲んでいるということでした。どれくらい高かったかという と、水俣病の発症の最小値が200ナノ/ミリリットルといわれているんですけれども、 その半分くらいでした。ただ、極端な食生活をすると、それくらい上がる可能性はある んだと思うんですが、その方は毎日マグロを食べているという方でした。  もう 1点質問なんですけれども、よろしいですか。事務局にお伺いしたいんですけれ ども、No.6の1の摂取量の調査結果というのは、これはどういう調査なんでしょうか。 大体8とか9マイクログラム/日になっているんですけれども、これはパー・パーソン だと思いますが、先ほど秋田の調査ではこの倍くらいの摂取量だったですね。FFQで 食品摂取頻度調査で出しているので実測ではありませんけれども、現在の日本人の髪の 毛の水銀値から考えると、この摂取量は若干低いのではないかというふうに私は思うん ですけれども、これの根拠となった研究を教えていただけるとありがたいんですが。 ○中垣基準課長  この結果は、国立医薬品食品衛生研究所を中心に、各地方衛生研究所の御協力を得て 実施しておりますトータルダイエットスタディの結果でございます。 ○坂本参考人  この8.4というのを、これは50キロの人が食べたとしますと、1日当たり0.16マイク ログラム/kg/day となって、毛髪水銀部分に直しますと、1.6ppmに相当するんでてす ね。これは実態からすると、かなりアンダーエスティメイトされているかなという気が しないでもないです。 ○中垣基準課長  エスティメイトでも何でもなく、これは調査結果そのものでございますから、それ以 上どうのこうのいう話ではございません。  トータルダイエットと申しますのは、食品を水を含めて8群でしたか、10群ぐらいに カテゴリー分けをして、国民栄養調査の結果から、例えば米ですと160グラム食べる、 更に魚をトータルで例えば100グラム食べるということになりますと、スーパーマーケ ットに幾つか行って米を買ってきて通常の調理をして、魚も買ってきて通常の調理をし て、その上でミキシングして、それで測っている。それを国民栄養調査の結果にもどっ て、米だと160グラム、魚ですと魚全体で百何十グラムという形で積算をして出したも のでございます。 ○吉池参考人  恐らくマーケットバスケットでの実測値に対する解釈としては、そこの買い上げをし たときに魚についてどこまで細かく特定をしてサンプリングをしているかということが 値を解釈する上では必要になってくるかなと思います。 ○熊谷部会長  よろしいでしょうか。それを含んだ上で先ほどの図を見ていただくということになろ うかと思います。  今までのところ、仮に食事指導をした場合の注意点ということについて、幾人かの先 生から御意見をいただいたんですけれども、食事指導ではちょっと足らないのではない かというような御意見をお持ちの先生はいらっしゃいますでしょうか。あるいは、食事 指導も別になしでいいのではないかというような御意見はございますでしょうか。  先ほどのお話ですと、突如水銀が増えたわけでもなさそうなので、このままにしてお いてもいいのかなという考え方も勿論あると思うんですけれども、そこらはもっと厳し めの規制があった方がいいのではないかとか、仮に食事指導、情報を流すとして、それ は問題のマグロを含めるかどうかとか、そこらの御意見をいただければありがたいと思 うんですが、もしございましたら是非お願いします。 ○鈴木(久)委員  質問ですが、いわゆる胎児の問題を考えましたときに、母子保健の領域の先生方はこ の辺のところについて何か見解をお持ちになっていらっしゃるんでしょうか。いわゆる 産婦人科の先生のあたりの栄養指導といったようなところも含めて、そういう御研究が 既に出ているんでしょうか。 ○熊谷部会長  いかがでしょうか。どなたか御存じでしょうか。 ○佐藤参考人  私は答える立場にはないと思うんですけれども、母子保健の先生方が関心を持たれて いるかというと、多分ないと思います。我々水銀の研究をしている連中が昔から関心を 持ってきて、ようやく研究を始めたというレベルだと思います。我々も、こういうとこ ろで一緒にやってくれる先生方を探したんですけれども、非常に難しかったから、多分 ないんだろうというふうにしかお答えしようがないんですけれども。 ○香山委員  関連してですけれども、水銀のこともそうですけれども、欧米では鉛の暴露によって 子どものIQが低くなるという報告がかなりたくさんされておりますが、日本での鉛の 暴露が非常に低いだろうということで、ほとんど鉛を研究している人もいなかった、ほ とんど最近データが出てきていないというのが現状でありまして、ここら辺の調査研究 も、水銀も含めて、やはり少し長期的な目で調査研究する必要があると思います。 ○佐藤参考人  追加させていただいていいですか。先ほどの鈴木久乃先生のお答えで申し上げなかっ たんですけれども、水銀の問題にしても、香山先生がおっしゃった鉛の問題にしても、 やはり一番気にしなければいけないサブポピュレーションが胎児であるということだけ は間違いないと思うんですね。あるいは、胎児から出生後の成長みたいなものを見なけ ればいけない。多分日本はそういう研究というのはほとんどなされてこなかったんだろ うと思うんですけれども、一部はあったかと思いますけれども、時間がかかるというこ とで、研究者がそういうところを手を染めていないところが問題だろうと思いまして、 自分たちで始めてみても、結果が出るのが7年後、10年後ということなので、なかなか できないなという気がします。 ○熊谷部会長  今後の調査研究については勿論そうなんですが、実態調査結果が出た段階で、現在、 食事指導というお話が出ているわけですけれども、その方向でよろしいかどうかについ てはいかがでしょうか。 ○吉池参考人  質問ですが、資料の183ページは大くくりに各国での食事指導という言葉でもう既に 説明はしていただいたんですが、具体的な内容ではなくて、どういうところがどういう チャンネルを通じて何をしているのか、例えば資料No.5−2を見ると、FDAの CONSUMER ADVISORYからの何か情報提供的に見えるんですが、その辺の各国の取り組み についてお教えいただけたらと思います。 ○中垣基準課長  我々も、各機関のホームページでございますとか、新聞報道でございますとか、そう いうものからつかんだ情報でございまして、例えば日本で申し上げますと、保健所で やっている妊産婦教室みたいなところでどういう形で提供しているかといったところま での情報というのは持っておりません。ただ、FDAのこういった指導、あるいはイギ リスの指導というのはメディアにかなり大きく取り上げられておりましたので、それな りにインパクトはあったんだろうと思います。 ○吉池参考人  この辺は、行政的な形での通知で地域保健の現場に対して何か勧告をするとか、そう いう形でもまだないという感じでしょうか。 ○中垣基準課長  我が国と違って、余り通知をしないと思うんですが、ホームページを見てみると、ア ラートみたいな形で仰々しく書かれておりますが、地域保健のことまでは書かれており ません。 ○熊谷部会長  少なくとも情報提供というのは必要な気がするわけですね。つまり、これを隠しおお すというわけには恐らくいかないんだろうということで、少なくとも情報提供する。そ の場合に注意喚起ということで、プライオリティーからすると恐らく妊婦ということ で、魚種を指定するとすると、先ほど表に挙げていただいたような魚種という形、ある いは肉食魚とか、そういう含めた言い方にするとか、いろいろあろうかと思いますけれ ども、その部分でどういうふうに情報を出すかについて御意見はございますか。 ○丸山委員  食事指導というのが私はよくわからないんですが、情報提供というのは、先ほどのカ ドミの場合は実態がこうですよ、その判断は各個人でしていっても大丈夫でしょう、と もかく情報というものを出しましょうと。  この食事指導というのは、183 ページにあるのは、各国がみんな「食事指導」という 名前で出しているかのかどうか、私はよくわからないんですが、情報提供から一歩踏み 込んでいますよね。何とかすべきであると。それをどういうふうにするのかというとこ ろをはっきりさせておかないといけないのではないかなという感じがする。単に、デー タがこうですよという情報提供にとどめておくのか、カジキマグロだったらどうです よ、何グラム以下にすべきですよというふうに言うのか、その辺を整理して、食事指導 ということをちゃんと定義してから先に進んでいかないといけないのではないかと感じ ます。 ○熊谷部会長  丸山先生が今おっしゃられた点を実はお聞きしたいんです。どういうふうに情報を出 すのか。 ○佐藤参考人  私も丸山先生の御意見に賛成です。フェローの場合は、先ほど申し上げましたよう に、ゴンドウクジラというのがはっきりしていました。ちょっと細かい内容は忘れてし まったんですけれども、妊婦さんたちに対して、クジラをとるのが月に一、二回にしな さいよとか、クジラの脂身は妊婦さんはとらないようにしてくださいとか、そういうか なり具体的な指導をしたわけですね。恐らく母子保健の場で指導したんだと思うんです けれども。  その結果、母親の毛髪中の水銀値というのは3分の1以下ぐらいに下がっています。 非常に効果があったわけですね。ただ、フェローというのは島国で、4万8,000人ぐら いしか人口はおりませんし、それから北欧の一つの地域ですから病院のシステムが非常 に上手にできているので、多分日本の母親学級みたいなものがうまく組織できたんだと 思うんですけれども、そういうところではターゲットを絞った食事指導でうまくいった んだと思います。  これから先はお願いなんですけれども、日本でやるとしても、先ほど丸山先生がおっ しゃったような注意が必要なのと同時に、具体的な注意というか、指導がいいと思うん ですけれども、もう一つはその結果、魚を食べなくなってしまうような人たちが出てく るとやはり問題だろうと思うんですね。日本人が高寿命で、今はわかりませんけれど も、知的レベルも高いというのはかなり魚を食べているところがあるんだろうというふ うに思いますけれども、そういう生活習慣とか生活文化みたいなのが壊れてしまうのは 非常にまずいと思いますので、その辺の注意が大変重要だろうと思います。具体的にど うしたらいいのかというのは私はよくわかりませんけれども。 ○熊谷部会長  御意見はございますか。 ○長尾委員  このマグロのデータがよくわからないんですが、20グラムのマグロを3万8,000人のう ち3万人が食べているというのは、これは何か計算間違いで、60グラムを3,000人が食 べているということでは。 ○熊谷部会長  どうぞ。 ○中垣基準課長  説明不足だったかと思いますけれども、マグロはここでインドマグロ、クロマグロ、 メバチマグロと3種類書いておりますが、国民栄養調査の結果は一括してマグロとなっ ております。マグロとして21.2グラムでございます。ですから、このデータは水銀の摂 取量を試算しておりますから、インドマグロを21グラム食べた場合、クロマグロを21グ ラム食べた場合など、それぞれに試算しています。要するに、食生活の中でマグロもイ ンドマグロもメバチマグロも同時に食べたということを考えているわけではございませ ん。 ○長尾委員  では、ここのマグロのところは3つ合わせて考えるわけですね。 ○中垣基準課長  ほかの項目も全く同様でございます。例えばカジキのところを見ていただきますと、 クロカジキとメカジキというのは同じ数字が出ております。これもカジキとしての摂食 量を考えておりますので、同時に食べるということを考えているわけではございませ ん。 ○長尾委員  そうすると、キンメダイのところとカジキ、カジキは2行をまとめて1つと考え、ど ちらを読んでもカジキの1行だけをデータとして採用し、マグロの3行は1行が代表し ていると。この意味が、私はよくわからなったんです。 ○中垣基準課長  仮にマグロですと、要するに、国民栄養調査からわかるのはマグロを食べたというこ とだけわかるんです。その人が仮にインドマグロを食べていたら、水銀摂取量はどれぐ らいになっているかという仮定でございます。ですから、その人はインドマグロを食べ ているかもしれないし、クロマグロを食べているかもしれないし、メバチを食べてい る、あるいはキハダかもしれない。 ○長尾委員  だから、マグロという項目は、マグロを20グラム食べたのか、60グラム食べるのなん ですね。 ○中垣基準課長  マグロは21グラムです。 ○長尾委員  そうすると、マグロを食べた人は1万人なんですね。ですから、カジキのところは横 にだけ見るんですね。 ○中垣基準課長  横にだけ見ていただきたい。足し算する気ことは想定しておりません。 ○長尾委員  わかりました。 ○熊谷部会長  この情報の出し方について御意見は。 ○伏谷委員  外国だと、割とある特定の種類ばかり食べるという例がありますよね。ですから、こ ういうのは出しやすいと思うんですけれども、日本の場合はいろいろな種類のものをか なりまんべんなく食べているということがありますので、ある特定のものをそんなにや たらと食べません。したがって、こういう指導をするという効果は余りないのではない かと思います。 ○熊谷部会長  しかし、結構極端な食べ方をする人が全くいないというのはなかなか難しいんです よ。ですから、そこの部分に警告が必要かどうかという考え方だと思うんです。それ で、食事指導の中身の部分はまだよく検討した方がいいだろうという御意見で、しかし 食事指導という言葉を使うかどうかはともかくとして、情報を提供する中身として、や はり役に立つ、つまり食べ過ぎて胎児がおかしくなってしまうという事態を避けるため の何らかの情報をその中に入れる必要があるんだろうということでは、そういう情報を 出すということについては特に御反対される先生はいらっしゃらないと思うんですけれ ども、いかがでしょうか。その出し方についての御意見を是非いただきたいんですけれ ども。  そうしますと、もしこれ以上御意見がございませんようでしたら、少し時間をいただ きまして、事務局、どうぞ。 ○中垣基準課長  資料No.6の4ページをごらんいただきたいんですが、先ほど丸山委員からカドミの イカの塩辛の問題と今回の水銀でどういうふうに考えるのだろうかというような御質問 がありましたし、佐藤参考人からも同じことがあったわけですが、問題となりますの は、この4ページで申し上げますと、特に4ページの上の表で考えるんだろうと思いま すが、赤で判断するのか、黄色で判断するのか、薄緑で判断するのか、それによって問 題の性質が全く異なるんだろうと思います。  仮に薄緑というのは、先ほど佐藤参考人の方から、日本にそのまま適用するのはデー タ的にも矛盾があるようなお話がございましたけれども、薄緑を適用すれば、サメだと 2週間に1回食べただけでも、場合によっては何かの影響が出るという可能性があると いうことでございますし、黄色で判断するということになりますと、サメとか、データ は限られておりますが、メヌケ、ウスメバルというのは週1回にすればいいということ になるんでしょうし、赤で判断することになると、一番大きいのがサメとメバルでござ いますか、週2回まで大丈夫ということになるわけでございますから、このうちのどれ で判断するのかによって、どういうたぐいのものを情報として発信するのかというのが 異なるんだろうと思います。薄緑は日本人のいろいろな調査結果からいっても、ちょっ と合わないんだろうというような話があったわけでございますけれども、どのレベルで 判断するのかによって、中身も違うことになっていくんだろうと思いますが、そこの点 はいかがでございましょうか。 ○熊谷部会長  魚種を示して、魚種を含めて情報を提供するという場合なんですけれども、どなたか 御意見はございますでしょうか。 ○馬場参考人  魚種のことではないんですけれども、これは種名しか出ていませんけれども、冊子の 資料の96ページを見ますと、赤身、脂身というように分かれていますけれども、こうい うような出し方はされないんですか。実際にスーパーで買うときには、例えばキハダの 赤身ですとか、メバチの中とろですとか、そういうふうに出ていますので、恐らくそれ によって水銀の濃度も違うと思うんですけれども、それをこういうように。 ○中垣基準課長  申し訳ありません。その話は、例えばマグロを対象にしたときの議論でございます。 一方では、先ほど小沢委員もおっしゃったように、あいまいだと申しますか、「バラン スのよい食生活」では何を言っているかわかりませんから、かなり具体的に言っていく 必要があるというふうに事務局としても思っているわけでございますけれども、仮にど の魚種を選ぶかという一つの目安がこの赤、黄色、薄緑だと思いますし、例えば週6日 というのは非現実、あるいは1つの魚種を週5回食べるというのもまた非現実的でしょ うから、そのようなことは念頭に置かなくていいと思いますし、週2回とか週3回同じ ものを食べるというのが現実的なところかなというふうに個人的には思うんですが、そ のあたりのことを議論していただければと思います。 ○熊谷部会長  いかがでしょうか。 ○鈴木(久)委員  食事指導をする立場からいきまして、対象者に恐怖心を起こさせないようにして、い わゆるバランスよく主食主菜副菜30食品食べましょうということにすれば、別にこんな ことを言わなくも自然にそうなるんだと思うんですけれども、それでも、例えばマグロ 等の大きな魚というようなものを週に3回以上食べない方がいいですよという話をした ときに、では、その科学的な根拠といいますか、なぜ3回なのか、なぜ5回ではいけな いのかといったようなことがどの程度説明できるんですか。恐らく1回食べる量という と、60から百二、三十グラムぐらいまでがごく常識的に食べている魚の量ですよね。と いうようなことを視野に置いたときに、このくらい食べればいいんですよと、逆に言え ばプラスの方向で示すような形で、ではそのプラスの方向で示したときのものがどの辺 のところでリスクがあるかないかというところで切るのかというあたりを少し御説明い ただかないと、これは現場の中では非常に混乱するということを危惧します。むしろ、 受けた方が妊婦の方が混乱するかもしれません。  それに最近ですと、マグロというのは刺身ではなくて、若い方々が意外とイタリア風 の料理でマグロのオイル漬けのような形で結構賞味している人が増えてきていますの で、そういったことも含めて、どういうふうにそのあたりを若い人たちに説明ができる か。 ○佐藤参考人  今の鈴木久乃先生の御質問に答えるというのは多分物すごく難しいんだと思うんです ね。先ほど井上先生の御質問に答えたときに申し上げましたように、ベンチーマーク・ ドーズとか、あるいはロジットでも、あるいはホッケースティックでも何でもいいんで すけれども、いろいろな方法でやってみたところで出てくる値というのは、先ほど申し 上げたように、妊婦の髪の毛の濃度は10ppm前後です。多少ばらつきはありますけれど も、いろいろな研究の結果が大体そういうふうになっていて、私どもも集団を調査した ときに出てくるところがそれくらいだろうというふうに考えております。これは多分世 界じゅうどの研究者も一緒なんだと思うんですね。  それを非常に乱暴に、先ほど言ったイネティクスモデルで当てはめてみると、1マイ クログラム/体重・kg/day になりますので、55キロの人だと55マイクロということに なるわけです。そうすると、この資料No.6を読んでみると、50マイクロを超えている というのは、例えばサメを毎日食べると超えるということになるわけですね。そういう ものを根拠にして、サメは毎日食べてはいけないよと言うことは恐らくできるんだろう と思うんですけれども、実はこれはベンチマーク・ドーズにも統計的なものですから マージンがあるかないかというのは、これは井上先生に伺った方がいいと思うんですけ れども、セーフティーマージンがあるかどうかという話になってくるんだと思います。 そのセーフティーマージンをどれくらいとるかというのは、実はサイエンスの問題では ないんだと思うんです。我々にはわからない。我々は、例えばベンチーマーク・ドーズ などを出すことはできますけれども、そこから先はポリシーメーキングの話だというふ うになってくるのではないかと思います。  ただ、そのときにどういう要素があり得るかというと、例えば今日はお話しできませ んでしたけれども、メチル水銀の代謝には非常に個人差がある。排泄の速度が、先ほど の話だと70日ぐらいにしているんですけれども、これが半分から倍ぐらいの違いがある ということになります。倍あると、簡単に考えて濃度は半分に下げなければいけないわ けですね。それから、多分魚の中の振れも当然あるでしょうし、量の振れもあると思い ますけれども、それは言わないことにしても、そうすると、少なくとも10ppm ではなく て5ppmにしておかないといけないことになる。  リスクマネージメントのときに、私は素人ですけれども、どのポピュレーションを対 象に置くか。平均的な生活をしている人たちだけをリスクマネージメントの対象にすれ ばいいのかということだとすれば、10でいいんだろうと思いますし、不確定係数を掛け なくてもいいと思うんですけれども、例えばメチル水銀の排泄速度の遅い人、半減期の 長い人まで、それが本当はリスクが高いわけですけれども、そういう人たちを対象にす るとすれば、やはり少なくとも半分にはしなければいけないということになると思うん ですね。そういうデータは提供できると思いますけれども、更にそれに加えてどれくら い安全を見るかというのは私は行政の問題だと思います。それに対する答えを出すため には、相当いろいろな研究をやらないと出てこないと思いますし、一個一個の要素は出 せても、それをまとめてどうするのかというのは科学の世界から外れるように私は思い ます。 ○坂本参考人  今、佐藤先生から5ppmというデータが出てきましたけれども、その値というのは、く しくも昭和48年に50ppmの10分の1が安全を掛けて出された値にぴったりと一致しまし て、その値を基にして0.3という基準ができているという意味では、かつての48年のも のがたまたまというか、今危惧されている世界の2分の1のレベルのところに安全基準 を置いたということになっているような気もします。ただ、当時は妊婦への影響という のを考えずに、ばさっと10分の1にやって5という値が出てきたんだと思います。 ○中垣基準課長  確かに、坂本参考人のおっしゃるとおりでして、だとすると、資料No.6の4ページ でいうと赤か黄色で判断すればいいということになってまいるだろうと思います。で は、この赤か黄色というところをどれだけ深刻に考えるのか、その深刻度によってどれ だけ鈴木委員のおっしゃるような混乱を引き起こさずに末端に届けるかということの難 問に挑んでいくんだろうと思いますが、その点についていかがでしょうか。 ○坂本参考人  私がもし自分の女房だったら簡単に言うんですよね。魚にはメリットとリスクと両方 あって、メリットはいっぱいある、でもリスクというのは水銀があってと。そういうメ リットを享受しながらリスクを軽減する方法というのは、妊娠しているときは大きな魚 を食べなくて、小さな魚を食べておけばそれでいいんだからというふうに言いたいと思 います。これは個人的には非常に簡単に言えることなんです。 ○井上委員  先ほどのベンチーマークによるリファランス・ドーズをどう見るかということがここ で考えるべき、切り分ける最も重要な根拠になって、その後の問題は恐らく多くの方々 がどういうふうに理解するかとの関連での言わば社会的に決まるものだろうというのは 私もそう思いまして、佐藤先生に先ほど質問させていただいたわけです。  そこから出てくる私なりの考え方は、これはどのような形でもいいからとにかく発表 するということなわけですけれども、それと同時に、その中に含めるべき考え方は私は 最小限のものでいいと思うんですね。確かに鈴木先生は混乱が起こるということを危惧 しておられるわけですけれども、必要なことは、私はこういう話をするのは嫌いなんで すけれども、例えば妊婦の方に、今お話にあったように、小魚の方がいいんだとか(白 身のお魚を食べるとか、(もともと吐き気もあったりして、そんなに食べられたもので はないはずですし)そういうリスクマネージメントというのは何かプロジェクトチーム でもつくって、本当にそういう専門の方が(鈴木先生のような御専門の方を中心に)解 説を作る作業をこれからやるよということで、よろしいのではないかと思うんですね。 それで、解説の方は時宜に応じて、半年とか1年とか、二、三年かかってもしようがな いと思うんですね。これまで我々はそれで生活してきたわけですから。それを時宜に応 じて計画的にリスクマネージメントのような、栄養指導のような、食事指導のような、 そういうものを多面的にいろいろな形でやっていくことにしたよということを発表する ことにしただけで、それを同時発表することで十分なのではないかというのが私の考え 方であります。 ○熊谷部会長  新たな考え方をお示しいただいたわけですけれども、いかがでしょうか。ほかに出し 方について御意見はございますでしょうか。  そうしますと、今の井上先生の御意見ですと、実態調査的な部分は情報提供して、食 事指導の仕方は検討をこれから行うという情報提供ということだと思うんですが、いか がでしょうか。 ○長尾委員  どういう事実に基づいてこういうことがコメントされているところを正確に知りたい 人が、正確なことにアプローチできるようにしていただきたいと思うんですね。知りた い人は知れる。 ○熊谷部会長  事務局の方で何かお考えはありますか。 ○中垣基準課長  非常な難問でございますし、一方では本日審議をして明確なメッセージを出さない と、この議事録はすべて公開でございますし、本日も公開でやっているわけでございま すから、かえって誤ったメッセージを出してしまうことにもつながることも考えれられ ます。また、抽象的なことを言いますと、例えば大きな魚は避けましょうとか、年とっ た魚は避けましょういうことになりますと、いよいよ大きな風評被害になってしまいま すから、出すのであればかなりピンポイントな具体的なことを考えざるを得ないんだろ うなと思っております。  先生方はもうそろそろ時間が来ているわけでございますが、差し支えなければ15分ほ ど考えさせていただけませんか。部会長お2人と相談させていただいて、鈴木先生、あ るいは坂本先生、佐藤先生からいろいろな御意見を賜りましたので、できるのであれば 何かお示ししたいと思いますし、無理でございますと、15分後に「済みませんでした。 1か月後にまたお願いします」という話になりますと思いますが、御了承願えればと思 いますが、いかがでございましょうか。 ○熊谷部会長  もし御依存がなければ、そうさせていただきたいと思います。  では、これから15分休憩ということで検討させていただきたいと思います。                  ( 休憩 ) ○中垣基準課長  それでは、座長、よろしくお願いします。 ○熊谷部会長  ただいま事務局の方からお配りいただきました案文をお読みいただきまして、またこ れについて、これでいってよろしいかどうか、そういう御意見をいただきたいと思いま す。 ○中垣基準課長  簡単に事務局から説明させていただきます。まず、第1パラグラフで、「多くの魚介 類が微量の水銀を含有している」という一般的な説明をした上で、個別具体的なことに ふれております。この根拠から御説明いたします。資料No.6の4ページをごらんいた だきますと、先ほどからの議論で、現在の耐容週間摂取量を基本に考えれば、胎児ある いは妊婦は問題ないということでございましたので、赤あるいは黄色を参考に考えると いうのを基本ラインといたしました。若干の安全率を見て、黄色はそういう意味では魚 介類が重複しているわけでございますが、そこを若干の安全率を見て、黄色で判断いた しております。  4ページの表を見ていただきますと、週に2回のところで黄色がございますのはサ メ、メヌケ、ウスメバルでございますが、メヌケとウスメバルについては2件ないし3 件のデータに限られておりますので、サメをまず考えました。更に、週に3回というと ころでございますが、週に3回のところで問題になりますのはメカジキとキンメダイ、 更にはセンネンダイとマンボウでございますが、我々の情報では、センネンダイという のは日本の市場にはほとんど出回っていない、マンボウは1件のデータしかないという ことで、メカジキとキンメダイの2つを対象にしました。合わせて3魚種、すなわちメ カジキ、キンメについては週に2回以下、サメについては週に1回以下という形にさせ ていただきました。  次にクジラでございますが、同じ資料No.6の10ページをごらんいただきたいと思い ます。クジラをごらんいただきますと、まず上から2番目のバンドウイルカでございま すが、バンドウイルカについては6ppmと非常に高いので、これについては摂食を避ける ことが望ましいという形にさせていただきました。  それ以外の魚種でございますが、週に1回あるいは週に2回のところにございますの は、ツチクジラ、コビレゴンドウ、更にはマッコウクジラの3つでございますが、この 3つについて考えますと、コビレゴンドウが週に1回のところではございますけれど も、この3つはほぼ同じだというふうに考えて、ツチ、コビレゴンドウ、マッコウクジ ラについては週に1回以下という形で整理をさせていただいたところでございます。こ れが基本の(1)から(3)まででございます。  更に、(4)のところに先ほどの議論を踏まえて、これ以外の魚種については安全に食 べることができるということを書かせていただきましたし、最後から2番目の段落にお いて、特に鈴木委員の方から、あるいはほかの委員からもお話がございましたように、 魚介類は一般に人の健康に有益であって、この注意というのが魚介類の摂食全般の減少 につながらよう正確な理解を期待したいというような部会としての考えを表させていた だいたところでございます。  以上でございます。 ○熊谷部会長  以上ですが、この取扱いにつきまして御意見はありますでしょうか。 ○佐藤参考人  参考人が発言してよろしいのかどうかわかりませんけれども、2つの質問なんですけ れども、マッコウクジラがありますけれども、マッコウクジラというのは今はとって食 べても大丈夫なクジラなんですか。 ○水産庁  小松ですが、とって食べても大丈夫という質問がなされる意味がよくわかりません が、マッコウクジラは国際捕鯨条約の第8条に基づきます条約の正当な権利として日本 国政府が行使しまして、正当に捕獲しております。同じように、ミンククジラ、それか らニタリイルカはニタリクジラの間違いと思いますが、ニタリクジラも正当に捕獲して おります。  この際ですから、バンドウイルカについて言及させていただきますと、バンドウイル カにつきましては資源量が豊富なものですから、年間1,100頭捕獲枠を設定しておりま して、大体500頭前後、多いときは926頭、少ないときで170頭ぐらいの捕獲があります。 これは追い込み漁法などによる漁獲で、水産庁が許可を与えて、資源に悪影響を与えな い範囲で捕獲枠を設定しておりますが、これがいずれの方も摂食は避けることが望まし いとなりますと、我々は業界に対してこれから捕獲をゼロとするための苦渋の交渉をし なければならないということになります。一応念のために申し上げました。 ○佐藤参考人  今、課長が御説明なさった方法だと、マグロが外れるのはわかるんですけれども、マ グロを食べている人がこの横断調査で3万8,000人のうち1万人以上いるわけでして、 25%、4人の1人以上は、今日見てみてもそうだし、明日見ても多分そうだと思うんで すよ。その中にはかなりたくさん食べている人たちもいるだろうと思うんですけれど も、これはマグロは全く抜いてしまっていいものかどうかというのは、私は疑問だと思 うんです。入れ方が非常に難しいというのはわかりますけれども。 ○熊谷部会長  ほかに御意見はございますか。 ○鈴木(久)委員  質問でよろしいですか。今のお話のバンドウイルカというのは、加工品に使っている んですか。 ○水産庁  大型クジラが1987年から商業捕鯨の一時停止の規制を受けまして、イワシクジラ、ニ タリクジラ、ミンククジラなどは商業捕獲禁止になりました。現在は、これらの鯨種を 国際捕鯨取締条約第8条に基づく調査捕鯨でとっている大体700頭以外は日本市場に流 通していません。以前は数千頭流通していました。したがって、イルカ類は大型クジラ の代用品として入ってきたところがありまして、イルカの場合は例えば刻みベーコンだ とか、南蛮漬けや生食もありますが、加工品が主であります。西日本を中心に流通して います。 ○鈴木(久)委員  ということは、消費者にとっては実際にはほとんど言葉として知らないわけですし、 何に入っているかわからないという現状の中で、またこれは業界としてお困りになるの かもしれませんが。 ○中垣基準課長  先ほどの佐藤参考人のマグロのお話もそうなんですが、先ほど鈴木委員からも言われ たように、やはり何かの根拠に基づいて考えなければいけないんだろうと思います。今 回、ほかにもいろいろな考え方があればよろしいんですが、一応資料No.6的な考え方 で、色でいうと赤と黄色を参考に目安にしてやったというところでございます。  更に、今バンドウイルカの件でございますが、バンドウイルカは10ページを見ていた だきますと、4週に1回のところまでしか書いていないので、「いずれの方も摂食を避 けることが望ましい」と書いたわけでございますが、もっと右に延ばしていくと、当然 のことながらある時点で黄色が消える。それはどうも6週に1回で消えそうでございま すから、そういう意味で申し上げますと、バンドウイルカについては1回60から80グラ ムとして、2か月に1回にすると望ましいという書き方というのは当然のことながら同 じ算出式で出てくるわけでございます。 ○熊谷部会長  いかがでしょうか。 ○水産庁  国際捕鯨委員会(IWC)で採択された商業捕鯨のモラトリアムが1987年から日本に は適用されていますけれども、それ以降、捕獲調査(調査捕鯨)で大体4,000トン強のク ジラの流通量しかありません。そのうちの約4分の3がイワシクジラ、ミンククジラ及 び、ニタリクジラ、ヒゲクジラで、汚染の度合いがほとんどない。特に南氷洋のミンク クジラは汚染が全くないに等しいぐらいなわけでありまして、アトピーの子どもを持つ 親の会の皆さんにも重宝してもらっていますけれども、それが現在のクジラ類の流通量 の4分の3でございまして、あとはイルカ及びマッコウクジラを合わせたハクジラなん ですね。ハクジラが食物連鎖の上の方にありまして、ハクジラの代表的なのはマッコウ クジラです。それからツチクジラもこれはハクジラなんです。これらハクジラはイカを 食べますから、イカは魚を食べますので食物連鎖の濃縮で一つ上に上がってしまうわけ です。それで、どうしても水銀の蓄積量が多くなるのと、マッコウクジラは更に寿命も 長いものですからこういうことになる。今ここで問題になっているバンドウイルカを初 めハクジラはその全体の4分の1程度です。こういう話です。一応御参考までに。 ○坂本参考人  また細かい話で申し訳ないんですけれども、ここの2番の授乳中の母親が注意しなけ ればいけないという科学的な根拠は何かあるんでしょうか。  私が先に示しておくべきだったんですけれども、母乳からはメチル水銀はほとんど子 どもの方に行かなくて、生まれたときの臍帯血の水銀に比べると、胎児の血液は3か月 で2分の1、机上の計算だと、1年で10分の1まで減っていきます。ですから、メチル 水銀に関する限り、授乳中の注意は必要ないというふうに考えておりますが、いかがで しょうか。 ○中垣基準課長  ありがとうございました。ほかの先生も同意いただければ(2)を消したいと思います。 ○坂本参考人  (2)の母親の方ですね。幼児の方はわからないです。乳児の方は間違いないと思いま す。 ○中垣基準課長  それから言うと、乳幼児についても私が承知している限り、それを対象にしたような 試験、あるいはその結果というのは報告されていないんだろうというふうに考えます。 恐らく一般論的に、胎児に影響がある、神経系の発達に影響があるという意味での予防 的な考えから、例えばアメリカもそういうふうに書いたんだろうと思いますが、先生が おっしゃるように、科学的な根拠は何かあるのかと言われますと私は存じておりません から、先生方の御了解をいただけるのであれば、(2)を消すという形で対応したいと思 います。 ○熊谷部会長  安全率を見越して、黄色と緑の部分を境目としていただいたんですけれども、これは 一つ、赤と黄色の境目を境とするということも当然あり得ると思うんです。そこらにつ いてはいかがでしょうか。黄色と緑のところを境目というのは魚介類を食べての上での お話ですので、その他標準的な食べ方をしている。これは赤と黄色のところの境目でも いいのではないかというふうなお考えはありませんでしょうか。 ○中垣基準課長  赤と黄色の境目、すなわち赤の試算というのは魚介類を一切食べないで、例えばキン メだけを週に1回食べるとか、週に2回食べるというような試算になってまいります。 すなわち、赤の試算というのは水銀の摂取量を過少に評価しております。したがいまし て、赤だけで判断するというのは難しいんだろうと思います。  一方、黄色の試算というのは、普通に魚介類は食べた上でキンメならキンメを食べる という形になっておりますが、そういう意味で過大になっている。正確な実態というの は赤と黄色の真ん中にあるということなんだろうと思いますが、ではそれが半分がいい のか、3分の2がいいのかというのはなかなか数字で表せないんだろうと思います。 ○熊谷部会長  マグロはそんなに高い頻度で食べる人はいないだろうという前提に立てば、確かにそ のとおりだと思うんですけれども、ほかに御意見はございますか。あるいは、こういう 出し方をすると極めてまずい事態になるというような御意見でも結構です。 ○塩見委員  (4)なんですけれども、(4)というのをわざわざ記載する必要があるんでしょうか。要 するに、書いてないものはすべて安全であるというふうな表現になっているわけですけ れども、データが出ていないような魚介類もたくさんあるわけでして、今の時点でこう いうふうに書くのはまずいのではないかなと。ですから、わざわざ(4)を書かなくても 十分ではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○中垣基準課長  先生御指摘のとおり、データ的な限界というのはあるだろうと思います。そのために 一番下の注意をこう書いているわけでありますが、一方、先ほどから議論されています ように、一言で言いますと、風評被害みたいなことも考えられるので、それ以外の魚種 はある程度、少なくとも我々が今持っているデータから見ると問題がないというメッセ ージは送るべきだろうと思います。  中間をとるわけではございませんが、例えば(4)の3行目、「魚介類を安全に食べる ことができる」の「安全に」というのを消すというのも一つの案なのかもしれない。そ の下に「なお」のパラグラフもございますから、安全というのもゼロリスクの安全では ないということもまた先生の御指摘のとおりなので、そういう意味ではここの「安全に 」というのを取ってしまうというのが1つの案なのかなと思います。 ○井上委員  風評被害から守らなければならないということは、食品というものに対する全般的な アラームを発するというのはこれまでそんなに多く発信してきたことはないわけですの で、やはり必要だろうと思います。  それで、これでは意味がないのかもしれませんけれども、4番のところはそれ以外の 魚介類に対する安全性を疑う証拠はないとか、そのようなデータはないとか、そういう ことを指摘することが求められているのかなと思います。  それから、字句上の問題でもあるかもしれませんけれども、第2パラグラフの「しか し」で始まる文章の「高いレベルでの水銀を含有しており」というのが、これでもわか るんですけれども、何に比べてなのかというのを我々はすぐ考える習慣がありますの で、もし文意が変わらないようだったら、最後のセンテンスを先に持ってきて、「蓄積 することにより、人の健康、特に胎児に影響を及ぼす恐れがある高いレベルでの水銀を 含有している」というような、こういうおそれに対する、それに相当する高いレベルだ ということを示すということもあり得るかなと思います。 ○熊谷部会長  ほかに御意見はございますか。 ○佐藤参考人  先ほど坂本室長からお話があった(2)のことなんですけれども、サイエンティフック には母乳から行かないというふうに考えるのは正しいと思います。ただ、これを外すか どうかというのは、現実の問題としてはやはり考えた方がいいのかなという気がしてい ます。  と申しますのは、一つには多分母親が魚を食べているときに、どれくらいの年齢から かわかりませんけれども、子どもとシェアをしている可能性があると思うんですね。も う一つは、私どもの実験結果の中でも、胎児期に暴露があって、更に乳幼児期に暴露が あるネズミというのは、ある意味では水銀に対する耐性みたいなのが出てくることがあ るんですけれども、胎児期に暴露しないで生まれてから暴露を始めると、ちょっとセン シティブなところがあるんですね。  これは仮の話ですけれども、こういうのを読んで真面目に考えられる人が、お魚は好 きだけれども、妊娠中はちょっと抑えておきましょう、子どもを産み終わってから好き なお魚を食べましょうと。それは母乳に出てこないから、母乳を子どもに与えているだ けならばいいですけれども、もし自分が食べているものを子どもに口移しで何かやった ときに、何も考えなくていいのかと言われるとちょっと私は自信がないので、これはサ イエンティフィックに間違っている、母乳から行かないという意味で間違っているのは わかっているんですけれども、細かい説明は恐らくできないと思いますので、一般的な 注意として残しておいてもいいような気がします。 ○熊谷部会長  乳幼児がセンシティブであるという証拠はないんですか。 ○佐藤参考人  はっきりした証拠はない。乳幼児がセンシティブであるというふうに一般に考えられ ますけれども、胎児期暴露が問題だということになって、その暴露の時期をきちんと分 けたデータというのはほとんどとられていないんですね。 ○熊谷部会長  そうすると、一般的に乳幼児はセンシティブなので気をつけましょうというニュアン スの文章にならざるを得ないんでしょうか。 ○佐藤参考人  ただ、それは先ほど申したような理由で、抜いてしまっていいのかどうか、妊娠中だ け気をつけていればいいのかということにはならないわけですから、それが一番大事な んですけれども、ただそのときの反動で今度は子どもを産んだ後にたくさん食べる人が 出てきたりして、それを子どもに与えたりすると、現実の問題としていいのかと言われ たときに、大丈夫よと答えるデータもありません。 ○熊谷部会長  この(1)から始まる箇条書きの部分はデータに基づいてこうなんだという決めであっ て、もしデータ的な裏づけがないのであったら、一般的な注意事項として別の部分に記 載するということもあり得るのではないかと思います。あるいは書かないか。 ○坂本参考人  母乳からということですから、乳幼児に関しても、ここは魚を直接食べるという話に なっていますから、その摂食には注意することが望ましいというのは残っていてもいい のではないでしょうか。 ○井上委員  そうなりますと、乳幼児はこういう魚を食べない方がいいというのがもう少し拡大解 釈をされると、乳幼児からの食生活の形成ということにも影響を与えるのではないかと 思うんですが、いかが思われますか。 ○熊谷部会長  恐らく一般的な注意の喚起ぐらいで、つまり水銀に特有な話ではない話としてもし入 れるとすると、入れた方がいいのではないかというふうに思うわけですが、それも含め まして御意見はございますか。  「1回60〜80gとして週に1回以下にすることが望ましい」という表現とか、目安な のか、それとも本当にこうしなければいけないのかとか、「することが望ましい」とい う表現のままで一応よろしいでしょうか。  ほかに、こういう注意喚起の仕方で全体としてよろしいかどうか。もしよろしけれ ば、今いただきましたいろいろな御意見を踏まえて、最終バージョンを少し文章を変え ていただいて、それで事務局の方であとはつくっていただくということでよろしいで しょうか。何か時間がタイトで、かなり急いで議論を進めてきたような気がするんです けれども。 ○水産庁  マイナーな、表記上の問題なんですが、魚介類、魚類とありますが、クジラ類は魚介 類、魚類ではありませんので、これは事務局で「など」と使うか、妥当に修正していた だければと思います。 ○熊谷部会長  どうもありがとうございます。ほかに御意見はございますか。 ○中垣基準課長  よろしければ、とりあえず案を確認させていただきたいんですが、「魚介類」はすべ て「魚介類等」に変えます。  第2パラグラフでございますが、「しかし、一部の魚介類等では食物連鎖により蓄積 することにより、人の健康、特に胎児に影響を及ぼすおそれがある高いレベルでの水銀 を含有している。このため、妊娠している方又はその疑いのある方については」、ここ は「適切な食事指導を行う」となっていますが、改めて「疑いのある方については魚介 類等の摂取について、次のとおり注意することが望ましい」。  それで、(1)のところの「サメ」の前に「バンドウイルカ」を入れさせていただいて、 「バンドウイルカについては1回60〜80gとして2か月に1回以下」というふうにさせ ていただきたいと思います。それで、(2)と(3)を削って、(4)を(2)として、この3行 目、「魚介類等を安全に」の「安全に」を削除させていただいて、「なお」のところの 「魚介類」も「魚介類等」に変えさせていただく。こういう形でいかがでございましょ うか。  前の(4)のところ、今の新しく(2)としたところですが、「妊娠している方等を除く 方々はすべての魚種について、妊娠している方等などにあっても上記(1)」で、「及び (3)」を消してください。「上記(1)の魚種を除き、健康な食生活の一部として、魚介類 等を食べることができる」となります。 ○熊谷部会長  (2)の部分はよろしいですか。「妊娠している方等を除く方々は(1)以外の魚介類等に ついて健康な食生活の一部として食べることができる」。それとも「従来どおり」です かね。「妊娠している方等を除く方々は」、この文章は必要ですか。 ○中垣基準課長  それこそ魚全般に影響が及ばないように、また妊娠していない方々に自粛されないよ うに、必要だと考えております。 ○熊谷部会長  要するに、その他の部分については従来どおり食することができるということです ね。  その他の部分はこのままでよろしいですか。特に訂正はございませんようでしたら、 今、御提案いただいた案で進めていただくということでよろしいでしょうか。  御異議がないようでしたら、これで進めて本当によろしいですか。 ○清水委員  水銀に関してはこれでよろしいかなという気もするんですが、やはりこの新しくでき た(2)の部分の文章を少し気をつけないと、実は魚介類の汚染というのは水銀だけでは ない問題も多分あり、すべての場合にほかのものは安全であるというふうな印象を与え るのもまた少し問題かもしれないので、この文章は水銀に限定した問題としてというこ とがわかるような書き方をする必要があるかなと。 ○熊谷部会長  それは先ほども井上先生の方から、データがないんだというようなニュアンスにした 方がいいだろうという御意見をいただいていますので、ここは工夫が必要なんだと思い ます。 ○中垣基準課長  それでは、「妊娠している方などを除く方々はすべての魚種について、妊娠している 方等にあっても上記(1)の魚種等を除き、人の健康に影響を及ぼすようなレベルの水銀 を含むとのデータは有していない」という書き方はいかがでしょうか。 ○熊谷部会長  水銀によって健康危害が招来される懸念はないというようなニュアンスだと思うんで すが。 ○塩見委員  その文章にこだわるわけですけれども、そこまで本当に書く必要があるのか。という のは、暫定規制値が設けられているわけですよね。マグロ等はそれを現実には超えてい るわけですね。だから、暫定規制値は一体何のためにあるのかというあたりと整合性が ないような気がするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。 ○中垣基準課長  最初に御説明しましたように、暫定規制というのは昭和48年通知のことだと思うんで すけれども、マグロの方にはかかっておりませんというのが1点です。  2点目は、また繰り返しになるんですが、ほかのがどうなんだという考え方を示すの がやはり我々としては必要だと思っております。  それで、座長の意見をもう一回踏まえて考えますと、「健康な食生活」のところを 「水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではない」ということでいかがで ございますか。 ○塩見委員  マグロは外れているのは確かです。それはわかりますけれども、それはまた別のファ クターがかなり影響して、そのときの議論はわかりませんけれども、そういうふうによ く言われていると思うんですね。マグロを外す根拠はそれこそないと思うんです。ほか の魚類となぜ違うかという根拠が本来はないはずです。ですから、そのときも「マグロ 類その他を多食する者についても食生活の適正な指導を行なわれたい」という一文がそ の当時、48年からあったわけです。  私が個人的に言うと、マグロが大丈夫だというふうには言い切れないです。ほかの魚 と違って暫定規制値を外すということには、なぜそういうふうになったかに関しては非 常に疑問をずっと持っているわけですけれども、恐らくその当時からきちんとなかった と思うんですね。むしろ経済的な、政治的な方のことで外れたんだろうと思っているわ けです。ですから、外れたということを根拠にされなくてもいいのではないか。それに 対しても本当はきちんとやらなければいけないのではないでしょうか。 ○中垣基準課長  先ほど来、本日積み重ねてきた議論というのは、まず耐容摂取量がどのレベルにある のであろう、特に懸念される胎児への影響、妊婦への影響というのはどれぐらいあるん だろう。次には、では摂取量がどれぐらいになるのであろう。その科学的なデータがあ る範囲で何かをやろうということで、規制を変える必要はないということで合意され、 それでは指導をやるのか、指導をやるのであればどのような形でやるのであろうという 形で議論が進んできたというふうに考えております。  そういう意味で、先ほど佐藤参考人からあったのと同じだと思うんですが、今回資料 No.6を基に耐容摂取量と、更には予想される摂取量との関係を比較して決めていくと いうことになると、マグロについて申し上げますと、週5回でインドマグロがやっと超 える。週5回食べるというのは通常予測されるかということでございますから、そうい う点で申し上げますと、週5回というのは書く必要はないんだろうというふうに判断し たところでございます。 ○熊谷部会長  そこの部分ですね。そこのチョイスになる。 ○佐藤参考人  確かに、この資料No.6でやればそうはなると思うんですけれども、先ほども私は申 し上げましたけれども、3万8,000人のうちクロスセクションのデータで1万人が食べ ているわけですよね。そういう意味では、ポピュレーションに対する影響というのはか なり大きなものだと。まれにたくさん食べる人がいるというのは、少ない人が高い魚種 を食べるというのとまたちょっと違う意味合いがあると思うんですよ。  だから、私が申し上げたのは、さっき課長が説明なさったような論理でいくという意 味だったらしようがないかなと思うんですけれども、いろいろなリスクマネージメント の考え方からいけば、たくさんの人が暴露しているものについてはやはり慎重であるべ きだというふうに私は考えます。  暫定基準のことをおっしゃいましたけれども、私は暫定基準値自身がおかしなものだ と思うし、何で30年も暫定なんだというふうにずっと発言しております。ただ、それを 言い出すと混乱してしまうから今回は言わなかっただけなんですけれども、それは後々 のことがあるので議事録に残しておいていただきたいと思っています。  確かに、あの当時はマグロを食べている人というのは少なかったというのもあるかと 思うんですけれども、塩見先生が言ったような理由も多分あったんだと思いますけれど も、食べる人が数として少なかったんだけれども、とにかくクロスセクション調査で4 人に1人が食べているという現実はやはり考えておいた方が私はいいと思います。  そういう意味で、今日の結論というのは妊婦さんに対する注意の喚起というのは多分 全員一致していると思うんですよね。この(1)に関しては多分だれも何もおっしゃらな いだろうというふうに思うんですけれども、それ以外の部分についてはいろいろ違いが あるような気がするので、参考人の私がこんなことを言うのも申し訳ないですけれど も、(1)の結論だけでうまくまとめていただければというふうに思います。 ○熊谷部会長  いかがですか。 ○中垣基準課長  佐藤参考人がおっしゃったマグロの関係、特に4万人を調査して1万人が食べている から、ここは慎重に真剣に検討すべきだというのは全く同感でございます。我々データ が一番足りませんのは、特定の1日に食べている量というのは国民栄養調査で把握でき るんですが、それが連続した3日間、あるいは連続した1週間のうち何回食べているか というデータを実は随分探し回りましたが、利用可能なものというのは未だ入手できて おりません。単純に考えますと、4万人のうち1万人、25%、代わる代わる食べるとす ると、最低でも平均的に週に2回ということなんだろうと思いますが、それもさして科 学的でもないんだろうと思います。このあたりを横目に置いても、週に5回というのは ちょっとあり得ない事態なのかなとは考えております。  ただ、今後ともどれぐらいの期間に何回ぐらい摂食されているのかというデータは、 できれば調査したいと思っておりますし、あるいは利用可能なものがあればもっと探し たいと思っていますし、これだけの方が食べておられるわけですから、健康影響という 観点からいうと、真剣に対応すべきだという佐藤先生の御意見というのはそのとおりだ と思っております。 ○熊谷部会長  食べる頻度につきましては、恐らく調査方法もあると思いますので、今後そういった 調査を積み重ねていくということで対応できると思うんですが、とりあえずここの文章 については、例えばなお書きのところにひっくるめる形で、「なお、魚介類は」の次の フレーズがありますけれども、(2)をそういうところに放り込んで、ほかは当面心配な いよというニュアンスのものがあればいいわけですよね。そういうところに加える方式 ではいかがでしょうか。ちょっと中間的な処理の仕方になりますけれども。  「なお」、「期待したい」の後で、「また、上記の注意事項以外の点に関しては、魚 介類の摂取において従来どおり安全に食することができる」とか、何かそういう文章が その後に。水銀と絡めて、そのほかのは全く大丈夫なんだというふうなとらえ方が直接 にできない形の表現になっていればいいわけですよね。 ○中垣基準課長  先ほど座長がおっしゃいました「水銀による健康への悪影響を懸念されるようなデー タはなく」というような表現でいかがでしょうか。すなわち、新しい(2)となお書きを 一緒にして、「なお、妊娠している方等を除く方々はすべての魚種について、妊娠して いる方等にあっても上記の魚種を除き、水銀による健康への悪影響を懸念されるような データはなく、本日の注意事項が魚介類の摂食の減少につながらないように正確に理解 されることを期待したい」というような文章でいかがでしょうか。 ○熊谷部会長  摂食の頻度みたいなものを仮に調査したときに、実は結構超えているんだというふう な、非常に少ないポピュレーションで超えているかもしれないという可能性というのは ほとんど排除していいのかどうなのかということがあるんです。 ○中垣基準課長  だとすれば、「一般に懸念されるようなデータは現在なく」ということでいかがで しょうか。 ○熊谷部会長  それだったらいいと思います。ですから、現時点得られる限りのデータでは懸念すべ き材料はない、そういうことなんだと思います。余り詳しく書くと、余計心配の種が増 えてしまうというようなことも考えられますので、難しいんですけれども。  それでは、最終バージョンは今日じゅうにお諮りした方がいいんですか。 ○中垣基準課長  差し支えなければ今から口頭で確認させていただいて、各先生のところへファックス を入れさせていただくということにさせていただけませんでしょうか。整理をするのに また二、三十分かかると思いますから、その間またお待ちいただくというのも恐縮でご ざいますので、そういうことで読ませていただきますが、よろしゅうございますか。  第1パラグラフは、「魚介類」を「魚介類等」という形にするのを除いて変更はござ いません。  第2パラグラフでございます。「しかし、一部の魚介類などでは食物連鎖により蓄積 することにより、人の健康、特に胎児に影響を及ぼすおそれがある高いレベルでの水銀 を含有している。このため、妊娠している方又はその疑いがある方については、魚介類 などの摂取について、次のとおり、注意することが望ましい」。  「これまでに収集されたデータから、妊娠している方又はその疑いのある方は、バン ドウイルカについては、1回60〜80gとして2か月に1回以下、」。あとはここの(1) のところは変更はございません。「(1)」という「(1)」も勿論取ります。  なお書きに移って、「なお、妊娠している方等を除く方々はすべての魚種について、 妊娠している方等にあっても上記の魚種等を除き、水銀による健康への悪影響が一般に 懸念するようなデータは現段階でなく、本日の注意事項が魚介類等の摂食の減少につな がらないように正確に理解されることを期待したい。今後とも、魚介類中の水銀のデー タや摂取状況のデータ等を収集し、今回の摂食に係る注意事項の内容を見直すものとす る」。いかがでしょうか。 ○坂本参考人  胎児への影響がどのくらいであるかというのが、今セイシェル、フェローで分かれ て、日本で全然データは出ていないんですよね。そういう意味で、日本の低濃度のメチ ル水銀影響に関する影響は遅れていると言われていますので、「ヒト、胎児影響に関す る研究データも収集し」というのを一つ入れていただければ非常に助かるんですが。 ○中垣基準課長  わかりました。 ○佐藤参考人  非常にマイナーなことですけれども、「妊娠している方又はその可能性のある方」の 方がいいと思います。「疑い」というのは医者の言葉としてぽろっと出てくるんですけ れども、やはり「可能性」の方が女性にとって優しく聞こえるのではないかと思いま す。 ○香山委員  また、マイナーなことなんですが、元の(1)のところですが、最初にバンドウイルカ が来て、サメが来ますので、できればクジラを続けて、最後にサメにしていただいた方 が、次が魚が出てまいりますのでよろしいのではないかと思います。 ○熊谷部会長  ほかに特にございませんようでしたら、もしお気づきの点があれば、ファックス等で 事務局の方に。 ○中垣基準課長  もう今日公表させていただきますので、あとは座長一任にしていただきたいんです が。 ○福島部会長  これはあくまで確認ですが、今の最後のところで、「一般に人の健康に有益であり」 というのは削除ですか。入っていますか。 ○中垣基準課長  これと同じような文章が第1パラグラフのところに「重要な食材である」というよう な形で書いておりますので、この「一般に人の健康に有益であり」というのは必要ない のではなかろうかと考えておりますが、いかがでしょうか。 ○福島部会長  私は、上の方のその意味とちょっと違うと思うんですね。 ○中垣基準課長  わかりました。それでは、「水銀による健康への悪影響が一般に懸念されるような データは現段階でなく」の後に、「魚介類等は一般に人の健康に有益であり」というふ うにさせていただきます。これでよろしゅうございますか。ありがとうございます。 ○熊谷部会長  これでよろしいでしょうか。それでは、御承認いただいたものとして、今日はどうも ありがとうございました。  それでは、事務局の方でもし御連絡等がございましたら。 ○事務局  済みません。1つだけ、御報告だけさせてください。最後の方の247 ページにVIC Hというのがございますが、残留動物用医薬品の基準値の設定をしております。部会の 方で御承認いただいて、安全性の評価のための指針というのをこちらの方でつくってお ります。国際的な協力ということで、ICH、医薬品と同じようにベタリナリー版で、 動物用医薬品の申請書類の国際ハーモナイゼーションというのを行なっておりまして、 これまでステップアップされたものについてこちらの方で採用する。いずれにしても、 これらは残留動物用医薬品調査会の方で順次御審議をいただいておりまして、座長であ られる三森先生にも関与、出席していただいているものでございます。もし何か、お気 づきの点、特に毒性の先生方でお気づきの点がございましたら、事務局まで御報告いた だければ幸いでございます。 ○中垣基準課長  本日は遅くまで、どうもありがとうございます。今後ともひとつよろしくお願いいた します。どうもありがとうございました。                   (閉会) 照会先 :医薬食品局食品安全部基準審査課 電話  :03−5253−1111(内線2488、2489)