検討事項 |
指摘事項 |
委員から提出のあった論文等と具体的施策の例 |
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○ |
妊産婦健診、周産期医療、乳幼児健診等を通じて早期に虐待リスクを把握するための母子保健施策の充実 |
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各医療機関に委託して実施する個別の乳児健診の場合、健診結果を集約するシステム上、その指導結果が関係機関に届くまでに時間がかかってしまうという問題があり、連携システムを更に検討する必要がある。 |
・ |
健診の場での養育者の心理的問題への対応の充実をはかる。 |
・ |
健診後の家庭訪問等の次につながる支援体制の充実をはかることで虐待の発生予防および早期対応が可能となる。 |
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・ |
生後1か月未満は、養育者が援助を最も要求している時期であり、さらにマタニティブルーズは産後早期のこの時期に発生する確率が高いこともあり、重点的な取り組みが必要な時期である。 |
・ |
虐待を受けた子どもは6ヶ月未満の子どもが多く、この月齢への健診を通した支援必要者への手厚い支援が必要。特に養育者からありがたく訪問が受け止められる時期に保健師等による新生児訪問を充実することで、社会背景や家庭内の状況もわかり、健診に来ない養育者も保健サービスに出会う機会を設けることができる。 |
・ |
虐待リスクのある家庭の背景を認識・共有するためにも、虐待の定義やリスクに対する、スティグマに配慮したアセスメント指標等による概念整理が必要。 |
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○ |
マタニティ・ブルーズの出現率は30% 中野仁雄 「妊産婦の精神面支援とその効果に関する研究」平成6年度 厚生省心身障害研究報告書 |
○ |
産後うつ病の出現率は12〜17% 北村俊則「妊産期におけるうつ病の出現頻度とその危険要因」平成8年度厚生省心身障害研究報告書 |
○ |
虐待死亡事例のうち乳児死亡は40%(厚生労働省まとめ)
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○ |
保健活動から把握する被虐待児は6ヶ月未満が35% 小林美智子
「保健医療機関における子どもの虐待の重症度と援助」
2000年3月厚生科学研究報告書 |
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ハイリスクな家庭というのは子ども、養育者、家庭さまざまな側面がある。全体として養育者、家庭側に対しての注目が多くて、育てにくい子どもということに関する問題がもう少し語られると良い。障害を持っている子や、ディフィカルト |
・ |
ベイビー(育てづらいような部分を持っている子)等への対応についても議論が必要。このような子は虐待に結びつく危険性が高いと、特に海外の文献を中心に報告されている。 |
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・ |
複雑な家庭、例えばステップ・ファミリー、内縁関係にあるといった場合に虐待が発生しやすかったり、エスカレートの仕方が早いといったことがあるのではないか。 |
・ |
途中から養育者になるということについては、極めてリスクが高い。ステップ・ファミリー等で、最初から子どもがすっと溶け込むと言うことはありえない。退行現象が起こるなどのトラブルを上手く乗り越えられないと、安定した家族関係が形成されず、虐待に移行していくことも多い。新たな家族が生じた場合は、子育てをしていく上で、ハイリスクな家族だという認識を持ちつつ、社会としてのどのような具体的な支援の手だてを取るのかということも重要な課題。 |
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途中から養育者になるということについては、極めてリスクが高い。ステップ・ファミリー等で、最初から子どもがすっと溶け込むと言うことはありえない。退行現象が起こるなどのトラブルを上手く乗り越えられないと、安定した家族関係が形成されず、虐待に移行していくことも多い。新たな家族が生じた場合は、子育てをしていく上で、ハイリスクな家族だという認識を持ちつつ、社会としてのどのような具体的な支援の手だてを取るのかということも重要な課題。 |
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虐待者であると伝えることが養育者自身のスティグマになりかねない一方で、虐待という告知をすることでその後の対応が見えてくる両面がある。スティグマ性に配慮し、虐待告知に関するリスクアセスメントの方法や、養育者に対する対応を慎重に検討していく必要がある。 |
・ |
虐待リスクのある者への支援など、虐待予防に対する保健の取り組みを明記することで、予防的な支援に取り組みやすくなり、リスクのある家庭の把握に向けての積極的取り組みが推進される。 |
○ |
健診未受診家庭への訪問等当該家庭の育児状況を把握 |
・ |
虐待死亡事例は、把握に至らない段階での乳児死亡が多いことからも、健診にこられない養育者にはたらきかける方法として、家庭児童相談員や民生委員・児童委員、主任児童委員、保護司等の活用が考えられる。 |
・ |
サービスを自ら求めない人には以下のような背景があるのではないかと考えられる。どのような人が支援を求めないのか、適切なアセスメントを行った上で、必要に応じきめの細かい対応が必要である。
ア)初期対応に問題があり、支援機関への不信感がある
イ)転居等を繰り返し地域から孤立している
ウ)情報がいき届いていない
エ)子育てに対する個人的哲学・信念をもっている |
・ |
養育者が自ら訴え出なくても、子どもの状況をみて虐待やそのリスク因子が明確
に把握できるようなアセスメントを行い、育児負担感のある養育者に対し必要な
援助を行っていく。 |
・ |
医師のための虐待予防マニュアル配布や研修会を実施して、すべての医師が日常の診療の中からもリスクのある家庭を把握する視点をもつことが重要。 |
・ |
母子健康手帳を活用した悩み等のやり取りを行うことで、産後うつへの取り組みが促進される。 |
・ |
産後うつやマタニティーブルーズ等の産後のメンタルヘルスに対する誤解を解く必要がある。また精神科というネーミングに対する拒否感が強く、受診を妨げている。 |
・ |
医学教育における取り組みも必要。 |
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○ |
リスクアセスメントを行うことで重症度の判断が容易になる。
家庭の背景等、虐待に移行しやすい特異的要因がある。
小林美智子「保健医療機関における子供の虐待の予後と評価」
(2001年3月) |
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検討事項 |
指摘事項 |
委員から提出のあった論文等と具体的施策の例 |
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・ |
養育者からの子育て相談は、住民に身近な市町村で対応する。 |
・ |
市町村の相談機能の強化を図り、従来の児童相談所の業務を児童虐待のみに特化する等、機能的な役割分担を検討する必要がある。 |
・ |
市町村の虐待における相談機能の強化が必要。 |
・ |
地域保健に関する基本指針に虐待に対する役割を具体的に明記することで、保健所と保健センタ−業務・相談窓口の明確化を図る必要がある。しかし、虐待防止ネットワーク等に関しては、地域の実情にあわせた役割分担等の柔軟な運用が必要。 |
・ |
多職種がいる機関の利点を生かした保健所の虐待対策における位置づけを明確にすることが重要。 |
・ |
保健所においては、市町村における対応事例で処遇困難な者やネットワーク会議におけるコーディネート機能などにおいて市町村を積極的に支援する体制をとるとともに、未熟児・精神保健相談等ですでに関わっている虐待リスクのある家庭に対しては、関係機関の協力のもとに主体的に関与。 |
○ |
虐待リスクのある家庭を支えるサービス等(補償因子)の強化 |
・ |
辛い立場にいると思われる養育者を孤立させないためには、地域を知っている職種である保健師・民生児童委員・家庭児童相談員・母子保健推進員等による手厚い支援システムの構築が必要。 |
・ |
ピアカウンセリング等の手法を用いて、養育者が自らの問題に気づき、虐待を防止するような専門的サポートによるグループワークの充実。 |
・ |
支援者が忙しい日々の業務のなかでも知識や技術が同じ水準で維持できるよう、力を維持していく研修が必要。 |
・ |
地域子育て支援センターや子育てOB(経験者)、産褥ヘルパー、子育てショートステイ、保育、学童保育、子育て支援メニュー等を、様々な背景因子をもつ虐待リスクのある家庭を支える支援として活用できるように充実。 |
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DV(配偶者からの暴力)と虐待には深い関わりがあり、DVを無くしていく取り組みが必要。 |
○ |
保健師・助産師・看護師や保育士等の専門職の資質向上と人員の確保 |
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アセスメントから集中的な支援まで、福祉と医療が合体したケア体制をつくる。 |
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地域での支援体制を強化するためには、その中心たる保健師のパワーアップが必要。保健師が家庭訪問等でソーシャルワーカー的な働きをしていくことが必要。 |
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自ら訴えでない育児不安感のある養育者に対し、虐待予防へむけた行動観察、家族等(社会資源)の地域で支えてくれる人が近くにいるか等、情報を整理するアセスメント指標の開発が必要。 |
・ |
リスクアセスメント指標を予防の視点で活用する等、リスクアセスメントに関する考え方の共有化を図るために研修機能・内容の充実・強化が必要。 |
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・ |
スティグマに配慮した虐待リスクの把握から支援に至るアセスメント指標を確立することが必要。育児困難度アセスメント指標(案)の提案。 |
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保健師等の専門職が、若年・経済問題あり・未婚という対象に妊娠期から2歳まで濃厚にかかわり、生活指導を続けた結果、虐待抑制効果を証明したというアメリカの報告があるなど、専門職による虐待リスクのある家庭への持続的な支援は虐待予防に有効と考えられる。 |
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出産前後に支援者がそばにいることによって母子のメンタルへルスに良い影響を与えることがわかっており、養育者に寄りそうような支援が重要。 |
○ |
精神保健福祉との連携強化・精神医療からのアプローチ |
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軽度の発達障害等、情緒的なアンバランスさを持つ児への早期対応が虐待のリスクの低減につながる。 |
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○ |
虐待リスクのある家庭へ妊娠中から2歳まで定期的に家庭訪問を行ったケースは虐待発生率が4%と、行わなかったケースは虐待発生率が19%に対し、有意に低かった
“Preventing Child Abuse and Neglect: : A Randomized Trial of Nurse Home Visitation Olds DL,PEDIATRICS Vol.78 No.1 July 1986 |
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精神科医療では、養育者の相談・治療の入り口で虐待を受けた子どもを発見することもあり、養育者の治療ともに、子どもに何がおこっているかをともにみていく視点が必要。 |
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軽度発達遅滞のグループは、子どもの世話をしようと思っているが、結果的に世話や情緒のやりとりができずに子どもに問題がおこっていることがある。このような養育者を濃厚な支援でサポートする体制整備が必要。 |
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精神医療の取り組みにおいても、虐待リスクのある家庭に対し、保健や福祉の関係機関につなげていく視点等予防的アプローチの充実が必要。 |
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○ |
被虐待児の35%に基礎疾患によらない発達の遅れがある。
小林美智子「保健医療機関における子供の虐待の重症度と援助」
(2000年3月) |
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○ |
不適切な養育を行っている養育者等への濃厚な子育て支援 |
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不適切な養育手前の育児に追い詰められている養育者への対応。 |
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レッテル貼りにならないリスクアセスメントの考え方が重要。 |
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虐待のリスクがある養育者には様々なレベルがあり、ひとまとめにして考えると効率が悪い。グループ分けをしてそれぞれの関りの効果に対し裏づけを作成していく作業が必要。 |
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自ら訴え出ないが、子どもにとって不適切な養育を行っている養育者を専門的に把握し、濃厚に子育てを支援するシステムの構築が必要。 |
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不適切な養育を行っている養育者がペアレンティング等を学ぶためには家庭訪問等の個別支援の充実が必要。 |
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子どもの軽度発達の遅れは、養育者が子どもの世話をしようと思っているが、結果的に世話や、情緒のやりとりができずに子どもに問題がおこっていることがあり、そうした背景を理解した上での支援が必要。 |
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養育者と子どもの愛着形成を促進する取り組みが必要。 |
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○ |
養育問題の事例(養育が適切に行われていない家庭:事務局注)では、児の53%に軽度から境界域の発達の遅れがある
大阪児童虐待研究会「子どもの虐待予防にむけて」(1998年3月) |
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