1.はじめに
児童虐待への対応については、「児童虐待の防止等に関する法律」(施行:平成12年11月20日。以下「児童虐待防止法」という。)の施行以来、広く国民一般の理解の向上や関係者の意識の高まりが見られ、また、この間、様々な施策の推進が図られている。
しかし、全国の児童相談所に寄せられる虐待の相談処理件数も、ここ数年の間に急増し、平成13年度においては、児童虐待防止法が施行される直前の平成11年度の約2倍となる約2万3千件にも上っている。
また、児童相談所の職権による一時保護や、保護者の意に反する児童福祉施設への入所措置を家庭裁判所に申し立てる件数の増加など質的にも困難なケ−スが増加している。児童養護施設に入所する子どももここ数年増加し、虐待を受けた子どもの入所も増加している。
このような状況にあって、児童虐待対応の中核機関である児童相談所や虐待を受けた子どもを受け入れている児童福祉施設をはじめとする関係機関においては、様々な取り組みを行っているものの、十分には対応し切れていないなど、大変厳しい現状におかれており、児童虐待への対応は、早急に取り組むべき社会全体の課題である。
また、「児童虐待防止法」の附則においては、「児童虐待の防止等のための制度については、この法律の施行後3年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」と規定されている。
こうしたことから、本専門委員会においては、下記「2.児童虐待防止制度見直しの基本的な視点」の考え方に立ち、児童虐待に関する現行制度の実施状況等を踏まえた制度全般にわたる検討を加えた。
具体的な検討を進めるに当たっては、児童虐待への対応は、一般的には、(1)発生予防(2)早期発見・早期対応(3)保護・支援の3段階に整理されることから、各段階ごとに3つの検討チ−ムに分かれての集中的な議論を進め、これらの検討チ−ムにおける9回の会合を含め、14回にわたる検討を重ね、今般、当面早急に取り組むべき課題を中心に、その取り組みの具体的な方向性について取りまとめたものである。
2.児童虐待防止制度見直しの基本的な視点
虐待は子どもに対する重大な権利侵害であり、その防止に向けては社会全体で取り組むべき課題である、との認識に立つ必要がある。そして、その取り組みを推進するに当たっては、常に「子どもの最善の利益」への配慮を基本理念として、児童虐待を予防し、発見から再発防止、さらには社会的自立に至るまでの総合的な支援の手を親子に対して用意することが必要である。
それは、虐待を受けた子どもの保護や支援の充実に加え、保護者に対する支援を通じ、家族の再統合や家族の養育機能の再生・強化を視野に入れたものである必要がある。そして、そのことは、専門機関・施設のみならず、地域の幅広い支援ネットワ−クによって初めて実現するのである。
児童虐待という親子間の最も深刻な事象に対応できる社会を創りあげていくことが、すべての子どもと子育てにやさしい社会づくりにつながるとの視点を持つことが必要である。
3.具体的な取り組みの方向性
本専門委員会における児童虐待防止制度の見直しの検討に当たっては、別添に示したような幅広い論点事項について、議論、検討を重ね、以下のように整理した。
なお、以下の整理においては、取り組みの各項目ごとの基本的な考え方となるべき「取り組みの方向性」を示すとともに、「取り組みの方向性」に沿った取り組みを具体的に進めるに当たっての参考となる主な意見について、本専門委員会全体としては、必ずしも意見の一致を見ていない意見も含め、「具体的な取り組みに関する意見・提案」として整理した。また、今後、中長期的な対応も視野に、さらに時間をかけて検討すべきと考えられる課題については「今後の課題」として整理した。
さらに、本委員会で出された様々な意見については、別添「児童虐待防止対策における論点事項に係る意見及び具体的施策等について」において、できる限り、網羅的に整理した。
(1)一般の子育て支援の充実 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
(2)虐待リスクのある家庭の把握 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
(3)虐待リスクのある家庭のリスク低減 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
(4)連携による支援体制の確保 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
(5)虐待を認めない社会づくり 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
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虐待の早期発見・早期対応をさらに進めていくためには、その中心的機関で ある児童相談所の現行の体制には限界がある。 このため、今後、児童相談所の業務の一部を市町村や他の機関に委譲することや、より幅広い専門職種との連携強化、児童相談所の虐待対応に関する対応力の強化を図るため、司法関与の仕組みについても検討するなど、児童相談所全体のあり方を見直すとともに、それに応じた体制の確保を図っていくことが必要である。 さらに、児童相談所の支援を受けつつ関係機関が一体となって取り組む体制として、市町村の果たすべき役割を明確化するとともに、市町村における虐待防止ネットワ−クの設置の一層の推進を図ることが必要である。 |
(1)対応機関の機能、システム 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
(3)児童相談所の行政権限、裁判所の関与 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
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児童虐待防止対策の目標は、虐待を受けた子どもが安全で安心できる生活を保障するにとどまらず、適切なケアや治療を提供することによって、子どもの心身の健全な発達と自立を促し、さらには親への適切な指導・支援を通じた家族再統合や家族の養育機能の再生・強化にある。 そのためには、分離保護の場合も在宅支援の場合も可能な限り、家族の再統合や家族の養育機能の再生・強化が望ましいとの基本的な考えの下、虐待を受けた子どものみならず、虐待を行った親に対する治療や指導の充実など「家族」への支援という視点に立ち、十分なアセスメントと家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた精度の高いプログラムの開発が必要である。 また、親子の分離(保護)を行った場合であっても、可能な限り家庭的な生活環境を保障するとともに、必要に応じ、適切な治療や、自立を促していくための支援を充実していくことが必要である。 なお、子どもの自立や家族再統合・家族の養育機能の再生・強化に向けた取り組みは、幅広い関係機関の連携による長期にわたる支援が必要であり、関係職員の資質の向上やネットワ−クの強化が必要である。 |
(1)児童福祉施設、里親等の機能、システム 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
(3)在宅支援の強化 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
(6)医療機関の機能、システム 【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
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【取り組みの方向性】
【具体的な取り組みに関する意見・提案】
【今後の課題】
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4.さいごに
以上、児童虐待防止制度の見直しについての取り組みの方向性を整理してきたが、取り組み全体を貫く考え方を集約すれば、おおむね以下の4点にまとめられるものと考える。
早期発見・対応のみならず、発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまでの各段階において、こうした「子どもの権利擁護」という理念に立脚した多様な関係機関による切れ目のない支援体制が必要である。
また、それが困難な場合であっても、できる限りそれに準じた生活環境を確保することが必要である。
児童虐待防止制度の見直しについては、本報告書において指摘した点を踏まえつつ、さらに議論を深めるとともに、その実現に向けた早急な取り組みを期待する。 |