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資料6


厚生労働省「障害者(児)の地域生活支援に関する検討会」討議資料 (2003.06.09)
埼玉県東松山市及びその周辺地域における地域生活支援システムの取り組み
佐藤進(社会福祉法人・昴)


地勢的背景
 人口9万余の東松山市を中心とする1市5町3村からなる比企郡域(総人口22万人)を中心にその周辺市町村をサービス提供エリアとする。
 東松山市は東京から私鉄(東武東上線)で約1時間、新旧住民の比はほぼ1:1(約30年で人口倍増)。旧市街、新興住宅団地及び周辺農村的地域からなる。
 市内及び郡内の障害福祉関係機関・施設には埼玉県比企福祉・保健総合センター、県立(コロニー)嵐山郷ほか民間入所施設5ヶ所、通所施設3ヶ所(うち児童1)、県単事業の地域デイケア施設(=小規模作業所)6ヶ所。

1.社会福祉法人・昴の設立趣旨
  障害をもつ子どもたちと人々の育ちと暮らしを支える地域福祉システムの構築をめざし、その実施のために関係者の共有財産としての「社会福祉法人」
「入所施設はつくらない」⇒施設が「請け負ってきた(あるいはそう見える)」機能の地域社会への開放または分散配置
2.初期の構想づくり
  安心して地域で暮らすために必要なサービスは?という問いかけからの出発⇒最初に出された要求は、「安心でしかも必要なときに気軽に利用できる一時預かり(レスパイトサービス)」
その他、入所施設をつくらないとすると「(親亡き後の)暮らしの場所」、重度の障害者(重症心身障害を含む)が通所できる場所、就労の支援、身近で信頼できる医療サービス、休日、あるいは長期休暇に対応するサービス(レクリエーション)等々。
3.地域福祉システムの象徴あるいはモデルとしての「ハローキッズ」解体
  法人設立当初は、「行き届いた療育サービス」を目標に中規模の療育センターを構想。
しかも、当時は、大量の待機児童を抱えていた。
しかし、ハローキッズ⇒養護学校⇒作業所(通所施設)⇒入所施設という閉じられた系の中にある限り、ノーマライゼーションの具体化はありえない。
サービスを特定の場でしか利用できない構造(子どもと家族にとって当たり前の暮らし方をあきらめることで、やっと出会える特別なサービス)を変えるべき。
当初は、サポートを約束し、親を「地域」に誘導する。
その中で、子どもの生活する地域に徐々にサービスが構築され、近年は我々の誘導ではなく、親の選択によって、ハローキッズの利用を回避する。
そのことによって、ハローキッズのサービスシステムは更に多様化するという循環

事業の現況
こども発達センターハローキッズ(知的障害児通園施設+重症心身障害児事業B型併設)
 措置通園(定員39名/現在員9名1・・・5年4月1日現在)
 B型利用児(14年度実績・・・実人員34名/延べ808名)
 地域派遣(療育教室、巡回相談《保育園等》、個別相談《心理、言語等》)⇒23市町村
   14年度派遣実績/派遣回数532回、延べ利用人員2438人
 ・・・地域療育等支援事業及び、市町村等との契約
平成15年度末に「通園施設」の認可を返上し、デイサービス事業への移行を計画。
 ⇒支援費制度への移行が見送られたことは全くの期待はずれだったが。
診療所ハロークリニック
  開設5年を経て、カルテ累計4000・・・このうち、70%は障害児(者)及びその家族
臨床心理士/2、ST/2、PT/2、OT/1のスタッフを配置し、療育ニーズに対応
これまで、通園施設(ハローキッズ)が抱えてきた「療育」ニーズに対し、より系統的、組織的に対応するために。⇒ハローキッズとの役割の分担あるいは交替。
デイセンターウィズ(知的障害者通所更生施設・定員38名)
  重症心身障害者及び重複障害(知的、身体)をもつ人が過半数。
生活援助部・・・グループホームおよび生活ホーム(3ヶ所/17人)⇒他法人のもの5ヵ所
就労支援部・・・
  「NPO法人東松山市就労支援センター(14年12月)」/市町村の公園清掃及び公共施設の植栽管理等の共同受注及び一般就労の斡旋と支援(昨年度実績17名)
市内の施設利用者及び在宅の障害者がセンターに登録し利用するシステム。
ファミリーサポートセンター昴(15年4月より指定居宅介護事業所)
  利用登録会員(昨年度実績360名、4000件/10000時間)⇒埼玉県生活サポート事業
支援費による利用者の現況(15年5月20日現在契約済み分のみ)
 人数23名/年齢分布9〜54才,筋ジス、CP、視覚障害等身体障害者含む)
 決定支給量・・・身体404h(287h),家事98h(15h),日生227h(54h),移動650h(250h)
(  )内は昴契約時間
レクリエーションクラブ(昨年度実績118回述べ440人利用)
  ⇒イベント、ツアー、サークル等
尚、東松山市内に居宅介護関係事業所は市社協運営によるものなど計4ヶ所がある。
その他
  東松山市総合福祉エリア総合相談窓口(三障害、高齢者対応・・・24時間365日対応)
 知的障害部分は、昴より出向(地域療育等支援事業)
東松山市社協運営グループホーム(15年3月)・・・重度、最重度の知的障害者専用
⇒現行制度及びホームヘルパー活用によって成立
・・・昴の生活ホームも同様方式で重度重複障害者の利用を可としている。

社会福祉法人昴の事業概要 (2003年4月1日)

社会福祉法人昴の事業概要 (2003年4月1日)


社会福祉法人昴のあゆみ
1990(平成2)年3月   社会福祉法人昴設立
   知的障害児通園施設「青い鳥学園」の運営を引き継ぎ、施設名を「こども発達センターハローキッズ」に改称。
「地域サービス部」を併設し,地域療育関連事業を本格実施

1993(平成5)年6月   ファミリーサポートセンター・昴開設。
 レスパイトサービス事業を開始
生活ホーム「ピアハイム」を開始。

1995(平成7)年8月   知的障害者通所更生施設「デイセンターウィズ」開設。

1997(平成9)年4月   市町村障害者生活支援事業受託に伴い生活支援センター「ひき」開設。
10月     地域療育等支援事業受託(⇒現在はエリア総合相談センターに出)

1998(平成10)年9月   診療所「ハロークリニック」開設。
  発達相談室を付置。
10月    重症心身障害児通園事業(B型)受託
  ハローキッズに併設

1999(平成11)年4月   東松山市社会福祉協議会・ケアサポート「いわはな」開設に伴い生活支援センター「ひき」を市社協に移管し閉鎖。

1999(平成11)年10月   生活ホーム「すまいる」開設。

1999(平成11)年10月   障害者雇用支援センター準備室開設

1999(平成11)年12月   ファミリーサポートセンター昴を現在地に移設。

2000(平成12)年4月   ファミリーサポートセンター昴内にレクリエーションクラブ開設し介護支援部門と併設。

2001(平成13年)4月   「手をつなぐ育成会」らともに東松山市障害者就労支援センターを開設(・・・2003年NPO法人化)

2001(平成13年)10月   生活ホーム「すまいる」をグループホームに変更

2001(平成13年)11月   「障害児・者訪問介護員(ホームヘルパー2級)養成講習」開始

2002(平成14年)1月   比企郡小川町委託事業としてファミリーサポートセンター昴
 小川支所「アット」及び生活ホーム「ユニコーポおがわ」を開設。

2003(平成15年)4月   ファミリーサポートセンター昴居宅介護事業所指定とともに移転

課題と問題点
社会福祉基礎構造改革は漸進的改革かscrap and build的改革か?
すなわち、「地域福祉」へのシフトと従来の制度との「連続性」と「非連続性」に関する論点。

一般的課題
支援費の制度設計上の問題⇒介護保険との比較
*direct payment
*care management
この2点において、「後退」といわざるを得ない。しかも、この点は、措置制度から契約利用制度への転換における基本問題。したがって、今後の方向性として再確認すべきでは。
支援費制度の実施にあたって
     ケアマネージメントの制度化のフェードアウト
措置費として支給されていた予算の聖域化(→施設訓練支援費の調整)
ホームヘルパーの基準額(上限)設定
既存制度との調整
⇒「既得権」の温存を前提とした調整の限界を露呈した。
cf.15年度障害保健部予算
施設支援費 ・・・ 5000億(知的障害関係/4000億・・・入所関係3000億)
居宅支援費 ・・・ 1000億(ホームヘルプ/知的・身体合計560億・・・知的100億程度か)
知的障害者 入所施設利用者/12万人 在宅障害者/33万人
  ・・・1人あたりの単純比較で約100倍の格差(知的障害者の場合)
こうした構造の中で、事業所は
例えば、FSC昴では
 生活サポート事業適用の昨年は/350名会員で年間4400件10000時間・・・2850万円
 今年度(5月末現在)・・・契約者22名・・・概算契約額400万円(月)
即ち、20名の利用者を囲い込め(契約)ば、「経営」は安定する=昨年並みの収入確保。
しかし、利用者の利便性とは必ずしも比例しない構造となった。
この制度改革(支援費)は何をめざすべきか。
  従来の施設福祉中心の体系から地域生活支援の方向ではあっても、施設→地域ではなく、むしろ、地域→地域(不安定で高い緊張にある在宅障害者と家族の暮らしの安定的維持)を当面の視座とするべきであろう。
「親亡き後」を含めて、利用者サイドの施設志向は地域福祉の不足であることは繰り返し指摘されてきた。この不安を解消するために必要なシステムと財源確保が議論の中心である。


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