目次
1 | 検討会設置の趣旨 | ||||
2 | 検討事項 | ||||
3 | 検討に当たっての基本的考え方
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4 | 検討事項1に係る検討の考え方及び検討結果
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5 | 検討事項2の検討結果 | ||||
6 | まとめ |
1 | 検討会設置の趣旨
業務上疾病の範囲を定めている労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)第35条の規定は、保険給付の請求の容易化及び業務上疾病に対する迅速かつ公正な補償を図る目的で、昭和53年に抜本的な改正がなされた。 |
(1) | 平成14年6月に開催された国際労働機関(International Labour Organization。以下「ILO」という。)第90回総会において採択された「職業病一覧表並びに業務災害及び職業病の記録及び報告に関する勧告」(Recommendation Concerning the List of Occupational Diseases and the Recording and Notification of Occupational Accidents and Diseases。以下「第194号勧告」という。)の職業病一覧表に示されている疾病を踏まえて、労基則別表第1の2等に追加すべきものの有無の検討(以下「検討事項1」という。) |
(2) | 平成12年度及び平成13年度に労災認定された事案のうち、労基則別表第1の2等に具体的に示されていない疾病を踏まえて、労基則別表第1の2等に追加すべきものの有無の検討(以下「検討事項2」という。) |
(1) | ILO勧告と現行労基則第35条の規定との関連について 我が国は、1964年にILOにおいて採択された「労働災害の場合における給付に関する条約」(以下「第121号条約」という。)を昭和49年に批准している。 第121号条約の第8条においては、付表Iに掲げる疾病を含み得る程度に十分に包括的な職業病の一般的定義を法令に含めること等を要請しており、付表Iには29種類の疾病について具体的に示されている。 この条約に対し、労働基準法に基づく業務上疾病の範囲については、同法第75条第2項の規定を根拠として、労基則別表第1の2等(これらは、疾病の具体的列挙規定、将来列挙疾病として追加することを想定した追加規定及び包括規定により構成されている。)をもって定められているものであり、これらの規定は第121号条約の要請を満たしているところである。 さらに、ILOは、2002年6月の第90回総会において、第194号勧告を採択している。この勧告では、第121号条約の付表Iに具体的に示されている29種類の疾病よりも多く、66種類の疾病が示されている。今般、第194号勧告は、業務上災害及び業務上疾病の原因を特定し、予防策を講じ、記録及び報告制度の調和を促進し、業務上災害及び業務上疾病であった場合の補償手続きを向上させるために、その記録及び報告制度を強化する必要性を考慮し、職業病一覧表を改訂するための簡素な仕組みの必要性に鑑み、採択されたものであり、予防の観点を含めた勧告となっている。また、第121号条約の付表Iにおいては、業務災害を補償することを念頭においているため、業務及び疾病の対となって示されているが、本勧告においては、疾病が発生した際の報告を念頭においていると考えられることから、第121号条約の付表Iに示されるそれとは構成が異なっていると考えられる。 また、第194号勧告において、権限ある機関は、予防・記録・届出そして適切な場合には補償を目的として、当該国における職業病一覧表を作成することを要請している。このことから、労基則別表第1の2等は第194号勧告に示された疾病全てを含む必要はない。 しかしながら、第194号勧告に示されている疾病でありながら、労基則別表第1の2等に示されていない疾病について、新たに労基則別表第1の2等に追加すべきか否かを検討する必要がある。 |
(2) | 例示列挙に係る考え方 症例報告、専門機関による化学物質等に関する評価(発がん分類、許容濃度等)等を踏まえて、業務と疾病との間に因果関係が確立していると認められる場合には、例示列挙することが適当であると判断する。 ただし、労基則別表第1の2には、包括規定が設けられていることから症例報告等があるものでも、「職業病として発生することが極めて少ないもの」等以下に示す要件に該当するものは除くこととする。
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(1) | 検討の考え方 資料3は、第194号勧告に示されている疾病について、第121号条約及び労基則別表第1の2等に示されているか否かについて表している。「労基則別表第1の2等の規定状況」欄において、○印を付している疾病に関しては、既に労基則別表第1の2等に示されており、今般検討する必要がない疾病であることを、また、×印を付している疾病に関しては、示されていない疾病であることをそれぞれ表している。さらに、△印を付している疾病に関しては、第194号勧告に示されている疾病の全てを労基則別表第1の2等に示されていない可能性があることを表している。 この表のうち、×印及び△印を付している疾病について、検討対象とすることが適当であるが、このうち、職業性白斑については、既に因果関係が明らかなものは「皮膚障害」として労基則別表別表第1の2等に示されていること及びその他労基則別表第1の2等に示されていない全ての作業、有害因子はその範囲が広く、これらを絞り込むことが困難であることから、また、坑夫眼振については、昭和53年の改正以前の労基則第35条に「地下作業に因る眼球振盪症」として掲げられていたが、発生例が減少し、将来的に発生することが想定されなかったこと等の理由から昭和53年に具体的列挙規定から削除されたものであると考えられること及び、その後、当該疾病が発生していないため、現時点において再度追加する必要はないと考えられることからそれぞれ検討対象から除外した。 従って、検討事項1では、以下に示す11の疾病について、医学専門家による文献レビュー(資料4)をもとに検討することとした。
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(2) | 検討結果
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5 | 検討事項2の検討結果
昭和53年以降、包括規定により業務上疾病として認定された事案について、定期的に労基則別表第1の2等に追加すべきか否か医学専門家による検討が行われ、その結論を踏まえて所要の措置が講じられてきたところである。これまで、包括規定により業務上疾病として認定された事案の中では「亜鉛黄又は黄鉛を製造する工程における業務による肺がん」及び「ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍」について、追加すべきとの結論に至り、所要の措置が講じられてきた。 |
6 | まとめ
本検討会では、第194号勧告に示されている疾病並びに平成12年度及び平成13年度に包括規定により業務上疾病として認定された疾病を踏まえて、新たに追加すべき疾病の有無について検討を行った。今回の検討では、現時点において新たに追加する必要はないとの結論に達した。 |
照会先 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第二係 (宇野・井野場)
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