03/05/23 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成15年5月23日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年5月23日(金) 10:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(12名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 岡 田 義 昭、 守 殿 貞 夫、    神 谷   齊、 後 藤   元、 早 川 堯 夫、 藤 上 雅 子、  ○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、 吉 田 茂 昭 (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人2名   欠席委員(4名)   折 笠 秀 樹、 川 嵜 敏 祐、 木 村   哲、 菅 谷   忍 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 安 倍 道 治(審査管理課長)、    平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(医薬品医療機器審査センター長)    姫 野 孝 雄(審査センター企画主幹)、    平 山 佳 伸(審査センター審査第一部長)、   森   和 彦(審査センター審査第二部長)、   辻 村 信 正(審査センター審査第三部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻を5分過ぎておりますので、ただいまから薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、 誠にありがとうございます。当部会委員数16名のうち、11名の方に今御出席をいただ いております。吉田委員は間もなく御到着されると思いますが、欠席委員といたしまし ては折笠委員、川嵜委員、木村委員、菅谷委員の4名でございます。  大変恐縮でございますが、今日は最初に報告事項からということで、今後の議事運営 を池田先生にお願いしたいと思います。 ○池田部会長 お手元にありますように、本日の審議事項はグリベックカプセル一つ、 報告事項は三つでございます。審議事項の議題1に関しては吉田委員が専門委員として 参加されていますが、御到着を待って始めた方が適切かと思いますので、始めに報告事 項から行きたいと思います。まずその前に事務局の方から配付資料の確認と、資料作成 に関与された委員の報告をお願いしたいと思います。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。資料1〜5までがあらかじめお 送りした資料でございます。席上配付資料といたしましては、本日の議事次第、座席表、 当部会の委員名簿、それから資料6として「医薬品第二部会審議品目の薬事分科会にお ける取扱い及び毒薬・劇薬の指定の要否について(案)」でございます。それから資料7 といたしまして、「グリベックカプセル100mgに係る専門委員名簿」でございます。そ れから資料番号を振っておりませんが、グリベックカプセル100mgの市販後調査計画案 骨子ということで、資料をお手元にお配りしてございます。お手元にございますでしょ うか。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。 ○事務局 それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関与さ れた委員の確認でございますが、本日の議題については関与委員はいらっしゃらないと いうことでございます。よろしくお願いします。 ○池田部会長 ありがとうございました。委員の先生方、資料はお手元にわたっている でしょうか。  それでは早速報告事項の議題1に入りたいと思います。審査センターの方から報告事 項の議題1、γグロブリンの輸入承認事項一部変更承認についてよろしくお願いします。 ○事務局 それでは報告事項の議題1、医薬品献血ベニロン-I、献血グロベニン-I- ニチヤク、献血ヴェノグロブリン-IHヨシトミ、ヴェノグロブリン-IHの製造承認事 項一部変更承認、及びポリグロビンNの輸入承認事項一部変更承認について御報告いた します。資料といたしましては、資料3-1〜3-4の四つになります。これらは各々、財団 法人 化学及血清療法研究所、日本製薬株式会社、三菱ウェルファーマ株式会社(現株式 会社ベネシス)及びバイエル薬品株式会社より申請がありました、人免疫グロブリンG製 剤です。今回の申請は4社同様の内容となっておりますので、一まとめとして御報告さ せていただきます。  代表して資料3-1を御覧ください。本申請は、既に承認されている「川崎病の急性期」 の効能・効果に対する用法・用量である、「200mg/kg体重又は400mg/kg体重での5日 間投与」に、新たに「2,000mg/kg体重での単回投与」の用法・用量を追加するものであ り、「川崎病の急性期」の治療において、2,000mg/kg体重での単回投与は従来の分割投 与と同等以上の有効性を有するとする多くの報告があること、国内外の標準的な教科書 等にも本用法・用量の記載があること、本用法・用量での医療現場における相当の使用 実績があることなどを踏まえ、医学・薬学上公知であると認められるとして臨床試験を 新たに実施することなく申請が行われたものでございます。  審査センターにおける審査の結果、心機能が低下している患者への投与、効果不十分 な症例への追加投与等に関する注意喚起を行った上で、本剤を承認して差し支えないと 判断したものです。また、製造方法の異なる製剤間での有効性、及び安全性の差異を明 らかにする意味も含めて、4社同一プロトコルによる適切な市販後調査を実施すること を承認条件として付しております。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。今説明がありましたように、静注用のγグロ ブリン完全分子型の川崎病に用いる場合の用法・用量の変更ということ、川崎病に関し てはこれまで適応が認められているものですが、学会の診療ガイドラインにもう既に載 っている、あるいは日常の臨床でも行われるということもあって、公知の事実としてこ れが申請されたということです。この報告について、どなたか御質問ございますでしょ うか。岡田委員、どうぞ。 ― 吉田委員着席 ― ○岡田委員 グロブリンの量的には差がないのですけれども、製法と性状…、添加剤も 大分性状が違うのです。その影響をこれから見るということですが、投与法が2gにな りますとこれまで5日間にわたって添加剤が分割されていたものが一挙に入るというこ となので、その辺の薬理学的な副作用というのは、例えば何らかのもので検証しておか なくていいのだろうかと。  あともう一つ、四つのうち液状のものが二つと、凍結乾燥品のものが二つあるのです けれども、グロブリンは溶けてから時間がたつとポリマーを造る性質がありまして、こ の投与方法を見ますと大分長時間にわたって投与しますので、その間にポリマーを造る おそれがあると思うのですが、簡単に調べられると思うのでポリマーをどの程度造るの かということを一応調べておいた方がいいと思います。 ○池田部会長 一括して審議ですけれども、4社それぞれ製造方法が違うということが あって、それに関して大量投与の場合、例えばγグロブリンの蛋白の凝集のようなもの、 それから添加物の濃度、混入の具合の点についての御質問が今岡田委員の方からありま したが、事務局の方で何かコメントありますか。 ○事務局 まず最初に添加剤の方で、薬理作用等の問題がないかといった御質問に対し てですが、取りあえずいろいろな製法による製剤が今もう実際に現場で使われておりま して、それによる差は出ておりません。ただし、微妙な違いがある可能性がございます ので、これに関しては市販後に調査することにしております。 ○池田部会長 もう一つ、時間を掛けて輸注するので、その間の凝集、ポリマー形成に ついてはどうですか。 ○事務局 臨床現場におきましては、一度に全部溶解して使うのではなくて、前のバイ アルが静注で患者さんに入っているときに次のバイアルを溶解して使うという格好で、 決して今までの分割投与のときに比べ溶解してからの時間が長くなるということはござ いませんので、それに関してはまず問題ないかと考えております。 ○池田部会長 岡田委員、何かございますか。 ○岡田委員 臨床現場で徹底していればいいのですが、例えば10kgの子供に投与される となると20gですから、8本ですか。その都度行きますか。 ○池田部会長 場合によっては、確かに8本一遍に溶解して、たこ足のようにつなげる 施設はあるかもしれません。 ○事務局 恐らくそういうことは実際の現場ではやっていないと、注意書きにもきちん と書かれておりますので、その辺は周知徹底されております。 ○池田部会長 そうですね。それはあくまでもやらないように周知徹底するということ ですか。神谷委員、お願いします。 ○神谷委員 基本的には今のお話のとおりで、私たちも現場で使っておりますが、溶解 は順番に行きますので一遍にやるということは…。川崎病をやっている人たちはかなり 徹底しておりますので、大丈夫だと思います。  それから臨床的に使ったときの副作用としては、もちろんほとんど変わりもありませ んし、効果としては先ほど事務局も説明されたように、むしろ2gで一遍にやった方が 効果がある症例、そういう経験がだんだん増えておりますので、今回こういう拡大使用 を認めていただくということは大変適切だと私は思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほか、どなたかこの報告事項について御 議論ございますか。守殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 副作用についての記載ですが、今回のポリエチレングリコール製剤につい ては他の剤型に比べてショック等の重篤な副作用が多いことが、総合判定のところで明 確に記載されているのです。こういうふうなことがありながら、効能書きにはそういう ことが余り書かれていないので、他剤とこのポリエチレングリコールとの差はどうなの か…。少なくとも医者側に分かるような指示があればと思うのですが、もしインフォー ムド・コンセントで、ショックを受けた場合にどうして少ない方を使ってくれなかった のだと患者から言われると思うと、ちょっと心配な気もします。 ○池田部会長 非常にごもっともな御意見だと思いますが、事務局の方で何かございま すか。ちなみに資料3-1の後ろから数ページに、各製剤の副作用発現状況が「別紙」と して横書きでございますので、それを御覧になりながら事務局の方から…。 ○事務局 私どもが川崎病急性期の効能・効果に対する再審査をしたときの副作用発現 情報をまとめたものが、今池田先生がおっしゃった表になっているわけですが、「使用 成績調査」のところを見ていただきますと、ポリエチレングリコール製剤のヴェノグロ ブリンは0.78%、それからグロベニンは0.14%、ほかの製剤では0%ということで、こ れは差があるのではないかと気にしました。一方、文献等では余り差がないというペー パーもございまして、その欄の下の「自発報告」などでも差があるのですが、報告の情 報収集のレベルというのもかかわってまいりますので、これに関しては再度今回確認を する意味で、市販後に同一プロトコルでショックを始めとする副作用の発現がどのよう に違ってくるか収集する予定でございます。  さらにそれに関して情報提供をする必要があると考えましたので、献血ベニロンの「添 付文書(案)」の3ページ左側の「(2)重大な副作用」の上ですが、今回行った使用成績 調査の結果を各製剤の添付文書に記載いたしまして、情報提供する形にいたしておりま す。 ○池田部会長 ありがとうございました。そうすると、一応横並びにはなっていないと いうことですね。 ○事務局 現状では再度の確認ができていないので横並びにはなっておりませんが、製 剤間の添付文書を比べれば分かるという形になっております。 ○池田部会長 守殿委員、いかがでしょうか。 ○守殿委員 そうしますと、今言われたようなニュアンスのことが少なくとも総合判定 のところにあるべきです。明確に差があると思いますので。 ○審査第三部長 再度繰り返しになりますが、我々としては4製剤間の有効性、安全性 の差について証拠をもって明確に断定するには至らないという現状でございます。  それから一つ一つの製剤について、今回の投与方法と副作用等のデメリットを比べま しても、一つ一つの製剤でこれは承認に至るというふうに判断しております。しかしな がら、いろいろなペーパーあるいは我々の調査等を含めまして、やはり更に市販後調査 等で調べる必要があるというポジションに立っております。一応そういう整理でござい ますので、繰り返しになりますが、現状ではいろいろなペーパーを見ましても明らかに どうだという結論には至らないと。ただし、それに関しては調べる必要があるだろうと いうことでございます。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。これは神谷委員からも御指摘ありましたように、 公知の事実という、学会のガイドラインにも載って使われている、効果もはっきりして いるので、用法・用量の変更を報告事項として御承認いただきたいと思います。ただ、 今岡田委員、守殿委員から御指摘がありましたように、場合によってはやはりこれだけ 一遍に大量投与すると溶血性貧血という合併症が起こり得る可能性も、もちろん使って いる先生方は御存じだと思いますが、そういうことも含めてやはりこれが承認された後 は短期間のうちに使用状況をきちんと報告していただくように、事務局の方から是非お 願いしたいと思います。よろしいでしょうか。それではこの報告事項については、先生 方に御承認いただいたということにいたします。  それでは前後いたしましたが、審議事項の議題1に戻りたいと思います。グリベック カプセル100mgの輸入承認事項の一部変更承認の可否でございますが、これについて審 査センターから審査概要の説明をお願いします。 ○事務局 それでは議題1、資料2の医薬品グリベックカプセル100mgの承認事項一部 変更承認の可否について、審査センターより御説明申し上げます。グリベックカプセル 100mgの有効成分であるメシル酸イマチニブは、ノバルティスファーマ社(スイス)によ り開発されたチロシンキナーゼ阻害剤であり、2001年11月に慢性骨髄性白血病を効能 ・効果として承認されております。今回は消化管間質腫瘍の効能を追加する申請がなさ れました。  消化管間質腫瘍は、消化管間質細胞由来の腫瘍のうち、平滑筋や神経系細胞への分化 増殖を示さず、c-kit遺伝子が産生するチロシンキナーゼが陽性を示す腫瘍であり、こ のKITチロシンキナーゼの異常活性化が腫瘍細胞の増殖を促していることが判明して います。本剤はKITチロシンキナーゼ活性も阻害することから臨床試験が実施されま した。消化管間質腫瘍については、既存の化学療法は無効であったところ、臨床試験の 中間集計成績において本剤の抗腫瘍効果が認められたため、試験継続中でありながら昨 年2月に米国で承認されたのを始め、現在までに約67か国で承認されております。  本剤の専門協議では、当日配付資料7に記載のとおり、小椋委員、池田委員、竹内委 員、松野委員、吉田委員が専門委員として指名されました。  安定性、薬理、吸収・分布・代謝・排泄に関して提出された資料の内容は妥当である と判断しております。 臨床試験成績については、有効性に関して切除不能又は転移性の悪性消化管間質腫瘍を 対象に、本剤400mg又は600mgを投与する試験が米国等と日本で実施されました。抗腫 瘍効果(奏効率)は海外試験では2002年8月27日時点の成績で400mg群65.8%、600mg 群66.2%、国内試験では2002年11月26日時点の成績で400mg群46.4%、600mg群56.5 %であり、いずれも両群間に有意差は認められませんでした。 審査センターは本剤の作用機序を踏まえ、効能について「KIT(CD117)陽性消化管間質 腫瘍」と変更することが適切であり、また、現在海外において臨床試験が実施されてい る術前術後補助療法については有効性、安全性が確立されていない旨を「効能又は効果 に関連する使用上の注意」にて情報提供する必要があると判断しました。 また、用法・用量については、米国では400mg又は600mgが承認され、EUでは400mg のみが承認されております。審査センターは、臨床試験成績について有効性については 400mg群と600mg群の抗腫瘍効果に有意差を認めなかった一方で、有害事象の種類や発 現頻度について600mg群でやや高い傾向が見られたこと、有害事象や臨床検査値異常に よる中止例について600mg群に多く見られたことから、国内の用量を400mgのみとする 申請者の変更案を妥当なものと判断いたしました。なお、国内外共に試験が継続中です ので、600mg以上の高用量群について有用性に関する新たな情報が得られた場合には、 速やかに用法・用量を変更する承認事項一部変更承認申請が必要と考えております。 安全性に関しては、消化管間質腫瘍患者に特有な有害事象として消化管出血、腫瘍内出 血が海外試験で6.8%、国内試験で5.8%の頻度で認められました。腫瘍出血については、 定期的な血液検査の実施や消化器症状の所見に注意を払い、所見が認められた場合には CT検査等による出血部位の確認が必要であり、添付文書の「使用上の注意」の「重大 な副作用」の項において情報提供を行うことといたしました。これ以外に臨床試験で認 められた有害事象については、既承認の慢性骨髄性白血病で認められた有害事象と頻度、 重篤性等に大きな違いはなく、忍容性は認められると判断いたしました。  以上のとおり、審査センターの審査及び専門協議における議論の結果、消化管間質腫 瘍に対する本剤の有用性は認められると判断し、国内で適切な市販後臨床試験を行い、 有効性、安全性の更なる明確化を行うことを条件に承認して差し支えないと判断し、医 薬品第二部会で審議することが妥当と判断いたしました。なお、本申請は希少疾病用医 薬品であることから、再審査期間10年に該当すると判断しております。また、当日配付 資料として、本剤の市販後調査計画の骨子をお示ししております。御審議のほどよろし くお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。このグリベックカプセル、メシル酸イマチニ ブは、2年前の2001年12月に慢性骨髄性白血病の効能をこの部会で承認したわけです。 今回、KIT陽性の消化管間質腫瘍に有効性があるということで承認申請が出されてお ります。先生方の御意見を伺いたいと思いますが、先ほど事務局からありましたように、 この部会から吉田委員が専門委員として出てくださっているのですが、コメントござい ますか。 ○吉田委員 遅参しまして恐縮です。今の審査センターからの御説明に特に補足するこ とはないのですが、基本的に慢性骨髄性白血病について広く使われているということで、 安全性に関してはそれほど問題になりませんでした。特に消化管出血に関しては、疾患 特異的なものであって、注意喚起する程度でよろしかろうということでございます。  専門協議で一番問題になったのは、非常に症例数の少ないGISTのような疾患に対 して、市販後調査あるいは市販後臨床試験をどうするかであろうということで、具体的 な例を挙げながらコメントを求めてくださいということで終わっております。恐らくそ の回答が今日配付された申請者からの計画案だと思われます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは先生方、どうぞ御意見をお願いしま す。 吉田委員の方からお話がありましたように、慢性骨髄性白血病については国内で約4,000 例に投与されていて、その忍容性については今回のGISTのスタディーとそれほど大 きく変わるものではない。ただGISTの場合には、吉田委員も言われたように腫瘍内 出血の問題が慢性骨髄性白血病とは違って出てくるかもしれないが、それについては対 応できるのではないかということです。あと症例数の少ない患者さんでの効果、あるい はその使い方について今後どういうふうな市販後調査を計画するか企業の方にも呼び掛 けようということで、今お手元に市販後調査計画案骨子というものがあるという状況で ございます。いかがでしょうか。どうぞ、溝口委員。 ○溝口委員 意見というより基本的なことをお教えいただきたいのですが、このGIS Tは突然変異で恒常的にKITチロシンキナーゼ活性が亢進している腫瘍ですので、こ の結果を見せていただく前はもっと効果があるのかと思ったのです。ほかにいい治療法 がない疾患ですので、この程度でも必要な薬だとは思いますけれども、PRのパーセン トが出ているだけだったので、それに関係してお教えいただきたいのです。このように 恒常的にチロシン活性が亢進していますと、外からのステムセルファクター(SCF)に は全く反応しないのですか。血中にも少しはステムセルファクターがあると思いますが、 この腫瘍は勝手に細胞がキナーゼ活性を亢進させているだけで外からには反応しないの かどうか…、ちょっと基本的なことで申し訳ないのですが。 ○池田部会長 事務局の方から何かコメントありますか。 ○事務局 この点に関しては、私どももまだ十分に調べておりません。GIST自体が 最近疾患として確立したようなところもございますので、このチロシンキナーゼの亢進 の状況と悪性度などの関連についても、今後いろいろな情報が蓄積されていくことと思 いますので、その辺も併せて収集してまいりたいと思います。 ○池田部会長 上原委員、どうぞ。 ○上原委員 今の御質問に関連してですけれども、KITが恒常的に活性化している場 合にステムセルファクターで活性化が更に行くのかどうか、反応しないのかという御質 問に対しては、恐らくそれ以上の活性化は起こらないのだろうと。フルに活性化されて いて、そのメンブレーン周辺の構造の変化、突然変異によってリガンドがなくても活性 化が行っているという構造変化が起きているために、更にSCFを加えることで活性化 が上がるということは、一般のレセプター型のチロシンキナーゼの場合と同様、恐らく ないと思います。今直接調べたわけではないですが、この場合もそういうことだと思い ます。 ○池田部会長 そのほかどなたか御質問ございますか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 この有効性の判断は4週間後ということですけれども、結局ファイ ナルのところは寿命が延びたかどうかになると思いますが、そこまではまだきちんと掌 握していないだろうと思います。やはり市販後調査をやる必要があると思います。観察 最長5年間というのですが、この市販後調査の計画がそれに当たると考えてよろしいの ですか。当然副作用等についても調査をするのでしょうけれども…。 ○事務局 先生御指摘のとおり、生存期間等を含めた調査に関しては、今回提出させて いただいた骨子のうちの長期使用に関する調査、及び術前術後補助療法になりますが、 市販後臨床試験の方で国内のエビデンスについては調査をしてもらうことを考えており ます。 ○堀内部会長代理 これを見ますと、全症例が年間2,000人程度で、転移性の病変は600 人程度ということですけれども、その中で登録全体が特別調査で300例、それから市販 後臨床試験では60例ですが、こういう少ない症例は基本的にはもっとたくさん、できれ ば全症例がいいのではないかと思いますが、その辺はなかなか難しいのでしょうか。 ○事務局 当初、計画について300例というふうに出してきましたが、先生御指摘の点 について私どもも同じような考えを持ちまして、この点についてはこの骨子の2ページ、 下から二つ目の段落にございます。契約可能な施設を今予測ということでこのような数 字を出しておりますが、実施に当たっては可能な限り施設数を増やして、症例の把握に 努める所存であるということで、会社の方からも来ております。改めて私どもの方から も、更に症例の把握に努めるように指導していきたいと考えております。 ○池田部会長 吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員 今の堀内委員の御質問ですが、例えばサージャリー対サージャリープラス グリベックというような比較試験を行って、生存に対するインパクトを見る必要がある ということは分かるのです。しかし、実際問題として日本全国でこれだけの症例数しか ないとなると、かなり多数の施設でやらなければいけないことになって、恐らく我が国 で単独でやるのは難しいだろうということで専門協議で出た議論としては、ドースの問 題はありますが、落ち着いた段階でブリッジングの形でもいいから欧米と日本とで症例 を合わせて、第III相試験のようなものを計画してほしいという意見がございました。 ○堀内部会長代理 こういうものは欧米と一緒でいいのではないかと思いますので、是 非そういう方向でやっていただきたいと思います。 ○池田部会長 そのほかはいかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 もう一つよろしいですか。アジュバントで使うことについては、承 認のところで有効性が明確でないという表現を付け加えてあると思うのですが、そうし ますとこれは今後の問題だろうと思います。市販後臨床試験等でやることだろうと思い ますが、この言葉が添付文書に入ることによって、手術をやって5年生存率が40何%と いうことですから、当然アジュバント的に使われる可能性があるのではないかと思いま す。ここにこう書いてあるということは、保険で切られるということになりますか。お 金の話で恐縮ですが…。 ○池田部会長 事務局の方で何かありますか。 ○事務局 審査センターの方からお答えいたします。保険の点に関しては確たるお答え ができないところでございますが、薬事法上の効能・効果といたしましては、特に術前 術後補助療法を除くという形にはしておりません。これの経緯について多少申し上げま すと、現在アメリカなどにおいて研究者主導という形で、術前術後補助療法の臨床試験 が実施されているところでございます。恐らくこのような結果が出てくれば、ある程度 エビデンスを持って国内でもお使いいただけるものと考えまして、「効能・効果」に関 しては特に制限を設けませんでした。しかしながら、現段階でエビデンスがないという ことは確かでありますので、「効能・効果に関連する使用上の注意」で情報を提供させ ていただいたところです。  それから先生の御指摘にもございましたように、市販後調査計画の骨子の中の市販後 臨床試験につきましては、術前術後補助療法の有効性を確認する試験ということで、海 外で実施されている試験にできるだけデザインを似せた形で今回実施するということに します。 ○池田部会長 これは国内の臨床試験では、手術不能例あるいは化学療法不応例という ことで試験しましたが、効能・効果あるいは適応については外してあるわけですか。そ うですね。いわゆる適用に関しては、KIT陽性の消化管間質腫瘍だけでいいというこ とで、前の慢性骨髄性白血病も欧米ではインターフェロン不応性が最初に付いていたけ れども、我が国ではそれは外して承認しましたが、それと同じような格好になるわけで すね。そういうふうに理解していいのですか。 ○事務局 はい。 ○池田部会長 ということですから、大丈夫なようです。 ○堀内部会長代理 分かりました。 ○池田部会長 溝口委員、どうぞ。 ○溝口委員 副作用のことでちょっとお伺いします。「添付文書(案)」の6ページから 7ページにかけて「(1)重大な副作用」に書いてございますが、こういう副作用がアレ ルギー機序で起こるのか、非アレルギー機序で起こるのか分かりませんけれども、読ま せていただくと副作用は割と初めのうちに起こって、長期投与していったから頻度が増 えるということではなさそうに思ったのです。それでお伺いしたいのは、「8)間質性肺 炎」と「9)重篤な皮膚症状」です。私は皮膚科でひどい患者さんばかり診ているのでち ょっと気になるのですが、8)では亡くなる方がいると思います。8)、9)で頻度不明に しろ、投与してどのくらいで起こるかが分かったら、添付文書に書いていただくと参考 になると思うのです。皮膚症状は軽いのが多くて、減量や中止で治るのがほとんどのよ うですけれども、初期には軽いのとこういう重篤な皮膚症状と区別がつきませんので、 大体何日くらいに起こることが多いと書いていただくと、使うときには参考になるかと 思うのですが、いかがでしょうか。 ○池田部会長 非常に重要な御指摘だと思いますが、事務局の方から何かございますか。 ○事務局 事務局からお答えいたします。間質性肺炎につきましては、「審査報告書」 の22ページに症例の詳細が書いてございます。実際に海外で2例死亡例があり、1例は 1か月、もう一例は3か月目に発現しているということがございました。重篤な皮膚症 状に関してですが、慢性骨髄性白血病の市販後に起こった症状ということで、安全対策 課の方で症例を把握していると思いますので、発現時期などについても問い合わせをし た上で、可能であればできるだけ添付文書に記載するような形でやっていきたいと思い ます。 ○池田部会長 そうですね。今の時点である程度分かっていることを、もう少し役に立 つような情報として整理するというのは非常に大事だと思います。 ○堀内部会長代理 基本的に間質性肺炎は、先ほど4,000例に使われたという話ですが、 それで2例程度と考えてよろしいのですか。 ○事務局 いえ、これは海外の症例でございますので…。 ○池田部会長 海外でしょう。国内はないでしょう。 ○事務局 国内ではございません。 ○堀内部会長代理 国内ではないのですか。 ○事務局 すみません、国内で1例ございました。 ○池田部会長 それは死亡例ではないですね。 ○事務局 死亡例でございます。 ○池田部会長 23ページの上の方ですか。 ○堀内部会長代理 今のことに関連してよろしいですか。市販後に見つかった重篤な副 作用として出てきているのですが、今の溝口委員の御指摘にあったように、結局はどの くらいの割合で起こるのか分からないということですよね。市販直後調査でやるからそ ういうことになるのかもしれません。それで「添付文書(案)」の「副作用」の項を見て いただくと、いわゆる臨床試験で行われた70症例のデータがいまだに出ているのです ね。余り役に立たないデータだと思います。やはり市販後調査のデータが臨床現場で参 考になるようなデータとしてもう少し数量的にも明確に分かるよう、是非今後出してい ただけるようにお願いしたいと思います。これはもう安全対策課の関係かもしれません が。 ○事務局 本剤につきましては、現在使用成績調査等の途中でございますので、適切な 段階で添付文書への反映を検討させていただきたいと思います。 ○池田部会長 添付文書を1回出したら出しっぱなしではなくて、むしろデータがまと まって、大事な情報があったときにその都度その都度リニューアルしていくということ を安全対策課も含めて…、課長の方からどうぞ。 ○審査管理課長 今の話は市販後の話でございまして、今日安全対策課長は来ていませ んが、私どもとしてはそこのところはきちんとフォローさせていただいて、頻度等に関 する新たな知見が得られたら速やかに添付文書に反映するということで、企業に対して きちんと指導していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。先生方、そのほか何か追加で御質問、あるいはコ メントございますか。 ○堀内部会長代理 もう一つよろしいですか。「添付文書(案)」の「併用注意」で、グ レープフルーツジュースを飲まないようにということで、「本剤の血中濃度が上昇する ことがある。本剤服用時は飲食を避けることが望ましい」となっております。確かにグ レープフルーツジュースの成分がCYP3A4に結合して、活性を阻害するというのは最近よ く言われていることですが、今回の場合はグレープフルーツジュースを飲むことでどの くらい血中濃度が変化したというデータがあって、飲食を避けるのが望ましいとなった のでしょうか。  もう一つ、もしそうだとすると、グレープフルーツジュースの場合「本剤服用時は飲 食を避けることが望ましい」というあいまいな表現になっているのですが、1回200cc 程度のグレープフルーツジュースを飲むと、2〜3日間CYP3A4を抑制してしまうので す。服用している間は飲むなという表現にすべきです。最近いろいろな添付文書を見る 機会にそういう話をするのですけれども、「服用時には」とか「一緒に飲まないこと」 となっています。これは要するに飲んではいけないということになってしまうのですが、 どういうデータによるのでしょうか。もし関係ないのなら余り書かない方がいいだろう と思いますし、かなり大幅に血中濃度が上昇するということであればもっと正確にきち んと書かなければいけないと思います。 ○事務局 センターの方からお答えさせていただきます。グレープフルーツジュースに 関しては、特に臨床での報告、あるいは臨床薬理試験などのデータはございません。し かしながら、本剤がCYP3A4で代謝されるということがございましたので、これはメカニ ズム的に予測がされるものとして、市販後に指示で記載をしたという経緯がございます。 ○堀内部会長代理 やはり薬によって書かなくてはいけない場合と、何でもCYP3A4で代 謝されるので書かないといけないかどうかというのは違うと思うのです。そうでないと、 患者はグレープフルーツジュースは飲めないということになってしまいますから、何で も書けばいいというものではないだろうと私は思います。 ○池田部会長 実際には、飲ませてどうだというデータはないのでしょうね。 ○堀内部会長代理 カルシウム拮抗剤のニフェジピンなどはボーンと上がって、場合に よると血圧に大きな影響を及ぼすということで飲むなという話にはなるかと思います が、今回も400か600で余り差がないものに本当に書く必要があるかどうかというのは ちょっと疑問です。 ○事務局 本剤は抗悪性腫瘍剤ということもございまして、ある程度安全性の部分を重 要視して記載したという経緯があるかと思います。私ども直接指示をしたわけではない ものですから、再度経緯を確認させていただきまして、ほかの製剤などの関連も含めて 処理させていただければと思います。 ○堀内部会長代理 もし書くのでしたら、正確に書いていただきたいです。 ○事務局 分かりました。 ○池田部会長 ではその点を企業の方に少し検討してもらってください。そのほかよろ しいでしょうか。もしないようでしたら、このグリベックカプセルのGISTに関する 適用については、承認を可として薬事分科会へ報告させていただきたいと思います。あ りがとうございました。  それでは報告事項の議題2を事務局の方からお願いします。 ○事務局 それでは報告事項の議題2、希少疾病用医薬品の指定の取消しについて、資 料4を基に御報告させていただきます。今回、指定の取消しを行うのは、平成11年3月 に再生不良性貧血を予定される効能、又は効果として指定されたアムジェン株式会社の メチオニルヒト幹細胞因子(遺伝子組換え)でございます。本品が希少疾病用医薬品とし て指定された当時、再生不良性貧血のうち重症及び中等症の患者については、シクロス ポリン等の免疫抑制剤で治療されていましたが、それら治療剤不応の患者も多く、新し い治療薬が望まれておりました。本品では、海外で実施された第I相、第II相試験にお いて有効性が見られたことなどから、平成11年3月にオーファン指定を受けまして、国 内における第III相臨床試験の実施等の開発が行われておりました。しかしながら、今回 提出された指定中止届の2、3ページにございますように、国内で実施された第III相試 験において、一部に対しては有効性が認められたものの、期待有効率を大きく下回り、 他方本品目との因果関係が否定できない有害事象における投与中止や、重篤なアレルギ ー反応等の副作用が高率で認められました。これらの結果、社外の専門家等との相談も 踏まえ、申請者は安全性の問題を上回る有効性は認められないと判断し、本剤の開発を 断念せざるを得ないということで、試験研究の中止届が提出されたものでございます。 以上、御報告いたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。特に御質問ございませんか。よろしいですか。 ありがとうございました。それでは議題3の医療用医薬品の再審査結果についてお願い します。    ○事務局 議題3、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。資料といた しましては、資料5-1のユナシン-S静注用0.75g、ユナシン-S静注用1.5g及びユナ シン-S皮内反応用から、資料5-6のヴェノグロブリン-IH及び献血ヴェノグロブリン- IHヨシトミまで、合計6成分の再審査報告書になります。これらの品目につきまして は、市販後の使用成績調査・特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、それぞ れ審査の結果、いずれの品目についても薬事法第14条第2項各号(承認拒否事由)のいず れにも該当しないこと、すなわち「効能・効果」、「用法・用量」等の承認事項につい ては変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものでございます。これらの結果に つきましては、近く各々通知する予定といたしております。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。御質問ございますか。再審査報告書について でございますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。本日の議題は審議事 項一つ、報告事項三つということで、以上で終了いたしましたが、事務局から何か報告 はありますか。 ○事務局 次回の日程でございますが、7月30日水曜日の午後2時からということにな っております。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 次回は7月30日2時からでございますので、先生方には是非御出席いた だきたいと思います。それでは本日はこれで終了させていただきたいと思います。本当 にお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございました。     ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -