03/05/13 第18回社会保障審議会年金部会議事録              第18回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成15年5月13日 第18回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年5月13日(火) 10:00〜12:30 場所  :富国生命ビル 28階会議室 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員、      岡本委員、翁 委員、小島委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、      矢野委員、山口委員、山崎委員、若杉委員、渡辺委員 ○ 高橋総務課長  定刻になりましたので、ただいまより、第18回社会保障審議会年金部会を開会いたし ます。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりであります。  資料1、「第18回年金部会委員会提出資料」でございます。  この資料の中で、井手委員の「手」が「出」という字になっています。「手」の誤り でございます。大変申し訳ございませんでした。それから、参考資料1、「第15回年金 部会の議事録」でございます。参考資料2「公的年金制度に関する世論調査の概要」で ございますけれども、これは連休前に内閣府政府広報室から公表されたものでございま すが、時間の関係もございまして、今日は概要のみの提出にとどめております。次回正 式に、世論調査の全体をご提出申し上げたいと思います。  なお、ご参考のために申し上げれば、本日のテーマの短時間労働者、第3号被保険者 問題はこの概要では、15ページ、16ページ、17ページに調査の結果が載っております。  委員のご出欠の状況でございますが、本日は委員の皆様全員がご出席であります。 今、少し遅れていらっしゃる翁委員ですけれども、ご都合によって途中で退席されると 伺っております。ご出席いただいております委員の皆様方は三分の一を超えております ので、会議は成立いたしております。  それでは、以降の進行につきましては、部会長よろしくお願い申し上げます。 ○ 宮島部会長  おはようございます。本日は前回に続いて、短時間労働者と第3号被保険者の問題に ついて集中的に審議をしたいと思っております。  まず始めに、お手元に資料1としてございますけれども、今回はほとんど全員の委員 から、意見の提出がございましたので、これについてご説明をいただいた後で質疑なり 議論なりをしていくという順番で進めていきたいと思っております。  なお、それぞれの提出されました意見につきましては、各委員の方から5分ほど、大 変短い時間でございますけれども、要点をご説明いただきたいと思っております。な お、井手委員・岡本委員・矢野委員、大山委員・小島委員・山口委員から連名で意見が 提出されておりますので、それにつきましては、矢野委員と小島委員から代表してご説 明をいただくことにいたします。井手委員は別途資料がございますので、これは別途ご 説明いただくことにいたしまして、井手委員、今井委員、大澤委員、翁委員、小島委 員、杉山委員、堀委員、矢野委員、山崎委員、渡辺委員の順でご発言をいただくという ことにいたします。その後、若干休憩をとりまして、残りの時間を相互の質疑と議論に 充てたいと思っております。  なお、極めて説明の時間が限られておりますが、どうしてもその時間内で説明できな い部分については、とりあえず一通り5分ほどでご説明いただいた後、後半の議論の部 分で少し補充をしていただくことも構わないと思っておりますので、そのような形で議 事を進行させていただきたいと思います。  それでは、井手委員からお願いいたします。井手委員は連名で提出さている部分もご ざいますけれども、その点も含めてご説明いただければと思います。 ○ 井手委員  私の方では「第3号被保険者制度の見直し案に関する意見」ということで、岡本委 員、矢野委員と連名で出させていただいている資料の第3号の部分について意見を出さ せていただいております。  資料については、最初に文章で考え方を示しておりますけれども、参考資料として、 1、2、3と表と図が付いております。資料1は、「現行の第3号被保険者制度が有す る課題と解決案」ということで、主に「女性と年金検討委員会」の中で、現行の第3号 被保険者制度に関する様々な意見として出されていたものについて、第9回の年金部会 でも事務局より提示されておりましたので、それが「方向性と論点」の中でどのように 解決されているのかに関しての私の意見を述べたものでございます。  それから資料2は、現行の制度等を見直した場合の給付と負担の関係について、片働 き世帯、共働き世帯、あるいは事業主に関してどのように変化するか、またトータルと しての厚生年金制度の収支はどのようになるかというものを表にしてみたものでござい ます。ここで出ておりますI、II、III、IV案という表示は、「方向性と論点」の中で出 ておりました案をもとに書いております。  それから、3枚目の表でございますけれども、短時間労働者に厚生年金の適用拡大を した場合にどれだけ第3号被保険者が縮小されるのかという観点から数字を見てみたも のでございます。  それでは、この参考資料を見ていただきながらご説明をさせていただきたいと思いま すけれども、一番最初のページに戻りまして、「女性と年金検討会」の非常に重要な テーマでありました3号問題、あるいは短時間労働者への厚生年金の適用拡大の問題 は、個人単位か世帯単位か、あるいは応能負担か応益負担か、公平性が確保されている かという、年金制度に係る基本的な論点をはらむ問題として認識されていたと思いま す。  こうした視点を踏まえて現行制度に関する批判を解消するということで、「方向性と 論点」では4案が提示されています。  資料1をご覧いただきますと、これは私が「方向性と論点」を読む中で、こうした批 判を解消するためにこういった案を考えたのであろうと理解して整理したものでござい まして、必ずしも「方向性と論点」の趣旨に合っているかどうかは確認をしておりませ んけれども、恐らくはこういう考え方で代案を考えたのではないかと想定しておりま す。 様々な意見というところをざっと見ますと、片働き世帯を優遇しているのではな いかという共働き世帯あるいは単身世帯からの不公平感、例えば専業主婦といったよう な実態でありながら自営業の妻は定額の保険料を払うのに対して、サラリーマンの妻は それを払わずとも基礎年金を受給できるといったことに対する1号からの不公平感、あ るいは育児や介護を行っていることをどのように評価するかといった意見があるのでは なかろうかと思います。  それで、片働き世帯を優遇する制度との指摘に対しては、年金分割案で、2号の被扶 養者も半分共同して保険料を負担するという考え方を適用することによって、個人単位 で見ても負担をしていると理解して解決しようと見えるわけですけれども、実際には負 担なしで基礎年金が給付されるという点は変わっておりませんので、不公平感は解消さ れないのではないかと存じます。私も仕事をしているいろいろな女性に聞いてみます と、負担なしに1階部分があるということに加えて、2階の半分が付くというように見 えるということで、不満感が解消されることにはならないのではないかと思います。  それから、短時間労働者に適用拡大を行うことによって、加入者が3号被保険者に流 れることを防げるのではないかということも意図してIV案があったのかと思いますけれ ども、IV案では、年金分割が行われると、働いて自分の厚生年金を受け取るよりも、夫 の年金の半分をそのままでも受給できるのであればその方がいいのではないかというこ とで第3号被保険者にとどまるものが多くなるのではないかと考えております。  それから、負担能力の問題に関しても、分割ということで擬制するのか、あるいは負 担能力はないとみなして給付調整案で免除者あるいは半額免除者の扱いにするのか、保 険能力負担の見方で答えも違ってくるのかと思いますけれども、ないとみなせば、1号 との公平性では担保されるのかもしれないと思います。  それから、3番に出ております、単身世帯から共働き世帯に再分配されているという 批判に対しては、3号を有する2号の中で定率で分担すればいいのではないかというよ うな考え方が示されていますが、それに関しては非常に納得感はありますが、個別の企 業ごとに見ると片働きの社員を多く有する企業が事業主負担が多くなることですとか、 そもそも配偶者が働いているのかどうかということで異なる率を適用するということが システム管理上可能であるのかという問題が生まれてくると思います。  最後の5点目に関しては、この「方向性と論点」の中では、育児・介護をする者のみ を3号として存在させるということではなくて、育児期間に対する配慮を1号、3号に 拡大するということで検討がされておりますけれども、このことに関しては、以前次世 代育成支援のところで意見を申し上げたとおりに、やはり私自身は年金で配慮するより も保育サービスの充実によって解決すべきと考えております。  いろいろ見てみますと、非常に知恵を絞って案を考えていただいていると思いますけ れども、どこへ行ってもどこかに突き当たってしまう迷路に入ったような感じがいたし ます。それから2番目の資料に書いてあります厚生年金収支のところを見ましても、こ れだけ苦労していろいろ案を考えても、改善されるのは、給付を調整するというとこ ろ、あるいは標準報酬が62万以上の世帯に対して多くの負担を求めるけれども、給付に は反映させないというところで収支が改善されるぐらいしか出てこないのかなという感 じがいたします。また、3番目の資料に出ておりますように、前回ご説明がありました 年収65万円以上、あるいは週20時間以上を適用拡大の条件とした場合に約400万人の2 号被保険者が新しく発生するということであったかと思いますけれども、その2号が1 号、3号、未加入それぞれどこから移行していくかというのはよくわからないのです が、平成12年度の数字では、3号被保険者1,153万人、平成13年度はもうちょっと減っ ていたと思いますけれども、その中で仮に例えば300万人が2号に移行したとしても850 万人ぐらいが残るということでございます。それからさらには未納・未加入者数も非常 に多く、負担していない割合の多さを見ますと、短時間労働者に厚生年金の適用を拡大 して支え手を増やすということは非常に重要なことであると思いますけれども、それで も支え手となっている人がいかに少ないかということを実感するのでございます。  そういった中で、今の枠組みの中で、どのようにこの3号問題を解消していくかとい うことを考える場合に、基礎年金給付を制度内に持つ限り、3号のような収入がない 人、あるいは短時間労働者のような一般的に収入の低い人をその枠組みの中に入れる と、1号が定額制で負担を行っているということと比較して、均衡を図るために様々な 調整が必要となると考えられますし、非常に制度が複雑になるのではないかと思いま す。そもそも女性と年金というテーマの中では、フルタイム雇用や育児・介護による就 業の中断やパートタイム雇用といったように、人生の中でもいろんな場面があり、ま た、自分に限らず夫がリストラされるとか、自営業になるとか、あるいは離婚といった ことがあるわけで、こういった立場により、その都度給付と負担のあり方が変わってく るような制度設計は好ましくないのではないかというふうに考えます。  そういう意味で、基礎年金の税方式化ですとか、その過程での1階と2階の峻別が、 3号問題や短時間労働者への適用拡大の問題の解決に資するのではないかと考えており ます。  一方、報酬比例の年金に一本化する場合には、無収入ですとか低所得者の方に最低保 障年金を用意するという考え方があると思いますけれども、そのときにはI案の夫婦間 での年金分割というのは、最低保障年金に3号がなだれ込むことを防ぐという手だてに はなるのではないかと考えます。  どちらにしましても、3号や短時間の適用拡大を考えるに当たっては、一番最初に検 討しました給付と負担のあり方の論議をしないことには考えが進められないのではない かと考えております。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、今井委員、お願いいたします。 ○ 今井委員  私の方は、今、井手委員がおっしゃったように、細かい説明を受けるごとに何か難し さを感じているので、今回は第3号被保険者に関して公平性ということに着目をした意 見ということで出させていただきました。読ませていただきます。  年金制度は結婚・離婚・就労など人生の選択を行う際にいろいろな影響を与える。  この度の第3号被保険者制度の見直しでは、「女性と年金」の報告書にもあるよう に、「個人の多様な選択に中立的な制度の構築」を基本的な視点としてとらえている。  第3号被保険者は給付と負担の関係があいまいになっているため、いまだに自分の保 険料は全額夫が払っていると思っている人が多い。保険原理である給付と負担の関係を 調整案B−1−IIとし、段階的に個人単位での公平性を徹底していく方向がよいのでは ないか。  「女性と年金」の報告書では、目指すべき方向として「女性自身の貢献がみのる年金 制度」とある。  先ほど井手委員もおっしゃったように、基礎年金がある限り問題が非常に多くなって くるので、長い時間をかけてスウェーデン方式による一元化を望みます。  男女共同参画社会の下、多くの構成員が自ら保険料を納付し、給付を得る存在となる べきではないだろうか。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。次は大澤委員、お願いいたします。 ○ 大澤委員  最近発表されました2002年版の働く女性の実情を見ていただきますと、30歳〜34歳女 性の労働力率が過去初めて60%を超え、60.3%になっております。これに同じ年齢層の 女性の就業希望者を加えると72〜73%にのぼるということで、言われてきたM字型カー ブというものの谷が確実に浅くなっており、また現在非労働力である女性の間でも強い 就業希望が見られます。これは男性の側の雇用不安、リストラ、あるいは賃金の伸び悩 みということと対応していると当然考えられます。  同時に同じ資料から引用すると、女性のパート比率というのが引き続き高まって39.7 %になりました。しかし時間当たりの賃金というのは、女性フルタイムを100とすると、 64.9%にすぎません。格差は前の年に比べて1.5ポイント拡大しています。パート化が 進み、パートタイム労働者とフルタイム労働者の間の賃金格差が拡大しているというこ とであります。  一方、雇用者の中の厚生年金被保険者の割合は1990年から一貫して低下をしておりま す。この部会でもたびたび資料のご紹介があったように、雇用者比率と厚生年金被保険 者比率の乖離が拡大をしております。  次に制度は実態、例えば労働市場の実態や家族の実態の単なる反映ではありません。 むしろ実生活に影響を与えるということにもう一度注意をしたいという点でございます けれども、最初に意識というのがどうなっているか見てみますと、簡単な世論調査結果 でありますけれども、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に は、20代から40代までの人の大半が反対をするようになっています。あるいは最近行わ れた読売新聞社の世論調査では、「男は仕事、女は家庭」という考え方について、「そ うは思わない」という人が全体で73%にのぼり、20代、30代では85%が「ノー」と回答 しています。しかしながら、労使双方の労働市場での選択に「制度」が影響を及ぼして います。ここで実際に就業調整するパート労働者というのは25%程度ではございますけ れども、その影響は男女の雇用者全体に及びます。例えばフルタイムとパートタイムの 賃金格差が拡大していること。それから、フルタイムの雇用が非正規への置き換え等を 通じて収縮をしてきていること。そして社会保険が空洞化しているというふうに全体に 及ぶわけでございます。こうしたことを併せて見ると、雇用の保障と社会保障というも のが二人三脚で「エロージョン(土壌消失)」しているという状況が見てとれるわけで ございます。  ここで、早くも80年代の初めぐらいから、男性が一家の主たる稼ぎ手であるというこ とを前提として雇用システムや社会保障システムがつくられている、そういうモデルか ら離脱をして、ほかの幸運にも恵まれましたけれども、高失業や財政危機からV字回復 をしたオランダの例が参照されるわけでございます。  このような背景にかんがみて、今回の短時間雇用者への厚生年金適用拡大と第3号被 保険者制度見直しに関してコメントをすれば、短時間雇用者への厚生年金適用と夫婦の 年金権分割を併用することが適当ですが、分割を2号と3号の間に限定をしますと、新 たな制度の壁をつくります。2号と2号の間、それから、2号と1号の間の分割も追求 するべきと考えます。  そして何よりも遺族厚生年金が不要になる層が増えるということが夫片稼ぎあるいは 夫婦共稼ぎなどの世帯類型間の不公平を解消します。もちろん単身世帯についての不公 平は依然として解消されないわけですし、また分割をしたとしても、年金給付の世帯所 得代替率が世帯類型によって異なるということは基礎年金制度が維持される限りは消え ないわけでございますけれども、差し当たり片稼ぎなのか、共稼ぎなのかというところ での不公平は、遺族厚生年金が不要になる層が増えることによって解消されることにな ります。この遺族厚生年金が不要になるチャンネルの一つとして夫婦間の年金権分割と いうものを評価することができると思います。  1号の問題ですけれども、グローバル化、知識経済の進展に伴って就業形態が多様化 をしております。1号に対する所得比例制の導入を真剣に検討する時期に来ていると思 います。知的な自営業者と言われる人たちを所得比例的なセーフティ・ネットに包摂し てリスク・テーキングしやすい環境をつくっていくことが、知識経済化の進展において 日本が遅れをとらないための制度的な考えなのではないかと書いております。知的自営 業者として考えているのは、人的資本以外に資本を持たない自営業のことでありますけ れども、旧自営業者と言ったら失礼なのですが、農林漁業も今や知的職業なのではない かと考えることもできます。  次ページのグラフでございますが、これはヨーロッパのいくつかの国で知識経済化に 伴って自営業がどれだけ増えてきているかということを示しております。ただし、これ は農業を除く自営業でございまして、指数になっております。出発点における自営業層 の多さが違いますから、指数の場合、誤解も招くかもしれませんけれども、イギリス、 ドイツといったヨーロッパの大国での知識経済化に伴う自営業層の拡大が見てとれると 思います。日本ではいろいろな事情があってここまではまだ大きな変化は、少なくとも 90年代について言えば生じておりませんし、そのことが知識経済化の遅れをあらわして いるとも言えるかとも思います。  かなり大ざっぱなコメントになりましたけれども、以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは翁委員、よろしくお願いいたします。 ○ 翁委員  まず短時間労働者につきましては、働き方が多様化している中で、厚生年金の適用拡 大を図っていくことが必要だと思います。通常の就労者であっても時間に拘束されない 働き方をしている人も存在しますし、年間収入が130万以上か以下かで大きな格差が生 まれている制度は雇用形態の選択にも大きな影響を与えるはずだと思います。 それで、 勤労所得による収入要件を併用した方が雇用形態の多様化に対応でき、就業調整の余地 は減少するのではないかと思います。確かに労働時間を20時間以上、65万円以上という 絶対水準を決定すると、必ずこれらを起因とした就労調整が起こると思われますけれど も、できるだけ要件を低めに置いて、どのような働き方であってもできるだけ多くの賃 金労働者をカバーする年金制度として、労働市場にゆがみをもたらせないように配慮し て、先行き労働市場や賃金動向を見ながら必要に応じて見直ししていくべきではないか と思います。  負担と給付のあり方については、標準報酬下限を引き下げて、給付を調整していくと いう案が望ましいかと思います。現状若年層で非常に短時間労働者が増えているという ことを考えますと、こういった方々の年金が将来保障されるということが非常に重要だ と思いますし、また同時に給付水準によっては、将来極めて深刻な年金財政の悪化を招 く可能性もあります。雇用行動への影響と年金財政への影響を十分に踏まえた給付と負 担の水準を考えていくことが必要ではないかと思います。  第3号被保険者制度の見直しにつきましては、世帯単位で見れば、確かに共働き世帯 と片働き世帯は基本的に不公平はないわけですが、個人単位で見ると第3号は負担なし の基礎年金が給付されるという不公平感がどうしてもあるので、その意味では、年金分 割案では、後者の観点からの不公平感を解決するものにはならないということと、短時 間労働者にも適用を拡大していこうというふうに考えている中で、かえって3号にとど まり続ける人が多くなる点が問題であるように思われます。これは井手委員もご指摘の 点でございます。  なお、離婚時は年金権の分割について検討を行うことが必要ではないかと思います。  その意味では、負担調整案か給付調整案が望ましいということになりますけれども、 負担調整案のIにつきましては、経済情勢を考えると、逆進性が高くなる可能性があっ て問題があるのではないかというように思います。  また、給付調整案については、仮に第3号の基礎年金を国庫負担に限り、その財源を 消費税にするという方向になっていくのであれば、第3号の給付と負担の不公平問題の 解決に寄与する可能性はあるかと思います。ただ、そういった場合であっても、給付調 整案に関しては、任意の追加給付制度を設けることが大前提になるのではないかと思い ます。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、小島委員ですが、小島委員は連名の意見を代表 するという形でございますね。 ○ 小島委員  11ページ、12ページになります。三つの点について簡単にポイントを説明します。  一つは適用拡大の問題です。基本的に社会保険は雇用労働者については原則適用すべ きです。そういう観点からすると、短時間労働者に対する適用拡大は行うべきだという ことです。適用拡大の際には労働者の負担あるいは事業主負担が増えますので、今の経 済状況を踏まえれば、一定の配慮として経過措置なり段階的に掲げられている要件に下 げていくことが必要ではないかと思います。  今回提案されております適用拡大の要件としましては、労働時間は1週間20時間以 上、年収要件としては65円万以上という点を基本に考えるべきだと思っております。  その際、短時間労働者の給付と負担の関係でありますけれども、これについては基本 的には現在の標準報酬月額9万8,000円の引下げを前提にしながらも、本人についての 給付水準は維持すべきだと思っております。確かに短時間労働者に適用を拡大した場合 には所得代替率が高くなるということがあります。しかし、これまでの被用者年金(厚 生年金)のそもそもの形が定額給付部分と報酬比例部分という2階建て方式になってお り、その定額部分は、厚生年金グループ全体での所得再配分機能を持っていますので、 所得が少ない人が代替率が高くなるというのは当然の話でありまして、これは問題では ないと思っております。  また、この適用拡大とともに、現在5人未満の個人事業所で働いている人たち、さら には強制適用になっている16業種以外の未適用事業所についても適用拡大を行っていく べきだと考えております。  それと、短時間労働者とともに派遣労働者も現在増えておりますので、その人たちに 対する適用拡大も必要ではないかと思っております。特に登録型の派遣労働者について も、厚生年金への適用拡大を図るべきだと思っております。現在健保組合については、 人材派遣健保組合が設立をされておりますので、そういうものを参考に新たな適用形態 (社会保険事務組合、地域・業界ごとの適用など)を検討するべきだと思います。  二つ目は、今までの論点には出ていないのですけれども、失業中の厚生年金への継続 加入制度を新たに設けるべきだと思っております。失業率5.4%、370万人を超える失業 者が出ておりますけれども、そういう人たちについても、引き続き次の職につくまでの 間、厚生年金に加入できる制度を設けるべきだと思っております。それは老齢年金ある いは障害年金、遺族年金の受給権を確保するという観点から必要だと思います。その 際、保険料負担については、再就職した後に分納していく、猶予措置という形で対応し てもいいのではないか。国民年金保険料の学生の納付特例制度と同じような考え方に 立ったらどうかと思っております。  三つ目が3号被保険者制度の見直し問題ということになります。基本的には、私たち は基礎年金については税方式化を目指すべきと思っております。税方式化をすれば、こ の3号の保険料負担問題は基本的には解消できると思います。その間、3号について は、極力厚生年金への適用拡大を図ることによって対象者を縮小していくこと(C案) が最も現実的対応ではないかと思っております。  次に、被扶養認定の収入要件130万円問題であります。適用拡大のところで65万円ま で年収要件を引き下げるということを想定すれば、整合性を図るためにも、この被扶養 認定要件の130万円も引下げる必要があるかと思います。  それから、3号制度の見直しとして、A案、B案、C案が並んでいます。A案として 厚生年金部分の年金分割ということが示されておりますけれども、これについては、2 号同士の場合の分割のあり方、あるいは離婚時の年金の分割のあり方も含めて検討した 上で、今回の3号のいる専業主婦世帯に限定した分割についての整合性を図ることが必 要ではないかと思っております。そのほか、B案の負担調整案、給付調整案については やはり問題が多いと思っております。  以上であります。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは杉山委員。 ○ 杉山委員  私の資料は14ページになります。短時間労働者への厚生年金適用拡大についてと、そ れから後ろの方に第3号の問題について書きました。読み上げさせていただきたいと思 います。  この問題を考える場合には、1番に「社会の支え手」を増やすという視点で見ていく ことが大事かと思われます。今回の制度改革の議論の中では、何としてでも一定の方向 性を出して、実現可能なところから見直しを進めていくことが必要になるのではないか と思います。  今もお話が出ましたように、若年の問題、失業もそうですしフリーターの問題も、女 性の問題と同じように見ていく必要があるかと思います。雇用者全体の4分の1を短時 間労働者が占めるようになったということと、若い人がフリーターになっていかざるを 得ない状況の中で、第3号被保険者である短時間労働者は、ある意味優遇を受けている 部分もあるわけなんですが、配偶者がいらっしゃらなくてフリーターをしている、パー トに出ているという場合は国民年金の第1号被保険者となるわけです。この方たちは年 金に不信感を持っているというようなことで未納になるということも多いわけですけれ ども、未納は自分で決めたことであって、大変好ましくないと決めつけてしまうことも 一つの見方としてはあるわけですが、若いということもあって、年金について十分な勉 強をしないで社会に出ていたというような背景もございますので、こういった時期から 社会保障制度の枠の外にいるということはあまりよくないのではないかという観点から 見ていくことも必要かと思われます。  内閣府の「青少年の育成に関する有識者懇談会」の報告書が今年の4月に出たわけで すが、こちらからのデータなのですけれども、現在はフリーターだが正社員になりたい と考えている15歳〜34歳までの方は50%を超えておりました。新聞報道によりますと、 竹中大臣もこのフリーター問題に関して経済財政諮問会議で取り上げられたときには、 7割のフリーターが正社員になりたいと意識調査では言っているとあったのですが、こ のように正社員になりたいと思っているけれども仕方がなくフリーターを選択せざるを 得ないのです。こういった方たちが適用の拡大により厚生年金に加入するようになれ ば、おのずと正社員とアルバイト・パートの垣根が低くなり、正社員への道も今よりは 開かれていくのではないかと期待ができます。これが若年の失業であったりフリーター の増加といった問題の解決への一つのアプローチにもなるのではないかと思われます。 当然ながら年金保険料の未納問題も解決するわけです。  適用の基準についてですけれども、「雇用と年金研究会」の報告書でもあるように、 週の所定労働時間20時間以上または年収65万円以上に適用拡大をしていく案でよいので はないかと思います。所定労働時間が極めて短い者であっても、相応の賃金を得ている のであれば、その人の能力に合わせて会社に貢献していくことになるので、厚生年金の 対象者とすることで問題はないのではないかと思います。  短時間労働以外の活動から主たる収入を得ている場合は、これは適用から外して第1 号被保険者として、ご自身で自助自立でやっていくということでもよいのではないか、 あるいは適用実務上困難な問題が生じるだろうと、前回配っていただいた資料にはあっ たのですけれども、困難な問題が多くあるというように、いろいろ材料出して考えるよ りは、予測できるものについては十分検討していって対応策を用意し、拡大後に生じた 問題についてはその都度検討して微調整をかけていくというような方向で、ともかく拡 大していくということで進めていく方がよいのではないかと私は思っております。  給付と負担のあり方についてですけれども、前回の資料では、月収7万円のパートの 例として四つの案が提案されておりました。いずれも所得代替率の面から見ると、どの 案も100%を超えておりまして、本人が働いて得た月収を上回る年金を受給することに なり、本人のご負担も月5,000円ということでした。その意味では第1号被保険者の方 との不公平は解消されているとは言えないかと思います。  とにかく今は年金の支え手を増やすことを急ぐべきであって、一人ひとりの貢献が実 る年金制度にしていくということなので、まず私としてはとにかく適用拡大の方を進め ていただきたい。妥協案として、私はC−3、基礎年金を減額し、その中で追加で納付 していくという案が今の時点では一番理解が得やすいのではないかと思っております。  その観点から見た場合の第3号被保険者の見直しについてなのですけれども、この場 合ですと、給付調整案が整合的ではないかと思っております。満額の給付を得るために 追加の納付制度を設けることで多少は、年金の収支にも貢献をすることが期待できるか と思います。  あと、これは個人的な提案なのですけれども、追加納付制度を設ける場合に、納付分 は第3号被保険者を抱える第2号被保険者で負担をするということも考えられるのでは ないかと思いました。  この問題を私自身としても一生懸命考えているつもりなのですけれども、昭和60年時 点では第3号被保険者制度がとてもいい制度だということで迎えられていたと聞いてい るわけなんですけれども、今となっては時代にそぐわない部分も随分出てきているのか なということを、私自身としては感じることがございます。それはちょうど大学を卒業 して就職した時期が男女雇用機会均等法の施行以降であったということもありまして、 夫婦で共働きをするということには何の違和感もなく、自分の能力に合わせて一人一人 が働いて家庭を持つということのモデルは当然として受け入れているわけです。多分、 私よりももっと若い世代の人たちはますますそうであろうし、夫婦で働いていかなけれ ばもうやっていけないというような実感も若い人からは、よく聞くことがございます。  そういったわけで、今は夫一人で築く年金から夫婦それぞれへ築く年金へ、そして支 え手を増やす年金へ前進することが大切ではないかと思っております。その場合にぜひ 考慮していただきたいと思っているのは、サラリーマンの奥さんだから配慮するという のではなくて、ワーク・ライフ・バランスで見た場合に、家族のありようが明らかにラ イフに比重がかかる育児もしくは介護、ご本人の病気など、そういうときに社会保障ら しい配慮ができるものが望ましいのではないかと感じております。  私の場合は、わりと若めの世代であるということもございまして、負担の観点から一 生懸命考えることが多いわけで、給付の観点から見る場合は、どうしてもその時代の背 景がございますので、そのあたりで多少給付は負担とは別の配慮というようなことも あってもいいのではないかと感じております。これまた複雑になってしまうのですけれ ども、以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。堀委員、お願いいたします。 ○ 堀委員  レジュメの第1が「短時間労働者への厚生年金の適用拡大」の問題ですが、1の結論 にありますように適用拡大に賛成します。その理由は(1)〜(4)に書いてあるとおりで す。  「2 拡大の範囲」ですが、労働時間要件としては、雇用保険と同じく週の所定労働 時間20時間とするのが適当ではないかと思います。  収入・賃金要件ですが、これは給付や負担の定め方いかんにもよるのではないかと思 います。収入・賃金要件を設けるとすれば、収入ではなくて賃金を要件とすべきである と思います。  「3 拡大した場合の給付と負担」ですが、結論としてはC−1案に賛成です。9万 8,000円の標準報酬の下限を引き下げ、本人の給付は一般の被保険者と同じにするとい う案(ただし、この短時間被保険者には第3号制度は適用しない)が適切ではないかと 思います。その理由ですけれども、現在の厚生年金とほぼ同じ考えの仕組みになるから です。また、この案は、社会保険の「拠出は能力に応じ、給付はニーズに応じ」の原則 に合っています。  新たに厚生年金の適用対象となる短時間労働者の代替率が100%を超えるという問題 はあるわけですが、大部分は第3号であったので、もともと基礎年金の受給権はあり、 新たに2階部分が増えるだけです。  第1号から移ってくる者もいるわけですが、これらの者については、保険料額は低く なって年金額が高くなるという問題は確かにあります。しかし、これらの者は、本来は 被用者グループに属して厚生年金の被保険者とされるべきものであったということを考 慮する必要があるのではないかと思います。  他案の問題点ですが、A案は標準報酬月額を9万8,000円で据え置くということです が、これは負担が逆進的になって、厚生年金の応能負担原則に反するのではないかと思 います。  B案は、短時間労働者について本人給付も認め、第3号に対する給付も認めるのです が、これでは保険料と比べて給付が過大になり過ぎるのではないかと思います。  C−2案は、報酬比例年金を減額するという案なのですが、この案は保険料に比例し た給付を行うという厚生年金(2階部分)の原則に反するのではないかと思います。  C−3案は、基礎年金を減額するという案ですが、老後に必要な基礎的給付を行うと いう基礎年金制度の趣旨に反するのではないかと思います。厚生年金では高保険料の者 にも低保険料の者にも同一額の基礎年金を支給するという考えなのですが、その考えに 反すると思います。第3号の基礎年金を減額しなければ、第1号被保険者とバランスを 失するのではないかという考えがあるのですが、もともと被用者グループと自営業者グ ループと負担原則が異なります。被用者は応能負担で自営業者は応益負担なので、比較 するのはあまり適当ではないのではないかと思います。厚生年金は被用者グループ内の 助け合いの仕組みであると考えております。  その次のページですが、「第2 第3号被保険者制度の見直し」で、私は基本的に、 第3号被保険者制度は現在の社会経済の実態に適合していると思っています。働く女性 が増えたといっても、家計補助的な働きが多く、第3号の1,150万人のうち厚生年金へ のパート適用で減るのは、先ほどありましたように、300万人程度です。第3号の大部 分が専業主婦あるいはわずかな収入がある方です。  また、第3号制度は、社会保険の原則に即した制度であると思います。ただ、社会経 済も変化しておりますし、また人々の考えも変わっているので、それを踏まえた見直し も必要ではないかと思います。  (1)の第3号被保険者制度の意義については、従来から私もいろんな考えを述べてお ります。基本は、女性が家事、育児、介護を行うという社会慣行と、この社会慣行を前 提とした労働慣行がまだあって、女性の年金が不十分になるという問題もまだありま す。それを第3号制度が解決しているのではないかと思います。  (2)として、被用者に対する社会保険は、負担能力のある者に保険料を課して、ニー ズのある者に給付を行うのが原則なのですが、第3号被保険者制度の、負担能力のある 夫に保険料を課し、被扶養家族に給付を行うという仕組みは、この原則に合致している のではないかと思います。  (3)として、夫婦単位でみれば、夫婦の合計賃金額が同じであれば、片働き夫婦も、 共働き夫婦も保険料額も年金額も同じになるということです。  それでは「3 見直し案」としてはどれが妥当かということですが、結論としては、 方法IV「第3号被保険者縮小案」に賛成します。  ただ、一定の条件が満たされれば、「夫婦間の年金分割案」も導入可能かと思いま す。「負担調整案」も「給付調整案」も問題があると思います。ただ、女性が男性と同 じように労働機会が与えられて、女性が男性と同じような条件で労働できるようになれ ば、第3号被保険者制度はもちろん廃止ということになります。  (2)は省略しまして、他の案の問題点について述べます。最初に年金分割案です が、(1)はこの案のメリットについて述べており、これは説明するまでもないと思いま す。  しかし、この案にはいくつか問題があるのではないかと思います。  (a)ですが、年金権は一種の財産権であると考えられますが、分割される側への十 分な情報提供と、同意を得るための仕組みが必要ではないかと思います。1階部分のみ ならず2階部分も分割するということは、分割される側の年金額が減るという不利な仕 組みですので、その同意が必要です。同意が得られない場合どうするのかという問題が あります。  (b)ですが、年金分割案が現行の民法の夫婦別産制の趣旨と整合性がとれているの かどうかという問題について書いています。  (c)ですが、憲法29条1項の財産権保障の趣旨との整合性についてです。下の(3) にありますように、分割される側への十分な情報提供と同意があれば、この問題は回避 できる可能性はあると思います。  (d)ですが、年金権分割制度を導入したとしても基礎年金制度は変わりはありませ ん。基礎年金の説明の仕方を変えるということではないかと思います。  (e)ですが、離婚しなかった夫婦は2人の年金で老後を暮らすために、2階部分の 年金まで分割する必要はあまりないのではないかということです。  ただ、離婚の際の問題はあります。(f)で書いてありますように、夫婦間の合意に 基づいて離婚の場合には分割を認める制度を導入する必要があります。  (g)ですが、先ほど述べた社会慣行、労働慣行が是正されて、女性が男性と同様に 働くことができるようになれば、年金権分割制度は必要なくなります。  (3)は先ほど言いました。  (4)は、年金分割制度を導入するとした場合にどうすべきかということですが、説明 を省略します。  他の案の問題ですが、負担調整案には次の問題があるのではないかと考えられます。  (1)として、応能負担の原則の厚生年金に応益負担の要素を持ち込むのは妥当かとい うことです。応益負担の要素を持ち込むとすれば、例えば遺族厚生年金を受ける可能性 がある家族を有する被保険者に対する保険料の引上げ、一般に長命である女性の保険料 引上げといったことも必要となり、果たして妥当かという問題があります。  (2)は、片働きの被保険者については負担をさせる理由があるかもしれませんけれど も、事業主についてはないということです。しかし、事業主負担の保険料を引き上げな いとすると、その分、被保険者負担分の保険料を高くしなければならなくなるというこ とに注意する必要があります。  (3)は、事業主負担分の保険料も引き上げるとすれば、片働きの被保険者は労働市場 で不利になって、雇用中立的ではなくなるということです。  (4)は、負担調整案では、夫婦の合計賃金額が同じである場合の合計保険料額は、片 働きの方が共働きよりも多くなって、水平的公平性に反するのではないかということで す。  最後の給付調整案ですが、まず、(1)は、老後に必要な基礎的給付を行うという基礎 年金制度の趣旨に反するのではないかということです。  (2)は、夫婦の合計賃金額が同じである場合の合計年金額は、片働きの方が共働きよ りも低くなって、水平的公平に反するのではないかということです。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次、矢野委員でございますが、連名の意見とし てまとめているということでございますね。 ○ 矢野委員  読みながら、ところどころコメントしてご説明申し上げたいと思います。  個人のライフスタイル、家族形態、就労形態が多様化しつつある中で、社会保障制度 の将来の支え手が減少するという不安感が増しております。これらに対応して、公的年 金制度を抜本的に再構築しなければならない状況にあります。その際忘れてはならない 点は、経済社会の活力を維持し、長期的に持続可能な制度とするという点であります。  基礎年金の問題解決も重要な課題でありまして、基礎年金の税方式化やその過程での 1階部分と2階部分の財源の峻別を実施すれば、短時間労働者及び第3号被保険者制度 に関する問題の多くが解消できるのではないかと考えております。  これまでも何度もこの場で主張させていただきましたが、ここで言う税方式化という のは、間接税方式を想定しております。すべての国民が広く負担するという意味合いを 持った間接税方式というものを真剣に考えていく必要があります。社会保障はこの年金 だけではありませんので、医療・介護もパッケージで考えていくことも必要であります が、この場では、特に優先的にこの問題について取り組んでいく必要があることを申し 上げておきたいと思います。  そうした基本的な考えに基づきまして、具体的な点を申し上げますと、一つは「短時 間労働者」の問題でございますが、「支え手を増やす」議論を行う際の前提について考 えてみたいと思います。  現在、公的年金制度は、国民年金に加入しない者や保険料を支払わない者が増加する 空洞化という大きな問題を抱えております。これは、支え手である現役世代が制度に対 して不信感や不安感を持っていることが原因であります。  制度の支え手を考えるに当たっては、まず現役世代の制度に対する不信感、不安感の 払拭を図り、将来にわたって持続可能な制度を構築することが必要であり、そのために は、国民が広く負担する基礎年金の税方式化や世代間の不均衡の解消などの制度改革を 図ることが不可欠であります。  第1号被保険者の未納・未加入問題などの空洞化対策が行われないままに、強制的に 厚生年金の適用拡大を実施いたしますと、本人の納得と関係なく保険料の負担を求める ことになるだけでなく、所定の保険料を払っている第1号被保険者の負担並びに基礎年 金拠出金制度を通じて被用者年金制度の被保険者に係る負担がより一層増大しかねない わけでありまして、これは現役世代、特に若年者の不信感や不安感をさらに大きなもの にする働きをするのではないかと心配しております。  二つ目は、「公平・公正な制度を目指す観点の必要性」でございます。現在、厚生年 金の任意適用の事業所に雇用される従業員の中には、フルタイムで働いていても厚生年 金が適用されていない者がいます。適用拡大を議論するのであれば、短時間労働者等、 安易に特定の層に着目するのではなく、公平・公正な負担と給付を目指す観点から議論 すべきであり、まず先に厚生年金の任意適用の事業所に雇用される従業員への強制適用 のあり方を検討するべきであると思います。  また、標準報酬月額の下限である9万8,000円を引き下げて、第1号被保険者の負担 よりも少ない負担で基礎年金に上乗せした報酬比例年金を受給するような給付制度に組 み込むことにつきましては、長期的な年金財政への影響も含めて十分な検討をすべきで あると思います。  次に「健康保険における適用拡大の問題」ですが、健康保険では厚生年金と同じ適用 拡大を行った場合に被扶養者から被保険者本人になる者にとって、どういう状態が起こ るかといいますと、保険料負担が発生しても医療費の自己負担は3割で変わらないわけ でありまして、適用拡大による保険者本人のメリットは少ないわけであります。さらに は、国民健康保険と健康保険とに制度が分立しているため、制度間の収支やを老人保健 拠出金への影響など、年金制度にはない医療保険の固有の問題も生ずることになるわけ です。こうしたことについて、十分検討しながら、この年金制度も考えていくことが必 要であると思います。  4番目は「被保険者本人の納得感」の問題であります。短時間労働者の働く目的は多 様化しておりまして、限られた労働時間の中で手取り賃金を極大化したいと考えている 者も多いわけです。これらの者に厚生年金、健康保険、介護保険の適用拡大を行った場 合、現行の保険料率で本人負担を計算すると、これは仮の数字でありますが、標準報酬 の下限引下げのケースで、年収100万円の者は約11.3万円、年収65万円の者は約7.4万円 となり、年収の10%を超える水準となります。また、下限維持のケースでは、年収65万 円の者は約13.3万円の負担であり、年収の20%を超えるわけです。このような年金や医 療保険の被保険者本人負担の増加に対して、本人の納得が得られるのかどうかについて は、慎重に吟味する必要があると思います。  5番目に「高齢者雇用への影響の懸念」であります。60歳を超えてパート就労する者 の中には、年金受給していながら厚生年金の適用になっていない者がいます。これらの 方々は在職老齢年金制度の適用がなく満額の年金額を受給しているわけです。適用拡大 によってこれらの者を厚生年金の被保険者といたしますと、在職老齢年金制度が適用さ れ、年金額が減額される上に保険料負担も同時に発生いたします。こうなりますと、高 齢者本人の就労意欲を損なうことにもなりはしないか、また、企業にとっても高齢者の 採用や賃金体系等への広範な影響も生じてくるのではないか、これらも吟味を要する問 題であると思います。  次に「(6)企業における労務コストの増大と雇用の手控えの懸念」でございます。 新たに適用対象となる短時間労働者に対しては、年金や医療保険の保険料の事業主負担 が発生するとともに事務を含めた労務コストが増大いたします。  就業形態、雇用形態が多様化している中で、フルタイムの正規従業員を前提としない フレキシブルな就業形態は、企業の経営上も働く者のニーズにとっても合理的な選択で あり、今後も増加していくと考えられます。これらの企業にとって、短時間労働者への 適用拡大は企業の労務コストの増加につながり、現在のこうした経済雇用情勢の下で は、結果として雇用の手控えが起こる懸念があると思います。働くパート本人の就業調 整もなくならないのではないでしょうか。その結果、雇用ニーズのミスマッチが生じ、 多様な選択肢をかえって現実問題として狭めることになりはしないかと思うわけです。 また、産業別に見ますと、短時間労働者は、卸売・小売業、飲食店(外食産業)等にそ の多くが集中しているのが現実でございます。業者の違いによって適用拡大の影響は異 なりますけれども、現在の経済状況を考えると、パートを多く雇用する業種にとって経 営問題にもつながりかねず、前記のデメリットも勘案しながら慎重に検討を行うべきで あると思います。  最後に「第3号被保険者制度」でございますが、前回の部会で提案された案には、基 礎年金の税方式への移行が示されておりませんけれども、税方式への移行は公正な負担 の実現につながるわけですので、その点についての検討が必要だろうと思います。  また、第3号被保険者の見直しは、家族形態や就労形態のあり方とその選択にも影響 を及ぼす可能性がありまして、このような点についての検討と議論を深める必要もある と思います。  なお、直接雇用関係のない第3号被保険者の保険料について、事業主負担を求めるこ とや事業主経由で徴収するといった考えは合理的でないと思います。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、山崎委員。 ○ 山崎委員  私のこのペーパーは「前提条件」と「対応のあり方」と二つの部分から構成されてお りますが、「対応のあり方」というのが今日のテーマでありますパートへの適用拡大と 第3号被保険者の見直しということです。私の意見の前提になっているのが「前提条件 」という最初の部分であります。  まず前提条件でありますけれども、事業主負担につきましては、企業間の負担の公平 と雇用に対する負担の中立性を確保するために、社会保険適用外の非正規労働者を含む 全従業員の賃金支払い総額を賦課標準とする賃金支払い税方式とすべきだと思います。 この場合、事業主負担は、社会保険適用の全被保険者の保険料総額に見合うものとし、 負担の総額においては現在の原則であります労使折半負担とするものとします。  次に年金業務の一元化を進めて、被保険者の資格、報酬等を一元的に管理する体制を 整えるべきだと思います。これは具体的には、社会保険庁と各共済組合の年金業務を一 元化すべきであるということであります。  それから短時間労働者の適用拡大は、専ら厚生年金が引き受けることになります。今 年度から総報酬制が導入されましたが、さらに今後短時間労働者の適用拡大を図るとす れば、厚生年金と共済年金の報酬格差が一層拡大することになります。被用者年金制度 間の負担の公平を図るためには、基礎年金の拠出金負担を報酬総額比例とすべきであり ます。  次に「対応のあり方」でありますが、自営業世帯と同様に、被用者世帯においても片 働き世帯に限定せず共働き世帯も含めて、世帯の所得は夫婦が共同で獲得したものとみ なして被用者世帯の年金の個人単位化を図ります。本来は税制との一体的な取扱いが望 ましいと考えますが、当面は社会保険に限定し、社会保険料の対象となる報酬の2分の 1を配偶者に帰属させる報酬分割方式を採用します。報酬上限は報酬の実態を反映して 引き上げるべきだと思いますし、場合によれば、撤廃するということもあると思いま す。これにより、現在の第3号被保険者は、原則として第2号被保険者に移行すること になります。  次に被用者年金の保険料は、報酬に保険料率を乗じたものとします。基礎年金の保険 料は、第1号被保険者の保険料と必ずしも等しくはありませんが、実態としては限りな く近いものであり、さらに被用者世帯では本人負担分は2分の1になります。この基礎 年金の保険料に対応する報酬は、標準報酬月額ではなくて総報酬制になっておりますか ら、年間の総報酬の12分の1ということになりますが、それを報酬下限とします。報酬 下限分の最低保険料、これは基礎年金の保険料と同じということになりますが、この負 担が困難な者については、本人の申請により世帯の所得等に応じて保険料の免除を認め ます。免除期間分の追納保険料は被保険者本人の負担とするということとして、被用者 グループにあっても、最低保険料を設け、そして免除を入れるということでございま す。  この場合、被用者世帯の年金は報酬分割方式を採用しますから、夫と妻の報酬の合計 額が報酬下限の2倍以上であれば、個人の報酬としては報酬下限未満であっても、報酬 分割後は報酬下限以上になり、個人の報酬に対しては定率保険料でいいと考えます。し たがって、保険料免除の対象者は、つまり最低保険料が払えないということですが、夫 と妻の報酬の合計額が報酬下限の2倍未満である場合に限られますから、被用者世帯に おいて保険料免除の対象になる者は実際にはごく少数になると考えられます。報酬下限 以下の者については、第1号被保険者と均衡上、基礎年金のみとし、報酬比例部分は支 給しないということでございます。  私の提案は報酬分割方式とするということと、被用者世帯においても免除制度を入れ るということです。それは、その分だけ追納しなければ基礎年金が減額されるというこ と、さらに第3点として、被用者と自営業者のアンバランスといったことについては、 共通の基礎年金給付に対する保険料は、制度あるいは被用者、自営業者を問わず同一保 険料として、1階部分を1階部分らしくするということです。そして2階部分は、最低 保険料以上納めた人について報酬比例の年金がつくということが私の提案でございま す。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは、最後になりますが、渡辺委員、お願いいたしま す。 ○ 渡辺委員  私は今日は3号問題だけに絞って申し上げます。3号については昭和59年財政再計算 時に相当議論して出た一つの答えでありまして、確かに17年たって時代は変わっている とはいえ、比較的よくできている制度ではないのかなという印象を持っております。  ただ、先ほどより、皆様からも発言があり、私自身もここに書いたように、公的年金 制度には自らが保険料を納め、保険納付と給付の関係をはっきりさせるべきだという意 見、そして不公平感といった問題があることも重々承知しています。そういった意味で は、今回の財政再計算で改革すべきものと考えます。  そして同時に、前回、厚生労働省から示された縮小案も含めた四つの案を見て、改め て考えますと、これ以外にはなかなかいい案がないのかなと思います。ただいずれも、 先ほど言った問題点をすべてうまくクリアーする案ではないと思わざるを得ません。と いって、ほかになかなかいい案がないというのが悩みでございます。  そこでまず第1案、いわゆる年金分割案でございますが、これは確かに、メリットも あります。収入を確保して保険料を納めてもらう考え方という意味では有効だと思いま すけれども、やはり何といっても仕組みが複雑でわかりにくいと思います。わかりやす い年金制度を目指している中で、逆行する可能性があるのかなと思います。特に、夫婦 の離婚問題、再婚、再々婚といったことも珍しくない世の中になってきましたので、こ の場合は通算措置をとることによって処理は可能でしょうが、私が懸念しているのは、 例えば生計維持関係等の問題です。わかりやすく言うと、戸籍上の妻がいながら他で同 棲しているといったような場合で、これは遺族年金のケースでこれまでも随分トラブル があったわけであります。社会保険審査会における事案として一番多い問題が戸籍上の 妻に遺族年金を渡すか、同棲している女性に渡すかといったことですので、この年金分 割案を実施すれば、同じような問題が多発する危険性があると思います。極めて煩雑で あり、問題点もあるのではないかという意味で、年金分割案は、私は採用すべきではな いと考えております。  となりますと、あと三つでございますが、負担調整案及び給付調整案はどちらかとい うと、不公平感解消といったことに力点を置いた考え方なのかなと受けとめておりま す。給付調整案は私個人として少し魅力を感じているのですが、やはり給付を減額する ことは社会保障機能、老後所得保障機能が低下すると同時に、もっとありていに言う と、免除、あるいは半額免除ということになるわけであります。変な言い方になって恐 縮ですが、免除される人というのは低所得者であり、保険料負担能力がないという定義 になっているわけでありまして、妻を中心とした3号について、あなた方は負担能力が ないから免除なんだよといったような印象を与えることは果たしていいのだろうかと思 います。そういった意味から言いますと、年金制度に対する信頼を一層揺るがすことに なりかねません。これも先ほど言った昭和59年、60年の年金改正のときの議論にもあっ たように記憶しておりますけれども、そういった免除扱いは疑問だと思います。  そういったことになりますと、負担調整案も問題点はありますが、結果としては、妻 も何らかの形で保険料を納めているという形になりますし、最も現実的だと思います。 特に負担調整の第II案は問題点もございますけれども、現実的でわかりやすい仕組みな のかなという気がしております。  しかし、今言ったように、この案もベストではありませんし、3号縮小も併用すると いった考え方もあってもいいと思います。3号問題は今度の2004年で解決すべきテーマ でありますが、今後とも女性の就業構造等々変化していくわけでありますから、私はこ の2004年改革が最後の改革というつもりでは考えておりません。今回は当然改革するに しても、また時代の状況変化によって、改めて手直ししていくという考え方でいいので はないかと思っております。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。  それでは、今日を出していただきました意見書につきましては、代表の方も含めまし て、一通りご説明いただきました。ほぼ1時間10分ほどかかりましたけれども、ここで 一旦5分ほど休憩をとります。その後、意見書を出されなかった方、あるいは出された けれども、代表されて説明されたので発言する機会がなかった方を含めまして、ご自由 に議論をしていただきたいと思いますので、いろいろ論点をお考えいただければと思い ます。  それでは、5分ほど休憩をとります。                   (休憩) ○ 宮島部会長  それでは議事を再開いたします。  前回事務局から説明のありましたいくつかの案や今日の各委員の意見につきまして、 意見交換を行いたいと考えております。私は、意見を聞いておりまして、これほど意見 が分かれるということは相当なものだなという印象がまずございました。ただ、お聞き しておりますと、かなり長い先を見たり、あるいは理念形としての年金制度を描きつつ も、16年の年金改革ではこういった改革をすべきというような、二段階に分けて考えて おる方が多かったという印象がございます。  また、厚生労働省からいろいろな説明があった案も含めて、制度自身の、公平感であ りますとか、雇用形態に対する中立性ですとか、あるいは制度の簡素さといったような 観点から評価をしていただいたわけですが、その力点の置き方はいろいろご意見の違い があったと思います。  もう一つ、聞いていて一番印象的でしたのは、制度が雇用であれ、家族であれ、それ らにどういう影響を及ぼしていくのかという、むしろ制度の誘導的な側面についていろ いろ関心の違いがあるという気もしたことです。  そういうことで、非常に評価が分かれておりますが、前回の説明と今回のご意見をも とにいたしまして、さらに理解を深めるといいますか、逆に違いを再認識するというこ とになるかもしれませんけれども、これから意見交換をしていきたいと思います。  今日意見書を提出されなかった方でぜひ発言をしたいという方がいれば、まずその方 から発言をいただいた後、先程の説明以外に補足説明をしたい方がいらっしゃれば、そ れも伺っておきたいと思います。いかがでございましょうか。それでは、神代委員か ら、どうぞ。 ○ 神代部会長代理  前回、「雇用と年金研究会」の報告をしており、ある意味で当事者ですので、短時間 雇用に関してはあえて意見を提出しませんでしたが、3号について若干申し上げます。 年金分割という考え方が出ているのですが、何人かの方が付言しておられましたよう に、これは突き詰めていきますと、2分2乗方式、あるいはN分N乗方式というものに 行き着かざるを得ない問題を当然に内包しております。そうなりますと税制との整合性 に直接ぶつかるので、その辺の検討をどうするかということが厄介な問題として出てく るように思います。  「雇用と年金研究会」は、3号に関しては、その範囲を縮小するという案のたたき台 を出したということになるかと思いますけれども、それだけでは不十分ということであ るならば、他に何ができるかを考えたのですけれども、理論的に全て筋の通った解決策 を求めるのは、ほとんど不可能に近く、なるべく多数の人が納得できる妥協案を考える 以外にないのかなという気持ちでいるのですが、私は、結局アメリカやイギリスのよう な国が、事実上給付調整案をとっていることの意味をもう少しよく考えてみた方がいい のではないかと考えております。給付調整案そのものについてもいろいろコメントがあ りまして、もっともなご意見だとは思うのでありますが、そういう点では非常に論理の 一貫した制度をとっている国であるイギリスやアメリカが、なぜ、あえて負担調整を やっているのかということをもうちょっと検討した方がいいのではないかと思います。  もし3号被保険者に制度の変更を加えるのであれば、それと引き換えということがい いかどうか若干問題ですが、どうしても考慮していただきたいのは、育児、介護期間に 対する保険者期間の割増制度で、これもフランスがやっていると思います。ほかの国が やっていればいいのかというご意見もあると思いますが、それをぜひ併せて考えていた だければいいのではないかと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。  それでは、議論としては短時間労働者等の問題と第3号被保険者の問題は全く同じも のとは言えない面がありますが、前回からそれをワンセットで議論してきておりますの で、特に区別せずに、さらにご意見なり、前回の説明から今日の意見提出まで含めて質 問があれば、自由にご議論をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょう か。 ○ 渡辺委員  小島委員にご質問したいのですが、12ページの一番最後、「負担調整案や給付調整案 は、公的年金の役割や機能に照らして、問題が多い」という表現がございますが、給付 調整案は確かにこういった意味で問題が多いというのはわかるのですが、負担調整案が 役割や機能に照らして問題が多いといったことは私は理解できないのです。これをもう 少しご説明いただけますでしょうか。 ○ 小島委員  基礎年金の給付を下げるということについては、現実的な対応も含めて難しく、ま た、問題があると思っています。負担調整の場合、例えば3号を抱えている2号に新た な負担を求めるということを想定した場合、3号がいるいないによって2号の保険料負 担が違ってくるということになります。この案の中には、3号を抱えた2号については 保険料率を高めにして、ほかの3号を抱えていない2号については保険料率を下げると いうような考え方も示されておりますけれども、厚生年金、いわゆる被用者年金グルー プで、そういう二本立ての保険料が妥当なのかどうかという問題であります。  被用者年金というのは、これは先ほども言いましたように、負担については応能負担 という考え方に立っています。それによって、現在のところは一本の保険料率で賄って おりますけれども、それを変えて、2人分の基礎年金が出るからその分負担を高くする という話になります。ということは、それを突き詰めていけば、給付が高い人に対して はもっと高い累進税率のような負担を求めるということにもつながっていきかねませ ん。つまり、今までの被用者年金の定率保険料負担の考え方を大きく変えなければなら ないということになりますので問題があると指摘をしています。そこは社会保険料のあ り方として、もっと詰めた検討が必要ではないかと思います。 ○ 渡辺委員  ありがとうございました。 ○ 宮島部会長  矢野委員、どうぞ。 ○ 矢野委員  今後の議論を進める上でのデータについてご質問をしたいのですが、よろしいでしょ うか。前回17回部会で出された資料2−1の中で3点ほどございます。規模5人未満の 個人事業所や、規模5人以上でも4業種の個人事業所に勤める人たちのの数についてお 聞きしたいです。パートではなくて、雇用者がどういう数の前提になっているのか。規 模5人未満の個人事業所と、規模5人以上で法定16業種以外の個人事業所に勤めるフル タイム労働者の数についてお聞きしたいです。これが第1の質問。  第2の質問は、10ページの図なんですけれども、これを見ますと、1号被保険者から 2号へ、3号から2号への移動を矢印で示しているわけですね。年収65万円とか、労働 時間20時間ということを一つの区切りにしております。それで、実際に移動する人の数 がどうなっているのか、その分布を知りたいと思います。それぞれの矢印に示された対 象者数を示していただきたい。  3番目は、この資料の18ページにA、B、C−1、C−2、Cー3という案が示され ておりますがこれらの案それぞれにつきまして、保険料の負担は金額でいくらになるの か、それが年収に対して何割を占めるのか、さらには厚生年金以外の健康保険や介護保 険の保険料負担はそれぞれどの程度になるか、こういう数字が知りたいです。  以上が前回の資料に関する質問なんですが、もう一つ、年収要件の設定の考え方につ いてお伺いしたいのですけれども、仮に年収65万円以上を適用する場合、所得税が課税 されない者に対しても厚生年金保険料の負担を求めるという事態になります。これまで は税制上の配偶者控除の適用基準やパート本人の非課税限度額年収103万円よりも、第 3号被保険者の基準130万円というのは高い水準になっています。今度はそれが逆転す ることになります。どういう考え方によってその水準を設定されるのかお聞きしたいで す。もともとからさかのぼって、その辺についての考え方をお聞かせいただきたいと思 います。  以上、4点です。 ○ 宮島部会長  規模5人未満の個人事業者等に関する話が一つ。2番目は、1号から2号などへ移動 する人の規模についての質問。3番目は保険料の金額もそうですが、医療保険ですとか 介護保険も含めて保険料全体としてはどのようになるかという質問でございました。こ こまでは資料的なことですが、もう一つ、年収の設定の話がございましたけれども、 今、事務局で直ちにお答えできる点と、場合によっては次回に資料を提出するという点 があると思いますが、今、説明できることがありましたらお願いしたいと思います。 ○ 木倉年金課長  ご指摘の任意適用の事業所の労働者数であるとか、あるいは10ページの図の方の移動 していく人の推計の数であるとか、この辺は「雇用と年金研究会」の報告書をお配りを しました前々回の年金部会の資料を見ますと、研究会報告の25ページから載っておりま す。詳しくは、恐れ入りますができれば次回にでも、そのパート適用の数に、400万な り300万なりの見込みの考え方についてもう一度説明をさせていただければと思ってお ります。  それから、3点目でご指摘のありました実際の保険料負担の額がいくらになるかとい うことですが、ここでは年金について、粗く前提を置いて見ております。意見書の中 で、医療や介護の前提を置いての負担の数字をお示しいただいておりますが、それも参 考にしながら、さらに追加して、我々の方からご説明できるものがあれば、また検討さ せていただきたいと思っております。  最後の年収65万円要件のところでございますけれども、これにつきましては、前回も 申し上げましたように最低賃金で20時間働いていらっしゃる方の年収ということで示し ております。一方で、65万については、給与所得に対する課税の最低額ぎりぎりのライ ンであるというご指摘もございます。ですから所得税の負担を求める最低下限に合わせ るという考え方も一方でご指摘のようにあるのだと思います。他方で最低賃金をぎりぎ りの下限と見て、そのレベルまで下げるのかどうかということでご議論をいただければ ということでございます。  他方、130万の年収ラインについて、今は認定をします際に、前年所得につきまして、 市区町村の非課税証明等を出していただくようにお願いをしておるわけでございます。 問題点でご指摘をいたしましたように、今の所得税の課税最低限のラインである103万 を下回る年収要件を設定する場合に、実務上認定が適正にできるかどうかという問題が あり得るということを申し上げているということでございます。賃金65万というところ までラインを下げ得るものかどうかということでご議論をいただきたいということでご ざいます。 ○ 宮島部会長  次回もし必要がありましたら、できるだけ資料を追加的に説明していただくことにい たします。先ほど、特に年金分割をめぐっていろんな議論ございましたけれども、何人 かの方から、特に3号の部分に限定せず、全体に分割の対象を広げるべきという意見が 出ました。そうなると税制にも議論が広がっていくというご意見があり、確かに税制等 のいろいろな構造問題はいずれ出てくるものだと思います。大澤委員の場合も、分割と いうことになると、それは特に3号に限定されるものではないというご意見だったと思 いますが、もう一つ、遺族年金への波及を非常に重要視されていたような気がいたしま すけれども、この辺は、仮に分割を考えると、遺族年金はそれで必要がなくなるとい う、一挙にいかないかもしれませんがそういう理解でよろしいのですか。分割の問題 が、税制の問題ですとか、遺族年金の問題ですとかいろいろな方面に波及する可能性が あると思うのですが、その辺のところはどうお考えなのでしょうか。何か堀委員ござい ますか。 ○ 堀委員  「女性と年金検討会」でも、年金分割制度を導入すると遺族年金が必要なくなるとい う議論があったのですが、なくならないのではないかという結論になった。いくつか理 由があるのですが、一つは、年金分割によって夫婦同じような年金額になるわけです が、二人でもらっていた年金を一人でもらうようになる場合には、世帯共通経費は節約 できないので、一人の年金水準は夫婦二人分の年金の大体6割とか7割にする必要があ ります。世界各国の遺族年金もそうなっています。夫婦二人でもらっていた年金が半分 になるのでは、遺族の生活水準が下るのではないか。二つは、高齢遺族は半額にすると しても、若齢遺族、要するに母子家庭の年金をどうするのかという問題もあります。  第3に、現在59歳の人について年金分割するとしても過去の分を分割するわけにいき ませんから、1年分だけ分割して、それだけでがまんしろ、遺族年金なしだということ では問題です。給付水準が非常に下るので、将来的には遺族年金の廃止はあり得るかも わかりませんけれども、現在では廃止なかなか難しいのではないかと思います。  それから、年金と税制との関係なのですが、「女性と年金検討会」で税制の専門家も 委員になっていまして、その方に意見を聞きました。その方は、税制と年金とは別で、 年金分割をしても税制に波及するかどうかは別の問題だと、そうおっしゃっていまし た。 ○ 大澤委員  私は皆様にそれぞれご質問があるので、まずそのご質問を先にさせていただいてか ら、今の遺族年金の問題に言及することにしたいと思います。年金分割というのが意外 と不人気だったというのが私の感想でございますが、井手さん、翁さん、杉山さんから は、あまりにも3号にとって「お得感」が出過ぎてしまう、それから個人単位での公平 ということからして、それを解消できないというご意見があったと思うのですけれど も、2号〜2号間、あるいは2号〜1号間でも分割するということになっていけば、働 いてより稼いだ分だけ夫婦とも年金も多くなるという意味では就労インセンティブにな るのではないかと思います。2号〜3号間だけですと、65万で適用していった場合に、 65万以下に抑えた方が得という話になってしまうので、それは大変問題が多いと思うの ですけれども、もし2号〜2号間、2号〜1号間も分割ということになれば、どういう ふうに評価されるかということをお聞きしたいと思っております。  それから、堀委員のペーパー、19ページの(g)ところに、いずれにしてもそれは過 渡的な制度となる可能性があり、導入する必要はないとありますが、その下のところで は、もし導入するとしたらということもおっしゃっているので、分割に必ずしも反対で ないというふうに理解いたしますけれども、そもそも第3号被保険者制度というものも 過渡的なものなのではないかと思います。過渡期間というのはやはり相当長期にわたる 可能性もありますので、私自身過渡的な制度ということで提案をしておりますが、年金 権分割は、ですから過渡的な制度であるから導入する必要がないということにはならな いのではないかということがコメントです。  それから、渡辺委員の大変ユニークな着眼点を出していただきました。22ページの、 「配偶者がいながら他に事実婚をしているようなケース」というのは考えてなかったな というふうに思ったわけですけれども、逆に考え直してみますと、これは大変マージナ ルなケースでありまして、そういうマージナルなケースに着目をして全体の制度を考え ることがどこまで合理的なのかというのもございます。同時にこういった配偶者がいな がら他に事実婚をしているようなケースでは、健康保険制度の適用は一体どうなってい るのでしょうか。これは短期保険ですから、すぐ処理しなければ誰もが困るわけですの で、何らかの処理をしているというふうに考えられます。であるとすれば、年金につい ても健康保険の方での処理にならって処理をするということで十分対応できるのではな いかと思われます。併せて現在は離婚は破綻主義になっていますから、このような事実 婚、つまり法律婚と事実婚が併存するようなケースは今後はますますマージナルなもの になるというふうに考えられ、それをもって年金権分割は採用できない制度だという結 論にはならないのではないかというのが私のコメントでございます。  それから、小島委員の連名でお出しになりましたペーパーですけれども、基礎年金は 税方式にということで、従来のご主張を繰り返されております。しかし、それがもし採 用されないとすれば、年金権分割に賛成という主張であると理解してよろしいのでしょ うか。これが小島委員たちのペーパーに対するコメントでございます。  最後に矢野委員、連名でお出しになりました資料の7ページですけれども、これは3 号被保険者というよりは適用拡大の問題でございます。卸売・小売業、飲食店に集中を していて経営問題にもつながりかねないというご指摘であったわけでございますけれど も、卸売・小売業、飲食店、特に飲食店につきましては国際競争のない分野でございま す。卸売・小売業というのは、もし個人輸入のようなものが増えれば国際競争と言える かもしれませんけれども。ということは、ここでは競争条件を平準化するという意味で 短時間労働者に適用するということは、必ずしも経営問題に直結しないのではないかと 思います。つまりみんなが同じボトムラインの上に立つということで考えれば、製造業 のように、外国の企業と競争するわけではございませんから、それは経営問題にもつな がりかねずとおっしゃいますが、むしろ競争条件を平準化するという意味で採用できる 制度なのではないかと思います。そこのあたりをどうお考えかということをお聞きした いと思っております。  最後言及されました遺族年金の問題でございますけれども、私は遺族年金が不要な層 が増えていくことになればと申し上げているのであり、遺族年金制度を即廃止しろと か、そういうことを言っているわけではございません。また、仮に廃止をするというよ うな大決断が下った場合でありましても、こういうものは経過期間を置いて、例えば40 年とかをかけて解消していくことがどこの国でも行われている通常のことだと思われま す。  二人で暮らしていると、家計費が節約できるものが一人暮らしで半分では大変ではな いかという点ですが、これも年金分割をしない、あるいは遺族年金を不要にするという ことを真っ向から否定する議論ではないのではないかと思います。例えばサービス給付 なり何なりということで面倒見られる部分がありはしないかというふうに思っておりま す。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。いくつか質問がありましたので、それぞれ何かご意見があ れば、どうぞ。 ○ 渡辺委員  私に対するご指摘、ご質問がございましたので簡単にお答えいたします。確かにおっ しゃるとおり、こういったことが一般的であるからこそ云々というつもりは全くござい ません。あくまでも年金分割は極めて複雑な仕組みではないかという一つの例として出 したので、これが決してすべての理由というつもりではございません。以上です。 ○ 宮島部会長  あとはいかがですか。堀委員、どうぞ。 ○ 堀委員  資料の19ページの(g)のところで、私は年金分割については問題があるという指摘 をしておりますが、それはこのような大改正をする必要があるのかという意味です。年 金分割というのは、ある意味では主として男性の2階部分の年金まで国が一律に分割す るという、大なたを振るう改正です。そういうことをするよりも、むしろ社会経済の実 態を、女性が男性と同様に働けるように向けていく方が妥当ではないかと思います。  それから、遺族年金については、大澤委員と私は意見が違うというふうに申し上げま す。 ○ 矢野委員  飲食店についてのご指摘がありましたが、これはほとんど100%内需産業だと思いま す。将来、例えばマクドナルドが世界に進出しているような現象が日本の企業で起これ ば少しは違ってくるかもしれませんが、現在のところほとんど内需産業であって、国際 競争力という点であれば、同種あるいは異種であっても外食産業間の競争はあると思い ますけれど、需要の相手は国内でありますから、一般の自動車とか電機というような産 業とは随分趣の違う分野であると思います。  しかし、競争力における企業間の格差、同じ企業であっても地域格差というのは存在 していると思います。したがいまして、どうしても経営が成り立たなくなれば、同じ企 業の中であっても、店を閉じることもあるでしょうし、あるいは企業として他社に負け て立ち行かなくなるということもあると思います。同種の企業間競争というのは非常に 熾烈なものがあると思いますので、そういう意味では、国内でも競争力という問題を抜 きにしてこの問題を考えることはできないと思っております。真の意味で国際競争力の ある企業はどういう対応しているかということですが、単に労務コストの問題だけでは ありませんけれども、外国に出て行くという対応をしています。中国現象などは今本当 に大きな流れになっているわけであります。アジアの他の地域でもそうです。そういう ところに進出していって対応するという現象が大きな流れになっております。  もちろんコストが安いだけではなしに、そこにマーケットがあるから出かけて行くわ けでありますから、海外進出の要因というのはいくつもあるわけでありますが、少なく ともそこに出かけて行く余地のある産業とそうでない産業の差があるということはご指 摘のとおりです。  しかし同じ内需産業であっても内部の競争関係というのは非常に厳しくなっていると いうことの中で、各個別企業の経営が成り立つかという問題は、やはりそれが内需産業 であっても同じように存在すると思っております。 ○ 岡本委員  よろしいですか。大澤委員からのご指摘のように、卸売・小売、飲食店は国際競争が ないというのは事実なんです。ただ、逆に国際競争がないということであるがゆえの厳 しさがありまして、特に「現在の経済状況を考えれば」とわざわざ書いているわけなん ですが、今、消費者が求めているのはコスト・パフォーマンスのよさでありまして、コ スト・パフォーマンスをよくするために、今のこういった業種の皆さん方は非常に日々 懸命なコストダウンの努力とサービスの向上に努力をされておられるわけでありまし て、これは本当にその中にいらっしゃる方々であれば、その厳しさはよくわかるのでは ないかと思っております。  そういう意味で、このコストというのは、単にここにありますような年金だけのコス トではなく、健康保険などが、もろもろの費用の負担になっていくということを考えま すと、今でもぎりぎりの採算性の中で経営をしておられる特に中小等々のこういった業 種の方々にとっては、まさに死活問題であると私どもは理解をしておるわけでありま す。だから単に国際競争をしていないということだけの理由をもって、同じようにコス トが上がるのだから競争状況は同じではないかというような理解では、こういう業種を 正しく理解していると言えないのではなかろうかと、私は感じております。  しかもコストが上がればすぐに料金を上げて、コストを値段に転嫁できるのかといえ ば、今の経済状況ではそう簡単に転嫁できないわけでありますから、そのあたりも私は 真剣に受けとめておくことが必要ではないかと考えている次第でございます。 ○ 井手委員  年金分割を2号〜3号だけでなく2号〜2号、2号〜1号にも適用する場合はどうか という大澤委員のご指摘でございましたけれども、確かに2号〜3号に限った場合の み、65万円以下に抑えて、むしろ専業主婦にとどまった方がよいという判断があること はおっしゃるとおりだと思います。2号〜2号に関して、年金分割を行うという考え方 も一つあるかと思いますけれども、特に2号〜3号強制年金分割のときには「内助の功 」という表現が新聞等でも出ておりましたけれども、家事、育児を専門的に夫婦の役割 分担としてやっていることを評価してという趣旨だったと思いますが、現実の共働きの 夫婦の場合には家事、育児も全部妻がやって、統計調査によれば、共働き夫婦の夫の家 事時間などは非常に少ないという実態の中で、自分で収入を得て、将来の老後に備えて いるというようなことで女性の方が賃金が高い場合等は、少しでも年金を渡したくない というようなことを言っている人もいます。そういうことも考えると選択制という方法 もあればよろしいかと思いますけど、すべて夫婦のものを折半するということにはなら ないのではないかと思います。 ○ 小島委員  大澤委員から、基礎年金の税方式が実現しなかった場合には年金分割に賛成するのか という質問ですけれども、そこはどういう仮定を置くかにもよります。もし逆に基礎年 金が税方式になったとしても、専業主婦の場合には2階がないということでありますの で、万が一離婚しますと基礎年金だけということになります。そういった場合の年金分 割、まさに離婚時の年金分割をどう考えるかという問題と、さらには、今指摘されまし たけれども、2号と2号、あるいは2号と1号の年金分割の考え方をどうするかという 問題もあります。さらに、離婚を前提としない夫婦間の年金分割をどう考えていくかと いうこともあります。その際には当然年金における一身専属性をどうクリアーするかと いうようなことをまず整理した上で、今回指摘されている3号のいる夫婦間での年金分 割を整理すべきではないか。この3号問題ということに限定してしまって、3号を抱え た世帯だけの年金分割では合理性がないのではと考えています。頭から年金分割はダメ という話ではありません。ここは基礎年金が税方式になる、ならないに関わらず、夫婦 間の年金分割については遺族年金との関係を含め、検討すべき課題だと思っておりま す。 ○ 杉山委員  年金分割もについていろいろ考えてみたわけなんですけれども、例えば長期的に見た 場合に、家庭の夫婦の役割も半分、それから働きに出て得たお金も半分という形で見て いくことは、世代間の男女の平等という意味で考えられるだろうなと思っています。特 に第1号について、所得把握がなかなかできないとよく言われるわけですが、その問題 を解決して、2号と1号で合算して分割し、家庭での役割もお互い半分ずつというふう な形で見ていくというのは、かねてから何度も申し上げているような、将来的に被保険 者も自営業者も所得比例の一本化で、できるだけスウェーデン方式に近いものに導くた めにもいいのではないかと思っているわけです。  視点をもう少し短期として見た場合には、先ほど申し上げたように、若い人の就職の 機会がすごく狭まっている状況であるということを見ると、世帯に入る以前に、世代間 の格差でうちひしがれているという部分があるわけです。まずはちゃんと働いてもら う、そして社会保障の枠の中に若い方もぜひ早く入っていただきたいという思いからこ のようにご提案をさせていただいたわけです。  いろいろなところで出てくるワークシェアリングの議論なども見ますと、それこそ男 性が働いて女性が家庭で家事、育児をするというようなことは、もう若い世代の中では あまり一般的ではなくなっているのではないのかなと思っています。奥さんだから家 事、育児というのではなくて育児期間だから女性が家庭にいて、育児が終われば、また 外に出て働くというように、ライフスタイルが多様になってきているのであれば、それ に年金も合わせていくことが多少必要になってくるのではないのかなと思っているわけ です。  以上です。 ○ 宮島部会長  ほかにいかがでしょうか。大山委員。 ○ 大山委員  先ほど矢野委員、岡本委員から労務コストの増大の問題等が指摘をされました。意見 書では、慎重に検討を行うということでありますので、断定的ではないと思いますけれ ども。働く側の負担の問題から言って、6ページの(4)に、被保険者本人の納得感と いうことがありますが、こういう問題については、給付の問題をどのように考えるかと いう議論を抜きにすれば、当然500万の収入のある人にとってみても、現在の社会保険 料全体の負担が納付を得られるのかという問題はあります。しかしながら、給付の問題 も含めて、そういう社会保障制度全体をどうするかという点から、どういう負担がある べきかということを考えていく必要があるのではないかと思います。  そういう点では、応能負担ということで負担ができないのかどうかという検討は必要 かもしれませんが、単にいわゆるコスト面からだけで議論はできないのではないかと思 います。それは企業における労務コストの関係でも、たまたまここでは非適用の業種が 出ておりますが、本来ならば厚生年金の適用事業所であるにも関わらず、適用されてい ないような事態も報告されております。しっかり仕事があって、それなりに仕事が成り 立っているならば、そもそも社会的な制度である社会保険料などを負担できないような 価格設定になっているということが最大の問題なのであります。例えば卸・小売業、飲 食店などもきちんと仕事をしているということであれば、そこでそういう社会的なこう いう制度もお互いに負担しようとなったときに、その負担に応えられないような価格が 設定されているという方が逆に問題なのであって、そちらを問題にするべきでありま す。そういう点では、短時間就業者への適用拡大について、コストが増えるという負担 の関係だけから検討するという点については必ずしも私としては納得できないと思いま す。 ○ 宮島部会長  これはご意見として伺いますが、何か反論ございますか。 ○ 岡本委員  ご質問の趣旨が必ずしも明確に理解できなかったのですが、今のご主張を聞きます と、コストが上がるのだったら値段を上げたらいいのではないかというようなことかと 思います。自由経済の中で、消費者が、より安く、より良いサービスを求めて厳しく選 択しますので、今のご指摘のように、コスト負担が増えるのであれば、それにふさわし い値段にしたらいいという意見はあまりにも私は荒っぽいご主張ではないかと思いま す。 ○ 宮島部会長  堀委員どうぞ。 ○ 堀委員  矢野委員等のペーパーを見ますと、短時間労働者の適用拡大に消極的なご意見のよう に思います。短時間労働者の中には、現在第1号として年金保険料を払っておられる方 もいます。しかし、短時間労働者の多くは第2号の妻で、その医療保険の保険料と年金 保険の保険料の両方を夫である被保険者とその事業主が払っているわけですね。したが って、短時間労働者をたくさん雇っている事業主は、少数しか雇ってない事業主に対し て、医療保険と年金保険の負担を転嫁しているわけです。それについてはどういうふう に思われるのですか。 ○ 矢野委員  第3号被保険者については、第2号被保険者との関係で応分の負担をしているという 形になっていると思います。1号被保険者について、本来どういう形で負担するのがい いのかということは大問題なんですが、今日のご発言の中でも所得比例にした方がいい のではないかという意見もいくつかありましたが、これは定額で所得捕捉が難しいがゆ えに定額保険料という考え方が生まれて、高所得者であっても低所得者であっても同じ 保険料だということの公平性をちゃんと論議する必要があるだろうと思います。そうい うこともいろいろな角度から検討しなければいけないのではないかと思います。  もちろん私は、応分の費用負担をするということについて、基本的にそれはない方が いいのだという考えを持っている経営者はいないと思うんですけれども、やはり長い目 で見るということと切り離して、今の状況を見てどういう選択が適当なのかということ は、慎重に考える必要があるという考え方で申し上げているわけです。部分最適を求め るあまり、経済社会、国民生活を含めた全体最適の問題を見失ってはいけないと思いま す。やはり雇用が維持されているということが今の世の中では一番大事な価値であり、 そういうものがもし阻害されるようなことであるならば、果たしてその選択は妥当なの かということを常に反省しながら問題を考えていく必要があるだろうと思っておりま す。  例えば先ほどからご指摘のあったパートを多く雇っている外食産業は、今全国で80万 店あり、雇用されている人が430万人ということです。その中でパートが380万人という ことですから、大体9割弱です。そういう状況にある産業というものが現実にあって、 しかも全体として、もちろんここに書いてある業種だけではありませんが、サービス産 業でどんどん雇用が拡大し、製造業の方では全体としては縮小しているということが産 業構造転換の今の状況だと思います。  そういうことを考えますと、意見書は言葉足らずの点があったかもしれませんけれど も、全体最適を求めるという判断がこの年金部会にもあってもいいのではないかという 基本的なスタンスは、ご理解いただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。時間があまりないのですが、もう一つ、実は負担調整案と 給付調整案について、やや意見が分かれていることがございまして、これについて、翁 委員、もし退席する時間が迫っているならば、ご意見を少しいただきたいと思います。 ○ 翁委員  負担調整案1に関しましては、井手委員が整理されているペーパーが非常にわかりや すいかと思います。3ページにあるように、1の方は応能と応益を組み合わせるという 形なんですけれども、これはどうしても低所得者に対する負担が増加する方向になって しまうので、現状ではなかなか難しいのかなと思います。  負担調整案2というのは一つの可能性としてあり得るかとは思っております。  給付調整案につきまして、基礎年金をどうとらえるかという問題を、これは全体の議 論としてやっていく必要があるかと思っているのですけれども、その議論をするという 前提で考えた場合には、私は一つの選択肢としてあり得るのではないかと思います。そ れは先ほど申し上げましたように、任意拠出の新しい給付設計を考えることが前提には なると思いますけれども、やり方としてあり得るのではないかというように感じており ます。  それから、短時間労働者について、新しく適用することが、本人にとって、将来の年 金を保障するという形でプラスになる方向に作用しなければならないというふうに思っ ているのですが、これが逆に企業負担が増えるということで、かえって短時間労働者の 需要が減るということになってしまうと、全く制度の方向を見誤るものになってしまい ますので、これは相当工夫をしたやり方をしないといけない。今、短時間労働者にとど まっている若年層が今度は失業者となり、もっと大きな問題になってくる可能性がある ので、短時間労働者にとってより保障を拡大すると同時に、非常にナローパスですけれ ども、企業にとっても十分納得の得られるような設計をしていくという、そういったこ とを慎重にやっていく必要があるのではないかと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかに負担調整案と給付調整案についてご意見ございませ んでしょうか。堀委員、どうぞ。 ○ 堀委員  先ほど神代委員が給付調整案についておっしゃいました。日本の場合、基礎年金が第 3号の妻に夫と同じ額が出ているというご意見です。アメリカの場合は、被扶養配偶者 の年金は確かに本人の50%ですが、本人の年金は日本の1階部分と2階部分が合体して いる形になっています。したがって、これを日本に当てはめる場合は、本人の年金につ いては1階部分だけでなく、2階部を含めて考えていく必要があります。このように比 較しますと、アメリカと日本の被扶養配偶者の年金は似たような感じになると思いま す。  イギリスの場合は、確かに被扶養配偶者に対する基礎年金は、夫の年金額を100とす ると妻の年金額が60か70ぐらいです。しかし、イギリスの2階部分の給付水準が低いも のですから、2階部分と合わせて妻の年金を見ると、やはり日本と同じように3割とか 4割とか5割となり、あまり変わりありません。これについてはたしか資料があったは ずなので、次回にでも、イギリス、アメリカ、日本の2階部分を含めた場合の本人の年 金額に対する被扶養配偶者の年金の比率についての資料を出していただきたいと思いま す。 ○ 木倉年金課長  今の点もですが、前回に堀委員からご指摘のありました外国での分割の考え方につき ましても、まだ詳細まで把握できてないところがありますので、離婚、婚姻中の点も含 めてもう少し整理をさせていただきまして、なるべく早い機会に出させていただきたい と思っております。  今のご指摘の点は、全体に照らしたときの本人給付と配偶者給付の割合についてです が、確かに基礎年金だけで言いますと1対1ですが、アメリカの場合、全体で50%、イ ギリスは基礎年金だけですと60%のところが、付加年金も合わせたものに対する比率で 見ると、「女性と年金検討会」の資料の中では31.8%でございます。この資料をまた見 ていただきたいと思っております。 ○ 宮島部会長  わかりました。それでは、若干時間ございますけれども、どうぞ、岡本委員。 ○ 岡本委員  各論ではなくて、ちょっと無責任な意見にもなるのかしれませんが、働く女性の年金 問題で3号問題がいろいろと議論されていますが、恐らくこれから日本の社会というの は非常にライフスタイルも多様化してくるでしょうし、働き方も多様化してくるでしょ うし、そういう意味では個別の対応をその都度議論していくと必ず利害の対立というの が社会の中に生じるわけでありまして、そういう利害の対立を調整する公平な制度とい うのは絶対大事であることはもちろんよく理解できますから公平な制度をつくらないと いけませんが、私は同時に忘れてならないのは、公的制度というのは、社会が複雑にな ればなるほど、逆に国民にわかりやすくて、簡素で納得できるものにするというのも、 一つのキーワードになるのではないかと思います。そういう意味で、わかりやすく、か つ簡素で皆に納得いくという考え方が崩れなように、最終的な結論を出してもらうよう によろしくお願いをしたいと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。堀委員、どうぞ。 ○ 堀委員  今日の配布資料の参考資料2に、第3号制度見直しについての調査があります。一番 上の総数で見ると、左の黒いところは年金分割案で32.3%となっており、右側のグレー のところが現行の第3号制度維持案で31.0%となっており、拮抗しています。しかし、 これはどうも基礎年金だけについての質問のように見え、2階部分についてどうするか という点は少なくとも質問項目には載ってないですね。  分割される側にとっては2階部分の年金が半分になるという情報が提供された上での 調査なのかどうかお聞きしたい。これは面接調査ですが、年金分割についてどういう説 明をしているのでしょうか。これは厚生労働省の調査ではないので、そういうのがわか るかどうかわかりませんけれども、その辺を教えていただきたい。 ○ 高橋総務課長  その前の16ページをご覧いただきたいのですけれども、私ども現場でどういう質問を したか、詳細は知りませんけれども、この16ページを見ますと、まず第3号被保険者制 度そのものを知っているかどうかということで、3行目にありますように、「サラリー マン家庭の専業主婦等は、現在の制度においては、国民年金の保険料を負担する必要が なく、その配偶者が加入する厚生年金や共済年金からの負担により、基礎年金が支給さ れる仕組みとなっている」、これを知っているかということをまず聞き、その上で、さ らに質問をしているので、次の質問について1階部分の話を誤解しているという可能性 は非常に少ないのではないかと見受けられます。 ○ 堀委員  私が聞いているのは、夫の2階部分の年金が分割されて半分になるという情報を提供 した上で、こういった質問をしているのかということです。 ○ 高橋総務課長  17ページの方は、これは全体の給付と負担のあり方について聞いておりますので、2 階部分を特定して聞いた質問ではありません。 ○ 宮島部会長  よろしいでしょうか。そういうことだそうです。アンケートの場合には、確かにそう いうことがいろいろ気になるところでございます。  それでは、ほぼ時間になりました。今日は短時間労働者の扱いと第3号被保険者の問 題を議論していただきました。議論に入る前に冒頭お話しましたように、一つは雇用や 家族が恐らく20年あるいはこの検討が始まった30年前ぐらいから比べると、いろいろな 変化が生じ始めて、それがこういう問題提起の原因になっていると思います。まだそれ が変化している途中で、なかなかその行き先が見えないという点はあるのだろうと思い ます。  一方で、もちろん雇用、あるいは家族が変化している状況の落ちつき先が見えてくる 段階では、それなりに安定した仕組みをつくることは可能かもしれませんが、今のとこ ろはどうしても動いている途中にあるということで、いろいろその辺の認識の持ち方に 違いがあると思います。特に第3号被保険者の場合ですと、該当者としてどういう方を 念頭に置かれるかということによっても非常に考え方が違ってくるという点もございま す。あるいは長期的に見て、現行制度を基本に修正をしながら変化に対応させていくの か、あるいはスウェーデンのような所得比例年金への一本型を望ましいと考えるのか、 あるいは税方式という考え方をするかという、かなり長い目で見た到達点へのプロセス として当面をどう考えるかという点もあります。第3号被保険者及び短時間労働者の問 題も、先ほど最初に井手さんからお話がありましたように、単位の問題と公平性の問 題、雇用に対する中立性の問題というような複数の問題が複雑に絡んでいて、物差しが 一つではないという点では非常に難しい問題であると思います。  ただ、いずれにしても、はっきりした長期にわたる方向性ということよりも、やはり 我々としては順次段階を追う形で対応を考えていく必要があるだろうと思っておりま す。今日ご意見をたくさんいただきましたし、いろいろな示唆もございましたので、こ の問題については、さらにもう少し考え方を工夫して、外国の事例などの、いろいろな 資料をさらに収集をして少し制度設計を詰めていきたいと思っております。  岡本委員からは、特に簡明さ、わかりやすさが必要であるというご指摘がございまし た。全くそのとおりでございますけれども、他方でいろいろな考え方なり、利害という ものが非常に細分化していくという問題でもございまして、そういう中で非常にわかり やすくということになりますと、逆にやや画一的になったり機械的になる可能性もあり まして、その折り合いが恐らく非常に大事であろうと考えております。  次回は残された個別問題いくつか含めて、給付と負担に関連するいくつかの事項につ いて、改めて総括的な議論をしていきたいというように考えております。今日ご質問、 あるいは資料の提供の要望がありました点については、次回関連いたしますところを答 えていただきたいと考えております。  開催日程につきましては、改めて事務方から調整させていただきますので、よろしく お願い申し上げます。  それでは、これで本日の部会は終了させていただきますが、事務局から何かございま すでしょうか。 ○ 高橋総務課長  次回日程については、また調整の上、改めてご連絡申し上げます。  ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3316)