03/05/09 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成15年5月9日議事録        薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年5月9日(金) 10:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(15名)五十音順   井 上 和 秀、 岩  崎   学、 金 井   淳、◎河 村 信 夫、   小 嶋 茂 雄、 首 藤 紘 一、 菅 谷   忍、 谷川原 祐 介、  ○長 尾   拓、 長谷川 紘 司、 早 川   浩、 樋 口 輝 彦、   藤 上 雅 子、 村 勢 敏 郎、 矢 崎 義 雄 (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人1名   欠席委員(2名)   堺   秀  人、 南 部 鶴 彦 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 安 倍 道 治(審査管理課長)、    平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(医薬品医療機器審査センター長)    姫 野 孝 雄(審査センター企画主幹)、    平 山 佳 伸(審査センター審査第一部長)、   森   和 彦(審査センター審査第二部長)、   辻 村 信 正(審査センター審査第三部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、ただいまより薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、 改めて御礼申し上げます。当部会委員数17名中今日は15名に御出席いただいておりま して、お二人御欠席でございますけれども、定足数に達しております。御欠席の委員は 堺委員と南部委員でございます。それでは河村部会長、以後の進行をどうぞよろしくお 願いいたします。 ○河村部会長 本日の審議に入りますけれども、審議に入る前に事務局から配付資料の 確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。資料1〜7までがあらかじめお 送りした資料でございます。本日の席上配付資料といたしましては、議事次第、座席表、 当部会委員の名簿、資料8として新キット製剤のリスト、資料9として「医薬品第一部 会審議品目の薬事分科会における取扱い及び毒薬・劇薬の指定の要否について(案)」、 それから資料10として、当部会の審議品目等の専門委員のリストでございます。お手元 にございますでしょうか。それから、平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づき ます資料作成に関係された委員の確認でございますが、本日の議題については関与委員 はいらっしゃいません。以上でございます。 ── 審議官着席 ── ○河村部会長 ありがとうございました。そういうことだそうでございます。本日は審 議事項が6議題、報告事項が2議題となっております。議題1については参考委員とし て、国立相模原病院長の越智先生にまたお越しいただけることになっております。議題 1というのはレミケードと申しまして、前回ちょっと引っ掛かったリウマチのお薬でご ざいます。これについて、最初に部長の方から御説明してください。忘れてしまってお りますので。 ── 越智専門委員着席 ── ○審査第二部長 それでは議題1のレミケードでございますが、これは既にクローン病 の適応で市販されているTNFαに対する抗体製剤でございます。本品目についてはリ ウマチの適応の追加申請ということで、前回2月28日に御審議いただきました。その際、 用法・用量のうち3mg/kgを通常用量とすることは問題ないとしても、10mg/kgまで増量 する、その根拠が不明確ではないかという御指摘を頂きました。  その他として、市販後安全対策の中核となるような調査計画、これは全数調査という ことでございますが、その詳細がきちんと説明されるべきであること。それからもう一 つは、クローン病に関する部分は既に承認になっているにもかかわらず、インターネッ ト上で情報がまだ公開されていないという情報提供の遅れについての御指摘もあり、そ の点についても改善が必要であること。それから、こうした状況を踏まえて、最新の情 報に基づき安全性の情報も整理してくるようにとの御指摘を頂きまして、今回それらの 回答がこの緑の冊子にまとめられて提出されております。また併せまして、本日先生方 のお手元にブルーのファイルが置いてございますが、ちょっとかさばるものですからお 二人に一冊ぐらいの感じで置いてございます。これは市販後調査等に使用する資材等を 一つのパッケージにしてお示しするものでございます。そうしたものを一応御用意しま して、再度御審議いただくわけでございます。  用法・用量については承認事項ですので、最も重要な事項と考えております。高用量 の取扱いについてという御指摘でしたが、そのほかに8週間の投与間隔を4週間に短縮 することができるという記述も同様の問題と考えまして、検討、指示いたしました。こ れについては、既にお送りしてありますファイルの「指摘事項3」にその答えがござい ます。  簡単に申しますと、結論としては今回の申請においては用量は3mg/kgのみと限定い たします。また、10mg/kgへの増量や4週間隔への短縮、つまりこれは効果不十分例に 対する増量という意味合いでございますが、これについては今後国内において関節破壊 の影響なども視野に入れた長期間の比較試験を実施し、その成績に基づいて効果不十分 例に対する適切な用量、10mg/kgではなくて5mg/kgでもいいのではないかとか、そうし たことなどについて適切な成績が得られた段階で改めて申請するという考え方で整理を してまいりました。  審査センターとしましては、今回の申請資料を精査いたしまして、国内外の臨床試験 成績、例えばATTRACT試験のような非常に有名な大規模な試験などがあるわけですが、 そうした成績をつぶさに点検いたしました。つまり、効果の程度や効果発現までの時期、 ACR50やACR70というようなより効果が顕著に現れた症例の割合、それから最も大 切な病態の進展を表すX線による関節破壊の進展抑制効果の評価、こうしたものについ て見てまいりますと、やはり確かに増量したり投与間隔を短縮した場合に、効果が更に 現れるケースは十分期待できるだろうということです。これは既に審査報告にも書いて ございますが、日本国内での申請企業の田辺製薬が、更にその根拠を明確にする臨床試 験を実施すること自体は妥当と考えております。  なお、効果不十分に対する増量、あるいは投与間隔を詰める等のエビデンスは、当然 できるだけ早く整えられるべきだと考えます。したがいまして、早急に適切な試験計画 を作成し実施するよう、引き続き企業を指導してまいる所存でございます。  一番ポイントとする用法・用量については以上のような整理をしてまいりましたが、 市販後調査について等の他の指摘事項については担当の方から御説明いたしますので、 よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 それでは担当の方、追加して御説明お願いいたします。 ○事務局 それでは引き続きまして、用法・用量以外の点について御説明させていただ きます。前回の部会からの御指摘を踏まえて、安全性に関する情報の整理、市販後調査 の計画及び情報公開への対応という3点について回答がなされております。  まず安全性についてですが、緑の冊子の回答書1にございます。前回部会審議時には 平成14年12月末日までのデータが提出されておりましたが、今回はその後平成15年2 月28日までというところが一番最新のデータですので、そこまでのデータがまとめられ て、臨床試験での使用例のほか、海外市販後の約43万例、国内市販後の約1,600例の症 例についての検討結果が提出されております。全般的にこの結果を見まして、申請者の 回答を簡単に御説明させていただきますと、国内外での発現状況が大きく異なる事象は なく、市販後に増加しているような事象も基本的にはないということでございます。し かしながら、結核あるいは重篤な感染症等、国内の方が高い傾向にある事象も確かに認 められていることから、市販後には副作用の発現について十分注意する必要があるとい う趣旨が回答されております。  次の市販後調査の件については、回答書2に記載されております。通常の市販直後調 査のほか、市販後の一定期間については全例調査を実施することとなっておりまして、 本調査の概略については回答書2の11ページ、折込の別紙3-1というチャートを見なが ら少し御説明させていただきます。具体的には、本剤納入前にMRが医療機関を訪問し て、レミケードのリスク・ベネフィットあるいは全例調査への協力を依頼して了承を得、 そこで署名をしていただくことになると思います。その了承された施設にのみ本剤を納 入することになります。そして患者を登録するときには、例えばメトトレキサート(MT X)の併用量であるとか、結核の既往歴といったようなことを登録票に記入して登録を開 始すると。その後本剤の投与が開始されまして、本剤を使用している患者の状況や各患 者での経過等が収集されることになります。また、結核既感染者であれば胸部レントゲ ン検査を定期的に実施するといった、より詳細な調査が計画されております。得られた 結果については、週1回申請者の田辺製薬の方で社内で検討するという評価と共に、外 部専門家から成る第三者委員会で基本的には1か月に1回程度評価すると。また、重篤 例については随時評価するというプロセスが含まれております。その辺りは次の12ぺー ジに書いてございますので、そちらも併せて御覧いただければと思います。  最終的にこの検討結果をどういうふうに現場へ伝えるかについては、1か月に1回程 度のまとめのたびにその資料を医療現場に提供するほか、インターネット上で常に公開 して最新の情報を提供していくとのことです。したがって、リウマチの医療従事者、医 師あるいは関係者の方が、インターネットにアクセスしていただければ常に最新の情報 を入手できるという状況を整えることになっております。少し戻っていただいて8ぺー ジを御覧いただきますと、全体像が書いてございます。このレミケードの市販後には通 常の市販直後調査のほかに、今御説明させていただきました全例調査、それ以外に長期 の調査を計画しておりまして、そこでは通常2年間の観察期間、それから更に1年間悪 性腫瘍の発現率を見るということで、トータルで3年間の長期特別調査を計画している ということでございます。そういった情報についても随時提供していくと申請者は申し ております。  また、情報公開への対応についてですが、申請者からは本剤のクローン病に関する情 報の公開が遅れたことへの反省の念が回答書4で述べられております。今後は速やかに 情報を公開するよう努めるとの主旨が回答されております。なお、クローン病の審査報 告書及び概要につきましては、既にインターネット上で公開されているということでご ざいます。  最後に事務局の方から追加で御説明させていただきますが、前回部会審議後の2003年 3月4日に米国FDAでArthritis Advisory Committee(AC)が開催されております。 レミケードを始めとするTNF阻害剤と悪性腫瘍との関連等が検討されておりますの で、この概略について簡単に御説明させていただきます。今回開催されました米国での ACでは、米国で既に承認されております3種類のTNF阻害剤、すなわちRemicade、 Enbrel、Humiraについて、市販後の状況を含めた安全性について検討されております。 その結果、悪性腫瘍とTNF阻害剤との関連性については、TNF阻害剤投与時に悪性 リンパ腫発現率がプラセボに比較して少し高い傾向にあると。しかしながら、RA患者 自身での発現頻度の高さ、あるいは疾患活動性、MTX等他剤による影響とも考えられ ることから、更に情報を収集する必要があるだろうという結論になっております。それ 以外の悪性腫瘍発現率については差がないということが述べられております。  それともう一つは、うっ血性心不全とTNF阻害剤との関連についても検討されてお りまして、TNF阻害剤がうっ血性心不全を悪化させる可能性があると。したがって、 TNF阻害剤で統一した注意喚起をする必要があるだろうということが述べられており ます。  なお、ACを踏まえてFDAの方から今何か具体的なアクションが採られているとい うことについては報告されておりませんし、我々の方でも確認をしておりません。なお、 本邦での対応でございますが、悪性腫瘍との関連については既に添付文書上で明記して おりまして、常に最新の情報が現場に届くことになっているかと考えております。それ からうっ血性心不全については、むしろ日本では米国よりも厳しく、グレードに関係せ ずうっ血性心不全を合併する患者については禁忌として取り扱っておりますので、この ACの検討を踏まえて、現時点では特に新たな対応をする必要はないだろうと考えてお ります。以上、申請者から提出されました回答の概略等について御説明させていただき ました。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 それであなたはインターネットを開けて見ましたか。 ○事務局 開けまして、確かに見られるということは確認しております。 ○河村部会長 谷川原先生も御覧になったでしょうね。 ○事務局 もう一つ追加としては、田辺製薬のホームページのところでもクローン病に 関する解説や、クローン病に対するTNF阻害剤の治療はどういったものかというペー ジも新たに作られていることを確認しておりますので、企業側としてもそれなりの努力 はしているのだということについては、事務局では確認をしております。 ○河村部会長 谷川原先生も一応の努力はお認めになるような内容でしたか。私は見て いませんので。 ○谷川原委員 この広告を見まして、私も早速医薬品機構のホームページを確認いたし ましたら、ちゃんと出ておりました。 ○河村部会長 そうですか。一応今のところは満足すべきものである、今後も努力する というのは、まあ信じましょうということにしようと思いますが。越智先生、お忙しい ところ大変申し訳ないのですが、この緑色の表紙の資料が既にお手元に届いていると思 いますけれども、前回の審議のときに我々としてもちょっと心配なことがいろいろある ということで、こういうふうなことを会社の方に問い掛けていただいて、それに対する 会社側の返答をもらったのですが、何か御意見ございましたら、お願いいたします。 ○越智専門委員 この前のディスカッションのときにおっしゃっていましたように、3 mgの無効例に対しまして10mgというのは、確かにまだ少し根拠が薄弱だというのは私 も感じました。しかし、3mgでも、また使用期間の短縮がなくても、レミケードは明ら かに今までの抗リウマチ剤の無効例に対して効いているというデータは海外でかなり発 表されておりますので、是非3mgで臨床現場で使ってみたいと思っております。10mgの 問題に関しましては、確かに御指摘にございましたように、いわゆる3mgのノンレスポ ンダーに対して10mgを使えば本当に有効なのか…、エビデンスとして非常に不十分な状 態では、海外でもデータを散見しまして効くらしいという感覚を持っております。しか し、やはりエビデンスとしては薄弱でございますし、高価な薬でございますので、次に 10mgというのは確かにちょっと飛躍があるのかなと。欧米でもまだ3mgのノンレスポン ダーに対して10mgを使ってみて確かに効いた、あるいはリウマチで一番問題になります 骨破壊が止められたというきちんとしたデータは出ておりませんので、一応3mgで走り ながら、近い将来の問題として3mgのノンレスポンダーに対して本当に10mgが有効な のか、あるいは骨破壊が止められるのかということは、是非改めて治験でチェックした いものだと思います。3mg、10mgの問題に関しては以上のようなことを考えておりまし て、3mgで使用期間の短縮がなくても臨床現場としては是非使ってみたいと思っており ます。  それから、事務局から言われました全例調査の問題でございますが、リウマチの治療 薬に関しましては、今まで全例調査の例がございません。それで突然全例調査をやって 本当にうまくいくのかなという懸念もございますので、学会を中心にこの市販後全例調 査ができるようなやや大きなグループを組みまして、是非やってみたいと思っておりま す。この受け皿としては、学会を中心とした一つの研究班のようなものを作りながら、 市販後全例調査を是非やらせていただきたいとは思っております。ですから、この点に 関しましては可能だと、我々は是非やりたいと思っております。 ○河村部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の御説明と越智先生の御説 明に対して、各委員から御質問ございましたらお願いしたいと思います。どうぞ、矢崎 先生。 ○矢崎委員 前回いろいろ申し上げてこのような回答を得られたというのは、大変な進 歩だと思います。私自身は、分子標的治療薬というのは画期的な新薬ですし、大切に育 てる必要があるのではないかということです。ところが、イレッサの件についてもそう いう十分な姿勢がないために、ああいうアクシデントがあったわけでございまして、今 回レミケードに関してイレッサの反省が全然見られなかったと。前回いろいろクレーム を付けることによって、このように十分な回答が得られたということは、やはりこの部 会でいろいろクレームを付けないとなかなかこういう状態にならないのではないかとい うことで、インターネットの情報公開についても遅きに失したという感があります。し たがいまして、悪性腫瘍の問題はすぐに回答が出るものではありませんので、やはり長 年の経過をとった上で検討しないといけない。ですから、今悪性腫瘍、発がん性がない からということで問題ないと言うことはできない。FDAの言ったとおり問題ないとい うことではなくて、今後も経過を追っていかなければいけない問題だと思います。  直近の副作用として、イレッサのときにありました間質性肺炎などのような問題は、 この薬はメトトレキサートを併用するため非常に免疫力を低下させるということで感染 症…、特に日本固有の問題としては結核の問題があって、それに対する十分な配慮もし なければいけないところでございます。しかし、今この資料を拝見していますと、ナビ ゲータその他で詳しく書かれているということは、市販後全例をフォローアップすると いうメーカーさんの姿勢もこの反映であって、やはりこういう新しい画期的な薬はきち んと審査して、情報を公開していただかないといけないということで、前回いろいろ申 し上げましたけれども、これはこの薬にとっても極めて良かったのではないかと私自身 は思います。  それから用量についてですが、アメリカの治験がなぜ3mgと10mgになったのか十分 理解できません。通常は3mgであれば倍量をやって、それで次に進むわけです。ところ が、3mgから10mgにポンと飛んで、その10mgのデータが本当にすばらしい効果ではな くて、少し改善したという程度でございますので、やはりきちんとアカデミックに効果 を定量化して測定する必要があると思います。ちょっと申し訳ないのですが、その辺の 配慮が余りアメリカのデータに引きずられてしまっているので、やはりオーソドックス な方法で是非やっていただきたい。アメリカの報告が必ずしも日本に適用されませんの で、結核など日本固有の問題などをきちんと抑えていかないと、イレッサと同じような 問題が起こってきますので、くれぐれもそういうことがないよう、また改めて申し上げ たいと思います。 ○河村部会長 ありがとうございました。ほかに御発言ございましょうか。どうぞ。 ○谷川原委員 市販後に全例調査をしていただけるというのは大変有り難いことだと思 いますし、この回答もこれで満足すべきものだと思います。しかし、承認条件としては っきり明記していただいた方が、そうすれば添付文書にも載りますので、実行性が高ま るし医療機関としてもはっきり対応できると思うのですが、いかがでしょうか。 ○河村部会長 それは可能ですか。 ○事務局 はい。 ○河村部会長 市販後調査については、実は最初のこの緑色の資料を読んだところでは こういうふうにやるという決意表明だけで、余り実際的ではないと思っていたのです。 しかし、今日の水色の方で割合細かいところまでやってきておりますし、もし医師がい たら田辺製薬と連絡を取って、ある程度の文書を交換すれば使えるというふうに読み取 れますので、この前よりは良くなったかなと思います。ただ、学会の方はどういう対応 をなさるおつもりですか。 ○越智専門委員 この薬剤だけで市販後の全例調査、あるいは長期特別調査をやるつも りは全くございませんで、今まで市販後全例調査がリウマチの治療分野ではなかったと。 前回出てまいりましたアラバ錠もやはり市販後全例調査が付いておりますし、これも付 いてございますので、今後このようなものが多分引き続いて出てくるだろうという意味 で、市販後全例調査ということをこの審議会で言われ、そして附帯条項として付いてい るものに関しましては、学会単位で対応させていただこうということで、特定の薬に対 しての調査というつもりではございません。念のために。 ○河村部会長 ほかに御意見ございましょうか。どうぞ。 ○審査管理課長 今谷川原委員の方から御指摘を頂きました承認条件としてということ については、そのようにさせていただきたいと思います ○谷川原委員 ついでによろしいですか。いつも思うのですが、これだけではなくて「添 付文書(案)」にいつも承認条件が入っていないのです。承認条件というのは添付文書に 書かなければいけないのですが、この部会の審議のレベルでは承認条件は入っていない のです。あくまで案の段階ですが、ついつい見落としてしまいますので、この時点での 承認条件がどうなっているかということを情報整理する意味でも、「添付文書(案)」に は掲載していただいた方がよろしいのではないかと思うのですが。 ○審査第二部長 「添付文書(案)」のところまでは審査センターで整備をさせていただ いておりますので、センターにおける審査をした過程で、承認条件として想定されるも のがまとまっているものは、必ず入れるようにいたします。部会で御審議いただいた際 に条件として付与されたものはその後になりますので、その点は御容赦いただきたいと 思います。 ○河村部会長 よろしゅうございますか。ほかに御意見ございましょうか。私の読んだ ところで乱暴にまとめますと、「指摘事項1」については事務局の方でも海外の情報は 今後も入手するようになさるということでございますし、「指摘事項2」については全 例調査であるということでございます。また、「指摘事項3」については、10mgを一応 控えまして3mgにしておきますということですし、「指摘事項4」については、すみま せんでした、きちんとやりますということですので、こちらの問い掛けは一応クリアし ていただけたかなと思いますが、いかがでございましょうか。一応この第一部会ではお 認めいただいたということで、承認を可として薬事分科会の方へ報告という扱いにさせ ていただいてよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございました。越智先生、 お忙しいところを2回にわたってどうもありがとうございました。  それでは議題2になりますけれども、村勢先生が関与委員でいらっしゃったので、ち ょっと中座していただくことになるそうでございます。ピタバスタチンカルシウム、リ バロ錠というものについて、御説明よろしくお願いいたします。 ── 越智専門委員、矢崎委員退席 ── ── 首藤委員、村勢委員退室 ── ○事務局 資料2、ピタバスタチンカルシウム、リバロ錠1mg及び2mg、一般名ピタバ スタチンカルシウムについて、審査センターより御説明いたします。  本薬は日産化学工業株式会社で創製されたHMG-CoA還元酵素阻害薬であり、興和株式 会社と共同で開発が進められました。現在、米国及び欧州で第II相試験が実施されてい ます。  本薬の審査に関しましては、資料10にございますように、本部会委員の岩ア先生を始 めとして、青柳委員、江馬委員、北畠委員、櫻井委員、永井委員、福島委員、松本委員、 安原委員、横山委員が専門委員として指名されました。  次に審査センターにおける審査の概略を御説明いたします。規格、安定性、毒性及び 薬理については、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問題はない と判断いたしました。  薬物動態及び臨床試験成績に関しては、以下のような検討が行われました。有効性に ついては、第III相比較試験の本薬2mg投与群の総コレステロール変化率は、対照薬プラ バスタチン10mg投与群に比べ有意に優れていたことから、本薬の有効性は示されている と判断しました。また、安全性については、第III相比較試験の臨床検査にかかわる副作 用発現率が対照薬プラバスタチン10mg群と比べ、本薬2mg群で有意に高く、また、国 内申請用量は4mgまでとされていましたが、より高用量が検討されていた海外臨床試験 においては、本薬8mg以上の投与群で横紋筋融解症又は関連有害事象が発現したため、 8mg以上の投与群が中止になっていることなどの問題点がありました。これら安全性に 関する問題点については、第III相試験の本薬2mg投与群における臨床検査値異常は軽度 のものが多く、その発現頻度も類薬の文献報告における発現頻度と比較して上回るもの ではないこと、本薬4mgまでの投与において問題となる有害事象は国内及び海外臨床試 験において認められていないこと、さらに本薬の薬物動態は欧米人と日本人で大きな違 いがないことを確認し、本薬は8mg以上の投与量においては安全性に問題があるものの、 申請用量である1日4mgまでの安全性には特に問題はないと判断いたしました。  これらの検討を踏まえて、1日最大投与量である4mgまで増量が必要になる基準を「L DL-コレステロール値の低下が不十分な場合」に限定し、「用法・用量に関連する使用 上の注意」に、「本剤は投与量の増加に伴い、横紋筋融解症関連有害事象が発現するの で、4mgに増量する場合には横紋筋融解症前駆症状に注意すること」との記載を行い、 注意喚起することとしました。さらに、本薬の曝露が上昇する可能性がある臨床適用状 況については、ヒトにおける薬物動態試験成績も踏まえ、肝障害時に関しては、重篤な 肝障害患者は禁忌とした上で開始投与量を1mg、最大投与量を2mgまでとすること、他 剤併用時についてはシクロスポリンとの併用は禁忌とするなどの対応を採りました。以 上の検討を踏まえて、設定した用法・用量での使用においては、安全性の確保が可能と 判断しました。  以上のような審査の結果、審査センターは本薬を承認して差し支えないと判断し、本 医薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしました。本薬は新有効成分 含有医薬品で、再審査期間は6年、原体は劇薬に該当し、分科会へは報告が適当と判断 しています。御審議よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 以上のように、高コレステロール血症に対するお薬であると。一応4mg まで増量可能ということですが、肝障害はあり、それから筋肉が溶けてしまうこともあ り得ると言うけれども、ほかのものより高いというわけではない。効果はほかのものと 同じ、ないしは少し高いというようなお薬でございます。私がここでちょっと質問した いのは、家族性高コレステロール血症というものは外国と日本では同じなのですか。同 じなのでしょうね。金井先生、御存じではありませんか。病態が同じならいいけれども、 時々こういう家族性とか遺伝性というのは日本人のは違うので、ちょっとどこかで確認 しておいてください。 ○事務局 LDLレセプターに原因があるという部分に関しては、一応日本人と欧米人 で違いがないとは思うのですが、細かい病系類別の割合が違うとか、そういうことまで は現在把握していませんので、その辺については確認させていただきます。 ○河村部会長 御質問、御討議ございますか。どうぞ。 ○谷川原委員 薬物相互作用に関して、二点ほどコメントと質問をさせていただきます。 まず、シクロスポリンを禁忌にされたということですが、審査報告書を拝見いたします といろいろ議論はあったようですけれども、結局この薬剤はシクロスポリンによる体内 曝露量の上昇とこの薬剤の安全域が狭いということから、他の同種同効薬とは異なって これに関して禁忌とされたというのは、審査センターの御判断は大変妥当であったと思 います。  二番目ですが、審査報告書の中にワルファリンとの併用において、軽度であるものの 副作用が見られているという表現が2か所ほどあったのです。ちょっとその詳細が見つ けられなかったのですが、その副作用というのはいわゆるワルファリンに起因するもの か、それとも本剤に起因するようなものか、どういう種類の副作用があったのでしょう か。と申しますのは、この薬剤はチトクロームP450のCYP2C9で代謝されるとあります けれども、ワルファリンを代謝する主たる酵素が同じCYP2C9ですので、その相互作用が あったのかどうか。そうだとすれば、ワルファリンに起因する出血のイベントのような 副作用なのか、それとも本薬が起因となるCPKのような副作用であったのか、どちら が影響を受けたのかがちょっと気になったもので。 ○事務局 副作用の詳細については今即答することができませんので、すみませんが確 認させていただいて、先生の方には御報告させていただきたいと思います。今谷川原先 生が懸念されていた、ワルファリンと代謝酵素を取り合ってそこで相互作用があるので はないかという御指摘に関してですが、本薬は一部分に関してはCYPにおける代謝を受 けることにはなっていますが、ほとんど代謝を受けない性質の薬剤でして、代謝に関し ましてはほとんどプラバスタチンと同じようなプロファイルを持っているものでござい ます。ですので、ワルファリンとの相互作用について、現時点で特に何か対策を採らな ければ問題があるとは考えておりません。 ○谷川原委員 その辺り、ちょっとまだマスバランスがよく分からないのです。ほとん ど代謝されないと書いてあるのですが、一方、尿中に排泄される未変化体及びラクトン 体が2%未満という表現があって、代謝のことはラクトン体β酸化、キノリン環の水酸 化、グルクロン酸種々で代謝され糞中排泄であるということが…、全体をどう理解した らよろしいのでしょうか。ですから、代謝されずに胆汁排泄されるという意味なのか、 それとも代謝物が胆汁排泄されるから尿中に出てこないという意味なのか、この辺りは どうなのですか。 ○審査第二部長 そのマスバランスについては動態の専門家の方がまたお答えすると思 いますが、まず副作用の中身ですけれども、概要のト-282ぺージに「薬物相互作用」と いう項がありまして、併用例の有害事象及び副作用発現率の数字を載せております。こ こにワルファリンカリウムとの併用例の中身が書いてございまして、ここで出ているの は「アルカリフォスファターゼ上昇、血清GOT上昇、血清GPT上昇」、「テストス テロン減少」、「LDH上昇、γ-GTP上昇」が各1例、いずれも「軽度」という内容 でございます。血液凝固能については3例ほど測ってありますが、影響は出ていないと いう答えになっています。それで臨床的に余り大きな問題にするような内容ではないの ではないかということで、相互作用を注意すべき薬剤として特にワルファリンを挙げて いないということになっております。 ○谷川原委員 それでは最初の質問に対して今回答を頂きましたので、これで結構だと 思います。 ○河村部会長 ほかにございましょうか。ではこれも承認を可として、報告という扱い にさせていただいてよろしゅうございますか。ありがとうございました。次は資料3の マクサルト錠でございます。口腔内崩壊錠が付いておりますが、御説明お願いいたしま す。 ── 村勢委員入室 ── ○事務局 資料3、マクサルト錠10mg及び口腔内崩壊錠であるマクサルトRPD錠 10mg、一般名安息香酸リザトリプタンについて、審査センターより御説明いたします。  「RPD」とは速い崩壊を意味する「rapid dissolution」の略とのことでございます。 本薬は米国メルク社で、5-HT受容体のサブタイプである5-HT1B/1D受容体に対し て選択的に作用する片頭痛治療薬として開発され、2002年12月現在、欧米諸国を始め とする78か国で承認されております。  本薬の専門協議につきましては、資料10にございますように、専門委員として岩ア委 員ほか、鹿庭委員、福島委員、江馬委員、林委員、鈴木委員、安原委員、内山委員、宮 下委員、山之内委員の10名が指名されました。  規格、安定性、毒性及び薬理については、10mg錠、RPD10mg錠とも特に問題はあり ませんでした。  ADMEに関しましては、日本人と外国人との比較において、経口投与時の薬物動態 パラメータは類似しているとされました。また、日本人において、10mg錠、RPD10mg 錠は生物学的に同等でした。本薬は主に肝臓で代謝されること、及び中等度肝機能障害 患者では、Cmax及びAUCは健康成人に比べて増加する傾向が認められていることか ら、肝機能障害患者に対しては慎重投与、重度肝機能障害患者は禁忌とされております。 また、プロプラノロールとの併用で本薬の血中濃度が上昇することから、プロプラノロ ールとの併用は禁忌とされました。  臨床試験は、国内においては第III相比較試験まで行われました。国内第II相用量設定 試験はプラセボを対照とした試験ではなかったため、2.5mg、5mg、10mgの有効性に関 し用量依存性が明確にされなかったことから、用量設定試験をブリッジング試験とする ことができず、海外の試験において5mgに比べて明らかに有効性が高いことから、国内 推奨用量と予想された10mgとプラセボで国内第III相比較試験が実施されました。審査セ ンターは、国内及び海外第III相比較試験におけるプラセボ群に対する10mg群の有効性は 類似していると判断し、海外で実施された10mg1日2回投与における有効性及び安全性、 並びに1回10mgの長期投与時における有効性及び安全性についてのみ外挿可能と判断 しました。  以上の臨床データパッケージを踏まえて、審査センターは1回投与量及び1日総投与 量の有効性、安全性について検討いたしました。1回投与量について、第II相用量設定 試験では主要評価項目である頭痛改善率に関し用量依存性が認められなかったものの、 10mg群の頭痛改善率は2.5mg群、5mg群に比べ最も高く、頭痛消失時間や再発時の頭痛 の程度等の副次評価項目では有意に勝っており、安全性においても問題がなく、さらに 1回10mgを超える用量での使用経験が国内ではないことから、1回用量は10mgに設定 するのが妥当と判断いたしました。また、1日総投与量については、国内では1日20mg までで検討がなされていたことから、上限を20mgに設定するのが妥当と判断いたしまし た。外挿した海外の再発発作試験の発作時の成績、繰り返し発作試験の発作時の成績、 長期投与試験の成績から、服薬2時間後の頭痛改善率は10mg投与群でプラセボ群に比し 有意に高く、また、治療後2〜24時間以内に再発した頭痛における服用2時間後の有効 率もプラセボに比べて有意に優れており、安全性、忍容性においても問題ないことが示 されました。  RPD錠について、国内で実施された非盲検非対照試験において、RPD錠を服用し た41例中36例が発作中に水なしで服用することができ、特徴である口腔内速放性によ り利便性があるものと判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、審査センターは本申請を承認して差し支えないと判 断し、医薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしました。本薬は新有 効成分含有医薬品で、再審査期間は6年、原体及び製剤は劇薬に該当し、分科会へは報 告が適当と判断しています。御審議のほどよろしくお願いします。 ○河村部会長 ありがとうございました。以上のようなお話ですが、10mg以上のものは 今のところ余り有用性がないだろうということで、切ってしまったということです。片 頭痛の薬はこれで四つ目ですけれども、前に御審議いただいたときに、頭の痛い人はど んどん飲んでしまうだろうという話がありましたが、これは10mgを最低2時間空けて1 日2錠だけということになっております。ですから、朝の6時に起こったら、6時と8 時に飲んでおしまいですね。後はどうなるか分からないと、別のことをやれということ でしょうか。そういう薬剤になるようです。また、吐き気があったりするので口腔内崩 壊錠も有用だろうということですが、いかがでございましょうか。御審議のほどお願い いたします。どうぞ。 ○樋口委員 細かいことなのですが、資料の704ぺージの「使用上の注意」のところで、 「(1)重大な副作用」に「4)てんかん様発作」という記載がございまして、それから「8) 失神」という言葉が使われているのですが、この「てんかん様発作」というのは言葉と して極めてあいまいに思えるのです。てんかんというのは非常に発作の種類等が複雑で いろいろなものがあります。痙攣発作もございますし、ここにある「失神」と言われて いるような意識消失発作もありますし、筋肉の硬直だけを伴うようなものもあるわけで、 それを引っくるめて、しかもそれを「てんかん様」と呼んでしまうことはいかがなもの かという気がいたします。もしこれが具体的な、例えば筋硬直、筋痙攣などということ でくくることができれば、そういうふうにした方が…。これはてんかんの側からもちょ っと誤解が生じるのではないかということが考えられます。そして失神というのも、実 はてんかんの発作の一つのタイプとしてございますので、これはその中に含めるのか、 含めないのかというようなことがありますので、この辺りについては何か審査センター での審議の過程でコメントがございましたかどうか、伺わせていただきたいと思います。 ── 首藤委員入室 ── ○事務局 審査センターよりお答えいたします。まず「てんかん様発作」ということで ございますが、実は以前にてんかんの診断がなされていない患者さんで、お薬を服用し た後に痙攣を伴った発作を起こしているというのが類薬でございまして、そういう患者 さんに「てんかん」という病名をそのまま当てはめるのがどうかということ。それから、 脳血管疾患をお持ちの患者さん、例えば以前にそういう既往のある患者さんで、このト リプタン系統の類薬を服用した後に痙攣を伴った発作を起こしているということが数例 報告されております。ということで、明らかに「てんかん」という病名が付けられれば そのようにしたいところでございますが、なかなか「てんかん」と「てんかん様」、診 断が付いていない患者さんに「てんかん」というのもどうかということでございまして、 「てんかん様発作」という書き方になっております。  それから失神に関しましては、本薬の薬理作用でございます血管の収縮作用に伴って 起立性低血圧様の発作を起こされる方がおられまして、それは明らかにてんかんの発作 とは区別できるということで、「失神」ということにしております。ただし、これはさ ほど頻度が多くありませんので、「(頻度不明)」と書かせていただいております。 ○樋口委員 もしその「てんかん様発作」というのが今のような御説明であるとすると、 これは例えば「痙攣発作」というふうにした方が明確ではないかと思うのです。「てん かん様」というのは具体的に何を指しているかがよく分からないということで、服用す る側から言っても「てんかん様発作」と書かれても余り明確ではない、使う医者の側も 何を指しているかよく分からないということで、もし痙攣発作がこれまでに見られてい て、それをてんかん様発作とみなしているのであれば、「痙攣発作」とされた方が明確 ではないかと思います。 ○事務局 御指摘に基づきまして、一度こちらの方で検討させていただきたいと思いま す。 ○河村部会長 樋口先生によく伺って、適当な単語をお考えくださるようお願いいたし ます。ほかにございますか。今までいろいろな片頭痛の薬が出ていましたが、ほかの薬 剤もこのように書いてあるのでしょうか。同じにそろえてありますか。適切な言葉の方 がよろしいと思いますので、御検討ください。ほかにございますか。御意見、御質問ご ざいませんでしたら、これも承認を可として薬事分科会に報告させていただきたいと思 います。ありがとうございました。  その次は議題4、パリエット錠でございます。御説明お願いいたします。 ○事務局 それでは引き続きまして、議題4、資料4の医薬品パリエット錠10mgの製造 承認事項一部変更承認の可否等について、審査センターより御説明申し上げます。  本品目はプロトンポンプ阻害剤であるラベプラゾールナトリウムを有効成分とする錠 剤で、既に1997年10月に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎及び Zollinger-Ellison症候群に対する治療効能で承認を取得しております。本申請は、逆 流性食道炎治癒後の維持療法の用法・用量を追加するものでございます。なお、本薬の 逆流性食道炎治癒後の維持療法につきましては、既に海外の53か国で承認され使用され ております。  本薬の専門協議では、本日の配付資料10の4ぺージに示しますように、梅田委員、佐 藤委員、谷委員、吉村委員が専門委員として指名されました。  本申請で新たに提出された非臨床試験に関する資料の内容には大きな問題はございま せんでしたので、臨床試験について述べさせていただきます。H2受容体拮抗薬抵抗性 のびらん・潰瘍型逆流性食道炎患者を対象に、本薬20mg1日1回8週間投与による治癒 症例129例において、本薬10mg及び20mgを1日1回並びにファモチジン20mgを1日2 回、維持療法として24週間投与した第III相二重盲験比較試験が実施されております。主 要評価項目である内視鏡的非再発率は、ファモチジン群では18.2%であったのに対し、 本薬10mg群では78.6%、本薬20mg群では78.9%と、本薬群ではいずれの用量でもファ モチジン群と比較し有意に高い非再発率を示しましたが、10mg群と20mg群では効果に 差が認められなかったことより、10mgのみが維持療法の用量として選択されました。  次に安全性に関してですが、維持療法期における本薬10mg投与群の24週時での副作 用発現頻度は13.3%であり、死亡及び重篤な副作用は認められておりません。内容的に も既知の事象であり、維持療法による投与期間延長に伴う新たな事象は認められており ません。また、プロトンポンプ阻害剤の共通の副作用として高ガストリン血症が認めら れておりますが、類薬の維持療法での市販後安全性情報でも、現時点において高ガスト リン血症に由来する臨床上の問題点は指摘されていないことより、本薬の承認に当たっ ては問題ないものと判断いたしました。なお、本薬の維持療法における長期使用時の安 全性については、市販後調査においても確認することとしております。  以上のとおり審査センターでの審査の結果、本薬の逆流性食道炎治癒後の維持療法に おける有効性及び安全性は認められ、承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会 で審議することが妥当と判断いたしました。なお、本薬は新用量医薬品に該当すること から、再審査期間4年と判断しており、薬事分科会では報告を予定しております。御審 議どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 ありがとうございました。以上のように逆流性食道炎に対する適応の追 加でございますが、御質問、御審議ございますか。私が事務局に質問したのは、8週間 で逆流性食道炎が治るわけがないので、その後はどうなるのかと言いましたら、この添 付文書ですと8週間を超えても投与できるようになるのだそうです。この文言だとそう いう解釈ができるのだそうです。よろしゅうございますか。ではこれもここは通過とい うことで、報告させていただきます。次はプロトピック軟膏でございます。御説明お願 いいたします。 ○事務局 それでは引き続きまして、議題5、資料5の医薬品プロトピック軟膏0.03% 小児用の製造承認の可否等について、審査センターより御説明申し上げます。  本品目は免疫抑制剤であるタクロリムス水和物を有効成分とする軟膏製剤で、既に 1999年6月に0.1%軟膏製剤が成人用アトピー性皮膚炎治療薬として承認を取得してお ります。本申請は、小児アトピー性皮膚炎患者を対象とした製剤であり、小児での治療 においては、ステロイド外用剤の場合、一般に成人に比べて1ランクないし2ランク弱 いクラスの薬剤が用いられること、及び小児での海外臨床成績を勘案し、臨床推奨濃度 を0.03%として開発がなされました。なお、海外においても小児用製剤は0.03%軟膏製 剤のみで、2000年12月に米国で承認されたのを始めとして、既に24か国で承認され使 用されております。  本薬の専門協議では本日の配付資料10の5ぺージに示しますように、岩ア委員、加藤 委員、川崎委員、菅野委員、小嶋委員、南光委員、秀委員、米谷委員が専門委員として 指名されました。  本申請で新たに提出された規格、安定性、毒性、吸収・分布・代謝・排泄に関する資 料の内容には大きな問題はございませんでしたので、臨床試験について述べさせていた だきます。まず有効性に関してですが、2〜15歳の中等症から重症の小児アトピー性皮 膚炎患者221例を対象に、軟膏基剤、本薬0.03%製剤及び本薬0.1%製剤を1日2回3 週間塗布した第III相二重盲験比較試験が実施されております。主要評価項目である主有 効性観察評価部位の改善度での著明改善率は、軟膏基剤群12.7%に対し本薬0.03%製剤 群で66.7%、0.1%製剤群で75.7%と、両濃度とも基剤に比して有意な改善が示されま したが、両濃度間に統計学的な有意差は認められませんでした。以上の臨床試験成績を 踏まえて、安全性も勘案し、最終的に0.03%製剤のみが小児用製剤として選択されてお ります。  次に安全性に関してですが、国内試験における安全性解析対象症例356例中、副作用 は61.8%に認められ、主なものは塗布部位の熱感、疼痛、そう痒感等の皮膚刺激感及び 毛嚢炎、伝染性膿痂疹、単純疱疹、カポジ水痘様発疹症等の皮膚感染症でありました。 また、本薬の血中濃度上昇により、腎障害等の重篤な副作用が発現する可能性がありま すが、塗布量制限下で実施された臨床試験で測定された血中濃度は、最高値でも副作用 発現濃度と比較して十分低い値でありました。一方、本薬の長期にわたる局所免疫抑制 作用による皮膚癌発生等の新たな副作用発現の可能性は否定できず、海外においても2 年程度の使用経験しかないことより、長期使用時の安全性については不明であり、適正 使用に関して添付文書の記載を整備するとともに、市販後に長期使用例の追跡調査が必 要と判断いたしました。  以上のとおり、審査センターでの審査の結果、本薬の小児アトピー性皮膚炎に対する 有効性及び安全性は認められ、本薬の長期使用例について、免疫抑制作用に伴う有害事 象の発現状況を調査することを条件に承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会 で審議することが妥当と判断いたしました。なお、長期にわたる市販後調査が必要とさ れることから、再審査期間は10年と判断しており、薬事分科会では報告を予定しており ます。 御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのとおり免疫抑制剤の軟膏ですから、 余り気持ちがいい薬ではない、ただステロイドその他が無効の場合という縛りが付いて いるということでございますが、御質問、御審議ございますか。どうぞ、お願いいたし ます。 ○早川委員 小児のアトピー性皮膚炎が適応でございますが、御承知のとおりアトピー 性皮膚炎は乳児、あるいは年少児に非常に多うございまして、一応今までの御説明で、 また部会長がおっしゃいましたように、多少の危険も考えられる薬であるから年少児は 取りあえず対象外と添付文書ではしておりますが、私が危惧いたしますのは実際患者は 圧倒的に2歳以下が多いのです。これを使いたくなるような患者ですね。ですから、こ このところを相当強調して、当面2歳以下は使ってはならないということをはっきり分 かりやすく書いていただきませんと、よく見ると書いてあるという程度ですと、恐らく 乱用されると私は危惧いたします。その点だけちょっと心配いたしました。お薬自身は 評価の高いものでございます。 ○河村部会長 それは何とかできますね。対応してください。 ○事務局 それについては、添付文書の「警告」欄に「(2)低出生体重児、新生児、乳 児又は2歳未満の幼児では使用経験がなく、安全性は確立していない」と書かれてござ いすが、これでも不十分でございましょうか。 ○早川委員 ちょっと質問でございますが、この点について何か資料がございますでし ょうか。乳児あるいは2歳以下の年少の幼児に使われて、特殊な副作用の発生、あるい はその率が高かったというような外国の資料等がございますでしょうか。私は存じない のですが。 ○事務局 御説明させていただきます。要するに2歳以下の小児といいますのは免疫系 の発達段階でございますので、実は臨床試験においてすべて除外されておりまして、そ のために2歳未満の症例の経験が少ないということでございます。 ○早川委員 文字どおり経験がないというふうに理解してよろしゅうございますか。分 かりました。 ○河村部会長 もう少し大きく書くとか、赤枠をすることはできますね。それから、こ れは局所に塗ったときに刺激症状があるというのですが、子供だとお父さんかお母さん が塗ってあげることになるでしょうけれども、その場合手の指に対する刺激症状という のは余りないのですか。 ○事務局 本薬は実は有効成分にかなり刺激性がございまして、成人の方でもかなり痛 いということになっております。これは腎障害を考えて記載したのですが、「警告」欄 の「(1)潰瘍、明らかに局面を形成しているびらん」、この場合は非常に刺激感を伴う のですが、血中濃度が高くなって腎障害等の副作用が発現する可能性があるので、あら かじめほかの処置を行った上で本剤を使うようにという記載が一応ございます。 ○河村部会長 塗る方は大丈夫でしょうか。子供に塗ってやって、後で指が痛いという …。正常な皮膚面ならいいのですか。 ○事務局 正常な皮膚面には大丈夫です。 ○河村部会長 そうですか。どうぞ。 ○安全対策課長 安全対策課でございますが、先ほど早川先生の御指摘の部分に関連い たしまして、現在「警告」欄に「2歳未満の幼児」という記載がある部分ですが、これ は添付文書の記載要領が別途決まっております。「警告」は、例えば副作用が出た場合 に死あるいは重篤な障害が起こるものについて記載をするというように、これは公開し ております内規にもございます。その点からいたしまして、先生の御趣旨を踏まえて、 あるいはもう一工夫できるかもしれませんので、事務局の方で検討させていただければ と思います。 ○早川委員 この記載の方法は何か決まりがあると伺っておりますので、それもやむを 得ないことだと思うのですが、これは是非会社の方に御指導いただきまして、例えばM Rの方などが乱用されないように厳重に指導するということをお願いしたいと思いま す。大変心配でございます。 ○河村部会長 昔は私の科も皮膚・泌尿器科でしたから、もしかしたらこれはかなり使 われるようになるのではないかと思って心配しております。0.03%になっているという のも余り根拠がなく、会社の方も心配して大人の3分の1にしたということのようでご ざいます。かなり局所に起こってきてもしようがないのではないかなという気がするも のですから、会社側には十分注意するように御伝達をお願いしたいと思います。 ○事務局 承知いたしました。 ○河村部会長 よろしゅうございますか。ほかに御討議ございませんでしたら、これも 報告という扱いにさせていただきます。  次は塩酸アミオダロンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、御説 明ください。 ○事務局 それでは希少疾病用医薬品の指定について、資料6の審査報告書を用いて御 説明させていただきます。今回指定の申請がなされておりますのは、大正製薬株式会社、 及び大正・サノフィ・サンテラボ製薬株式会社の塩酸アミオダロンでございます。予定 されている効能・効果は、下記の再発性致死性不整脈、心室細動、血行動態の不安定な 心室頻拍です。対象疾病では発作の停止を緊急処置として実施する必要があり、緊急処 置が採れない場合にはほとんどがそのまま死亡に至る重篤な疾患でございます。さらに、 不整脈の停止後においても容易に再発することから、適切な再発予防処置を至急図る必 要がございます。  まず対象患者数でございますが、申請者は日本循環器学会認定研修施設に対する患者 調査等を行い、年間患者数は4,000〜8,000人と推定しております。したがって、希少疾 病用医薬品の指定要件でございます5万人以下を満たすものと考えております。  次に医療上の必要性でございますが、現在致死性の心室性不整脈の効能を有する医薬 品としては、経口剤2剤、及び塩酸ニフェカラント注射剤が承認されておりますが、経 口剤は急性期を離脱し、経口剤が服用できるようになった状態で初めて使用できるもの であり、また塩酸ニフェカラントについては副作用のため使用できない場合等もあり、 治療法が十分とは言えない状況でございます。以上より、対象疾患の重篤な疾病である こと、現時点で十分な薬剤がないこと、また資料の最後のぺージでございますが、日本 心電学会から厚生労働大臣あてに早期開発の要望書が提出されていること等から、医療 上の必要性があると考えられます。  最後に開発の可能性でございますが、アミオダロン注射剤は心肺蘇生法と救急循環治 療に関する国際ガイドラインにおいて、難治性の心室頻拍及び心室細動に対して、除細 動やエピネフリンを投与した後の第一選択薬として推奨されております。また、米国に おいては既にオーファンドラッグとして指定がなされた後承認されており、国内におい ても第I相試験が終了、現在第II相試験が実施されているところでございます。以上か ら本薬の開発の可能性はあると考えられます。それでは本剤を希少疾病用医薬品として 指定することの可否についての御審議、よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 御審議よろしくお願いいたします。緊急用の医薬品のようでございます が、よろしゅうございますか。では指定を可として、薬事分科会の方に報告させていた だきます。  以後は報告事項になりますので、よろしくお願いいたします。 ○事務局 まず報告事項の議題1、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたしま す。資料といたしましては、資料7-1のレスキュラ、レスキュラ点眼液から資料7-3の エストラダームTTS2mgまで、合計3成分、四つの再審査報告書でございます。これ らの品目については、市販後の使用成績調査、特別調査の成績等に基づいて再審査申請 が行われ、それぞれ審査の結果、いずれの品目についても薬事法第14条第2項各号(承 認拒否事由)のいずれにも該当しないこと。すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認 事項については、変更の必要がない、カテゴリー1と判定したものでございます。これ らの結果については、近く各々通知する予定といたしております。 ○事務局 続きまして資料8、A4横のものでございますが、当部会の関連分野で過去 1年間に承認されました新キット製剤について、御報告させていただきます。  一番左側が「販売名」でございまして、「申請者」、「有効成分」、「承認年月」、 「備考」になっております。今回御報告いたします新キットについては全く新しい機構 のものはございませんで、既にあるアイデア、形式のものが各成分で新しく承認された 新キットでございます。  一番上のイノバンのシリンジは、塩酸ドパミンをこのような大きくて太い注射に充て んいたしまして、シリンジポンプにそのまま装着することができるという形のものでご ざいます。それから二番目のドブポンについても、塩酸ドプタミンについての同じくシ リンジポンプ専用の製剤でございます。それからエスポーについては普通の注射筒でご ざいますけれども、すぐに注射ができるという形で、事前に注射液をシリンジに充てん したものでございます。  それから平成15年3月に承認になりました同じ処方のエレメイト注とミネリックに ついては、既存のものを同じく注射筒に事前に注入したものでございます。  平成15年4月に承認になりましたオキリコン注シリンジですが、オザグレルナトリウ ムについてシリンジ製剤にしたものでございます。それからミリスロール注シリンジに つきましては、ニトログリセリンの静注用製剤をシリンジポンプ用にキットにしたもの でございます。以上でございます。 ○河村部会長 以上のことにつきまして、御質問ございますか。よろしゅうございます か。ありがとうございました。以上で議題は終了しましたが、事務局から報告がござい ましたら、お願いいたします。 ○事務局 前回2月28日に行われた当医薬品第一部会で御審議いただきました、プレタ ール錠50ほか7成分処方16品目については、本年4月16日付けで承認させていただき ましたので、御報告させていただきます。 ○河村部会長 次の日程に関して、お願いいたします。 ○事務局 次回の医薬品第一部会の予定でございますが、7月11日金曜日、午後2時か らとなっております。よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 よろしくお願いいたします。あとはございませんね。先生方、お忙しい ところをどうもありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。                                   ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 24 -