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付録



背根神経節のウシ海綿状脳症(BSE)感染性リスク評価

付録

Philip J Comer 1997年12月8日

本書は、DNV社の「背根神経節のウシ海綿状脳症(BSE)感染性リスク評価」改訂第1版(1997年12月6日付)の付録である。同報告書には、総感染性の計算リスクの24%が骨付き肉に由来するとある。また、国内で現在実施されている枝肉処理の結果、脊柱付近の肉で脊柱付きで流通されるのはわずか5%である。

本書の目的は、食肉から完全に骨を取り除こうという提案に関連する仮定に対して、結果の感受性を調査することである。ここでは背根神経節(DRG)に関する問題点のみに言及し、BSEの臨床徴候がある高齢の個体の骨髄の感染可能性については記述しない。

5つの新規例については同様の仮定で、注記した以外はすべて同じ変数についてモンテカルロ法を用い計算を実施した。各例を3組に分け、それぞれが一つの主要な仮定における変化によってもたらされる影響を示すようにし、次にそれらをすべての肉から骨を除去した場合の影響と結びつけた。その結果はベースケースとともに表1に示す。英国民の総感染性(1997年)も図1のログスケールにプロットする。これによって結果の中央値と95パーセンタイル範囲がわかる。各例は以下のとおりである。

1.1 ベースケース(改訂第1版に関する全てのデータ)。
1.2 ベースケースと同じ、ただし肉はすべて骨なしで販売される。
2.1 ベースケースと同じ、ただし骨なし肉からは99%ではなく99.9%のDRGが骨とともに除去される。
2.2 事例2.1で肉はすべて骨なしで販売される。
3.1 ベースケースと同じ、ただし骨付き肉に混入したDRGが5%ではなく100%消費される。
3.2 事例3.1と同じで肉はすべて骨なしで販売される。事例1.2と同じになるため計算はしていない。

表1 結果の比較

事例 総感染性(1997年のID50) 個別リスク(ID50/人/年) 骨付きに
起因する%
  中央値 95%範囲 中央値 95%範囲  
1.1ベースケース 0.047 2.10-4 〜 12 9.10-10 5.10-12 〜2.10-7 23%
1.2全て骨なし肉 0.038 2.10-4 〜 9 7.10-10 4.10-12 〜2.10-7 0%
2.199.9%DRG除去 0.014 8.10-5 〜 4 3.10-10 2.10-12 〜7.10-8 75%
2.2事例2.1(全て骨なし肉) 0.004 2.10-5 〜 0.9 7.10-11 4.10-13 〜2.10-8 0%
3.1 骨付き肉に混入したDRGをすべて摂取
0.25 1.3.10-3 〜63 5.10-9 3.10-11 〜1.10-6 86%


5. 結果の考察

上記事例1.2とベースケースを一連の仮定に基づいて比較することで、全ての肉の骨を除去しようという提案は1997年の英国内の総感染性の中央値を0.047ID50から0.038ID50に減らす(減少率19%)だけであることを示す。図1からは、結果の不確定性の範囲によってこれらが取るに足らない減少であることが分る。

DRGが食肉処理場等で骨とともに99.9%除去されるとしたら(事例2.1)、総リスクは3因子分減じることが分る。しかしながら図1に示すとおり、リスクプロフィールは実際には変わらない。有意差の一つは摂取された感染性の約75%が骨付き肉によることである。ここに全ての骨なし肉を加えるとかなりの減少率となる。事例2.2の総感染性の中央値は1997年には0.004ID50まで減少した。これは事例2.1と比較すると73%の減少になる。ただし、0.01ID50の絶対減少は同じままである。図1から95%範囲の高い方の値は1ID50を下回ることが分る。

事例3.1はベースケースに高い方の推定値を与えるために含めた。骨付き肉とともに食べられたDRGの割合の不確定性を反映させた。DRGは相対的に見て直接摂取されるとは考えにくいが、骨がその後スープをとるために使われるとしたらほとんどのDRGが食物連鎖に入り込む結果となる。これは総リスクを5因子分増加させ、骨付き肉の感染性の割合を高くする。肉をすべて骨なしで摂取するとリスクが85%減少する。

図1 総感染性のリスク比較のプロット

図1 総感染性のリスク比較のプロット


6.結論

ベースケースの結果により、全ての肉から骨を除去してもDRGに起因する総感染性にほとんど影響しないことが分る。ただしこの感受性の評価は、この結論が評価中に立てられた仮定に基づくところが多いことを示している。したがって推定よりもDRGが多く除去されるなら除骨の有効性が高くなる。スープへの使用等で骨付き肉中のDRGが摂取され感染性が高まるのであれば、同じことが言える。


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