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V. 結論

1. リスク評価は、科学的に信頼できるものの、適用範囲は英国とアイルランドに限られるとTSE/BSE特別部会は考える。提示されたリスクの推定値は、消費パターン6もBSE発生率も異なるため、他の国々に一般化して適用することはできない。

2. 他の国々や大陸側のEU諸国全体について同様の評価をするためには、あらかじめ関連情報を集めることが必要と思われるが、そうした情報の中にはすぐには入手しにくく実地調査を通じた情報収集が必要なものもある。

このようなリスク評価にあたって非常に重要な要素の一つが、潜伏期間中に脊髄と背根神経節が感染性を持ち始める時期である。従来は、唯一の実験(通常「ウシ病原性研究」と呼ばれるもの)から得られたデータが、脊髄の感染性が検出できるのは潜伏期間の末期になってからであること、したがって臨床的症状が発現する可能性がまだない月齢12ヵ月以下のウシの骨付き肉や(ゼラチンや脂肪製造目的の)脊椎骨の消費を正当化するものとして解釈されてきた。しかし、このBSEウシ病原性研究に基づいて、中枢神経系組織が検出可能な感染性を持つ時期を全潜伏期間に対する比率で示すことはできないし、当該研究の検体数が少ないため、臨床的症状が発現する数ヵ月前まで脊髄には感染性がないと結論付けることはできないというのが、TSE/BSE特別部会の見解である。

より多くのデータが入手可能な、他の動物種による実験(マウス、ハムスター、霊長類、ヒツジなど)によれば、科学運営委員会が2001年1月12日に設けた仮説、すなわち一般的に、妥当な程度に最悪の場合の想定として、背根神経節と脊髄がもたらすリスクは潜伏期間の後半の方が高いという仮説は、依然有効である。

3. 月齢制限を12ヵ月から引き上げるための前提条件は、上述のリスク評価提案により、一加盟国がさらされることになる総感染負荷が[リスク管理者が設定する]許容水準を下回ることが示されることであろう。

4. TSE/BSE特別部会は、EU加盟諸国間でBSEの疫学上の経緯も、それに対応するリスク管理対策(特に飼料禁止令)の経緯も異なることから考えて、EU加盟諸国でウシの月齢層に対応したBSEリスクを、比較評価することが有益であろうと考える。


VI.参考文献

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6 個人別消費量、骨付き肉製造に使用される部位、骨付き肉やその他背根神経節付きで消費される部位の消費頻度、屠体の月齢構成など。


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