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参考1


原料原産地の表示のあり方

(加工食品の原料原産地表示検討委員会報告)



平成12年3月16日


目次


I  検討経緯

II  原料原産地表示のあり方
1. 原料原産地表示の基本的考え方
2. 原料原産地表示を行う品目
3. 表示方法
4. 実施方法

III  梅干し及びらっきょう漬けについての検討

(別紙) 梅干し及びらっきょう漬けについての論点整理

(参考1) 加工食品の原料原産地表示検討委員会名簿
(参考2) 加工食品の原料原産地表示検討委員会の開催状況



I  検討経緯
 消費者は、加工食品の原材料についての情報や購入する商品の品質に関する情報を得ることを望んでおり、加工食品の原材料の原産地表示についても、特定の品目について要望がある。
 他方、製造業者からは、加工食品については、
原料の供給先が特定されていないこと
時期により国産品と輸入品を使い分けることが多いこと
等から、製造業者からは技術上あるいはコスト上困難な面があるという指摘がある。
 また、国際的にも加工食品の原材料に関する原産地表示の一般的なルールは定められていない。
 このため、昨年3月から消費者、学識経験者、農業団体、製造業者、流通業者等からなる検討会を開催し、品目毎の製造・流通の実態等を踏まえた原料原産地表示のあり方、表示可能な品目等について検討を行ってきた。

II  原料原産地表示のあり方
1.  原料原産地表示の基本的考え方
 加工食品の原材料の原産地は、品目により、消費者が適切な商品選択を行う上で重要な情報となる場合があり、このような場合にこれを表示という形で消費者に伝えていくことが望ましい。
 しかしながら、加工食品は、一般に非常に多くの原材料で構成されているので、製造業者が、これらの全てに原産地を表示することは事実上不可能であるとともに、消費者にとっても必要以上に細かな、見にくく、わかりにくい表示になってしまうおそれがある。
 また、国際的にも加工食品の原材料に関する原産地表示の一般的なルールは定められておらず、これを導入する場合には、品目選定の基準を含め合理的な理由に基づく必要がある。
 このため、消費者が適切に商品を選択するためにどのような品目について原料原産地表示が必要か、また、製造・流通の実態から信頼性のある原料原産地表示の実施が可能かという観点から、品目の特性に応じた原料原産地表示の導入について、国内的、国際的に十分説明可能な合理的な判断ルールを設定し、これに基づいて個別品目ごとに精査し、その結果に従って原料原産地表示を実施していくことが適当である。

2.  原料原産地表示を行う品目
 どのような品目に原料原産地表示を行うかは、消費者が適切に商品を選択するための必要性及び信頼性のある表示の可能性につき、下記の視点を総合的に判断して考えるべきである。

(1)  流通、消費段階で商品の差別化がされているか
 加工の程度が比較的低く原材料がおおむね原形を留めていること、言い換えれば生鮮食品に近い加工食品であること等により、原産地に由来する原材料の品質の差異が加工食品としての品質に反映されると一般に認識されており、その結果として原材料の原産地により価格等の違いが見られ、商品の差別化がされていることは、原料原産地表示の必要性を判断する基本的な要素である。

(2)  消費者に誤解を与えるような表示が行われている実態があるか
 加工食品の原産地が加工地であるというルール(注参照)を逆手にとって、表示において加工地をことさらに強調することにより、主要な原材料の原産地が別にあるにもかかわらず、加工地として表示された地域が当該原材料の原産地であると消費者に誤解を与えるような表示が行われている場合には、原料原産地表示の必要性が高いと考えられる。
(注)
  コーデックスの包装食品の表示一般規格(国際食品規格)では、「原産国以外で、食品の性質を変えるような加工が行われたとき、表示をする場合には、その加工が行われた国を原産国と見なさなければならない。」とされている。
また、公正取引委員会告示においても、「原産国とは、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国をいう。」とされている。

(3)  他の方法によって消費者の誤認を防ぐことは困難か
 業界の自主的な取り決め(公正競争規約)等により、加工食品の原産地表示に一定の基準を導入し、原材料の原産地につき消費者の誤解を防ぐことが可能な場合には、あえて原料原産地を表示する必要がないと考えられる。

(4)  原材料の安定供給が可能で、原料原産地がある程度一定しているか
 製品ごとに使用する原材料が一定しており、混合使用もされていない場合は、原料原産地を表示し易いが、原材料の原産地が時期により変わったり、又は複数の原産地のものを混合使用していてその比率が変動する場合は、その度に包装に印刷してある表示を変更することは、技術的・コスト的に困難な場合が多い。

(5)  適正な表示を指導し、また、事後的に確認する手法・体制は十分か
 適正表示のモニタリングのため、原料原産地の違いについて書類検査、官能検査、科学的分析を含め、一般的に実施可能であり、かつ、一定の信頼性を持つ識別の方法を持つ必要がある。また、このようなモニタリングを適切に実施していくためには、地方自治体及び事業者団体の積極的な取組みが必要である。

3. 表示方法
(1)  国内産原料の表示
 都道府県名等の国内の地域名まで表示するのか、国産という表示でよいのかについては、品目ごとに、上記2の「原料原産地表示を行う品目」に掲げられた視点を踏まえて、総合的に判断するべきであるが、一般的には、国産である旨の表示を原則とし、都道府県名については、それに加えて、あるいはそれに代えて任意で表示することができることとするのが適当である。

(2)  外国産原料の表示
 一般的には国名でよいと思われるが、品目の特性に応じて検討すべきである。

(3)  表示する原材料の範囲
 消費者の誤認を防ぐという目的を考慮すると、商品名にその名称が現れるような主要な原材料に限るべきである。

(4)  表示場所
 消費者の利便性を考慮すると、一括表示の原材料欄において、対象となる原材料の名称の後にかっこを付して原産地を表示することが適当である。

4. 実施方法
(1)  原料原産地を表示することが適当な品目については、加工食品品質表示基準(注)の特例として、JAS法に基づく個別品目ごとの品質表示基準で対応することが適当である。
(注)
   JAS法においては、一般的に記載すべき表示事項を、加工食品と生鮮食品に分けて横断的な品質表示基準を定め、加工食品品質表示基準では、名称、原材料名、賞味期限等を表示することとしている。

(2)  包材の変更を要すること等から、実施には一定の猶予期間を設ける必要がある。

III  梅干し及びらっきょう漬けについての検討
1.  本委員会においては、上記IIの1の基本的考え方を整理するに当たり、できる限り実態を踏まえた検討を行うため、従来から消費者や供給サイド等の要望が強い梅干し及びらっきょう漬けを例として関係者からヒアリング及び実態調査を行った。また、これを踏まえて、それぞれの品目の特性を踏まえた原料原産地の表示の必要性及び実行可能性につき検討を行った(別紙参照)。

2.  これらの検討を通じ本委員会としては、梅干し及びらっきょう漬けについて、原料原産地の表示の対象品目として取り上げることが適当であると考えており、農林水産省において具体的な品質表示基準の策定に着手することを望むものである。

3.  この場合に、原料原産地表示の的確かつ円滑な実施が図られるよう、梅干し及びらっきょう漬けに係る品質表示基準の策定手続きの中で、より専門的な立場から検討を加えることが必要と考える。

4.  なお、梅干し及びらっきょう漬けは、あくまで本委員会において例として検討したものであり、農林水産省においてはこれに限らず幅広く消費者のニーズや表示の実態等の把握に努め、これを通じて浮かび上がってきた品目について、それぞれ原料原産地表示の必要性及び実行可能性の検討を行っていくべきである。


(別紙)

梅干し及びらっきょう漬けについての論点整理


検討の視点 梅干し らっきょう漬け
1. 品目特性
(1) 流通、消費 段階で商品の差別化がされているか
原材料の原産地の違いにより相当の価格差がある
(国産原材料使用のものは外国産原材料使用に比べて2〜3倍程度高い)
 ┌
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 └
国産原材料と外国産原材料の量はほぼ同程度
国産原材料の過半は和歌山県産
外国産原材料の7〜8割は中国産、2〜3割が台湾産






原材料の原産地の違いにより相当の価格差がある
(国産原材料使用のものは外国産原材料使用に比べて2倍程度高い)
 ┌
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 └
原材料の9割以上が外国産で国産原材料は1割弱
国産原材料は福井県、宮崎県、鳥取県等、数県に分散
外国産は中国産がほとんど






(2) 消費者に誤解を与えるような表示が行われている実態があるか
消費者は国産原材料を使用しているものがほとんどと思っている
「紀州南部産」等と、原材料梅の生産地のことなのか、梅干しの加工地のことなのか、誤認しやすい表示がなされている
消費者は国産原材料を使用しているものがほとんどと思っている
「鳥取砂丘発」等と原材料らっきょうの生産地のことなのか、らっきょう漬けの加工地のことなのか、誤認しやすい表示がなされている
(3) 他の方法によって消費者の誤解を防ぐことは困難か
組合に加入していない事業者が多く、公正競争規約では実効をあげることは困難 組合に加入していない事業者が多く、公正競争規約では実効をあげることは困難
(4) 原材料の安定供給が可能で、原料原産地がある程度一定しているか
国産原材料使用の製品と外国産原材料使用の製品とでは価格差に大きな違いがあり、原材料の安定供給を図ることにより、製品ごとには使用する原材料は一定しており、混合使用もされていない 国産原材料使用の製品と外国産原材料使用の製品とでは価格差に大きな違いがあり、原材料の安定供給を図ることにより、製品ごとには使用する原材料は一定しており、混合使用もされていない
(5) 適正な表示を指導し、また、事後的に確認する手法・体制は十分か
科学的検証は、現時点では困難であり更に調査研究が必要
官能検査は、熟練者が行えば可能なものも一部あるが、一般には相当困難
書類上での確認は可能
和歌山県の事業者組合から強い要請
和歌山県、同県内市町村から強い要請
科学的検証は、現時点では困難であり更に調査研究が必要
官能検査は、熟練者が行えば可能なものも一部あるが、一般には相当困難
書類上での確認は可能
鳥取県の一部の事業者から要請
鳥取県から強い要請
2. 表示方法
当面、国産か外国産かの表示も考えられる(和歌山県意見)
国内産には都道府県名、外国産には国名が考えられる(福井県意見)
国内産は希少であり、そのことをアピールすれば十分ではないか(業界意見)
3. 実施方法
JAS法での対応を要望(和歌山県、同県内市町村、同県事業者組合)
零細事業者が多いこと、準備期間が必要なこと等から十分な経過措置が必要(業界意見)
表示の検証手法・体制の確立
JAS法での対応を要望(鳥取県)
零細事業者が多いこと、準備期間が必要なこと等から十分な経過措置が必要(福井県、業界意見)
表示の検証手法・体制の確立


(参考1)

加工食品の原料原産地表示検討委員会名簿


  岩村 好伸 全国農業協同組合連合会園芸販売部長

梅沢 昌太郎 日本大学商学部教授

  門間 裕 財団法人食品産業センター企画調査部長

  嶋沢 裕志 日本経済新聞社流通経済部編集委員
  金子 隆夫 (第5回検討委員会まで)

  近藤 和威 三菱商事株式会社穀物部長

  日和佐 信子 全国消費者団体連絡会事務局長

  藤井 良晴 全国農業協同組合中央会農業基本政策対策部部長

  藤本 昭 ジャスコ株式会社SSM商品本部デイリー&デリ商品部長

  吉田 節夫 キッコーマン株式会社常勤顧問

  渡辺 秀一 日本生活協同組合連合会安全政策推進室長

    ( 〇座長、五十音順、敬称略 )


(参考2)

加工食品の原料原産地表示検討委員会の開催状況


第1回  平成11年3月25日
 検討の進め方等について
第2回  平成11年6月29日
 原料原産地表示に関する調査結果について
第3回  平成11年10月29日
 梅干しについてのヒアリング
第4回  平成11年12月2日
 らっきょう漬けについてのヒアリング、論点整理
第5回  平成12年2月2日
 原料原産地表示のあり方についての論点整理
第6回  平成12年3月16日
 原料原産地表示のあり方とりまとめ検討


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