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平成15年5月16日

「健康食品に係わる制度のあり方に関する検討会ヒアリング申請書」


団体名: 在日米国商工会議所(ACCJ)

代表者: 栄養補助食品小委員会委員長 大濱 宏文

団体の概要: 1948年設立。現在約1,400社以上の企業を代表とする約3,200人が会員として加盟。日米間交易の発展に寄与し、会員企業の企業活動支援を主たる目的とする。


健康食品に係わる制度のあり方に関する意見

在日米国商工会議所は「健康食品に係わる制度のあり方」に関して、下記のとおり、意見書を提出させて頂きます。在日米国商工会議所は平成7年にいわゆる「健康食品」の規制緩和を目的として、「栄養補助食品の位置づけの明確化と規制の緩和」を市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)に問題提起いたしました。この問題提起では、「通常海外で食品として流通・販売されているものが医薬品として規制されることなく、食品として取り扱いできるようにするために、食薬区分の見直しを行うとともに、剤型規制の緩和、消費者が自分に必要なものを的確に選択できるように表示(効能効果表示、用法用量表示など)の規制緩和」を求めました。この要請は、市場開放問題の一環として捉えているばかりでなく、栄養補助食品が消費者に安全かつ適切に利用されることを目指したものでした。その後、OTO対策本部(本部長:内閣総理大臣;構成員:16閣僚)の決定を受けて、厚生労働省において4年間にわたり検討会が開かれ、その結果の一つとして保健機能食品制度が制定されたところです。しかしながら、在日米国商工会議所としては当初から、規制緩和の対象をすべての健康食品に置き、食薬区分の見直し、表示の規制緩和、剤形規制緩和等を重要な問題と捉えてきました。この観点に立てば、これまでに採られた保健機能食品制度では十分な結果が得られていないと思慮いたします。このような視点から、在日米国商工会議所は以下のように具申いたします。

(1) 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置づけるか。

 平成13年3月27日付で公布された「保健機能食品」制度に基づいて、従来から存在していた健康食品は「いわゆる健康食品」として、一般食品に位置づけられ、薬事法、食品衛生法、健康増進法などの法制度の下に規制されています。しかしながら、「健康食品」は平成11年度厚生科学研究「いわゆる栄養補助食品等の流通実態と食品衛生に関する研究」において報告されていますように、国民の約40%が健康食品を摂取した経験を有しており、疲労回復、健康増進などの明確な摂取目的をもって摂取している人が多いことが明らかになっています。一方で、健康食品の日本における市場は1兆円を越えたとも言われています。国民が、このように高い関心を寄せている市場が、絶えず「いわゆる」つきのあいまいな存在で置かれること自体に不自然さを感じます。しかも、上記の調査結果によれば、健康食品がかなり明確で、かつ具体的な目的を前提として摂取されています。このような目的や摂取理由は、様々なメディアや書籍、雑誌、講演などの媒体を通して消費者に伝えられる、健康食品に含有される成分の有効性に関する情報に基づいて認識されたものです。学会や専門学術雑誌に公表される研究報告も、いまや一般消費者の目に触れる機会が増大しています。このような情報に基づいて、消費者は健康食品になんらかの効果を期待して摂取しているのが現状であると判断できます。
 しかしながら、現行の法規制は、健康食品に健康維持・増進以外の効能的な表現を認めていません。したがって消費者は、上記の学会で報告された研究成果や、真偽の程が定かでないような情報などが混在する、玉石混淆の情報に基づいて、製品を選択・購入している状況が存在しています。
 したがって、「健康食品」の置かれている市場の現状を適切に認識して、「健康食品」が国民にとって、その本質的な役割(健康の維持・増進、疾病に対するリスクリダクションなど)を果たすことを可能にすると同時に、製品の安全性と品質を確保するために、新たに健康食品を包括的に取り扱う「健康食品法(仮名)」を制定して、一般食品とは異なる健康食品の立場を明確に位置づけることが急務であると判断します。なお、現行の「保健機能食品」では、一般の食品と健康食品を区別せずに一体化して取り扱われているために、不都合が生じている部分もあると判断します。したがって、健康食品を一般食品と切り離して取り扱うことが肝要であると考えます。

(2) 「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

 健康食品の日本市場における現状は、上記(1)に記したとおりです。「健康食品」を包括的に取り扱う法規制は現在存在しておらず、上記のごとく薬事法、食品衛生法、健康増進法、特定商取引法、景品表示法などの様々な法制度の下にかなり複雑な規制を受けています。このような、「健康食品」に係わる法規制を十分に把握して、遵守するためには高度の法知識と経験と判断力が要求されます。まして、国民にとってみれば、上記の状況を的確に理解することは無理に近い状況と思われます。
 しかも、一方で健康食品に関する情報(主として有効性を中心とした)が玉石混淆の状態で、様々な形態をとりながら飛び交っている現状では、国民は適切な判断手段を欠いたまま、製品を購入することを余儀なくされています。さらに、このような事態は製品の利用・流通・製造に対しても混乱を生み出していると考えられます。したがって、国民は、製品の判断・選択・購入・利用等に際して自らのいわば試行錯誤的な経験を通して、結論を下し、使用しているのが実態ではないかと思慮いたします。
 それゆえ、「健康食品」の流通に際して、製品に対する情報の透明性、流通のトレーサビリティー、使用者が自らの目的に応じて摂取できるための有用性に関する表示、適切な摂取を可能にするための用法用量に関する表示を考慮した法制度化が必要であると考えます。したがって、(1)に記しましたように、新たに健康食品を包括的に取り扱う「健康食品法(仮名)」を制定して、一般食品とは異なる健康食品の立場を明確に位置づけることが急務であると判断します。

(3) (1)及び(2)を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。

 制度については、上記(1)および(2)に記載しましたので、ここでは繰り返しません。
 それぞれの役割については、「健康食品」自体が今後の食生活、国民の健康に大きな影響を与える存在であるという認識を明確にし、「健康食品」の枠組みを明確にし、それぞれの果たすべき役割の範疇を明らかにする必要があります。これは、一見、自明の理であると考えられますが、現在の混乱が存在する状況では重要なことであると考えます。実際に、この業界と制度が抱えてきた問題点を明確化にし、健康食品が最終的には国民のためのものであるという認識の下に、健康食品を国民が適切に利用できるための法制度化と不良品(違反品を含む)を排除できるシステムの設置が早急に望まれます。
 上記に伴って、最も重要な課題として、「健康食品」の製品及び原材料の安全性、有効性、品質などに関する情報を消費者に提供するシステムを設置することが挙げられます。特に、科学的な根拠の曖昧なあるいは科学的な根拠のない、国民をミスリードする情報をどう排除するかという基本的な問題の解決が必要です。このための責任は、行政、学会、業界それぞれが負わなければならないと思慮します。いわば産・官・学との間での密な情報・意見の交流の場を作ることは、具体的な対応の重要な鍵になると考えます。様々な制度化、取り扱い、政策決定の場に産業界の参加を認めて、十分な現状認識と意見の交流を可能にする事が具体的な対応になると思います。このような状況下においてこそ、業界に対して現状認識の適正化、自浄作用、責任の取り方などに真剣に取り組むことを促すことになると考えます。
 一方、消費者の立場では、「健康食品」に対する正しい知識を身につけ、必要な情報を入手するように心がけ、正しい判断の下に健康食品の適切な摂取を心がけるべきです。これに合わせて、健康障害などの不都合を生じた場合には、速やかに報告する必要性を理解し、またこれを可能にする制度化が早急に望まれます。

結論として、健康食品に係わる制度の基本的なあり方を、次のように考えます。
1. 消費者に対して適切な情報を提供する体制を整備する。
2. 健康食品が適正に利用できるための制度的、及び社会的枠組みを整備する。
3. 具体的な製品の選択と利用は、上記の1.及び2.に基づいて国民が個々の状況に応じて行う。
4. 健康食品の摂取によって、万が一健康被害等の不祥事が発生した場合、またはその恐れがある場合に適切な対応が取れる体制を整備する。
(上記の1.2.及び3.は平成8年12月18日付けの(公衆衛生審議会の意見具申)を参考にしたものである。)


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