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第10次の労働災害防止計画の概要


 「職場内のリスクを低減し、すべての働く人々の安全と健康の確保を目指して」
(労働安全衛生法第6条に基づく計画)

1 計画のねらい
 (1) 基本的考え方
  ○ 働く人々の安全と健康を確保することは、最も重要な国民的課題の一つ
  ○ 企業における労働災害防止対策の更なる推進
  ○ 働く人の環境の変化に対応

 (2) 本計画の基本方針
  (1)  死亡災害の撲滅

  (2)  中小企業における安全衛生の確保

  (3)  業務上の心身の負担の増大等に対応した健康確保対策の推進

  (4)  リスクを低減させる安全衛生管理手法の展開等

  (5)  就業形態の多様化、雇用の流動化等への対応

 計画の期間
 本計画は、平成15年度を初年度とし、平成19年度を目標年度とする
5か年計画

3 計画の目標
 (1)  労働災害による死亡者数の減少傾向を堅持するとともに、年間 1,500人を大きく下回ることを目指し一層の減少を図ること

 (2)  計画期間中における労働災害総件数を20%以上減少させること

 (3)  じん肺、職業がん等の重篤な職業性疾病の減少、死亡災害に直結しやすい酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等の撲滅を図ること

 (4)  過重労働による健康障害、職場のストレスによる健康障害等の作業関連疾患の着実な減少を図ること

4 労働災害防止を推進する上での課題
 (1)  労働災害の動向からみた課題
 (2)  労働者の健康確保をめぐる課題
 (3)  転換期の産業社会における安全衛生面の課題
 (4)  安全衛生管理をめぐる課題


5 重点対象分野における労働災害防止対策
 (1)  業種別労働災害防止対策
ア 建設業対策、イ 陸上貨物運送事業対策、ウ 第三次産業対策

6 労働者の健康確保対策
 (1)  職業性疾病予防対策、化学物質による健康障害の予防対策
 (2)  メンタルヘルス対策
 (3)  過重労働による健康障害の予防対策
 (4)  職場における着実な健康確保対策  等

7 安全衛生管理対策の強化
 (1)  中小規模事業場対策
 (2)  労働安全衛生マネジメントシステムの活用促進  等


第10次労働災害防止計画(平成15年度から5か年間)抜粋

4.(2) 労働者の健康確保をめぐる課題
    化学物質による健康障害の発生状況等
 現在、我が国の産業界で使われている化学物質は、約55,000種類を数え、毎年新たに500以上の化学物質が労働の現場に導入されている。また、化学物質の有害性も、発がん性、生殖毒性、神経毒性等多岐にわたっており、新たな知見により有毒性が明らかになるものもある。
 さらに、製品寿命の短縮、多品種少量生産等が進む中、化学物質が取り扱われる職場環境、作業形態等は、固定的でなく変化している状況にある。
 このような状況で化学物質による職業性疾病が年間300件程度引き続き発生している。有機溶剤、一酸化炭素による中毒及び酸素欠乏症等も依然として後を絶たないほか、様々な化学物質による健康障害が発生している。石綿による肺がん及び中皮腫等の職業がんの労災認定件数も増加する傾向にある。また、一部の職場において、化学物質に係る作業環境は依然として改善が必要な状況にある。
 さらに、廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類、いわゆる「シックハウス症候群」に関連した微量の化学物質による健康リスクなど、化学物質による健康問題に対する社会的な関心が高まっている。
 PCB廃棄物の無害化処理、化学物質に汚染した土壌の処理作業等、従来の化学物質の製造、取扱い作業とは異なる作業において、有害化学物質にばく露し健康障害が生じることも懸念されている。
 また、国際機関等において、化学物質の危険有害性の分類、表示等について様々な取組がなされており、これらの国際動向を踏まえた化学物質の管理も必要である。

6. 労働者の健康確保対策
 (2)  化学物質による健康障害の予防対策
 化学物質による健康障害を予防するため、化学物質の健康影響や労働者のばく露に係る国内外の情報の収集、化学物質による職業性疾病の発生事例の分析、国際貢献の観点も踏まえた日本バイオアッセイ研究センター等における化学物質の効率的・効果的な有害性の調査及びばく露状況の調査の実施を促進し、計画的かつ科学的に化学物質のリスク評価を行い、その結果に基づき、未規制の有害な化学物質による労働者の健康障害の予防対策を迅速に推進する。
 また、職場で取り扱われる化学物質が多様で、作業形態等が固定的でなく変化している状況等に対応するためには、労働安全衛生法第58条の指針等に基づく、化学物質管理計画の策定、リスクアセスメントの実施及びその結果に基づく安全サイドの必要な措置などの事業者による自律的な化学物質管理の促進が必要である。
 これらの事業者の取組を支援するため、効果的な実施方法の検討を行うとともに、事業者に対して、広範な化学物質に係る有害性情報、ばく露情報、リスクアセスメント事例、化学物質による健康障害の事例の提供、MSDSの普及・充実のためのデータベースの整備、化学物質管理を担当する者への研修等を行う。
 さらに、国際機関による行動計画等に基づき、化学物質の危険・有害性の分類、MSDSを含めた表示方法の統一、開発途上国への支援等が求められており、これらを踏まえた表示制度の検討、整備等を行う。
 がん原性を有する物質等、特に有害性の高い化学物質等については、専門家による検討等を踏まえ、その予防対策を推進するとともに、有害性が低い化学物質等に代替することが本質的な安全化につながることから、有害性の高い化学物質等の代替化を促進する。
 特に、石綿については、国民の安全等のため必要なものを除きその使用等の原則禁止を速やかに図るとともに、建築物の解体作業等における労働者のばく露の防止対策の徹底等を図る。
 廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類、いわゆる「シックハウス症候群」に関連した化学物質、PCB廃棄物の無害化処理作業や化学物質に汚染した土壌の処理作業等における有害化学物質のばく露防止対策、内分泌かく乱物質に係る調査研究、有機溶剤や一酸化炭素による中毒防止対策及び酸素欠乏症等防止対策の推進を図る。
 新規化学物質による健康障害を予防するため、新規化学物質を製造・輸入する事業者による有害性調査及びその結果に基づく健康障害防止措置の効率的でかつ効果的な実施を図る。
 作業環境管理については、個人ばく露量の測定の活用に係る検討を含め、作業の実態に合った測定方法を確立し、屋外作業場における有害な化学物質へのばく露の低減を図る。また、作業環境測定結果を活用した効率的かつ効果的な作業環境管理の手法の確立を図り、化学物質のばく露防止対策の実施を促進する。作業環境測定結果による管理区分を決定するための指標である管理濃度については、科学的知見を踏まえ、その見直しを図る。さらに、防毒マスクについては、その性能の確保を図るため買取試験を実施する。


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