第14回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事次第
日時: | 平成15年5月13日(火) 13:00〜17:00 |
場所: | 中央合同庁舎第5号館17階専用第18会議室 |
議題: |
1. | 開会 |
2. | 前回議事録確認 |
3. | これまでの研究成果について 試験スキーム 低用量問題 採取・分析法 リスクコミュニケーション 暴露と疾病について |
4. | その他 |
5. | 閉会 |
〔出席委員〕
伊東座長 | |||
青山委員 | 井口委員 | 井上委員 | 岩本委員 |
押尾委員 | 菅野委員 | 紫芝委員 | 鈴木(勝)委員 |
鈴木(継)委員 | 高杉委員 | 武谷委員 | 津金委員 |
寺尾委員 | 中澤委員 | 西原委員 | 藤原委員 |
眞柄委員 | 松尾委員 | 山崎委員 | 和田委員 |
〔招聘者〕
岸 玲子先生、吉川 肇子先生、牧野 恒久先生
〔事務局〕
鶴田審議官、松田化学物質安全対策室長、他
〔オブザーバー〕
農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省、水産庁、海上保安庁
○事務局
本日はご多忙中のところ、第14回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まずは、事務局より事務的な連絡等をさせていただきます。本日は、阿部先生、酒井先生、櫻井先生、寺田先生、安田先生の5名の委員がご欠席ということで、計21名の委員の方々で検討会を進めさせていただきたいと思います。また、武谷先生は診療があるため遅れてお見えになること、井口先生、眞柄先生は所用のため途中でご退席されるということを、あらかじめご連絡いただいております。
それでは、まず開会に先立ちまして、医薬担当審議官の鶴田より一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
○鶴田審議官
医薬担当審議会の鶴田でございます。本日は、各委員の先生方に大変お忙しいところをこの検討会にご出席していただきまして、誠にありがとうございます。
この検討会におかれましては、平成10年4月に設置されて以来、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する諸問題につきまして鋭意ご検討していただいてきているわけでございます。座長の伊東先生を初め、各委員の先生方の多大なるご尽力につきまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。一昨年12月には、必要な調査研究等につきまして行動計画を取りまとめていただいたところでございます。
本日は、この行動計画に従いまして進められてきました厚生労働科学研究におけますこれまでの成果についてご発表をいただいた上で、内分泌かく乱化学物質に対する取組を更に一歩前進させたいということで、忌憚のないご意見をいただければというふうに考えるわけでございます。
厚生労働省といたしましては、この検討会の意見を十分に踏まえまして、国民の健康、安心を確保するための施策に着実につなげていきたいというふうに考えておりますので、先生方におかれましても引き続きご支援、ご協力のほどお願いさせていただきましてあいさつに代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
よろしくお願い申し上げます。
続きまして、本検討会の委員の交代がございましたので、紹介させていただきます。今回から、黒川雄二先生に代わりまして委員となられます国立医薬品食品衛生研究所毒性部の菅野純先生でございます。
○菅野委員
菅野でございます。よろしくお願いします。
○事務局
なお、本日の会合におきましては、幾つか関連の厚生労働科学研究の研究班からご報告をいただきます。事前に座長とも相談をさせていただきまして、委員以外の関係者にもご出席をお願いしてございます。
本日の発表順にご紹介申し上げます。東海大学医学部の牧野恒久先生でございます。北海道大学大学院医学研究科の岸玲子先生でございます。慶應義塾大学商学部の吉川肇子先生でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、座長の伊東先生、よろしくお願いいたします。
○伊東座長
本日も大分長い時間ご検討いただくことになると思いますが、よろしくご協力方、お願い申し上げます。
それでは、議事次第に従いまして、まず事務局から説明をお願いします。
○事務局
それでは、資料の確認をさせていただきます。各委員並びに関係の先生方には、事前に資料を郵送させていただいております。そのうち、改訂いたしました資料二種類、及び事前にお送りしていない資料の二種類を本日机の上に置かせていただいております。差替え及び追加の上、ご確認くださいますようお願いいたします。
それでは、資料1−1改1といたしまして「議事次第」でございます。資料1−2として「委員等名簿」、資料1−3として「座席表」、資料2として「第13回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 議事録」、資料3−1−1として「中間報告書追補 行動計画」、資料3−1−2として「OECDの関連組織」、資料3−1−3として「OECDの内分泌かく乱化学物質試験評価概念枠組」、資料3−1−4として「OECD/EDTA6の結果概要」、資料3−1−5として「OECD/EDTA第1回VMG Non-Animal 会合報告書案(概要仮訳)」、資料3−1−6といたしまして「OECD/EDTA第4回VMG Mammalian 会合報告書案(概要仮訳)」、資料3−1−7として「拡張試験スキーム」、資料3−1−8改1として「「げっ歯類一生涯試験」について」、資料3−2−1として「DESプロトコル具体案等」、資料3−2−2として、「低用量文献の評価(追補)」、資料3−3−1として「生体試料中内分泌かく乱化学物質分析法ガイドラインの方向(案)」、資料3−3−2として「分析法妥当性確認のスケジュール」、資料3−3−3として「動物実験信頼性」、資料3−4−1として「内分泌かく乱化学物質リスクコミュニケーション調査結果概要」、資料3−4−1付録として「内分泌攪乱物質に対する意識調査の単純集計結果」、資料3−4−2として「ガイドラインの方向(案)」、資料3−5−1として「測定結果(ビスフェノールA、ノニルフェノール、フタル酸エステル)」、資料3−5−2として「尿道下裂等研究結果」、資料3−5−3として「症例内対照研究(がん)結果」、資料3−5−4として「海外文献調査結果」、資料4−1として「IPCSグローバルアセスメント(概要仮訳)」でございます。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。配付資料について何か不備がございましたら、どうぞお申し出ください。よろしゅうございますか。
それでは、次に、前回議事録の確認に入りたいと思います。これにつきまして、事務局からご説明ください。
○事務局
それでは、資料2をごらんください。前回第13回会合の議事録は速記録をもとに作成いたしまして、出席された委員の方々には既に内容をご確認いただいております。特段の問題がなければ、この内容で確定の上、公開の手続に入らせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○伊東座長
よろしゅうございますか。ありがとうございました。
それでは、議題3のこれまでの研究成果につきまして、事務局の方から簡単にご説明お願いいたします。
○事務局
それでは、試験スキーム以下につきまして、項目ごとに事務局の方からご説明させていただきます。
まず、試験スキームにつきましてでございます。資料3−1−7をごらんください。前回の検討会にてご了承いただきました拡張試験スキームでございまして、in silico とin vitro、in vivo の試験によりまして優先リストを充実させていきまして、その過程で物質は除外されない、その後、これから開発される詳細試験によりまして有害性の同定を行い、リスク評価につなげていくというものでございまして、これらの研究の進捗状況につきまして、OECDでの取組と併せ、菅野先生より後ほどご発表をいただきます。
資料3−1−2をごらんください。2ページ目にOECDの取組体制を図式化したものを用意させていただいております。OECDにおきまして化学品プログラムという事業で、加盟各国により意思決定を行う場である合同会合の下に、幾つかの作業グループとタスクフォースとがございまして、うちOECDの試験法ガイドラインを作るWNTという作業グループに報告をする組織として、内分泌かく乱化学物質を専門に議論するEDTAというタスクフォースがございます。そのタスクフォースの更に下に mammalian、non-animal、eco というVMG、すなわち各試験系の開発に関する専門的技術的作業を行うグループが置かれているわけでございます。
資料3−1−3をごらんください。昨年6月、東京にて開催されましたEDTAの第6回会合におきまして、OECDとして各般の内分泌かく乱化学物質に関する試験系の整理分類を刷新したもので、「概念枠組(Conceptual Framework)」と呼ばれるものでございます。
概念枠組のレベル2というものが上から二番目にございますけれども、このレベル2に相当する試験法の開発等を担当するVMGを設置することがこの第6回のEDTAで合意されまして、VMG non-animal の第1回会合が去る3月に開催されております。ここにおられます菅野先生がその座長を務めておられます。その概要につきましては、資料3−1−5として用意させていただいております。
それから、概念枠組のレベル3とレベル4につきましては、VMG mammalian というところで、これは従来よりバリデーション作業等が行われてきておりまして、これにつきましても第4回会合がつい先月、4月に開催されております。ここにおられます井上先生がご出席されております。OECD事務局作成の報告書の仮訳を資料3−1−6として用意させていただいております。
それから、資料3−1−8改として用意させていただいておりますが、げっ歯類の一生涯試験の基本的考え方につきまして、井上先生がVMG mammalian 会合におきまして各国専門家に対して技術的側面から紹介をしていただいております。各国等の反応がその資料3−1−8改の3ページ上段に記載されているところでございます。先ほど申し上げました拡張試験スキームにおける中間的な作業におきます優先物質リストを作成するに当たっての各試験系の相関ですとか、甲状腺その他の系を追加する必要性如何、それから詳細試験としての一生涯試験の開発如何等につきまして、OECDの取組と併せ、菅野先生の方からご紹介、ご発表をいただければと思っております。また、VMG mammalian 会合に出席されました井上先生の方からも、一生涯試験につきまして後ほどご説明をいただければと考えております。
それでは、菅野先生、よろしくお願いします。
○菅野委員
それでは、資料3−1の前半の方をかいつまんで二〇枚ほどでご説明させていただきます。タイトルは試験法と国際的対応という意味でのOECDというふうにさせていただきました。
この表は、前回にもお見せいたしました国内及び国外の主要な内分泌かく乱化学物質試験法等の開発及び運用にかかわっている大まかなグループの流れで、厚生労働省は、米国EPAと基本的に似たようなスターティングポイントとして、身の回りに数万種類あるであろう化合物をスタートにするということですので、スクリーニング試験がないと、2万物質を片っ端から詳しい試験をやったところで、お金も足りないし時間もかかる。そういうことで、スクリーニングの方法を開発すると同時に、内分泌かく乱の有害性をきちんと示す試験法を改良、あるいは作り出す、そういうストラテジーで黄色いところになっております。
OECD、WHOは、OECDの方が具体的な方策で、WHOの方がグローバルアセスメントという形で国際的に動くという住み分けをされているはずでして、前回のこの絵と変わっているのは、OECDでEDTA6というものが行われて、レベル1から5という表ができてきた。WHOの方は、グローバルアセスメントがはっきりとした形で出た。厚生労働省、経済産業省、ここら辺で共同でやっておりますハイスループットスクリーニングに関しましても順調にデータが出ているということで、このOECDの枠組との協力体制を進めさせていただくに当たって、こちらの検討会でお墨付きをいただけるものはいただき、そういうことも含めて本日発表させていただきます。
これが前回からお示ししているところの拡張試験スキームでありまして、この前のバージョンは、ひな壇みたいに横何段かの種類の試験が積み重なっていまして、それが直線に落っこちていく絵だったのですが、こちらでは優先リストというものを作るという前段階のスクリーニングと詳細試験というテスティングの関係をよりはっきり明らかにしたバージョンの新しいもので、この優先リストは in silico 、in vitro、in vivo の試験データを基に、中身はエクセル表のようなものを概念的に思い浮かべていただければいいのですが、化合物の数は増やしたり減らしたりせずに順番を入れ換えていく。新しい知見が入り次第、その物質の順番が入れ替わるという形で、何を言っているかといいますと、この段階ではもう調べなくていいよというような化合物を、基本的にホールドしない。ありとあらゆる情報を基に、真っ先に詳細試験と申します最終的な試験にかける優先順位を決めていくためにこういうリストを作るということであります。
では、現状でどんなふうになっているかという中身をちらっとだけ、ビスフェノールAを代表にお示ししますと、これは我々のところでやっているわけですが、in silico でソーティングしたときのごく一部、2万ケミカルを in silico でやったときの、実はこれはトップをエストラジオールに置いて、一番下はビスフェノールAでぱーっとやったのですが、細か過ぎてお見えになれないと思うので中身をお見せしますが、いろいろな方法でやっておりますが、1つはドッキングモデルですね。エストラジオールがスコアがマイナス幾つというときにビスフェノールAがこのくらいと。
最近の改良版でレラティブ・バインディング・アフィニティー(RBA)が出るような手法を今開発してもらっておりまして、これは医薬分子設計研究所の板井昭子博士のところとの共同研究ですが、エストラジオールのRBAが 1.4 のときビスフェノールAが -1、大体3けたぐらい違うよというデータが出るようなプログラミングを今やっているわけです。
そういうことと、これは化評研(CERI)との共同で1999年からやっている Hela細胞を用いたレポーター・アッセイですが、エストラジオールがこういう反応を示すときにビスフェノールAはこういう反応と。EC50 で比べると、この場合は4けた半から5けた、レポーターの活性が違うという今までどおりのデータが出るわけです。
これはOECDの子宮肥大試験のプロトコル、今提案というか、最終段階になっていると思いますが、それによるアゴニスト活性とアンタゴニスト活性を同時に見る子宮肥大試験の結果です。一番右のカラムは、ポジティブコントロールであるところのエストラジオールでして、これで系が反応している。そこに対して、いろいろな量のビスフェノールAを皮下投与すると子宮が腫れる。こういうデータが子宮肥大試験の典型的なデータになります。こちらは既知量のエストロゲンに対してビスフェノールAを足していきますと、エストロゲンで腫れていた子宮がかえって縮むというデータです。ですから、ビスフェノールAは、単体ではエストロジェニックでありますが、エストラジオールがあるところに加えると、じゃまをするという両方の性質を持っているということがこの試験から分かります。
このような状況が国内ででき上がってきているということで、今簡単なご報告なわけですが、こういうことでプライオリタイゼーションのリストが徐々にできつつあるという段階であります。
OECDはEDTA6でレベル1から5までのコンセプチュアルフレームワークというのを出しました。これは、どの順番にやりなさいという指示は特にはなくて、こういう in vitro でやるときにはこんなものがありますよというようなたぐいのリストになっているというふうに考えております。
私がこの3月に行かせていただいたVMG non-animal というのは、このレベル2の中身に関してOECDレベルでどういうことができるか、あるいは厚生労働省としてどういう参加ができるかということを行った会議であります。バイディングアッセイ、トランスクリプションアッセイ、アロマターゼ合成阻害、HRに関して、あとQSARs、あとサイロイドファンクション、あと一部エコ、フィッシュとか、そういうものが入りました。
VMG non-animal という会議の目的は、詳しい資料が配られていると思いますが、OECDのガイドラインまたはガイダンスとして採用できるものを把握し、あるいは提案する。見込みのあるものに関してはバリデーションをどうしようかという国際的なすり合わせを行うということであります。
当日、取り上げられた議題は、受容体結合、あとアロマターゼ、ステロイド産生、レポーター・アッセイ、in silico 手法、その他 in vitro の細胞あるいは組織の試験ということになります。
厚生労働省のデータとして私の方から発表してきたのは、無細胞系の方法1つとレポーター・アッセイ、それとQSARsであります。in silico 、QSARsの方は何回もお示ししておりますが、ドッキングモデルを引き続き進展させております。報告の内容は、ACD(アベイラル・ケミカル・ディレクトリ)というデータベースがございますが、これの 2万幾つかの化合物を何回かバーチャルスクリーニングした。大体 2,000 化合物ぐらいがビスフェノールAあるいはビスフェノールB、そこら辺の弱めのエストロゲンを含んで拾えてまいります。
会議のときの危惧の一つは、こういう in silico をやると、膨大な擬陽性を選んでしまって収拾がつかないのではないかという意見があったのですが、実際にやってみるとそれほどでもなくて、取り越し苦労でありました。2,000 選びますと、その中にはたくさんステロイド骨格のものが入ります。ですから、それを除いていきますと、1,000 とか、そういう形になって、その中で今まで見たこともないなというフッ素がついたようなのとか、そのようなものはまた更に少なくなりますので、そういう意味では、2,000 といって多いなと思われても、それよりももうちょっと少ないものが見落とされないようにという形で拾われてまいります。
平成14年度、どのような進捗があったかといいますと、先ほどお示ししたRBAを、要するに実際の親和性の指標として計算し直すということを今やっております。問題点は若干ありまして、ポケットをちょっと広めにとったものですから、というのはタモキシフェンの構造をまず使った、ヘリックス12がふたをしていないものの方がまずいろいろとれるだろうということで、それでやってしまったので、若干フォールスポジティブが多いのですが、ここら辺を改良する余地があるということでありますが、優先順位づけのリストを書くというためには一応使えそうであるという段階に来たということでOECDにも報告をいたしました。
あと、レポーター・ジーン・アッセイは、繰り返しになりますが、経済産業省、CERIとの長い共同研究をやっておりまして、ERα/βに関してはアゴニスト/アンタゴニストのデータがたまっております。アンドロゲンの系は、現在開発中、あるいは進行中という段階です。
もう 1個、OECDで発表してきた無細胞系は、何回もここでもお示ししている表面プラズマ共鳴の方法でありまして、かなり完成してまいりました。1つのチップにEREと、この場合TIF2のLXXLですが、DNAバインディングとコーファクターのバインディングのアフィニティーを、チップといいますが、同時に一つのフローで見てしまえるような系ができました。
今年度の進捗は、このERβ系をつくった。αができているのだから、βはすぐできるだろうとお考えでしょうが、若干バッファーの調整に手間取りました。やはり蛋白質が相手なものですから、バッファーの組成を変えてしまうとグラフのとれ方が非常に動くものですから。一応できたということであります。
そういうことを厚生労働省から発表しまして、経産省の方からもいろいろ発表があり、それからアメリカ、EPAからもあった。また、BIACとか、ヨーロッパの方からもありました。
その第1回目VMG non-animal で最終的に取りまとめられたコミットメントとその後の予定なのですが、受容体結合試験は、米国のEPAがある程度面倒見ましょう、仲介役をやろうと。アロマターゼ、ステロイド産生は、日本側はKGN細胞(ヒト卵巣顆粒膜細胞)の試験、米国はH295、これは何の細胞だったか忘れてしまいましたが、これを使っているのですが、これは一応CERIの武吉先生が調整する。レポーター・アッセイはCERIの方でロボットを持っておりますので、彼が世界的に一番データが出せる立場におりますので、そういうことでこれも武吉先生が面倒を見て、世界レベル、OECDレベルである程度まとめていこうと。
QSARsに関しては、うちのドッキングモデルが使えるのではないかということに関して、米国の方からは非常に強い関心が寄せられましたが、ちょうどこの会議と数日ずれて、OECDで別のQSARsの会議があったものですから、それと合流してから考えましょうという形になっております。
あと、in vitro というのは、主に甲状腺を扱うテーマに話が行きまして、ICAPOという団体が出してきたDRP(ディテールド・レビュー・ペーパー)、まとめの書類をOECDレベルで作るのの下働きをしてくださいというような約束事項が取り交わされました。
こちらの検討会議で、今後、厚生労働省からOECDに提案したりするときに、このような形で出してよろしいでしょうかということで、毎回お願いというか、アプルーブメントをいただいているわけですが、一応エストロゲンの系は大体この3要素そろったというふうに思います。
アンドロゲンの系も大体そろいつつあって、一つ in vitro の系の細胞の系がちょっと不安定ですが、大体いくだろう。ただし、アンドロゲンの系は受容体結合試験だけはやはりできてないですね。タンパク質で純品がとれないものですから、大腸菌でたくさん作ることはできるのですが、全部溶けないで沈殿してしまって反応しないのですね。ですから、今のところ受容体はできないのですけれども、レポーター・アッセイ等はできるだろうということで、ある程度いく。
ここの場で、もしお時間があって論議していただけるとすれば、甲状腺の関連の扱いでして、一つは甲状腺ホルモン受容体(TR)に結合する物質というのはどうも余りたくさんない。むしろ、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)活性阻害物質の方が一般的には多い。そういう意味では、化合物の数からいうと、どうもTRを阻害する物質よりはTPOを阻害する物質の方がうんと多いのであろう。スクリーニングはどうしたものかということでありまして、ペロオキシダーゼ阻害は、今までのような28日間試験とか、それに準ずる試験である程度見れるのではないかという意見と、もっと短くてもいいのではないか、あるいは in vitro の試験が酵素阻害でいいのがあればそれで代用できるかというクエスチョンで、レポーター・アッセイは「開発し」と書いてありますが、一部利用可能なものがあるはずですので、それでやっていって、非常にまれながら甲状腺受容体を介する応答が出るものに関しては、ほかに試験法がないと考えれば、検体数が非常に少ないはずですから、即座に詳細試験にいってしまってもいいのかもしれない。ここら辺の論議をもしお願いできれば、お時間の許す限りしていただけると、ER、ARに加えて、甲状腺のスキームもOECDとかに対してある程度提案できるのではないかというふうに思います。
その他の系に関してはいろいろありまして、時間もないですし、まだまとめていないので、常に注意を払うという形でここの場は勘弁させていただきます。
次は、次にお話しになる井上先生とオーバーラップしまして、拡張試験スキームの詳細試験をどう扱うかということであります。一つの提案は、げっ歯類の一生涯試験という概念を持ち込めないかということであります。内分泌かく乱というのが生殖毒性だけではもう語れなくて、神経、内分泌、免疫とか、レセプターとかシグナルを共有するホメオスターシスの系全部を巻き込んだものであろうと。生殖毒性のような強烈な毒性を発揮するものはそれほど多くはないけれども、胎生期暴露から大人になって何か出てくるというところに関しての包括的な試験法が必要になるのではないかということであります。
要するに、世代試験の改良といってしまうと、どうしても生殖試験のにおいが強い。生殖毒性試験にちょろっと改良をすればいいのかなという形で、どうもまとまらないし、概念的に統一できないと考えまして、むしろ生殖毒性も含めた形で一生涯見るのだと。要するに受精ごろから死ぬまでを一応スパンに入れて、従来のエンドポイントも見ますが、神経とか免疫、あるいは老化に絡むことまで見ていくということであります。
なぜそのようなことを申し上げるかというと、上段が仮に多世代試験の一番簡単に書いたプロトコルとしますと、親を育てまして交配させて子どもを産ませる、その間ずっと暴露しておいて、F1が生まれたら、離乳時に大多数殺して影響がないか見るわけですが、そのときにちゃんと子どもが生まれるか。その子どもをまた親にしてもう一回産ませて、また子どもが生まれるか。これが多世代試験の原則だと思うのですが、この場合の観測点というのは、従来法では離乳する時点とか次の代を産んだ直後に終わりということで、原則的には余り長く見ないのですね。つまり、生殖能力にかかわるところ、あるいはそれの成熟にかかわるところのエンドポイントが主体であるということであります。
それに対して、今、概念的に出そうとしているのは、受精して、子どもが生まれて、離乳して、それ以降死ぬまでの間の種々雑多な神経的な影響とか、そういうものをまず見ていこうアイデアにちょっと頭を切り換えるということであります。
暴露の形態も、いわゆるボンサールらがやってような暴露ですと、実を言いますと、ここら辺の胎生期の7日から11日という非常に短いところになるわけですが、暴露の形態も胎生暴露の後期影響という見方もできますし、全体を暴露してしまうという見方もできますが、ここの概念で提唱したいのは、いろいろ行われつつある試験のプロトコルをずっとこれに並べていって、その中から必要なものだけを取捨選択して、一通り影響を見たい、そういう概念であります。
長くなりましたが、こういう概念を提唱しつつ、最初にお見せした試験スキーム、優先リストを作って、それを詳細試験で流すというところの全体像を徐々に具体的なものにしていこうということであります。
以上です。
○伊東座長
ありがとうございました。それでは、ご報告にありましたように、外因性の化学物質の内分泌かく乱作用によって生じるヒトの健康影響を最終的に確認するという試験として、げっ歯類の生涯試験ということがOECD、その他国際的な連携の下に進められるということでありますが、これにつきまして何かご意見がございましたらどうぞ。
○眞柄委員
OECDのプロトコル自体、大変分かりやすいし、拡張試験スキームもよく理解できるのですが、問題は in vitro なり in vivo の試験結果が、今から井上先生がお話しになるような in vivo の生涯試験にどの程度反映されるのか。単に優先リストを作るというところでスクリーニング試験が終わってしまって、それの知見は、いわゆるリストとして上がってくるものに限定されて、生涯試験の結果の解釈にどの程度まで活用しようかというところがちょっと不明解なのですが、その辺を教えていただけませんか。
○伊東座長
菅野先生、どうぞ。
○菅野委員
優先リストを作るというデータは、確かに例えば子宮肥大試験をやったときのデータのごく一部しか使っていないという形になります。ここから先はだれもがどこでもできるかという問題になんですけれども、子宮肥大試験一つをとっても、ある特定の遺伝子の動きを見るとか、もうちょっとグローバルにやるとするとマイクロアレイを流すわけですが、そのような背景データはとれるし、多分やる人はみんなとるようになると思います。そういう意味で、データがたまればたまるほど、ある時期からは詳細試験のデータを逆に予測できるようなデータがたまると思っておりまして、うちのラボでは実際にマイクロアレイは流し始めております。
あと、それを組織的にOECDにまで言えるかというと、さすがにそこまでは言えなかったというあれがあります。あとはホルモン値とか、ほかのエンドポイントをどれだけとるかということになるのですが、繰り返しになりますが、今のところオプションとして書くか、それにも書けないかというのがOECDの場での雰囲気だと思います。こちらでは当然そういうことをやれということになると思っておりますし、我々としても、ただ子宮の重さを測っていて面白いわけはないので、是非やらせていただきたいのですが、そんなところであります。
○伊東座長
そのほか、どうぞ。
○鈴木(勝)委員
菅野先生に伺いますが、例えばレセプターバインディングの話として、エストロゲンレセプターをアクティべートするというような物質があって、それによって優先順位が決まって詳細試験をやる、こういうような手順が一つありますね。そのときに、例えばアンドロゲンレセプターに対して抑制作用もあるよというようなことはその時点では分かっていないわけですよ。それで、実際に詳細試験をやったときに、もし仮にERの結合性だけに着目してしまうと、かえって矮小化されてしまう危険性がある。
そういうようなことから考えますと、in vitro での試験というのを金科玉条のごとくやっていっても、優先順位を作るためにはある程度仕方がなくて、もしかしたら詳細試験を何らかの形で先にやって、in vitro の試験系等はメカニズムを解明するための補助とするといったような考え方をする方が、ある意味ではリスクアセスメントをする上で実用的ではないかと私は考えているのですが、こういった点についてはいかがお考えなのでしょうか。
○菅野委員
一つ目は確認事項でして、最後の詳細試験というのは、ERだけの試験とか、ARだけの試験という区分なしに全部見たいということでありますので、ERの反応でつってきて、そこに例えばARのエフェクトがあって、ひょっとしたらTRもいじるといったときには、その三つが詳細試験では見られるものであってほしいという立場です。それが確認事項です。
一番最初の6行の国内、国外で3列ずつをお出しした絵でいうと、先に化合物を選んで、それに関してまず詳細試験となり得る二世代試験を思いつく限りの解像でやろうとしておられるのは環境省でありまして、それは環境中にこれはやばそうだという物質が40とかあるというときには非常に有効だと思うのですが、それと同じストラテジーを厚生労働省もとるかという一番最初に戻ってしまうわけですけれども、今の段階となったら、とりあえずこの40は危なそうだからそういうふうにしなさいという号令がここで今かかるのではあれば、確かにそれも可能なのかもしれないのですが、それとスクリーニング、プライオリタイゼーションのリストの必要性を、これを始めた何年か前のときにこちらでアプルーブしていただいたときとの兼ね合いですね、両方を同時にやってもいいのかもしれないのですが、そこは逆にご論議いただけたらと思うのですね。そのときに、最初にやる物質が何がいいのかとか、そういう話になるのだと思います。今のところは、最初に決めさせていただいたのを踏襲しているというのが現実であります。
○事務局
その点につきまして、厚生労働省としての考え方を申し上げます。結論から申し上げますと、従来どおり広く網をかけておきたい。と言いますのは、特に低用量の議論と関連しますけれども、用量反応曲線が従来考えていたものと違う可能性も否定できないということを考えますと、これまで既に評価をされた多くの物質について、なるべく広く網をかぶせて、もしかしたら in vitro 等で今まで思いもしなかった物質が出てくるかもしれない、そういう考え方で、広く捉えておきたいということが一点です。
それと、これまでに詳細試験というものができていないという状況におきまして、どうするのかというところから考え方を進めてまいりまして、菅野先生からのお話にありましたように、従来の多世代繁殖試験では、内分泌かく乱作用による有害影響の観点から確定的な判断はできないことから、詳細試験の開発を進めつつ、でき得る in vitro なりの測定項目でなるべく広く網をかけて詳細試験のためのリストというものを作っていく、引き続きそういう立場だということでございます。
○青山委員
全体的なお話なので、これは菅野先生にお伺いするより、事務局の方にも併せてお伺いした方がいいと思うのですが、実は生殖毒性試験だけでは不十分であって、例えば経胎盤発がんの問題等も含めて、今回菅野先生がご提案くださったような仕事も必要ではないかということは、前回のEDTAで私が言い出しっぺになって言ってしまったことなのですが、それについて真剣に考えていただけて感謝しているのですが、一方で、言ってはみたものの、理想的には生涯試験というのはどんなエフェクトでも、要するに、生殖影響だけではなくて、経胎盤の発がんであるとか、神経系に及ぼす影響であるとか、あるいは免疫に及ぼすような影響であるとか、サイロイドホルモンが関係しようが、エストロゲンが関係しようが、オールマイティーに見たい、私も全くそういう気持ちがあるのです。
ところが、現実にたくさん生殖試験をやってみますと、まずスタート地点でターゲットを絞らないとエンドポイントが決まらない。要するに、1匹の動物でありとあらゆることを調べるということは物理的に不可能なわけですから、ある程度、例えばここまで進めているような、こういった優先リストを作るときの in vitro のデータを使う、フィードバックしていくということは必ず必要になると思うのです。それが一点です。
そうなると、では、優先リストの中で、今のところエストロゲン受容体に関してはかなり満足いくデータがとれてきている。アンドロゲン受容体についてあと一歩である。サイロイドホルモンについてはもう少し努力が要るかなというような状況だと思うのですが、これを生涯試験といかにうまく組み合わせるかというところが現実的には非常に難しいし、ネックになると思うのですね。つまり、優先リストの方ですべてのメカニズムが分からないと生涯試験が始められないと言っていると、恐らく10年たっても30年たっても始まらないと思うのです。一方で、何も分からないまま、あるいは一部のエストロゲン受容体の親和性だけが分かった時点で始めると、先ほど鈴木先生がご指摘くださったように、そこだけに絞ったエンドポイントをとってしまうので、ほかのところを見落とすおそれというのは必ず出てくると思うのですね。勝手な注文で申し訳ないのですが、このあたりの現実的なストラテジーをもう少しうまくリンクさせて詰めていっていただけたら非常によろしいのではないかと思います。
○伊東座長
紫芝先生、サイロイドホルモンの関係のことで、何かご意見はございますか。
○紫芝委員
甲状腺ホルモンに関しては2つの面があると思うのですね。1つは、今、菅野先生がおっしゃったように、甲状腺ホルモンの作用自身をその環境物質が何かディスターブするかという、その末梢組織の甲状腺ホルモンレセプターに絡む問題です。それは、今、青山先生がおっしゃいましたけれども、最近は群馬大学の鯉淵教授なんかのご努力によってレポーター・ジーン・アッセイがうまくいくようになって、かなりエストロゲン、アンドロゲンに近いところまできていると思うのですね。その方はそれでいい。
しかし、菅野先生が追加してくださったのは、私たちにとっては非常にありがたいのですけれども、例えば甲状腺組織というのは非常に特殊な組織で、ヨードを濃縮して、それでサイログロブリンの中でサイロイドホルモンを合成するというところがありますので、そのヨード輸送の部分と甲状腺ホルモンを合成するところで、パーオキシデースという過酸化酵素が必要なわけで、そこのところも随分いろいろな物質によって阻害されます。それはかなり非特異的な阻害で、例えばメルカゾールなんていうのは何ミリグラムというふうなオーダーで阻害して、薬剤として使われておりますし、それからパークロレートなんていうのもミリグラムからグラムのオーダーで甲状腺のその合成を阻害するということがあるわけです。
それで、甲状腺の場合には、そういうふうな末梢のホルモンを阻害する部分と、甲状腺ホルモンを合成、分泌するところ、その双方を見ていただいているという意味で、私は今の菅野先生のアプローチは大変コンプリヘンシブ、包括的であるというところを大変評価するわけですけれども、ほかの方、例えばERでもARでも、末梢で作用する部分の話とホルモン合成を阻害する部分の話はやはり同じようにあるはずだと思うのですね。そっちを切り捨ててしまって本当にいいのかなというのが、今非常に包括的に言っていただいた甲状腺の領域から見た私どもの反応なのですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
○菅野委員
ご指摘のとおりで、実はアロマターゼ活性といっているのは、そのたぐいでございます。アロマターゼといいますと、エストロゲンを作るところになるわけですけれども、ステロイド合成系の阻害という面はアッセイ系を開発中であるというのを重々承知しておりますが、ここら辺はまずホルモン受容体を介するシグナルを乱されるときの濃度の方がアロマターゼ阻害よりは二けたか三けた濃度が低いだろうということで、受容体の方を極端に優先させたという事情がございます。
甲状腺の方は、実を言いますと、中枢阻害ががんと出てしまうものですから、さすがに現場の酵素阻害を余り無視できないのかなと、そういうさじ加減でございまして、たしかにフィロソフィカルにはちぐはぐしておりますが、そういういきさつがあります。そういうことで、お答えになっていないかもしれないですが、一応視野には入っております。
○伊藤座長
そのほか、何か。
○松尾委員
二つばかり質問したいと思います。一つは、私も厚労省ではありませんけれども、経産省のスポンサーで同じ会議に出席したのですけれども、その際に in silico、これはAdam&Eve、それから GenB(ジェンビー)などのソフトで動いているのですけれども、余り予測性がよくない。説明変数で大体半分ぐらいですね。当たるか当たらないかというような、そのぐらいのレベルをいっていまして、悪口を言っているわけではありませんが、更に改良をすることをお考えなのかどうか、まず第1点です。
それとまた別ですが、その他 in vitro とか in vivo のスクリーニングで優先リストというのをお作りになっているのですが、例えば、優先順位の高い方に、何らかの形でポジティブに出ているという剤がこの中にうろうろしているわけですね。これにはどういう釈明をするのか。リスクコミュニケーションというのがありますけれども、そういう物に対してはどういう説明をしようとしているのか、この辺をちょっとお伺いしたい。
○菅野委員
最初のご質問に関しては、そのとおり改造の余地が十分にあります。特にRBAの予測の方は、結晶構造のうちまだ一つでしかやっていないので、残りの5種類、既知のものがございますので、それを何とかインコーポレートするという形だと思います。
二点目は、申し訳ないですが、最後が分からなかったのですが。
○松尾委員
優先リストをお作りですよね。先生のお話ですと、中をぐるぐる回転しているのだと。決して、箱から出ませんというご説明だったですね。そうすると、非常にアクティビティの高いものはすっと上に行くと思うのですけれども、他の in vivo データが皆無であるというようなものがありますよね。結構そういうのが多いのです。それに対してはどういう釈明というか、どういう説明をされようとしているかということなのです。
例えば in vitro でプラスですよというデータがある物に出たとしますね。そうしたら、それは優先順位としては確かに高いところにあるでしょうけれども、だからといって、この物質はどうなのですかと聞かれたとき、どういうふうな答えを出すのか。要するに、リスクコミュニケーションですね。in vitro だけプラスですよというお答えをするのか。
○菅野委員
リスクコミュニケーションの話は確かに非常に難しくて、詳細試験のやり方が決まらないうちに、上位、トップ10とか20を発表してどうなるかという問題だと解釈いたしましたが、それはこの計画をスタートしたときの一番最初からの課題でございました。それは化学物質のたなざらし問題と申しまして、たなにさらしておいて料理のしようがないのは困る。確かにそのとおりです。
ですから、エストロゲン活性があるから、それが直ちに有害性を持つかというところがクリアされない限り、名指しでこれは危ないよという公表はできないと確かに認識しております。ですから、多分、詳細試験のやり方が決まる、あるいは決めなければいけない時間に向かってリストの精度を上げていく、そういう並行のストラテジーをとらざるを得ないというふうに考えております。そのデッドラインが一応2005年というふうに、何年か前に設定したわけであります。そこから先のリスクコミュニケーションは、多分いろいろな方々とご相談しなければいけないと思うのですが、その問題自体があることは、たなざらし問題ということで重々認識しております。そういうことでご勘弁願えますでしょうか。
○事務局
事務局の方からご説明申し上げます。菅野先生からもお話がありましたけれども、最終的には詳細試験にもっていくための優先リストということでございますので、その詳細試験の開発というのをまさに急いでこれからやっていかなければいけない。
それから、リスクコミュニケーションでございますが、従前の検討会におきまして、バイオロジカル・プロージビリティーという一つの考え方について井上先生等からご紹介がございましたけれども、IPCSのグローバルアセスメントにおいてバイオロジカル・プロージビリティーとか、時間的前後関係とか、やめて、それが回復するかどうかとか、そういった判定基準を準用した形で、一つの因果関係ないしは証拠の重みづけといった考え方の整理がなされていますので、そういったことも踏まえて、まさにリスクコミュニケーションをこの検討会におきまして一つの行動計画に盛り込んでいただきましたのは、そういった生物学的にはプロージブルだけれども、そういった段階においてどうするのかというところからも始まっておりますので、今後のガイドラインの作成等におきまして、そういった観点の議論をする中で、in vitro でこういった結果が出ているのだけれども、どう扱うか、そういったことも検討していっていただければというふうに考えております。
○伊東座長
ありがとうございました。大分時間も過ぎてまいりましたので、もうひと方、何か。
○西原委員
優先リストを作るときに、例えば先ほども出ていましたけれども、アゴニスト/アンタゴニスト、両方活性できた場合にどちらに重みづけをつけるか。あるいは、ARとERと同じ物質でポジティブになるものがあります。特に、in vitro の試験ではということですけれどもね。そのときに、どう重みづけるかというのが一つです。
もう一つは、今回のこれに関してはレセプターへの言わばハザードの優先リストという形でいいのですけれども、リスクコミュニケーションとか、その辺を考えたときには優先リストの中身を決めるときに暴露情報が非常に大きくなるのではないか。そういう計画はあるのでしょうか。
○菅野委員
最初のアゴニスト/アンタゴニストの件ですが、子宮肥大試験をやると、ほとんどすべて両方の性格を示しますので、いわゆる椅子とりゲームで椅子が1個しかないときには、エストラジオールが優等生で、ほかがそれよりも劣等生であれば必ずじゃまをするから、アンタゴニスティックに見えるのは当たり前だとおっしゃられてしまうと、それっきりなのですけれども、それはちょっと置いておいて、大体両方活性は出るものですから、その場合は、エストロジェニックな方、表の方が強ければそちらをとる、裏が強ければ裏をとるという形で、どっちか強い方という形になるのだと思います。
アンドロゲンとエストロゲンの場合も、どっちかがやはり強いですよね。なかなか同等という物質は見たことがないので、多分強い方でとっていくのだと思います。ただ、どちらの価値が重いかというのは、さすがに今のところは分からないので、アンドロゲン系の場合は、体内では三けた濃い濃度で動いているというのを加味するかもしれませんが、申し訳ありませんが、そこはまだ確実には詰めていません。
最後は、リスクコミュニケーションのことを考えるとしたら、暴露情報をカラムに足すべきではないかと。そうかもしれませんが、あのリストはまだコミュニケーションを考えて作っている段階ではないものですから、今は入れておりませんが、少なくとも上位何十物質かが決まって、その中でどれからやろうかというときは、当然その情報を加味して、暴露の多いものからやるだろうと思います。そういう使い方をさせていただくと思います。
以上です。
○伊東座長
ありがとうございました。大分いろいろなご注文が出ておりますので、そのあたりはまた事務局とご検討の上、再度検討していただきたい。
このあたりで、井上先生、先ほどもお話がございましたけれども、ちょっとご説明いただけますか。
○井上委員
それでは引き続きまして、低用量問題について厚生労働科学研究の方と併せてご報告いたしたいと思います。
低用量問題については、2000年10月にノースカロライナでEPAが主催して低用量問題に関するワークショップが行われたわけですけれども、それ以降いろいろ論議がされました。それで実験も進みました。論文等もかなりたくさん出てまいりました。それらについての考え方を少し整理したいと思います。
大きく分けると五つぐらいの面から見ることができると思いますが、WHO/IPCSの先ほど来ご紹介のあるグローバルアセスメントがその後出た。これは当然低用量問題のことを念頭において発表されております。ただ、ここであらかじめ申し上げておきたいことは、グローバルアセスメントはリスクアセスメントに一切タッチしないということがWHOのこのときのポリシーですので、リスクアセスメントには全くタッチしておりません。ハードコピーはこのような形で非売品で出ておりますので、必要な方はおっしゃっていただければWHOの方に連絡いたしますけれども、後でお示しするワールド・ワイド・ウェブからご自由にダウンロードできるようになっております。
それから、スクリーニング試験によるプライオリタイゼーションの話が先ほど来出ておりますけれども、これがやはり低用量問題に関係があります。抽象的に議論をしますと、たなざらしがないわけではありませんけれども、菅野先生たちがCERIの方たちと共同研究で出していただいたデータなどを拝見しますと、実際問題として、何万もある化学物質のほとんどのものは対象にならないぐらい活性の弱いものであります。そうしたものはもう棚からとっくに消えている。未知のことがありますので、形式上ホールドにはなっておりませんけれども、ほとんど問題にならない。そういう実態があります。
それから、低用量問題に対しては、更にプラクティカルな対応がとられるようになってきております。なぜかと申しますと、低用量問題にはいろいろな疑問があります。再現性に対する疑問を持つ研究者がいることは皆さんご承知のとおりでありますし、基礎的な検討が行われなければならないわけですけれども、これらについてはまだまだかなりの時間がかかると予想されますので、それに対してもっとプラクティカルな方法でもって処理をするという考え方であります。
また、OECDを中心にして、詳細試験という言葉で先ほど来論議されておりますけれども、現在ある試験法だけではカバーできない可能性があるだろうという考え方に基づいて、そうしたものの開発とバリデーションが必要だというような考え方になっております。その辺について、順を追って簡単にご説明いたします。
これは1998年だったと思いますけれども、米国のナショナル・リサーチ・カウンシルがまとめた、いわゆる先天性奇形であるとか、生殖能の低下、あるいは精神神経学的な障害、発がん性の亢進、そういったものがあるのではないかと提起された内分泌かく乱仮説とでも申しましょうか、そういったものに対するプロージビリティーを一冊の本にまとめて、それがあるないというようなことを整理いたしました。その際に、発がん性については、プロージビリティーはほとんど考えられないということがそこの中にも書かれておりますけれども、それ以外の点でも明らかでない問題もあります。
しかしながら、一方では、疫学的な所見などは、ほとんどないにもかかわらず、幾つかの実験的なデータではこういった尿道下裂等は実験動物でも出てまいりますし、様々な点である程度のプロージビリティーがあるということも一面では確かだということになっていたわけであります。
そして、そういったものは受容体原生の毒性があるということが元々分かっておりますので、どうしても低用量に傾く。そして、その受容体の入り口の方のリダンダントな情報の流入とそれに基づく機能、それから出口の方のクロストークの問題などが更にフィードバックやホメオステーシスなどによって打ち消されるといった関係で、低用量問題の解明は、実験をやれば勿論それなりの結果が出てくるわけですけれども、なかなか本質をつかんでいるかどうかが分からないというような状況があります。
それで、ただいま一つ一つ申しましたように、WHO/IPCSのグローバルアセスメント、スクリーニング試験の問題、それから低用量に対するプラクティカルな対応、それから低用量問題そのものの基礎的な検討、そして試験法の開発というようなことがあります。
グローバルアセスメントについては、資料4−1に「executive summary」というのがあります。そこの部分だけ本省の助言も得て抄訳を作りました。それの中にも含まれていることですけれども、私たちの生活、身の回りはホルモンやホルモン類似作用を持つ化学物質に取り囲まれております。それは野生生物の中でのいわゆるホルモン類似化学物質の問題もそうですが、私たちが日常的に摂取する植物ホルモンなども、お豆腐とか、そういったものの中にもファイトエストロゲンというようなものが含まれております。これについては、通常の摂取のされ方をする限りにおいては、害というようなものはないというふうに認識されておりますが、意識的にこれをコンセントレートして投与しますと、はっきとした害はちゃんと出ます。そのことも、この間に明らかになってまいりました。
要は、そういう扱いの問題であって、私たちが何気なく生活の中で取り込まれているものが害になるとかならないとか、そういう問題ではなくて、私たちがそういったものとどういうつき合い方をして生活をしていくかというような問題であろうかと思います。
ただ、内分泌かく乱化学物質をそれと同列に置くことは、人間が操作することができるわけですから、できないかもしれませんが、これについては先ほど申しましたように、比較的強い作用を持ったものと大部分の弱い作用を持ったものが同一に扱われることのないようなスクリーニング試験であるとか、プライオリタイゼーションというものが必要になるということがグローバルアセスメントでの認識であります。
細かい内容については説明いたしませんけれども、executive summary があって、イントロダクトリーがあって、それからエンドクリノロジー・アンド・エンドクリントキシコロジーというのは、これは内分泌器官というものが、先ほど来、紫芝先生や菅野先生の間で甲状腺の問題について議論がされましたが、私達が馴染みにくいような高度なレギュレーションが行われていることもあって、そういったことに対してボブ・カブロックが丁寧に書き下ろしたものであります。ワイルドライフ、ヒトの健康については、実験的なものとヒトの疫学と統一して書かれているというのがこのグローバルアセスメントの特徴であります。それ以外については、ここの場では省略いたします。ただ、一人だけご紹介したいのは、このチェアマンをやったローレンス・ラリーライターという人は米国のEDSTACの座長さんでもあります。したがって、EDSTACとの整合性などは細かく念頭において作られております。
この中で一言サマリーを取り出すとするならば、アダルトライフについては、内分泌かく乱の影響は受けにくいようである。しかしながら、胎生期、発育状態の形態形成期や新生児期の成熟の過程では、内分泌かく乱は非可逆的な、不可逆的な影響を及ぼす可能性があるというものであります。勿論、これは物質主義でありますし、それからその物質の濃度、そういったものに依存するわけであります。
プログラミング期をもうちょっと詳細に申しますと、これは資料4−1に箇条書きで列挙されているものの抄訳ですけれども、プログラミング期の暴露が刺激/抑制の信号への機能、感受性を恒久的に変化させる可能性がある。それから、成年期の暴露は、ホメオステーシスによって補われるため、顕著な影響を表さないことがある。また、発育段階の時期の違い、季節の違いなどにより異なった結果が出る。さらに、内分泌系の異なる要素間のクロストークによる予想外の内分泌系組織に影響の生じる可能性、これなんかについてはまた後で関係する問題をお示しいたします。
こういったことと、更にこれは次の項目のスクリーニングによるプライオリタイゼーションの問題ですが、これについては深追いいたしませんが、要するに、先ほど来、菅野先生がご説明になったような形でもって、ホープフリー確定試験、詳細試験というようなものにたどり着いてほしいということでありますが、また更に新しい拡張試験というようなものも作る必要があるというわけでありますが、そういう中で現在までに認識されているのは、ほとんどの化学物質は、エンドクライン・ディスラプターとしてのはっきりとした機能は把握されていないようでありますので、ホールド状態ということにはなろうかと思いますけれども、いわゆる比較的強い作用のあるもの、あるいは若干強い作用のあるようなもの、そういったもので取り沙汰されているものと、他の九十何パーセントかの化学物質とは全く別のものであるという認識で生活をしていただくような方向で、リスクコミュニケーションの専門家の方々にはお考えいただければと思います。
低用量問題には、プラクティカルな対応が焦点になっているというお話をいたしました。これについては、もとよりホルモナリー・アクティブ・ケミカル、つまりホルモン活性、ホルモン様の作用を持った化学物質、これをHAC(ハック)と呼んだりしておりますが、こういったものを検出することはホルモン活性を同定するだけのことですから、先ほど来、アゴニストでありかつアンタゴニストであるというような性質を、ネガティブフィードバックがかからない系ではそういう形になりやすいというような単純でないという面もありますけれども、一応は検出することはたやすい。
一方、内分泌かく乱物質については、先ほど来、出ている最終点の詳細試験との関係になりますが、内分泌かく乱の同定はどうすればいいのかというところについてはなかなか難しいという問題があります。これについても、解明していこうとすると、いろいろ試行錯誤で大変な時間がかかるということで、こういったことを勿論取り組むわけでありますし、私どもも取り組んでおりますけれども、そういうこと以上に、ノースカロライナにおける低用量ワークショップからの教訓は、ある意味では、一方で安全性、毒性試験の改良、一見矛盾する結果が認められて、両方クレディブルだという評価がされたそのメカニズムの解明も重要なのでありますけれども、多くの内分泌かく乱作用を持つような物質の中で多世代試験のほとんどがノーエフェクトである。一方では、ビンクロゾリンのように種々の影響が出てくるものもある。
こういった実態を見ますと、やはりそういうもので影響のあるものに差し当たっての焦点を当てて、プラクティカルにケースバイケースで進めていくということがよろしいのではないか。また、そういう認識でリスクコミュニケーションは行われるべきではなかろうか。他方、解決されない問題について、一つ一つ粛々と長い目で解決に対する地道な研究が進められる必要もあるということではなかろうかと思われます。
多くの物質のホルモン活性は、先ほど来、申し上げておりますように、具体的な数も菅野先生の方からお示しすることはできると思いますけれども、とにかく比較的強いものはごく少数である。そして、それらは個別主義で今日的に評価する。実際問題として、ビンクロゾリンであるとか、アトラジンであるとか、こういったものは日本で使われておりませんけれども、こういったものについは、もう明らかにエンドクライン・ディスラプターとしての作用があります。そういうことを一つ一つ解決していくということではなかろうかと思われます。
農薬等についても、現在、私どもでは、これまで審査されたものの中で強い内分泌かく乱の可能性のあるものについての見直しを多くの先生方のご協力でもってやっているところでありますが、幸いなことにこれに引っかかるものについては、ないということはないのですけれども、ごく少数に限られるというような状態になっているということをご承知おきいただきたいと思います。
問題は、エンドポイントの意味と評価ということが分からない問題があります。例えば、行動影響の見方であるとか、行動影響をどういうふうに考えるかとか、そういった問題がありまして、こういう問題についてはやはり先送りにするしかないだろうというふうに考えております。
先ほどもご説明がありましたように、OECDはレベル1から5までいろいろな方法でin vitro、in vivo それぞれ、どこから取り組むかは、現在あるデータに基づいて取り組みやすいところから入って、プラクティカルにそれに対応するあれを出すようにしようということになったわけでありますけれども、ともかく「Each chemical should be based on a case-by-case basis.」ということで、あくまでも一つのケミカルでこうだったから、ほかのケミカルでもこうではないか、というような考え方をなくしていこうということが最も重要なポイントではないかと思われます。
では、低用量問題そのものの最後に残る問題、どう解明していくのかという問題については、これは実際問題としては答えはありません。再現性に対する疑問もありますし、また蓋然性もそれなりに示されております。
これはアールグレイのデータでありますけれども、ビンクロゾリンでこれまでこのような LD50 であるとか、NOEL、NOAEL が出されていたものに対して、アールグレイが実際に anogenital distance(肛門生殖突起間距離)とか、そういったものを見ますとこの程度の低いドーズで、これはミリグラムオーダーですので決して低いドーズではないのですけれども、相対的にこれまで NOEL、NOAEL と検出されていたその尺度よりは低いところでこういうものが認められるということがありますし、環境に至っては、例えばオクチルフェノールでは、これはグローバルアセスメントの挿絵からとっていますけれども、マコガレイの精巣内に卵形成される。あるいは、オクチルフェノールでもって通常の環境中に観察される同程度の濃度で、実験室でそういったものが観察されるというようなプロージビリティーも一方ではあるわけであります。
生物学的プロージビリティーとしましては、グローバルアセスメントでは、PCBの油症に関する神経行動発達障害を最も重視しております。そのほか、種間差、系統差につきましても、哺乳類とげっ歯類とでは様々な点で種間差が異なる、あるいはげっ歯類の中でも系統差があるということがバイオロジカルに証明されているもの、あるいは推測されているものがたくさん出てまいりました。
それから、投与量のデザイン、あるいは投与時期のデザイン、あるいは投与時期のデザイン、そういったものについてこれまでの実験結果を見ますと、設定用量が実際にはポジティブに出たものとネガティブに出たもので用量がかみ合わないということがしばしば認められております。投与時期につきましても、投与時期があるという実験データとないという実験データではかなりの時期のずれがあります。それから、観察時期についても、エンドポイントをどこに置くかによって、認められなかったという報告と認められたという報告では、観察時期の乖離があります。
こういったものを統一すれば、低用量問題は解決するはずだという考え方もありまして、私どもの班の中で一緒に仕事をしてくださっている関澤先生などは、こうした考え方に沿って、本日の資料の中にあるDESに関するプロトコル、こういうふうにやったら整理されるのではないかというような見本をお作りいただきました。ただし、班全体としては、こういったことだけで解決するものではないというふうに考えております。
エンドポイントの意味と評価については、先ほども申しましたとおり、行動影響とか、思春期早発現象、これもグローバルアセスメントに出てまいりますが、そういった分子指標に関する問題の取り上げ方、どこが悪いのかという問題ですが、そういうことについての考え方は定まっておりません。これは昨年、委員の先生方に配られている資料3−2−2の後ろの方には3ページぐらいに及ぶ、去年と一昨年のたった2年間のビスフェノールAに関するリファランスが載っております。
このビスフェノールAについては、ビスフェノールA問題というような形でもってプラクティカルにこれ独自の問題として対応することを私どもとしてはご提案申し上げたいと思います。それはなぜかと申しますと、ビスフェノールAというのはエストロゲンに比べますと、エスティメートの仕方によって違いますけれども、約1,000 分の1の作用しかありません。実際問題としては、100 分の1ぐらいのオーダーまで換算されるような生物影響があるという考え方もあるようですけれども、極めて弱いものであります。
一方、このビスフェノールAは、OECDやEPAではエンドクライン・ディスラプターとしての作用があるということがほとんどレッテルの張られたものであります。そこのところの理由は、ビスフェノールAというのは、他の多くの一般化学物質、多少の内分泌結合作用のあるものに比べても3オーダーぐらい高いことが知られております。そういう意味では、これは非常に特殊な位置にあります。また後で見ていただきますけれども、差し当たりこの表の中で、この欄から後ろの方はすべて行動影響であります。F0の育児行動、F1の性行動、ソマトスタチンについては、ここにもありますように機能的には未検討でありますが、雄の仔の行動の雌化、こういったものすべてが行動であります。
ちなみに、これらについては、私どもの班では文献の詳細な検討をする体制はとっておりますが、検討はまだ全く行っておりません。そういうようなわけで、こうした行動影響などについては、専門でない者も多く、私自身も専門ではございませんが、今後の課題であろうかと思います。そして、その中には、このように具体的に行動影響、あるいはそれに伴って青斑核の核の大きさの差になって現れたというような報告もありますが、それについてもまだ考え方は定まっておりません。
ちなみに、ビスフェノールA問題については分からないことがたくさんあります。一方で、エストラジオールに比較しまして相対的に低反応性であるということを先ほど申しましたが、何分の一かは取り上げる尺度によって異なります。バインディング・アッセイ等でやりますと、エストラジオールに比べて3乗ぐらいのオーダーまで弱いということになりますし、多くの化学物質はビスフェノールAより更に低反応性であるということが知られております。
さらに、このものはこの2年間でヒトのボランティアにおける代謝のデータが出てまいりました。ヴェルケルのデータは、その一部にすぎませんが、グルクロン酸抱合型として極めて速やかに排泄されるということが確認されておりまして、これについて果たしてほかの動物ではどうなのかというような問題も今後の問題であります。
また、ER結合の特徴としまして、これは1996年ぐらいから、たくさんのデータがもう既に、ケビンガイドーたちを初めとして出始めておりますけれども、最近でも2002年、2001年のオーダーで、エストロゲン受容体の低親和性の結合領域と結合するということが分かっておりますし、先ほど来、出ております話とちょっと意味が違いますが、アンドロゲン受容体を活性化するということが確認されております。
さらに、SXR、オーファン核内受容体に結合するということをタケシタらが、これは鯉淵先生の門下の方ですけれども、発見されましたので、未知のシグナルというものの発生というものが考えられますし、またこのSXRは種差が非常に大きいということが知られておりますので、マウスとラットでの整合性は恐らくほとんどないだろうということを予測させます。
そういうふうに、ビスフェノールAには分からない問題がたくさんあります。それで、この問題そのものについては、ビスフェノールA問題として行動を含む多くの研究者によって深く研究されることが望ましいわけでありますが、そのこととエンドクライン・ディスラプター問題のプラクティカルな解決とは分けて対応していただくということではないかというふうに考えております。
それで、菅野先生から、げっ歯類の一生涯試験について私の方から説明するようなご紹介がありましたけれども、実は私はそのつもりはありませんで、これは先ほど来、もう既にある程度ご説明がなされておりますので、付け加えませんけれども、ともかくこれまでの生殖試験としてだけ見ているだけでは、どうもエンドクライン・ディスラプターの本質がつかめそうもない。しかも、もしこういうもので見るとするならば、非常にわずかなケミカルになるであろう、そういったものについて時間をかけて検討することにならざるを得ない。したがって、とてもスクリーニングというセンスのものではないだろうというふうに考えられております。
先ほどの事務局からのご説明にもありましたように、私はこの試験のプロトコル作成には携わっていないのですけれども、これをOECDで皆さんにご説明しました。これはプロトコルとしてはまだほとんど形になっていないぐらい未完成ですけれども、皆さんから非常に強い期待が寄せられております。それで、オランダのホフさんなどは免疫毒性などを検討する上でもこのような形でないと検出できないというようなことを含めて、アメリカのゲーリー・ティムさんからも、これが二世代試験より短くできるかどうかということは別問題ですけれども、二世代試験との関係でどういう役割を果たすかというようなことについて、実験的に日本と協力しながら進めていきたいというような温かい励ましの言葉が厚生労働省に対して寄せられております。
そのほかに、これは菅野先生が努力されたのですけれども、ファイトエストロゲンがたくさん入った合成飼料を使った実験というものがどの程度の意味を持つかということが前から気になっておりまして、オリエンタル酵母のご協力でもって開発が進んでおりまして、各国で使おうと思えば、こういったものが使えるような状況になっている。この辺も一つの成果であります。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。低用量問題は前回、前々回以来、非常に注目されている問題でありますので、この問題についてご質問がございましたら、どうぞ。
ございませんようでしたら、事務局からご説明ください。
○事務局
それでは、ご意見が特にございませんということで、今までの菅野先生、井上先生のご発表いただいた点につきまして、検討会としてご了承いただいたものとこちらとしては認識します。それで、国内での調査研究の推進、それからOECDなど国際的枠組における取組を慫慂するなど、適切に対応していきたいと考えます。
特に、一生涯試験につきましては、神経発達、それから免疫といった動物実験結果で懸念されるエンドポイント、あるいは実際にヒトを対象とした疫学研究で注目すべきエンドポイントが出てくれば、適宜それを念頭において、行動といった確たる評価方法の確定していない項目ではございますが、こういったことにつきまして関連の厚生労働科学研究班におかれては取組を進めていただきたい、また関係省、あるいは諸外国、国際機関と連携して開発を進めていっていただきたいというふうに考えております。
それから、事務局としましては、OECDの概念枠組のレベル5に最終的にはこの一生涯試験が位置づけられるものとして、将来のOECD試験法ガイドラインとして検討を慫慂することも視野に入れて取組の前進を図りたいというふうに考えております。
それから、次回の検討会は秋頃になろうかと思いますけれども、関連の厚生労働科学研究班の方でより一歩研究を進めていっていただき、その結果をご報告していただきたいというように考えております。
それから、in silico の手法につきましては、これまで取り組んできたドッキングモデルにつきまして、松尾先生の方からご指摘がありましたが、そういったものを念頭に入れまして、VMG non-animal におきまして指摘を受けた点につきまして、考え方を菅野先生を中心に取りまとめていただいて、次回のVMGにおいて適宜考えを述べていくという対応をしたい。
それから、in vitro の手法につきましては、レポーター・ジーン・アッセイ、経産省と共同で進めてきている結果につきまして、積極的に国際的な場に提供して評価を受けていくものとしたい。
その他、OECDの場におきましてEPAが主導するバインディング・アッセイ、経産省が主導するKGN細胞を用いたアロマターゼの試験、それからEPAが主導するH295R細胞を用いたステロイド産生の試験、それから甲状腺関連のもろもろの試験につきまして、ペルオキシダーゼというお話もありましたけれども、広く情報の収集を図っていきたいというふうに考えております。
それから、低用量問題につきまして井上先生からご報告があったところでございますけれども、資料3−2−1にDESのプロトコルということで、これは中間報告書追補の方に既に掲載することを認めていただいているものでございますけれども、このジエチルスティルベステロールを陽性対照とした試験を確たるものとしまして、今まで再現性について問題点を指摘されていたところをこういったプロトコルで克服できるのではないかということで班としてご提示いただいたものでございますけれども、こういったプロトコルにつきまして、これを一生涯試験の開発に発展的に取り込んでいっていただきたいと。
それから、資料3−2−2に低用量文献ということで、井上先生から先ほどプロジェクターでもご説明いただきましたけれども、フォンサールですとか、坂上によるエンドポイントとは異なる、行動といったものが出てきているようでございますので、低用量問題の班として早急にこれらの文献についてのレビューを完成させ、その他の成果も踏まえまして関連の研究班と一致協力して、一生涯試験の開発に貢献していっていただきたい。
それから、疫学研究のためのコホートを構築される際の調査項目に加えていくべきかどうか、こういった点についても関連の先生方におきましては考えていっていただきたいというように事務局の方では考えているところでございます。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。
○鈴木(継)委員
今の井上さんの話で、ビヘイビアを大事に見ていこうというのは私も大賛成なんです。というのは、一番敏感に変化が起こってくるだろうということは、多分ビヘイビアが一番敏感だと思うのですね。ところが、ビヘイビアを取り上げて困るのは、行動に影響する環境要因が非常に複雑になってくる。実験動物を飼う場合でも、私たちの言葉でいえば、実験動物の生態学みたいなものの条件が、エコロジーという意味での生態学ですけれども、無理やり標準化するわけにいかなくなってくる。例えば、いろいろな行動実験をやっているシステムのどの部分をどう採用して実験系を作るかというのは非常に難しい構造なのではないか。単に、マウス、ラットというような種の違いだけではなくて、トータルの実験動物の生活環境みたいなものとの関連が問題になるという意味で、事態は非常に複雑なことになってくるのではないでしょうか。
○伊東座長
どうぞ、井上先生。
○井上委員
おっしゃるとおりだと思います。コメントのような形で二点お答えいたします。一つは、そういう意味でも、膨大な化学物質のプライオリタイゼーションを早くつけて、切り分けることのできるものはとりあえず切り分けて、きちっとホールドにして、日常生活に巻き込まれないような形にすることが重要だという意味で、そういう意味では、ちょうど幸いなことと申しますか、重要な時期に重要なことが分かって、また一方でちょうどよい時期にプラオリタイゼーションが完成しつつあるということではなかろうかというのが第一点です。
第二点目は、もう基礎科学問題だろうと思いますけれども、行動影響であるとか、そういったものと比べまして、当初取り上げられたエンドクライン・ディスラプター問題のエンドポイントとしての生殖発生毒性というものが、ここには生殖発生毒性の専門の方がたくさんおられるので大変僣越なのですけれども、非常に鈍感なエンドポイントだということを感じております。そういう意味でも、これらについてはこれらの基礎科学が基礎科学として進むことを私は望んでいます。
以上です。
○伊東座長
大変難しい問題を鈴木先生から提案していただきまして、井上先生もなかなかうまくお答えになったかどうか、もうこのあたりで10分間休憩にいたしまして、頭を冷やして次のディスカッションに入りたいと思います。
それでは、55分まで休憩に入ります。
○伊東座長
それでは、再開いたします。
これからは、材料の採取とか分析方法といったことにつきまして、まず最初に東海大学の牧野先生、よろしくお願いいたします。
○牧野先生
それでは、お手元の資料の3−3−1というところから順次報告を申し上げたいと思います。私に課せられました本日の項目でございますが、第一番目が、生体試料中の内分泌かく乱化学物質の分析ガイドラインの方向ということでございます。方向性というのは、平たく申せば、生体試料におけます信頼性の高い採取、分析ガイドラインを整備することだろうと思います。
最初に、このスクリーンにございますが、総論的なことを申し上げますと、ご承知のように、すべての内分泌かく乱化学物質は、生体中では極めて極めて低濃度でございまして、それがゆえに、こういう分析をする場合には、試薬、器具、分析装置、それから実験室の環境中にもこういう物質が含まれておりますので、これらの影響を無視できません。
ですから、総論的には信頼性の高い測定値を得るためには、ここにございますように、分析装置や測定室等の設備、整備は急務でございます。同時に、測定・分析操作にかかわるものというのは一定水準以上の技術が要求されまして、ある内分泌かく乱化学物質を測定する場合には、できれば恒常的に同一人が同一の機器を操作して、確率の高い、精度の高い値を得るということが必須であります。同時に、用いる試薬・器具・装置等はなるべく純度の高いものを用いてコンタミネーションを避ける。それから、分析過程での汚染を排除することが重要と。これはどういうことかと申しますと、測定室の壁でありますとか、測定室の隣の部屋の状況、あるいは廊下をまたいで反対側の部屋ということも、これは実験室内の環境として、微量な内分泌かく乱化学物質の測定値に多大に影響を与えてまいります。
以上のことを念頭に置きまして、各論的に、主に3物質でございまして、ビスフェノールA、フタル酸エステル、ノニルフェノールについて、私どもの分析ガイドラインをご説明申し上げたいと思います。次のスライドをお願いします。
(スライド)
まず、順序はちょっと逆になりますが、ビスフェノールAの分析法のガイドラインでございますが、この物質を測定するには、ご承知のように、ELISA、あるいはHPLC、ここにございますようにLC/MS、あるいはGC/MS、幾つかの方法がございますが、私どもは、この分析のガイドラインを作成するに当たりまして、その物質のピークを直視できるということを含めまして、LC/MSまたはGC/MSという方法を採用した次第でございます。次のスライドをお願いいたします。
(スライド)
これは実際のビスフェノールAの血中レベルの推移でございますが、ご承知のように、ビスフェノールAにはフリーの形とトータルがございます。ピンク色のバーで表示してございますのはフリーの形の血中のビスフェノールAの消長でございますが、ここにごらんになるように、30分ぐらいでピークを作りまして、速やかにフリーのものも血中から消えてまいります。この白い線はトータルのビスフェノールAでございますが、同様に約 30分ぐらいでピークをとりまして、血中からは速やかに消失いたします。各々のピークは確認してございます。同時に、尿中のビスフェノールAの排出量を摂取後、5 時間、つり 0.05 ミリグラム、0.1 ミリグラム、1 ミリグラムをボランタリーに摂取いたしまして、5 時間後に尿中で物質を測りますと、0.05 ミリグラムでは 76%、0.1 ミリグラムでは 90%、1 ミリグラムでは 70%が既に尿中に排泄されております。
このことから申し上げることは、血中のビスフェノールAというものを測定する意味合いが非常に難しい。どのポイントで測定するかということによって、値が変わってまいります。なおかつ、フリーなのか、トータルなのかということで、様々な意味合いがここで生じると思われます。
一方、尿中では 76%、90%、70% というふうに非常に速やかに尿中へ移行いたしますので、尿中のビスフェノールAを測定することによって、逆にこの生体の暴露量の推定ができる可能性を示しているものだと思います。次のスライドをお願いします。
(スライド)
したがいまして、ビスフェノールAの分析法の検討結果の概要でございますが、血清と尿中に分けますと、血清中ではこのLC/MS並びにGC/MSを用いた信頼性の高い分析法を構築した結果、血清、特に臍帯血、母体血及び腹水でビスフェノールAをフリーの形とトータルの形で測定いたしますと、フリーのものはほとんど 0.2 ppb 以下の測定限界以下でございました。トータルのものとしては、一部の試料から 1 ppb レベルで検出されたものもまれにはございました。
尿中では、遊離体では 0.08 ppb 、トータルでは 0.56 ppb でございました。そして、前のスライドでお示しいたしましたように、速やかに尿中に移行いたしますので、尿中のビスフェノールAの評価はビスフェノールAの暴露の指標になると考えられる結果が得られました。結論的には、血清、尿中のビスフェノールの濃度は、フリーの形としては 0.1 ppb 以下、トータルでは 1 ppb 以下だろうというふうに推定いたしました。次、お願いいたします。
(スライド)
続きまして、ノニルフェノールでございます。ご承知のように、界面活性剤として年間数万トンはまだ工業生産されているというような物質でございますが、同じように、これはカラムスイッチングのLC/MS、それからSBSE、これは前処理のことでありますが、加熱脱着したGC/MS、いずれかの方法を私どもは測定の分析のガイドラインとして確立いたしまして、次の結果をお見せしたいと思います。
この二つの方法を用いますと、カラムスイッチングのLC/MSでは検出限界が 0.1 ナノグラム/ml、それからこちらの方法では 0.02ナノグラム/mlになりまして、定量限界は 0.3 ナノ、0.1 ナノというそれぞれの値でございます。これらの方法による添加回収の実験結果でございますが、カラムスイッチングでは 85.5 から 97%、こちらの加熱脱着によるGC/MSでは 98.5 から 99.8% という良好な回収結果が得られまして、この二法によるノニルフェノールの測定というものが最も信頼性があるのではないかという結論に達したわけでございます。実測値につきましては、後の資料3−5−1で一部ご紹介申し上げたいと思います。次のスライドをお願いします。
(スライド)
それから、フタル酸につきましては、フタル酸の何を生体で測るかということが問題でございまして、ご承知のように、生体内には代謝物質が形としては30種以上存在いたすわけでございますので、私どもは、ここにございますようにジブチル型のフタル酸、ブチルベンジル型のフタル酸、ジ−エチルヘキシル型のフタル酸、ジイソオクチル型のフタル酸、それからジイソノニル型のフタル酸、5つの代謝産物につきまして同じようにGC/MSで測定系を作り確立いたしました。次のスライドをお願いいたします。
(スライド)
これらの物質をここに書いてございまして、本法による回収の値でございますが、98.7% から、物によりますと 120% ぐらいということで、ほぼ良好の回収率がございまして、その検出限界はここにございますように、この3物質につきましては 10 ppb 、それからこの2つの物質につきましては 50 ppb という値を検出限界といたしたわけでございます。次のスライドをお願いします。
(スライド)
以上、ビスフェノールA、フタル酸のエステル代謝産物、それからノニルフェノールにつきまして、ここに一般的な質量の分析のガイドラインでございますが、当然のことながら、被験者、協力者に対しては十分インフォームドコンセントを行いまして、試料の採取、試料の取扱いにつきましては、とにかく採取する器具、例えば注射器等であるとか、そういういわゆる器具の内側からのコンタミが大変問題でございまして、ブランク試験を行って汚染のないことを確認する。特に、試料を保存するような器具あるいは装置につきましてはアセトン等で洗浄いたしまして、フタル酸と内部に付着した微量なものは除いてしまう。それから、例えば試料を保存いたしますガラスの試験管等は 300℃ 以上の電気炉で高温処理をいたしまして、内側に付着したものを飛ばしてしまう。こういう操作は必須だろうと思います。試薬類は、今申し上げましたように、高純度のものを使う。
分析法は、ELISA、あるいはHPLCその他ございますが、GC/MS、LC/MSで測定したときに先ほどのような測定系の確立が得られまして、可能な限り、ここに同位体の希釈質量分析と書いてございますが、天然界には存在しないような、例えば重水素の化合物のようなものを添加して、その回収率を常にチェックいたしまして、回収率は 70% から 120% の範囲であることが望ましい。精度管理につきましては、二重測定を当然行いまして、その差が 30% 以内である。外部機関とのインターキャリブレーション、クロスチェックでございますが、こういうものを行って、常に精度の管理を行う。こういうことがこの3物質の分析法のガイドラインの案として、本日ご報告申し上げたいと思います。次のスライドをお願いします。
(スライド)
続きまして、私に与えられましたのは二番目の資料3−3−2でございまして、ここには「分析法妥当性確認のスケジュール」というふうに書いてございますが、平たく申しますと、複数の試験機関での同一試料を分析した結果を評価しまして、分析法の信頼性を確認する。さらに、精度管理の保証のための措置を講じるということだろうと思います。ちょっと見にくいスライドでございますので、ここで私は言葉で申し上げますので、それによってお許し願いたいと思います。
まず、精度管理をするに当たりましては、今申し上げた試料の採取、あるいは分析につきましては、特段の環境の影響というものを除くということでございます。こういうふうに、最終的にいたしまして、一番下に書かれておりますのが実際の実測値の報告というところでありますが、それに至るまでに幾つかの過程でぴんぴんと測定法をはねまして、元に戻してあります。
元に戻す第一番目のところ、ここは定量下限値と目標の定量下限値とここに小さく書いてございますが、これは何かと申しますと、要するに測ろうとする物質が標準測定の曲線の一番いいところにある、それから外れた測定系は基へ戻して、もう一度メソッドを再検討するということでございます。
それから、途中で戻してあるところは、これは感度の調整でございまして、測定のたびに感度が 20% 以上振れる場合には、その測定系はまたはねて基へ戻して再検討する。それから、ここに小さくトラベルブランクと書いてございますが、試料の測定の現場までの間のコンタミネーションが考えられた場合には、これまた基へ戻してしまおうと。最後に、ここのところで二重測定をいたしまして、クロスチェックをいたしまして、その差が 30% 以上の場合にはこれまた戻す。こういうものに耐え得た数値というものを報告書の数値として報告するということでございます。これが精度管理の実際でございます。
お手元の資料の3−3−2に、私どもの本年7月からの行動計画がございまして、この資料3−3−1に書かれてございますように、星薬科大学を筆頭といたしまして、6か所の各都道府県の衛生研究所、プラス2か所の民間の測定ラボに同一の試料を提供して、同一の方法で、今申しましたような精度管理の下に測定いたします。血液、尿、母乳、腹水、臍帯血、あるいは動物実験の試料等を測定対象といたしまして、この測定管理、精度管理の下で上がってまいりました測定値につきましては、ここにございますように、文科省の独立行政法人統計数理研究所の大隅昇教授に統計解析の指導を受けまして、後日ご報告申し上げたいと思います。
それから、三番目に本日ご報告するのは動物実験の信頼性ということでございますが、これもまた平たく申しますと、実験動物について飼育環境及び実験環境からの暴露の調査を実施いたしまして、動物実験の信頼性を検証する。資料では3−3−3になっておりますが、従来は、ここに動物がございますと、飼料等が最も注目を浴びた暴露の影響が非常に大きい領域でございますが、一方、ビスフェノールAを中心といたしまして、水、あるいは給水瓶からの影響も無視できません。それから、ケージそのものもポリカーボネートのものが多くなってまいりますので、ビスフェノールAについても、これまで申し上げましたような分析のガイドラインに沿って厳密に評価いたしませんと、この動物実験の信頼性の検証はできないと思います。床敷と書いてございますが、床敷はご承知のようにウッドチップに始まりまして多種多様でございますので、これは分析の種類が多くなることと思います。大事なものは飼料、それから水、給水瓶、それからケージだろうと思います。次をお願いします。
(スライド)
これは、本年度の私どもに課せられた宿題でございますが、飼料中のビスフェノールA、フタル酸のエステル、ノニルフェノール、そして飼料等には大豆等の原料が多く使用されますので、植物エストロゲンも同時に評価しようと。今申し上げましたように、飲料水等についても、この分析法のバリデーションとクロスチェックを行いまして、総合的には飼料、飲料水、それからケージ等を含めまして、ビスフェノールA、フタル酸のエステル類、ノニルフェノール、そして植物のエストロゲン等の分析を行いまして、飼育環境からの暴露量を総合的にかつ分析のガイドラインに則りまして、極めて正確な数値を出したいというふうに計画してございます。
これらのガイドラインに沿いました、ヒトの試料中のいわゆるこの3物質の値につきましては、本日の資料3−5−1になりますが、お時間をいただいてご報告を申し上げようと思いますが、分析のガイドラインを中心といたしました案、あるいはご報告は以上でございます。よろしくご批判いただきたいと思います。
○伊東座長
ありがとうございました。何かご質問はございますでしょうか。
それでは、この件につきまして事務局の方から、ただいまいただきました問題も含めてご報告をお願いいたします。
○事務局
ご指摘をいただいた点、ご報告をいただいた点を踏まえまして、厚生労働科学研究の研究班をされましてガイドラインを最終化していただきたく、お願いしたいと事務局としては思っております。そして、秋頃になるかと思われますけれども、次回の検討会におきまして、内分泌かく乱化学物質の生体試料最終分析ガイドラインの案としてご提示をいただくとともに、また複数の試験機関間でのその他統制の検証といったところにつきまして、ご報告にありました統計解析の手続も経まして、結果をご報告いただければと思っております。
それから、もう一つの課題でございます動物実験の信頼性確保のためのガイドラインの作成につきましても、これも適宜作業を進めていただければと思っております。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。
次に、リスクコミュニケーションにつきまして、吉川先生、よろしくご説明ください。リスクコミュニケーションはこの検討会ができた頃には話題になっていなかった領域でございますが、どうしてもこの問題は欠かすことができないということで、吉川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○吉川先生
慶應義塾大学の吉川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションに関する研究で、昨年度の研究成果を主に発表させていただきたいと思います。それから、今年度どのようなことを考えているということを順にお話しさせていただきます。
昨年度は、主にリスクコミュニケーションのガイドラインを作るようにということが研究課題でありますので、どういう現状であるのかという現状把握を中心にさせていただきました。それで、1つは内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションの在り方を測る上で、一般国民と言っていいかどうか分かりませんけれども、一般の人々はどのようなことを考えているのであろうか、どのような知識があり、またどのような態度を持っているのかということを把握するために社会調査を行いました。
実施は2003年2月ですが、20歳から69歳の男女を対象としております。住民基本台帳より関東と関西地区の250 地点、これは実は問題事例があった地域は1地点ずつ除いてありますけれども、人口に比例させた形で250 地点を抽出して、各10名で2,500 名を2段階抽出でやりました。最終的には、留め置きで回収しまして、有効回答1,420 票を得ました。回収率は56.8%です。
実際に配付した調査票と結果の概要はお手元に別添という形でつけておりますけれども、おおよその概要だけを本日はお話しさせてください。大体なのですけれども、一つは「内分泌かく乱物質」という用語の認知率ですね。ここでは漢字で書いておりますけれども、実際の調査票では「攪乱」の「攪」を平仮名で書いておりますけれども、認知率は 33.1% です。ほぼ3分の1ぐらいです。一方、俗称であります「環境ホルモン」という言葉については9割を超す人々が知っているということになっております。
調査票でいいますと、質問の2に当たるわけですけれども、それぞれの言葉とか情報について、これは私どもは「しろうと知識」というふうに申していますけれども、必ずしも正しくはないのだけれども、一方の何らかの形で情報として得ていそうな知識を収集しまして、それについて聞いております。これはインターネットとか、新聞紙上で見たわけなのですけれども、ほとんどの項目については聞いたことがあるというふうにしていました。
そして、それらについて正しいと思うかどうかということも質問の3で聞いているわけですけれども、ほとんどのことは聞いたことがあって、聞いたことのあるものはほとんど正しいというふうに思われていたということです。
それから、情報に対するニーズも聞いているのですけれども、そういう情報があれば是非知りたいということで、情報に対するニーズは全体として高いということが一般的な傾向としては言われます。
それから、質問項目では14番から後の3項目になるわけですけれども、科学的に正確な情報を、これは実際に研究班の中でご専門の先生にお聞きして作って、それぞれについてはどれぐらい知っているかということを聞いたわけなのですけれども、そういう科学的に正確な情報についてはほとんど知識がないということは自覚されていたということです。
以上は、本当にたくさん項目がある中の一部でございますけれども、全体的な傾向として見られたということです。
それから、個別に幾つか差が見られる項目について、これは資料に入れておりませんけれども、主要なところをお話したいと思います。一つは、これが今後実は難しいなと思っているところなのですけれども、女性の方が男性よりも得ている情報が多い。つまり、詳細項目にわたっていろいろな情報をどうも聞いているということが多い。それから、危険というふうに感じる項目も女性の方が多くなっています。これは職業別ということなんですけれども、主婦層を女性というふうに読み替えていただいたらいいと思うのですけれども、職業別に見ても、主婦層では、いわゆる正しくないと言われていることも含めて「しろうと知識」がより正しいと信じられている傾向があるということがあるということが、性差、それから職業差についていうと言えるかなと思います。
今後、詳細な分析をしてリスクコミュニケーションガイドに生かしていきたいと思っているのですけれども、どういう人に対して話をするかということについて、少なくとも性差はありそうなので、相手によってコミュニケーションの仕方を変えるという言い方は適切ではないかもしれませんけれども、女性についてはどうも知識を構成している情報が多そうなので、少し伝え方は考える必要があるのかなということはこれらのデータから見られます。
それから、最後ですけれども、年齢について若干留意が必要かなと思うのですけれども、年齢が高いほど、情報を知っていると答える人が多いということはほかのどういう社会調査でも見られるのですけれども、一つは、こういう健康問題については年齢が高くなるほど関心が高くなるので、情報を積極的に収集しているということの結果知っているというふうに答えているということがあるかもしれません。これは更に検討してみる必要があります。
もう一つは、必ずしも社会調査で質問をしたからといって、思っていることを正直に答えてくれているわけではないのですね。そのうそをどうやって発見するかということが実は難しい問題なのですけれども、そのことを考えると、少し年齢の高い方は、知らないことでも知っていると答える傾向が一般的にあることが知られているので、その反映かもしれません。しかし、これは更にほかの項目に対する回答との分析で、できるだけうそでない部分を今後調べていく必要があるのかなというふうに思っています。
今お話ししたのは全体的な、たくさんの人を相手にした社会調査で、量的な傾向を見ているものですけれども、この後、更に各分担研究者の先生の調査結果を少しお話ししたいと思います。
今申し上げたような社会調査は、どっと調査票を配って回収して歩きますので、例えば書いている最中にだれかと相談しているかとか、何かを調べているかとか、うそを書いているかということまではよく分からないわけですね。それから、質問項目にない項目については反応をとることができませんので、全体の傾向をつかむためにはいいのですけれども、データの精度という意味では少し欠けるところがあるので、これは、消費者行動の専門家の杉本先生にお願いして、グループインタビューを何回かやっていただきました。男性、女性消費者、それから学生を対象に実施をしていただきました。どういう形式かというと、何人かのグループで話し合いながら、訓練されたインタビュアーによって質問をするという形式です。
これが大変小さくなってしまって申し訳ないのですけれども、お配りしております資料3−4−1の3ページに概要は載せておりますので、大体の結果はそちらで見てください。
それで、今日スライドにしておりますのは、男性消費者グループの結果と女性消費者グループの結果ですけれども、「環境ホルモン」という言葉と「外因性内分泌かく乱化学物質」という二つの言葉を使っていますけれども、具体的な情報については男性消費者は余り認識がなくて、むしろ環境問題とか環境汚染という問題の一つというふうな形で認識されていることが多いということですね。
女性消費者についていうと、断片的なのですけれども、これは社会調査を裏付けるデータですけれども、情報は豊富で、具体的に塩ビのお椀に熱湯を注ぐと有害な毒物が出ているというような発言が自発的に出るというような状況でした。
今のは消費者に対するグループインタビューの結果ですけれども、ガイドラインを作っていく上では、情報を提供する側がどういう情報を伝えるかというコミュニケーションのマニュアルのようなものは勿論必要なのですけれども、一方で、情報を受け取る国民とか一般消費者の側にとってみると、それなりの啓発とか、物の考え方とか、データの読み方とか、そういうようなことも啓発していく必要があるのではないかというふうに思っております。その点については京都大学の楠見先生のグループにお願いしているわけですけれども、楠見先生のグループのデータをこれからご紹介します。これはどちからというと、できるだけ多くの視点から情報を見て、そして一つの事実や数少ないデータに固執するのではなくて、批判的に情報を読み解くためにはどうしたらいいかということを検討していただきました。
今日お話しするのは、報告書には載っていない方ですけれども、大学生を対象として質問調査をしていただきました。2回やっていただいているのですけれども、端が映っていないですけれども、2回の結果がこのようになっています。
結果の見方ですけれども、批判的思考にかかわるような特性を分析しますと、知識があるかどうか、それから証拠を見るかどうか、客観的に物事を見るかどうか、情報に対する探究心があるかどうか、思考のプロセス、そういうようなものをこれは尺度で構成できるのですけれども、5つの大ざっぱな尺度というか、内容で見ることにします。
知識だけはちょっと別なのですけれども、この上の4つはクリティカルシンキングの構成要素というふうにしてみると、図が小さくてごらんになりにくいかと思うのですけれども、太い矢印のところは影響があるというものです。比較的細い矢印は影響がないということなのですけれども、物すごく認知要素が多くて申し訳ないのですけれども、例えばリスク回避をするかどうかということについては、便利だと思うかどうかが負の影響を与えている。つまり、便利だと思う人はリスク回避をそれほどしないということになります。一方、環境や健康に影響があると思っている人たちは、数字は小さいですけれども、リスク回避をよりするというような形で見ていただくとお分かりになるかと思います。
大体なのですけれども、個別の認知要素については、見ていただくしかないのですけれども、こういう批判的思考態度と知識がそれぞれ信念やコスト認知というような全体の認知要因にかかわってきて、それが、便利さがどうであるとか、環境に対してどうであるとか、健康についてどう考えているか、あるいは厚生労働省にどういうふうに要望を持っているかというような態度を決定し、これらの態度が全体として対処行動に影響を与えているというような因果関係というか、モデルになっています。
それから、また個別の分担研究に戻るのですけれども、これも京都大学の内山先生のグループでは、これは危機事例なのですけれども、実際に行われたリスクコミュニケーションの経過を二つの事例を基に分析していただきました。一つは、内分泌かく乱化学物質ということではないのですけれども、有害化学物質による健康被害で行われた危機管理のリスクコミュニケーション事例が、うまくいった例と、悪い例と言ってしまうと語弊があるのですけれども、二つの対比できる例で比較していただきました。
一つは、東京都のさる保育園でのアスベスト暴露の例ですけれども、園舎の改修工事で吹きつけられたアスベストが飛散して保育園の園児が暴露したというものです。ポイントは、1999年4月21日に園舎改修の保護者説明のときに、保護者からアスベストが使用されているのではないかという問い合わせがあって、安全を配慮してくださいという要請が自発的になされたのですけれども、現実には調査をせず工事を強行したために、結果的にはアスベストが飛散して園児が暴露して、非常に保護者の不信と批判を招いたという例です。最終的には、保護者が推薦した委員を含めた専門委員会で健康リスク評価を行って、当面の不安は解消されたということになっていますけれども、現実には訴訟につながっている例です。
一方、八王子市立小学校の蛍光灯が破損したことによるPCB暴露の事例なのですけれども、こちらの方では、二つ事故が連続して起こっているのですけれども、一つ目の学校では、事後の対処が不十分だったのですけれども、二つ目の事故の場合には、初期の段階から専門家が登場して、公開の専門家会議で健康リスク評価を行うというようなことを行っています。このような非常に早期からの専門家の介入によって、最終的にはうまく収まったという言い方はよくないのかもしれないのですけれども、当面の健康不安は解消されたという形になっています。
この二つの例を見てみますと、ポイントが幾つかあるかなと思うのですけれども、一つは、早期の段階から、最初の例ではたまたま保護者の方から要請が出されていたにもかかわらず、それを無視したということが問題になっていそうだということです。それから、二つ目の事例では、専門家が早くからファシリテーターとして介入しているのがどうもよかったということで、特にこの二つの例は、未然防止というよりも、危機的な状況に当たってどういうふうに対処するかということについて示唆を与えてくれていると思うのですけれども、ガイドラインの中ではこのような未然防止の観点からのリスクコミュニケーションの場合と、事故が起こったときにどう介入するかとか、どのようにリスクコミュニケーションするかという二つの要素を備えたいなというふうに思っています。
それから、最後の分担研究になりますけれども、実はリスクコミュニケーションをする場合には、どのように言葉で伝えるかということが重要なのですけれども、日本語でどういう言語表現をすればどのように受け取られるかについての研究は、実は、まったくなされておりません。それで、この分野についてはただ一人の専門家であります岡本先生にお願いして、言語表現の在り方を昨年度から検討していただいています。
一つは、いろいろな言語表現をするわけですけれども、受け取る側はそのまま書いてあるとおりに受け取るわけではなくて、ここに「推意」と書きましたけれども、何らかの形で推論をしているわけで、その推論がどのように生じるかということを検討していただきました。
もう一つは、いろいろな用語が出てくるわけですけれども、その言葉によるイメージというのはかなり大きな問題で、例えば同じことを言っているのに、一方の言葉では恐ろしさを感じるとか、そうでないということがありそうなので、それは具体的なリスクコミュニケーションマニュアルでいうと、使った方がいい言葉とか避けた方がいい言葉のリストアップにつながるというふうに考えています。
ここではまだ直接的には結果をお示しすることはできないのですけれども、例えばこういう研究をしていただいております。これはたまたまお酒を飲む人と飲まない人のデータがとれるということで分けてデータをとっているのですけれども、ここで並立と推量と接続詞と書いてあるのは、二つの事実を並べます。例えば、この場合でいうと飲酒ですので、「Aさんは20年間飲酒をしていました」という事実と、その後に「肝臟を悪くしました」という趣旨の記述を書きます。接続詞と書いているのは、これは比較のためのものなのですけれども、その二つの言葉の間に「したがって」とか、「そのために」というような接続詞を入れます。そうしますと、長年の飲酒と肝臟を悪くしたことには接続詞を入れていますので、因果関係があるというふうに見なされますので、これは上にいくほど因果関係があるというふうに見なしているわけですけれども、そういう推論が生じます。これは文字どおりですので、見ていただいたらいいと思います。
推量と書いているのは、そのような明確な接続詞を入れなくても、これは特にお酒を飲まない人の場合ですけれども、「したがって」とか「そのために」と言わないにもかかわらず、二つの事実を並べることによって、その事実に因果関係があるであろうというような推論が生じそうだということがこれでわかると思います。このデータでは、たまたま飲酒される方の推量値が低くなっているのですけれども、これはどのリスクでもそうなのですけれども、自分にかかわりのあるリスクというのは低く見積もる傾向があるので、恐らく飲酒される方は因果関係を少し低く見積もるということがありそうなので、これはたまたま飲酒のデータですけれども、将来分析していく必要があるかなというふうに思っています。
それから、これもちょっと見にくくて申し訳ないのですけれども、言葉のイメージについてもデータをとっていただいていて、字がダブってしまって申し訳ないのですけれども、何を見ていただきたいかというと、知識が増えるほど恐ろしさが増している。ほぼ直線関係にあるということが言葉のイメージのデータからは分かるということが言えるかなと思います。これが昨年度中の結果です。
それで、本年度ですけれども、本年度はいよいよガイドライン案の作成と、維持管理の仕組みについて具体的に検討に入っていきたいなと思っております。お手持ちの資料の3−4−2に少しガイドライン案ということをお示ししているわけですけれども、ここで少しご意見をいただきたいなと思っているのは、ガイドライン案を作成いたしますけれども、例えばべからず集とか、こうした方がいいというような個別の項目のリストはご提示することができると思うのですけれども、それだけですと大変に行動の規制が多いというか、やる方としては面倒な感じになってしまって、なかなか実現されないのではないかなというふうな懸念を個人的には持っています。ですので、ガイドラインはご提示しますけれども、それをどうやって維持管理していくかについてはこれから追々ご相談させていただければなというふうに思います。
それから、これは分担研究者の班の先生から出てきたご意見ですけれども、リスクコミュニケーターとかファシリテーターを養成するためのプログラムの開発は少しさせていただきたいというふうに思っています。それから、子どもや次世代に対するリスクコミュニケーションの在り方については未検討なので、これから今年いっぱいさせていただきたいと思います。
それから、今申し上げているような未然防止の場合と、例えば新聞などで報道がなされると突発的に問題が起こる可能性があり得るわけなのですけれども、そういう危機管理マニュアルとは分けて検討したいと思っていて、その二とおりでガイドラインを作成させていただきたいというふうに思っております。
一方で、市民の教育啓発の問題、それから語のイメージ、説明の丁寧さなどというような個別の問題については、少し心理学的な実験を基にどちらの方がいいとかどのようにしたらいいというような項目でご提示できたらなというふうに思っております。
以上でございます。長くなりまして、申し訳ありません。
○伊東座長
ありがとうございました。何か質問はございますか。
座長が言うのは非常に具合が悪いのですけれども、一つは、例えば「環境ホルモン」という言葉は非常によく理解されているけれども、「内分泌かく乱化学物質」というようなことについては一般の人の理解が非常に低かったですね。それについてどういうふうにしてやればいいか。例えばマスコミに対する対応などについてのご検討はなさっているのかということですね。
○吉川先生
現状ではやっておりませんけれども、例えば先ほどの言語表現の話は、マスコミの方にできれば提供したいと思っている資料なのです。といいますのは、責任が問われますので、明確に断定する記事にはならないと思うのですけれども、実際にこうでした、ああでしたというような事実だけを並べることによって、因果関係を推論されてしまう可能性があるわけですね。例えば何とかという実験結果が出ましたと、見かけ上は事実を書いているだけなのだけれども、その結果としてこういう推論をする可能性があるということはかなりあると思うのですね。
例を挙げてもいいのでしょうか、「葉っぱもの」と言うことによってホウレンソウと推論するということがあるとすると、単に事実を並べているだけかもしれないけれども、こういう事実の並べ方をするとこういう推論の仕方があり得るということを提案することによって、少し書き振りを用心していただくというようなことはあるのかなと個人的には思っています。それが一つです。ですので、言語表現はそれに直接つながるということです。
それから、今先生がおっしゃった、「環境ホルモン」と言うか、「内分泌かく乱物質」と言うかということも少し議論させていただきたいなと思うのですけれども、岡本先生が現状でなさっていらっしゃる検討結果の方向からすると、「内分泌かく乱物質」という言葉の方が言葉のイメージが悪そうなので、これは実際にできるかどうか分かりませんけれども、言い換えることをご提案してもいいかどうかということは私どもでは何とも言えないところなので、それはご批判いただければいいかなというふうに思っています。
ですので、この辺が非常に難しいところなのですけれども、使ってはいけない言葉とは言えないけれども、言い換えた方がいい言葉のリストは多分今年じゅうに、ある程度の形でできるので、それは提案させてください。それを実際に使われるかどうかはこちらの方ではお願いできないということです。
○伊東座長
環境ホルモンということで一般の方の認識が非常に高まったということについては、私は別に問題にしているわけではないのですけれども、マスコミの方の家庭欄に取り上げられるような書き方と、政治欄とか国際的な問題について取り上げている取り上げ方とは全然違った取り上げ方があるということが言われているのですね。家庭欄では恐怖をあおるというか、そういうような傾向がある。それに比べて、国際的な問題、あるいは政治欄のときは非常にニュートラルな対応をしておられるというようなことがありますので、それもこれからリスクコミュニケーションのリスクアセスメントのときには是非中に加えて検討していただきたいということでございます。座長ではなくて、私が向こう側にいるというふうに思っていただければありがたいんですが。
○吉川先生
今、先生がおっしゃった点については岡本先生にお願いして、既に実際の新聞記事の分析はしていただいているので、今おっしゃったような、家庭欄と政治経済欄の書き振りの違いがあるかどうかとか、そういうことについては検討をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○津金委員
一点目は、サンプリングの設定と理由です。この種の調査としては回収率が比較的高いような気がするのですけれども、そこら辺を含めて教えてください。
○吉川先生
サンプリングは一般的にやられている方法ですので、特にこれの回収率が高いということはないと思います。回収率が高い一つの理由は、訪問留置法といいまして、郵送ではなくとりにいっているので、督促をかけておりますので少し高くなっているということです。
もう一つは、これは調査会社の方ともお話をしたときに、調査会社の方の印象でしたけれども、問題が難しい割には関心が高いのではないかということが一つありました。ですので、実を申しますと、最初に調査票を配るときには、もう少し回収率が低いということを予想しておりましたけれども、予想外に高かったということでございます。
○津金委員
関心があるということですね。
○吉川先生
潜在的にはあるというふうに思っております。
○津金委員
あともう一つ、「正しいと思うか」という質問がいっぱい書いてあるのですけれども、これを聞いた後にちゃんと正しい情報を送ってフォローしているのですか。調査しっぱなしなのですか。みんな何か近海の魚を食べると健康によくないとか、それが正しいと思ってしまって、そのまま終わってしまうのですか。
○吉川先生
それは非常に議論になったところなのですけれども、一つは正しくないという断り書きを入れて勘弁していただくということと、それから、実は結果をお送り中なので、目に届くかどうかは分からないのですけれども、読んでいただける方にはそういう形でフォローができる。
ただ、ここに書いてあることが正しいかどうかについては、研究班の先生方の間でも議論がありまして、どうとも言えないというところが実はございました。それで、最後の方の質問についてはよろしいでしょうということで合意を得て書いてあるのですけれども、前については必ずしも正しくないけれども、少なくとも世の中で言われている事柄については、知っているかどうかということは重要なので並べてみたということになります。
○津金委員
正しいと思っている人が多いから、それが正しいとみんなは思ってしまうのではないですか。例えば質問16なんかでは、一番正しい答えである「人での健康障害は証明されていない」というのを知っていると言っている人が、ほかのものに比べて比較的少ないですね。そして、そういう回答の集計結果が来たのを見ると、「人での健康障害は証明されていない」というのは少数なので正しくないのではないかと思ってしまう。誤解を招いて終わってしまいますね。一応参加していただいた以上はやはりちゃんとフォローしていった方がよろしいのではないですか。
○吉川先生
そういう意味では、結果はフィードバックしております。回答されない方とか、フィードバックをお読みにならない方は仕方がないかもしれませんけれども、最善は尽くしているつもりです。
○津金委員
フィードバックというのは難しいのではないかなというふうに思ったんです。
○吉川先生
実は、調査票を送った直後に正しい情報を送ろうかという話も実は研究班の中でもあったのですけれども、押しつけがましくないかという意見がありまして、そこはペンディングになっております。
○松尾委員
リスク絡みでは必ずステークホルダーというのを考えなければいけないと思うんですね。この場合はリスクばかり考えていますよね。避けて通れないのがステークホルダーで、利害関係がどうなのかという問題は必ずリスクではついて回ると思うのですけれども、このコミュニケーションでは、いわゆるベネフィットというものですね、これは全然お考えになっていないのでしょうかという質問です。例えば、このアンケートの中に、プラスチックは非常に役立っているとか、そういう質問が全然ないということです。
○吉川先生
多分、それは私ども心理学者の方の思い込みというのか、ある意味で当然なので調査項目から落としたということなのですけれども、ベネフィットは非常に過剰に評価されてしまうので、調査では余り見る意味がないということなのです。
○松尾委員
3乗とか2乗というものですね。
○吉川先生
そういうことなのです。ですので、余り聞く意味がないと思って聞いていないということです。
○松尾委員
コミュニケーションではベネフィットのことはお考えにならないということですね。ご意見をお伺いしているだけですから。
○吉川先生
勿論両方伝えなければいけないので、そういうことは実際にはあると思うのですけれども、社会調査においてはそれほど影響があると思えなかったので入れませんでした。つまり、ベネフィットの情報は、1つ情報が出てくればもうそれでひっくり返るほど強力な情報という意味です。
○伊東座長
いろいろと立場上難しい問題がありますけれども、吉川先生、ありがとうございました。
それでは、次に東海大学の牧野先生、それから岸先生、津金先生という順で、ビスフェノールA、フタル酸エステル、それからノニルフェノールといった問題について、最新のトップレベルの情報をご説明ください。
○牧野先生
トップレベルという、解釈によると大変厳しい言葉でございますが、今得られております私どもの分析ガイドラインにのっとりました測定値をこれから供覧させていただきたいと思います。
その前に、お手元に3−5−1という資料がございまして、そこに一部資料が載せてございます。ご確認いただけますでしょうか。3−5−1の資料は、1ページ目は私どもが測定いたしましたビスフェノールAのフリーのものでございます。サンプルナンバー1から15は、今から4年前になりますか、平成10年に補正の予算で私どもが検討したときの母体血と臍帯血と母乳でございます。今から4、5年前と現在では測定レベルが大変違っておりまして、この当時は、行政の方からのご意見もございまして、測定ラボにこれらのサンプルを委託いたしましたところ、ここにございますように、ほとんどNDという形で戻ってまいりました。これは、こういう内分泌かく乱化学物質の暴露を考えるときに、本当にないのか、あるいはその感度以下のレベルで存在するかという大変難しい岐路に立たされまして、前半で報告申し上げたような分析法を再度確立したわけでございます。
その結果がナンバー16以下でございまして、ここに成人女性というのは表現が異なりますが、母、胎児という上のものとほとんど同一と思っていただきたいと思います。ナンバー16から1ページ目のナンバー24まで眺めますと、ここに母体血というものがございまして、母体血のナンバー16以下のところは 0.43、0.23 という柱と、0.10、0.29 という柱がございます。0.43、0.23 という柱は、母体血の中のビスフェノールAにつきまして、下の脚注の*2が右と左が間違っておりますが、左側の柱はHPLCで測っておりまして、0.43、0.23、0.63 ということで、これは 0.21 から 0.79 の間にございます。右の柱は何かというと、これは私どもが先ほどの分析のガイドラインで示しましたLC/MSで測りまして、この範囲は 0.10 から 0.32 でございます。
ごらんになってお分かりのように、やはりELISAが特段に高く出まして、左の欄のように、HPLCでもまだ高く出る。LC/MSになりますとほぼ値が安定して、0.10 から 0.32 の間で測定できたということでございます。同様に、臍帯血の 0.61、0.45、0.69 ppb の値はHPLCでございまして、0.18、0.28 というのはLC/MSで測ったものでございます。
ですから、このガイドラインに沿いますと、私どもが検討した範囲では、通常の母体血では血中のビスフェノールAの遊離体につきましては 0.10 から 0.32 ぐらいだろうと。臍帯血では、LC/MSで測定いたしますと 0.14 から 0.28 のレベルで存在するだろうというふうに推測いたした次第でございます。勿論、目下こういう測定値を集積しつつありますので、私どもの班研究の終了時点では更に数の多い数値をご報告申し上げたいと思います。
続きまして、2枚目でございますが、2枚目は同じビスフェノールAと書いてございますが、これはトータルというふうに断ってございます。トータルで測りますと、やはりフリーよりは母体血でも臍帯血でも高く出てきている。そして、ナンバー31以下でございますが、血清と腹水で、この時点では臨床的には子宮内膜症というようなものが大変問題になりまして、腹水の中にこういう内分泌かく乱化学物質のありやなしやということがございましたので、トータルのビスフェノールAを、IZというのは不妊という意味の私どものコード番号でございますが、そういう方々の血清と腹水で測りましても、0.2 ppb 以下ということでございました。したがいまして、ごらんになるように、ビスフェノールAというのはLC/MSで測定いたした範囲では0.コンマ以下 ppb で測定できるものが多い。
参考までに、2ページ目の下半分は第1回から第4回までの日本内分泌かく乱化学物質学会で演題発表がございました各ELISA法による、あるいはGC/MS、あるいはHPLSによるこのビスフェノールAの分析報告例の絶対値をここに参考までに比較検討してございます。欄外のB−6、A22というのは当時の学会の演題番号でございます。
ごらんになると分かるように、例えばELISA法で測りますと、cの精奬の場合には最高値では95ナノグラムまでという値が出てまいります。それから、臍帯のティッシュだと思うんですが、3.1 ナノグラムというかなり高度なものが出てまいりますが、HPLCになりますと、ややその絶対値が少なくなりまして、GC/MSでは 0.85 からということで、測定法によって絶対値に凹凸があるということをここでお示ししたかったわけでございます。
そして、次のページにノニルフェノールの測定値がございますが、ここには母児ではございませんで、成人におけるノニルフェノールとオクチルフェノールの分析結果がたった2行書いてございますが、もう少し具体的にこのOHPでお示しいたしたいと思いますが、これをごらんになっていただきたいと思います。
これはノニルフェノールのデータでございます。ボランタリーに10人の検者をもってまいりまして、年齢はほぼ20歳代、クレアチニンクレアランスを測定いたしまして、通常の食事の後の尿中のフリーのノニフェノールと、それからグルクロン酸と抱合したものを測定いたしますと、私どもの分析のガイドラインにお示しいたしました分析法によりますと、フリーも、1例 0.96 というふうに測られてまいりますが、グルクロン酸の抱合型もほとんど測定されてこない。
ところが、食品用のPVCのラップフィルムを使用した、例えばおむすびであるとか、ハンバーガーなどを電子レンジなんかでチンとしまして、食後 2時間の尿で同じような方法で測定いたしますと、グルクロン酸で抱合体のノニフェノールはそれ以前の場合にはほとんど測定してまいりませんが、なんと、3けたで測定してくるという非常に有意な差が見えてまいりました。これをどう評価するか、今後例数を増しまして、ご批判に耐えるようなご報告を再度いたしたいと思います。
それから、フタル酸エステルにつきましては、先ほど分析のガイドラインでお話し申し上げましたように、フタル酸エステルの何を測るか、三十数種の中のようやく5つの物質につきまして焦点が絞りきれてまいりまして、分析のガイドラインが策定できた直後でございますので、本年度これは継続して測定してまいりたいと思います。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。ホットなデータをお見せいただきました。それでは、次に北海道大学の岸先生に最近のデータをご説明いただきたいと思います。
○岸先生
私どもは妊婦から立ち上げまして、子どもを対象としたコホート研究、それから先天異常に関しまして症例対照研究を進めておりますが、本日、実は10分と言われましたので、先生方にご紹介して少しご意見をいただきたいと思っておりますのが、昨年から立ち上げております前向きコホート研究の現在の進捗状況と全体の流れ等でございます。次をお願いいたします。
(スライド)
既存の調査研究で、小児の泌尿器先天異常との関連につきましては、70年代に流産防止薬として使用された合成ホルモンの胎児への暴露が尿道下裂、停留精巣などを引き起こす、発生が関係があるという報告がございまして、ラットによる動物実験では、ビンクロゾリン、フタル酸エステル類で尿道下裂、停留精巣を引き起こすことが報告されているが、ヒトでの疫学データは非常に限られております。
私どもで症例対照研究の形で、後ろ向きにさせていただいた研究で厚生労働省から報告書を出させていただいていますが、それでは70年代の後半ぐらいまで、ホルモン剤を投与されたといいますか、使ったお母さんから生まれた子どもの方がオッズ比が約3倍ぐらい高いということがございまして、それは報告させていただきましたが、最近のデータではそういうものがございません。
一般的には、下に書いてございますように、よく知られておりますのは、神経管欠損、最近ですと口蓋裂や口唇裂なども、先天異常に関しまして葉酸、ビタミン摂取が非常にはっきりとした関係があることが分かり、2000年ぐらいには相当インタベンション(介入)も進んできておりまして、葉酸とかメチオニン、ホモシステインの代謝酵素の遺伝子多型との関連が報告されていますが、ヒトで母の内分泌かく乱化学物質との関連は研究がほとんど行われておりません。次、お願いいたします。
(スライド)
発生動向に関しましては、ICBDMSの報告によりますと、70年代から80年代ぐらいまでは世界的に少し増えている傾向があったのですが、90年代以降では米国、デンマーク、ノルウェー等で増加傾向がございますけれども、日本でも日本産婦人科医会のモニタリングでは増加傾向にあると報告されておりますけれども、じっくりとデータを見ます限りでは、むしろそれほどのものではないのではないかというふうに読める面もございます。後でそれはお話しいたします。
私どもは、厚生科学研究で85年から98年、北海道内で尿道下裂の手術例全例につきまして詳細な調査を行いましたところ、有病率は男児出生1万人当たり平均 7.6 人で、現在の日本の産婦人科医会のモニタニングの発生率よりもむしろ高い数字が認められました。しかしながら、長期的な観察で過去 15年間、北海道の例で重篤例、それから軽症例で見ました限りは、重症例が多い場合には遺伝的な傾向、あるいは軽症例が多い場合にはモニタリングに参加する先生方の認知度が関係してくるというふうに思われますが、この15年間はいずれも増減傾向は認められませんでした。
それから、停留精巣に関しましては、ICBDMSのモニタリングは外国では行われておりまして、米国では増加が報告されておりますが、日本ではモニタリングが全く行われておりません。それから、低出生体重児、早産児で停留精巣が多いということは病院ベースでは知られておりますが、一般集団での発生率についてはデータがございません。それから、満1歳までは自然下降が期待されますので、出生児のモニタリングからは除外されているということはその理由がございます。次、お願いいたします。
(スライド)
既存の日本の研究では、平原先生たちが尿道下裂の児を産んだ母親の血中ビスフェノールAの測定結果を昨年発表されていらっしゃいますけれども、手術時あるいは術後経過観察時のデータで、前向き研究ではございませんので、胎児の器官形成期のファーストトライメスターの時期にサンプルにした血液でありませんと、因果関係については疫学的には何とも申せないということになります。それから、ビスフェノールAの測定が、先ほどご発表がございましたように、ELISA法をされておりますために、私どもも実は大学で過去十数年間保存しております妊婦の試料をELISA法で測定いたしましたけれども、(ビスフェノールAは)むしろ過去の値の方がかなり高くて、最近は下がっておりまして、平原先生のデータの方がむしろ低いということがありまして、その意味ではちょっと矛盾があるのではないかというふうに考えております。次、お願いいたします。
(スライド)
これが病院ベースの調査ですが、ほぼ人口 570 万で全症例を扱っております。産婦人科医会では、人口の大体1割ぐらいをカバーしているところでは、生後7日の間にモニタリングが実際はされておりますけれども、軽い例も手術例は拾っていると思われまして、この数値は日本の中ではむしろ高い数字でございます。男児出生当たり 7.6 人と推定されます。これは、欧米のほぼ3分の1ぐらいの数であります。重症度で分けてみたが、一定の傾向が認められませんでした。ただし、手術例のために、妊娠初期の住所が調べられておらず、地域差等が分からないのがこの後ろ向きの欠点でございます。次、お願いいたします。
(スライド)
そういうわけで、今始めているところでございますが、内分泌かく乱物質による胎児期からの暴露に焦点を当てまして、地域ベースで妊婦を対象に前向きコホートを設定いたしまして、次世代影響のリスク評価を行うことを始めております。アウトカムとしましては、関連が疑われております小児泌尿器系を初めとする先天異常、産科異常などであります。
仮説は、妊婦が内分泌かく乱化学物質に暴露されることにより、胎児の泌尿生殖器の奇形が引き起こされるか否か、バックグラウンドレベルと、普通の妊婦が暴露される程度でも化学物質の代謝酵素の遺伝子の多型により感受性が異なり、胎児への影響が異なるかどうか、これを明らかにしようとしております。次、お願いいたします。
(スライド)
対象疾患でございますけれども、神奈川県では外表奇形のモニタリングをされておりますが、それに加えまして、産科異常と泌尿生殖器奇形を追加いたしました。北海道版の先天異常診断の手引を作成いたしまして、モニタリングの協力施設に配付いたしました。対象疾患の定義とか診断基準がしっかりいたしませんと、データの精度が非常に落ちますので、これを初年度やっております。泌尿器系の診断に関しましては、小児泌尿器科学会の99年の診断基準に従いまして、私どもが手引書を作って進めておりましたのは、神奈川県が主に外表奇形44種類にやっておりますので、これにICBDMSの先天異常で内分泌かく乱化学物質の関連が疑われている泌尿生殖器11種類を追加いたしました。それから、頻度が多い消化器系の奇形を追加いたしました。さらに、今日は時間の関係でデータを持ってまいりませんでしたけれども、子宮内の胎児の発育遅延が私どもの症例対照研究で尿道下裂、停留精巣両方と関係しているデータが得られておりますので、この点、それから羊水過多・羊水過少等について追加いたしまして、58種類をマーカー奇形として前向きにつかんでいくつもりでスタートしております。次、お願いいたします。
(スライド)
マーカー奇形のこのとおり、この1から3、それから消化器系、泌尿生殖器奇形、先天性の心疾患が神奈川で入れていないもので新たに追加したものでございます。次、お願いいたします。
(スライド)
新生児個票は、インフォームドコンセントが得られたお母さんの子どもさん全員に対しまして、各施設でこのような形で書いていただいて集めるということでスキームになっております。次、お願いいたします。
(スライド)
このサンプル数をどのぐらいにするかという根拠でございますけれども、ICBDMSで公表されております日本の先天異常の発生率を参考にして、口蓋裂とか、尿道下裂ですとか、二分脊椎はいたしましたが、停留精巣に関しては日本のデータは全くございませんので、比較的人種が近いと思われます韓国の発生率の 0.7% を参考にいたしまして、1年間総サンプル数が 5,000 得られたといたしますと、停留精巣は発生率は 35、大体出生数1万当たり 70 ですので、心室中隔欠損症(VSD)が 13.9、口唇裂を伴った口蓋裂が 11.2、21トリソミーが 10.4、尿道下裂は 3.5 といたしまして、このぐらいの数になります。
そういうことで、サンプル数が 5,000、1万、1万5,000、2万というふうに上げておりますが、もし 2万人の妊婦が集まったとしますと、停留精巣が 140、VSDで 27.8 ということになりまして、症例対照研究のデータからサンプルサイズを推定いたしますと、リスクを検討しますのに 100 例ぐらいは必要ですので、停留精巣ですと1万から1万5,000 で、尿道下裂ですと2万人でも発生が 7 ぐらいになりますので、男児1万で 7 ですので、女児を合わせますと 7 ぐらいになります。ですから、非常に厳しいけれども、これだけの数が必要だということになります。次、お願いいたします。
(スライド)
それで、私どもの調査を北海道大学を初め、札幌医大、旭川医大、道内のすべての大学の産婦人科と医療機関に声をかけてお願いしているところですが、妊娠初期12周までに妊婦さんから同意書をいただきまして、かなり詳しい調査票に書いていただき、採血を 10ミリリットルさせていただく。それとともに、妊婦さんには出産時の臍帯血、母体血をとらせていただく。あるいは、出産後、新生児個票についてアウトカムにマルフォメーションがあってもなくても記入させていただく。それから、停留精巣が生後半年から1年ぐらいまで経過を追う必要がございますので、1歳まで経過を追わせていただくというような、かなり長いインフォームドコンセントをとらせていただいています。12週までの血液で、フタル酸エステル類、ビスフェノールA、それから植物性のエストロゲンを測定させていただき、それから妊娠8か月、それから出産時のデータで半減期が長い内分泌かく乱化学物質及びヒトの遺伝的な感受性素因をこの時点で測らせていただくつもりのプロトコルになっております。次、お願いいたします。
(スライド)
調査票ですが、既に症例対照研究で後ろ向きに走っておりまして、私どもで既に少しデータが出始めているもの、それから世界のデータで、例えばごみ処理施設場からの距離によって同心円的に先天異常の発生率が違うというデータが2000年の例えばランセットあたりに出ておりますので、その辺のところが妊娠の初期の住所で追えるように聞いております。
それから、社会経済要因がかなり先天異常には影響を受けることが分かっておりますので、これは非常に臨床の先生からは抵抗があったのですが、世帯の収入等も聞かせていただいておりまして、このような症例対照研究で当然聞かなければいけない項目をしっかり入れております。
それから、先ほど申しました葉酸とビタミンAに関しましては、外国のデータはかなりはっきりしたものが出てきておりますので、それもきっちりビタミンAとそうでないものに分けて聞いております。当然、飲酒歴、喫煙歴、それから化学物質の暴露歴を妊婦について、これは尿道下裂が余りはっきりしなかったのですが、停留精巣の方で幾つか化学物質との関連が出ているものがございましたので、それをやはりコホート研究でも、全員にしますので、症例対照研究ほどは詳しく聞けないのですが、入れておりまして、あとパートナーについて同じことを聞いております。次、お願いいたします。
(スライド)
測定対象物質は、先ほど申しましたように、内分泌かく乱化学物質とマイクロアレイを使いまして、11種類の化学物質の代謝の個体差を測定する系を昨年までにほぼ確立いたしました。次、お願いいたします。
(スライド)
生体試料の採取と分析法に関しましては、各病院ばらばらであっては困りますので、一定のを決めまして、これは中澤先生に、スピッツと臍帯血を採るすべての機器に関しまして汚染の状況と選定について詳しく最初のチェックをいたしました。特に、私どもでもビスフェノールAをELISAで測りまして、それなりのデータがございましたけれども、どうもELISA法の方がGC/MSよりちょっと高いのではないかということが自分たちのデータからも推定されましたので、GC/MS等の感度分析をしたいというふうに考えております。次、お願いいたします。
(スライド)
本研究によって、ビスフェノールA、フタル酸エステル類、植物性エストロゲン、PCB、ダイオキシン等と尿道下裂、停留精巣、マーカー奇形は55種類、それから先ほど申しました子宮内の発育遅延が尿道下裂、停留精巣と内分泌かく乱化学物質がどのように関連しているかということに関しては世界でもデータはございませんけれども、子宮内発育遅延あるいは低出生体重、これは生まれる時期の問題ではなくて、そもそも小さいということそれ自身がリスク要因に私ども過去の3年の方でもございましたので、やはりこれもアウトカムに入れまして、暴露量とリスクの関係、それから感受性素因がどのようにそれにかかわっているかということを解析するつもりです。次、お願いいたします。
(スライド)
現在の進捗状況でございますけれども、現在、産婦人科25施設で協力を得られておりますけれども、今は小さな病院でも倫理委員会がございますので、お願いしてから通るまでにかなり時間がかかっておりまして、本当に走っているところは7施設ですが、5月末から6月にかけましては25施設がほぼ走れると思います。
それから、今年度の上半期に、できれば50から100 施設に協力を要請して、かなりの数なんですが、できれば 2万人以上の妊婦の協力を得たいと思っております。これから先一番重要なところが内分泌かく乱化学物質の正確な暴露評価、それから内分泌かく乱化学物質以外の暴露歴によるリスクがどのようにコンファウンドしているかということをきっちり出さなければいけないと思っております。
それから、異物・ステロイド代謝酵素の遺伝子多型など、個体要因検討のためにマイクロアレイを使って行うということで、これは昨年度までにほぼ終わっております。それから、先天異常、産科異常の発生率というのは、日本できっちりモニタリングを続けていることは少ない実態でありますのと、それから尿道下裂とか停留精巣については焦点を当てて、外表奇形が主でしたので、その辺についてはほかのとすぐ比較ができるかどうか分かりませんが、せっかく地域ベースで立ち上げますので、少なくともそれを行いたいと考えております。
以上でございます。
○伊東座長
ありがとうございました。引き続き、津金先生にご発表をお願いいたします。
○津金委員
では、発表者席に座りまして批判を受けたいと思います。資料3−5−3で私どものやっている厚生科学研究の主な進捗状況をお示ししています。「症例内対照研究(がん)結果」と書いてあるのですが、これは間違いで、消しておいていただければと考えます。
私どもは、疫学研究班というような枠組の中で幾つかの研究をしています。平成14年度の進捗で、1番目としては乳がんの研究をしています。これは私ども行っているコホート研究の中で、コホート内症例対照研究というデザインによって内分泌かく乱化学物質との関連について検討しようというようなことで、そのための準備として、昨年度は倫理審査委員会に研究計画書を通すという作業と、それからいろいろな乳がんに関する臨床情報を収集するということが必要でしたので、そこの部分をやりました。
それから、2番目としては、オンゴーイングの乳がんの症例対照研究を行って、400 ペアを目標に症例収集を続けています。要するに、症例収集中というのが乳がんに関しては正直な進捗状況です。
3番目の子宮内膜症に関しましては、この前の研究班の中で症例対照の収集という作業を終わっていますので、今回の発表では成績を出せるという状況に至りました。表1に、測ったものと、実際にケース、コントロールを合わせて濃度について示しています。検出限界の問題があるのですけれども、もともと 30cc の血液からのものですので、ダイオキシン類は検出限界以下が多いと思います。それから、ダイオキシン類、PCB類、裏の方では有機塩素系農薬についてこのような形で検出されています。後ほどスライドでケースとコントロールの差についてお示ししたいと考えています。
ダイオキシンに関しては、TEQで中央値として 17.6 ppt というのが都市部の女性のデータです。それから、遺伝子多型に関しまして、エストロゲン、あるいは化学物質に関連する代謝の関連について調べたのですけれども、それ単独においては関連はありませんでした。遺伝子多型単独の影響は観察されなかったというのが現状で、今後、内分泌かく乱化学物質の暴露濃度との関係を調べていく必要があるだろうということです。
それから、4番目としては、前の研究班のときにビスフェノールAの暴露作業者のデータをとったら、血清のFSHが下がっていたという問題があったので、職業性暴露の高いレベルにおける男性生殖系への影響を調べようというようなことで、今年度は文献レビューをして、同時にビスフェノールA及びフタル酸エステルの高い暴露をしていく職業集団を見つけましたので、そこにおいて職業暴露集団の横断面研究を計画して、研究計画書を倫理審査に通すという作業を今年度行いました。
それから、5番としては、疫学研究の成果を情報提供するという目的で、前の内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会での疫学サブ班の報告書をウエブサイトに掲載するとともに、今回、その当時以来の文献検索をした結果を資料3−5−4に「疫学研究文献のレビュー結果」としてお示ししました。今回はがんと子宮内膜症に限りました。がんに関しては14、子宮内膜症に関して2つの疫学研究の論文が発表されています。がんに関してはほとんどが乳がんで、ただ、子宮内膜症に関しては2例ありますけれども、前の結果を訂正するような状況ではなくて、いわゆる因果関係に迫れるような形での統計的有意、偶然性を排除できた研究で内分泌かく乱化学物質が健康影響を与えている、がん、あるいは子宮内膜症の発生に影響を与えているというようなデータは今のところまだ得られていません。その幾つかの論文についての詳細をこの資料にお示ししております。
それで、子宮内膜症の症例対照研究なのですけれども、20歳から45歳の不妊訴えで腹腔鏡検査をした結果に基づいて、症例がステージ2から4、対照がステージ0から1としました。腹腔鏡で全部確認しています。尿中ビスフェノールAに関しては、直前の暴露になりますので横断面的検討になると思いますけれども、血清脂質中のダイオキシンとかPCBとか有機塩素系農薬に関しては、ある程度の過去の暴露を表し、ある意味では後ろ向きの検討ができているのであろうというふうに考えています。
これはステージごとでの症例数ですが、2のところでたまたま喫煙者がゼロ%であったというようなことがいろいろなところに影響を与えているようです。測定したのはダイオキシン、フラン、コプラナーPCB、PCB、有機塩素系農薬を血清中濃度で、これはアメリカCDCでガスクロで測定しています。検出下限値未満のものが幾つかあるので取扱いに注意が必要なのですけれども、血清脂質当たりで表しています。
それから、ビスフェノールA、ダイゼイン、ゲニステインは尿中のHPLC−EDCで測定しております。これはダイオキシン、フラン、コプラナーPCBの結果ですが、青いのがコントロールで、黒いのがケース、いわゆる子宮内膜症症例ですが、平均値の 95% 信頼区間と共に示していますけれども、いわゆるケースが高いということはなくて、症例も対照も濃度がほとんどすべてのものに関して同じです。たまに、コントロールの方が高いのがあれば、ケースが高い例もありますけれども、基本的には差がないということです。
TEQで表していますけれども、子宮内膜症のステージが上がるに従って、素データを年齢や喫煙で調整しています。TEQで考えれば、少なくとも、ダイオキシンが多い人に子宮内膜症が多いということはない、ということが言えるのではないかということです。
それから、PCBですが、これも同じようにケースもコントロールもほとんどのものが基本的には差がないということです。
有機塩素系農薬、DDEとβ−ヘキサクロロシクロヘキサン、これが血中濃度としては高いのですけれども、ケースもコントロールも基本的には差がないということです。
それから、尿中のビスフェノールAですが、これもケースもコントロールも差がない。少なくともステージが進むに従って高くなる傾向はありません。子宮内膜症のステージが上がるほどビスフェノールAが多いということはないということは言えると思います。
イソフラボンは逆に差があって、やはり日本人においては暴露のレベルを考えれば、ダイオキシンとかPCBとか、そういう有機塩素系の農薬なんかに比べて、圧倒的に大豆製品から来ているイソフラボンの血中濃度が高いから、少なくとも日本人の場合は今までの化学物質よりもこういうものによる内分泌かく乱ということの方を真剣に考えていかなければならないんだろうということを示唆するデータです。
研究計画としては、あと二年度で乳がんに関して日本人のデータをきちっと出したいというふうに考えています。それから、子宮内膜症はもう少し遺伝子多型との関係、それから男性内分泌系への影響に関する職域での調査を何とかして、ヒトへの健康影響についてのエビデンスというものをきちっと出していきたいなというふうに考えています。
以上です。
○伊東座長
ありがとうございました。それでは、牧野先生、岸先生、津金先生のご研究に対してご質問がございましたら、どうぞ。
○青山委員
3人の先生方にほぼ共通してお伺いしたいのですけれども、天然ホルモンであります17β-エストラジオールでありますとか、アンドロゲンでありますとか、あるいはその他プロジェステロンとかコルチコイドとか、そういったものの要因はお考えいただく必要はないのでしょうか。
例えば、エサ中にも17β-エストラジオールは入っておりますし、それは恐らく魚粉由来だというふうに言われておりますと、その他のステロイドもあるような気がいたします。それから、妊娠中のお母さんですと、ステージが同じであれば、ほぼ同じぐらいのエストロゲンあるいはプロジェステロンの両方であるはずだと思います。それから、津金先生のが一番難しくて、月経周期をお持ちの女性だと若干話は変わるのですが、そうしますと、ごく微量の内分泌かく乱化学物質を正確に測ることはすばらしい技術も要るし、大事なことだと思うのですが、同時に、先ほどの井上先生のお話ではないですけれども、天然ホルモンはその 1,000 倍ぐらい実際に生理活性が高いわけですし、それはかなりの量が少なくとも入っている。そうすると、微量の物質の多少の変化よりも、天然ホルモンの影響の方がはるかに大きいというような可能性もあるように思うのですが、その要因も併せて検討いただけたらすごくありがたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○牧野先生
私からお答えしてよろしいでしょうか。今のご質問はもっともだと思いますが、私どもの班研究の本来の目的は、いわゆるホルモンではなくて内分泌かく乱化学物質のガイドラインでしたから、本日はそういうデータをお見せしたわけでございます。
一方、私どもは妊婦に限定して先生のご質問を考えて見ますと、やはりエストロゲンにしましても、プロジェステロンにしましても、妊娠の40週のうちで大体12週から13週でステロイドホルモンの産生が卵巣から胎盤に入って委託されて、今度は胎盤が産生が始まりますね。そのクロスオーバーが終わった後は対数的な増加でございまして、エストロゲンにつきましてもプロジェステロンにつきましても分娩の直前まで、エストロにつきましては3つの分画も同じように増えますので、その中でわずかに増えたもの、もう物すごく数字的に増えたものをその中でA群、B群に分けて統計的に有意差を見いだすというのは、プランニングのときから難しいのではなかろうかと。
ただ、妊娠のときにこういう外来性の内分泌かく乱化学物質が別に増えるわけでも何でもございませんので、クロスがないと考えますと、これはそれなりに意味があるということで測ったデータを今日お見せしたわけでございます。ご指摘、ありがとうございました。
○岸先生
先生がおっしゃったようなところをポイントにしまして、症例対照研究で既に検討しているものがございますが、余りはっきりしたポジティブもネガティブも…。私もそこはとても重要なところだと思います。
ただ、私の方の研究は、もし妊婦 1万人のコホートができるとしますと、この方たちで、先ほど申しました数からいいますと、停留精巣が一番結論を導きやすいのですが、尿道下裂、それから停留精巣に関連している、また一つのリスクになっている精巣がんが、お母さんの母体中のホルモン環境が関係しているのではないかということが言われておりますが、もしそこまでやるとしますと、私どもは1歳までしかインフォームドコンセントをとっておりませんので、そこらは本当は精巣がんの子どもさんのかなりの方は停留精巣の既往がございますので、先生がおっしゃったホルモン環境全体を本当は見ていく方が生涯への影響ということでいろいろな知見が得られます。
ただ、少なくとも、この研究以外には使わせていただきませんというコンセントでお母さん方の参加率を上げるためにしておりますけれども、改めて1歳の時点でもう一度、少し落ちるとは思うのですが、そこでもう私はやめたいという方が当然出てこられると思うのですけれども、その方の場合は保存させていただいて種々の検討も可能ですので、先生のご指摘の点は非常に重要だと思っていますし、まだ外国の方でもポジティブ、ネガティブがどうもはっきりしていない点でございます。
○津金委員
やはり食べ物からの内分泌かく乱物質が非常に重要だということが分かったように、まして内因性のエストロゲンのレベルの方がもっと重要なので、乳がんに関してはそういうようなことは勿論測定して考慮するし、月経周期も聞いていますので、そこら辺を併せて検討していきたいというふうに考えております。
○伊東座長
そのほか。どうぞ。
○岩本委員
コペンハーゲン大学のスカケベックらが男性生殖機能の異変について testicular dysgenesis syndrome という概念を提唱されておられ、生殖奇形について日本で検証するということで大変興味ある研究計画で、結果を期待したいと思います。
診断のことでお伺いしますが、大学病院で診ている方はよろしいかと思うのですが、施設を増やさないとどうしてもnを増やせない。そうなると、診断のクオリティーが下がってくる。是非とも診断法を統一化していただければと思います。
○岸先生
ありがとうございます。先生のご指摘の点も、診断の基準、あるいは診断に対する新生児個票を書いてくださる方のあれがずれますと非常に問題がございますので、そこのマニュアルづくりを時間をかけまして、ちょうど本学が小児泌尿器科専門の教室でございますので、それに基づいていただくように非常に丁寧な写真入りのマニュアルを作りまして始めております。ありがとうございます。
○武谷委員
お三方に質問があるのですけれども、牧野先生はアップ・トゥ・デートなお話だったのですが、サランラップをやった場合に、聞き漏らしたのかもしれませんが、ノニルフェノールが非常に高くなると。これはどういう発想でこういう研究をやられたのでしょうか。前からそういうことが言われていたのか、あるいは先生のこれまでのご考察から当然そういうことがあるだろうと予想されてやったのか、その辺のところをお教えいただきたいのですが。
○牧野先生
ご承知のように、ノニルフェノールは私どもの環境の中では最も、いわゆる界面活性剤と申しますけれども、当然我々は暴露されるわけでありまして、これは測定環境の中で測定室、測定の容器、そういうものからこういう微妙な影響を受けるということから、当然こういう物質が市中、あるいは実験室、測定室にあって、影響を受けるだろうというのが一つの発想だろうと思います。
「だろう」と申しますのは、実は私はこの班を代表して今説明申し上げておりますけれども、私どもの班の分析のガイドラインはほとんどはここにおられます中澤教授がトップに立っておまとめになっておられますので、私はそういう発想でございますが、もし座長にお許しいただければ、中澤先生にご追加していただけたらと思います。
○伊東座長
私は前から中澤先生にお話ししていただこうと思っていたんですけれども、先生が話されると長くなるのではないかと思っただけでございます。どうぞ。
○中澤委員
では、手短に。今のご質問の点については内情を暴露いたしますと、うちの大学院生におにぎりを食べさせたのですが、今の市販のラップフィルムにはもうノニルフェノールが入っていませんので、かつて厚生労働省の厚生科学研究で測定した、間違いなくノニルフェノールが入っているというものを使っています。それでおにぎりを覆いまして電子レンジでチンとやって、食べさせて、どのくらいでくるかと。
それで、先ほど牧野先生のお話でBPAが出たのもそうなのですが、あれは分析をやっている人がBPAを飲んでしまったわけで、ある意味ではボランティアでどのくらいで出てくるかということを見たわけです。
実際に飲んで体調がどうなったかということは全く何もございません。今のおにぎりの場合も、たしか6人ぐらいの学生だったと思いますが、食べさせましたところ、結構早く尿にノニルフェノールが出てきたということであります。
○武谷委員
分かりました。
続いて、岸先生にご質問、よろしいでしょうか。先生のご発表の中で言われましたように、この種の尿道下裂とか停留睾丸というのは未熟児とか異常児に多いかと思うんですね。先生がこういう世界的な比較、あるいは歴史的な比較をされる場合に、ご存じのように、我が国の出生数は今漸減しているにもかかわらず、未熟児あるいは異常児の絶対数は逆に増えているということでありまして、10年、20年前とのインシデンスを比較する際にそういうバックグラウンドを考慮されたかどうか。増えてきたというのは、不妊治療によってそういう異常児が生まれるということもありますし、高齢出産が相対的に増えた。あるいは、医療レベルの向上、こういう要因があろうかと思いますが、そういうバックグラウンド抜きにそのインシデンスを比較するというのは、いろいろなバイアスが入るかと思いますので、正常児のみに限るとか、そのようにするのも一つの方法かと思うのですが、こういうことを考慮された解析をされようとされているのか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいなと思います。
○岸先生
大変重要なご指摘だと思います。60年代から80年代ぐらいまでかなり諸外国で増え続けて、最近はむしろ余り増えていないという報告が多いのですけれども、その点からしますと、そのときにそれぞれの先生がおっしゃられた体重の問題、子宮内発育の遅延の問題を考慮に入れた数字にはなっていないと思いますので、そこのところと、診断への関心というのでしょうか、産婦人科の先生のところへご相談に行って調査するたびに感じますけれども、えいえいとつけていたということ、その2つが非常に関係していると思っております。
○武谷委員
だから、少し見方を変えると、環境ホルモンによって未熟児が増えている、早産児が増えているのだ、それから染色体異常児も増えてしまう、これは全部環境ホルモンのせいだという結論だと、これまた大変危険でありますので、その辺をよく注意していただければと思います。
それから、津金先生のデータもほぼ予想できたものですが、少なくとも先進国において我々が接する子宮内膜症というのは、多くは女性のライフヒストリーとか、解剖学的異常だとか、いろいろな要因によって原因が説明可能ではないか。
一方、サルの実験等はかなり薬理学的な量を投与して子宮内膜症を起こしたもので、恐らくダイオキシンによって薬理学的に、動物実験学的に誘発できる内膜症と、日常見られる内膜症とは原因、病因がかなり違うのではないかと思われ、少なくとも我が国において見られる内膜症の多くは余りダイオキシンの関与はないだろう。だから、dioxin induced と non-induced とに分けることができ、少なくとも人の内膜症の多くはダイオキシンが関与せず、一部に、100 人に1人か、1,000 人に 1人かは分かりませんけれども、ダイオキシンに関係しているものもあるのか知れませんが、子宮内膜症全般にダイオキシンが関連するとかしないとか結論を出すのはいずれにせよ問題があるような気がします。
○津金委員
やはり限られたデータの中での話ですが、この研究において、東京に在住の不妊を訴えている人に関しては、内膜症の人でダイオキシンの摂取量が高いとか、血中レベルが高いということは少なくともないのだということは言えると思うのです。もしかしたら、ほかのセッティングで、あるいはもっと高い濃度を暴露している人においては関連が出てくるかもしれませんけれども、日常的なレベルにおいてはないということです。
同じプロトコルでアメリカでもやっていますので、アメリカに関してどういうふうに出ているのか、それからアメリカにおけるダイオキシンの血中濃度と日本人とどう違うのかというようなことが分かってくれば、恐らく日本人の方がダイオキシンの血中量が高い可能性があるかもしれませんけれども、そこはちょっと分かりませんけれども、国際比較も同時に今後は考えていきたいと思います。
○武谷委員
私も先生のデータは大変もっともではないかとお見受けはしております。
○津金委員
あと、子宮内膜症が本当に日本において増えているのか、増えていないかということ自体も分かっていないことだと思いますけれども、少なくともダイオキシンとか内分泌かく乱化学物質によって子宮内膜症が増えているという根拠はないということだけは言えると思います。
○伊東座長
それでは、ほかによろしゅうございますか。どうぞ。
○井上委員
ただいまの武谷先生のご質問には大変感銘を受けました。私はシェリー・ライアーの実験をカナダのグループが似たような形で追試をやったのですが、これがほとんど同様の結果を生みました。そういう事実と、それからただいまの疫学的な結果をどういうふうに整理すべきなのかというのを産婦人科の先生のお考えを一度伺いたいと思っておりましたので、いろいろな考え方があるのだということが分かりました。ありがとうございました。
○津金委員
岸先生への質問なのですけれども、1歳児健診のときに是非もう一回採血して、その後の小児神経発達というか、行動変容に対する影響というものも研究されたら非常にいいのではないかなというふうに思います。いろいろ難しいとは思うのですけれども、少なくとも 2万人は必要ですね。
○岸先生
私も宗谷の岬から根室まで、教室員だけではなく私も走っておりまして、かなり大変ではありますけれども、ただ、妊婦さんに返せるものを作りながらやらないと、なかなかなものですから、先生たちから大変いいご助言をいただきましたので、そういう意味では1歳児に、先生がおっしゃった発達とか、アレルギーとか、何かお母さんの関心が高いところを入れて、せっかく立てたコホートというのをできるだけお母さんたちに還元するような形で、しかも参加率が上がって科学的な知見が増えることを今年中にまた考えて、インフォームドコンセントをとって進めたいと考えております。ありがとうございます。
○和田委員
全くの素人で、大変難しくお話を伺ったり、分かる範囲のところは大変興味深く伺いました。特に、先ほどのラップの話というのは普通の消費者が非常に関心を持っております。それで、ちょうど昨晩主婦連の事務所でみんで一緒に食事をしたんですけれども、そのときに残りました物を捨てるのはもったいないから、とにかく冷蔵庫へ入れておこうと。たまたま可塑剤も何も使っていないラップがあったものですから、これをかけて帰ろうというわけで、やはりラップに対する関心というのは非常に深い。一般の消費者にとっても大変深いということを申し上げておきたいと思います。
さっき、コミュニケーションのお話がありまして、リスク分析というのは私たちになかなかなじみのない言葉だったのですけれども、これから大事な項目になっていきますが、その中でもリスクコミュニケーションというのは今まで慣れていない分野だったのではないかなと思いますが、ご専門の先生のいろいろなお話を伺いまして、いろいろな情報を出していただくときに、必ずしも内分泌かく乱化学物質の専門家の方が素人に分かるように易しくしようというのではなくて、コミュニケーションの専門家の方がいらっしゃるのではないかなというようなことも感じております。今までは、どちらかというと、行政からの情報というのは一方通行だったのですけれども、そうでない双方で、私たちも分からないことは積極的に声を出していこうというようなところで、今日は非常にいい勉強をさせていただきました。
○鈴木(継)委員
手短に、岸さんにコメントなのですけれども、昔から始めて今も続いている都市のがんのコホート、前向きのスタディーをかけているわけですけれども、どんどん人口が動いていって、脱落するんですよね。だから、岸さんの場合は何万という必要な数を想定されていて、その辺の人口移動と脱落の問題を読んでおかないと、予定したより倍くらい年数がかかったりして大変だろうなと思いました。
○岸先生
実は、妊婦から子どもというのは比較的スパンが短くて、先生がおっしゃるがんに比べると、勿論発達とか、先ほど来先生方がおっしゃっていらっしゃる生涯のスパンで見ると脱落の問題を考慮しなければいけないのですが、今は里帰り分娩する方を最初から省かせていただいております。里帰り分娩されますと、臍帯血や何かの採取ができなくなってしまう種々のあれがありまして、その辺が大体1割はおりますので、そこは注意しております。
○鈴木(継)委員
大変だからがんばってください。
○伊東座長
それでは、予定しております時間になってまいりました。今日はいろいろと最新のデータをご発表いただいたのですけれども、私はいつも思っておりますが、こういったいい研究が莫大な税金によって賄われてきて、データが出ているわけですから、日本はよく外国の人たちに日本はフリーライダーだと、つまり外国のデータばかり頼りにしていると言われる点がございますので、今日ご発表の先生方は国際的な雑誌に必ず出してほしい。厚生労働省に対する報告書はきっちりお書きになっても、それで終わりということにならないように、どうぞ、これからもご努力いただきたいというふうに思います。
やはり納税者に対するアカウンタビリティーというか、説明責任というか、そういうものは絶対に必要でございますので、この内分泌かく乱問題に対しては随分たくさんの研究費が今までに支払われてきました。どうぞ、きっちりとしたペーパーを出していただきたいということをお願いいたしまして、今日の論議はこれで終わりといたしますが、事務局から最後にまとめていただきたいと思います。
○事務局
それでは、少しまとめをさせていただきます。
リスクコミュニケーションにつきましては、行動計画におきまして2002年度以降にガイドラインを策定して、効果を継続的に判定して改善に生かしていくとされておりますので、吉川先生、引き続きよろしくお願い申し上げます。
それから、あと暴露評価を含めまして、疫学の関連でございますが、牧野先生におかれましてもまた引き続きデータの充実に努めていただきたいと思っております。
それから、岸先生におかれましては、いろいろと意見が今回出てきておりまして、かなり同位の関心の高い研究であるということだと思いますけれども、1つは神経発達、行動といった議論も出てきましたので、実際面ではなかなか難しいかとは思うのですけれども、一般的には後々再聴取することとなると後向きのバイアスというのもかかり得るとされておりますので、今のコホートを確立する時点で神経発達のようなものが評価できるような調査票がもしできれば、そういったものもご検討いただければというふうに思っております。
それから、津金先生からご指摘がございましたけれども、日本ではがんですとか、子宮内膜症ですとか、その辺の発生数の患者のレジストリがないという根本的なインフラの問題がありますが、他方、厚生労働省で患者調査、それから医療施設調査等々を含めまして、これは絶対数ではなくて、年間ある一日の移動者数のアクセス、入院患者、外来の数を追っているものではございますけれども、こういったものを一応ICD10に則って疾患ごとに入院患者数と外来の数を追った数字がございますので、もしこういった数字がある程度の発生数がある疾患につきまして使えるのであれば、こういったものも有効活用していただきながら研究に生かしていただければというふうに考えております。
それから、次回の第15回につきましては、平成15年度、今年度で終了する研究が幾つかございますのと、それから次々回のOECDのEDTAですとか、WNTといったOECDの会合が来年早々には開催されるというタイミングもございますので、できましたら、秋〜冬頃に開催させていただきたいと考えております。日時等は改めて事務局から委員の先生方にご都合を確認させていただきまして設定させていただきたいというように考えております。
事務局からは以上でございます。
○松田室長
化学物質安全対策室長の松田でございます。本日は、4時間の長時間にわたりましてご審議いただきましてありがとうございます。伊東座長の進行、また先生方のご協力の結果、本当に有意義なご意見を賜れたと思っております。厚生労働省といたしましては、本日の成果を踏まえまして今後のいろいろな厚生労働科学研究の推進や、また先ほど伊東先生からもありましたけれども、国際的な貢献といったところにつきましても、是非進めていきたいというふうに考えております。
次回以降も、先生方にはまたご協力を賜りたいと思いますので、是非ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。本日はどうもありがとうございました。
○伊東座長
それでは、これで本日の検討会を終了させていただきます。ご協力、ありがとうございました。
担当 | : | 川嶋 |
TEL | : | 03−5253−1111(2424) |
PDFファイルを見るためには、アクロバットリーダーというソフトが必要です。 アクロバットリーダーは無料で配布されています。 (次のアイコンをクリックしてください。) |