戻る

厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):長寿科学総合研究事業
所管課:老健局総務課
予算額の推移(例):
平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
1,788,747千円 1,790,109千円 1,791,403千円 1,540,607千円
(1) 研究事業の目的
 老年医学に加え疫学、介護、リハビリ、社会科学等長寿に関連する分野の総合的な研究を行うことを目的としており、今後はゴールドプラン21をはじめとした高齢者施策に直結した分野を推進していくこととしている。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 過去3年間程度の課題一覧(別途添付可)
課題採択の留意事項等:「事前評価委員会において、学術的・行政的見地からの評価を行い、長寿・高齢者施策に直接結びつくものを重点的に採択することとしている。
(3) 研究成果及びその他の効果
 医学的分野では疾患関連蛋白の発見、老化や老年病発症の機序の解明が進み、また、政策研究分野においても、要介護認定や介護予防、ケアプラン作成、身体拘束ゼロ作戦などの科学的根拠の蓄積に大きな成果が見られた。
(4) 事業の目的に対する達成度
 医学的分野のみならず、ゴールドプラン21や介護保険制度、対がん10か年戦略、メディカルフロンティアなど、様々な行政施策と連動しつつ研究成果がこれらの施策に反映され、本業の目的が十分達成されつつあるが、高齢者介護やリハビリなど発展途上の分野もあり、今後の研究の促進が期待される。
(5) 行政施策との関連性
 ゴールドプラン21や介護保険制度、対がん10か年戦略、メディカルフロンティアなど、様々な行政施策と連動しつつ本研究事業の成果がこれらの施策に反映されている。
(6) 今後の課題
 ゴールドプラン21等に基づく厚生労働行政への応用や、臨床等の実際のサービス提供への応用が可能な研究について積極的に評価することを目的として平成15年度に公募課題の改正を行っており、今後もこの方向性を推進していくことが重要である。また、今後予定されている介護保険制度、ゴールドプラン及び老人保健事業等の見直しと連動して本研究事業のあり方を検討することが課題である。
(7) 研究事業の総合評価
 本研究事業における基礎・臨床的な研究成果により東洋医学を含む高齢者医療の進展がみられ、また、介護や看護技術、保健福祉政策及び社会科学的側面においても研究成果がその前進に大きく寄与してきた。今後とも保健・医療・福祉の全般にわたり本研究事業が重要な役割を果たすことが期待される。
項目や分量は適宜変更可。既存資料を用いても差し支えない。


○長寿科学総合研究

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
各種動脈における泡沫細胞の遺伝子解析 平成12-14年 69,000 東京大学先端科学技術研究センター 児玉龍彦 ア 研究目的の成果 アテローム性動脈硬化の発症における泡沫細胞の形成における遺伝子発現の網羅的解析を進めた。まず単球からマクロファージへの分化にいたる基本的遺伝子6000個の発現時系列解析を明かにした。ついでin vitroで作成した血管壁細胞混合培養系を用いて、アテローム誘発因子を探索し、LDL負荷と低酸素で脂質蓄積が進展することを発見し、アディポフィリン、レプチンやIL6,8が誘導されることが明かとなった。
イ 国際的評価 2000年のヒトゲノム解読から世界で始まったトランスクリプトーム解析において本研究成果はウェッブ上で開示され、血管系細胞の遺伝子発現解析において世界最大規模となり、世界の研究者から活用されている。
行政的観点 従来、動脈硬化治療薬としては、コレステロール低下剤や抗酸化剤などが臨床的に用いられて、医薬品のなかでも単一で7000億円をこえるなど最大のものとなっている。しかしアテロームの鍵となる細胞成分の泡沫細胞の血管壁での生成は実験の困難から解析が遅れていた。我々はin vitroで観察できる系と遺伝子発現解析を通じて、治療効果評価の原理としてアテローム誘発因子を明らかにすることを可能とした。さらに、心臓と脳の血管での遺伝子発現の差異を明かにし、特にわが国に多い脳卒中の発症基礎の解明から治療薬選択を進める道を開いた。その結果、臨床効果も高く安全性も高い新しいスタチン、抗酸化剤、さらに単球の病巣への集積を防ぐ画期的な新薬(K7174類縁化合物)などの開発が進んだ。  本研究で内皮細胞、平滑筋細胞、単球/マクロファージの遺伝子発現データベースが作成され、単球から破骨細胞への分化がマクロファージと異なりNFATcを介するなど、骨疾患へ貢献も大きい。同時にこのデータから画期的新規スタチン(NK104、本年中に認可予定、数百億円/年の市場価値)、新規抗動脈硬化抗酸化剤(BO653、アメリカでフェーズ2)などの画期的な創薬が進展している。単球集積を防ぐK7174類縁化合物は自己免疫疾患への有用性が示されている。
 本研究で樹立された血管壁細胞の混合培養系は、心臓、脳、末梢動脈疾患の解析に有用である。混合培養系の機器は現在、生命科学機器メーカーから商品化され数億円/年の市場価値となっている。
30 0 0 4 0 www.lsbm.org
長寿命遺伝子としてのShcシグナリングに関する分子遺伝学的研究 12-14 45,000 国立療養所 中部病院 長寿医療研究センター 森望 寿命制御に関連するShc系遺伝子の神経特異的分子N-Shcについて、遺伝子の単離、性状の解析、PKC等との相互作用を検討した。また、マウスやハエ等の遺伝子解析から、寿命制御の進化的背景を探った。N-ShcはShcにはない特有のシグナル発信をすることを見いだし、また、N-Shcに結合する脳特異的な新たな神経骨格制御分子p250-GAPを発見し、これをGritと命名した。成果は、Mol. Cell Biol, Neurobiol. Aging 等の専門誌に掲載され、国内外からクローンや抗体の分与依頼を受け、無償で研究協力に応じた。 老化や寿命を制御する遺伝子が実際にあることがわかり、その意義の理解が深まった。このことから、単に、老化の基礎研究として「分子遺伝学的」な研究を行うにとどまらず、その分子的手技を駆使して「老化制御」の方策を探る方向へ研究を展開する必要性がでてきた。その結果、平成16年3月開設予定の長寿医療のナショナルセンターの新しい部門の設置に反映された。 平成14年暮の分子生物学会において「個体老化の分子機構」と題して、この関連の先端的研究を議論するシンポジウムを開いた。平成15年夏の老年学会においては、関連内容を中心に教育講演を行う。平成15年秋には「老化・寿命遺伝子」に関して、一般向けの講演会を開催する予定で準備を進めている。 30 16 59 1 1 http://www01.nils.go.jp/
D-アミノ酸含有蛋白質に起因する疾病の病態解明とその特異的な分解酵素による治療法の開発に関する研究 12-15 23,200 女子栄養大学医化学教室 香川靖雄 ア:これまで全く不明だった哺乳類におけるD-アスパラギン酸(Asp)含有蛋白質の代謝機構について、その特異的な分解酵素を発見し、機能・構造解析を行った。また、本酵素に対する阻害剤を開発した。
イ:分解酵素の視点からD-Asp含有蛋白質の動態を観察できるようになり、病態との関連について検討可能になった。また、本酵素と阻害剤を用いてD-Asp含有蛋白質の検出法を開発した。これにより、老化マーカーとしてD-Asp含有蛋白質を用いることにより、個々の老化度を測定できる可能性が生まれた。
D-Asp含有蛋白質はアルツハイマー病などで見られる変性蛋白質である。その生成原因として活性酸素が考えられており、各個人がどのような生活習慣や食習慣を送っているのか、と言うことを大きく反映している。従って、短期から長期にわたる食事・生活習慣のマーカーとして、D-Asp含有蛋白質を用いることにより、遺伝子の多型解析だけでは分からない、もしくは判断のつきにくい個々人の事象や、「年だから…」で片付けられてきたような漠然とした体調不良にも科学的根拠を与えるものであると考えている。 2002年のノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏により注目を浴びた質量分析計:MALDI-TOF MSであるが、それ以前から分解酵素の構造決定にMALDI-TOF MSを用いており、田中氏らの研究が本酵素のような微量蛋白質の同定に、非常に有効であることを示した好例である。 18 36 33 1 0 http://lifest.eiyo.ac.jp/A_d.htm
老化に伴うアミロイド蛋白代謝変化の機構解析 12-14 22,600 国立療養所中部病院・長寿医療研究センター痴呆疾患研究部 駒野宏人 加齢に伴い増加するアミロイド蛋白の代謝機構を明らかにするた め、アミロイド蛋白の産生系、分解系に関与する分子の同定、解析を目的とした。その結果、産生、分解に関与する分子の同定に成功し、その成果は、J.Biol.Chem.やNature medicine誌に掲載され、国内外の評価を得た。この知見は、アミロイド沈着の認められるアルツハイマー病治療薬の開発に貢献するものと思われる。 超高齢化社会を迎えている我が国は、今後、ますますアルツハイマー病(AD)による痴呆患者数が増加すると考えられる。現在、AD治療薬はないため、大きな社会的問題となっていくと思われる。ADでは、アミロイド蛋白沈着が発症要因のひとつであるが、アミロイド蛋白の産生、分解系を分子レベルで明らかにした我々の成果は、今後、AD治療薬開発につながるものであり、介護負担等の社会的問題の解決の糸口となると思われる。 我々が明らかにした産生系分解系の分子をターゲットとしたAD治療薬が開発されれば、その社会的、経済的インパクトは大きいものがあると予想される。 58 6 77 3 0 http://www.nils.go.jp/
血管内皮細胞特異的受容体制御による動脈硬化予防に関する研究 12-14 27,000 国立循環器病センター研究所 望月直樹 7回膜貫通型受容体Edg, APV受容体の情報伝達系について詳細に検討した。両受容体ともに内皮細胞の増殖・運動制御にかかわることを明らかにした。APVは脂質・糖質の調節も行うために、老年病の治療の今後の主な標的となる可能性が高い。 高齢者の増加にともなう、保険の負担増を抑制するためには健康老人の増加が急務である。本研究により高血圧・高脂血症・糖尿病・動脈硬化症の予防に通じる新規薬剤の開発が期待される。実際、ヒューマンサイエンス財団の援助により、新規薬剤の開発に着手した。 Edg受容体・APV受容体ともに製薬企業が治療薬の標的分子として考えており、競争が始まっている。本研究のような基礎的研究が、創薬の標的としての興味を創出している。 33 0 2 0 3  
ストレスの老化に及ぼす影響とその生体応答に関する研究 12-14 43,285 国立療養所中部病院長寿医療研究センター 磯部健一 老化に関係するストレス応答蛋白p53と結合するzfp148を欠損するマウスが精子形成不全、神経管形成不全となった(Nature Genetics)。.
酸化ストレス防御蛋白Mn-SODの発現制御を解明した(FASEB J)。
内因性ストレスとしてのラジカル、環境ストレスとしての紫外線、放射線、薬物等が老化を促進すること、生体はその防御機構をもつことを科学的に明らかにした。老化、老年病の予防に結びつく ストレス応答蛋白が発生、老化に関連する生体の機能に直結することを明らかにした。 102 0 0 0 0  
染色体不安定症候群の細胞老化機構に関する研究 12-14 18,400 京都大学放射線生物研究センター 小松賢志 老化に伴い細胞の染色体異常や突然変異の増加などゲノム不安定性が誘発される事は以前から知られていたが、最近、モデル動物の線虫の研究からゲノム不安定性が逆に老化を促進する事が明らかになってきた。実際、ゲノム不安定性を呈するヒト遺伝病ではがんや免疫不全と共に早期老化を示す。この事は早期老化をゲノム不安定性疾病としてがんなどと同列に議論できる事を意味している。本研究ではゲノム不安定性による老化機構を明らかにして、遺伝的および環境因子・生活習慣による早期老化の診断と予防に役立てる事を目的とする。 本研究はNatureその他の一流誌に掲載されて一定の成果をあげたと確信する。しかしながら、長寿科学研究事業でも基礎研究に属するために直ちに成果が厚生労働行政に役立つ訳ではなく、今後の応用的研究の発展が期待される。 本研究でのNBS1に関する研究成果は、平成14年11月7日付けの読売新聞、毎日新聞、京都新聞で紹介された。また、研究室の仕事は平成15年1月22日放送のNHK「ためしてがってん」で紹介された。 20 4 59 0 0  
酸化LDL受容体LOX-1の動脈硬化における役割に関する研究 12-14 40,000 国立循環器病センター研究所 バイオサイエンス部 沢村達也 主任研究者が発見した血管内皮細胞の酸化LDL受容体LOX-1の新しい機能を発見した。LOX-1は活性化血小板や炎症細胞を結合し、炎症の病態にかかわっていることを明らかにした。またLOX-1は病的状態で働きが亢進し、酸化ストレスを高めることによって血管機能の病的な変化を導いていることがわかった。成果はPNAS、Immunity等の雑誌に掲載され反響を呼んだ。 虚血性心疾患などの動脈硬化関連疾患における新しい治療薬開発の可能性が出てきた。臨床応用には更なる研究が必要であるが、動物実験でのLOX-1アンタゴニストの有効性から有望と考えられる。
動脈硬化性疾患ガイドライン2002年版では高血圧・糖尿病を加味して患者を分類するように変わったが、本研究による高血圧や糖尿病下でのLOX-1機能亢進の発見はこれにかかわるものである。
研究の過程でLOX-1と免疫系との強い関係を見出し、これを応用した腫瘍ワクチンが作成可能であることを動物実験により示した。動物モデルでは腫瘍の成長をワクチンがほぼ完全に抑えていたことから、ヒトにおいてもかなり有望と考えられる。 47 16 52 1 1 http://www.ncvc.go.jp/
新規ホルモン;グレリンの生理的意義と老化における役割の解明 12-14 42,000 国立循環器病センター研究所生化学部 寒川賢治 寒川らがわが国に於いて発見したグレリン(Nature 1999)は、成長ホルモン分泌に加え、摂食亢進や全身の栄養、エネルギー代謝、循環器系の改善など多彩な機能を有し (Nature 2001)、生体機能維持や老化において極めて重要なホルモンであることが明らかになった。
寒川は、グレリンに関する研究で、2000-2001年の2年間におけるHot Paper(引用が多く注目されている論文)数が世界ランキング第1位との評価(昨年4月、米国ISI社発表)を受け、Nature Medicine(2002年5月号)に紹介された。
グレリンの臨床応用は高齢者のQOLの向上や治療への貢献が期待でき、社会的意義は大きい。最近、治療応用をめざした臨床研究が国立循環器病センターおよび京大探索医療センター(寒川が併任)で開始されている。 急速に進行している超高齢化社会に於いて、トランスレーショナルリサーチとしてのグレリンの早期臨床応用は、治療費や介護医療費の削減につながることが期待できる。 80 10 40 0 0 http://www.ncvc.go.jp/res/seika/seikaj_01.html
http://www.ncvc.go.jp/restopics/ghrelin.html
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ghrelin/index.html
高齢者血管病に対する遺伝子治療ならびに内皮前駆細胞移植療法の開発―臨床応用を目指した基礎研究− 12-14 31,400 九州大学大学院医学系研究科 心臓血管病態制御学講座 循環器内科学(心研内科部門) 江頭健輔 1.“血管内皮細胞特異的に発現する新規遺伝子(日の丸遺伝子)の単離と機能解析”を行った。この遺伝子は心筋細胞の介在板の細胞骨格蛋白であった。アクチンと連携し心肥大や肥大心筋のstiffnessなどに関与すると考えられた。
2.我が国独自の新規ベクターの臨床応用を進めている。センダイFGF2ウイルスベクターは実験的下肢虚血に対する血管新生遺伝子治療に極めて有効であることを証明した。重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療臨床研究を計画し、厚生労働省に申請した。
3.末梢血内皮前駆細胞移植療法による治療的血管新生療法の探索的臨床研究を実施した。まず、閉塞性動脈硬化症による重症下肢虚血の症例に応用し有効性と安全性を確認した。ついで、重症虚血性心疾患1例に末梢血内皮前駆細胞療法を実施し、有効な成績を得た。
1.新規遺伝子の機能解析が進めば高血圧性心疾患に対する新しい治療法の開発に結びつく可能性がある。
2.センダイFGF2遺伝子治療によって重症下肢虚血に対する新しい治療法が開発されるであろう。また、この血管新生療法は虚血性心疾患や虚血性脳障害への治療にも応用可能である。
3.内皮前駆細胞を用いた治療的血管新生療法は世界的に広まりつつある。今後、その機序を明らかにする必要があるものの、申請研究によって末梢血細胞の有用性が確立されたことから、この技術も新規血管新生療法の一つの選択として広く普及する可能性がある。
我々が進めている遺伝子治療・細胞移植療法は、我が国独自の独創的技術を用いているものであり、これらの技術が臨床応用されれば、我が国はこの新規治療技術開発分野でリーダーシップを発揮できる可能性がある。 9 8 10 1 4 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/cardiol
http://www.ofc.kyushu-u.ac.jp/kyokandb/data/html/0003/KHOS00010.html
加齢による筋肉量減少(ザルコペニア)/脂肪量増加機序の解明と予防法に関する研究 12-14 54,000 独立行政法人国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部 江崎治 加齢に伴う筋肉量の低下(ザルコペニア)の発症機序について研究を行った。筋肉量の低下、及び糖の取り込みの低下を予防するため、運動に反応するGLUT4遺伝子のシス・エレメントの位置を同定した。筋肉の糖/脂質代謝に関する転写因子群及び共役因子(PGC-1、SREBP-1c、FKHR)を同定し、運動、絶食、摂食時のこれらの遺伝子の発現量変動を調べ、ザルコペニアとの関連を推定した。また、ザルコペニアに伴う脂肪組織の肥大化は、レプチン抵抗性を生じ、アディポネクチンの分泌減少を介して、筋肉での糖/脂質代謝を抑制する。アディポネクチンの筋肉での作用機序を明らかにした。また、脂肪蓄積を予防するため脂肪組織でのPPARγ、転写共役因子CBP、UCP2の役割を調べた。成果はNatureに3誌、J. Biol. Chem.に7誌等の著明な英文雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 なし 転写因子群、PGC-1, SREBP-1, FKHR, PPARγ, CBP等の役割を明らかにし、わが国の当該分野をリードする形に発展している。 42 0 49 5 0  
動脈硬化機構の解明と予防−EDHFの作用機序に関する研究 12-14 27,000 大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学 堀正二 エストロゲン受容体の心血管系での保護作用機構を明らかにした。エストロゲン受容体はEDHF産生を増加させることより、エストロゲンの動脈硬化抑制作用にEDHFが関与していることが示唆された。成果は米国心臓病学会(ACC)と日本心臓病学会の若手研究者奨励賞を受賞し、大きな反響があった。特に、エストロゲンのEDHFを介した心筋障害に対する研究は他に例をみない。 エストロゲン・プロゲステロン併用によるホルモン補充療法の虚血性心疾患に対する効果の評価は現在、否定的である。今回の研究で、ホルモン補充療法の代替療法として選択的エストロゲン調節薬のラロキシフェンが実験的検討でEDHFを介する心血管保護作用を有していることが明らかになった。 この結果を基礎にして今後、日本でのラロキシフェンの冠動脈疾患に対する有効性を検討する大規模臨床試験を予定している。 女性、特に中高年女性に対するヘルスケアは重要な課題であるが、本研究の研究成果をHAP(Healthy aging project for woman)という非営利団体の組織を通し、一般市民にも啓蒙している。 7 8 13 1 0  
高齢者糖尿病を対象とした前向き大規模臨床介入研究 12-15 69,000 東京都多摩老人医療センター 井藤英喜 高齢者糖尿病を対象とした世界で初めてのRCT(ランダム化比較試験)。
対象1,173例は体重、血糖、血清脂質、血圧に関し成人と同様のガイドラインで治療する強化療法群と通常療法群に分けられた。追跡1年目の成績では、強化療法群にむしろ心血管イベントなどの重大イベントが多発する傾向があり、成人糖尿病では考えられない結果として大きな反響をよびつつある。しかし、国際的に認知される介入試験としては、さらに追跡期間を延長する必要があり、現在も研究は継続されている。
高齢者糖尿病の治療に関するエビデンスを提供することができる。また本研究では、動脈硬化性血管障害や糖尿病性網膜症、腎症といった糖尿病性血管合併症のみならず、日常生活動作機能、認知機能、うつ状態などの推移についても検討していることから、高齢者糖尿病治療と健康寿命との関係が明らかとなり、高齢者の健康政策の立案に活用できる。 高齢者における糖尿病、ひいては生活習慣病の治療を成人と同様に行うべきか、また健康寿命を延長し、QOLの高い生活を高齢者が送るための方策が明らかになる。 0 0 1 0 0  
糖尿病に関連した代謝栄養障害の遺伝素因の同定と高齢者の栄養指導への応用研究 12-14 42,000 京都大学大学院医学研究科臨床生体統御医学講座 清野裕 1)GIP受容体欠損マウスを用い、GIPシグナルの破綻は糖尿病の病因になり得るが、抗肥満作用も併せ持ち、2面の働きを持つことを明らかにした。2)4種の自律神経関連遺伝子多型を成人300人において評価し、これらの変異が自律神経機能異常を介して代謝疾患に影響することを明らかにした。3)ヒト、ラット、マウスESTを完成させ、DDBJに登録中であり、かつ情報は広く一般に公開する。これらの成果はNature medicine等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 高齢者糖尿病患者の特徴として、身体の恒常性維持能低下がある。このため画一的な薬物治療では、良好な血糖調節が困難である。今回の成果をもとに、高齢者個人の「体質(遺伝的背景)」を考慮したオーダーメイド栄養処方に関する指導法を作成、導入する。このために低血糖などを惹起する薬物などではなく、消化管を介する食事療法を中心に糖尿病や肥満の是正を可能にする。また、高齢者に特有な自律神経機能の遺伝要因の解明により効果的な栄養指導が可能となる。 研究により得られた遺伝子マーカーや疾患モデルでのデータを用いることにより病態に応じた栄養処方を行うことは効率的に高齢者の肥満や食後高血糖の是正をもたらし自立障害の防止の有力な手段となることが期待される。 34 0 39 1 0 http://metab.kuhp.kyoto-u.ac.jp/
http://imcr.sb.gunma-u.ac.jp/lab/genetics/index.html
障害高齢者の生活機能評価に関するガイドライン策定のための総合的研究 12-14 63,600 杏林大学医学部高齢医学 鳥羽研二 (1)障害高齢者の生活機能評価に関するガイドライン(以下ガイドラインと略す)標準版と簡易版(CGA7)を策定した。
(2)機能低下者の場所(地域、施設)、状態(虚弱〜寝たきり)、合併症(老年症候群)について行われた詳細な機能評価研究は、国際的にも学術的価値が高い。
 ガイドラインは統一的機能評価方法のテキストとして認知、利用されると思われる。
厚生労働省要介護認定調査検討委員会資料として、痴呆行動障害スケールは、痴呆の問題行動を、介護保険一次判定書の見直し資料に提出した。
 本ガイドラインの骨格は、一次判定書の見直しにあたって、評価必要成分としての比較資料としても提出した。
 本研究成果は、効果的医療技術の確立推進研究で、寝たきりを予防するプロジェクトの評価面での基礎資料となっている。
簡易版の機能評価方法は、老人健診や外来、介護現場で、簡易性のため、幅広く認知利用される可能性がある。
2004年には、老年医学会(東京)で「ガイドライン」のシンポジウムが主任研究者の司会で行われる。
79 50 37 0 2 http://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/
高齢者の寝たきりの原因の解明と予防に関する研究−情報ネットワークを利用した介護保険特定疾病の症例データベースによる病態解析・治療法・介護技術についての研究 12-14 48,000 国立療養所犀潟病院 福原信義 ア 研究目的の成果:
 (1)研究システムの問題:この研究が、研究領域における個人情報を直接扱うところから、平成13年度三省共同の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、平成14年厚生労働省の「疫学研究に関する倫理指針」の趣旨を尊重し、研究班の合同倫理委員会を作り、研究システムの再検討を行った。これにより、このような多施設での共同研究の方法を確立することが出来た。
 (2)脊髄小脳変性症については、その病型分布における地域差が非常に大きいことが明らかとなった。
 (3)運動失調の国際評価尺度(ICARS)を日本語訳し、使用開始した。
 (4)同じ脊髄小脳変性症に括られているが、小脳失調の程度が同じであっても、SCA3(マシャド・ジョセフ病)とDRPLAとではDRPLAの自立度ははるかに悪いこと、SCA6はそれらよりも運動失調が強くてもADLが良好なことが判った。
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義:
 (1)研究班の合同倫理委員会を作ることにより、小施設の研究者も共同研究に参加する道が開けた。
 (2)日本における脊髄症の変性症の病型分布の実態を明らかにすることが出来た。
 (3)ICARSの日本語訳の作成と、日本人におけるデータベースに利用したことにより、諸外国のデータと初めて共通の土壌で比較することが出来るようになった。
 (4)ケアなど、福祉政策において脊髄小脳変性症は病型をきちんと分けて施策を考える必要がある。
当班で翻訳したICARSが脊髄小脳変性症の特定疾患診断書における病状の把握に利用された。
国立病院共同研究のような他施設において「遺伝子解析研究、疫学研究」を行うに際してのモデルを示すことが出来た。
  8 90 12 0 0  
高齢者における口腔ケアのシステム化に関する総合的研究 12-14 33,000 国立療養所中部病院歯科 角保徳 今後の誤嚥性肺炎予防の戦略的な手段として位置づけられる口腔ケアを広く普及させるために、看護・介護職員の負担にならず、歯科専門教育を受けていない職員でも簡単に行え、なおかつ効果のある標準化された口腔ケアシステムを開発した。さらに、極めて有効な口腔微生物の除去が可能な強制給水・吸引機能を装備した口腔ケア支援機器を開発し、特許出願中である。研究成果は、米国および英国の老年歯科医学会誌に掲載された。 口腔ケアシステムは、実際の看護・介護の現場で直ちにサービス提供が可能な普及段階にある。また、口腔ケア支援機器を産学官協同で市販、普及を目指している。口腔ケアシステム、口腔ケア支援機器の開発・普及は医療施設・介護施設での口腔ケアの標準化の礎をなすものであり、厚生労働行政の一環として高齢者医療の政策医療ネットワークにより全国に普及させることの意義は極めて高く、要介護者のみならず介護者の社会生活の向上に広く貢献することが期待できる。 長寿科学振興財団主催の研究成果発表会を開催したところ、約500名と多数の参加者があり、本研究への社会的関心度の高さが確認された。また、口腔ケアシステムに関する多くの講演依頼があり、日本歯科医師会の座談会に採りあげられ、日本歯科医師会雑誌に掲載された。さらに、口腔ケアシステムの本の出版依頼(医歯薬出版)があり、7月に発売予定である。この書籍が出版されると口腔ケアシステムの認知度は飛躍的に向上し、社会に広めることができる。 14 8 30 1 0 www.chubu-nh.go.jp/dentistry
要介護老人の摂食障害発生要因に関する研究 12-14 15,800 東京歯科大学 石井拓男 要介護者の歯科的主訴は要介護状態となって1年以内に最も多く発生し、急性期から慢性期にかけての口腔ケアの重要性が示唆された。医科、歯科、看護の連携の重要性が確認され、学際的なシンポジュウムが持たれることとなった。 回復期、慢性期、在宅での口腔ケアと摂食指導を明らかにするために、歯科の係わりをクリティカルパスに入れ、評価を行う時期と評価の判断基準を作る必要が各方面で認識され、今後実現することが期待される。 第14回日本老年歯科医学会総会・学術大会(平成15年6月18日)において医科、歯科、看護の領域からの演者によるシンポジュウム「要介護高齢者の摂食障害と医療連携」が開催され、 1 0 7 0 0 http://www.tdc.ad.jp/dept/sd/
E-PASS scoring system を用いた高齢者の手術リスク評価 12-14 48,000 国立熊本病院 芳賀克夫 我々が開発した手術リスク評価法E-PASSを用いて手術前に患者のリスク評価を行うことにより、70歳以上の胃癌患者で術後合併症が32.1%減少することが判明した。世界的に人口の高齢化が進んでいるが、本研究により高齢者手術の安全性が向上することが期待できる。 我が国では急速な高齢化社会を迎えており、国民医療費および介護費の急騰は国家的な課題である。外科手術において、医療費を左右するのは術後合併症である。本研究により高齢者胃癌患者で術後合併症が減少できることが示唆されたが、これは医療費の高騰を抑制する可能性がある。引いては、医療財政の負担を軽減させ、公的医療制度の維持を可能とするであろう。 人口の高齢化に伴い、我が国でも高齢者を手術する機会は増えている。本研究により高齢者手術の安全性が向上すれば、患者の術後および退院後の生活の質(Quality of life)および日常生活動作(Activities of daily living)は向上するであろう。これにより、退院後の介護費用も減少する可能性がある。 17 2 49 0 0  
「閉じこもり」高齢者のスクリーニング尺度の作成と介入プログラムの開発 12-14 15,800 福島県立医科大学 医学部 安村誠司 「閉じこもり」スクリーニング尺度の開発を行った。また、「閉じこもり」予防に関する介入として、パワーリハビリテーションの有効性を明らかにした。転倒予防を目的とした介入も「閉じこもり」予防に有効である可能性が示唆された。「閉じこもり」になりにくい「地域づくり」プログラムでは中長期的評価が必要と考えられた。これらの成果は、いずれも先駆的であり、日本公衆衛生学会等で発表され、高い評価を得ている。 「閉じこもり」の定義は各研究者によりばらばらであり、信頼性のあるスクリーニング尺度の開発が求められていた。この尺度を利用することで、地域における「閉じこもり」の推移や地域ごとの比較が可能になる。本研究で実施された介入研究の成果は、「閉じこもり」予防として効果が実証された研究がなかった中で、国が具体的な有効な方法として、全国に推奨できる点で、貢献度は大きいと考える。 開発された「閉じこもり」スクリーニング尺度は、今後の「閉じこもり」研究の基盤になると考えられる。「閉じこもり」の一次予防、二次予防の具体的方法論を提示した意味で、今後の「閉じこもり」の方向性を示唆した。 3 0 8 0 0 http://www.fmu.ac.jp/Welcome-s.html(予定)
高齢者の生活障害の要因と評価に関する研究(H12-長寿-026) 12-14 9,500 名古屋大学医学部(保健学科) 古池保雄  高齢者の生活障害の要因として、食事性低血圧(PPH)があることを強調した。また、その発現機序には静脈系の関与が大きいこと、静脈系機能と筋交感神経活動の加齢変化について明らかにした。
 関連する報告は、J.Physiol.誌などに掲載された。また、日本自律神経学会誌には15編が掲載された。
  PPHに関する本邦初の単行書を、2004,5刊行予定として研究班員を中心に準備中であり、低血圧についての問題を広く社会に示す予定。  睡眠についての研究の継続により、睡眠医学・医療の拠点形成の基礎を築いた 58 12 83 0 0  
高齢者慢性閉塞性肺疾患の遺伝的病因と病態解明ならびに新治療戦略の開発 12-14 27,400 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 松瀬健 高齢者慢性閉塞性肺疾患(COPD)の特徴を明らかにするとともに、包括的内科治療としての薬物療法、栄養療法ならびに新たに策定した呼吸リハビリテーションの妥当性、有効性が評価できた。またCOPDの外科療法としての肺容量減少手術の全国的調査をはじめて実施できた。これらの成果は日本呼吸器学会雑誌、日本老年医学会雑誌に発表、また、COPDの成因に関する基礎研究はAM J Physiolをはじめとした欧文原著論文に発表した。 地域医療におけるガイドラインの普及度や高齢者COPD患者に対しての禁煙指導に関する医師の意識調査ならびに上記の包括的高齢者COPDの治療管理の成績をもとに、簡便で普及しやすい高齢者COPDの治療指針を策定、普及する予定である。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)のガイドラインの認知度の低さと、認知の有無により地域医療の実地臨床家の治療内容が大幅に異なることの調査結果を、日本内科学会総会にて発表したところ、製薬業界誌などを中心に反響呼んだ。加えて共同通信社記者のインタビューを受け地方新聞数社にCOPDの病態、治療管理などについて記事として紹介された。 10 5 3 0 1  
聴覚・視覚機能の低下と言語コミュニケ−ションに関する研究 12-14 7,000 東北大学医学系研究科 川瀬哲明 視覚・聴覚障害複合障害のことばのコミュニケーションにおける問題点、白内障手術などの視覚障害改善手術のことばのききとりからみた意義の解明、言葉の聞き取りにおける視覚・聴覚情報活用相互関係の脳内機序の解明。成果は国内の学会で発表し大きな反響を得ている。また国際学会でも本年6月に採択され発表予定。 中央官庁の行政面で貢献について、現時点で具体的な事例はないが、耳鼻咽喉科が関係する地域病院に併設の老健施設などでの高齢者のコミュニケーション改善指導、高齢者難聴患者の指導に活用、眼科医との連携を始めている。 ことばの理解というものが、単に聴覚的なものではない、というマルチモーダル情報処理の視点の重要性の認識強調。高齢者のことばのコミュニケーション管理における、耳鼻咽喉科医、眼科医の協力体制の確立。 1 1 6 0 0  
廃用性骨萎縮のメカニズムと治療法の開発に関する研究 12-14 69,000 国立療養所中部病院・長寿医療研究センター 老年病研究部 池田恭治 石灰化に関わる新たな遺伝子GOR1およびGOR2を同定し、ノックアウトマウス作成のためのES細胞を樹立した。骨細胞にヒトジフテリア毒素受容体を発現させ任意の時期にin vivoで骨細胞の死滅を誘導できるようデザインされたマウスを開発した。iNOSおよびp53を遺伝的に欠損するマウスを用いて、非加重状態における骨粗鬆症にはp53が、再荷重時の骨形成促進にはiNOS由来のNOが必須であることを明らかにした。成果は、アメリカ骨代謝学会誌に掲載された。同時期にp53の活性化変異が骨粗鬆症を起こすことがNature誌のArticleに掲載され、我々の成果とともに注目された。   骨細胞を消滅できるようデザインされたマウスは、今後骨細胞を標的とした診断・治療法の開発に有用と思われる。GOR1/GOR2は、石灰化や骨細胞の分子マーカーになる可能性がある。NOやp53は廃用性骨萎縮の治療のターゲットになる可能性がある。 10 5 20 0 0 http://nils.go.jp
高齢者の骨・関節疾患の予防・治療法の開発と疼痛緩和対策に関する研究 12-14 57,000 九州大学大学院医学研究院整形外科 岩本幸英 ア. 本研究では、高齢者の骨・関節疾患に対して、疫学的、分子生物学的、また運動生理学的手法などを用いて発症および増悪因子の解明を行い、予防対策から薬物および手術的治療に至る新しい治療体系を確立した。
イ. 本研究により質の高い、経済効率の良い予防法や治療法の開発と運動器障害に対する国民の関心の向上、健康管理の提供が期待され、これらは2000年1月WHOが提唱した骨・関節の10年の基本理念に合致するものである。
・「市民公開講座・講演会」を福岡県、東京都、長野県、福島県等にて複数回開催した(テーマは,膝関節痛、腰痛、転倒骨折予防など)。
・全国で初めての「転倒予防教室」を実施した。(東京厚生年金病院)
・「地域住民検診」として(1)膝痛・腰痛検診(福岡県新吉富村、九大)、(2)健康づくり教室(長野県 北御牧村、東大)、(3)腰痛検診(福島医大)を実施した。
・「疫学調査」各住民検診の結果を自治体での講演会等にて住民へフィードバックし、広報誌等にて情報発信した。
・上記の「健康教室」を実施した長野県北御牧村は、全国で最も高齢者医療費が減少 (17.4%)した自治体として積極的な健康事業を評価された(国保中央会の2000年調査報告)。
・各地で実施した「疫学調査」の結果を解析して、学会発表や論文投稿によって情報発信し、また各種メディアを通じた広報・啓発活動を行った。
・今後も継続的に各自治体と連携して、健康づくり教室や教育啓発活動を実施してゆく予定である。
53 9 49 0 15  
骨関節分野 関節疾患の原因の解明及び発症の予防・治療方法 12-14 36,000 聖マリアンナ医科大学免疫学 鈴木登 遺伝子投与やステロイド薬誘導体により転写因子の活性調節により関節炎の鎮静化が可能であった。高齢者関節炎の新規治療法として有望である。関節局所への炎症細胞浸潤に重要な接着因子を同定し、治療応用への検討を行った。マウスやサルES細胞から軟骨細胞を分化誘導することができた。マウスに移植し軟骨組織と骨欠損部では骨形成を認められた。今後再生医療への応用を検討する。 審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などはまだないが、本研究班の成果は再生医療や関節炎・骨粗鬆症の研究や実施に関わる指針の策定等の有用な資料となることが期待される。 本研究班の成果の一部は、それらに基づき産学協同の研究として、医薬品等の開発に向けた研究へと進展しつつある。
本研究班の成果の一部は、学会のシンポジウムや医師会の講演や市民向けの講演会での発表を今後予定している。
94 24 63 0 0 www.marianna-u.ac.jp/gakunai/immunmed/index.html
加齢に伴う脊柱変形の危険因子の解明と防止法の開発に関する研究 12-14 36,400 産業医科大学整形外科 中村利孝 高齢者の脊柱変形の実体およびこれらがQOL, ADLにおよぼす影響を明らかにした。椎体骨折と椎間板変性は、QOLを悪化するが、骨棘はこれを抑制する傾向があった。これらの脊柱変形にはVKOR、LRP-5などの遺伝子多型および体重、身長、姿勢異常などの身体的要因が関与した。成果の一部は雑誌Bone等に掲載され、今後さらに成果の全体を国内外で公表する予定である。 高齢者における適正な体重と姿勢の維持は生活習慣病としての脊柱変形の進行およびそれによるQOLの悪化を防止できる可能性がある。また、従来より変形性腰椎症の主要な所見とされていた骨棘形成の病的意義がない可能性がある。これらの情報を国民および日常診療の現場に提供することにより、高齢化した国民の労働生産性向上および保険診療費用の削減に大いに貢献できる。 高齢者の脊柱変形とQOL, ADLの関連、および脊柱変形と遺伝的要因の関連を包括的に評価した初めての研究であり、本研究の成果は今後、日本国内のみならず国際的にも当該分野で幅広く引用されることが期待できる。 129 21 59 5    
大腿骨頚部骨折の発生頻度および受傷状況に関する全国調査 12-14 12,000 日本整形外科学会 萩野浩 ア)国内の全整形外科治療施設を対象に、大腿骨頚部骨折の全国の発生頻度(性別・年齢別)、受傷原因の詳細、治療法の選択、入院期間が明らかとなり、本邦では初めての本骨折治療実態調査が施行された。
 イ)わが国における大腿骨頚部骨折の治療実態はこれまで明らかとなっていないため、本骨折の治療実情や経済的重要性を国際的な指標を用いて比較することが可能となった。
 大腿骨頚部骨折は骨折の中で今後最も患者数が増加すると予想されている。本研究はわが国における大腿骨頚部骨折治療実態を、国内全発生例の40%以上を集計・解析したものであり、今後の厚生行政施行の基本資料となる。例えば治療内容や現在の入院日数の結果からは、本骨折に要する治療費用が算出可能である。さらに経年的な推移を明らかとしたことで、将来予測や目標値の設定が可能となる。 平成14年9月5日には日本整形外科学会より、本研究結果についてプレスレリースを行った。 1 5 2 0 0  
高齢者の骨軟骨疾患の発症病理及び再生医学的治療に関する研究 12-14 45,000 国立療養所中部病院長寿医療研究センター 老年病研究部 渡辺研 骨分化・シグナル関連分子Dlxin-1、骨形成因子BMPシグナル制御分子BRA1, BRA2などの数々の新規骨形態形成シグナル分子の発見ならびに機能解析ならびに再生不良モデルの検討を行い、成果はGenes Devをはじめ、数々の学術論文として発表した。また、学会発表でもいくつかの賞を受けた。 高齢者の骨軟骨疾患への再生医学的治療法の基礎研究として、新しい創薬ターゲットとなるWnt 経路を提案した。 高齢者の骨軟骨疾患への再生医学的治療法の基礎として、Wntという新しい創薬ターゲットの提示と、廃用性組織萎縮を再現しうる組織再生不良モデルを提示する事により、治療効果のモニタリングが可能となる可能性を示した。 41 3 37 0 0  
アグリカン遺伝子ノックインマウスの作製による軟骨破壊機序の解析 12-14 12,100 愛知医科大学・分子医科学研究所 渡辺秀人 研究期間内にノックインマウスの作製まで終えた。ノックインマウスの解析までには至らず当初の目的は達成できなかったが、技術的な問題点は解決されたので、期間終了後も研究を遂行し目的を達成する所存である。ノックインマウスの解析により、関節破壊性疾患の軟骨破壊機構が詳細に明らかとなり、本研究の成果は慢性関節リウマチ、変形性関節症等の罹患率の高い疾患の予防・治療に繋がる基礎データを提供すると考えられる。 我が国は超高齢化社会を迎えようとしており、高齢者が健康で生き甲斐を持って生きる社会の構築が重要性を増している。本研究が的を絞った関節破壊性疾患は罹患率が極めて高く、本研究成果は疾患の予防への手掛かりを提供するという点で大きく貢献すると思われる。 現時点では成果がいまだ得られていないが、本研究によって軟骨破壊の機構が明らかになれば、運動機能を直接障害しうる疾患の予防に繋がるので、社会的インパクトも大きいものと期待される。 0 4 14 0 0  
脳動脈瘤の責任遺伝子同定と出血前診断への臨床応用 13-15 92,000 東京大学医科学研究所 井ノ上 逸朗 ア:くも膜下出血は死に到ることが多い重篤な疾患で、そのほとんどが脳動脈瘤の破裂を原因とする。脳動脈瘤は遺伝要因の強い疾患なので、責任遺伝子同定をめざした。ゲノム全域の連鎖解析で染色体の特定に成功し、7番染色体からエラスチンの関与についてもあきらかにした。
イ:脳動脈瘤責任遺伝子同定は疾患の理解に重要であり学術的意義は高い。今回の脳動脈瘤ゲノム解析は世界で初めての遺伝子座決定であり国際的意義もあり、易罹患性遺伝子診断への道を開き社会的意義も大きい。
脳動脈瘤の原因遺伝子が同定できただけの現時点では特にない。 平成13年8月24日付け朝日新聞1面で、くも膜下出血の責任遺伝子同定をとりあげていただき、社会的インパクトは大きかった。 40 20 20 1 0 http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/genetic-diag/
在宅医療における家族関係性の解析と介護者支援プログラムの開発に関する研究 12-14 9,000 東海大学医学部精神科学 保坂隆 在宅介護者の健康度やQOLを,年齢をマッチさせた主婦と比較検討した。その結果,在宅介護者は病気に罹りやすく,現在治療している疾患も有意に多く,QOLも損なわれていることがわかった。医療は入院治療から在宅医療に急速に転換しているが,そのことが在宅介護者の健康度を損ね,「第二の患者」を作っていることになり,在宅介護者の支援体制の整備が急務であると思えた。 医療は入院治療から在宅医療に急速に転換しているが,そのことが在宅介護者の健康度を損ね,「第二の患者」を作っていることになり,在宅介護者の支援体制の整備が急務である。主任研究者は,行政からの要請が有れば,即座に現在の問題点を指摘し,支援体制のひとつである「集団カウンセリング」の方法を提示する準備がある。 病院レベルでは,「介護者外来」などをつくって個々のケースには対応している。共同研究者がテレビで現状を解説したこともある。今後は,講演会などで啓蒙していきたい。 5 22 8 0 0  
ケアマネジメントにおける福祉用具・住環境支援の一体的有効活用とその評価法の開発に関する研究 12-14 15,600 学校法人 東北文化学園大学 医療福祉学部 保健福祉学科 山忠雄 福祉用具と住環境」システムの一体的な活用評価のための項目の妥当性を認識し評価指標と専門性評価」シートを開発した。本研究成果は、科学的根拠に基づく福祉用具と住環境システムの一体的な評価に基づくサービスの提供が可能となり、対象者のクリオティ・オブ・ライフの向上が尊重される点、ケアマネージャーのケアプラン作成、サービス評価に資する点、更には限りある社会資源の有効活用を図る点で意義深い。  利用者と社会資源のインターフェースとしての役割を果たす専門職の機能を最大限に高めるために、専門職にとって、一体的な活用評価に関する情報の把握は、極めて有効である。専門職が、福祉用具と住環境システムの一体的な活用に関する知識と技術を獲得し、より有効性且つ効率性の高いケアマネジメントの実現が可能となる。介護保険に関わる専門職の資質の向上と専門性の評価に基づく支援の展開に関し、本研究成果は厚生労働行政において大きく貢献するものである。  本研究により開発された評価法は、1)ケアマネジメントに関わる専門職の実践課程における評価指標、2)スーパーバイザーによる専門職の資質向上のための実務教育指標、3)養成課程の教育プログラムの一法、として活用が可能である。その延長として、各種専門職の向上はもとより、国あるいは地方自治体の今後の専門職養成研修の基盤整備への一助となると考えられる。 0 4 7 0 0  
ケアマネジメント・システムに対する総合評価に関する研究 12-14 9,000 大阪市立大学大学院 生活科学研究科 白澤政和 ケアマネジメント・システムを評価する際の評価項目や内容の明確化を行った。成果については、日本社会福祉学会等で発表を行い、国内で大きな反響があった。 ケアマネジメントについては、厚生労働省においても評価方法について検討がなされている。本研究の成果が今後の省内検討でも活用されるものと期待している。 今後日本ケアマネジメント学会等で発表を行い、ケアマネジメント・システム評価への貢献が期待できるものと考える。 0 0 8 0 0  
在宅痴呆性高齢者の環境適応の円滑化と介護負担軽減のための居住支援プログラムの開発に関する研究 12-14 9,700 日本社会事業大学 児玉桂子 (1) 痴呆性高齢者の生活とケアを支援する在宅環境と施設環境の整備方法について明らかにして、施設環境改善に関する介入研究を実施した。これに基づき、ケアスタッフのための痴呆ケア環境に関する研修プログラムを開発した。この研究の一部は、第3回日本痴呆ケア学会優秀論文賞を受賞した。
(2) 痴呆ケア環境や環境が痴呆性高齢者に及ぼす影響を評価する各種評価尺度を開発し、環境の影響を明らかにした。これらは、今後の痴呆環境研究やケア研究に役立つものである。とくに、言語表現が困難な痴呆性高齢者の環境ストレスを、唾液中の免疫抗体分析で把握できたことは、世界で初めての成果である。
(1) 研究成果に基づき、高齢者痴呆介護研究・研修センターや自治体の実務者研修において、痴呆ケア環境が取り入れられるようになった。
(2) ホームヘルパーの養成テキストの痴呆性高齢者の環境についても、内容の充実を図る予定である。
以下は、直接厚生労働行政に取り入れられる段階となってはいないが、大いに貢献できると考えられる。
(1) 在宅生活の継続を支援するために、現在の介護保険による住宅改修に、痴呆性高齢者のニーズを取り入れる。
(2) 既存の特別養護老人ホーム等においても環境改善への関心が高いが現在良い方法がない。本研究で開発した痴呆ケア環境研修プログラムは有効である
(1) 研究成果に基づき、「痴呆に配慮した住まいの工夫((財)長寿社会開発センター)」が作成され、全国の福祉現場に10万部が配布された。配布者の一部(介護家族)に行った調査では、半数の人が掲載された住まいの工夫を取り入れたいと回答し、好ましい成果が得られている。
(2) 痴呆ケア環境に関する研修プログラムに基づき、既存の特別養護老人ホームで施設環境改善が実施され、これに続く施設が出ており、反響は大きい。
(3) 研究成果に基づき、痴呆ケア環境に関する国際シンポジウムを東京、徳島、大阪において、日本痴呆ケア学会と連携して実施する(平成15年7〜8月)。研究成果の広い普及が期待できる。
(4) 研究成果に基づき、「痴呆性高齢者が安心できるケア環境づくり(彰国社)」の出版を7月に行う。これまでは、ほとんど翻訳書に頼っていたので、日本の実態を踏まえた総合的な痴呆環境の本邦初の本となる。
30 30 40 0 5  
地域在宅高齢者の「閉じこもり」に関する総合的研究 12-14 27,000 東京都老人総合研究所地域保健研究グループ(旧地域保健部門) 新開省二 高齢者の閉じこもりについて概念整理と定義づけを行い、地域における実態とその特徴、閉じこもりと要介護状態(寝たきり)や認知機能低下(痴呆)との関連を明らかにした。特に、閉じこもりが高齢期の要介護状態や認知機能低下のリスクであることを、疫学的追跡調査により初めて証明した意義は大きい。研究成果はこれまで国内外の学会や学術雑誌に発表してきたが、追跡調査の結果は現在国際雑誌に発表すべく準備を急いでいる。 高齢者の閉じこもりを予防あるいは改善することは、「介護予防」につながることを科学的にはじめて明らかにした。このことは現在進められている「介護予防・地域ささえあい事業」の必要性の根拠を明示したものと考える。また、本研究事業で展開し評価した閉じこもり予防事業とそれに関するマニュアルは、全国の市区町村で閉じこもり予防をすすめる上で大いに参考になると思われる。 本研究事業で提案した閉じこもりの概念や定義(タイプ1,タイプ2)は、現在では老年学、公衆衛生学の分野で広く受け入れられている。閉じこもりに関する社会的関心は高く、本研究事業の成果は、新聞(毎日新聞ほか)、テレビ(NHKほか)などでも幾度が取り上げられている。さらに、都道府県が開催する「介護予防指導者養成講座」において、閉じこもり予防研修の教材には、本研究事業で得られたデータが頻繁に活用されている。 23 29 52 0 6  
慢性関節リウマチに対する鍼灸治療の多施設ランダム化比較試験 12-14 24,500 東京大学大学院医学系研究科 山本一彦 関節リウマチに対する鍼灸治療の有効性と有用性および安全性を多施設ランダム化比較試験により検討した。結果は鍼灸治療を併用することでリウマチの活動性やQOLが有意に改善を示し、鍼灸治療がリウマチのQOL向上に寄与し、関節リウマチ治療のプログラムの一つとして位置付ける基礎となった。また症例数も178例と多く、過去の本邦の鍼灸関係比較試験にみられる症例数が少ないという問題はクリアできた。これは本研究の特徴であるリウマチ専門外来を持つ医療機関において東洋医学(鍼灸)を行っている4施設を共同研究としたことが大きいと思われた。 多施設のランダム化比較試験のプロトコールを完成することで、今後、本邦で鍼灸に関係するランダム化比較試験を行う際の参考となり、デザイン、実施、解析、解釈、報告に役立つことが考えられる。また本研究のような多施設のランダム化比較試験が行われたことは、Evidence Based Medicineに具体的な情報を提供することが可能となり教育効果の向上が期待できる。 鍼灸師の関係団体より、研究結果の内容を中心とした講演や研修依頼が頻繁にきており、鍼灸師の教育、鍼灸の役割についての活動が増えたこと。医学会において過去になかったリウマチに対する鍼灸治療の効果について発表、論文投稿等を行えた。 7 6 19 0 0  
高齢者の脳血管障害の予防と進展防止を目的とした漢方薬による治療法の開発 12-14 15,500 富山医科薬科大学 医学部 和漢診療学 嶋田豊 漢方薬の脳血管障害に対する臨床効果及び薬理作用について研究した。無症候性脳梗塞に対する桂枝茯苓丸の短期及び長期投与の検討で、知的機能、やる気、うつ状態等の精神症状、自覚症状、血圧の改善がみられた。薬理作用に関しては、桂枝茯苓丸の血管弛緩作用、血管内皮機能保護作用、血栓形成傾向改善作用、神経細胞保護作用等、釣藤散の微小循環改善作用、血漿脂質・過酸化脂質低下作用、血管弛緩作用、神経細胞保護作用等が明らかとなった。それらの成果10編を国際学術雑誌に発表した。 日本は高齢化社会を迎え、高齢者の脳血管障害が医療の現場のみならず社会的にも大きな問題となってきている。また、高齢者の生活の質の向上、近年膨大の一途をたどる医療費削減の面からみても高齢者の脳血管障害に対する医療上の対策が急務と考えられる。今回の研究によって明らかにされた漢方方剤・桂枝茯苓丸及び釣藤散の臨床的・基礎的エビデンスは、高齢化社会を迎えた我が国の医療・福祉において脳血管障害の予防や進展防止、生活の質の改善の面からの貢献につながることが期待される。 漢方薬は多臓器に疾患を抱え薬の副作用も出現しやすい高齢者において好ましい治療手段として注目されているが、脳血管障害に対して漢方薬という有効な治療手段が存在するという情報を社会に提供し、かつ、我国の伝統医学である漢方治療の臨床的及び基礎的な科学的エビデンスを提示した。 10 0 18 0 0  
老人性痴呆疾患治療病棟におけるクリニカルパスを利用した痴呆性高齢者治療の検討 13-14 7,515 社団法人日本精神科病院協会 鮫島健 行動障害や精神症状をともなう痴呆性高齢者の治療は、老人性痴呆疾患専門病棟(老人性痴呆疾患治療病棟と同療養病棟)において行われているが、これらの治療においては、各種治療法(薬物療法、精神療法、生活療法、生活介護)と種々の職種の病棟スタッフなどが、有効に連携してこそ十分な治療効果が期待される。このための手法として「クリニカルパス法」を導入し、実際にその効果を検討することは極めて有意義であった。 クリニカルパス作成とアンケート調査結果の検討から、老人性痴呆疾患治療病棟が有している治療機能は多岐にわたり、特にBPSD治療では大きな成果をあげていることが明らかとなった。
このことから、老人性痴呆疾患専門病棟が、他の高齢者施設や在宅サービスと連携することで、地域における痴呆性高齢者の治療介護について大きな役割を果たせることが明らかとなった。
痴呆用クリニカルパスの内容や形式等は、各老人性痴呆疾患専門病棟の入退院の状況は各地域によって大きく異なるために、それぞれの専門病棟の特徴を生かした独自のものを開発した本研究結果は、老人性痴呆疾患専門病棟における痴呆疾患のクリニカルパスの開発とその試行結果を報告する数少ない資料である。行動障害や精神症状により介護が困難となった痴呆性高齢者の入院治療においても、クリニカルパス導入は治療の内容の向上に大きな効果があることが示された。 1 1 3 0 0  
高齢者の薬物治療における薬物代謝酵素遺伝子多型情報のシステム化と有用性の評価 13-14 8,000 浜松医科大学臨床薬理学講座 大橋京一 高齢者における遺伝子多型情報がH. pylori除菌療法の個別化を決定し、並びにアンジオテンシンII受容体拮抗薬による高血圧治療に有用であることが示唆された。成果はClin Pharmacol Ther等に掲載され、国内外より大きな反響があった。 H. pylori除菌におけるCYP2C19遺伝子多型情報の有用性は、FDAに認められ、プロトンポンプ阻害薬の医薬品情報に反映された。また、我が国の医療機関における遺伝子多型検査システムは十分整備されていないことが明らかになった。 遺伝子多型情報を利用することにより、薬物治療の個別化が図られ、不必要な投与量、投与計画が減少することが考えられ、医療経済的にも有用となるであろう。 3 3 6 0 0 http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/cpharm/clinpharm.html
老人介護施設における救急医療の現状と改善点に関する研究 13-15 6,000 国立神戸病院 村山良雄 ア:今までほとんど調査をされていなかった各種老人介護施設での救急医療に対する設備や職員の対応等をアンケートや一部地域の全施設直接訪問調査などで明らかにし、同時に福祉先進国も訪問し、比較検討した。欧州の施設と比較し、我が国では法的な基準が明確でないにも関わらず、多くの施設で老人の急変時に備えて設備や対応策を検討していることが分かった。また、老人特有の生理的変化により救急医療の対象になりにくい病態も認められたが、窒息や外傷などでは適切な処置が行われることにより患者の苦痛を軽減し、良好な予後が得られる場合も認められた。
イ:欧州訪問時、各国の老人医療専門家、行政担当者に冒頭にアンケート調査結果による日本の現状に関するプレゼンテーションを行ないお互いに討論を行なった。
今回のアンケートと直接訪問による調査で上記のように高齢入所者が急変した場合、全てが救急医療の対象になるか論議のあるところであるが、一部の病態では初期の適切な処置・対応により苦痛が軽減され、良好な予後が得られ、医療費の削減にもつながることが期待されるものがあった。特に老人特有の食物による窒息事例では極く初期に簡単な処置・対応によりかなり改善する可能性があることが分かった。
それにはハードとしての各施設の設備・機器の整備とともにソフトをしての職員の対応訓練が重要である。設備・機器としては一部の施設に配備されていない簡単な蘇生機器として人工呼吸用バッグ・マスク、各種吸引機器の全施設への配備と、職員に対しては世界共通基準(grobal standard)となりつつあるBLS(Basic Life Support)に則った救急蘇生法の訓練が望ましいと考えられた。また医師、看護職員のみならず、現在、話題になっている救急救命士による処置拡大とともに非医療職員にも簡単かつ適切な蘇生処置が可能なように法的整備が望ましい。
今までほとんど省みられることの少なかった老人介護施設における救急医療の現状を調査し、その結果をもっとも多くの医療関係者の間で読まれている雑誌で発表し、また救急医学会のメールングリストでも伝えたところ、多くの反響を頂いた。既に多くの関係者がこの問題に取り組んでおり、老人介護施設、各種福祉施設、学校、企業などでも救急蘇生法の普及に努めており、その一貫として今回の研究結果も一部で反映されるようになった。
尚、今回の研究で終らず、今後も班員一同、各地の施設や組織で救急蘇生法の普及に努力致します。
3 2 3 0 0  


トップへ
戻る