戻る

厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):がん克服戦略研究事業
所管課:健康局総務課生活習慣病対策室
予算額の推移:
平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
2,183,041千円 2,185,026千円 2,186,132千円 1,830,963千円
(1) 研究事業の目的
 平成6年度から平成15年度までを目標とする「がん克服新10か年戦略」を策定し、従来のがんの本態解明の研究の充実と併せて、本態解明の研究成果を生かした新しい予防法・診断法・治療法の開発を目的とし、下記の7つの重点分野につき研究を推進する。
<重点研究課題>
分野1:発がんの分子機構に関する
研究分野2:転移・浸潤およびがん細胞の特性に関する
研究分野3:がん体質と免疫に関する
研究分野4:がん予防に関する
研究分野5:新しい診断技術の開発に関する
研究分野6:新しい治療法に関する
研究分野7:がん患者のQOLに関する研究
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 過去3年間程度の課題一覧(別途添付可)、課題採択の留意事項等
<平成14年度 新規課題採択方針>
「がん克服新10か年戦略」に対応したがんの本態解明及びがんの発生予防、新しい診断法、新しい抗がん剤の開発等による効果的な治療法の開発、患者の生活の質(QOL)等に関する研究。
 1課題あたり10,000千円程度
 研究規模:1件あたり1000万円程度
 研究期間:2年
 新規採択課題数:21課題
(3) 研究成果及びその他の効果
ヘリカルCTの開発が進み、肺病変の診断における実用化が図られると共に、一部検診へも応用されている。
発がん、転移機構等の解明が進み、分子標的治療薬の開発が進んでいる。
ITナイフを開発し、早期胃がんに対するより低侵襲の治療が行われている。
国立がんセンターのがん治療率(5年生存率)は、約60%に向上しており、今後この水準を全国的な均てんを図ることとしている。
(4) 事業の目的に対する達成度
<発がん、転移・浸潤>
ヒトのがんが、長期間にわたって起きるがん遺伝子並びにがん抑制遺伝子など多くの遺伝子変化が積み重なって発生すること、遺伝子を傷つける多くの発がん物質が生活環境にあること、がん発生に密接に関連するウイルスがあること等が明らかになってきた。
<がん免疫療法>
がんの抗原性が分子レベルで明らかになり、各種がんに対するワクチン開発が進み、臨床試験が進行中である。
<がん予防>
発がんに関与するウイルス感染防止やがん抑制物質の開発が進んでいる。
<新規診断法・治療法開発>
遺伝子発現のパターンの違いにより、同じがんでも個別の特徴を把握することができるようになってきた。
ヘリカルCTやITナイフ等の、より低侵襲の診断・治療機器の開発が進んでいる。
<がん患者のQOL>
喉頭がんに対する声帯温存術等の、身体機能を温存する術式の開発が進んでいる。
(5) 行政施策との関連性
依然として増加傾向にあるがんの死亡数や罹患数を減少に転じさせるための予防・診断・治療法の開発、がん生存者の増加によるがん患者のQOLの向上、といった課題の解決に資する基盤となる研究事業である。
生活習慣病予防を中心とした国民健康づくり運動である「健康日本21」のがん分野における科学的基盤となる研究事業である。
(6) 今後の課題
我が国におけるがんの死亡率や罹患率を激減させるため、次期対がん10か年戦略において、下記の重点研究課題に取組む必要がある。
近年のゲノム・タンパク質解析技術の飛躍的進歩により、がんの治療標的を分子レベルで同定することが可能となってきていることにより、その実現性が高まってきている。
がんに対する易罹患性等をゲノムレベルで明らかにし、個人に最適な「テラーメイド」ながん医療を実現する。
画像診断等医療機器の開発やがん免疫学的治療等の発展を図り、がん医療のさらなる質の向上を目指す。
(重点研究課題)
 ○ がんの本態解明の飛躍的推進
 ○ トランスレーショナル・リサーチの推進
 ○ 革新的な予防法の開発
 ○ 革新的な診断・治療法の開発
 ○ がんの実態把握とがん情報・診療技術の発信・普及
(7) 研究事業の総合評価
 がんの本態解明の研究のおいては、複雑なヒトがんの多段階発がん過程の理解が、各がん腫において着実に進んでいる。ある分野では世界初の知見が得られるなど、その成果は世界の一流誌に掲載され注目をあつめている。がんの予防の研究では、がんの予防に役立つ薬剤や食品や生活習慣の改善が明らかになりつつある。がんの診断や治療の研究においては、がんの本態解明の研究成果をもとにした分子診断法や分子治療法が現実のものとなってきている。またヘリカルCT開発とその肺がん検診への応用による早期肺がんの発見率の向上の与えた社会的インパクトはかなり大きく、医療費節約の観点からも重要と思われる。また遠隔ロボット外科技術の開発など画期的な新技術が工夫されてきており今後のさらなる発展が期待される。がん患者のQOLに関する研究では、各臓器における機能を温存する外科療法が開発されるなど入院期間の短縮や術後後遺症の軽減につながる具体的成果が得られてきている。




○がん克服戦略研究

氏名 研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
広橋説雄 ヒト多段階発がんの基盤となる遺伝子異常の総合的把握によるがんの特徴の解明と診療への応用 平成12-14年度 686,843 国立がんセンター研究所 ヒトがんの多段階発生過程の正確な把握をめざし、がんの病理像と遺伝子・分子・細胞レベルの変化の対応を明らかにした。具体的には、TSLC1新規がん抑制遺伝子・がん転移に関わる新規分子ディスアドヘリンなどを同定した。遺伝子変異ならびにDNAメチル化異常のゲノム網羅的解析技術を確立し、エピジェネティック機構で不活化する遺伝子の同定・がんの病態解明・発がんリスク評価・がんの早期診断への応用をはかった。これらの成果はNature Genet, PNASなどの一流誌に掲載され、基礎・臨床分野の我が国のがん研究をリードするとともに、我が国独自の成果として海外から注目を集め、確立した技術の一部は世界的に普及した。 本研究の成果による発がんリスク評価が、予防医療行政に結びつく可能性がある。予測医療の一環として適切な治療法が選択されたり、本研究で同定した遺伝子の特異的阻害剤などによる分子標的治療が奏効することにより、治療成績の向上が期待され、医療費の抑制が見込める。本研究の成果は、今後のがん研究のあり方に関する有識者会議報告書「我が国のがん研究の現状について」に盛り込まれた。 早期診断・早期治療の効能が周知され一般国民の健康意識が向上し、国民レベルでの予防医学の奏効に結びつくことがのぞまれる。今日一般国民も近い将来テーラーメード医療が現実のものとなる可能性を考えるようになったが、本研究を基盤技術とする成果がその一助となっている。新しい診断法・治療法に関する産官共同開発研究の発展ならびに商品化による経済効果が期待される。 203 66 249 11 0 http://www.ncc.go.jp/en/nccri/index.html
http://www.ncc.go.jp/research/rat-genome/
http://web.sapmed.ac.jp/im1/
吉田輝彦 がん発生に関与するゲノム不安定性と、がん関連遺伝子の機能の解明に関する研究 平成12-15年度 247,549 国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析・情報研究部 がんの最も基本的な異常である遺伝子不安定性について多くの世界初の知見を得、がんの本態解明に貢献した。遺伝子増幅の新しい分子機構を提唱し、複数の新規がん関連遺伝子を同定、機能を解析した。乗り越えDNAポリメラーゼ、ポリADPポリメラーゼ、cyclin D1、ゲノム刷り込み等に関する既知の遺伝子群についても、具体的な抗がん剤や発がん物質への応答における遺伝子不安定性や発がんとの関連を、遺伝子改変細胞・動物を作成しつつ明らかにした。 エビデンスに基づいた効果的・革新的ながん対策を展開するためには、がんの遺伝子レベルでの本態解明が不可欠であり、特にがんの最も根本的な異常である遺伝子不安定性を解明する研究班として、がんに関する厚生労働行政を企画する上で基本的な考え方の形成に貢献した。また、研究成果の一部は、文科省・厚労省合同の「今後のがん研究の在り方に関する有識者会議」の作業班報告書、及びそれを受けて作成中の第3次対がん戦略の構築に向けての小冊子に取り入れられている。 がんの遺伝子不安定性の分子機構の解明から、抗がん剤に対する感受性の予測や抗がん剤の効果を上昇させる方法の開発促進が見こまれる。同定した遺伝子群やゲノム刷り込みの個人差は、発がんリスクと相関する可能性が高く、ゲノム解析に基づいて個別化されたがん予防の確立につながる。遺伝子不安定性に関わる遺伝子を改変した細胞・動物の創出は、環境中の発がん物質のスクリーニングにも活用できる等、広い範囲でインパクトがあり、海外も含めて多くの共同研究の提案を受けている。 74 5 35 4 0 http://www.ncc.go.jp

http://rg4.rg.med.kyoto-u.ac.jp/research2002/index-j1.html
崎山樹 ヒトがんの発生ならびに転移を抑制する遺伝子の解析 平成14-15年度 2,300 千葉県がんセンター研究局 神経芽細胞腫における1p36.2 領域のホモ欠失領域(500 kb)を発見した。
p53ファミリーであるp73の転写活性の調節に関わるE2F1, △Np73 , Hmg1, MM1の機能を解析し、p53, p73が誘導するアポトーシスや細胞周期調節を究明した。
p73により転写誘導される△Np73はp53, p73の転写活性能を抑制することを見い出した。
現時点ではない。 p53ファミリー遺伝子の機能解析は、がん抑制遺伝子の中核的存在であるp53も含めた総合的な調節機構の理解につながり、新規のがん遺伝子治療法の開発が期待される。1p36領域の遺伝子解析から、放射線、抗がん剤に対する感受性の予測と耐性の克服の可能性が予測された。 29 1 30 国際 3 0 http://www.hosp.pref.chiba.jp/gan/
高橋利忠 ヒト腫瘍の発生と憎悪に関わる分子病態の解析とその臨床応用 平成14年度 23,000 愛知県がんセンター研究所 ・API2-MALT1キメラ遺伝子の発現が認められた胃粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫症例ではピロリ菌除去療法に対する腫瘍退縮が見られないこと、また、CD5陽性のびまん性大細胞型Bリンパ腫(DCBCL)は予後が悪いことを示した。 ・M期の異常を示すヒト肺がん細胞株は微小管作用性抗がん剤に対し抵抗性を示した。また、網羅的遺伝子発現解析による抗がん剤感受性予測の研究を進めている。・がん細胞で発現異常が見られるAuroraキナーゼは細胞分裂時に中間系フィラメント等の分配に重要な役割を果たしていることを示した。 造血器腫瘍に関しては、MALTリンパ腫の治療指針、並びにDCBCLリンパ腫の予後予測に有用な成績を得ており、また肺がんではM期チェックポイント異常が微小管作用性抗がん剤に対する抵抗性に関与していることを示す成績も得られている。しかし、現時点では行政面に直接貢献する成果は得られていない。 ・API2-MALT1キメラ遺伝子を指標とした遺伝子診断が、胃MALTリンパ腫の治療指針として有用であること、また、頻度が高いDLBCLリンパ腫の予後の予測にCD5マーカーが有用であることを示した。・肺がん細胞株を対象にした抗がん剤感受性の予測法を目指した解析結果は、オーダーメード医療に向けた基盤情報に有用と考えられる。・増殖浸潤に関わる研究は、臨床応用に直結する成果は得られていないが、分子メカニズムの解明はがん克服のために不可欠である。 30 15 37     http://www.acc.pref.aichi.jp/acc/400/420/420-frame.htm
田中憲一 3p22-p25領域におけるSNPs相関解析を用いた家族性卵巣癌関連遺伝子の単離と解析 平成14年度 7,000 新潟大学医学部産婦人科 日本の家族性卵巣癌におけるBRCA1、2変異を解析し、BRCA1、2遺伝子に変異を認めない家族性卵巣癌29家系を対象にした罹患同胞対解析により、原因遺伝子を3p22-p25領域内に限定。さらにその領域内より有力な3候補遺伝子を限定し、卵巣癌患者にてミスセンス変異を認めた。成果はHuman Molecular Genetics等に掲載され、米国との共同研究を開始する端緒となっている。 成果をもとに、BRCAキャリアでの発症予防および検診法の確立について癌予防に関する公募研究を申請中であり、新しい原因遺伝子が単離できた暁には、家族性症例における遺伝子診断、発症予防、早期発見に寄与するだけでなく、散発性症例での発癌機構の解明、さらには有効なChemoprevention確立のための研究等、基礎、臨床医学両者の発展に大きく貢献することが期待される。 日本の家族性卵巣癌における発症年齢、進行期など臨床的特徴を解明し、BRCA1、2との関わりを明らかにしたのは本研究が初めであり、米国Rosewell park cancer instituteとの国際共同研究の開始により100家系を超える家族性卵巣癌検体の解析が可能となり、遺伝子単離への期待は大いに強まっている。 5 0 4 0 0  
佐多徹太郎 ウイルス感染によるヒトがん発病機構の解明と予防・治療に関する研究 平成14年度 16,000 国立感染症研究所 感染病理部 ヒトウイルスが発癌に及ぼす影響、発癌機構、さらに免疫系による腫瘍細胞排除機構を解析することを目的とし、HHV-8関連癌化関連遺伝子、EBVのLMP-1、EBNA-LP、EBNA-2蛋白の機能、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)遺伝子型の特徴、HTLV-Iウイルス保有者のCD8陽性T細胞の性状および末梢単球由来樹状細胞(DC)の性状を解析した。これらはウイルス発癌機構解明そして治療に向けた意義を有する。 ウイルス感染と癌化との関係が明らかにされれば、ウイルスはワクチンにより予防可能となり、関連癌におけるウイルス抗原の発現検出は癌の早期発見にも役立つ。高齢化社会においてこれらのウイルスが関与する癌の発生が増加することが予想されるので、本研究は国民の健康と医療費の削減に寄与しうるものと考えられる。 ウイルス関連悪性腫瘍の発生機構の解明を目的とした基礎研究を行い、治療に関する情報を調べている。とくにHPVの癌関連遺伝子型を明らかにすると子宮頚癌に対するワクチン開発に有用となる。また治療法のないATLに対する免疫療法を開発することは患者の予後を改善することが可能となる。 17 7 30 0 0 なし
横田淳 がん細胞における悪性形質獲得の分子機構の把握およびその制御機構の解明 平成12-14年度 298,500 国立がんセンター研究所 生物学部 肺がんの新規がん抑制遺伝子MYO18Bをクローニングした。セレクチンファミリーメンバーの結合特異性を明らかにした。Ras依存的に起こるアポトーシスとは異なるプログラム細胞死を見出した。 MTO18Bの動態を基に、肺がん悪性度の診断や進行肺がんの治療法を検討している。セレクチンを介する細胞接着の阻害により転移を抑制することが可能となった。 ヒトがんの増殖、浸潤、転移を制御するための分子生物学的情報が着実に集積しており、今後の臨床への応用が期待される。いずれの研究もそれぞれの分野で世界をリードしているものである。 134 8 220 0 0 特になし
常松由紀子 小児がんの遺伝的・発生生物学的特性の解明と診断への応用 平成14年度 19,000 国立成育医療センター特殊診療部 小児腫瘍科 基底細胞母斑症候群の原因遺伝子PTCHはショウジョウバエの体節遺伝子のヒトホモログでがん抑制遺伝子で96年に単離されて以来注目されているが、変異の検出率は低率であった。日本人10例中6例と高率にあたらな変異を発見し注目された。 小児がんを発端者とする遺伝性腫瘍の研究はがんばかりでなく他の奇形症候群の発生機序の解明にも寄与し得る。本研究班ではとくに未成年者への遺伝検査に関する問題の試料を提供しつづけている。 03年度にはトロント小児病院から招聘予定の研究者とp53遺伝子の胚細胞変異をもつがん体質家系のサーベイランスについて共同研究を行い患者とその家族を対象とした心理社会的な研究も行なう予定で、これらの研究はわが国では少ない。 27 10 30 1 0  
原田昌興 浸潤・転移性がんの特性とその制御方策に関する研究 平成12年-14年 21,000 神奈川県立がんセンター臨床研究所 ヒトがん、特にホルモン依存性癌を視点に据え、浸潤転移性癌の特性及び機構について病理学的、分子生物学的に研究し、ヒトがんは組織学的、生物学的性状、遺伝子変異態様等の異なる異質細胞集団により構成されていること、がん細胞の浸潤性獲得には、インテグリンのリン酸化動態の変化、血液凝固関連蛋白の発現などが関与していること等を明らかにし、成果を国内外の学術専門誌に公表してきた。 これまでの研究成果をトランスレーショナル・リサーチとして発展させ、地域がん診療拠点病院としての診療態勢の整備に必要な研究所機能の具体的整備計画案作成の基礎資料として活用する予定である。 血液凝固反応関連蛋白のがん浸潤・転移との関わりについての研究は当研究グループの独創的課題であり、今後の展開が期待されている。 14 30 37 0 0  
畠清彦 分子生物学、分子免疫学を駆使した微小残存、転移病変の評価 ならびに適切な集学的治療と予後推測法の開発 平成12-14年度 34,000 財団法人癌研究会附属病院化学療法科 ア CD13発現では、急性前骨髄球性白血病での内皮細胞由来インターロイキン8による細胞死誘導に対して耐性となるが、アミノペプチダーゼという酵素の活性によるものと判明し、酵素阻害によって細胞死が誘導できた。この現象は、肺癌、大腸癌でも発現し予後不良因子の一つであることがわかった。化学療法剤に対する耐性にも影響していることがわかった。胃癌では、術後の化学療法の有効性の予測を行っている。イ 成果はJNCIなどの雑誌に掲載された。 CD13発現白血病では、阻害剤であるbestatinを併用すると、化学療法の有効性が高まる可能性がある。肺癌の術後療法として二重盲験でも有意差が得られ、その機序として、CD13発現例に抗腫瘍効果が見られた可能性がある。現在発現解析した結果は適応拡大申請されている。現在白血病の治療薬であるが、肺癌の術後治療薬として認可される可能性がある。 1。新たな細胞死耐性機序があることを示した。2。白血病だけでなく、肺癌、大腸癌でも同様の機序が存在する可能性を示した。3。CD13の点突然変異による遺伝子異常の存在することが細胞株で示された。今後この経路を阻害することによって薬剤耐性の克服を可能とするがんの種類が明かとなる。 96 80 60 0 0  
中釜斉 動物モデルを用いた発がん感受性に関する研究 平成12-14年度 228,500 国立がんセンター研究所 生化学部 ア)がん発生の個体レベルでの感受性を制御する遺伝子座の詳細な決定がなされた。大腸がん、肺がん、リンパ腫で、各々 10Mb, 1 Mb, 2.5 Mbの範囲に感受性或いは抵抗性遺伝子の存在が判明した。肺発がん抵抗性の候補遺伝子として、DNA polymerase iを同定した。イ)モデル動物を用いることにより発がん感受性に対する寄与率の高い遺伝子座の同定や、連鎖不平衡解析による候補遺伝子絞り込みの可能性を推定することができる。ヒトQTL解析に対しても相補的な役割を担うものであり、ヒト発がんの遺伝的要因を解明するにおいて必須な研究分野である。  現段階において、本研究の成果を社会や行政に現実的に応用できるまでには至っていない。しかしながら、がんの発症には遺伝的に規定された個々人の発がんに対する感受性が重要な役割を果たしていることから、これら遺伝的要因の全貌を解明し、がん罹患の危険度に応じたオーダーメイドな「がん予防対策」を立てることが、がん予防の究極の目標である。本研究により得られる成果は、がん医療政策の観点からも社会に対する将来的な貢献度は絶大である。 (予定)個々人の発がんの危険度に応じた、オーダーメイドな「がん予防対策」の実践により、がん罹患率・がん死亡率の激減を達成することが可能となる。 71 4 152 (特許出願準備中)2件 0 http://www.ncc.go.jp/jp/nccri/index.html
http://www.ncc.go.jp/research/rat-genome/
河上裕 SEREX法を用いた癌抗原単離と免疫応答解析による免疫療法開発の基盤的研究 平成14-15年度 8,000 慶應義塾大学医学部先端医科学研究所 癌患者血清を用いたcDNAクローニング法(SEREX)により、免疫療法の標的抗原や腫瘍マーカーとして、癌の治療や診断に臨床応用できる可能性がある、膀胱癌抗原(癌特異的新規ガレクチン)と、腎癌抗原(PARG1)を単離した。抗PARG1抗体は遠隔転移をもつ腎癌患者に検出され、癌の転移機構の解明に役立つ可能性がある。また、ヒト腫瘍移植免疫不全マウス血清を用いた改良SEREX法を開発した。本成果は、癌の生物学、医療に有用である。 単離した新規癌抗原は、より多数の癌患者における発現・免疫応答を調べることにより、診断、治療における意義が明らかになり、将来的には、新しい診断法、治療法に結びつき、癌の診断・治療ガイドライン作成において、貢献できる可能性がある。 進行癌においては、現在の標準的治療では、不十分な場合が多く、新しい機序の治療法や新しい早期・病期・予後診断法の開発が期待されている。本研究で単離・同定した新規癌抗原は、新規治療や診断に応用することにより、将来の癌医療に貢献できる可能性がある。また、改良したSEREX法により、今後、臨床応用可能な癌抗原が効率的に単離できる可能性がある。 3論文投稿準備中 3 2 0 0 なし
若林敬二 発がんの高危険度群を対象としたがん予防に関する基礎及び臨床研究 平成12-14年度 382,500 国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト COX-1及びCOX-2選択的阻害剤、PGE2受容体拮抗剤、PPAR拮抗剤及びラクトフェリンは大腸がん化学予防剤として有用であること、又、ウレアーゼ阻害剤がH.pylori誘発胃炎を抑制することを見出した。更に、前立腺発がんラットモデルを確立した。又、ビタミンC投与は慢性萎縮性胃炎患者の萎縮の進行を阻止することを明らかとした。これら成果は180編に及ぶ論文として発表され国の内外から注目された。 得られた成果は、現在、全国に配付されている「がん予防12か条」等のがんの一次予防のための実践的な指針の基礎的研究資料として使用されている。また、がんのハイリスクグループに対するがん化学予防剤の開発に寄与するデータを提供した。 がんの予防に関する研究は、我が国のがんの罹患率及び死亡率の減少に寄与する。 184 75 249 5 1 http://www.ncc.go.jp/jp/index.html
吉倉廣 ウイルスを標的とした発がん予防に関する研究 平成12-14年度 166,500 国立感染症研究所・所長 ヒトがんの中で重要な位置を占める子宮頸がんと肝臓がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、C型肝炎ウイルス(HCV)が原因となる。HPVの感染予防ワクチン抗原の候補を見つけ、ヒトに対する安全性と感染中和抗体の誘導を確認し、HCVのワクチンの開発に向けた研究を行った。これにより多くの優れた研究論文を発表した。 HPVワクチンは、年間15000人が発症する子宮頸がんの予防と、早期発見を目的とする集団検診の社会的・経済的負担を大幅に軽減することができる。HPVワクチンの実用化に着実に近づく研究成果があがった。スクリーニングによって、輸血後HCV感染を遮断することを可能にし、HCV持続感染が細胞に与える生理作用に関する研究成果を蓄積した。 本研究での成果が基礎となっているHPVワクチンは、遺伝子型の異なる14種以上のHPVに有効である可能性が高く、世界で実用化が期待されている。HCVの発がん性に関わるウイルス蛋白質の研究は、当該分野をリードする形で発展している。また、輸血血液の安全性向上に寄与している。 50 10 50 0 1 http://www.nih.go.jp
津熊秀明 院内がん登録の整備拡充とがん予防面での活用に関する研究 平成12-14年度 30,000 大阪府立成人病センター 調査部 ・院内がん登録資料を用いたがん予防分野の研究として、早期胃がんの自然史、胃がんに対する補助化学療法と2次がんとの関連、乳がん患者における2次がんと使用薬剤との関連、緑茶飲用と乳がん患者の予後との関連、などを明らかにした。
・追跡調査に基づき、発がん高危険群のリスク評価、修飾要因の解明を実施した。肝炎ウイルスキャリアの発がんリスクとインターフェロンによる発がん予防効果、個々人における乳がん罹患リスク予測、等で、成果を上げた。ヘリコバクタ・ピロリの除菌が将来の胃がんリスクを低減しうるかどうかを検証するための前向きコホート研究のベースラインデータを計画通り蓄積した。
・上記の成果は国際学術雑誌に掲載された。
・がん対策の基盤となる院内がん登録の意義・有用性が認識されたことから、平成14年度から始まった地域がん診療拠点病院の認定条件に、院内がん登録の整備が明記されるようになった。
・厚生労働省が実施するがん登録実務者研修「院内がん登録課程」において、本班が作成した院内がん登録標準案が採用されている。
・本班が策定した「院内がん登録における個人情報保護ガイドライン」、「がん登録実務者のためのマニュアル」は、各施設の院内がん登録が準拠するべきものとして受け入れられている。
・院内がん登録の標準方式を一般病院用とがん専門診療施設用に分けて示し、その為のツール開発・マニュアル整備を行った。
・インターネットを介して成果を広く公表し、ツール・マニュアル類を提供したことにより、わが国の院内がん登録の標準化・整備に向けて大きく貢献した。
・近く配布を予定している院内がん登録用生存率解析ソフト(Ederer II法による相対生存率算定等)は、自施設のがん診療の成果を他と比較する上で、大いに役立つ見込み。
・研究班参加の5つの全がん協施設で診療が行われたがん患者の生存率が共通の手法で計測され、公表できる段階に来た。
20 18 26 0 3 http://www.mc.pref.osaka.jp/ocr/registry/index.html
徳留信寛 大規模地域・職域健診データに基づくがん予防とがん対策への活用と評価 平成14-15年度 14,000 名古屋市立大学 大学院医学研究科 地域住民コホート研究では、特に、喫煙と飲酒が胃がんリスクを上げ、スポーツが乳がんリスクを下げていた。また、大豆および魚摂取が全がんおよび胃がん死亡を減少させていた。事業所従業員コホート研究では、特に、グループ内対人葛藤が高い者は、低い者に比べて全がんリスクが高かった。以上のように、本成果は世界的にもユニークであり、学術的に高く評価され、その報告は国際誌に掲載されている。 これまで地域・職域健診は、疾病早期発見・早期治療の個別指導には利用されるが、事後、データは放置されることが多く、生活習慣病(がんを含む)の一次予防に利用されることは少なかった。本研究では、健診データを二次予防だけでなく、一次予防にも包括的に利用し、健診の費用効果・費用便益分析などの経済的評価をも行なう。すなわち、本研究は行政的に重要である。 実施中のコホート研究では、ベースライン時の生活習慣・食生活情報に加え、血清生化学検査値が利用できる点に特徴があり意義深い。また、本研究ではメンタルの側面、ADL・QOL調査も実施されており、それぞれの点から、根拠に基づいたがん予防への活用・評価が可能である。すなわち、本研究は社会的にインパクトがある。 26 7 56 出願予定1件 0 http://igaku.med.nagoya-cu.ac.jp/kouei.dir/newfile.htm
http://jimusvka.shiga-med.ac.jp/gyouseki/FMPro?-DB=gyouseki.fmj&-Format=index.htm&-View
森山紀之 診断用ME機器の開発とこれらを用いた新しい診断法に関する研究 平成12−14年度 261,000,000円 国立がんセンター中央病院 放射線診断部 (1)ヘリカルCTの開発を行い、ヘリカルCTによる肺がん検診を世界に先駆けて開始し、従来の胸部単純X線では発見することができない早期の肺がんを数多く発見した。
(2)ヘリカルCTによる肺がん検診の画像読影において画像読影の専門医と同等の能力を有するコンピューター支援自動診断装置を開発した。
(3)がん画像レファレンスデータベースの構築を行い、多言語での表示を行った。このレファレンスデータベースはインターネットを通じて全世界で利用可能なものである。
(1)本研究成果の肺がん検診に与えた影響は大きく、本研究がきっかけとなり、我が国および米国においてヘリカルCTによる肺がん検診が次々と行われるようになった。発見された早期の肺がんの大部分は胸腔鏡による手術が可能であり、早期に社会復帰が可能であり、予後も良好であった。このことは、医療費の節約の観点からも意義あることと考える。(2)肺がんCT画像に対するコンピューター支援自動診断装置により、今後肺がんCT検診の診断精度が著しく向上するものと考える。(3)厚生労働省が主体となり、我が国のプロジェクトとしてG7グローバル ヘルスケア会議に提出されたがん画像レファレンシャルデータベースは、今後、我が国が世界、特にアジア地域に向けて進めるべき重要なプロジェクトであるとの評価を受けた。 (1)今後、肺がん検診の大部分は従来の胸部単純撮影からCTによる検診へと移行するものと考えられる。
(2)コンピューター支援自動診断装置の開発普及により、必ずしも優れた画像診断医のいない検診施設においても高精度のCTによる肺がん検診が可能となる。
(3)画像レファレンスデータベースにより、臨床におけるがん画像の参照が可能となり、グローバルな地域でのがん診断能が向上するものと考えられる。また、画像読影の教育用も利用可能である。
34 104 多数につき省略 1 0  
金子安比古 がん関連遺伝子異常を利用したがんの診断と予後予測の研究 平成12-14年度 36,000 埼玉県立がんセンター 神経芽腫のploidyをFISHにより分析する系を確立し、多様な悪性度の遺伝学的背景を解明した。悪性リンパ腫患者の血清NM23蛋白質濃度を分析する系を開発し、それが独立した重要な予後因子であることを証明した。エストロゲンに反応する乳癌の遺伝子群をのせたカスタムチップアレイを開発し、ホルモン療法の効果予測を可能にした。いずれの研究も独創性があり、国際的専門誌に掲載された。その成果は臨床の現場で採用されつつある。 神経芽腫マススクリーニング(マス)は全国で実施されているが、死亡率改善効果は不明である。マスにより予後の改善が期待できるのはdiploid腫瘍で、マス発見腫瘍の5%と推定された。マスの存廃を決定する判断材料である。悪性リンパ腫は血清NM23蛋白質濃度により、乳癌はカスタムチップアレイ所見により、予後予測が可能になった。多様化した両腫瘍の治療法の中から最適な治療法を選択できるので、治療成績の改善が期待できる。 マスにより毎年180人の神経芽腫患者が発見されている。5%の患者がマスにより救命され、60%に不要な診断と治療が実施されていると予想される。マスの実態を社会に公表し、マスの存廃の判断材料を提供することは重要である。悪性リンパ腫の予後が血液のNM23蛋白質濃度で予測できるので、臨床的有用性は高い。乳癌のホルモン療法の奏効性がカスタムチップアレイにより予知できるので、患者に即した個別治療が可能になる。 62 19 142 1 0 http://10.10.10.45/~scc/
坂本優 婦人科がんの発生・進展の分子機構解析に基づいた新しい分子診断・治療法の開発 平成12-14年度 24,000 (財)佐々木研究所附属杏雲堂病院 婦人科 婦人科癌の発生進展の分子機構を遺伝子、テロメレース、血管新生や腫瘍免疫等の様々な観点から解析した結果に基づいて新しい分子診断治療法を開発している。CGHやアレイにより子宮頸癌発生進展や卵巣癌抗癌剤耐性に関わる遺伝子変化を同定した。テロメレース活性に重要なhTERT遺伝子プロモータを単離し発現調節機構を解明した。同プロモータを組込んだ癌細胞特異的遺伝子治療用ベクターを開発した。癌抗原ペプチドを同定しオーダーメイド型癌ワクチン療法を開発した。成果はCancer Research等に掲載され国内外から大きな反響があった。 CGHやアレイを用いた遺伝子による婦人科癌の存在診断と悪性度診断の確立がなされつつある。hTERTプロモータを利用した新規遺伝子治療ベクター系は副作用が少なく癌種を問わない有効な癌特異的なベクターとして今後活用されると考えられる。3種のHLA(A2, A24, A26)タイプに対応する癌抗原ペプチドが同定され日本人の9割に対応できる癌ワクチンが開発されることになる。婦人科癌に対するペプチドワクチンの臨床試験が行われており臨床効果が期待される。 婦人科がんの新しい分子診断・治療法がいくつか開発されつつあり、わが国当該分野をリードする形に発展している。今後はアレイ等により子宮癌の悪性度診断や卵巣癌の抗癌剤感受性・耐性診断を行い、オーダーメイド医療の確立を目指す。婦人科癌に対するペプチドワクチンの臨床試験を継続する。 126 32 144 1 0 厚生労働省研究成果データベース(http://webabst.niph.go.jp)に概要のみあり。坂本班成果の詳細に関するホームページは公開予定。
間野博行 白血病診断用DNAチップの開発に関する研究 平成14年度 7,000 自治医科大学 医学部 白血病およびその類縁疾患の病態解析を目的として、患者骨髄より造血幹細胞相当分画を純化保存するBlast Bank事業を設立し、これまで400例を越える検体収集に成功した。本サンプルを用いたDNAチップ解析によって白血病の新たな分子診断法および治療反応予測法の開発を行った。これらの結果は複数の国際雑誌に発表され、また研究代表者が国際学会での講演に招かれるなど我々のアプローチが国内外の注目を集めた。 純化白血病幹細胞を対象とした我々のDNAチップ解析の結果、化学療法の反応性を予測する遺伝子セットの抽出に成功した。また遺伝子発現プロファイルを用いた疾患分類法も提案した。今後は我々が同定した診断・治療関連遺伝子セットを配置した簡便なカスタムDNAチップを開発し、臨床応用を図る予定である。 純化臨床検体を用いたゲノミクスプロジェクトとしては我々のBlast Bankが世界最大級であり、これらを用いた大規模な発現プロファイルデータセットによる白血病解析は世界をリードするものとなっている。 18 16 13 5 0  
谷水正人 患者の視点を重視したネットワークによる在宅がん患者支援システムの開発 平成14年度 10,000 国立病院四国がんセンター臨床研究部、内科 1.テレビ電話システムをがん緩和医療に応用し、
a)入院から在宅への移行を円滑に進めること、
b)患者の安心感と満足度の高い在宅医療を実現すること、
c)医療連携推進と医療の質の向上に寄与すること
を明らかにした。
本システムは過疎地に限らない遠隔医療のあり方として注目を集めている。
2.遺伝子診断を含め家族性腫瘍に関する情報をインターネットで提供し、家族性腫瘍相談に応じる体制を構築した。
本研究の成果として、
1.地域医師会では在宅医療に対応できる医師を養成する取り組みが開始され(在宅医療懇話会、病診連携委員会)、看護師、保健婦、介護職、福祉行政職などが参加した交流活動が開始された。
2.愛媛県の愛媛情報スーパーハイウエイと県医師会ネットワークが合体し、県下の全医療機関がイントラネットで情報共有、情報交換出来る仕組みが構築された。今後がん等の疾患登録システムも稼働する予定。
1.テレビ電話システムを軸にした緩和医療は入院または在宅を問わず患者を支援し、満足度の高い医療を実現する。患者中心の医療提供体制のモデルとして注目されている。
2.本研究による家族性腫瘍に関するインターネット公開は家族性腫瘍研究関連者でも相談者へのカウンセリングに利用されている。開設以来家族性腫瘍相談のホームページとしては常にアクセス数がトップである。
19 15 16 0 2件 成果はホームページに掲載されている現在は仮ページ<http://ky.ws5.arena.ne.jp/NSCC_HP/web/index_temp.html>にあるが、本来は<http://www.ncc.go.jp/shikoku/>からリンクする
森正樹 慢性肝障害合併肝癌の治療適応決定のための肝炎・肝硬変DNAチップの開発 平成13-14年度 113,000 九州大学生体防御医学研究所 ア(研究成果):包括的かつ標準化可能な肝機能評価法として肝炎・肝硬変DNAチップを開発することを最終目標とし、平成13年度は、肝癌患者からの標本およびデータ収集を行い、平成14年度はラット肝硬変モデル及び肝癌切除症例における肝機能関連遺伝子の抽出をDNAマイクロアレイ法にて行った。さらに、肝線維化率と相関の強い上位95遺伝子の発現パターンを基に肝線維化の程度をスコア化することに成功した。
イ(研究意義):国内外で類似の研究報告は皆無であり分子遺伝学的手法を用いた新規肝機能評価法の確立に貢献する。
(1) 約150万人と言われる本邦のC型慢性肝炎症例に対し、IFN等の抗ウイルス療法が施行されているが、より正確な治療効果判定法の確立が望まれている。肝炎・肝硬変DNAチップを用いて肝障害度を標準化することで肝機能を客観的に評価可能となり、治療のガイドライン作成に役立つ。(2) 本研究開発には1万数千個の遺伝子から肝機能関連遺伝子群を抽出することが必須である。同定された未知の関連遺伝子をターゲットとした新規診断・治療法を開発し、本邦のC型慢性肝炎患者の予後向上に貢献する。 肝機能診断用DNAチップの臨床応用に際しては肝生検による肝組織の採取が必要となるが、従来の病理診断とは異なり20Gより細い針による採取でも十分評価できることを既に確認した。これらの研究成果により、IFN療法前などに通常行われている肝生検が極めて低侵襲化され外来検査となる可能性がある。したがって肝生検を必要とする慢性肝障害患者への肉体的・経済的負担軽減に大きく寄与することが期待される。 18 6 15 1(出願中、特許願書類番号:P0188T) 0 http://www.mib-beppu.kyushu-u.ac.jp/
垣添忠生 がん治療のための新技術の開発 平成12-14年度 194,000 国立がんセンター 物理的手法であるマイクロ・マシーンや磁気誘導装置の開発や陽子線による治療などの技術開発と、伝統的な手術療法の限界を打ち破る手術手技の工夫などを進め、さらにその両者を癒合させた遠隔ロボット外科技術の開発により、がん局所治療の新しい領域を切り開いてきた。マイクロ・マシーン、磁気誘導装置、陽子線の四次元線量計画など画期的な技術を開発し、また、手術手技上の新工夫により治療成績の向上が見られた。 磁気誘導外科、マイクロ・マシーンの臨床応用、陽子線治療といった未開発の研究領域を発展させ、また従来の手術に手技上の新工夫や術前の内分泌医療法をプラスすることにより、がんの治療成績や根治性、患者さんのQOLを高めることが可能である。これらの技術を推し進め、標準的治療としての確立ができたなら、全国に普及させるべきである。 がん治療法の主流である手術療法に対する地道な工夫に加え、最先端の物理的手法を応用した治療技術の開発が臨床的に確立されれば、がん局所治療の新たな展開が期待される。 120   20   4  
西條長宏 新しいがん薬物療法の研究 平成12-15年度 254,000 国立がんセンター中央病院 薬物療法部 ア 抗悪性腫瘍薬(抗がん剤、分子標的治療薬を含む)の感受性、耐性を左右する分子を同定した。がん治療の新しい分子標的に対する治療薬を開発した。新しい抗悪性腫瘍薬の早期臨床試験体制を確立した。
イ 研究成果は英文の原著として発表し国際的注目を集めている。抗悪性腫瘍薬の感受性、毒性を予測しうる方法の開発は至適治療対象、治療スケジュールの選択に大きく寄与する。また当班で開発された薬剤のうち臨床試験に入ろうとしているものもあり、新しい治療薬の導入に貢献している。この新規化合物を効率よく評価しうる体制を確立しえたことはがん治療法開発に重要な社会的意義を持つ。
当該研究の成果は抗悪性腫瘍薬第I相試験のガイドライン、抗悪性腫瘍薬第I/II相試験のガイドラインに反映された。 当班はわが国におけるトランスレーショナルリサーチの中心的役割を果たし、製薬メーカーにとっても必須のアクティビティを保有し高く評価されるとともに具体的に薬剤開発に大きく寄与している。 約250(英文のみ) 約10(教科書レビュー論文;英文のみ)   2 2 http://mhlw.go.jp/
湯尾明 がん細胞の増殖制御による総合的分子療法の開発 平成12-14年度 33,000 国立国際医療センター研究所血液疾患研究部 微量(Alu配列)融合遺伝子発現制御を介したアンチセンス効果、メラノーマ特異的新規ファイバー変異型アデノウイルスベクターによる殺腫瘍細胞効果、カスパーゼ8遺伝子導入による癌の腹膜播種の抑制、ヒトNKT細胞による抗腫瘍療法、IGF受容体遺伝子変異体による癌治療、B細胞特異的なCTL誘導と治療への応用、などの成果が有り、著明な国際学術誌に発表されてきた。 進行したがんにおいては、現在行われている治療では依然として十分とは言えない現状である。本研究においては、全身を対象とした腫瘍特異的な新しい治療法の開発を、最先端の技術を総動員して強力に推進しており、現在の治療では救命できていないがん患者への保健医療行政上きわめて重要かつ緊急の課題に取り組んでいる。 当研究班は、基盤研究的な色彩が濃いが、我が国の遺伝子治療の先端的なグループが参加しており、また、遺伝子導入技術開発の応用面でも大きな影響を与えている。また、ナノテクノロジーをがんの治療に応用するための研究も開始している。 189 80 90 1 2  
河原正明 新しい治療法の開発に関する研究[国立病院・療養所呼吸器ネットワークを利用した、肺癌に対する新しい治療法と臨床評価法の開発 平成13-14年度 19,000 国立療養所近畿中央病院 診療部 呼吸器ネットワークを利用して多施設臨床共同試験2つを実施した。一つは新しい化学療法の開発、他はセンチネルリンパ節に関する研究である。化学療法研究にはHOSPnetを用いて登録した。また肺がん患者血清中に新しい肺がん抗原(L523s等)数種に対する特異的抗体を検出し、新しい早期肺がん診断法の可能性が示された。これらの成果はBr. J. Cancer等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 成果をもとに多施設臨床共同研究の基盤確立の端緒とした。また共同研究においてHOSPnetを通してデータベースの構築の準備にもなった。 臨床共同研究をHOSPnetを通じて呼吸器ネットワークの組織がリードして出来る形に発展している。 65 14 73 0 0  
岡村純 成人T細胞白血病(ATL)への同種末梢血幹細胞による骨髄非破壊的移植療法の検討(がん克服戦略研究事業、H12-31、H14-38) 平成12-14年度 35,000 国立病院九州がんセンター臨床研究部 HTLV-1の感染を契機に発症するATLは難治性疾患である。高齢者ATLに骨髄非破壊的同種末梢血幹細胞移植療法を試行してその安全性と効果を検討した。第1期プロトコールは成功と判断され、第2期プロトコールを検討・作成して、現在倫理委員会に提出中である。本移植法では、移植片対ATL効果の存在が強く示唆され、15例中7例でHTLV-1プロウイルス量が測定感度以下に減少したことから、ATLの免疫療法、抗ウイルス療法として有望と考えられた。 骨髄非破壊的移植療法を応用したATLに対する初めての前方視的研究であり、高年齢層が対象であっても、移植後合併症は少なく造血能や免疫能の回復が速いことが確認された。ATLへの細胞性免疫を応用する免疫治療が行われたことはこれまで無く、移植片対ATL効果が強く示唆されたことから、他の難治性ウイルス性疾患や癌への新たな治療法の開発への発展も期待され、行政的にも極めて意義が高いと考えられる。 HTLV-I Tax特異的キラー細胞がATL細胞を傷害することや、動物実験で Taxを免疫原とするワクチンによるHTLV-I腫瘍の消退が示されている。従って、HTLV-I特異的免疫細胞の抗腫瘍効果を期待して免疫療法を試行することは論理的・実験的根拠があり、試行の価値があると考えられる。献血者に対するHTLV-I感染告知も開始されており、免疫治療の有効性が示されれば、今後ATL発症予防方法への発展が期待できる。 22 41 24 0 1 なし
海老原敬 機能を温存する外科療法に関する研究 平成12-14年度 186,500 国立がんセンター東病院 各臓器における機能を温存する外科療法を開発、確立した。特に、頭頸部では喉頭温存術式、骨盤臓器では排泄・性機能の温存術式などの確立、四肢のリンパ浮腫に対する術式の開発などにより、患者にもたらす利益は大きく、今後の研究発展も期待できる。この結果、入院期間の短縮、医療費の節減、術後後遺症の軽減など患者に優しい医療の実現が期待される。これまでの成果は、国内外学会誌等に報告し、大きな反響を得ている。 研究成果である四肢のリンパ浮腫に対する術式は低侵襲の新しい外科療法として、保険適用に採用された。また、センチネルリンパ節生検を用いた外科療法はすでに標準的治療になりつつある。さらに、今回のQOL向上を目指した他の治療方法の成果を元に一般的な治療ガイドラインなどに活用されつつある。 各臓器における機能温存術の施行および機能改善のための機器開発が、患者のQOLに著しい向上が期待でき、社会的にも貢献できる。また、機能温存外科療法の分野では、国内外で評価され、当該分野をリードする形に発展している。 79 0 43 0 0  
内富庸介 がん患者のQOL向上を目指す支持療法に関する研究 平成12-14年度 39,000 国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部 がん患者の難治性神経障害性疼痛および呼吸困難の動物モデルを内外に先駆けて作成した。また、神経画像研究により、がん告知後に生じる、患者の不快な心的外傷体験の想起に、海馬および扁桃体体積が関連することを見出した。本知見により、がん患者の心理的苦痛の背景に脳の機能的脆弱性が存在することが示唆された。成果は、Pain、Am J Psychiatry等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 現在、成果をもとに、難治性神経障害性疼痛および呼吸困難の動物モデルの作成法の普及、さらに極めて困難である脳海馬扁桃体体積測定法のガイドラインを作成し普及に努めている。成果の一部は、厚生労働省・日本医師会監修のがん緩和ケアに関するマニュアルの改訂(平成14年)に反映された。 信頼性のある、難治性神経障害性疼痛および呼吸困難の動物モデル、および脳海馬扁桃体体積測定法の開発により、支持療法の基礎的知見を集積する、世界的に見ても極めてまれな、先駆的分野として発展しており、特に後者は他の分野からも関心を集めている。将来、集積した基礎的知見をもとに、メカニズムに基づく画期的な創薬、および新規治療法開発を行うことにより、支持療法の進展が期待される。 99 142 111 0 1 http://www.ncc.go.jp/jp/nccri/divisions/22psy/22psy.html
濃沼信夫 がん医療経済とその研究基盤の整備に 関する研究 平成14-15年度 8,000 東北大学大学院 医学系研究科 医療管理学分野 本研究は、がん医療有効性の評価に必要な経済分析手法の標準化を図り、がんの研究者と臨床医の利用が容易となる国内外の関連情報を集積するものである。すなわち、国際的に通用する経済評価の手法の標準化を行い、この分析手法の普及・活用を通じて、がん医療の標準化、総合的なアウトカム評価、クリニカル・エビデンスの提示などの推進を図るもので、EBMに立脚したがん医療の実践という臨床的ニーズに応えるものといえる。 本研究は、がん医療の社会経済評価を行う際に利用可能な内外のデータベースの検索、その吟味(meta-analysis)、およびがん医療の社会経済評価法の標準ガイドラインの作成を行い、がん医療の有効性評価(エビデンスの構築)に向けた医療経済研究の基盤整備を図るための基礎資料を提示するものである。従って、医療資源の有効利用と質と効率に優れたがん医療に向けた政策の立案および展開に寄与しうるものと考えられる。 本研究は、がん医療において経済面についても患者に十分なインフォームド・コンセントをとるためのツールを提示するものである。また、がん医療の情報開示と説明責任を求める社会的要請に対応し、がん医療の質と効率の向上を促す療養環境の整備に資するものと考えられる。 5 5 12 0 0  


トップへ
戻る