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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業:こころの健康科学研究事業
所管課: 社会・援護局障害保健福祉部企画課
(研究費の執行、精神分野の調整:社会・援護局障害保健福祉部企画課)
(推進事業費の執行、神経分野の調整:健康局疾病対策課)
予算額の推移:
※1:研究費  ※2:推進事業費
平成13年度 平成14年度(注) 平成15年度

2,141,791千円
※1: 1,870,000千円
※2: 271,791千円
1,897,747千円
※1: 1,687,586千円
※2: 210,161千円
(1) 研究事業の目的
 自殺や睡眠障害、自閉症等のこころの健康問題、精神分裂病(統合失調症)、感情障害(そううつ病)等の精神疾患及び筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病等の神経・筋疾患に対して、神経科学及び分子生物学的手法、画像診断技術等の最先端バイオ・メディカル技術等を活用し、その病因・病態の解明、遺伝子情報に基づく機能予測、疫学調査等を行うことにより、画期的な予防、診断、治療法等の研究開発を推進する。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況 < 別紙1 >
(3) 研究成果及びその他の効果 < 別紙2 >
(4) 事業の目的に対する達成度
疾患研究に関する体系的な目標設定は行っていないが、特に、行政的に求められるニーズに対しては、適宜、具体的な成果を上げている。
(5) 行政施策との関連性
精神保健福祉施策に関しては、
平成14年12月社会保障審議会精神障害分会報告書においても、当研究事業の活用による研究開発の推進を明記。
神経・筋疾患等の疾病施策に関しては、
いわゆる難病を対象とした実証的な臨床研究を中心に調査研究を実施している特定疾患対策研究(平成15年度より難治性疾患克服研究)の基礎となる、難治性神経・筋疾患の原因解明や治療に向けた新規手法の開発を行うほか、神経・筋疾患分野全般の疾患(頭痛、中枢神経障害等)の治療に向けた研究開発を実施。
(6) 今後の課題
更に、行政ニーズを明確にした研究課題の公募と進捗状況の把握、活用
研究経費の適切な執行体制の整備
(7) 研究事業の総合評価 < 別紙2 >


<別紙1>

平成12年度厚生科学研究費補助金(脳科学研究事業)採択課題一覧

1 脳科学研究事業 田平 武 国立精神神経センター神経研究所疾病研究第6部 部長 アルツハイマー病における神経細胞死促進機構の解明と抑止方法の開発 30,000
2 脳科学研究事業 柳澤 勝彦 国立療養所中部病院長寿医療研究センター痴呆疾病研究部 研究部長 アルツハイマー病の発症分子機構に関する研究 30,000
3 脳科学研究事業 岩坪 威 東京大学大学院薬学系研究科 教授 蛋白質異常蓄積を標的とするアルツハイマー病新規治療法の開発 30,000
4 脳科学研究事業 祖父江 憲治 大阪大学大学院医学系研究科 教授 血管平滑筋細胞形質転換と血小板活性化機転に基づく脳血管性痴呆の病因解明と治療法の開発 30,000
5 脳科学研究事業 松田 博史 国立精神神経センター武蔵病院(放射線診療部) 部長 機能的MRI、脳磁図、およびPET/SPECTを用いた精神疾患の病態解明とそれに基ずく治療法の開発 10,000
6 脳科学研究事業 吉川 武男 理化学研究所(脳科学総合研究センター分子精神科学研究チーム) チームリーダー 機能性精神疾患の系統的遺伝子解析 30,000
7 脳科学研究事業 桃井 隆 国立精神神経センター神経研究所 室長 神経変性疾患におけるイニシエーターカスパーゼ活性化の分子機構と非ペプチド性阻害剤の開発 20,000
8 脳科学研究事業 和田 圭司 国立精神神経センター神経研究所疾病研究第4部 部長 神経変性疾患におけるユピキチンシステムの分子病態解明と治療法開発への応用 35,000
9 脳科学研究事業 糸山 泰人 東北大学大学院医学系研究科 教授 筋萎縮性側索硬化症の病態解明と治療法の開発に関する研究 25,000
10 脳科学研究事業 祖父江 元 名古屋大学医学部神経内科 教授 運動ニューロン疾患の病態関連分子の同定と治療法の開発 20,000
11 脳科学研究事業 中福 雅人 東京大学大学院医学系研究科神経生物学講座 助教授 神経幹細胞を用いた神経再生・修復のための基盤技術の開発 35,000
12 脳科学研究事業 楠 進 東京大学(医学部付属病院) 講師 免疫性神経疾患の発症機構の解明と治療法の開発 20,000
13 脳科学研究事業 山村 隆 国立精神神経センター神経研究所免疫研究部 部長 多発性硬化症の発症機構解明と治療法の開発 35,000
14 脳科学研究事業 吉良 潤一 九州大学医学系研究科 教授 多発性硬化症の神経免疫学的研究ー疾患感受性および疾患抵抗性遺伝子を利用した視神経精髄型多発性硬化症の責任自己抗原の検索 29,000
15 脳科学研究事業 木戸 博 徳島大学分子酵素研究センター 教授 インフルエンザ脳炎・脳症発症機序の解析と治療法の開発 30,000
16 脳科学研究事業 今村 進博 国立精神神経センター神経研究所機能研究部 室長 筋ジストロフィーにおける筋線維崩壊の本体の解明 20,000
17 脳科学研究事業 清水 輝夫 帝京大学医学部 教授 福山型先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発に関する研究 40,000
18 脳科学研究事業 大野 耕策 鳥取大学医学部生命科学科神経生物学 教授 神経回路網形成障害の分子機構に関する研究 22,000
19 脳科学研究事業 飯沼 一宇 東北大学大学院医学系研究科小児科学 教授 乳幼児期に生じるけいれん発作の病態と治療に関する研究 25,000
20 脳科学研究事業 杉本 壽 大阪大学大学院医学系研究科 教授 中枢神経損傷後の機能回復機構の解明、治療法の開発 30,000
21 脳科学研究事業 川口 三郎 京都大学大学院医学研究科 教授 脳・脊髄損傷の再生的治療法の開発 20,000
22 脳科学研究事業 内山 真 国立精神神経センター精神保健研究所精神生理部 室長 ヒト睡眠・生体リズム障害の病態と治療予防法開発に関する基盤研究 30,000
23 脳科学研究事業 山脇 成人 広島大学医学部神経精神医学講座 教授 ストレスへの適応破綻の脳内分子機構の解明と予防法の開発 28,000
24 脳科学研究事業 西川 徹 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授 覚醒剤・麻薬依存の分子機構の解明と治療法開発に関する研究 33,000
25 脳科学研究事業 杉山 雄一 東京大学大学院薬学系研究科製剤設計学 教授 血液脳関門の機能特性を利用した脳内への薬物及び遺伝子輸送システムの開発 35,000
26 脳科学研究事業 高嶋 幸男 国立精神神経センター臨床検査部 部長 精神・神経・筋疾患の実験用研究資源に関する研究 60,000
27 脳科学研究事業 田中 恵子 新潟大学医学部 講師 精神・神経・筋疾患に対する画期的な治療法に関する研究 5,500
28 脳科学研究事業 武田 伸一 国立精神神経センター神経研究所遺伝子工学部 室長 幹細胞を用いた筋ジストロフィーに対する治療に関する基盤的研究 40,000
29 脳科学研究事業 早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所第2研究部 名誉所長 睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究 25,000
30 脳科学研究事業 大槻 泰介 国立精神・神経センター武蔵病院脳神経外科 手術部長 13C-MRSを用いた痴呆性疾患に対する新しい診断技術と治療薬の開発に関する基礎的研究 30,000
31 脳科学研究事業 福土 審 東北大学医学部附属病院心療内科 助教授・副科長 心身症と神経症におけるヒスタミン神経系の異常に関する研究 21,000
32 脳科学研究事業 杉田 秀夫 国立精神・神経センター 名誉教授 脳科学研究事業に係る企画及び評価に関する研究 8,000
33 脳科学研究事業 吉川 和明 大阪大学蛋白質研究所蛋白質機能制御研究部門 教授 アルツハイマー病の神経変性マーカー蛋白質に関する研究 10,000
34 脳科学研究事業 難波 吉雄 東京大学大学院医学系研究科老化制御分野 講師 臨床応用可能なアルツハイマー病の生物学的マーカーの確立に関する研究 24,000
35 脳科学研究事業 後藤 雄一 国立精神・神経センター神経研究所微細構造研究部 室長 ミトコンドリア脳筋症の発症予防と治療法開発の研究 40,000
36 脳科学研究事業 古川 昭栄 岐阜薬科大学分子生物学 教授 神経栄養因子の産生調節による神経細胞の保護・機能修復に関する研究 28,000
37 脳科学研究事業 鈴木 義之  東京都臨床医学総合研究所 副所長 神経遺伝病の新しい治療法の開発に関する研究 35,000
38 脳科学研究事業 永津 俊治 藤田保健衛生大学総合医科学研究所 所長 パーキンソン病における神経細胞死の分子機構とその保護治療に関する研究 53,000
39 脳科学研究事業 辻 省次 新潟大学脳研究所神経内科 教授 各種トリプレットリピート病に共通する治療法の開発に関する研究 60,000
40 脳科学研究事業 伊藤 健吾 国立療養所中部病院長寿医療研究センター生体機能研究部 生体機能研究部長 ポジトロン断層法による錘体外路系疾患におけるカアテコールアミン作動性神経活性に関する研究 35,000
41 脳科学研究事業 小島 卓也 日本大学医学部精神神経科学教室 教授 精神分裂病の病因的異質性に関する研究 36,000


平成13年度厚生科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)採択課題一覧

1 脳科学研究事業 田平 武 タビラタケシ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第6部 部長 アルツハイマー病における神経細胞死促進機構の解明と抑止方法の開発 32,500
2 脳科学研究事業 柳澤 勝彦 ヤナギサワカツヒコ 国立療養所中部病院長寿医療研究センター痴呆疾病研究部 研究部長 アルツハイマー病の発症分子機構に関する研究 33,000
3 脳科学研究事業 岩坪 威 イワツボタケシ 東京大学大学院薬学系研究科 教授 蛋白質異常蓄積を標的とするアルツハイマー病新規治療法の開発 30,000
4 脳科学研究事業 祖父江 憲治 ソブエケンジ 大阪大学大学院医学系研究科 教授 血管平滑筋細胞形質転換と血小板活性化機転に基づく脳血管性痴呆の病因解明と治療法の開発 27,000
5 脳科学研究事業 吉川 武男 ヨシカワタケオ 理化学研究所(脳科学総合研究センター分子精神科学研究チーム) チームリーダー 機能性精神疾患の系統的遺伝子解析 37,000
6 脳科学研究事業 桃井 隆 モモイタカシ 国立精神・神経センター神経研究所 室長 神経変性疾患におけるイニシエーターカスパーゼ活性化の分子機構と非ペプチド性阻害剤の開発 20,000
7 脳科学研究事業 和田 圭司 ワダケイジ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部 部長 神経変性疾患におけるユピキチンシステムの分子病態解明と治療法開発への応用 35,000
8 脳科学研究事業 糸山 泰人 イトヤマヤスト 東北大学大学院医学系研究科 教授 筋萎縮性側索硬化症の病態解明と治療法の開発に関する研究 22,500
9 脳科学研究事業 祖父江 元 ソブエゲン 名古屋大学医学部神経内科 教授 運動ニューロン疾患の病態関連分子の同定と治療法の開発 18,000
10 脳科学研究事業 中福 雅人 ナカフクマサト 東京大学大学院医学系研究科神経生物学講座 助教授 神経幹細胞を用いた神経再生・修復のための基盤技術の開発 31,500
11 脳科学研究事業 楠 進 クスノキススム 東京大学(医学部付属病院) 講師 免疫性神経疾患の発症機構の解明と治療法の開発 18,000
12 脳科学研究事業 山村 隆 ヤマムラタカシ 国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部 部長 多発性硬化症の発症機構解明と治療法の開発 35,000
13 脳科学研究事業 吉良 潤一 キラジュンイチ 九州大学医学系研究科 教授 多発性硬化症の神経免疫学的研究ー疾患感受性および疾患抵抗性遺伝子を利用した視神経精髄型多発性硬化症の責任自己抗原の検索 26,100
14 脳科学研究事業 木戸 博 キドヒロシ 徳島大学分子酵素学研究センター 教授 インフルエンザ脳炎・脳症発症機序の解析と治療法の開発 27,000
15 脳科学研究事業 今村 道博 イマムラミチヒロ 国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部 室長 筋ジストロフィーにおける筋線維崩壊の本体の解明 18,000
16 脳科学研究事業 清水 輝夫 シミズテルオ 帝京大学医学部 教授 福山型先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発に関する研究 36,000
17 脳科学研究事業 大野 耕策 オオノコウサク 鳥取大学医学部生命科学科神経生物学 教授 神経回路網形成障害の分子機構に関する研究 17,600
18 脳科学研究事業 飯沼 一宇 イイヌマカズイエ 東北大学大学院医学系研究科小児科学 教授 乳幼児期に生じるけいれん発作の病態と治療に関する研究 20,000
19 脳科学研究事業 杉本 壽 スギモトヒサシ 大阪大学大学院医学系研究科 教授 中枢神経損傷後の機能回復機構の解明、治療法の開発 30,000
20 脳科学研究事業 川口 三郎 カワグチサブロウ 京都大学大学院医学研究科 教授 脳・脊髄損傷の再生的治療法の開発 16,000
21 脳科学研究事業 内山 真 ウチヤママコト 国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部 部長 ヒト睡眠・生体リズム障害の病態と治療予防法開発に関する基盤研究 27,000
22 脳科学研究事業 山脇 成人 ヤマワキシゲト 広島大学医学部神経精神医学講座 教授 ストレスへの適応破綻の脳内分子機構の解明と予防法の開発 25,200
23 脳科学研究事業 西川 徹 ニシカワトオル 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授 覚醒剤・麻薬依存の分子機構の解明と治療法開発に関する研究 29,700
24 脳科学研究事業 杉山 雄一 スギヤマユウイチ 東京大学大学院薬学系研究科製剤設計学 教授 血液脳関門の機能特性を利用した脳内への薬物及び遺伝子輸送システムの開発 31,500
25 脳科学研究事業 有馬 邦正 アリマクニマサ 国立精神・神経センター臨床検査科 部長 精神・神経・筋疾患の実験用研究資源に関する研究 20,000
26 脳科学研究事業 武田 伸一 タケダシンイチ 国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部 部長 幹細胞を用いた筋ジストロフィーに対する治療に関する基盤的研究 40,000
27 脳科学研究事業 早石 修 ハヤイシオサム (財)大阪バイオサイエンス研究所第2研究部 名誉所長 睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究 27,500
28 脳科学研究事業 大槻 泰介 オオツキタイスケ 国立精神・神経センター武蔵病院脳神経外科 手術部長 13C-MRSを用いた痴呆性疾患に対する新しい診断技術と治療薬の開発に関する基礎的研究 24,000
29 脳科学研究事業 福土 審 フクドシン 東北大学大学院医学系研究科人間行動学 教授 心身症と神経症におけるヒスタミン神経系の異常に関する研究 21,000
30 脳科学研究事業 高橋 清久 タカハシキヨヒサ 国立精神・神経センター 総長 脳科学研究事業に係る企画及び評価に関する研究 30,000
31 脳科学研究事業 小島 卓也 コジマタクヤ 日本大学 医学部精神神経科学教室 教授 精神分裂病の客観的診断法の確立と分子遺伝学的基盤に関する研究 35,000
32 脳科学研究事業 松田 博史 マツダヒロシ 国立精神・神経センター武蔵病院 (放射線診療部) 部長 精神疾患に対する多重画像モダリティによる認知機能障害の解明とそれに基づく治療法の開発 24,000
33 脳科学研究事業 三國 雅彦 ミクニマサヒコ 群馬大学医学部 神経精神医学講座 教授 感情障害の発症脆弱性としての神経発達・神経再生機能障害に関する基礎的並びに臨床的研究 15,000
34 脳科学研究事業 水野 美邦 ミズノヨシクニ 順天堂大学医学部神経学教室 教授 パーキンソン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御 98,020
35 脳科学研究事業 貫名 信行 ヌキナノブユキ 理化学研究所脳科学総合研究センター病因遺伝子研究グループ グループディレクター CAGリピート病に対する治療法の開発に関する研究 35,000
36 脳科学研究事業 納  光弘 オサメミツヒロ 鹿児島大学医学部 教授 成人T細胞白血病ウィルス関連ミエロパチーの病態の解明及び治療法の開発に関する研究 30,000
37 脳科学研究事業 西野 一三 ニシノイチゾウ 国立精神・神経センター 神経研究所 微細構造研究部 室長 ライソゾーム性筋疾患の病態究明と治療法開発に関する研究 30,000
38 脳科学研究事業 久保田 健夫 クボタタケオ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部 室長 ゲノム不活化機構の異常に基づく脳発達障害の病態解明と治療法開発の研究 25,000
39 脳科学研究事業 山崎 麻美 ヤマサキマミ 国立大阪病院脳神経外科 医長 脊髄髄膜瘤の脊髄・末梢神経機能回復法の開発 15,000
40 脳科学研究事業 若松 延昭 ワカマツノブアキ 愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所 遺伝子学部 部長  SIP1欠損症:神経堤障害とてんかんを呈する知的障害患者の病態解明と治療法の開発 25,000
41 脳科学研究事業 塩見 春彦 シオミハルヒコ 徳島大学 ゲノム機能研究センター 教授 遺伝性精神遅滞症脆弱X症候群の分子機構解析とその治療への応用 25,000
42 脳科学研究事業 阪中 雅広 サカナカマサヒロ 愛媛大学医学部 教授 静脈内投与用脳卒中・脊髄損傷治療薬の開発に関する研究 12,000
43 脳科学研究事業 堂浦 克美 ドウウラカツミ 九州大学大学院医学研究院 講師 即戦力的クロイツフェルト・ヤコブ病治療法の確立に関する研究 25,000
44 脳科学研究事業 松田 良一 マツダリョウイチ 東京大学大学院 助教授 未認可抗生物質ネガマイシンによる筋ジストロフィーの治療 25,000


平成14年度厚生科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)採択課題一覧

1 815 こころの健康科学研究 森  浩一 モリ コウイチ 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 室長 吃音の病態解明と医学的評価及び検査法の確立のための研究 13,000
2 816 こころの健康科学研究 加藤 進昌 カトウノブマサ 東京大学医学部附属病院 教授 自閉症の原因解明と予防、治療法の開発 30,000
3 817 こころの健康科学研究 三國 雅彦 ミクニマサヒコ 群馬大学医学部 教授 感情障害の発症脆弱性素因に関する神経発達・神経新生的側面からの検討並びにその修復機序に関する分子生物学的研究 30,000
4 818 こころの健康科学研究 功刀  浩 クヌギヒロシ 国立精神・神経センター神経研究所 部長 自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子の解明 30,000
5 819 こころの健康科学研究 中島八十一 ナカジマヤソイチ 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 部長 高次脳機能障害者の生理学的診断方法の開発 15,000
6 820 こころの健康科学研究 松岡 洋夫 マツオカヒロオ 東北大学大学院医学系研究科 教授 精神分裂病の発症脆弱性の解明およびその客観的な診断方法の確立 30,000
7 821 こころの健康科学研究 大久保義朗 オオクボヨシロウ 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 教授 神経伝達機能イメージングを用いた精神疾患の診断法および治療効果の客観的評価法の確立に関する研究 10,000
8 822 こころの健康科学研究 酒井 明夫 サカイアキオ 岩手医科大学医学部 教授 自殺多発地域における中高年の自殺予防を目的とした地域と医療機関の連携による大規模介入研究 15,000
9 823 こころの健康科学研究 塚田 和美 ツカダカズミ 国立精神・神経センター国府台病院 部長 重症精神障害者に対する、新たな訪問型の包括的地域生活支援サービス・システムの開発に関する研究 30,000
10 824 こころの健康科学研究 切池 信夫 キリイケノブオ 大阪市立大学大学院医学研究科 教授 摂食障害の標準的治療法の開発とそのガイドライン作成と治療体制のあり方について 15,000
11 825 こころの健康科学研究 岡崎 祐士 オカザキユウジ 三重大学医学部 教授 双生児法による脳とこころの発達過程及び精神疾患成因の解明 25,000
12 826 こころの健康科学研究 松下 正明 マツシタマサアキ 東京都立松沢病院 院長 触法行為を行った精神障害者の精神医学的評価、治療等に関する基礎的研究 30,000
13 827 こころの健康科学研究 福山 秀直 フクヤマヒデナオ 京都大学大学院医学研究科 教授 脳機能画像を用いたパーキンソン病の病態と治療法の評価に関する研究 29,725
14 828 こころの健康科学研究 坂井 文彦 サカイフミヒコ 北里大学医学部 教授 慢性頭痛の診療ガイドライン作成に関する研究 30,000
15 829 こころの健康科学研究 平澤 恵理 ヒラサワエリ 順天堂大学医学部老人性疾患病態・治療研究センター 講師 細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患の病態解明と治療法に関する研究 20,000
16 830 こころの健康科学研究 池田 穣衛 イケダジョウエ 東海大学総合医学研究所 教授 ALS2分子病態解明とALS 治療技術の開発 35,000
17 831 こころの健康科学研究 鈴木 義之 スズキヨシユキ 国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授 神経遺伝病に対するケミカルシャペロン療法の開発 10,000
18 832 こころの健康科学研究 水澤 英洋 ミズサワヒデヒロ 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授 発現型RNAiを用いた神経・筋疾患の画期的遺伝子治療法の開発 35,000
19 833 こころの健康科学研究 渋谷 統寿 シブヤ ノリトシ 国立療養所川棚病院 院長 選択的リンパ球吸着療法による免疫性神経筋疾患の治療 10,000
20 834 こころの健康科学研究 赤堀 文昭 アカホリ フミアキ 麻布大学獣医学部 (兼)生物科学総合研究所 教授 (兼)所長 ひきこもり等の精神問題に対する精神的なアプローチに関する研究(動物介在療法及び音楽療法の臨床的な応用) 4,000
21 835 こころの健康科学研究 石井 哲夫 イシイ テツオ (社)日本自閉症児協会 会長 高機能広汎性発達障害の社会的不適応とその対応に関する研究 10,000
22 836 こころの健康科学研究 江草 安彦 エグサ ヤスヒコ 社団法人 日本重症児福祉協会 理事長 重症心身障害児施設入所児(者)の20余年間の実態調査の分析に関する総合研究 6,600
23 837 こころの健康科学研究 大川 匡子 オオカワ マサコ 滋賀医科大学 精神医学講座 教授 睡眠障害対応のあり方に関する研究 10,000
24 838 こころの健康科学研究 鹿島 晴雄 カシマ ハルオ 慶應義塾大学医学部 精神神経科 助教授 精神疾患治療ガイドラインの策定等に関する研究 3,600
25 839 こころの健康科学研究 神庭 重信 カンバ シゲノブ 山梨医科大学 精神神経医学講座 教授 うつ病による自殺の予防を目的としたスクリーニングと介入の研究 12,000
26 840 こころの健康科学研究 北村 俊則 キタムラ トシノリ 熊本大学医学部 神経精神医学講座 教授 人間関係の希薄化がもたらした精神保健問題に関する研究 5,000
27 841 こころの健康科学研究 吉川 武彦 キッカワ タケヒコ 国立精神・神経センタ−精神保健研究所 名誉所長 こころの健康に関する疫学調査の実施方法に関する研究 20,000
28 842 こころの健康科学研究 金 吉晴 キン ヨシハル 国立精神・神経センタ−精神保健研究所成人精神保健部 成人精神保健室長 心的外傷体験による後遺障害の評価と援助技法の研究 10,000
29 843 こころの健康科学研究 小林 秀資 コバヤシ ヒデスケ 国立公衆衛生院 院長 思春期における暴力行為の原因究明と対策に関する研究 11,000
30 844 こころの健康科学研究 斎藤 万比古 サイトウ カズヒコ 国立精神・神経センタ−国府台病院 心理・指導部 心理・指導部長 児童思春期精神医療・保健・福祉のシステム化に関する研究 11,000
31 845 こころの健康科学研究 今田 寛睦 イマダ ヒロムツ 国立精神・神経センタ−精神保健研究所 所長 自殺と防止対策の実態に関する研究 20,000
32 846 こころの健康科学研究 白倉 克之 シロクラ カツユキ 国立療養所久里浜病院 院長 青少年の飲酒問題の実態と予防に関する研究 8,000
33 847 こころの健康科学研究 中村 俊規 ナカムラ トシノリ 獨協医科大学医学部越谷病院救命救急センター 講師 脳外傷後遺症の情動要因、特に心的外傷に注目した認知リハビリテーションとその臨床コストに関する研究 5,000
34 848 こころの健康科学研究 車地 暁生 クルマジ アケオ 東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野 講師 自殺予防を目指した新規向精神薬開発に関する研究 28,000
35 849 こころの健康科学研究 小島 卓也 コジマ タクヤ 日本大学 医学部精神神経科学教室 教授 精神分裂病の客観的診断法の確立と分子遺伝学的基盤に関する研究 35,000
36 850 こころの健康科学研究 松田 博史 マツダ ヒロシ 国立精神・神経センター武蔵病院放射線診療部 放射線診療部長 精神疾患に対する多重画像モダリティによる認知機能障害の解明とそれに基づく治療法の開発 24,000
37 851 こころの健康科学研究 若松 延昭 ワカマツ ノブアキ 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所遺伝学部 遺伝学部長 SIP1欠損症:神経堤障害とてんかんを呈する知的障害患者の病態解明と治療法の開発 25,000
38 852 こころの健康科学研究 塩見 春彦 シオミ ハルヒコ 徳島大学 ゲノム機能研究センター 教授 遺伝性精神遅滞症脆弱X症候群の分子機構解析とその治療への応用 25,000
39 853 こころの健康科学研究 高橋 清久 タカハシ キヨヒサ 国立精神・神経センター 総長 こころの健康科学研究事業に係る企画及び評価に関する研究 30,215
40 854 こころの健康科学研究 水野 美邦 ミズノ ヨシクニ 順天堂大学医学部神経学教室 神経学教授 パーキン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御 75,400
41 855 こころの健康科学研究 貫名 信行 ヌキナ ノブユキ 理化学研究所脳科学総合研究センター 病因遺伝子研究グループ グループディレクター CAGリピート病に対する治療法の開発に関する研究 35,000
42 856 こころの健康科学研究 納  光弘 オサメ ミツヒロ 鹿児島大学医学部 文部科学教官教授 成人T細胞白血病ウィルス関連ミエロパチーの病態の解明及び治療法の開発に関する研究 30,000
43 857 こころの健康科学研究 西野 一三 ニシノ イチゾウ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部 部長 ライソゾーム性筋疾患の病態解明と治療法開発に関する研究 30,000
44 858 こころの健康科学研究 堂浦 克美 ドウウラ カツミ 九州大学大学院医学研究院 助教授 即戦力的クロイツフェルト・ヤコブ病治療法の確立に関する研究 25,000
45 859 こころの健康科学研究 松田 良一 マツダ リョウイチ 東京大学大学院総合文化研究科 助教授 未認可抗生物質ネガマイシンによる筋ジストロフィーの治療 25,000
46 860 こころの健康科学研究 伊藤 順一郎 イトウ ジュンイチロウ  国立精神・神経センタ−精神保健研究所 社会復帰相談部長 地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究 6,600
47 861 こころの健康科学研究 加我 牧子 カガ マキコ 国立精神・神経センタ−精神保健研究所知的障害部 部長 知的障害児の医学的診断のあり方と療育・教育連携に関する研究 6,000
48 862 こころの健康科学研究 鈴木 二郎 スズキ ジロウ 国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授 精神医学における倫理的・社会的問題に関する研究 10,000
49 863 こころの健康科学研究 長瀬 輝誼 ナガセ テルヨシ 医療法人社団東京愛成会 高月病院 院長 病態像に応じた精神科リハビリテーション療法の研究 2,400
50 864 こころの健康科学研究 田平 武 タビラ タケシ 国立療養所中部病院長寿医療研究センター センター長 アルツハイマー病における神経細胞死促進機構の解明と抑止方法の開発 32,500
51 865 こころの健康科学研究 柳澤 勝彦 ヤナギサワ カツヒコ 国立療養所中部病院・長寿医療研究センター痴呆疾患研究部 痴呆疾患研究部長 アルツハイマー病の発症分子機構に関する研究 35,000
52 866 こころの健康科学研究 岩坪 威 イワツボ タケシ 東京大学大学院薬学系研究科・医療薬学講座・臨床薬学教室 教授 蛋白質異常蓄積を標的とするアルツハイマー病新規治療法の開発 30,000
53 867 こころの健康科学研究 吉川 武男 ヨシカワ タケオ 理化学研究所 脳科学総合研究センター分子精神科学研究チーム チームリーダー 機能性精神疾患の系統的遺伝子解析 37,000
54 868 こころの健康科学研究 大野 耕策 オオノ コウサク 鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設・脳神経小児科 教授 神経回路網形成障害の分子機構に関する研究 15,840
55 869 こころの健康科学研究 飯沼 一宇 イイヌマ カズイエ 東北大学大学院医学系研究科小児医学講座・小児病態学分野 教授 乳幼児期に生じるけいれん発作の病態と治療に関する研究 18,000
56 870 こころの健康科学研究 内山 真 ウチヤマ マコト 国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部 部長 ヒト睡眠・生体リズム障害の病態と治療予防法開発に関する基盤研究 27,000
57 871 こころの健康科学研究 山脇 成人 ヤマワキ シゲト 広島大学医学部神経精神医学講座 教授 ストレスへの適応破綻の脳内分子機構の解明と予防法の開発 25,200
58 872 こころの健康科学研究 西川 徹 ニシカワ トオル 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野 教授 覚醒剤・麻薬依存の分子機構の解明と治療法開発に関する研究 32,670
59 873 こころの健康科学研究 早石 修 ハヤイシ オサム (財)大阪バイオサイエンス研究所第2研究部 名誉所長 睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究 30,250
60 874 こころの健康科学研究 祖父江 憲治 ソブエ ケンジ 大阪大学大学院医学系研究科 教授 血管平滑筋細胞形質転換と血小板活性化機転に基づく脳血管性痴呆の病因解明と治療法(発症および進行阻止法)の開発 27,000
61 875 こころの健康科学研究 桃井 隆 モモイ タカシ 国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第5部室長 神経変性疾患におけるイニシエーターカスパーゼ活性化の分子機構と非ペプチド性阻害剤の開発 20,000
62 876 こころの健康科学研究 和田 圭司 ワダ ケイジ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部 疾病研究第4部長 神経変性疾患におけるユピキチンシステムの分子病態解明と治療法開発への応用 35,000
63 877 こころの健康科学研究 糸山 泰人 イトヤマ ヤスト 東北大学大学院医学系研究科神経内科 教授 筋萎縮性側索硬化症の病態解明と治療法の開発に関する研究 22,500
64 878 こころの健康科学研究 祖父江 元 ソブエ ゲン 名古屋大学医学部研究科神経内科 教授 運動ニューロン疾患の病態関連分子の同定と治療法の開発 18,000
65 879 こころの健康科学研究 中福 雅人 ナカフク マサト 東京大学大学院医学系研究科神経生物学講座 助教授 神経幹細胞を用いた神経再生・修復のための基盤技術の開発 34,650
66 880 こころの健康科学研究 楠 進 クスノキ ススム 東京大学医学部附属病院 講師 免疫性神経疾患の発症機構の解明と治療法の開発 18,000
67 881 こころの健康科学研究 山村 隆 ヤマムラ タカシ 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部 部長 多発性硬化症の発症機構解明と治療法の開発 35,000
68 882 こころの健康科学研究 吉良 潤一 キラ ジュンイチ 九州大学大学院医学研究院 文部教官・教授 多発性硬化症の神経免疫学的研究ー疾患感受性および疾患抵抗性遺伝子を利用した視神経脊髄型多発性硬化症の責任自己抗原の検索 26,100
69 883 こころの健康科学研究 木戸 博 キド ヒロシ 徳島大学分子酵素学研究センター・酵素分子化学部門 教授 インフルエンザ脳炎・脳症発症機序の解析と治療法の開発 27,000
70 884 こころの健康科学研究 今村 道博 イマムラ ミチヒロ 国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部 室長 筋ジストロフィーにおける筋線維崩壊の本体の解明 18,000
71 885 こころの健康科学研究 清水 輝夫 シミズ テルオ 帝京大学医学部 教授 福山型先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発に関する研究 36,000
72 886 こころの健康科学研究 杉本 壽 スギモト ヒサシ 大阪大学大学院医学系研究科 教授(救急医学) 中枢神経損傷後の機能回復機構の解明、治療法の開発 30,000
73 887 こころの健康科学研究 川口 三郎 カワグチ サブロウ 京都大学大学院医学研究科・医学部 教授 脳・脊髄損傷の再生的治療法の開発 16,000
74 888 こころの健康科学研究 杉山 雄一 スギヤマ ユウイチ 東京大学大学院薬学系研究科製剤設計学教室 教授 血液脳関門の機能特性を利用した脳内への薬物及び遺伝子輸送システムの開発 31,500
75 889 こころの健康科学研究 有馬 邦正 アリマ クニマサ 国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査部 部長 精神・神経・筋疾患の実験用研究資源に関する研究 20,000
76 890 こころの健康科学研究 武田 伸一 タケダ シンイチ 国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部 部長 幹細胞を用いた筋ジストロフィーに対する治療に関する基盤的研究 40,000
1,729,750


こころの健康科学研究事業(精神分野)
別紙2

(3) 研究成果及びその他の効果
精神疾患の病因・病態の解明、遺伝子情報に基づく機能予測、疫学調査等を行うことにより、画期的な予防、診断、治療法等の研究開発を推進するとの目的に沿った研究事業を実施しており、14年度終了研究においては、次のような成果があった。

精神疾患の病態解明に関する研究においては、
アルツハイマー病の発症病態に重要なアミロイド蛋白に関わる分子機構や、アミロイド蛋白蓄積に引き続く神経細胞死促進の機構解明(柳澤班、及び田平班)
国民的な健康課題の一つである睡眠障害の基礎となる、生体リズム異常の病態解明(内山班)
難治性となりやすい、乳幼児期のけいれんの発生メカニズム解明(飯沼班)
精神疾患ゲノムバンクの構築と統合失調症の遺伝子解析(吉川班)
依存性薬物による精神病状態や依存形成に関与する新たな多数の分子の発見(西川班)
ストレス適応・破綻の脳内機序及び幼児期のストレスと成熟後のストレス脆弱性との関連の解明(山脇班)
等、分子生物学・遺伝子解析・画像解析等の手法を用いて、新たなメカニズムの解明が進んだ。これらの結果は、新たな診断手法や、精神疾患の発症予防や治療に資する治療薬の開発に向けた大きな手がかりとなるものである。

精神疾患の診断治療等の臨床に直結する研究においては、
知的発達障害の診断と評価のための医学的検査のガイドライン試案作成(加我班)
摂食障害の治療ガイドライン作成(切池班)
吃音の標準的検査法の幼児版の改訂(森班)
等が行われ、今後これを普及することにより、これらの疾患・障害に対する医療の質の向上、医療関係者相互や福祉・教育関係者との連携の促進、医療資源の効果的な利用が進むものと期待できる。

さらに、行政施策と関わりの深い研究においては、
精神保健福祉法に基づく精神医療における人権保護等の現状と課題の体系的整理(鈴木班)
現在(平成15年4月現在)国会審議中の「心神喪失者等医療観察法案」の施行時に必要となるがわが国では未発達の司法精神医学・医療の体系全般について取組み、制度の各段階における医学的評価、治療プログラム、地域における関係者の役割、教育研修、制度運営のモニタリング手法等について、今後短期間のうちに、エビデンスに基づく多数のガイドラインや基準案等を提案する基盤確立(松下班)
が行われ、人権への特別な配慮が求められるという精神医療の特性を踏まえた、法運用のより一層の改善や、法施行に向けた科学的事実やデータの蓄積がなされた。

(7)研究事業の総合評価

わが国の精神疾患による受療者は200万人を超え、年間の自殺死亡者は3万人を超えている。また思春期のひきこもり、問題行動など、こころの問題と関連する社会問題もクローズアップされている。このように、「こころの健康問題」は、従来からのテーマである精神分裂病(統合失調症)等の狭義の精神病はもちろんのこと、軽症のうつ、神経症、摂食障害、ストレス性障害、睡眠障害、幼少期からの発達障害等、非常に広範かつ深刻な問題をカバーするようになっている。また「こころの健康問題」の特性として、遺伝子解析・分子機構解明・画像解析等による脳内機構解明から、表現される行動の評価、福祉を含む社会システムとの関連、倫理や人権上の配慮まで、重層的な視野での取組みが不可欠である。

「こころの健康科学研究事業(精神分野)」においては、このような状況を踏まえ、平成14年度の事業再編統合から、行政的ニーズに沿った研究推進と、その適切な評価を進めてきたところである。

この結果、平成14年度終了研究においては、
精神疾患の病態解明については、身体的疾患に比して、十分進んでいなかった分野であるが、最新の遺伝子解析、分子機構解明、画像解析等の手法に基づく研究が進められた結果、新たな機構や新たな分子の発見等により、新たな予防手法や治療薬の開発、客観的診断手法の開発にむけた展開が期待される成果が得られ、
精神疾患の診断治療等については、知的発達障害、摂食障害、吃音の検査・診断・治療等に関するガイドラインの作成により、医療の質や、関係者の連携、医療資源の効果的利用に資する成果が得られ、
精神医学の新たな分野であると同時に行政施策との関連も深い、司法精神医学の研究基盤は形成されるなど、
研究事業の目的に沿った具体的な成果が得られ、随時、行政にもフィードバックされている。

一方、幅広い「こころの健康問題」の中から特に行政的なニーズの高い分野をより的確にとらえて効率的な研究を推進する必要があると認識しており、研究事業執行体制の整備も含め対応していかなければならない。

国民の健康に占める「こころの健康問題」の重要性に鑑み、本事業を強力に推進していく必要がある。


(こころの健康科学研究事業;神経分野)

3.研究成果及びその他の効果

 主に先進的な自然科学の手法を用いて、神経・筋疾患の予防、診断及び治療技術の研究開発等を推進することを目的としており、これらにより最新の医学的知見を行政ニーズに反映し、成果をあげている。
具体的な成果は、以下のとおり。

ALSモデルであるトランスジェニックラットに対するHGFの髄腔内投与の効果
パーキンソン病モデル動物の開発、
インフルエンザ脳症と、解熱剤服用によって生ずるとされてきたライ症候群の疾患感受性遺伝子の同定
福山型先天性筋ジストロフィー疾患関連基底層蛋白病態、モデル動物の作成
福山型筋ジストロフィーとmuscle-eye-brain病について、確実な分子診断法を提供
重症頭部外傷受傷後に植物状態を呈している患者に対して、下肢に対するリハビリテーションを早期から積極的に開始する必要性を確認

7.研究事業の総合評価

 行政的な課題への医学的知見の活用を念頭においた研究が進められており、難病施策の推進に大きく貢献している。

 神経難病の克服に向けた積極的な治療開発研究が進められており、今後、臨床への応用が期待されている。

 リハビリテーションの技術開発等も視野に入れた臨床と基礎の横断的な研究、既存の医療技術を評価するための研究等も実施されており、神経難病の医療技術の推進としての意義は大きい。


こころの健康科学研究事業(精神分野)・研究成果(平成14年度終了課題分)

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
アルツハイマー病の発症分子機構に関する研究 平成12-14年度 98,000 国立療養所中部病院・長寿医療研究センター 痴呆疾患研究部 柳澤勝彦 アミロイド蛋白の産生、重合、ならびに毒性発現の分子過程の解明を通して、アルツハイマー病発症病態を明らかにし、治療薬開発に活用することを目的とした。その結果、アミロイド蛋白の産生ならびに重合開始に関わる分子機構について新たな知見が得られ、治療薬開発の基礎研究にも着手した。 アルツハイマー病は高齢者痴呆の主要原因であり、今後さらに患者数が増加することが予想される。しかしながら、その発症病態の解明が不十分であることから、未だ真に有効な治療法はなく、医学の問題を超え、介護負担などの大きな社会的問題となっている。このような状況にあって、発症病態の分子レベルでの理解をもとにした薬剤の開発研究は重要であるとともに、その成果のもたらす貢献は極めて大きいと考えられる。 本研究により得られた知見をもとに、アルツハイマー病治療薬開発研究に着手した。その結果の如何によっては大きな社会的なインパクトと生むものと期待される。 56 5 94 6   http://www.nils.go.jp/
知的障害児の医学的診断のあり方と療育・教育連携に関する研究 平成12-14年度 19,000 国立精神・神経センター精神保健研究所 知的障害部 加我牧子 知的発達障害の医学的診断と治療・療育のための専門機関毎における検査ガイドライン試案を提言した。また、診断結果を療育・教育側に有用な情報として提供し相互に連携可能となるシステムをモデル地域で構築した。知的障害の診断と評価のための医学的検査について知的障害の3タイプを代表するモデルを呈示し専門家の意見を問い、かつ後方視的な実態調査で検査状況と有所見率を確認するという新たな試みは学術的意義が大きいと考える。 成果をもとに知的障害児の医学的検査ガイドライン試案が策定され、また、診断結果を療育・教育側に有用な情報として提供し相互に連携可能となるシステムをモデル地域で構築している。これにより、不要な検査を省き必要な検査に集中することが可能となり、医療費削減を図れると考える。特に原疾患による精神遅滞の重症度や心理・神経心理学的特性を医学的検査によって明らかにすることで療育・教育の効率化を目指せると考えられる。 このモデル地域でのシステム完成は、今後全国規模で知的障害児の医学的診断と療育・教育連携システムを実施していく上でのパイロットとして優れた特性を有しており、事業化に向けてさらなる発展が期待されると考える。 32 12 80 0 2 http://www.ncnp-k.go.jp/division/ddd/index.html (作成中)
摂食障害の標準的治療法の開発とそのガイドライン作成と治療体制のあり方に関する研究 平成14年度(単年度) 15,000 大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学 切池信夫 摂食障害の治療ガイドラインを作成した。治療体制についてアンケ−ト調査を施行し、治療の連携を行う際の各科の問題点と課題を明らかにした。成果は今後、学会で発表される。治療ガイドラインに関して15年度末、医学書院より出版予定。 摂食障害の治療ガイドラインは、今後全国に普及させ、その後いろいろな意見を取り込んだ改訂版を作成するたたき台になればと期待している。治療体制については、小児科、内科、診療内科、産婦人科、救急科、精神科の各先生方の各科の専門性を踏まえた実際的な治療ガイドラインについて引き続き研究が必要である。 今回の研究では、今後の課題を指摘する段階で終わった。 8 1 8 0 0 なし
ヒト睡眠・生体リズム障害の病態と治療予防法開発に関する基盤研究 平成12-14年度 84,000 国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部 内山 真 今回の研究課題において、生体リズム異常において、概日リズム機構だけでなく恒常性維持機構の機能不全があることを初めて発見した。さらに生体リズム異常において、光に対する体内時計の過敏性がみられることを発見した。生体リズム障害における遺伝子の多型を同定しその機能変化まで追求した。高解像度ポジトロンCTを用いてヒトにおける睡眠薬の作用部位、神経回路網を明らかにした。国内の原著論文8件、国外の原著論文62件と多くの成果を挙げることができた。 今回得られた知見から、睡眠・生体リズム異常の病態解明が進むことが予想される。これに基づき、画期的治療法が開発され、早期治療により脳・身体機能に対する悪影響を防ぐことで、身体・精神両面での国民保健の向上に貢献できる。健常人における生体リズムの多様性を生理学的および分子生物学的に解明することで、交代勤務など睡眠・生体リズム異常ハイリスク状況における予防法が確立され、産業事故防止や産業保健に波及効果をもたらすものと考えられる。 本研究課題の成果は、日本学術会議報告「睡眠学の創設と研究推進の提言」に取り上げられ、広い学術分野に伝達された。新聞やNHKなどのマスメディアにも多く取り上げられた。最近問題になっている眠気と産業事故の問題に関連し、交代勤務や夜勤の問題が浮上してくるものと考えられる。本研究課題の成果は、こうした問題を解決する際に、科学的かつ基盤的な知見を提供する点で極めて大きな波及効果を持つものと考えられる。 70 102 104 10 5 http://www.ncnp-k.go.jp/katudou/h12_bu/seiri.html
乳幼児期に生じるけいれん発作の病態と治療に関する研究 平成12−14年度 63,000 東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野 飯沼一宇 新生児から激烈なけいれんを発症するグリシン脳症マウスを開発し、脳形成異常を確認した。新生仔ラットに微量のカイニン酸を注入し、大脳皮質形成異常を作成した。この部ではGABAB受容体の増加が認められた。ラットのクロライドコトランスポーターの発達的発現の検討から幼若期には細胞内クロライド濃度が高く設定されており、興奮性の高まりを示唆した。 乳幼児期に発症するけいれんは難治の経過をとり、重複障害など、さまざまな障害を残すことで、その早期治療が重要である。幼若期にけいれんを生じるメカニズムの一端に迫ることができたので、今後の乳幼児期けいれんのメカニズムを考え、さらに治療に結びつけるための糸口ができた。 グリシン脳症モデルは新生児期にけいれんを発症する。新生児期に自発けいれんを引き起こす有用なモデルが作成された。またカイニン酸注入で、難治てんかんの原因として重要視されている皮質形成異常症モデルを作成することに成功した。 62 13 50 0 0 なし
吃音の病態解明と医学的評価および検査法の確立のための研究 平成14年度(1年間) 13,000 国立身体障害者リハビリテーションセンター 森 浩一 (1)全国共通の吃音検査法の確立を目指し、旧検査法の幼児版を手始めに改訂した。
(2)吃音者の音声制御特性を計測し、持続発声においても異常であることと、個人差が大きいことを見いだした。
(3)成人・児童吃音被験者全例で聴覚性音声言語処理の左右分化が異常であった。吃音の病態と脳機能に密接な関係があることが示唆され、この結果は学会で注目された。国際学会にも発表予定である。
全国共通の吃音検査法が確立することで、吃音治療を扱う施設が増え、全人口の1%近くを占める患者の治療と福祉に貢献できると期待される。吃音の病態を解明し、より根本的な治療につなげることと共に、本研究は患者団体を含めた社会的要請に答えることになる。 1年間の研究継続妥当性を調べる研究であったが、成果は十分に上がった。同様の主題について継続して研究を行うことで吃音の全国共通の検査法ができ、診断・治療の進歩と患者の受診機会の増大が期待され、従来ほとんど医療の埒外に置かれていた吃音患者の福利に貢献し、患者と家族の精神的苦痛を和らげるだけでなく患者の社会的活動への参加を容易にするものと考えられる。 5 6 13 (出願準備中) 1 なし
機能性精神疾患の系統的遺伝子解析 平成12年度〜平成14年度 104,000 理化学研究所 脳科学総合研究センター 吉川武男 日本で初めて統合失調症の連鎖解析を行った。この結果は、今後日本人の統合失調症発症に関わる感受性遺伝子を同定する際の、基盤的知見となる。成果は、American Journal of Medical Geneticsに発表された。 本研究で収集した精神疾患のサンプルからゲノムバンクを構築しつつあり、今後はこの研究資源を使って日本における精神疾患の遺伝子研究が加速し、精神疾患の根本的な治療法開発が進むことが期待される。 精神疾患ゲノムバンクは、製薬企業も含めた多くの研究者にオープンにしていくことにより、精神疾患の治療法、予防法の開発のための産学協同研究が促進されることが期待される。 85 39 52 3 0 http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/pamphlet/annual/2001/annual_jrep01.html
覚醒剤・麻薬依存の分子機構の解明と治療法開発に関する研究 平成12−14年度 95,370 東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野 西川 徹 依存性薬物による精神病状態や依存形成のモデルである逆耐性現象が、一定の生後発達期(臨界期)以降に形成・維持されることに関与する新規遺伝子mrt1とmrt3をクローニングした。これらは、臨界期以降に覚せい剤への応答性を示し、Mrt1蛋白の中で特に逆耐性に関係の深いMrt1bは脳のシナプスに選択的に局在することがわかった。研究成果は、薬物性精神障害の分子機構解明と治療・予防法開発の手がかりになると考えられ、国内外の学会で注目されており、Mol Psychiatry誌に受理されている。 薬物の乱用が永続的な脳機能障害に至る機序に関する今回の新知見は、今後、薬物性精神障害の画期的な治療・予防法開発に向けた産学共同研究の振興等に関わる厚生労働行政施策に貢献することが期待される。 精神障害の分子病態に関して、発達神経科学的視点を取り入れた研究は、世界的に見ても例がない。本研究では、薬物による精神病状態や依存形成に関与する新規分子の発見が続いており、新しい視点の導入とともに、薬物依存だけでなく、精神疾患の分子異常解明の突破口になる可能性がある。また、新規分子は薬物依存だけでなく種々の精神疾患の新しい治療・予防薬開発の標的となることが期待され、特許取得が予定されている。 35 58 135 2 1 http://www.tmd.ac.jp/med/psyc/psyc-J.html
アルツハイマー病における神経細胞死促進機構の解明と抑止方法の開発 平成12−14年度 95,000 国立療養所中部病院長寿医療研究センター 田平 武 (1)アルツハイマー病では神経細胞内及びシナプス経末内に蓄積するAβ42が重要であることを示した。
(2)Aβ42と結合する新規物質Adipを発見した。Adipは核移行シグナルとカスパーゼ結合ドメインを有した。
(3)Aβ42はp53プロモーターに直接結合し、アポトーシスを誘導し、また小胞体ストレスを介し、カスパーゼ4を活性化した。これらの成果はいずれもオリジナリティーが高く、p53の論文はNat Cell Biolのレビューに入り、現在改定作業を行っている。Adipの論文はまとまり次第Natureに投稿する。
アルツハイマー病では神経細胞死が最も重要であり、それを抑止できる方法が開発されると、発症予防・進行防止に用いることができると期待される。その結果、アルツハイマー病患者を大きく減らすことができ、行政的意義は極めて大きい。 これまで多くの研究者は細胞外にβアミロイドが沈着してできる老人斑に目を奪われてきた。しかし、本研究者らは世界に先がけて細胞内Aβ蓄積の重要性を指摘し、その成果は1999年のNat Medに掲載された。このように本研究は我国のみならず、世界をリードする形で発展している。 45 2 51 0 0 なし
触法行為を行った精神障害者の精神医学的評価、治療等に関する基礎的研究 平成14年度(単年度) 3,600 東京都立松沢病院 松下正明 従来にない規模と内容で司法精神医学に関する研究を行ったものである。司法精神医学に関する研究は、これまでわが国では、精神鑑定に関する一部の研究を除けばほとんど行われておらず、今回のように司法精神医学における治療や研修・教育、看護など多岐にわたる課題に総合的に取り組んだ研究は全くみられず、学術的価値も極めて高いと思われる。 本研究の成果は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」成立後に必要とされる、司法精神医療の各段階における医療や研究のあり方について、精神鑑定、治療、看護、コミュニティにおけるスーパービジョン(精神保健観察)、専門医療従事者の研修・教育などまで、多岐にわたって具体的な指針を示したものであり、今後の行政施策立案のためにも極めて有意義なものと考える。 本研究の成果は、今後のわが国の司法精神医学・司法精神医療体制の基盤をなすものと考えられる。 0 0 3 0 0 なし
神経伝達機能イメージングを用いた精神疾患の診断法および治療効果の客観的評価法の確立に関する研究 平成14年度(単年度) 10,000 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 大久保善朗 統合失調症における扁桃体の5-HT1A受容体の低下、発病後の進行性脳形態変化、高次脳機能課題おける神経回路の賦活不良を確かめた。一方、血管性うつ病の皮質‐皮質下にわたる脳血流低下を明らかにした。治療法の研究では、抗精神病薬の血中動態と生体薬物結合から受容体占有率を推定する方法を開発し、抗うつ薬クロミプラミンが少量でも十分な5-HTトランスポーター占有を示すことを発見した。成果はArch Gen Psychiatry等に掲載され国内外から大きな反響があった。 今回開発した血中動態と生体薬物結合の値から抗精神病薬の受容体占有率を推定する方法によって、より科学的な抗精神病薬投与法を考案することが可能で、我が国で問題になっている向精神薬の多剤併用や大量投与を防ぐことができる。また少量10mgのクロミプラミンが十分な5-HTトランスポーター占有を示したことは、医療経済的にも安価な三環系抗うつ剤の少量投与によって高価なSSRIと同等の効果が期待できることを意味する。 統合失調症および気分障害の神経伝達機能の異常を明らかにすることによって両疾患の神経伝達機能レベルでの病態に基づいた客観的な早期診断法の開発が期待される。また向精神薬による治療効果および副作用の発現と神経伝達機能の変化に関する臨床知見の収集を進め、その成果を応用することによって、すでに臨床で使用されている向精神薬の薬効再評価やより合理的な薬物療法の提案が可能になる。 39 25 69 0 0 http://www.tmd.ac.jp/gradh/bi/index.html
http://www.nirs.go.jp/seika/brain/index.htm
睡眠調節の分子機構と臨床応用に関する研究 平成12-14年度 82,750 財団法人大阪バイオサイエンス研究所 早石 修 内在性の睡眠物質であるPGD2とアデノシン、及び、覚醒物質であるPGE2、オレキシンとヒスタミンの作用機構を、遺伝子欠損マウスを用いて解明した。PGD合成酵素とPGE合成酵素の構造解析を進め、睡眠覚醒調節薬としての酵素阻害剤の開発を進めた。又、睡眠自動判定ソフトを開発して睡眠覚醒調節医薬品のスクリーニング系を整備した。研究成果は59報の国際一流科学雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 のべ111回の国内外の学術集会や一般講演会において研究成果を発表し、医療関係者及び一般大衆に対して、睡眠医療および睡眠研究の重要性に関する啓発を行った。その結果、テレビ、ラジオ、新聞等の多くのマスメディアが日常的に睡眠に関する報道を行うようになり、睡眠の重要性が広く認知されるようになった。その成果の一部は、「睡眠学の創設に関する提言」として日本学術会議に提出された。 睡眠脳波の測定に用いる脳波測定用小型無線発信器と睡眠覚醒測定用コンピュータソフトが開発された。これらは在宅での睡眠測定サービスを行う健康医療産業の基盤をなす技術である。さらに、微量の薬液の持続注入に用いる外部コントロール型無線式微量ポンプが開発され、睡眠バイオアッセイシステムの小型化が進み、睡眠覚醒障害の治療薬の開発を目指す国内製薬企業の国際的競争力の強化に貢献した。 54 20 111 0 0 http://www.obi.or.jp
病態像に応じた精神科リハビリテーション療法の研究 平成12−14年度 9,723 医療法人社団東京愛成会 高月病院 長瀬輝諠 A班:入院している統合失調症の急性期にある患者と家族に社会・心理教育的セミナーを実施することで、(1)再退院率が促進され、(2)退院後経過を追う毎に自己検討能力が高まるという結果が得られた。また、患者満足度調査でも、セミナーを受講した患者から、「問題解決に対する意識が高まった」という感想が多く示された。
B班:デイケアで働くスタッフに施設基準と職員配置基準に関するアンケートを実施した結果、精神科デイケアの属性が明らかとなり、基準に関する検討事項や問題が具体的に浮き彫りにされた。
A班:諸外国と比べ日本は精神科入院日数の長いことが指摘されているが、急性期統合失調症患者と家族にセミナーを実施することで、再入院後の退院率が高いことが示された。すなわち、再入院してもより確実に退院することが示され、長期間病院に在院する患者を減らすことに寄与することが示された。
B班:精神科病院と診療所のデイケアの間で利用者の質の違いが明らかとなり、また現場職員に対して実施した、施設基準と、職員配置基準に関するアンケート結果から、厚生労働行政における今後のデイケア指針策定の中で大いに参考とすべき現場の実状が提言されたのではないかと考える。
A班:社会・心理教育的リハビリテーションセミナーをプログラムとして導入を検討している医療機関も多数あるだろうが、本研究で明らかとなった結果から、より積極的にセミナーをリハビリテーションプログラムの一つとして取り入れていく力強い要素を提言できただろう。
B班:病院と診療所におけるデイケアの違いが明らかになったことにより、今後の地域リハビリにおけるデイケアの再検討に役立つデータが得られた。
0 0 3 0 0 なし
ストレスへの適応破綻の脳内分子機構の解明と予防法の開発 平成12〜14年度 78,400 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 山脇成人 ストレス適応・破綻の機序解明について、以下の成果をあげた。脳機能画像研究:適応・破綻には大脳皮質前頭葉・海馬機能のストレスに伴う、過剰反応→活性減弱という変化が重要である。分子生物学的研究:破綻の機序に、細胞骨格機能変化・蛋白リン酸化亢進が重要であることを示し、ストレス脆弱性形成の候補遺伝子を検索した。脳磁図による超短時間解析・アクチン可視化・脆弱性遺伝子検索など、先駆的で国際的にも優れた成果であり、トップクラスの国際誌に発表されている。 ストレス適応の脳内機構をヒトを用いて非侵襲的手法で解明できたことは、ストレス性精神障害の病態解明・治療・予防法の開発に貢献できたと考える。ストレス脆弱性形成に及ぼす母子分離の影響の解明は、養育上の問題の早期発見・対策の必要性を示唆しており、保健行政への貴重な貢献と考える。これらの成果をもとに、精神障害の発症予防のための小児・母子精神保健福祉政策への提言を行いたい。 幼児期ストレスが遺伝子発現障害を介して、成熟後のストレス脆弱性形成に深く関与している可能性が示唆されたことは、母親をはじめ家族の養育態度や行動の希薄化がストレス性精神障害の発症要因として重要であることを意味している。従って、乳幼児の不適切な養育に対しての行政面からのサーベイランス機能を、一層強化する必要性を本研究成果は示唆している。今後は乳幼児健診などを利用しての、虐待や無視を含む養育環境の調査および予防的加入法に関する研究を企画している。 33
英26
和7
17 32
外20
内12
0 0 準備中
精神医学における倫理的・社会的問題に関する研究 平成12-14年度 30,000 国際医療福祉大学臨床医学研究センター 鈴木二郎 ア.研究目的の成果:精神保健、医療、福祉における倫理と関係法規の国際的比較検討を行い、標準的ガイドライン策定への基礎固めができた。我が国の精神保健福祉法改正に伴う社会的問題点として、精神科医療の開放化と患者の自己決定の尊重が推進される中、各研究は精神科医療と司法、精神医療審査会活動、地域ネットワークの形成及び守秘義務、痴呆患者介護のあり方について現状の把握と国際比較を行い、制度改革のための有益な提言やガイドライン、資料を提供することなど所期以上の成果を挙げた。
イ.研究成果の学術的・国際的・社会的意義について: 精神医学の倫理は、様々な歴史を経て現在は、世界的な新しい理論と実践が求められており、本研究は学術的・国際的に評価が高い。精神保健福祉法規について、これまで未紹介の南アフリカや、既知のカナダや韓国でも新しい視点の整理がされ高く評価される。これまで日本で遅れていた司法精神医学の諸問題について、十分な調査と検討がなされ、法律家と精神科医との学際的な研究と実際面の改革に資する。同様に、痴呆性高齢者の医療、福祉サービスに関する法的、倫理的な諸問題に具体的提言がされた。精神障害者の人権擁護に関する、わが国の精神医療審査会活動の研究は、その活性化が極めて重要であることを示した。地域の精神保健福祉活動における守秘義務についての研究は、我が国における最初の調査であり、その問題点と今後の指針を明らかにした。 また世界的に見た守秘義務の運用の実態と問題点について海外文献調査を含め、本調査ほど詳細で総括的な調査は行われていない。
現代では精神医療保健福祉の役割は増大しつつある。しかしその基礎となる倫理の研究は国際的に重要で、国内にはほとんどなく、各研究は行政的・社会的意義を大きく果たしている。まず精神保健福祉法の英語訳は、我が国の状況紹介に有用であり、関連法規の国際比較は次回の精神保健福祉法の改正に大いに貢献しよう。また「心神喪失者等医療観察法案」を軸とした触法精神障害者の治療システムの大幅な改革への準備に、本研究はその基礎資料として有益であろう。また、増大する痴呆性高齢者の医療、福祉サービスと意思能力の関係、代諾の可否については、法律的な間隙が存在することを明らかにし、制度上の手続きを提案している。。本研究で提案した精神医療審査会年次報告書モデルが各審査会に浸透すれば、審査会活動の活性化と地域格差の是正に貢献できる。事例研究によって明らかとなった制度的な問題点は、行政的な改正作業の手掛かりを直ちに提供している。我が国では、健康情報の取り扱いに関する2001年の米国連邦政府令the Privacy Ruleなど法的ないし行政的指針が全くない。本研究の調査結果は、そのような政令を定める基礎資料となる。また本研究作成のガイドライン(試案)、今後、社会的入院を解消し地域リハビリテーション促進のための良い指針となる。本研究の各国際比較は、わが国の精神医療の向上や各関連制度の活性化に繋がると思われる。 我が国の精神医療は、これまで比較的国際的視点が少なかった。本研究は、全分担班も国内の調査を、国際的資料と対比、客観的検討を行った点で、我が国の精神医療の国際レベルへの発展に今後大いに有用である。例えば 精神医療審査会も、発足から15年を迎えたが、他国と比較しても人権擁護と適正医療の確保という立法趣旨は、必ずしも実現しているとは言いがたい。その最大の要因は、審査会活動の形式化と実効性の欠如であり、報告された問題事例の検討等を通じて、制度的改革につながれば、審査会活動の活性化にも大いに資するであろう。 6 9 9 0 0 なし
  ※本研究課題における研究班全体の成果、予定を含む
施策への反映状況・件数は、幅広く記述する。


こころの健康科学研究事業(神経分野)・研究成果(平成14年度終了課題分)

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
血管平滑筋細胞形質転換と血小板活性化機転に基づく脳血管性痴呆病因解明と治療法(発症および進行阻止法)の開発に関する研究 平成12−14年度 84,000 大阪大学大学院 医学系研究科 祖父江憲治 脳血管肥厚因子として不飽和LPAを同定し、さらにin vivo発症モデル動物の作製に成功し、脳血管性痴呆発症の分子機構を明らかにした。これらの成果はCir. Res. やCirculation等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 同上研究から不飽和LPA特異的受容体を発見し、現在その阻害薬を開発中で、脳血管性痴呆の予防と治療法の確立が期待される。 予備蓄積能による発症前診断法を確立中で、脳血管性痴呆発症前診断が可能になると期待される。 20 18 26 5 1 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/nbiochem/www/
神経変性疾患におけるイニシエーターカスパーゼ活性化の分子機構と非ペプチド性阻害剤の開発 平成12-14年度 60,000 国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第5部 桃井 隆 ポリグルタミン凝集を原因とする神経変性疾患の分子機構に小胞体(ER)ストレス、カスパーゼ12の活性化による細胞死が関与していることを明らかにし、Hum. Mol. Genet. Cell Death Differなどの雑誌に掲載され、国内外から大きな評価を得た。また、神経変性疾患の治療薬として将来有望な、ERストレス細胞死を阻害する化合物YM5273を開発することができた。 小胞体での蛋白のおりたたみ不全は、老化が進むにつれ、修復が困難となり、脳神経系でのERストレスを誘導し、疾患への確率を高める働きをする。YM5273は今後老齢化が進行し、社会的要請が高い、老人性疾患の治療薬のリーディング化合物としても有望である。高齢化社会を視野に入れた研究事業へ目をむけさせるのに重要な研究となった。 YM5273のようにERストレス細胞死を阻害する化合物はこれまで国内外で見い出されておらず、その分子標的の解明と治療薬としての応用に大いに期待が集まっている。現在、特許出願の準備中である。 73 3 78 1 1 http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r5/index.html
神経変性疾患におけるユビキチンシステムの分子病態解明と治療法開発への応用 平成12-14年度 105,000 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第四部 和田圭司 新規パーキンソン病モデルマウスを開発した。脱ユビキチン化酵素UCH-L1のI93M変異体発現マウスを作製し、同マウスが既存のパーキンソン病モデル動物と比べ優れた点を多々有することを見出したので特許出願準備中である。成果は世界中のパーキンソン病研究者に大きな反響を与えるだけでなく、ユビキチンシステムと神経変性の関連性を個体レベルで実証したことから神経変性疾患研究の発展に大いに貢献する。 神経難病の克服は社会的にも急務であり、厚生労働行政においてもその治療法の開発は国民のニーズに応えるものとして高く位置づけられている。今回開発した新規パーキンソン病モデルは創薬や再生医療をはじめとする根本的治療法の発展を効果的・効率的に可能にする個体モデルであり、EBMなど医療の高度化だけでなくQOLの向上にも将来的に貢献する。 国内外の研究者、医師に今回開発したモデルマウスを供給することでパーキンソン病研究、神経変性疾患研究の発展に世界的に貢献する。 21 6 66 2 2 http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r4/index.html
http://webabst.niph.go.jp
筋萎縮性側索硬化症の病態解明と治療法の開発に関する研究 平成12−14年度 70,000 東北大学大学院医学系研究科神経内科 糸山泰人 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい動物モデルとして変異SODを導入したトランスジェニックラットの作製に成功した。ラットの脊髄はマウスに比べて大きく、遺伝子治療や神経幹細胞移植を含めた新しい治療法開発のために非常に有用と考えられる。さらにはわが国で発見され特許を有する神経栄養因子である肝細胞増殖因子(HGF)がALSモデルでの運動ニューロン死を抑制することを明らかにした。このHGFリコンビナント蛋白を本研究にて開発されたALS ラットの髄腔内に持続投与を行い、運動ニューロン保護の有効性が確認された。 ALSは神経難病の象徴的疾患であり、厚生労働行政としては患者のケア・QOLの改善、病因・病態の解明および治療法の開発が求められる。本研究ではALSの病因・病態の解明とそれに基づく治療法の開発が主な目的であったが、本研究成果が示した新規ALSモデルであるトランスジェニックラットに対するHGFの髄腔内投与の効果に関して早期の臨床応用が期待される。 HGFリコンビナント蛋白の髄腔内持続投与による新規治療法の開発は、現在世界レベルで治療法のないALS患者にとって大変希望のある治療法である。 17 17 45 2 2  
神経幹細胞を用いた神経再生・修復のための基盤技術の開発に関する研究 平成12-14年度 101, 150 東京大学大学院医学系研究科 中福雅人 神経幹細胞・前駆細胞の増殖・分化あるいは生存・長期維持の分子機構の一端を明らかにした。また、成体神経組織に存在する神経前駆細胞を操作することにより、外傷性損傷後の脊髄、あるいは虚血損傷後の海馬において、ニューロン新生を誘導する手法を開発した。特にCell誌に発表した虚血損傷後の海馬におけるニューロン再生の誘導に関する研究は、成体の神経組織の持つ潜在的な再生能力を高めることで機能回復が可能であることを、動物モデルを用いて世界で初めて明らかにした画期的な成果としてNature, Science, Cell等の学術誌のみならず国内外の一般報道にも広く取り上げられ極めて大きな反響を呼んだ。 再生医療が次世代の画期的治療法と謳われて久しいが、我が国発の独創的な成果は未だに少数に限られている。また、発生学等の基礎研究の成果を実際の医療に繋げていく長い道筋をいかに的確に進めていくかが、今後の大きな課題と考えられる。本研究は、再生医療の基礎となる幹細胞生物学を若手研究者が共同して進めることにより着実な成果を挙げると共に、その成果を疾患モデル動物を用いた実際の治療法開発の基盤作りにまで発展させていくための明確な道筋をつけることが出来た。再生医療分野を含め厚生科学の推進のための基礎研究の重要性を強調する意味で貢献が出来たと考えている。 これまで克服困難とされてきた中枢神経系疾患に対して、再生誘導法という新たな手法の道を開いた。これは新規の薬物治療、遺伝子治療、外科治療の開発に繋がる可能性を秘めている。 33 9 43 0 1  
免疫性神経疾患の発症機構の解明と治療法の開発に関する研究(抗ガングリオシド抗体を伴う免疫性ニューロパチーの研究 平成12‐14年度 56,000 東京大学 楠 進 ア) ガングリオシド感作による免疫性ニューロパチーの動物モデルを確立した。免疫性ニューロパチーの新たな標的抗原としてガングリオシドとリン脂質の混合抗原をみいだした。各々の抗体が関連する臨床像がわかり、抗ガングリオシド抗体の「抗原局在部位に結合して臨床病型を規定する因子」としての意義が確認された。抗体産生メカニズムとしてC.jejuni以外の先行感染でも分子相同性仮説を支持する所見を得た。
イ) 以上は世界に先駆けた成果であり、国内外から大きな反響があった。
ガングリオシドとリン脂質の混合抗原を用いることにより抗ガングリオシド抗体の診断マーカーとしての有用性が高まった。ギラン・バレー症候群(GBS)の予後に関係する最大の要因である呼吸筋麻痺をともなう症例の特徴が明らかになった。これらはGBSの早期診断と治療および重症例の治療方針画定に役立ち、難病対策上有用な結果である。近年GBS治療でIVIgの保険適応が認可されたが、ウサギ動物モデルを用いてIVIgの有用性が支持された。 GD1b感作による感覚障害性失調性ニューロパチーとGM1感作による運動ニューロパチーが確立された。このような動物モデルの開発は、世界各国の研究者が試みたが成功していなかったものであり、インパクトの高い成果である。今後これらのモデルを用いて、新たな病態メカニズムの解明、およびそれに基づいた薬剤や治療方法の開発、既存の治療法の有効性の検討などが可能と考えられる。 12 20 40 0 1  
多発性硬化症の発症機構解明と治療法の開発 平成12-14年度 105,000 国立精神・神経センター神経研究所 山村 隆 多発性硬化症の治療薬として有望な、新規糖脂質の開発に成功した。この糖脂質は、NKT 細胞のTh2シフトを介して、自己免疫病を抑制する。成果はNatureに掲載され、国内外から大きな反響があった。 多発性硬化症の治療薬の候補物質を臨床応用するための手続きが進んだ。具体的には、職務発明と認定されたあと、ジェノックス社を介して内外の特許出願を行い、さらにサントリー第一ファーマが製品開発に向けて体制を整えた。本研究事業が、神経難病の新規治療薬の開発につながったという意味で、大きな成果である。 国立精神・神経センターが多発性硬化症の治療薬開発に積極的に取り組んでいることが、朝日新聞、読売新聞などで取り上げられ、患者団体や患者、患者家族に大きな希望を与えることができた。 13 15 20 3 2  
多発性硬化症の神経免疫学的研究−疾患感受性遺伝子と疾患抵抗性遺伝子からみた視神経脊髄型多発性硬化症の責任自己抗原の検索に関する研究 平成12-14年度 81,200 九州大学大学院医学研究院・神経内科 吉良潤一 視神経脊髄型多発硬化症(OS-MS)の新規候補自己抗原を5つ同定し、このうちHSP105に対する免疫応答が、MSの病態と密接に関与していることを明らかとした。疾患感受性遺伝子の検討では、3つの遺伝子の多型が日本人MSと関連することを明らかとし、アジア人種特有のOS-MSの病態解明に大きく貢献した。またOS-MSの疾患感受性遺伝子のトランスジェニックマウスを作製し得たことにより、今後更なる発展が期待される。 今回、早期に重症化するOS-MSを免疫遺伝学的背景や免疫応答により同定するための基礎データが集積された。MSはheterogeneousな疾患であるため、病因ごとに最も適切な治療法を開発することが極めて重要である。MSの病型を臨床的に細分化し、その分子生物学的、免疫学的、遺伝学的な相違により裏付けられたデータを蓄積することは、今後亜型得意的な新規治療法の開発、治療ガイドライン策定に大きく貢献するものと考えられる。 OS-MSの疾患感受性遺伝子であるHLA-DP5(DPA1*02022/DPB1*0501)遺伝子は、欧米白人ではまれであるが、日本人を含むアジア人種においては頻度の高い遺伝子多型である。当該遺伝子のトランスジェニックマウスを作製し得たことは、今後更に当該分野の研究をリードし発展させうると確信している。 46 34 63 0 1 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/meiro
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/neuro/core/index.html
インフルエンザ脳炎・脳症発症機序の解析と治療法の開発 平成 12-14 年度 84,000 徳島大学分子酵素学研究センター 木戸 博 これまでに原因と治療法が不明として、国民に不安を引き起こしていたインフルエンザ脳症、及び解熱剤服用によって生ずるとされてきたライ症候群の疾患感受性遺伝子が同定された。即ち、ミトコンドリアでの脂肪酸代謝酵素の1塩基多型の組み合わせで、ミトコンドリア機能が低下する事が原因となり、その結果細胞膜のアニオンチャネルの異常発現が誘発され、脳浮腫とウイルス増殖が生ずる事を明かにした。成果はNature Medicineに投稿中。 インフルエンザ脳症と、解熱剤服用によって生ずるとされてきたライ症候群の疾患感受性遺伝子の同定は、ミトコンドリアの機能低下を防ぎアニオンチャネルの異常発現を抑制すると言う、具体的な治療法開発の目標を示すと共に、この疾患が治療可能な事を示唆した。 さらに医師が適切に処方できる解熱剤を、ミトコンドリアの機能低下とアニオンチャネルの異常発現を指標に、安全性評価が可能な事を示唆している。 この事は、医薬品開発の上で国際的に重要な情報を与える。 インフルエンザ脳症、及び解熱剤服用によって生ずるとされてきたライ症候群の具体的な治療法を提案して、その有効性を確認できる段階に入った。 また小児に対して安全に投与できる解熱剤の開発と、予想される解熱剤の副作用、具体的にはライ症候群やインフルエンザ脳症の発症の危険性を、脂肪酸代謝酵素の1塩基多型の組み合わせから予知できる段階に入った。 74 31 69 1 1 http://mhlw.go.jp/
筋ジストロフィーにおける筋線維崩壊の本体の解明 平成12-14年度 56,000 国立精神・神経センター神経研究所 遺伝子疾患治療研究部 今村道博 重篤な筋症状を示す新しい筋ジストロフィー病態モデルマウスを開発した。このマウスの解析からサルコグリカン(SG)と呼ばれる複合体の形成不全が、サルコグリカノパチー(SGP)とデュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋症状に関連することを示唆した。さらに、平滑筋型SGを横紋筋に流用することでSGPの筋変性が抑えられることを示した。我々が示した分子流用法がSGP治療へのツールになるものと期待された。 現時点においては、上記の具体的実例のような貢献は無い。 現時点ではなし。 7 2 15 0 1 http://www.ncnp.go.jp/nin/
福山型先天性筋ジストロフィーの病態解明と治療法の開発に関する研究 平成12-14年度 112,000 帝京大学医学部 清水輝夫 福山型先天性筋ジストロフィー、類縁疾患muscle-ey brain病の遺伝子異常、責任蛋白フクチン・POmgnT1の機能、疾患関連基底層蛋白病態、モデル動物の作成に長足の進歩がえられ、遺伝子治療を試みた。イ:先天性筋ジストロフィーの分子病態理解がすすみ、α-dystroglycanのO型糖鎖異常症の新研究分野を世界に発し出来、診断法を確立できた。 原著論文60編以上を発表した他、当該研究の年度別(H12、13、14)および総括報告書(H12〜14)を発信した。特に、フクチン遺伝子の日本独自の変異を確実に診断出来るようになったので、当該遺伝子異常のスクリーニングにより従兄弟結婚から生じる悲惨な患者発生を未然に防ぐ方策の基礎資料を提供できた。 福山型筋ジストロフィーとmuscle-eye-brain病について、確実な分子診断法を提供できた。同時にこの分野の疾患が別に複数存在することも明白になりつつあり、その全容解明により、近い将来、悲惨な先天性最重症筋ジスを遺伝相談により発生回避する方策を提言したい。 39 0 60 0 1  
中枢神経損傷後の機能回復機構の解明、治療法の開発 平成12-14年度 90,000 大阪大学大学院医学系研究科 生体機能調節医学講座 杉本 壽 ア)重症頭部外傷受傷後に植物状態を呈している患者の「過去の医療レベルでの自然回復過程」と「現在の医療レベルでの自然回復過程」は全く違うことが明らかになった。年単位で緩徐に回復する中枢神経機能もあり、急性期治療が終了した時点で植物状態を呈していても、諦めずに治療を継続すれば十分に回復する可能性があることも明らかとなった。長期植物状態からの回復予知に関しては、急性期における脳血流量の推移によって機能予後が予測できることを明らかにした。
イ)「受傷後3年以上が経過しているにもかかわらず5人の患者が突然意味のある言葉を話すことができるようになった」ことが今回の研究で確認できたが、大変意外な驚くべき事実である。この事実は中枢神経の可塑性に関して我々が信じている医学的常識を覆す可能性が高い。我々の研究結果の一部が新聞(2003年2月12日)とインターネットで公開された翌日から連日、全国の患者家族や医療従事者から研究結果に対する問い合わせや個別の相談が殺到していることに、この問題が社会的にいかに重要かつ深刻であるかが端的に示されている。
今回の研究結果は、「急性期治療が終了した時点で植物状態を呈していても、諦めずに治療を継続すれば中枢神経機能が回復する可能性が十分にある」ことを明確に示している。今後は、意識回復の可能性があることを前提として、慢性期診療施設でも積極的に治療・介護することが肝要である。さらに、下肢に対するリハビリテーションを早期から積極的に開始する必要性が確認できたことは、慢性期治療に一つの方向性を示すものと考えられる。 我々が中心となり平成14年2月より10都道府県にわたる26の3次救急医療施設で、植物状態を呈している重症頭部外傷患者に対するprospectiveな長期予後追跡調査を開始しており、この領域の研究では国内外の他研究機関の追随を許していない。 173 0 246 1 2  
精神・神経・筋疾患の実験用研究資源に関する研究 平成 12 〜 14 年度 110,000 国立精神・神経センター武蔵病院 臨床検査部 有馬邦正 平成12-14年のヒト病理検体新規登録は、生検筋組織659件(累計1,569件)、筋芽細胞と繊維芽細胞369件、部検脳240件(累計1,333件)であった。内外の施設への国立精神・神経センターからの検体供与は52件(総数986検体)であった。この検体を用いて、Danon病がLAMP-2の欠損によること(Nature)、肢帯型筋ジストロフィーの病態解明など、多くの筋疾患の遺伝子異常と病態を解明し国際誌に発表した。国立精神・神経センターが筋疾患研究の国際的中核施設であることを示した。 遺伝子解析・Western blot・免疫組織化学による診断方法が開発され、国立精神・神経センターの筋疾患診断システムに採用され、世界最高水準の筋疾患診断サービス(年間約900件)が国民に提供されている。疾患早期の確実な診断による治療方法の決定と予後の推測は患者と家族にとって意義が大きく、また、医療費の削減につながる。更に、筋ジストロフィー患者を診療する国立療養所医師が参加したことで、国立療養所の医療水準が向上した。 本研究班は日本で始めて、全国で病院に保存されているヒト病理検体(生検および部検組織)の情報をコンピューターネットワークに登録し共有化した。その成果を基にブレインバンクの必要性が認識されてきた。ヒト病理検体を研究使用する際のインフォームド・コンセントの書式を、「生検組織」、「外科手術組織」、「部検病理組織」にわけて整備した。これらは関連学会で参照されており、医学研究倫理の確立に大きく貢献している。 67 24 51 0 1 http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/papers.html
幹細胞を用いた筋ジストロフィーに対する治療に関する基盤的研究 平成12年度〜平成14年度 120,000 国立精神・神経センター神経研究所 武田伸一 ア)研究目的の成果
(1) 骨髄細胞及び胎児肝細胞はin vitro、in vivoで骨格筋に分化する。
(2) オステオポンチンが、筋再生の過程で発現増強する。
(3) 筋ジストロフィー犬のコロニーの確立
イ)研究成果の意義
(1) 胎児肝細胞の筋細胞への分化は、臍帯血移植の道を拓いた。
(2) 幹細胞から筋への分化をin vitroで検討することが可能になった。
(3) 筋ジストロフィー犬を用いた治療開発研究が可能になった。
(1) 本研究を推進することが、一日も早い治療法の実現を望んでいる筋ジストロフィーの患者、家族に対する最も力強い回答であり、患者・家族の福音であることが伝えられている。
(2) 難治性の疾患に対して基盤的な研究を進めてモデル動物で検証し、臨床に応用するとの方向性が広く理解された結果、平成14年度の補正予算により、筋ジストロフィー犬の飼育・実験を行っている中型実験動物研究施設を増築し、神経筋難病疾患研究施設として整備する旨内示を受けている。
(1) 筋ジストロフィーの根本的な治療の開発研究に挑んでいることは、日本筋ジストロフィー協会の会報である「一日も早く」を通じて伝えられ、研究集会における研究報告は、共同通信によって全国に配信された。
(2) 筋ジストロフィー犬の飼育・実験を行っている中型実験動物研究施設については、ホームページ等を通じた公開に留めているが、科学専門誌及び製薬会社から同犬を用いた薬剤の開発等について問い合わせがある。
68 40 79 0 2 http://www.ncnp.go.jp/
神経回路網形成障害の分子機構に関する研究 平成12年度〜平成14年度 55,440 鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設 大野耕策 ア 小児期の神経遺伝病の多くは有効な治療法がない。治療法開発のためには、1つの遺伝子の欠陥で障害される神経回路網を明らかにし、その分子機構を明らかにすることが有効な治療法開発への近道である。ニーマン・ピック病C型はリソゾーム病に分類される小児期の神経変性疾患であり、この疾患モデルマウスで、プルキンエ細胞に加え、視床VPL/VPMの神経細胞が選択的に脱落することを見いだし、さらに、細胞外にサイトカインを放出し、このサイトカインがSTAT系シグナルを恒常的に活性化させることで、プルキンエ細胞や視床神経細胞が変性する可能性を見いだし、治療に向けた実験を開始した。
イ 現在日本では20名のニーマン・ピック病C型患者が生存し、毎年10人が診断される稀な疾患であるが、神経症状に治療法のないリソゾーム病への新しい治療法を開発することは学術的・社会的意義が高い。また、この疾患はアルツハイマー病の発症機構とも関連し、国内外で注目され、我々のグループは、この領域の研究をリードし、2003年5月の第2回国際ニーマン・ピック病C型患者カンファレンスの招待講演者となっている。
少子化社会の中で、ある年齢まで正常に発達していた児が、話せなくなり、歩けなくなり、寝たきりになり、数年の経過で死に至る小児期のリソソーム病の神経症状に対して、有効な治療法はない。1つ1つの疾患は10万〜20万人に一人の希少難病ではあるが、リソゾーム病は、20以上の疾患からなり、これらの疾患に対し、治療法を開発する努力は、厚生労働行政にとって重要である。アメリカでは、1つの財団が年間数億円の研究費を援助し、治療法開発を促している。 ニーマン・ピック病C型は小児期の神経遺伝病であるが、この疾患はアルツハイマー病に特徴的とされる脳病理変化を若年で示すことが特徴で、この疾患の研究を介して、アルツハイマー病の治療につながる研究成果が期待できる。 81 12 32 0 1  
  ※本研究課題における研究班全体の成果、予定を含む
※施策への反映状況・件数は、幅広く記述する。


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