戻る

厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):基礎研究成果の臨床応用推進研究
所管課:研究開発振興課
予算額の推移(例):
平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
0千円 0千円 1,249,994千円 1,099,996千円
(1) 研究事業の目的
基礎研究の成果を、臨床現場に迅速かつ効率的に提供するために必要な技術開発及び探索的な臨床研究の推進を図る。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
平成14年度中間・事後評価対象課題及び資金配分一覧(別添
(3) 研究成果及びその他の効果
[注.事業は14年度より開始であるが、遺伝子治療の臨床研究については「ヒトゲノム・再生医療分野」から当該研究事業に移行しており、14年度で終了したものの成果を記載している。]
<例>
  新規遺伝子導入技術を用いた難治性循環器疾患遺伝子治療の臨床研究(大阪大学 金田教授)では、末梢血管病に対する世界初のHGF遺伝子治療臨床研究を計22例の患者に対して実施し、FDAから米国での治験を認められるとともに、そのプロトコールは類似の遺伝子治療臨床研究の規範となった。さらに、高効率・低侵襲ベクターとして開発したHVJenvelope vectorが、動物実験で脳梗塞の予防や治療に有効性が示され、ベクターの国際特許も出願されている。
遺伝子治療製剤の供給基盤整備と遺伝子治療への応用(名古屋大学 吉田教授)では、臨床研究用遺伝子包埋リポソーム製剤の開発に成功した。併せて本製剤を安定化するための新しい凍結化及び凍結乾燥化技術が開発されるとともに、本製剤を用いた臨床研究によって安全性及び有効性が証明された。本臨床研究は、純国産技術で開発した我が国初の遺伝子治療であり、これまで治療法のなかった再発・再燃悪性グリオーマの治癒の可能性が出てきた。
(4) 事業の目的に対する達成度
14年度終了課題については、中間・事後評価委員会において、目的に沿った一定の研究成果があがっているものと評価されている。
(5) 行政施策との関連性
総合科学技術会議の答申において、国がライフサイエンス分野で重点的・戦略的に取り組むべき分野の1つに「研究開発成果を実用化する臨床医学・医療技術」が掲げられており、また、重点4分野の中で特に重点的に推進すべき事項として「先端研究の臨床応用促進、医療技術・遺伝子組みかえ体の安全性の確保等研究成果を社会に迅速に受容・還元するための制度の構築」とされている。
(6) 今後の課題
企業では進められにくい探索的な臨床研究分野においては、この段階で行政として支援することが効果的であることから、適切な予算配分が必要であり、安易な研究費削減は、有用な医療技術の迅速かつ効果的な実用化に大きな影響を及ぼし、予定内容の実施が困難になることから、予算の確保が今後の課題と言える。
(7) 研究事業の総合評価
本研究事業については、平成14年度にヒトゲノム・再生医療等研究事業から移行して実施されてきたものであるが、基礎研究成果の実用化等に向けた成果が着実に上げられており、また、論文発表、成果発表、技術開発、厚生労働行政への貢献等の成果が挙げられている。
今後の継続課題については、更なる努力を重ね、着実に成果をあげられるよう期待したい。
項目や分量は適宜変更可。既存資料を用いても差し支えない。


○基礎研究成果の臨床応用推進研究

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
冠動脈形成術後再狭搾に対する新規遺伝子治療法〔抗MCP―1療法、抗転写因子療法〕の基礎研究ならびに臨床研究 平成14-15年度 *1
35,000 九州大学医学部附属病院 江頭 健輔 高コレステロール血症ウサギならびにサルの再狭窄モデルを用いて、変異型MCP-1を用いた抗MCP-1療法を開発した。毒性並びに免疫異常が生じないことも示した。この技術は申請者らが独自に開発した独創的方法である。特許出願もすんでいる。上記研究成果に基づいて「再狭窄に対する抗MCP-1遺伝子治療探索的臨床研究」を厚生労働省へ申請した。 この成果は申請者が開発した独創的技術を駆使して得られたものである。申請している臨床研究計画が実施され有効性と安全性が示されれば、この遺伝子治療法が再狭窄に対する新しい治療法になる可能性がある。 この治療法によって再狭窄率が減少すれば、患者のQOL改善、虚血性イベントの減少、医療費の削減、につながる。再狭窄は我が国で年間5〜6万例に生じる病態であり、その克服による医療的恩恵はきわめて大きい。再狭窄に関わる医療費は直接経費だけで300〜600億円と試算されるので医療経済的貢献は大きい。 炎症が再狭窄だけでなく動脈硬化性疾患発症の鍵となるステップであることが注目されるようになり、炎症マーカーが虚血性イベントの予測因子として信頼できるマーカーとなっている。 12 15 10 本研究開始前に出願 2 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/cardiol/
http://www.ofc.kyushu-u.ac.jp/kyokandb/data/html/0003/KHOS00010.html
新規遺伝子導入技術を用いた難治性循環器疾患遺伝子治療の臨床研究 平成14年度 *2
70,000 大阪大学大学院医学系研究科 金田 安史 末梢血管病に対する世界初のHGF遺伝子治療臨床研究を計22例の患者に対して行った。FDAにより米国での治験が認められた。HGF遺伝子の心筋症への応用や超音波法による効果の増強などCirculation誌に多く掲載された。高効率・低侵襲ベクターとしてHVJ envelope vectorを開発し、脳梗塞の予防や治療に有効性が動物実験で示された。ベクターの国際特許も出願し、国内外からの招聘講演も多い。 HGF遺伝子治療については全国の患者から臨床研究へのエントリーの希望がある。またそのプロトコールは類似の遺伝子治療臨床研究の規範となっている。ベクターについては遺伝子治療のみならずDDSとしての可能性や安全性の高い非ウイルスベクターとしてマスコミからも注目され、特にレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療の事故の報告以来、独自の地位を確保しつつある。 HVJ envelope vectorについては効率と簡便性の面からキットとして販売され、汎用されている。臨床応用のために医療用ベクター生産施設もベンチャーカンパニーによって建設された。HGF遺伝子治療研究の実施は、遺伝子医薬品開発をめざすベンチャーカンパニーを刺激し,また全国の医療関係者の注目を集めている。 50 20 30 4 2 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gts/index.htm
http://www.iskweb.co.jp/hvj-e
GM―CSF遺伝子導入自己複製能喪失腫瘍細胞接種による遺伝子治療法の開発と臨床研究 平成14年度 *2
30,000 九州大学生体防御医学研究所 谷 憲三朗 GM−CSF遺伝子を用いた免疫遺伝子治療臨床研究を実施し、患者体内における抗腫瘍免疫誘導に有用性が高かったことを明らかにするとともに、新規免疫療法・遺伝子治療法開発に向けての多くの知見を得た。本研究関連の基礎研究成果はNature誌を含む専門雑誌に掲載されるとともに、長期観察を含む臨床研究成果のまとめは専門誌への投稿準備中である。 本研究は本邦における最初の癌に対する遺伝子治療臨床研究として実施され、当研究チーム自身により各患者の遺伝子導入腫瘍細胞ワクチンをGMP(good manufacturer’s product)レベルで作製し、安全性を確認後患者へ接種した。この際に作製した細胞処理・遺伝子導入室の設計図ならびに作成した各SOP(standardized operation procedure)はその後同様な臨床研究実施予定施設へ開示し、国内に普及した。これらの内容は厚生労働省の遺伝子治療薬の品質・安全性確保に関する指針などにも反映されている。 GM−CSF遺伝子治療との併用が期待される遺伝子を同定することができた。今後これらを用いた新規免疫遺伝子治療の実施が期待できる。基礎研究成果としては遺伝子導入ベクターとしてシュードタイプレンチウイルスベクターの有用性、マキシザイム法の有用性を明らかにし、今後のより理想的な遺伝子治療法の開発が着実に発展している。 211 93 281 2 0 http://members.jcom.home.ne.jp/mtakeuchi/index.html
上記に掲載予定
難治固形癌に対する局所的ベクター投与による遺伝子治療の基礎的・臨床的研究 平成14年度 *2
50,000 岡山大学大学院消化器・腫瘍外科 田中 紀章 肺癌を対象にp53遺伝子発現アデノウイルスベクターを腫瘍内に投与する遺伝子治療臨床研究を進め、本治療が安全に施行可能であり、抗腫瘍効果が得られることを明らかにした。生体内分布では、ベクターが全身循環に入ることが明らかになり、動物実験とは異なるデータが確認された。組織ではアポトーシス誘導されており、基礎研究成果が実際に生体内で検証された。また、前立腺癌に対する自殺遺伝子治療の臨床応用でも、安全性と効果が確認された。 本邦の遺伝子治療ではじめての多施設共同研究であり、患者選定から適応判定、実際の治療やデータ解析などのシステム確立に貢献した。また、遺伝子治療が局所療法として臨床的にも有用であることが示され、さらに放射線療法との併用効果の可能性が示された。今後、第II相さらに第III相臨床試験に進むことで、遺伝子治療製剤として日常診療で使用されるようになることが望まれる。 治療を希望する肺癌患者数は500名を越えており、実際に適応となったのは15名である。今後、安全性が確認された後に高齢者などを対象とすることで、身体に優しい局所療法としての有効性がさらに確認できると思われる。 30 35 57 0 0 http://surgery1.hospital.okayama-u.ac.jp/Content/Gene_Therapy/hajimeni.html
遺伝子治療製剤の供給基盤整備と遺伝子治療への応用 平成14年度  *2
30,000 名古屋大学大学院医学系研究科 吉田  純 臨床研究用遺伝子包埋リポソーム製剤の開発に成功した。また、本製剤を安定化するための新技術(凍結化及び凍結乾燥化技術)も合わせて開発した。さらに本製剤を用いた臨床研究を実施し、その安全性及び有効性を証明した。本臨床研究は、純国産技術で開発した我が国初の遺伝子治療として大きな注目を集めた。一方で、本製剤を他施設に供給する体制を整えた。これにより、今後の遺伝子治療のあり方が提案できた。 成果は、我が国の遺伝子治療のあるべき姿を臨床研究の実践を通して示した。その考えは、遺伝子治療のガイドラインや医師主導型臨床治験、さらには医薬品開発プロセス全般に影響を与えた。また、先端医療を支える製剤(遺伝子治療製剤、生物学的製剤等)の品質管理及び品質保証についてひとつの方向性を打ち出した。 これまで治療法のなかった再発・再燃悪性グリオーマに罹患した患者にひとつの光明をもたらした。また、遺伝子治療分野を含む先端医療を社会にわかりやすくアピールできた。今後、本遺伝子治療は、悪性黒色腫、腎細胞癌、神経変性疾患及び肝炎等に適応拡大していく予定である。 102 0 120 2 0  
乳癌に対する癌化学療法の有効性と安全性を高めるための耐性遺伝子治療の臨床研究 平成14年度  *2
30,000 (財)癌研究会癌化学療法センター分子生物治療研究部 杉本 芳一 これまでに3症例を登録し、そのうちの2症例にMDR1遺伝子導入細胞の移植と遺伝子治療に基づいたドセタキセル治療を行った。この治療の結果、両症例とも乳癌の転移病巣が完全消失し、CRの状態が約1年半続いている。患者末梢血のP-糖蛋白陽性細胞はドセタキセル投与により一過性の上昇を繰り返しながらその割合を増した。このP-糖蛋白陽性細胞がドセタキセル投与後の骨髄抑制の軽減に役立ったことを示唆する結果が得られた。 フラスコで培養後に患者に戻し移植される細胞の安全性検査のプロトコール(SOP)を国に提出し、了承された。この基準は他の研究グループにも使用されている。 本研究では日本で初めて、遺伝子導入して患者に移植する細胞の安全性を国内で検定するシステムを整備した。この安全性検査システムは遺伝子治療のみならず、患者の細胞を体外で培養・処理・加工する再生医療などの臨床研究にも不可欠であり、そうした研究にも利用可能である。国内の他の遺伝子治療臨床研究において本安全性検査システムの利用が始まりつつある。 43 63 84 6 0 http://www.jfcr.or.jp/new_md/nyuugan.html
CD34陽性細胞を標的とするADA欠損症における遺伝子治療臨床研究 平成14年度 *2 32,000 北海道大学大学院医学研究科 崎山 幸雄 末梢血リンパ球を標的とする遺伝子治療の安全性と臨床効果を評価した。次いでヒト血液幹/前駆細胞へのレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法を確立した。ADA欠損症における血液幹/前駆細胞を標的とする遺伝子治療臨床研究はそのリスク、ベネフィットを考える上で、国際的にも極めて重要な知見となることが示唆された。 致死的疾患であるADA欠損症患児の末梢血リンパ球を標的とする遺伝子治療は臨床的に有用であることを8年間の経緯から示した。ADA欠損症における自己骨髄血CD34陽性細胞を標的とする遺伝子治療臨床研究は遺伝子治療のリスク、ベネフィットを明らかにし、導入遺伝子のモニタリング法とインフォームドコンセントの確立によって、遺伝子治療の医療における位置づけを確立することになると予想される。 他の代謝性疾患、血液疾患、癌などにおける末梢血リンパ球、血液幹/前駆細胞を標的とする遺伝子治療の今後の展開に寄与する可能性が大である。 11 13 14      
*1:  13年度「ヒトゲノム・再生医療等研究事業」として実施。14年度、本事業に移行。
*2:  12〜13年度「ヒトゲノム・再生医療等研究事業」として実施。14年度、本事業に移行。
※本研究課題における研究班全体の成果、予定を含む
※施策への反映状況・件数は、幅広く記述する。


トップへ
戻る