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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):萌芽的先端医療技術推進研究
所管課:研究開発振興課
予算額の推移(例):
平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
0千円 0千円 2,839,905千円 2,473,920千円
(1) 研究事業の目的
 平成14年度から開始した研究で、ナノテクノロジーを活用した医療技術等の研究開発(ナノメディシン)とゲノム科学を活用した創薬基盤技術開発(トキシコゲノミクス)の2つの萌芽的研究分野からなる。
 ナノテクノロジー分野については、患者にとってより安全・安心な医療技術の実現を図るため、ナノテクノロジーの医学への応用による非侵襲・低侵襲の目指した医療機器等の研究開発を推進するもの。
 トキシコゲノミクス分野については、ゲノム情報・技術等を活用した医薬品開発のスクリーニング法、副作用の解明等の技術に関する研究開発を推進するもの。
 両分野とも課題別に、産官連携のプロジェクト型及び公募型の研究を実施。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 過去3年間程度の課題一覧(別途添付)、課題採択の留意事項等
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)

 医薬品・医療機器の先端的萌芽技術であるナノテクノロジー、トキシコゲノミクスを活用し、我が国の医薬品・医療機器シーズの研究開発の推進を図る。
【成果の具体例】
「心疾患及びがん疾患遺伝子のSNPs解析とECAチップによる遺伝子診断システムの確立」
(国立循環器病センター 池田室長)
心疾患関連遺伝子であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の変異3種類を多電極ECA(Electrochemical Array)チップで検出する条件を確立するとともに、乳がんの転移を予測可能にする候補遺伝子(CK19、CEA、Muc1)を選定した。ECAチップを用いてのDNA診断法の確立は、LPL遺伝子異常の有無の早期確定診断およびがんの迅速診断、転移の有無および治療効果の判定を容易にする。ECAチップは、日本独自の開発技術であり、生産コストが低い。

「ナノ制御表面の創生とその血管内手術デバイスへの展開」
(京都大学再生医科学研究所 岩田教授)
血管内手術に用いる高機能化デバイスの開発を進めた。具体的には、脳動脈瘤の治療を目的とした金ステント、カバーステントと器質化促進コイルを微細加工技術を用いて開発した。研究成果発表会をふまえ、医療機器メーカーへの技術移転を行っている。
高機能医療用デバイスは非常に輸入超過であるが、本研究の成果はわが国から欧米へ輸出可能なデバイスとして期待できる。

「携帯使用が可能な超小型心肺補助システムの臨床応用と製品化のための研究」
(国立循環器病センター研究所 高野副所長)
新規の革新的抗血栓性処理技術を基盤技術として、迅速に適用可能で長期間使用可能な次世代型心肺補助装置の開発を行い、前臨床モデルを完成させた。また、開発要素技術を反映させた3種類の先駆的人工肺の製品化に成功し、従来は救命不可能であった肺出血合併重症心肺不全患者に臨床応用して全例救命するなど、呼吸循環補助の適用拡大がもたらされた。開発装置は、上記の臨床例の如く我が国の死因の第2位および第4位を従来は抗凝血薬の投与下を行いつつ数日間の補助が限度であったが、本研究では動物実験で5ヶ月間の抗凝血薬非投与下での連続心肺補助を達成した。本研究成果は国内外を通じて群を抜くものであり、世界的に他の追随を全く許さない技術であるといえる。顕著な臨床的有用性も確認されつつあり、幅広い背景疾患の重症患者の治療成績を大きく向上させる可能性を有する。また、我が国発の治療機器として世界に輸出される可能性が高い。
(4) 事業の目的に対する達成度
 今年度から開始しており、達成度については今後中間事後委員会等で評価。
(5) 行政施策との関連性
 医薬品産業ビジョン及び医療機器産業ビジョンでのアクションプラン新医薬品・医療用具の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること
(6) 今後の課題
 プロジェクト型研究においては、適切な予算配分が必要であり、安易な研究費削減は、プロジェクトの達成に大きく影響を及ぼし、予定内容の実施が困難となることから、予算の確保が今後の課題と言える。
(7) 研究事業の総合評価
 本研究事業のうち、ナノメディシン分野については、平成14年度より開始されたものであるが、数課題については、平成12及び13年度から高度先端医療研究事業として実施されており、論文発表、成果発表、技術移転、厚生労働行政への貢献等の成果があげられている。
 今後の継続課題については、更なる努力を重ね、着実に成果をあげられるように期待したい。

 本研究事業のうち、トキシコゲノミクス分野については、全課題とも平成14年度より開始され、研究期間が僅か1年間であること、また、産業界との共同研究事業であり、知的財産の取扱等の観点から、特に評価を実施するものではない。


○萌芽的先端医療技術推進研究

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
高磁場NMR及びMRIを用いた脳虚血病変診断技術の開発 平成14年度
平成13年度(高度先端)
20,000 国立循環器病センター放射線医学部 飯田 秀博 MRI装置を使って脳組織の血流量および酸素代謝量を画像化する新しい撮像法を開発し、その正当性と効果を評価した。MRI信号はGd造影剤の濃度とは線形関係にはなく、特殊な補正が本質的であることが明らかになった。T2*の絶対定量も可能になり、これと組織酸素摂取率とが相関する事実が確認できた。一連の解析プログラム著作物は、医療機器メーカおよびソフトメーカーが利用したいとの意思表示があった。 MRI検査プロトコル(撮像の詳細と血流量画像計算プログラムの仕様など)の標準化と、保険点数算出の基準設定のための資料の作成に活用する予定である。 従来は基準がなく、各メーカー毎に異なっていたMRI血流画像撮像プロトコルに対して標準的な仕様が提供できる。またPETでのみ可能であった脳組織の酸素代謝量の計測がMRIにおいても可能であることが示された。これらは脳虚血性疾患において、画像診断基準の標準化と診断精度の向上に貢献する。 3 2 4 2    
心疾患及びがん疾患遺伝子のSNPs解析とECAチップによる遺伝子診断システムの確立 平成14年度
平成13年度(高度先端)
20,000 国立循環器病センター病因部 池田 康行 心疾患関連遺伝子であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の変異3種類を多電極E CA(Electrochemical Array)チップで検出する条件を確立した。乳がんの転移を予測可能にする候補遺伝子(CK19、CEA、Muc1)を選定した。ECA チップを用いてのLPL変異検出の成果は、Bioconjugate Chemistryの雑誌等に掲載され、国内外から大きな反響があった。 ECAチップを用いてのDNA診断法の確立は、LPL遺伝子異常の有無の早期確定診断およびがんの迅速診断、転移の有無および治療効果の判定を容易にする。ECAチップは、日本独自の開発技術であり、生産コストも低く、医療費の削減に役立つものである。 ECAチップを用いてのDNA診断結果を基に、心疾患およびがんの適切な予防、治療方針の決定が可能となり、テイラ−メイド医療を可能とし、国民の健康向上に大きく寄与すると思われる。 5 3 4 0 0  
術中にがんを可視化することで、5年生存率を20%向上させるシステムの臨床開発に関する研究 平成14年度
平成13年度(高度先端)
20,000 東京女子医科大学脳神経外科 伊関  洋 悪性脳腫瘍の5年生存率向上に貢献した.本研究により全摘出率で8%(全日本統計)から39%に、平均摘出率では91%を達成した.日本医学会総会、脳神経外科学会などでの指定講演、MICCAI2002でのチュートリアル、国際コンピュータ外科学会などで国内外から大きな反響があった.ちなみに、 5年生存率は、75%の摘出で8-15%、95%摘出で22%、全摘出で41%である. 成果をもとに、オープンMRI手術、リアルタイムアップデートナビゲーション・化学的ナビゲーションシステムを用いた新しい手術システムが確立されつつあり、全国に普及している.今後、悪性脳腫瘍の手術治療ガイドラインの策定に反映すると思われる.オープンMRI手術は、ニュートン4月号に神業の先端医療の一つとして紹介され,先端医療に対する国民的啓蒙にも貢献している. 従来、限定的な範囲でしかなされていなかった悪性脳腫瘍の手術の全摘を目指し,悪性脳腫瘍の可視化、脳機能領域の同定、術中残存腫瘍の確認、MRI対応ロボット手術・100ミクロンでのCAD/CAMレーザー手術治療システムの開発など,わが国当該分野だけでなく、各外科領域に波及する基盤技術としてもリードしている. 14 24 30 0 0 構築中
エンドマイクロスコープを用いた癌の新しい診断についての研究 平成14年度
平成13年度(高度先端)
20,000 昭和大学横浜市北部病院消化器センター 工藤 進英 ア、生体内で無固定無染色のまま、生きた細胞を観察することに成功した。これは、組織を採取しない生検の第一歩である。また、がん細胞では輝度の逆転現象が特異的に起こることが判明してきており、癌診断学に新しい1ページを開くことになった。
イ、欧米の国際学会(ドイツ内視鏡学会、フランス内視鏡学会など)をはじめとして、本内容での講演の以来が相次いでおり、内視鏡の世界では、画期的出来事として、大きな反響がある。
この成果により、癌・非癌の診断が、生検をおこなわずとも、可能になりつつあり、病理検査の人的また経済的負担の軽減になると考えれれる。 消化器病領域で夢ともかんがえられた、生きた細胞を直接観察することが可能となったわけで、各種の基礎的実験に応用可能な技術である。 2 3 9     inoue-haru.com
RI標識分子と半導体型ガンマカメラによる分子病態の画像化の研究 平成14年度
平成13年度(高度先端)
15,700 慶應義塾大学医学部放射線科 久保 敦司 半導体素子テルル化カドミュウムを用いたガンマカメラを開発した。従来型のシンチレータを利用したカメラよりも、エネルギー分解能、空間分解能が優れており、微少量のトレーサによる病態診断の可能性が示唆された。装置の小型化ができたため、任意の方向からの撮像や可搬形カメラの開発も期待できる。成果は、米国核医学会などで報告され、高い評価を受けている。 成果は、厚生労働省委託研究放射線医薬品適正評価委員会における放射性医薬品の適正使用におけるガイドラインの作製のための調査資料に利用されている。 半導体型ガンマカメラの導入により、核医学検査の効率が改善し、短時間で病態の機能情報が得られる新しい検査手技として発展しつつある。装置の小型化は、検査場所の制限が少なくなり、集中治療室などでの病態診断に貢献することが期待される。 5 5 12 0 0  
遺伝子診断法ならびに遺伝子診断システムの実用化研究 平成14年度
平成13年度(高度先端)
20,000 国立がんセンター中央病院 森谷 宜皓 循環器疾患の遺伝子多型解析において冠危険因子の一つである低HDL血症に関してABCA1遺伝子Met823ILe多型が関与すること、またMMP-1、MMP-3のプロモーター多型のハプロタイプが独立した心筋梗塞の危険因子であることを示した。大腸がん診断において便から剥離大腸がん細胞を分離固定することに成功した。しかも全結腸のがんをカバーできることが判明した。 循環器疾患の関連遺伝子の多型とプローブによって検出するリスク診断の確立および便細胞診あるいは遺伝子診断による大腸がんスクリーニングの確立は患者の経済的、身体的負担を軽減する。 非侵襲で正確でしかも自動化システムによる疾病早期診断は現行の不正確な診断価値を大幅に上昇させる。 11 0 21 0 0  
ナノ制御表面の創生とその血管内手術デバイスへの展開 平成14年度
平成12-13年度(高度先端)
86,900 京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門 岩田 博夫 血管内手術に用いる高機能化デバイスの開発を進めてきた。ステント開発の指針を確立した。脳動脈瘤の治療を目的とした金ステント、カバーステントと器質化促進コイルを微細加工技術を用いて開発を行った。 高機能医療用デバイスは大変な輸入超過であるが、本研究の成果はわが国から欧米へ輸出可能なデバイスと期待出来る 研究成果発表会で医療機器メーカーからの接触があり、技術移転を行っている。 36 3 76 8   http://www.frontier.kyoto-u.ac.jp/te03/index-j.htm
携帯使用が可能な超小型心肺補助システムの臨床応用と製品化のための研究 平成14年度
平成12-13年度(高度先端)
102,000 国立循環器病センター研究所 高野 久輝 新規の革新的抗血栓性処理技術を基盤技術として、迅速に適用可能で長期間使用可能な次世代型心肺補助装置の開発を行い、前臨床モデルを完成させた。また、開発要素技術を反映させた3種類の先駆的人工肺の製品化に成功し、従来は救命不可能であった肺出血合併重症心肺不全患者に臨床応用して全例救命するなど、呼吸循環補助の適用拡大がもたらされた。国内外からも大きな反響が得られ、現在国際的な共同臨床研究に着手しつつある。 開発装置は、左記の臨床例の如く我が国の死因の第2位および第4位を占める心疾患および呼吸器疾患の救命・死亡率低減に直接的に寄与し得るが、さらに第3位の脳血管疾患や第5位の外傷その他の患者の一次救命にも大きな効果が期待され、厚生労働行政にも多大なインパクトを与え得る。また、共同臨床研究を通じて国際的に有用性が認知されれば、我が国発の治療機器として海外でも用いられ、世界的に流通し得る可能性を有する。 本研究では動物実験で5ヶ月間の抗凝血薬非投与下での連続心肺補助を達成したが、従来は抗凝血薬の投与下を行いつつ数日間の補助が限度であった。本研究成果は国内外を通じて群を抜くものであり、世界的に他の追随を全く許さない技術であるといえる。顕著な臨床的有用性も確認されつつあり、幅広い背景疾患の重症患者の治療成績を大きく向上させる可能性を有する。また、我が国発の治療機器として世界に輸出される可能性も高い。 12 10 70 8 0  
  ※本研究課題における研究班全体の成果、予定を含む
※施策への反映状況・件数は、幅広く記述する。


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