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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):新興・再興感染症研究事業
所管課:結核感染症課
予算額の推移:
平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
1,770,730千円 1,772,738千円 1,549,308千円 1,363,391千円
(1) 研究事業の目的
近年、新たにその存在が発見された感染症や既に制圧したかにみえながら再び猛威をふるいつつある感染症が世界的に注目されている。
これらの感染症は、その病原体感染源、感染経路、感染力、発症機序、診断、治療法等について解明すべき点が多い。
このため、本事業は、国内外の新興・再興感染症研究を推進し、研究の向上に資するとともに、新興・再興感染症から国民の健康を守るために必要な施策を行うための研究成果を得ることを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
ウイルス、細菌、寄生虫・原虫による感染症等に関する研究で、それらの解明、予防法、診断法、治療法、情報の収集と分析、行政対応等に関する研究を行う。
また近年、問題となっている感染症の広域発生、生物テロに対する対応方法も研究対象としている。
(3) 研究成果及びその他の効果
新興・再興感染症についてわが国での現状について数多くの知見が得られた。
希少であるが危険性の高い感染症の診断法、治療法が一部確立された。
O157等、食品由来感染症の原因菌の検出法の向上、PFGEの標準化も意義が高い。
結核、性感染症の現状が明らかにされ、特に日本式DOTSの開発は重要であった。
ハンセン病など社会的意義が高い疾患の対策方法についても新知見が得られた。
また感染症サーベイランスの適正化のための検討でも改善点が指摘された。
さらに多剤耐性菌、院内感染も国民の関心が高く、後者についてはマニュアルが作成された。
(4) 事業の目的に対する達成度
平成12年度分は終了し、ほぼ目的を達成している。
13年分は一部が肝炎分野に組替えられレベルの高い結果を得ている。
14年分は1年を経過した時点で一部新知見が得られている。
(5) 行政施策との関連性
本研究は平成10年に改正された感染症法を円滑に運営するために必須の研究である。
PFGEの標準化により広域感染症の疫学調査が容易になり、また病原体検出の向上は韓国産牡蠣輸入禁止の根拠になった。
また日本式DOTSの開発と同時に結核の研究は結核予防法改正に繋がった。
ハンセン病、インフルエンザ、院内感染対策、多剤耐性菌の研究は厚生労働省として深く関与すべき研究課題である。
(6) 今後の課題
依然、認識されていなかった感染症の重要性が新興・再興感染症として問題となっており、今後とも研究すべき感染症の有無に常に留意する必要がある。
また現在の世界の状況から、生物テロと続発する大規模感染症対策の研究は現在進行中であるが、有効なガイドライン、マニュアルが作成される必要がある。
(7) 研究事業の総合評価
結果の項に示した研究は更に高い成果が見込まれるものが多く、同様の公募課題が設定されているものがある。
さらに来年度以降はウエストナイル熱などベクター由来感染症、ペストを代表とする動物由来感染症など国民の関心も高い疾患の研究は必要である。
日本では未認可で、海外では汎用されている予防接種の有効性に関する研究などに重点をおくことにしている。
(8) 新規に取り組むべき事業に関する考え方 等
 新興病原体に対する迅速な診断法、ワクチン開発技術の確立に関する研究
 世界で拡大傾向を示している重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体はWHOが最初に警報を発した3月12日からコロナウイルスと確立するまで日数を要し、ワクチン開発に至っては端緒にもついていない。また新型インフルエンザによる汎流行の脅威が毎年指摘されているが、一旦発生した場合、ワクチン製造が間に合わないのが現状である。
 従って、本課題では特定の疾患、病原体に限定せず、疾患横断的に新興感染症の発生が認められた場合、速やかに病原体を特定して、精度の高い診断法を開発すると同時に、有効な治療薬、ワクチンを迅速に開発する研究基盤を確立するための研究を推進する。
(9) 研究事業の総合評価
 前述のように新興・再興感染症の社会的意義は大きく、直近でもウエストナイル熱、SARSなど枚挙にいとまがない。その中で、本研究はこれらの疾患の診断、治療のみでなく、法改正にも関わる重要な研究結果を出しており、行政的にもその意義は高いと考えられる。
項目や分量は適宜変更可。既存資料を用いても差し支えない。


○新興・再興感染症研究事業

研究課題 実施
期間
合計
金額
(千円)
主任研究者
所属施設
氏名
(1)専門的・
学術的観点
ア 研究目的の成果
イ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
(2)行政的観点
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。(実例により説明してください。審議会資料、予算要求策定の基礎資料としての活用予定などを含む。)
(3)その他の
社会的
インパクトなど
(予定を含む)
発表状況 特許 施策 (4)研究の成果が分かるホームページのURLなど
原著
論文
(件)
その

論文
(件)
口頭
発表

(件)
特許の出願及び取得状況 反映件数
成人麻疹の実態把握と今後の麻疹対策の方向性に関する研究 平成13-14年度 52,000 東京都立駒込病院小児科 山直秀 ア 成人麻疹の発生数が相対的に増加しつつあること,その原因は小児期に麻疹に罹患せず,麻疹ワクチン接種も受けないまま成人年齢に達した者の増加によること,成人麻疹は小児の麻疹流行が波及したものであることを明らかにした。さらに,麻疹ワクチン累積接種率の全国調査を行い,この結果に基づき,麻疹ワクチン接種率を生後18ヵ月までに80%,24ヵ月までに90%以上にできれば,数年以内に麻疹患者数は10分の1以下に減少すると予測できた。イ 累積接種率の導入により予防接種率が正確に把握できるようになり,全国の3歳児における麻疹ワクチン接種率を世界ではじめて推測できた。 平成13年末に厚生労働省に中間報告として提出した各市区町村における麻疹対策への提言は14年1月に全国自治体に配布され,各地の麻疹対策の参考となった。平成14年度の研究班報告書では麻疹ワクチン接種の手引きを資料として添付した。これは厚生労働省を通じて各市区町村に配布され,麻疹ワクチン接種実施の助けとなるはずである。また,各市区町村において麻疹ワクチン累積接種率を容易に推定できるように累積接種率統計ソフトを開発し,希望する保健所に配布して管内の市町村で約110例の標本から麻疹ワクチン累積接種率を求めた。これにより,月齢別の麻疹ワクチン接種率が一目瞭然となるため,麻疹対策を進める目標が定まり,また施策の評価も可能となった。 中学校などの教育施設において麻疹患者が集団発生したとの報告が相次いでいるため,都内の小・中学校において麻疹ワクチン接種済み者および麻疹罹患者の調査を行った。その結果麻疹ワクチン未接種かつ麻疹未罹患の生徒は平均5%程度に過ぎないことが判明した。伝播力が強い麻疹でも95%以上が免疫になっている集団では流行が発生しないとされているが,実際に流行が発生しているので,麻疹ワクチン接種済み者の中に免疫が不十分である生徒が相当数存在するものと推定された。また,乳幼児麻疹患者の中には医療機関で麻疹ウイルスに感染したものと推定される患者が少なくなかったため,医療機関通院患者における麻疹ワクチン累積接種率調査を進めている。この調査により各医療機関での麻疹ワクチン接種率が向上し,医療機関での麻疹ウイルス感染を減少させることが期待できる。 11 22 未集計 該当するものなし 平成13年末に提出した中間報告が厚生労働省を通じて全国各自治体に配布され,平成14年度研究報告書の資料の一部が厚生労働省を通じて各自治体に配布される予定であるが,施策への反映状況は不明である。 該当するものなし
パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)の標準化及び画像診断を基板とした分散型システムの有効性に関する研究 平成12〜14 88,840 国立感染症研究所細菌第一部 渡辺治雄 腸管出血性大腸菌O157の染色体DNAの多様性を明らかにした。その原因は染色体に組み込まれているバクテリオファージを介しての欠出や付加変異によるものが主であった。その変化はPFGE(パルスフィールド電気泳動法)により検出可能であった。分離され菌ごとにPFGE型が異なっており、もし同じPFGE型が異なる地域で分離される場合にはdiffuse outbreakの一部であると考えられることを示した。その成果は、PNAS.USA等の雑誌に報告され国内外で評価された。 この成果を各地方衛生研究所に研修等を通して伝達した。また、各地で発生した食中毒事件の原因菌のPFGEパターンを感染研に電送するネットワークを構築した。これにより、各地で起こる事件の関連性を迅速に判定することができるようになった。パルスネットの構築に貢献している。 広域食中毒事件の迅速なる発見に役立っている。実際に「O157によるイクラ汚染事件」「韓国産牡蠣の赤痢菌汚染事件」の迅速なる発見に貢献した。新聞でもPFGE解析の有効性が報道された 30 30 81 なし 15件;主なもの:韓国産牡蠣の赤痢菌汚染事件の韓国への対応およびマニュアル作成サイコロステーキの汚染によるO157事件の解明と取り扱い対策、ローストビーフの汚染によるO157事件の解明とその対策 WISH(厚生労働行政総合情報システム)上でPulseNet Japanとして腸管出血性大腸菌の遺伝解析結果を公開している。地方行政府の利用のため。
未知の感染症のリスク評価に関する研究 平成12-14年度 29,000 国立感染症研究所 血液安全性研究部 小室勝利 B19パリボウィルス、TTV,HEV,HHV−8、HBV変異株につき、診断法の開発、病態、病原性の検討、分子疫学的研究を行い、各々で新しい事実を報告した。成果は学術的にもそれなりに評価できる結果隣り国内外のリスク評価に応用可能となった。 血液製剤のリスク評価への応用(安全技術調査会)、国内におけるHEV対策(血液事業部会)への発信、移植患者に対するヘルペス群に対するリスク評価への応用(サイ帯血移植検討委員会)等にその知識は利用された。HEVについては厚生労働省の予算要求にも利用し得ると考えられる。 血液行政上、感染症対策上、現在および将来検討すべき内容が示唆できた。 20〜30 10 30 なし なし  
感染症及び感染症対策の国際的動向に関する研究 平成12-14年度 37,200 京都大学大学院医学研究科 宮城島一明 感染症及び感染症対策に関する諸外国の制度・実態等について、予防接種、結核対策、感染症全般の3つの領域から調査を行った。予防接種については、各国の予防接種対策(新たな予防接種メニューの動向を含む)を調査し、個別の感染症対策として各国の麻疹対策の現状を明らかにした。結核対策の領域では、結核中蔓延国の共通課題を明らかにし、結核対策において先進的な国の対策とこれらの我が国への適応可能性を評価した。感染症一般に関しては、検疫を含む各国の感染症対策の法令と個別対策の現状を網羅的・系統的に調査した。特に、9.11事件以降のバイオテロリズムの危険に対する米国の対応、感染症予防法1類相当疾患が発生した時の各国の政府レベル及び地方自治体レベルの対応、各国の検疫所における感染症対策の現状、さらに、保健サービスの行政主体の地方分権との関連について調査・評価を行った。 新興・再興感染症等について、各国政府との相互調整のもと、総合的かつ国際的な対処をするにあたり、本研究の成果は、厚生労働省の専門家会議などの資料として使用された。今後とも、予算要求の基礎資料などとして、我が国における感染症対策の強化に寄与することが期待される。 C型肝炎、西ナイルウイルス感染症をはじめとするさまざまな感染症に対して国民の注意を喚起するのに寄与した。また、バイオテロリスム対策の一環としての感染症対策の重要性について一般の注意を喚起した。 1 29 2以上 0    
再興感染症としての結核対策の確立に関する研究 平成12〜14年度 159,000 財団法人結核予防会結核研究所 森亨 結核の診断,治療,患者管理,予防接種など結核対策にかかる広範な分野にわたって現状を分析し,今後のあり方について提案を行った.結果の多くは平成13年度に始まった結核対策の抜本的見直し作業等の基礎となった. 平成16年度を目途として準備が進められている結核予防法の大改正のためのエビデンスを提供することができた(例.BCG再接種、成人化学予防、大都市および一般地域でのDOTS戦略、選択的健診、院内感染予防).一部は既に平成15年2月結核感染症課長通知(今後の結核対策推進・強化について)(自治体におけるDOTS推進の勧奨)との基礎となった。 「根拠に基づく予防対策」研究のひとつのモデルとなりうる. 27 79 23 なし なし なし
インフルエンザの臨床経過中に発生する脳炎・脳症の疫学及び病態に関する研究 平成12-14年度 89,200 名古屋大学 医学部 森島恒雄 ア.a. インフルエンザ脳炎・脳症の日本における現状を初めて明らかにした。Clin Infect Dis 2002b. サイトカインの高値及び血管内皮細胞の障害と、apoptosisによる急激な多臓器不全の進行が主要な病態であることを明らかにした。J Infect Dis2003など c. 一部のNSAIDsが予後の悪化に関与することを示した。d. 本症の日本での多発が国際的に知られるようになった。イ.a. インフルエンザ脳症の臨床的概要を明らかにした。また、本症の病態の解明が進んだ。b. 国際疫学共同研究が進行中(MMWR 1月号)。c. 本症に対する国民の知識はかなり普及し、小児医療の現場において、本症に対する診療上の注意が払われるようになった。 1. 国民、とりわけ乳幼児の両親における本症の知識が普及し、インフルエンザの時の注意点(解熱剤の使い方やインフルエンザ脳症の症状など)について理解されるようになった。また、市民公開講座を開き(平成15年3月)、国民向けの本症のパンフレットを作成・配布し、広く情報を公開した(添付文書)。2. 病態の解明から、重症例の治療法について、少しずつ検討が進んでおり、死亡率30%(1999・2000)が約15%(2001・02)に改善傾向にある。後遺症児のリハビリテーションの方法についても、具体的な方法を提示した。 小児のインフルエンザ及びインフルエンザ脳症に対して、乳幼児の親の関心は極めて高く、その対策が望まれている。今後は重症例の治療法の検討を通じて「診療ガイドライン」を作成し、安心して医療を受けられる体制を作りたい。また、予防接種の脳症予防効果の検討や、発症の危険因子を明らかにすることで(ゲノムプロジェクトを含む)予防対策を完全なものとしたい。 45(英文原著26、和文原著19) 60(英文4、和文56) 73 0 1 本研究班のアンケート調査の結果から一部のNSAIDs(ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸)がインフルエンザ脳症において、死亡率を上昇させることが明らかになった。この結果、2001年上記の薬剤は、小児のインフルエンザにおいて原則禁忌となった。また、この措置がとられた後も家庭の置き薬などを誤って使用し、死亡するなどの事例が続いたため、これを報告し、厚生労働省より使用上の注意喚起がなされた(2002年)。2003年大阪においてインフルエンザ脳症による急死例の多発が研究班に報告され、大阪市及び大阪府において疫学調査が進行中である。 国立感染症研究所感染症情報センターのホームページに、研究班の結果や解熱剤の使用時の注意点などが掲載されている。
乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究 平成12-14年度 平成12年度
(わかりません)+
13年度
(30,000)+
14年度
(27,000)
久留米大学(医学部第一内科) 加地正郎
(本表作成:廣田良夫 )
接種後48時間以内に38℃以上の発熱を呈する頻度は約3%である。接種歴がある者はない者に比べて発赤、腫脹、硬結を3〜4倍起こしやすい。接種によりインフルエンザ様疾患(発熱39.0℃以上)の発病リスクは、1歳以上では0.72に低下した。1歳未満での有効性は明らかではなかった。2000人以上の乳幼児を対象に、不活化ワクチンの有効性を調べた研究は世界にない。 予防接種法の2類疾病として、高齢者等に対するインフルエンザ予防接種が始まった。これを契機に、特に小児科医の間で「高齢者に接種するなら小児にも」ということが声高に叫ばれるようになった。小児への予防接種に対する公的関与について結論を得る際、重要な基礎資料となる。 乳児ではインフルエンザ関連の入院頻度が高い(高齢者と異なり、インフルエンザ関連の死亡頻度は高くない)。乳児に対するワクチンの有効性が鮮明でないことから、乳児の接触者に対する予防接種の重要性が指摘されることになろう。 1 8 4      
新型インフルエンザ対策に関する総合研究 平成12-14年度 93,281 国立感染症研究所 田代眞人 近く新型インフルエンザの出現が想定されているが、その際には地球全体で未曾有の健康被害と社会的混乱が生じることが危惧される。そこで、新型インフルエンザによる大流行対策として、1)健康被害を最小限にとどめ、2)社会機能の混乱・崩壊を防止するために、事前準備と行動計画の確立を目的とした基礎研究と政策策定の議論に必要な調査研究を進めた。新型インフルエンザ対策は毎年のインフルエンザ対策の積み重ねの上に成り立つとの認識から、そのための政策策定のための基礎研究をすすめた。その結果、予防接種法の一部改正が行われて、我が国においても高齢者を中心とした新たなワクチン接種体制が実現した。また、インフルエンザ流行動向調査体制の拡充、抗ウイルス剤の実用化、迅速診断キットの普及が実現し、新型インフルエンザ対策の必須基盤が整ってきた。今後の方向性としては、現行の新型インフルエンザ対策の基本方針に大きな変更の必要は無いが、1)動物インフルエンザに対するサーベイランスの強化とヒトインフルエンザサーベイランス体制との総合化の必要性、2)新型インフルエンザワクチンの緊急開発に関しては、技術面での問題はほぼ解決されたが、知的所有権・特許問題、遺伝子組換え医薬品等の許認可問題、安全性・有効性の確保と品質管理、大量製造・供給・接種体制、海外供与問題の解決、3)抗インフルエンザ薬の実用化に伴ってその備蓄と供給計画の確立、4)WHOが世界のインフルエンザ対策全般に積極的な方針を決定したことに対応した国内対策の見直しと、国際協力・貢献の推進の諸問題が指摘される。特に、熱帯・亜熱帯地域の途上国においてはインフルエンザに対する認識が不十分であり、今後これらの地域における実態の解明と啓発活動、新型インフルエンザ対策確立への協力が重要課題である。5)新型インフルエンザによる大流行の際には、未曾有の健康被害と社会機能の麻痺・崩壊が危惧される。特に流通機構の破綻は、エネルギー危機、食糧危機を招き、社会的パニックとなる恐れがあり、危機管理問題として国家的に準備対応を検討しておく必要がある。そこで、これらの問題解決とその実施のための具体的な行動計画を早急に作成する必要があり、計画を実現するために必要な基礎研究を推進させることが緊急課題である。 本研究は、高齢者を中心とした接種体制の導入を目的とした予防接種法の改正、インフルエンザ流行動向調査事業の拡充、ワクチン製造・接種体制の推進、抗ウイルス剤の導入・実用化、迅速診断キットの普及等の国のインフルエンザ対策に貢献してきた。更に、今後は、厚生労働科学審議会の感染症部会の下に新型インフルエンザ対策委員会が4月から新たに作られ、ここで新型インフルエンザに関する国の対策全般に対する見直しと行動計画が検討されることになっているが、本研究の成果は、この審議における問題点の整理と対策検討の方向性に対して中心的なデータを提供することとなる。 新型インフルエンザにおける健康被害対策と社会危機対策において本研究の成果は直接に応用出来、更に他の新興感染症に対しても応用が可能であり、大きな社会問題である感染症対策に対して、基本的な考え方を提供できる。 18 45 26 なし 2003年大阪においてインフルエンザ脳症による急死例の多発が研究班に報告され、大阪市及び大阪府において疫学調査が進行中である 厚生労働省ホームページ
エキノコックス症の監視・防御に関する研究 平成12-14年度 96,000 北海道大学 大学院獣医学研究科 神谷正男 ペット動物のエキノコックス症の診断法を確立し、流行状況調査および患畜の診断が可能となった。ベイト散布法を検討し、北海道の農村部におけるエキノコックス対策法をほぼ確立し、今後のエキノコックス対策の可能性が示された。これら成果はparasitology等の国際的な寄生虫学専門誌に掲載された。 全国のエキノコックス流行状況調査により、一部ではあるか現状が把握された。ベイト散布結果については、北海道エキノコックス対策協議会で報告し、また、室内犬の感染例を発見し、状況を詳細に説明した。これらの報告は残念ながら、行政の積極的な対策にはつながっていない。東北および関東地方において食肉検査時の豚の肝臓検査について啓蒙したが、全国レベルの通達・研修が必要と考えられる。 多数のペットの検査において、室外飼育犬だけでなく、室内犬の感染例が発見され、全国のペット飼い主へのエキノコックスについての注意を喚起した。飼い犬の駆虫経験から、小動物獣医師のためのエキノコックス対策マニュアルが作成された。ベイト散布によるエキノコックス虫卵減少もしくは消失、すなわち環境清浄化は地域住民の健康だけでなく、安全な食糧供給および観光地提供となる。 38 40 79 1 道庁によりペット飼い主へのためのパンフレットが新たに作成された。 http://vpcserv.vetmed.hokudai.ac.jp/ 毎日の訪問者数はほぼ70件である。
マラリアの病態疫学、流行予測及び感染動向に関する研究 平成12−14年度 59,300 群馬大学大学院医学系研究科 鈴木守 1.マラリア流行地帰還者8011名の間接蛍光抗体法検査結果は熱帯地でマラリアに罹患するリスクに関する世界でもはじめての客観的資料である。2.熱帯熱マラリア原虫の合成エノラーゼワクチンの実験結果は明白な防御効果を示しているので、次の研究段階に進ませて流行地での試験実施が望まれる。3.ミノサイクリンについて薬剤耐性マラリアに対しドキシサイクリン以上の効果が確認された。臨床応用を推進させたい。 1.マラリア間接蛍光抗体法の結果は流行地に赴任する人々に対するマラリア感染のリスク指標として厚生行政上有益なので活用を勧めたい。2.マラリアワクチン研究の中でCDCの認める標準法により明白な効果をみた成果は本邦においては本研究のみである。WHOとの連携のもとに野外試験を行うことが望まれる。3.ミノサイクリンは日本のどの診療所でも使用可能な抗マラリア剤となりうる。 1.20年間のマラリア間接蛍光抗体法の結果は流行地に赴任する人々に安心感を与える。2.日本でなされたマラリアワクチン研究の本格的な研究成果は、WHOなどに対する日本のステータスを向上させるはずである。3.日本の診療機関で、マラリアの確定診断が下された後、まず問題になるのはどうしたら抗マラリア剤を入手するか、ということである。ミノサイクリンで対処してからマラリア薬の入手をはかることができる。 53 2 161 4 0 (厚生科学研究の結果を施策にどのように反映させるかは官庁の仕事になるものと考える)  
日本住血吸虫等世界の寄生虫疾患の疫学及び予防に関する研究 平成12-14年度 61,200 名古屋市立大学大学院医学研究科 太田伸生 寄生虫症流行の監視、対策および予防安全のための戦略再検討と必要な施策の提言、およびワクチン、非観血的な簡易免疫診断法と診断基準策定、予防薬開発、感染モデル動物開発などの新規技術開発を住血吸虫症対策をモデルとして進めた。本年3月の日本住血吸虫発見100年記念国際シンポジウムにて本研究成果を報告し、WHOなどの国際機関や海外流行地の政策担当者より大きな反響を得た。 主要な国際空港の検疫業務と連携して輸入寄生虫病の診断・治療に関する国内対応の窓口を引き受けた。住血吸虫症の治療薬(ビルトリシド)の副作用について危険防止の提言を行なうとともに、アジアの住血吸虫症肝脾病変の超音波診断基準の見直しについてWHOから助言を求められた。地方衛研と共同で人的コストを省いた新しい住血吸虫ベクター監視システムを構築して国内旧流行地での実用に向けた試験を行なった。 海外の寄生虫病流行情報を整備し、危険情報としてODA関係者や一般の海外渡航者への公開を進め、健康相談にも積極的に応じた。国内の住血吸虫症免疫診断についてのレファレンス業務を積極的に行なった。住血吸虫症の簡易免疫診断法は今後キット化を進めて輸入寄生虫症監視に活用する方向で事業を継続している。 37 18 126 0   http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/mzool.dir/index-1.html
新型の薬剤耐性菌のレファレンス並びに耐性機構の解析及び迅速・簡便検出法に関する研究 平成12−14年度 79,180 群馬大学 医学部 微生物学教室 池 康嘉 (1) 日本の研究者が報告し、世界的に問題となったバンコマイシン(VCM)低感受性及びVCMへテロ耐性MRSAは、278病院の6,625株の調査研究で、当該菌は存在しないことを米国の専門誌に報告し、国内外から大きな反響があった。(2) 治療不可能なメタロ-β-ラクタマーゼ生産菌のディスク拡散法による迅速検出方法を実用化し、米国の専門誌に報告した。(3) VCM耐性腸球菌(VRE)から、世界で初めて高頻度接合伝達性プラスミドを発見し、その検出方法を米国の専門誌に報告した。(4) 輸入鶏肉からVREが高頻度に分離されることをLancet誌に報告し、さらに輸入鶏肉を介し、それが人に伝播することを米国専門誌に発表した。 (1) この問題で、世界的に検査・治療において混乱した医療現場に、正確な科学的情報と対処策を提供した。(2) 臨床検査で最も要求度の高かった、この菌の迅速検出法を実用化し、医療現場に提供した。(3) この報告は、食品を介して薬剤耐性菌がグローバルに伝播する最初の報告となり、以後、食品の安全性を向上させるため、厚生労働行政の立場から、毎年定期的に調査検査が行われ、輸出国に対しての防御対策指導を行っている。(4) 厚生労働省事業のVRE防御対策、および基礎的情報収集のための全国調査に貢献した。 日本はVREが広まっていない非常に稀な国で、その防御対策が可能である。そのための本研究班の研究、及び厚生労働行政の調査研究結果は常にマスコミで全国的に報道され、その社会的インパクトは大きいく、それが結果的に日本のVRE防御に役立っている。 78 12 100 2 4 なし
薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究 平成12-14年度 91,424 国立感染症研究所 細菌第二部 荒川宜親 ア 国内の医療施設におけるMRSAやVRE、耐性緑膿菌、ESBL産生肺炎桿菌などの分離状況やそれらによる感染症の発生状況を把握するためのナショナルネットワークの構築を目指し、厚生労働省の「院内感染対策サーベイランス事業」の運営に専門的な視点から助言、支援を行った。その結果、検査部門サーベイランス、ICU部門サーベイランス、全入院患者部門サーベイランスの3部門のサーベイランスの運営とともに新たに新生児集中治療(NICU)部門、手術部位感染症(SSI)部門の2つのサーベイランスの開始に貢献する事ができた。イ データベースに蓄積されたデータを活用して、医療施設内で発生する感染症を減少させる為に必要な諸因子の解析が研究班で進められており、その成果は、エビデンスに基づいた病院感染症対策を推進させる為、感染症関連の国際専門雑誌に順次発表される予定である。 「院内感染対策サーベイランス事業」に参加協力した、国内の医療施設における各種耐性菌の出現状況や感染症の発生状況に関する平均的なデータが確保され、その成果は、参加施設のみならず一般の医療施設に対しホームページを通じて公開され、各々の医療施設内で発生する病院感染症への対策対応を立てる際のベンチマークとして活用されている。 また、「院内感染対策サーベイランス事業」に参加協力している施設では、各部門とも耐性菌の分離率や病院感染症の発生率に減少傾向が見られており、サーベイランスを実施する事で、耐性菌等による感染症を実際に減少させる事が可能であるという海外の経験や報告が我国でもあてはまる事が立証されつつある。 海外では医療施設に蔓延しつつあるVREやESBL産生菌は、国内では未だ希な耐性菌である事が事実として確認された。この結果は、VRE等の希少な耐性菌については、我国では今後もその拡散や増加が起きないよう十分な監視や対策を講じる価値がある事を示している。また、米国で昨年出現し、国際的に大きな話題となったバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)に相当する株は国内では未だ出現していない事が確認されている。しかし、我国で多く使われる傾向があるカルバペネムやフルオロキノロンなどに耐性を獲得した緑膿菌などが分離菌の2割程度を占める状況となっており、今後それらを増加させないための行政的介入が必要である。   12(総説など) 11 0 2:国内の医療施設でセラチアやVREによる病院感染症が発生した際に、基礎データとして利用され対策等に活用された。 http://idsc.nih.go.jp/test/JANIS-test.htmlhttp://202.255.237.164/janis/(近々変更予定)
院内感染の発症リスクの評価及び効果的な対策システムの開発等に関する研究 平成12-14年度 78,000 国立国際医療センター研究所 倉辻忠俊 ア 院内感染防止のための従来の習慣的方法を国際学術雑誌の既発表論文のメタアナリシスおよび基礎研究により、方法一つ一つに学術的ランクつけをし、その成果に基づき、現場で実施できる院内感染防止手順書を作成した。 成果を書籍(第1-3集)に公表し、また「院内感染防止手順書」は厚生労働省医薬局安全対策課、健康局結核感染症課と協議し、監修の形で発刊と共に、厚生労働省のHPに公表、全国の国立病院はじめ諸病院の標準とする。10年前に厚生省の編集協力した「院内感染対策マニュアル」「MRSA」等の大幅な改定となる。 我が国の院内感染防止に貢献し、安全な医療の提供を行えるようになる。また、医療費の無駄を減少させる。 22 1   なし 1  
輸入動物が媒介する動物由来感染症の実態把握及び防御対策に関する研究 平成12-14年度 72,000 東京大学大学院農学生命科学研究科 吉川泰弘 エボラウイルスレストン株の全塩基配列を決定し、またクリミアコンゴ出血熱ウイルスの新疆地区流行株の遺伝子解析を行った。遺伝子解析をもとに遺伝子組換え抗原、モノクローナル抗体を作成し、これらの1類感染症の鑑別診断を可能にした。またラッサウイルス、LCMウイルス、サル類Bウイルス等の遺伝子解析と診断系を作成したことは、学術的価値と共に輸入感染症の制御に重要な役割を果たした。 輸入動物の実態調査を通じてその危険性を指摘し、財務省の税関貿易統計に詳細な動物分類を行わせることになった。げっ歯類のリスク分析からプレーリードッグの輸入禁止措置の必要性を指摘し、翼種目の危険性等を調査し、感染症法の見直しの科学的根拠を与えた。輸入動物の国内流通経路の調査を進め、危機管理対応措置を検討している。港湾労働者、腎透析患者のHFRS抗体保有状況と汚染げっ歯類の関連を疫学調査し、危害の可能性を指摘した。 本研究班の成果は新聞、TVで特集され、輸入動物の危険性が国民に認知されつつある。また「サル類の疾病と病理に関する研究会」「ヒトと動物の共通感染症研究会」「爬虫類・両生類の病理研究会」を立ち上げた。 51 26 110 3 2 http://www.hdkkk.net/mokuji.html ヒトと動物の共通感染症研究会http://www.spdp.net/ サル類の疾病と病理に関する研究会
輸入真菌症等真菌症の診断・治療法の開発と発生動向調査に関する研究 平成12-14年度 69,700 国立感染症研究所 生物活性物質部 上原至雅 輸入真菌症および主要な深在性真菌症(カンジダ、アスペルギルス、クリプトコックスなど)の発生動向調査を全国約500の大規模医療施設にアンケートを実施して行った結果、これら疾患の発生が近年増加している事や、診断・治療の困難さが明らかになった。耐性菌が出現しているため、薬剤排出ポンプを発現させた高度耐性パン酵母株を用いて、これらポンプの機能解析と阻害剤の探索を行ない、アゾール剤併用で耐性真菌の増殖阻害活性を示すものを見出した。 アンケートの結果から、コクシジオイデス症が感染症法の中で全数把握の四類感染症に分類されている事を知らない医師が半数を超えることが分かったので、これに対して行政が周知の施策を講ずる必要性が判明した。致命率が高いヒストプラズマ症は人獣共通感染症であり、海外との交流が盛んになるにつれ今後とも症例が増加する恐れがあるだけでなく日本土着の可能性もあるため、新たなサーベイランスを行なう必要があり、本症を四類感染症に加えることを提言した。 コクシジオイデス症に全例届出義務があることや、輸入真菌症の症例については、アンケートの設問自体が医療関係者の啓蒙に役立った。診断・治療法などに対する不安を訴える声が医療現場に多かったため、“輸入真菌症診断ハンドブック”を作成した所、医師・検査技師等から有用との評価を得、入手希望者が大変多かった。移植、抗癌化学療法等の高度医療では本症の感染が生命予後を大きく左右するので、これらを克服する事で医療経済的にも大きな効果が期待される。 52 32 74 なし なし http://www.pfdb.net/
他1件準備中
重症エンテロウイルス脳炎の疫学的及びウイルス学的研究並びに臨床的対策に関する研究 平成12-14年度 75,200 国立感染症研究所 岩崎琢也 1. アンケート調査によりエンテロウイルス71 (EV71)による手足口病流行時には重症例が本邦に多数存在する(平成12年446例、平成13年133例)。2. ヘルパンギーナにも重症例が合併する(平成12年277例、平成13年264例)。3. EV71のサル実験感染モデルを開発した。4. RT-PCRによる臨床検体の迅速診断系を確立した。5. EV71の感染性クローンを樹立した。6. 抗EV71薬を開発した。 1. EV71による手足口病流行時のアンケート調査の結果は、実数の把握のみならず、現在予防方法が確立していない本例の流行に対する対策上重要な情報である。2. カニクイザルのEV71感染モデルはこのウイルスの発症病理を解明するだけでなく、将来必要とされる抗ウイルス剤の効果、ワクチンの予防効果ならびに安全性試験(神経病原性判定)において重要である。 現在二次解析に入っている全国3000余の小児医療機関のアンケート調査により、日本国内においてEV71等のエンテロウイルス感染が原因となっている多数の重症例をより正確に把握することができる。 この結果が、次回のEV71流行時の重症例予防ならびに治療体制を含めた対策の基盤となることを期待する。 23 24        
新興する細菌性腸管感染症の診断・治療法の開発と発生動向調査に関する研究 平成12-14年度 74,000 国立国際医療センター研究所 臨床薬理研究部 名取泰博 腸管出血性大腸菌感染症に対する新規治療法として、静脈内投与あるいは経口投与でも有効な新しい毒素中和剤による系を創出した。これは菌が感染した後でも早期に同薬剤を投与することにより、重大な合併症を防止する可能性を示していると考えれられ、この系が腸管出血性大腸菌感染症の有効な対応策となることが期待される。本成果は日米医学協力会議にて口頭発表、及びアメリカ科学アカデミー紀要に掲載され、国内外から大きな反響があった。 現在、いわゆる病原性大腸菌O157の感染に対しては、早期の抗生剤による治療法しかなく、合併症の予防に関する効果は確立していない。本研究成果に基づいて合併症予防の新たな治療法が開発されたならば、国民の抱く同菌感染症への脅威の軽減に有用と考えられ、厚生労働行政への貢献になると考える。 本研究の成果は、コレラや、我が国の旅行者下痢症の主要原因菌である毒素原性大腸菌など他の細菌性腸管感染症ばかりでなく、ウィルス感染症への応用の可能性も考えられ、その発展性は広いと思われる。 36 6 19 1(予定) 0  
食品由来のウイルス性感染症の検出・予防に関する研究 平成12-14年度 73,200 国立感染症研究所ウイルス第二部 武田直和 現在データベース上で得られるノーウォークウイルス全塩基配列の、半数以上(10個)を解読し、遺伝学的多様性を証明した。得られた配列に基づいて、RT-PCRやReal-time PCRでの迅速遺伝子検出が可能になった。また、血清学的に異なる20種類以上の組み換え中空粒子を発現し、抗体検出ELISA、抗原検出ELISAを開発した。成果はVorology等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。 成果をもとに下痢症ウイルス診断マニュアル第3版が作成され、全国に普及している。平成13年11月にだされた、厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課長の通知に反映された。 簡便にノーウォークウイルスを検出できるELISAの開発が、わが国当該分野をリードする形に発展している。 52 0 93 0 ? http://mhlw.go.jp/
劇症型レンサ球菌感染症の病態解明及び治療法の確立に関する研究 平成12−14年度 67,500 大阪大学大学院歯学研究科 浜田茂幸 ア.本研究班の調査の結果、本症の発症例は年間数十に及び、死亡率も50%と依然として高い。分離株の分子疫学研究によれば、ビルレンスと関連する性状はファージと介して伝達される。病態モデルとして、マウスにインフルエンザウイルスとA群レンサ球菌を連続感染させると、致死的な劇症型感染が再現され、有力なツールとなることが示された。イ.得られた研究成果の多くは国際的にレベルの高いとされる雑誌に掲載され、国内外から広く認められている。 全国の主要病院に対する本症に関する調査結果は本症が一旦発生すれば、死亡率が極めて高いことから、時間単位での早期診断法の開発が重要であることを示唆している。また、本研究は主としてA群レンサ球菌による劇症型感染の発症機序の解明を多方面からのアプローチにより試みてきたものであるが、その中から将来の治療薬に結びつくプロテアーゼ阻害剤や抗ヒスタミン剤/抗アレルギー剤の治療薬としての有効性・可能性やワクチン開発の手掛かりになる所見が見出された。 劇症型レンサ球菌の特定地域や病院等での発生のさい、マスコミ報道等の科学的な拠り所として本研究班の構成研究者が実態に則した情報提供者として重要な役割を果たしており、結果的に一般国民に対し徒にセンセーショナルになることなく適切な報道がなされている。 33 3 73 0 0 http://webabst.niph.go.jp/pdf/2000/200005210002.pdf
(但し、厚生労働省データベース平成12年度版)
髄膜炎菌性髄膜炎の発生動向調査及び検出方法の研究 平成12〜14年度 46,200 神奈川県衛生研究所 山井志朗(平成12〜13年度)、益川邦彦(平成14年度) 健康保菌者の実態を明らかにした。国際的に広く使用されている疫学マーカーの解析法をわが国で初めて導入して分離菌株を解析したところ、流行株やわが国特有のタイプが存在することを明らかにした。患者の病態の分布を明らかにし、感染症法の基準の見直しの必要性を見出した。 髄膜炎菌保有者の実態を明らかにし、当該感染症対策に必要な基礎的情報を提供した。諸外国で活用されているワクチンを現状では直ちに導入しなければならない状況にはないが、流行株の存在も見出され、保有状況や薬剤感受性、流行の発生等について継続的な監視が必要であることを明らかにした。感染症法の基準の見直しを提言している。 国際的に共通した疫学マーカーの解析法を導入したことで、海外と同じレベルの解析が可能となった。今後、継続的に監視が進められるように技術を定着させている。また、全国レベルで髄膜炎菌の検査法の研修を開催し、地方衛生研究所において検査技術が定着されている。 2 2 0 なし    
回帰熱、レプトスピラ等の希少輸入細菌感染症の実態調査及び迅速診断法の確立に関する研究 平成12−14年度 60,300 静岡県立大学 増澤俊幸 レプトスピラ感染症に関して、これまで知られていた血清型以外の病原体が全国的に侵淫していることを初めて明らかにした。また血清型非特異的な感染防御抗原の単離に成功した。この抗原は組換体ワクチン、診断抗原として応用が期待でき、国際的にも注目されている。ボレリア感染症に関して、ライム病関連ボレリアが南西諸島に広く存在することを明らかにし、かつ保菌動物の一部を明らかにした。またワクチン開発などに応用できる遺伝子操作技術開発にも成功した。 野生動物由来人獣共通感染症サーベーランスシステム確立を最終目的として、主に齧歯類野鼠を対象とした調査活動を全国規模で行うとともに、平行して病原体検査システムの技術面での検証作業も行った。これは健発第0415001号「動物由来感染症予防対策整備事業」を側面からサポートするものである。さらに、国内感染例、輸入例についても精力的に情報収集し、レプトスピラ病については本研究成果が新感染症法改定作業のための基礎資料として活用される予定である。また、直接の関係はないが、健感発第0808001号「米国のプレーリードッグ(齧歯類)輸出施設における野兎病の発生について」においても本研究班分担研究者が結核感染症課と協力して対応したことを申し添える。 飼いハムスターからレプトスピラが感染したとする、一部医療関係者の学会発表がセンセーショナルに取り上げられたが、これに対応して、検査方法と結果の検証作業を行い、感染症研究所のホームページを通じて、情報提供を行った。一方でハムスターと称される小動物のすべてが病原性レプトスピラ感染に対して感受性があるわけではないこともprimaryながら見出している。今後は感染経路特定のための基礎的資料作成作業も予定している。 12 33 69 0 2  
ハンセン病感染の実態把握及びその予防(後遺症の予防を含む)・診断・治療に関する研究 平成12−14年度 120,000 国立感染症研究所ハンセン病研究センター 松岡正典 わが国におけるハンセン病の新患発生、再燃例及びそれらの薬剤耐性菌の伝播の実態を把握した。特に再燃例では多剤耐性菌が多く分布することを明らかにした。多剤併用療法による治療指針を策定した。らい菌の型別法を確立し、ハンセン病感染の経路解明に応用した結果、患者との接触以外の感染様式の存在が示され、ハンセン病感染防止策の策定に新たな視点を示した。 ハンセン病患者の3人に1人は再発を経験していることが明らかとなり今後もその防止に注意しなければならないことが示された。薬剤感受性検査システムの確立が必要である。国内の新患症例はほぼ半数を在日外国人が占め、本国のハンセン病有病率と関連しており、医療関係者ならびにハイリスクグループに対し、ハンセン病診療の情報を提供することが必要である。 世界的な新患発生数は過去20年近く変化がなく、患者が感染源とするこれまでの感染源、感染経路に関する概念の見直しとそれに基づく感染防止策の構築が望まれる。 32 23 102   3  
節足動物媒介性ウイルスに対する診断法の確立、疫学およびワクチン開発に関する研究 平成12-14年 70,600 国立感染症研究所 ウイルス第一部 倉根一郎 1) デング熱、ウエストナイル熱、チクングニア、クリミア・コンゴ出血熱の血清、病原体、遺伝子検査法を確立し、患者検体を用いて有用性を確認した。2)チクングニアウイルスの全塩基配列を始めて明らかにした。また、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスの塩基配列の解析から本ウイルスの分子疫学を明らかにした。3)日本脳炎、デング熱をモデルとして新型ワクチンであるDNAワクチンの防御免疫誘導能を明らかにした。4)以上の結果はVirology, VaccineやJ. Clin. Microbiology等の雑誌に発表され高い評価を得ている。 1)デング熱、ウエストナイル熱等に対する検査法は全国の地方衛生研究所等に技術移転され、デング熱、ウエストナイル熱対策の策定に貢献している。2)わが国にウエストナイルウイルスが進入した場合を想定したウエストナイルウイルス媒介蚊対策に関するガイドラインを作成した。このガイドラインは全国の地方衛生研究所等に配布され、今後ウエストナイル熱対策の重要な資料となる。 1)検疫所との共同研究によりデング熱、ウエストナイル熱疑い患者検体の検査を実施している。この研究は日本へのデングウイルス、ウエストナイルウイルスの進入を阻止する対策として社会的インパクトを有する。2)本研究班のDNAワクチン研究は、新型ワクチンとして安価でより安全なワクチンとして今後の実用化にむけて本分野の研究をリードしている。 28 7 70 1)「日本脳炎ウイルス遺伝子をコードするcDNAを含む発現ベクターおよびそれを用いたワクチン」発明者:小西英二、倉根一郎 国内特許出願中2)「日本脳炎ワクチンによる西ナイルウイルスの感染に対する交叉防御」発明者:只野昌之ほか、国内特許出願中、特願2002-1179803)「不活化日本脳炎ウイルスおよびウイルス由来の組換えタンパク質の経粘膜投与法による全身性免疫応答(systemic immune response)の誘導ならびに感染防御効果」発明者:只野昌之ほか、国内特許出願中、特願2001-3168594)「DNAワクチンの中和抗体誘導能を増強するタンパク・DNA同時投与法」発明者:小西英二(2003年、特許出願予定) 1(本研究の成果は平成14年、感染症法ウエストナイル熱を4類感染症に指定する施策に反映された。) http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/NVL.html#A
  ※施策への反映状況・件数は、幅広く記述する。


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