03/02/26 第18回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録     第18回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 1 日時  平成15年2月26日(水)10:00〜12:00 2 場所  厚生労働省専用第17会議室 3 出席者 [委員] 奥平委員、勝委員、小山委員、齋藤委員、桜井委員、            佐藤委員、讃井委員、他姓員、辻村委員、都村委員、            中山委員、野澤委員、長谷川委員、堀越委員       [事務局]奥田勤労者生活部長、蒲原勤労者生活課長 4 議題  1 建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の運営改善の方向について  2 建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の財政状況の今後の見通しについ   て 5 議事内容 ○齋藤部会長  ただいまから、第18回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始 めます。今日は山路委員がご欠席というご連絡をいただいております。今日の議題はお 手元にお配りしているとおりです。最初は「共済制度の運営改善の方向について」とい う資料を基にして議論をしたいと思います。それでは、ご説明をお願いします。 ○蒲原勤労者生活課長  お手元に資料1〜7まで配られているかと思います。最初に資料1の「運営の改善の 方向について」及び資料2は前回資料要求のありました、「建退共の実態の状況」です が、この2つの資料を説明いたします。  最初に資料1の「建退共及び林退共の運営改善の方向」ということですが、前回の議 論でも出ましたように、運用利回りを議論するに当たって、そもそも運営改善をきちん とやるべきという議論が随分出ました。その中で我々が今やっていること、あるいはこ れからやれることを2枚紙に整理をしたものです。  建退共ですが、大きく分けて改善方策の実施のパーツと加入促進と2つに分けており ます。前回説明しましたように、平成11年の3月に建退共制度運営の改善方策に基づい て今まで改善方策に取組んできました。我が省といたしましては関係の省庁あるいは団 体とも協力を求めながら、さらに改善方策を着実に実施していきたいと思っておりま す。  「別添」で改善方策の10項目の資料を付けております。(2)に「建退共事務処理手引 きの作成及び配付」とありますが、これは新規加入のときに100%やっていますが、こ れから新しく入る事業主の方々に対してきちんと配っていきたいと思います。(3)で 「目安」と書いてありますが、実はこの項目の中で先般議論に出ました、事業を発注す るときに、掛金収納状況についてチェックするために、掛金収納書を自治体を中心に取 ってもらうことになっております。これについては、都道府県では100%実施しており ますが、市町村レベルではまだ半分という状況もありまして、そうしたところもこれか ら割合をより高めていきたいと思います。  (5)に「元請事業主による積極的事務受託の推進」とあります。下請の小さな所にな りますと、建退共の事務を個々で個別にやっていくことがなかなか難しい状況ですの で、むしろ元請事業者が下請事業者から事務受託を受けてやるということです。そのた めの事務受託要綱も作っておりまして、この普及に努めていきたいと思います。  (1)の3つ目の○の所ですが、後ほど説明しますが、建退共の実態については、平 成10年に調査をいたしまして、その後実態が十分把握されていないという状況です。こ の点については、この委員会でも何度がご指摘がありましたが、それについて今回実態 調査をきちんと実施していこうということを書いております。それを見まして、改善方 策がより効果的に進むように、あるいは必要があればきちんと改善策を見直すといった こともやっていきたいと思います。  大きな2つ目の柱は、加入促進対策です。先般話が出ましたが、公共事業の受注の際 に必要な経営事項審査というのがありますが、それにおける建退共に入っているという 加点の状況を見ますと、経営審査を受けているのが大体20万業者ぐらいいて、6割ぐら いしか加点されていないという状況になっております。建設業界全体の業者の数からし ますと、まだまだ加入率は低い状況です。したがって、関係省庁、関係団体等の協力も 得ながら、加入促進に努めてまいりたいと思います。  1つは未加入事業主に対する集中的な加入促進ということです。抽象的に言っても しょうがないので少し触れてみますと、先ほど言った経営事項審査を行うときに、国な り都道府県ではどこの建設業者が加点の対象になっているのか、すなわち非加入だとい う情報がありますが、そういう情報を建退共でもきちんと取って、その上で未加入事業 者に対する加入促進をする、あるいは許可業者のリストをきちんと建退共本部で入手を して、その上で未加入事業者に対して加入促進をするということを積極的にやっていき たいと思います。  2つ目は、民間工事実施事業者の加入がなかなか進んでいないという実態がありま す。それについては、法律上、雇用管理責任者を民間工事、公共工事を問わず置くこと になっておりますので、責任者の設置をさらに促進するとともに、雇用管理責任者の研 修の場において加入促進を行い、それが民間工事の際の建退共管理につながるようにし ていきたいと考えております。  その他、共済契約者の方々が着実な証紙の貼付を受けて、適切に退職金が受給できる ようにいくつかのことをやっていきたい。これもこれまで申し上げたことをもう一度整 理しています。  1つは機構と各都道府県にある業務の委託先のオンライン化をする。これによりまし て、被共済者が重複加入をしていることをチェックして、結果的にはより退職金の受給 につながっていくことになります。事業主が建退共事業に入ったあとでも、証紙をあま り買っていないという場合に、機構が事業主への点検を行っていますが、この点検対象 につき、ある一定の証紙の購入高以下としていたものを撤廃して幅広く点検をしていき たいと考えております。  今度は労働者側ですが、労働者は手帳を持っていますが、一旦手帳を発行しながら一 定期間、次の手帳の更新申請がない方々に対して、機構が調査をしています。これも5 年間更新申請がない者を対象にしていましたが、それを少し広げまして、3年間更新の 申請がない者を対象にして広げていきたいと考えております。これは平成14年度から行 っている施策です。以上が建退の関係です。  次に林退の関係です。(1)ですが、これも先般来申しておりますが、現在「緑の雇用」 ということで、従来の林業とは違う形で新規の林業就業者が入ってくることが見込まれ ております。このための予算も今年度の補正予算で、林野庁で約100億取っております し、来年度の施策でも約100億、これは通常予算の中ですが、地方財政措置で出ている 状況です。この事業をこれから実施するときには、林退共への加入事業体を対象とする ことを義務づけることについて、林野庁にもお願いしております。そうすることによっ て、「緑の雇用」経由で新しく入ってくる人が確実に林退共の加入者になるようにして いきたいと思います。  2番目に未加入事業主リストを作っての加入促進です。3番目は、林退の場合には都 道府県に林業の担い手を育成するための基金がありまして、ここを通じていろいろな助 成がありますが、この充実を働きかけたいと思っております。4番目ですが、先ほど建 退共のところで言ったように、地方公共団体が掛金収納書の提出を求めて、制度への加 入を促進する、あるいは制度への掛金の貼付を確実なものにするというシステムがあり ますが、林業は今までそういうことをあまりやっていないので、そこは建設業と並んだ 形で掛金収納書の提出を求めることについてもお願いしていきたいと考えております。 以上が建退、林退についての運営改善の方向です。  次に資料2ですが、「建退共制度に関する実態調査結果(平成10年実施)」とありま す。この実態調査のあと、先ほど言った平成11年3月の改善方策ができておりますの で、その改善方策の前の段階ということで、古いものだということを前提にお聞きいた だきたいと思います。対象は大きく4つの方を対象にしています。1つは下請事業者に 係る調査で、この中には建退共に加入されている方と非加入の方がおります。ここは分 類では「A調査」のAの1、Aの2と書いてあります。さらにB、C調査の所は元請業 者に対する調査、Dが発注者の調査で、以下大きく4つのパートになっています。  最初に下請の加入事業者に対する調査の結果です。ポイントだけ簡単に説明します と、元請の指導行政に基づいて加入した企業が半数ということで、やはり元請からの加 入要請がかなり影響力を持っております。「建退共の加入動機」については、7割近く が労働者の福祉対策のためということです。その下の「証紙の入手方法」ですが、これ は公共工事と民間工事を分けておりますが、元請に請求して無償で交付を受けている企 業は、公共事業のほうが多く出ていて、民間事業は低くなっている状況です。  (3)の「手帳の保管主体」の所ですが、雇用労働者分を自社で預かっている所が9 割、一方で下請の現場労働者の分も自社で預かっている所が、この時点では半分ぐらい です。(4)「証紙の受け払い状況」ですが、平成11年3月の改善方策の前ではありま すが、受け払い簿により管理している所が6割相当です。  次に、「建退共関係業務の事務負担が大きい」という声がありますが、いくつかの業 務について負担の程度を聞いているものです。それによると、証紙の購入の負担感が非 常に高いということです。他の所もそれなりに負担があるという状況です。証紙が余っ ているのではないかという指摘がよくされますが、この時点では6割が、証紙に過不足 がないという回答をしております。一方で、約1割の所が余るケースがあるということ です。余る場合には、購入のときに必要分より多く購入するケースがあることが、原因 として挙げられております。一方で足りないケースについては、必要な分を買い足すと いう対応がとられております。  次に下請のうち建退共非加入事業者に係る調査です。これを見ると元請事業主からの 加入指導を受けていない所が6割に上がっています。加入事業者に係る加入動機をみる と、「元請からの加入指導」というのが1つ大きなポイントになって現れております。  次は元請企業に対する調査です。最初に元請企業が下請労働者を証紙の交付対象にし ているかどうかということですが、平成10年の時点では「証紙の交付対象としている」 よりも「証紙の交付対象にしていない」という企業の割合の方が多くなっております。  「元請から下請に対する証紙交付の実態」ですが、これを見ると、2次以下の下請業 者を含んでいるというのがある一方で、右にある約半分が1次下請業者に任せていると いうことです。つまり元請業者は1次下請を把握していると思いますが、2次下請以下 の所まで把握するまでには至っていないということです。  「共済手帳の保管主体」ですが、右の下請労働者分を見ますと、基本的には半分が下 請業者の問題なので、そこは下請として任せているということです。元請業者における 証紙の受け払い状況の管理は、7割弱が受け払い簿に管理している状況です。  「建退共関連業務の負担」ですが、自社の雇用労働者分及び下請業者分を通じて、2 割から3割が負担感を持っているという状況です。次の頁は、「元請業者の段階におけ る証紙の過不足」についてです。ここでも過不足があまりない所が6割ぐらいです。一 方で2割程度が余っているという状況です。  「下請業者の建退共制度への加入の把握」ですが、下の約3分の1が「下請からの証 紙の請求があって初めて把握する」ということです。一方で、「ほとんどの下請につい て工事参加段階までに」というのが14%に止まっております。本当ならば工事が始まる ときにきちんと把握しておく方がいいのではないかと思いますが、請求があって初めて わかったところがいちばん多い状況です。  最後に「発注機関への調査」の所です。工事発注のときの建退共加入の有無の確認で すが、平成10年の段階では加入を確認する割合は15%ぐらいということで、必ずしも高 くない状況です。一方で「発注側から受注業者に対して建退共の加入を指導しているか 」については、約3割が必ず加入指導を行っているということです。  以上が平成10年の調査結果ですが、先ほどの資料との関係で見ますと、あくまでこれ は平成10年の段階なので、我々としてはその後の状況をきちんと把握すべく調査をして いきたいと考えております。以上です。 ○齋藤部会長  どうもありがとうございました。ただいまの説明についてご意見、ご質問がありまし たら、どうぞ。 ○都村委員  調査について3点ほど伺います。第1点は今後調査されるとしたら、被共済者を対象 として調査をしてほしいということが第1点です。ここでは専門工事業者、元請企業、 発注者の調査をしていますが、被共済者の調査をしてほしいと思います。  もう1つは、ここから見えてくる部分もありますが、制度を改善する点から、どうい う要望があるかを調査項目に加えていただいて、それぞれ負担になっている、重いとこ ろもあります。では、どのようにすればもう少しスムーズに使いやすくなるかという要 望を聞いてほしいと思います。これが2点目です。  3点目は、9頁の受注業者への加入指導で、いちばん多いのは「事情があれば建退共 に加入する必要はない」ということですが、「事情があれば」というのはどういう意味 ですか。それをお尋ねしたいと思います。 ○蒲原勤労者生活課長  1点目の被共済者の調査は、今回の調査の中にきちんと入れたいと思います。  2番目の業務の負担感の関係ですが、具体的にここを改善してほしいという要望項目 を、実は調査項目はまだ検討していないので確定までは言いませんが、ご趣旨はよくわ かりますので、調査項目に加えていくべきではないかと思っております。  3点目の受注者による加入指導ですが、加入業者によっては自社で退職金制度を持っ ている、あるいは適年、もっと言えば厚生年金基金を持っているとか、いくつか建退共 に相当する制度を持っている所があります。その他の企業年金制度等に加入していれ ば、建退共に加入する必要はないということです。 ○佐藤委員  この文書の性格の問題ですが、前回の終了間際に部会長が論点整理を行ったらどうか と発言なさいました。本来からすると、この間いろいろ議論してきたわけですが、そう いったものが整理された文書だと位置付けていいのか。それにしては大幅に書き足りな いと思います。いろいろな議論もしてきましたし、運用利回りの問題について議論すべ きだという使用者側委員の意見についても、それはそれとしてきちんと踏まえているつ もりです。  これだけ議論を重ねてきて、まだ足りない部分がたくさん残っていると思いますが、 今日の段階で出たこの文書の性格について、分かりにくいので説明してください。 ○蒲原勤労者生活課長  論点整理というよりも、制度運営の改善方策で、具体的にできることをお出ししまし た。先般いろいろな議論をされていますが、運用利回りだけで終わることについては、 いろいろなご意見がありましたので、私どもとしては最終的に労働者の方々がこの制度 による退職金の支払を受けて、ある意味できちんとセーフティネットの役割を果たすた めには、運用利回りはそれはそれで大事だと思いますが、併せて改善すべきところは改 善をして、結果的に、労働者の方々がきちんと給付を受けられるようにすることが必要 であると考えています。  そういう全体の構図の中で、現時点で運用改善についてやれること、あるいは実態を 把握しないとできないところがあるものですから、そこは、実態調査を踏まえて変える べきところは変えていきたいと、こういう趣旨のペーパーで盛り込んでおります。そう いう意味で言うと、論点整理というよりも、現時点で我々としてやっていきたいことを 説明しています。もし佐藤委員から入れてほしいことがありましたら、是非これは議論 をしていきたいと思います。ただ、その中で現時点でできるものと、実態を把握しなけ ればいけないものと、いろいろ仕分けは必要ではないかと考えております。 ○野澤委員  このような調査を含めて業界を代表する桜井委員としては、厚労省ではああだ、こう だとおっしゃっておられますが、肝心の業界の労使で言えば、使側の見解、それを受け てどうしていこうというお考えなのかということを表明いただければと思いますが、い かがでしょうか。 ○桜井委員  建退共の中にもそれぞれ委員会を持っておられます。例えば印紙の購入代金の問題、 財政問題については、財務問題検討委員会もありますし、運営に関するものは運営委員 会があります。その中で、今日課長から説明のあった改善方策については、建退共も了 解した上で取り組んでいると我々は承知していますので、審議会の場で皆さん方にもご 理解をいただきたいということで、今日出していただきました。 ○都村委員  先ほど佐藤委員が言われたことですが、何回か部会が開かれて、いろいろな議論が出 てきていますね。それで、改善できそうなところは資料にまとめられておりますが、労 働側も使用者側もいろいろな問題があると思いますが、この制度の課題について書い て、その中で改善しやすいものもあるし、ここでは決められないとか、これは検討中で あるとか、この部分についてはこういう情勢だから難しいとか、もう少し整備の部分が 前に付けば、労働側の方も論点整理みたいになるので、これはこれで改善されれば状況 がよくなる部分があるのでいいと思いますが、その前に、課題としてこの会で議論が出 たことを列挙して書いてはどうかと、いまお聞きして思いました。 ○蒲原勤労者生活課長  基本的に課題のところは、平成11年3月に改善方策をまとめたときにいろいろな課題 があるということで、それに対して先ほどの「別添」にある10項目を行うことになって いますが、我々のいまの認識は改善方策の中身で、一部の不十分なところと加入促進対 策ですね。大きく言えばこの2つではないかと思います。佐藤委員なり労働側から何か あれば、それを書き加えることはできます。大きな括りとしては、改善方策と加入促進 なのかと認識して、このペーパーを作りました。 ○佐藤委員  また蒸し返しの議論をすると皆さんは反発なさるかもわかりませんが、建退の場合、 4.5%で予定運用利回りをやっていて、とてもそれでは立ち行かないということが何度 も説明されていますが、私はそういう実態を十分承知しながらも、今日建設業の置かれ ている状況、桜井委員の業界も非常に大変だということもよく知っています。その中で 働いている労働者は非常に大変な状況です。  いま建退共の持っている役割というのは、例えば建設業においては雇用保険の役割と いうのは非常に少ないのです。失業給付という問題に関して言うと、これは期間を定め て入るもの、あるいは日々雇用されるものということになれば、雇用保険に入ることは できるかもしれませんが、実態調査をすると、そういう状況になっていないわけです。 それが建退共という1つの制度の中で、社外で積み立てられていて、その業界から去る ときに一定の金額を受け取ることができるわけです。よりそれが今回の運用利回りの見 直しによって悪くなるのではないか。それについて考えた場合、建設業がだんだんと縮 小していく、その業界からだんだんと労働者がどこかへ行かなければいけない、なかな か行く所もないという状況の中で、建設業の退職金共済制度そのものが300円の掛金の ままでいいのかどうかも含めて、議論をしてほしいと私は言っているわけです。  それについてはあまり書かれていない、改善方策については。私は議論には参加して いませんが、再三相談に乗りました。これは現行制度の中で、そのときは4.5%が前提 です。その中で37年ぐらい払えばどれだけもらえるとかね、そういうこともはっきり出 ていた。ところが、今日こういう議論をしますと、大幅なダウンを来すことがわかりき っているにもかかわらず、改善方策に基づいてどのような努力をしたとかというところ で止まっている、それでは足りないのではないか。制度全体の問題については議論をし てほしい。ここはそのような場所ではないというご意見があるかもわかりませんが、そ れだったら政府の審議会の中でそれについて議論する場所、安定局関係ではあるのだと 思います。でも、本格的な議論がされたということを私は聞いていない。  前々回だと思いますが、安定局の委員会を通った「建設業の雇用改善5カ年計画」に ついて、建設業の労働条件の劣悪さを自ら認めて書いているわけです。その問題と建退 共のあり様の問題、林業もそうですが、併せて議論をしてほしいということをずっと言 ってきたのだから、少なくとも論点整理の中にはそういう記述がないと、いままで議論 したのは何だったのかと。今日の審議会で「そうですね」と言って認めるべき文書なの か、まさに資料として提起されたものなのか、それがはっきりしないということです。 ○齋藤部会長  これは当然今までの委員のご指摘などを踏まえて、制度の中ですぐできるものをまと めたと理解しています。この部会で今まで議論したことをどのようにまとめるかという こととは、ちょっと次元が違う話だと思いますし、この審議会で議論したことをどのよ うにまとめるかということは、次回以降に改めて議論をすることになると思います。 ○佐藤委員  部会長がそうおっしゃるのなら、わかりました。 ○齋藤部会長  認識としては、私はそのように認識しています。だから、いままでの議論の中の1つ の答えだというふうに思います。 ○佐藤委員  最初に言いましたように、前回の議論は田勢委員が締め括りでかなり強列におっしゃ ったことも含めて、論点整理すべきだと部会長がおっしゃったわけですから。だから、 事務局側もそれはそれなりの論点整理をしたものが出るのだと思って、出てくるのは当 然なのであって、それはそうではないと言うならば論点整理はまた先の話だと、そう受 け取っていいわけですね。 ○蒲原勤労者生活課長  論点整理ということですと、これまでの議論でいちばん広いところが、佐藤委員もお っしゃった建設業全体そのものがあって、その中に建退共の話があって、私の理解では 建退共の中で運営改善の部分、掛金の部分と運用利回りがあると整理できます。建設業 については、建退共を議論をする前提として意見が出ることは当然あると思います。た だ、なかなか建設業そのものについてここでやるというのは、なかなか厳しいのかな と。  一方でそれを前提としながら建退共の議論をしていくことが第1点です。建退共の中 で言うと、運営改善の部分、掛金の部分と運用利回りだと考えられます。たまたま今回 は運営改善の中で、いまできるものをこういう形で整理をしておりますので、そういっ た意味では全体の中の一部だと思います。もしこうしてほしい、ああしてほしいという ことがあれば、中に盛り込んでいきたいと思っております。一方で運用利回りについて は、あとでまたいろいろご議論をいただきたいと思います。  2番目の掛金について、掛金も入っていないとおっしゃいましたが、掛金は制度的に 退職金共済機構のほうで決めることになっておりますので、ここでの議論についてお伝 えして、関係方面にはきちんとお願いをしていきたいと思っております。役割分担の関 係で、掛金をこうしますと我々が言える立場にはなっていないので、いまは掛金はここ には入っていないという状況です。 ○堀越委員  いちばん最初の頁に改善方策が出ていますが、4、5年経っている中で実態調査を行 うと明言していますが、実態調査はどこでいつからやるのでしょうか。 ○蒲原勤労者生活課長  時期はこのペーパーをまとめる中で議論になりましたが、15年度の予算はほぼ出来上 がっている段階です。したがって、15年度でやれるかどうかなかなか難しいところもあ ります。15年度にできないときはその次ということになってくると思います。場所です が、平成10年のときには勤退機構でやっています。1つの案は勤退機構があると思いま すが、一方でこれから勤退機構も独立行政法人になるわけで、国と独立行政法人との役 割分担が、今までよりもはっきりしてきます。その中で、従来と同じように機構でやっ ていいのかということは、これは制度全般に関わることですので、主体のところは両方 睨みながら検討していきたいと思います。 ○堀越委員  実態はある程度教えていただきましたが、改善されたのか、されないのか。あるいは 悪くなっているのか、その辺をチェックするには早くやっていただいたほうが。総体的 にあまり大きくやらなくて、項目的に必要事項だけでも教えていただけるとありがたい と思います。 ○佐藤委員  この改善方策のことで少し申し上げますが、私が発言するといかにも野党的な発言を するように思われるから、少し弁明も含めて申し上げます。現在、証紙を貼るという旧 式なやり方でやっています。それを改善しようということで、カード化なりOCRの問 題をやっているわけです。私どもの組合では事務組合を持っておりまして、相当数の零 細な事業主も含まれている。一人親方の加入もこの制度で認められているもんだから、 全建総連厚生協会という組織を各県ごとにつくって、そこで証紙の貼付をやっている。  いまICカードの問題について協力をしてほしいということで、事務組合の調査もし ているという報告が既になされていますね。うちの組合でも何件か実際の協力を行って います。私はこの制度は非常に関心が強いから、根底的な議論をしてほしいと言ってい るのです。  それを申し上げたうえで言うと、現在の貼付方式から本格的にカード化を図るといっ た場合に、それに向かって試行しているのだと言っても、実際建退共の加入事業所数か ら見れば10何万とあるわけですが、そういう部分にみんな機械を設置して、労働者にカ ードを渡すことが現実的に可能なのかどうか。検討課題に挙げることは大いに結構だと 思いますが、そこに来ると曖昧なことをおっしゃって、それは誰が負担するのかと、建 設業協会の会員が負担するのか、あるいは機構が負担するのか、国が負担するのか明確 ではないわけです。  改善方策の一番の中心は、いかにして正確な貼付が行われるかということをここは言 っていたわけですよ。そのほかに掛金の問題、いくつかの問題点がある。だから、改善 方策の進捗状況をおっしゃったとしても、私は率直に言うとあまり進んでいないのでは ないかと思うのです。  それは課長をはじめ課の方、機構も業務改善に努力されていることはわかりますが、 いちばん肝心の貼付の押さえ方の問題について言うと、これは桜井委員も同感だと思い ますが、実態は進んでいないです。進めるべき方向すら言わないわけです。言うならそ の部分の現状を詳細に言わないといけない。課長はそういうことを言う責任があると思 います。そのことをお願いいたします。 ○桜井委員  10何年ICカードの検討はしてきています。いまトライアルでいろいろなことをやっ ておられますが、メリット、デメリットをこの段階で明らかにしないと、いつまでもベ タベタ貼っていくやり方はやむを得ないのかどうか。その辺がはっきりわからない。も っと合理的なものがあるのではないかということで、ICカードの話も出たわけです。 その辺を取り組みの中で課題として挙げる必要があるのではないかと思います。 ○蒲原勤労者生活課長  この改善方策の中で、明らかに1項目、納付方式を証紙以外の方式について検討の場 を設けるということがありますので、検討の項目には載っているし、それをやるという ことなので、検討するというスタンスを申し上げたいと思います。  両者がおっしゃっていることで、似ているところと違うところと受け止めましたが、 この問題は私の認識ではいくつかの切り口があって、1つは佐藤委員が最初におっしゃ った観点で、貼付をきちんとやっていく。適正貼付の手段としてどういう方法を取るの がいいのかという流れの中で見るということ。もう一つは事務処理のコストでかなり負 担感がかかっていて、そこを軽減するという点です。負担感といっても、それは大手の 企業だけができればいいのではなくて、中小までいかなければいけないので、中小まで 対応できるかどうかです。いくつかの観点で議論すべきものなのかと思っております。  先ほど佐藤委員がおっしゃったことを私が聞いた限りで理解すると、最初の適正貼付 という観点から見たときに、今は事前購入方式で証紙が回ってきていて、ある程度下請 業者も証紙を貼るという環境は整っている一方で、仮にカード方式にしたときに事前購 入しなくてカード方式で働いたものを情報提供したあとで落とすという事後納付方式に なったときに、例えば中小では労働者が働いたことが本当にきちんと把握されていくの かどうかということを、見極める必要があるのではないかと思います。大手が絡んでい る所はすぐに対応できるのかもしれませんが、中小の所までそういう方式ができるのか ということをよく考えなければいけないというのが1点です。  一方でコスト面について言えば、カードを大企業以外の中小まで全部入れることがで きるのか。こうした観点からよく検討する問題であると主張しております。 ○佐藤委員  それを言われると、意見を言わざるを得なくなってきます。検討委員会を設けられ て、うちの賃金対策部長はこの委員会に出ています。最近はほとんど開かれていない状 態ですね。私どもの主張は事前購入方式で、カード化も十分できると考えています。カ ード化したら、全部事後でなければいけないということはないので。いま皆さんにわか らないような議論を課長が口にされるということは、ちゃんと説明してもらわないと、 そういう説明では私としては納得できないですよ。 ○蒲原勤労者生活課長  わかるように説明をしているつもりです。説明の中身というのは、切り口としては2 つあるということをよくよく考えなければいけないのではないかと。確かに今の検討委 員会は5月か6月に開かれて、その後は開かれていませんが、ここはまさに実証モデル の段階に入って、具体的に行われているということで検討会が開かれていないと聞いて おりますので、実施状況を見て、また開かれる形になると思います。勤退機構での検討 は何らかの形で方向が出たときにでも、最終的には厚生労働省において、新たな制度を 実施することが、適正貼付及びコスト削減という両方の観点から適当かどうかというこ とは、最終的に我々が判断していきたいと思っています。 ○佐藤委員  こんなことにあまり拘りたくないですが、事前・事後であるかという議論になってく ると、これは議論の詳細をやらないと委員の皆さんに対して失礼な話になると。私が言 っているのは、ざっと考えても膨大な経費がかかるだろうと。みんな端末を置くという ことになれば、零細な事業所だって置かなければいけなくなるわけです。おまえの所買 えって。そんなの買うわけないですよ。そういうことについてどうするのか、これを管 轄している厚生労働省の担当官としての方針がないわけですよ。自分たちで持ちましょ うという方向で、そこまで言い切るなら話は変わってくるわけです。それも言わないで 検討しなさい、いま試行レベルですから、その結果が出てから判断しますと。そして、 あたかも事前であるか事後であるかが大問題のように課長が答弁する。関わっている人 間だから、分かっているからそういうことをたくさん申し上げますが、それはそれとし て言うなら、この場でちゃんと説明して資料を出してやってもらわないと、訳の分から ないことを佐藤が言ってるというふうになってしまうと思います。  改善方策が非常に大事であることは認めているし、私もある程度かかわったことを認 めている。そして、どのように改善していくかについて努力されていることもあるけ ど、いちばん肝心な分についてはあまり書かれていない。誰がコストを負担するのかと いう問題までいくわけです。今日はその問題はやらないというならやらないでいいです が、一体この文書は何だということになってきます。 ○奥田勤労者生活課長  そもそも今回の議論は私どもの問題意識として、昨年は一般中退の運用状況が非常に 厳しくなってきたということで、できれば前の利率のまま運用できれば加入者にとって はそれが一番いいことではありますが、それを続けた場合には資産がどんどん劣化し て、はっきり言って赤字がたまってしまいますので、それについては、私の気持ちとし てはやむを得ず利回りの改定を去年はお願いしました。  今年度は建設業、林業、清酒の特退について、私どもはずっと財政状況をウォッチし ていましたが、金利の低下はずっと続いてきているし、去年議論をしていたときと比べ ますと、国債の利回りだけでも半分ぐらいになっています。1.3とか1.4だったのが、い まは0.7ぐらいになっています。そういう状況を客観的に見ますと、特に建退と林退に ついては、いまの運用利回りをそのまま置いておくことについては、財政状況の悪化が 急速に進んでしまうだろうという懸念を強く持ちました。  そういう意味で、制度の健全性、持続、可能性を維持するために、運用利回りについ ての見直しをそのあとにお願いしたいということで、こういう審議の場をお願いしてお ります。その過程で建退、林退について今の制度のままでいいのかという議論が当然出 てくるわけで、今回の議論でもそういったご意見がたくさん出てきておりますので、そ の中で今すぐ法律改正をしないで行えるものということにかなり限定されてしまいま す。その中で精一杯取り組むことによって、制度の健全性につながることについては積 極的に取り上げてやろうということで、本日、運営改善の方法というペーパーをお出し しています。  堀越委員からご指摘がありましたように、その中で予算の裏付けがあるかということ については、これから努力をしないと裏付けが明確にならないものもあります。しか し、きちんとした運営改善を行うためには実態把握をする必要があるということで、調 査についてもきちんとやりたいという考えを述べさせていただきました。  前回佐藤委員からも出ておりますように、他の産業に比べて建設業の退職金水準が低 いのではないか。利回りが下がることによって、将来受け取る退職金が下がることにつ いて何らかの対策が必要ではないか。これは非常に重要な観点ではないかと私どもも思 っておりますが、利回りの議論はこれからですから、そういうものと併せて、退職金の 水準についてどう考えるかということのご議論もさせていただきたいと思います。前回 資料要求がありましたので、産業別の退職金額の水準は最後に付いているので、そうい うものを見ていただきながら、利回りの水準と併せてご議論いただく必要があるのかな と。  ちょっと先走った格好になりますが、利回りが下がることによって退職金水準が下が りますので、それについて建退共のほうに、掛金の引上げができないかということで、 私どもから要請をしております。掛金をいくらにするかということについては、建退共 が決めることになっているものですから、建退共の中で運営委員会の準備をしていると いうことで、今ご議論をいただいております。今までのところ業界も非常に厳しい中 で、賃金も下がる状況の中で退職金が上げられるかというご意見もかなりあります。確 かにそうなるところまではいっておりませんが、この制度は業界が自らつくってきたと いう歴史があります。業界として労働力を確保したいという観点から、自分たちで退職 金制度をつくりたいというところから始まってきている制度です。そういう意味では、 業界の皆さんもこの制度についての理解もありますので、私は最終的には何らかの形 で、掛金の日額についても応えていただけるのではないかと考えております。  運用利回りについて議論する過程で、先ほどありました論点整理のいくつかについ て、当面は何らかの解決を見い出すことができるのではないか。前回問題提起があった 掛金について、複数制にできないか、今議論になっている証紙を貼付するという方式に ついてどうかということは、法律にそれぞれ掛金は単一で決めるとか、証紙を貼ると か、昭和30年代の法律ですから、そこまで書いてあります。これについて今後法改正が 必要になってくるので、今すぐどうこうということは私どもとしても申し上げられませ ん。  掛金の納付方法については、前回資料を提示いたしましたが、証紙を貼付するという 方式はいわば時代遅れだと。これだけIT化が進んでいる時代に何らかの形があるので はないかという提起から、そういった仕組みも考えられるのではないかということで、 私どもも検討を始めてきております。検討を行っている過程で、先ほど佐藤委員もおっ しゃっておられましたが、どれだけのコストが掛かるかということ自体が非常に見積り にくい。それから、すべての現場まで入れるのか入れないのか。大きな現場で何千枚と いう証紙を貼るのは大変なことになるので、ここだけは単独でITを認めるのか。その ようなところまでいかない段階で、いくら掛かるのかという見積が非常に難しいことが だいぶわかってまいりました。  また、技術革新が非常に激しいものですから、ICカードもどんどん進化をして、ど の段階で入れたらいいのかということについては、非常に私どもとしても見極めにくい ところがあります。掛金の納付方法そのものについて議論をしますと、根幹的なところ にいくものですから、そういう意味でなかなか結論が出せない状況です。  私どもが今回議論をお願いしていることは、今厳しくなっている財政状況の下で、利 回りについて議論をいただきながら、運営改善の中で今すぐ行えるものについては実行 しつつ、特に加入促進については非常に重要なことだと考えております。そういうこと をやりながら、いくつかの問題については課題を残しながら検討していくということ で、ご了解をいただきつつ議論を進めていただけたらと思います。 ○佐藤委員  部長が発言されたので、確かにおっしゃっていることは理解しているつもりです。掛 金額と運用利回りというのは、密接不可分な問題なのです。私はこれまででも言ってい るように、1日300円で21日分貼って6,300円の積立てをしているわけです。その単一し か法律で認めていないと言っている。しかし、中退金の一般中退を改定するときに、特 退の上限額を800円までにしていいということにしたわけです。そういう答申もしたわ けです。掛金額は建退共の運営委員会に権能があるのだと。そうは言われても、所管さ れているのは厚生労働省ですから。  建設業がこんな状態になって、これからは縮小していくとみんなは言っています。日 建連だって競争と淘汰の時代だと言っているのです。林業だって、まさに日本の山は荒 れなんとしている。そういうときに、緊急避難の問題だからこそ根本的なところを議論 していかないといけないと、何度も言っているのです。書くならそういうことをきちん と書いてほしいと言っているわけですよ。 ○勝委員  いろいろ議論を聞いていて、非常に問題はクリアになったと思います。特に業態によ ってその問題が非常に異なっていると。特に建退共の問題点は今日の議論でかなりクリ アになったと思います。佐藤委員もおっしゃったように、建退共の場合は3つの面から アプローチをしないといけないと思います。掛金の問題、運用利回りの問題、運営改善 の問題と、この3つがあると思います。この3つの問題を聞いていますと、やはり運営 改善の問題がいちばん大きいのではないかと思います。アンケートを見ていても、特に 下請業者が入っている割合は非常に低くなっていると。つまり下請の所で労働者がメリ ットを受けていないというのがいちばん大きな問題なのではないかと思います。  ここ4、5年前からICカードの話が出ていますが、全然進んでいないことが実態と してわかりましたが、何がそれを阻害しているのか、問題点について少しクリアにして いただけると、どうするべきかという処方箋がわかってくる。つまり、それはコストの 問題なのか、あるいは使用者側がコストの負担を拒んでいるのか、さまざまな業界特有 の問題も絡んでいると思います。誰が何かをする場合に、時間軸をつくらないと何も実 行できないわけです。何がICカード化を阻害しているのかという要因を整理していた だければ、議論もしやすいのではないかと思います。その点がやはりいちばん大きいの かなと、いま議論を聞いて感じました。 ○野澤委員  座長と部長から、論点整理は次回にというお話をいただきましたが、桜井委員から建 退共の中にはいろいろな委員会があると。改善方策を含めてその方向で検討していると いうことですが、申し上げたいのは労のほうは佐藤さんのご意見がありますが、むしろ 挙げられた10項目も含めて、いま勝委員からお話がありましたが、それぞれがどういう 見解でどこが合わないのか、どこまで行っているのかということについて、両方の整理 をしてもらいたいなと思います。僕らは業界の労使の意見が合わない中を、第三者的 に、ああしましょうとか、こうしなさいと言い切れない部分があります。違いがあるの であれば、第三者的に公益委員の方々が見られて、そうおっしゃるけどこうですよとい うような落としどころがなければ、なかなか議論に参加できないです。  労側で言えば説明責任があるわけですよ。関わっている人に、こうなるのですよと。 そのことは使側も理解していただかないといけないと思います。そうなってくると、都 村委員からもありましたように、過去も提起されていますが、今ある制度そのものの改 善であるとか、掛金を300円に統一となっていますが、上限800円までというふうに改正 された経過があるわけですから、ただちには無理にしても、部長のお話がありました が、厚労省のほうもご苦労いただいているということですから、それらを含めて自発的 に業界の中として、労使でこういう話をしているとか、こうしていこうという道筋を整 理してもらわないと。  元へ戻りますが、労側は組合の方々がそれぞれおられますし、佐藤さんの所でも数十 万、60万を超える人たちがおられるわけですから、どこかで決まって、「はい、そうで すよ」といかない部分があるわけです。部長がおっしゃるように緊急避難的とは言えど も、下げることはあったとしても、一般常識から言えば下がざるを得ないのですが、ど こにどうするかということについての一定の合意を得られるような幅というものを、お 互いが探れるようなものを労側としては、少し欲しいなと思うぐらいなのです。  桜井委員からは、この方向で検討をやっていますと、またいろいろな委員会があると いうことですが、これは使用者側、労側の関係者が寄って、もう少しこの辺りの整理 と、我々が判断をする時に、説明責任も含めてですが、意見が言えるようなことにして もらわないと。この部会で一般中退がこうだから、こうあるべきですよと、そんなこと を簡単に私たちは発言しにくい部分が、率直に言ってあるものですから、少し改善方向 はいま掲げられたものでどうやっていくのだとか、今後の課題はどういうものだとかい うことを含めて、論点整理の中で是非やっていただけたら有難いなと思います。 ○齋藤部会長  この辺のやり方について、いろいろ議論をしてもきりがなくなってしまいますし、時 間も時間ですから、とりあえずこの場では資料がまだ出ているので、利回りの話の資料 の説明を伺ってから、また全体の話に戻りたいと思いますので、とりあえず説明してい ただきます。 ○蒲原勤労者生活課長  資料3から7までについて説明します。資料3の1頁目です。今の野澤委員のお話に も関係しているのですが、1頁目の資料は、前回0.5%刻みで4.5から2.0まで、それぞ れについて経済状況でケース1、2、3と3つのパターンに分けて出した細かな資料が ありましたが、それのいわば単年度のフローの部分です。今の野澤委員に関係するとこ ろでいきますと、4.5の所でケース1、ケース2、ケース3とそれぞれありますが、毎 年、赤が続いているわけなのです。  現在、建設業の建退共には300億の累積の剰余がある状況です。ただ、これが4.5の現 行のままでいきますと、毎年赤が出てくるということなので、その300億が平成18年、 19年辺りには、これがもう底をついて累積で赤字が出るという推計になっています。こ れは以前に示したところです。そういった意味では、いま300億の累積剰余があるから といって5年間、安心ができるという状況ではない、むしろ財政が悪くなってくるとい う状況です。そのようなことから、やはり見直しも必要であると考えているわけです。  前回の繰り返しになりますが、例えばケース2の3%の所で見ますと、平成16年度、 17年度、18年度は黒字ですが、平成19年度は赤字になっている状況です。私どもとして は、基本的には単年度の収支が黒になるような所を念頭に置きながらやっていくこと が、制度の安定的な運営のために大事ではないかと考えています。  ケース2の所で3%の場合で見ると、先ほど申しましたとおり、16、17、18年度は黒 ですが、19年度で赤になるというところです。では、これを0.1%ずつ下げていったと きに、単年度の黒がどうなっているか、単年度の収支がどうなっているかを、2.9%の 所を見ると、16年度以降毎年度は黒という状況になっています。ケース2を1つ念頭に 置くと、2.9が単年度黒字の水準ということです。  一方でケース3の所では、16、17、18、19年度のそれぞれ2.7%の所を見ると、16年 度以降、全部黒字です。もちろん2.6、2.5でも全部黒字ということで、経済状況のケー ス3を前提とすれば、1つの議論の出発点がやはり2.7%という状況になってきます。  次は林退についてです。林退の場合には3番目の欄にある資産、自分が持っている資 産に対して累積欠損金がどのぐらいの割合になっているかということを見ておく必要が あるのではないかと思います。ちなみに直近では平成13年度の決算の実績が出ているわ けですが、いま持っているのが大体160億ぐらい資産があるのですが、累積の欠損が23 億ということで、累積欠損の比率が現在14.0%という状況になっています。  例えばケース2の1%の欄を見ると、当期利益金は平成15年度以降、毎年黒になって いるので、建退と同じ基準で見れば、これでも良いということになるのですが、一方で 先ほど申した資産に対する累積欠損金の割合という欄を見ると、平成13年度の14.0%が だんだんと上昇していって、平成19年度には15.2%ということで、この指標で見るとや はり財政的には悪化している状況になっています。  それではこの指標を見て、具体的にどういう所までやれば財政安定ができるかを試算 したのが8頁です。  先ほど申したとおりケース2の1%の所で見ると、資産に対する累積欠損の割合が悪 化するということですが、この資産に対する累積欠損の割合の指標が、横這いなり改善 するレベルというのはどのレベルかということです。それぞれ0.9、0.8以下を見ると、 ケース2の場合は0.8%の資産に対する累積欠損値の割合が平成13年度で14.0%なのが、 平成19年度は14.0%ということになっています。したがってケース2を前提にすると、 0.8まで下げれば、累積欠損比率が横這い、もちろん0.7以下に下げればこの累積欠損比 率は改善をする状況が出てまいります。これがケース2の場合です。  ケース3の場合は、0.7%の累積欠損金の割合の欄を見ると、平成13年度の14.0%が 平成19年度、14.0%になっています。もちろんそれ以下の0.6%、0.5%になればより改 善をするということです。ケース3を前提として累積欠損比率をチェックすると、0.7 %が1つの議論の出発点と考えています。以上が林退の状況説明です。  こうした資産を前提に先程来ケース2、ケース3と言っていますが、一方で経済状況 をどう見るかというのがもう一つの議論になってくるわけです。この点については、前 回のこの審議会の場で桜井委員からご質問がありまして、私が口頭で説明をしたところ ですが、今回資料4で「各機関におけるGDP成長率の予測について」というものを用 意しました。1頁目の上のほうが、今回、推計の前提としているケース1、ケース2、 ケース3のそれぞれの「名目」及び「実質」のGDP成長率です。繰り返しますが、名 目で見ると、ケース1は平成14年度以降ずっとプラス、ケース2は平成14年度、15年度 がマイナスが2回続いて、それ以降ゼロあるいはそれプラス。ケース3の場合は、平成 14年度以降4年間名目でマイナスが続いて、それ以降ゼロなりプラスになっているとい う3つの想定をしています。これと現在の各種の見通しがどうかという比較になってく るかと思います。  まず、「『改革と展望』の見直し後、見直し前」という資料です。これは政府全体と しては、改革と展望の所で、今後5年間について見通しを作っているわけですが、実は これは昨年の1月に出たものが今年の1月に改定をされているという経緯があります。 最初に改定前のものを見ますと、実は名目成長率で2%の真ん中辺りの成長を目指して 頑張る、というのが政府の改革と展望の趣旨なのですが、名目成長率で見ると、平成16 年度が2.3、平成13年は2.5というところで、この辺で2%の真ん中辺りが達成できると いうのが、一昨年の今の時期のものです。  ところが、今年作った改定後のもので見ると2%の真ん中というのが平成18年度が 2.2%、平成19年度が2.6%ということで、前回と比べると概ね2年遅れてきている状況 で、政府の見通しでも悪化している状況が見られます。ケース1、ケース2、ケース3 と見比べると、ケース2に非常に似ている状況になっている。この政府の見通しという のは、いろいろな政策努力をやることを前提に、こういう数字を作っているということ です。  次に、民間の研究機関で経済の見通しをどう見ているかです。これも下の欄が一昨年 の段階、上の欄が直近、現時点で生きているものです。同じ資料としては、野村総研と 日本経済研究センターのがありますが、まず野村総研のものを見ますと、名目ベースで プラスという成長を一昨年の段階では予測していたのです。ところが直近のものを見る と、名目の所は全てマイナスになっていて、非常に悪くなっているし、しかもケース3 より悪いものとなっています。  一方、下の欄の日本経済研究センターの昔のものを見ますと、これもシナリオが2つ あるのですが、平成14、15年が赤で、あとプラスとなっています。直近のものを見る と、赤の状況が少し悪くなっている。そうは言っても途中からプラス成長ということに なっています。三菱総研のものは昔のものがないので直近の分だけ出ています。これを 見ると、平成14年度以降、4年間、名目ではマイナス成長というのが出ています。  全体を総括すると、民間の調査機関でも、一昨年の段階の将来見通しと、直近の見通 しは、まず悪くなっているのが1点です。悪くなった後のものを今回推計の前提である ケース1、ケース2、ケース3と見ると、少し幅はありますが、ケース3から少しケー ス2に近いというのが出ています。そのような状況で我々としては、政府の見通しはか なり政策努力が入っているので、ある程度安全を見ると、ケース3も1つ念頭に置きな がら議論を進めていかなければいけないと考えています。  以上の議論を総括した資料として、資料5を用意しました。既に説明をしたので簡単 に説明をしたいと思います。「建退共及び林退共の予定運用利回り見直しの考え方(案 )」を基にご議論をいただきたいと思います。建退共については、このままでいくと将 来、累積の欠損が生じる見込みになっている。したがってこれからは、5年間を通じて 単年度の欠損が出ない水準に水準を設定する必要がある。その際、ケース2、ケース3 と2つあって、ケース2の場合は2.9、ケース3の場合は2.7というのが出ています。  林退については、現在、23億の累積欠損を生じていて、非常に財政的に厳しい状況に なっています。したがって将来にわたって持続可能な制度とする観点から、見直しを行 うこととし、以下、少なくとも見直し後5年間を通じて単年度欠損金が生じないという 基準に加えて、累積欠損金比率を拡大させない、又は縮小させる水準にセットするのが 必要であると考えています。  ケース2及びケース3で場合分けをして、下の表で単年度赤字にならない水準だけを 見れば、1.0なり0.9という数字が出てきますが、これではなかなか厳しいということで す。私どもとしては累積欠損金比率を維持する、あるいは改善する水準を念頭に置いて ご議論をいただきたいと思います。維持する水準で言えばケース2ならば0.8、ケース 3で言えば0.7です。一方で改善する水準であればケース2で0.7、ケース3で0.6とい う状況です。建退・林退両方を通じて、先ほど経済見通しを申しましたが、やはり政府 の政策をやった後のものというより、ある程度安全を見てケース3を念頭に置いてご議 論をいただければと思っています。以上が資料5です。  資料6です。これは先ほどの退職金額の関係の資料になります。いまの4.5%を下げ た場合に、どのぐらいの退職金額になるかという指標です。いろいろな前提の置き方が ありますが、ここは5年間、現行の4.5%で加入して、その後、引き続き5年間新しい 予定運用利回りの下で加入する人を前提に置いて、10年加入の人を取っています。いま 建退共の平均加入の期間が9年少しということで、10年加入者、しかもその半分ずつ旧 の利率と新しい利率で加入する、これを前提に置いた資料です。  3%に引き下げた場合ですが、現行の4.5%で10年間加入した場合は、約103万円もら えるのですが、これが移行後5年間3.0%に予定運用利回りが引き下がった場合には、 94万円で引き下げがなかった場合の91%になります。一方で2.5%まで下げると、これ が89%に下がるということです。もちろんこの間の所であれば91%と89%の間の割合が 出てくるということです。  林退も同じような考え方でして、予定運用利回りを1%に下げた場合には、現在の 104万円が98万円で94%、0.5%に下げた場合は、96万円で92%という数字になっていま す。  資料7です。「他の産業における退職金の額がどうなっているか」というご質問があ りましたので、それに対する資料です。実はこの比較というのは簡単ではなくて、中小 企業であり、しかも建設業ということで、そういう指標で比較できるものを探したとこ ろ、見つかったものは、東京都の「中小企業の賃金・退職金事情(14年度版)」でし た。これで建設業の欄を見ますと、自己都合が87.6万円、会社都合が135.5万円という ことです。  少し関係すると思い、いくつかの指標を付けていますが、関西経営協、これは規模が 299人以下ですが、残念ながら建設業はありませんでした。それは調査産業計あるいは 製造業で見ると自己都合で100万円前後です。一方中労委は資本金5億円以上、従業員 1,000人以上ですが、これを見ると建設業の自己都合退職で105万円。日経連・東京経営 協のは会員会社を対象としたものですが、これを見ると建設業について121万円、もち ろん加入会社なので、中小企業の方だけではないという前提付きですが、そういう数字 になっています。以上、運用利回りの試算から始まり、その結果のいろいろな退職金の 額及び各産業別のものを説明しました。 ○齋藤部会長  ありがとうございました。いまの説明の資料につきまして何かご質問なりがありまし たらどうぞ。 ○辻村委員  最初に資料6と資料7のことでお願いしたいのですが、これは5年間は4.5で回って、 その後3.0あるいは2.5に引き下げた場合の試算ですね。 ○蒲原勤労者生活課長  そうです。 ○辻村委員  これだと制度そのものの変化が正確でないと思いますので、3.0の10年、それから2.5 の10年、この資料も想像ができるのですが、是非とも作ってもらいたいということが1 つございます。資料7では、退職金というのは老後の生活保障、これは前回にも私、述 べたのですが、そう考えるとやはり30年、35年というスパンで見ないと、退職金の機能 としての性格づけなり内容は分からないと思います。この10年という資料は大変参考に なりますし理解もしますが、やはり30年ないし35年でどうなるか、世間一般と比べ、あ るいは建退共としてどうなるのかということを出してもらいたい、ということがありま す。  制度を維持していくためには、現在の予定運用利回りをどうするかということは、 我々も痛切に感じていますし考えているところですが、一方でこの共済の退職金として の機能という問題も並行して考えざるを得ない。それでも脆弱な内容だと私は前回も言 いましたが、そして利回りを3%に下げれば、いま出された資料でも9万円下がるわけ ですし、更に2.5になれば12万円も下がっていくわけです。もともと退職金としての機 能が弱い上に、こういう形になることになれば、利回りもそれと連動して私ども検討せ ざるを得ないのですから、先ほどから出ているように、単に利回りだけの論議ではなし に、制度改善、我々の守備範囲ではないと言われるけれども、一定の方向を示してもら わないと、検討ができないのではないかということを申し上げておきたいと思います。 ○蒲原勤労者生活課長  掛金のところは部長の申したとおりで、いま我々として問題意識があって、いろいろ お願いをしているということです。退職金額について、分かる範囲で口頭で説明をしま す。おそらく言われる趣旨は、5年、5年ということではなくて、新規で入った時に10 年加入の方でどうなるかということではないかと思います。10年加入の方の場合、4.5 %で入れば103万円というのが資料で出ていますが、運用利回り3.0%の場合は、これが 約93万円になります。割合からすると90.2%です。一方で2.5%に下げた場合は、約90 万円ということで87.2%、これはいずれもその掛金日額、300円のままの場合という状 況です。資料はまたきちんと出します。  30年、35年のところについては、例えば東京都の場合のデータは、30年であれば760 万円ぐらいになるのです。35年も960万円になるのです。ただ、そこは実態のデータで はそうなのですが、考え方としてご議論をいただきたいのは、一方で建退共の平均の加 入の状況は約9年ということですし、加入期間別の統計を見ると、20年以上入っている 人たちは全体の1割未満です。例えば15、16年より短い人が全体の8割ぐらいの数字に なっています。この数字もきちんと示せますが、そういう状況になっています。私から すると、いろいろな比較をする時に、建退共に入っている平均的な加入期間、あるいは 7割、8割が入っている辺りを1つのターゲットとして比較することが必要でないのか ということで、今回の資料は10年資料になっています。 ○桜井委員  資料7で東京都の「中小企業の賃金・退職金事情」のデータがありますが、300人未 満、大体全建加入の企業が対象になるのかなと思うのですが、最近の建設業の自己都合 の年次別の受給額が分かればうかがいたいのです。 ○蒲原勤労者生活課長  口頭で説明した後は資料として出します。いま87.6万円ですが、これが実は最近下が る傾向になっています。これは2年おきの調査ですが、平成10年の段階で91.8万円、平 成6年の段階で102.7万円になっています。ここ4年なり8年の間はいろいろな状況か ら下がってきています。資料としてきちんとお出しするようにします。 ○辻村委員  10年ぐらいしか入っていないのだから、その資料でいいというわけにはいかないと思 います。制度の検討ですから、退職金として引退後の生活保障として制度としてあるべ き最低の線ということで考えれば、やはり30年、35年を考えていただきたい。もう一 つ、もう分かっていることで失礼なのだけれども、出された資料の中で、月々の給料に 対して退職金にどれだけ準備をしているかという資料があるのです。これ中小の場合は 少し低いですが、民間企業は大体5%です。それから考えると30万を建設労働者の収入 とした場合に、6,100円というのは極めて低過ぎるのです。そういう意味から労働者を 働かせるというための福祉の観点から考えて、この運用利回りの検討をすると同時に、 そういう観点からの検討を我々せざるを得ないのですから、やはり利回りだけの検討で はすみませんよということは言いたいところです。 ○蒲原勤労者生活課長  そこはご趣旨のとおりだと思います。 ○佐藤委員  同じようなことは言いませんが、中労委の資料があると言われたのですが、私も中労 委の資料を持っているのです。中労委の出している資料で、平成12年1カ年で、定年退 職をした人の全産業計の退職金の平均額は2.056万円です。建退共で同じようにいちば ん長く計算されているのが37年で、4.5で回って722万円、これが3.0になった時の資料 も今度出すとお約束されたから出してもらいたい。  建退共が出している資料の中に退職金を受け取る事由が書いてあるのです。55歳以上 で退職をしていく人が建設業では13.2%、無職となって辞めていく人の本年度累計、こ れは少し資料が古いかも分かりませんが、本年の12月25日に出た冊子ですが、65.8%な のです。建退共本部自身が使う、「無職」という言葉の定義は「無職になって今後どこ にも就職しなくなった」と、こう書いてあるのです。要するに建設業においては、失業 で出ていくというのが今年度の累計で65%と言っているわけです。私はそういう問題を 併せて考えないと、今日の資料はかなり恣意的で、10年で比較をするとか。今度きちん としたものを出してもらわないといけないなと思います。建退共もどういう理由で退職 金を受け取ったかちゃんと書いてあるのですから、こういう資料を出すべきだと思いま す、お願いします。 ○蒲原勤労者生活課長  資料は出します。 ○齋藤部会長  ほかに何かありますか。 ○桜井委員  我々のほうも今どういう状況にあるか、企業倒産も含めて、公共事業の受注の現状は どうかというものも出してもらいたい。景気の良い話の時にやっているわけではないの であって、特に最近は佐藤委員もご存じのように、建設業の厚生年金基金は破綻状態に なってる。それをもう返上できないような状態になっている。そういうものも含めて料 率の上げ下げの話、もう少しリーズナブルな考え方でやってもらわないと、違う方向に いかれたのでは困ると思います。 ○佐藤委員  もう要望の段階になってきたので、時間があまりないですが、私は中建審の委員もし ていますが、「建設業におけるセーフティネットの構築」というものが出て、国土交通 省が説明をしているのです。「建設業雇用問題協議会等を通じて厚生労働省等と連携を 図りつつ、雇用にかかる助成制度の活用促進を図るとともに、雇用の確保・創出・労働 移動の円滑化等を推進する」、非常に良いことを書いてあるのです。  私はそこの部分は本来は建退共の問題だと思っているのです。出してもらいたい資料 というのは、要するに現状は非常に厳しいのを私たちも十分知っているのです。そして 2次下請になってきたり、あるいは地方ゼネコンがどんどん潰れている。今のうちの組 合などでは、賃確法の問題でいろいろと倒産した企業に代って国が払ってもらう問題 で、かなりの取り扱い件数をやったりしている。  先ほど前払いか後払いかということを言いかけた時に、皆さんに知っておいてもらい たいのは、もし出るのなら資料として要求しますが、公共工事というのは前渡金が出る のです。ところが元請から次へどんどん下りていく段階では出来高払いでとなってしま うのです。下請だって人を雇ったり、物を用意したり準備はいるでしょう。建退共だっ てそうなのですよ、後だ後だと言っていたらそんなもの払わなくなりますよ。だから 我々が前払い制度ということを主張している。その辺の論点も今度整理して書いて出し てください。要望です。 ○勝委員  いまの労使のお話非常によく分かるのです。いま運用利回りの議題に入っているわけ ですが、先ほど言ったように、3つ柱があって、掛金、運用利回り、運営改善という問 題があるわけです。先ほど佐藤委員が退職金の絶対額がほかの産業に比べて非常に小さ い。これは由々しき問題であって、大きな問題であると思うのですが、これは掛金に関 わる問題で労使の問題であると思うのですが、ここでは制度の健全性に責任を持ってい るということを考えれば、やはり運用利回りというのは、ある程度健全性が維持される ところに下げていくということを、まず考えなくてはいけない。  先ほども申し上げたのですが、建退共で問題点が多いというのは、運営の改善の部分 がいちばん大きいのではないか。そこの部分はもちろんこれからやらなければいけない わけですが、制度の健全性を考えた場合には、その利回りのところをまずここで早急に 考えていかなくてはならないのではないか。中退協の場合でも先送りしていった結果、 財政がここまで悪化してしまったと考えると、そこの部分はまずやっておかなくてはい けない。それも早急にやっておかなくてはいけないのではないか。それ以外の問題、例 えば掛金の問題も非常に大きな問題であるし、運営の改善も非常に大きな問題である。 これについてもしっかりやる。どういう形でやるかをスケジュールとしても明確にす る、ということが重要なのではないかと思うのです以上です。 ○齋藤部会長  ほかに何かご意見がありますか。 ○小山委員  この利回りの問題等の議論ですが、ケース1、ケース2、ケース3といろいろありま すが、少し考えていただきたいのは、あまりタコ壷に入って物事を考えると、そもそも この制度が一体どういうものなのかという問題と、あるいはもう少しマクロ経済の観点 から、いわゆる社会保障、あるいは労働者保護の観点から、これからのセーフティネッ トの役割という観点で、一体利回りだけ見ていって良いのかということ。さまざまな観 点から是非検討をしていただかなければいけないのではないかと思うのです。  特に今の日本経済は危機的な状況です。ある意味で今は特別な事態で通常の事態では ない。今後どうなるかなどという予測はケースいくつとかありますが、正直言うと誰も 分からない。これからの金融政策が一体どうなっていくのか、インフレターゲットとか いろいろな議論がありますが、それ1つによって利回りの見通しはがらりと変わってき ます。これからの5年後なんていうのは正確に予測できる人は誰もいない時代です。そ れだけに日本の経済は危機的な状況にあるわけですから、ある意味では、こういう時の 基準、いまの数字を基準にして将来を物差しで測るというのは、逆に言うと非常に危険 なことだと私は思うのです。  だからマクロ的な観点からいっても、今は特別な時期だという認識を持ちながら政策 判断をしていかないと、私は国の政策として間違う恐れがあるから、この時期にデフ レ、非常に特異なデフレの時期に今の数字を基にして、今後10年後どうなるかなんてい うことを考えていると、日本の政府の政策として間違う恐れがあるという観点を是非 持っていただきたいと思うのです。だから利回りだけを一生懸命に見て、これでは大変 だという狭い、ミクロの制度議論だけしていると、先ほど佐藤さんからお話があったと おり、老後の生活機能を持つ建退共の給付が下げられるということの、そのセーフティ ネットをある意味では弱くするという政策をいま打ち出すことが、本当に良いことなの かどうなのかという観点で、是非、政府としては考えていただかなければいけないので はないかと思うのです。 ○奥田勤労者生活部長  建退共制度、林退も非常に重要な制度であるというご指摘ですが、そのとおりだと思 います。ただ、この制度は事業主の任意の制度を国が預かって運用しているものなので す。足元の状況は先ほど資料をお見せしましたように、建退でいきますと1カ月10億か ら、それ以上の赤字が現実に、いまこの瞬間に起きています。そういうことからして、 私ども先々の経済が明るければいいなと思うのですが、しかし、現実に起こっているこ とを直視をしつつ、制度の健全性はやはり維持をしなければならないだろう。  最初に言いましたが、任意の制度で行われていますので、この任意の制度を確保する ために制度の健全性を非常に重要視をして行っていく必要があるだろう。先々、経済情 勢が好転をしてくる。また金利情勢が変化をする。これは当然利回りを見直すことがで きるので、そういった時にはまた皆様方に御議論頂きながら、皆様方から提起をお受け することもあると思いますが、利回りの見直しは機動的にできるものだろうと思ってい ます。私どもの立場からしますと、いま足元で赤字が大きくなってきていることから、 やはり制度の健全性を維持することが非常に大事なことではないかということで、今回 もお願いをしているということを、ご理解いただけたらと思っています。 ○長谷川委員  次回に検討した項目をもう少し整理するということですので、整理をしてほしいので すが、例えばこの資料5でいっている、建退の場合は「平成17年度に累積欠損金が生ず る見込み・・・見直し後5年間を通じて単年度欠損金が生じない水準に設定をする必要 がある」、これが考え方の1つですね。林退は、「23億の累積欠損金が生じ・・・見直 し後5年間を通じて単年度欠損が生じないともに、累積欠損金比率を拡大させない、縮 小させる水準に予定運用利回りを設定する」、考え方が建退と林退はまず違うわけです ね。このことは、もう少しきちんとした説明が必要だと思うのです。  見直しの時もそうですが、私たちは組合員に説明しなければいけないわけですから、 一方が「累積欠損金が生じる見込み」で、こちらは「累積欠損が生じ」というその時に 健全財政を維持する、それは尤もで、私どももそれは最初から言っていたことで、その ことは否定することでも何でもないわけです。どれが一番ベターなのかというのは、き ちんと検討をしようと思うのです。ただ、ここを組合員に説明をする時に、もう少しき ちんと説明できるようなものが必要だと私は思います。  先ほど公益側委員から金額の問題というのは、極めて労使の問題でしょうと言うので すが、労使の問題なのですが、商品は単一商品ですよね。だから商品を選ぶという選択 肢は全然ないわけです。例えば他のものだと商品の選び方があるわけですが、建退の場 合は毎日300円、商品は1つです。例えば商品が3つぐらいあって、それが労使で選べ るというのでしたら、労使関係だと言えるかもしれないけれども、単一商品であるわけ なので、そこを労使関係だと言われると、ちょっと違うのではないかと思うのです。  そういう意味では、労側がこの間いろいろなことを運用改善で、何回か言っているわ けですから、それに対して、もう少し答えるように、冒頭の運用の見直し、改善の見直 しの所を、できるのかできないのか、どうなのかをもう少し検討をするとか。最初公益 側から言われたそういったものを整理してほしいと思います。できないものはできな い、検討をするのだったら検討、努力をするのだったら努力をするとか、もう少し明確 にしてほしいと思います。  もう一つは、最初の時に50枚証紙を貼りますが、例えばそれをもっと貼るなんていう ことは、国の施策としてできないのかどうなのかという検討の仕方もあるし、今言った ように単品なのかということについても、検討をしてもいいと思います。検討をして駄 目だったら駄目だと言えばいいわけですから、それは検討をしてほしいと思います。 ○佐藤委員  勝委員がそれは労使の問題だと、民々の問題だと言われるのだとすると、建退共に運 営委員会というのがあるのです。いくつか委員会があると桜井委員が言われました。こ れ国会でも質問をされていて、「その運営委員会になんで労働者の代表を入れないのだ 」「これは業界の退職金だからです」と、こう言っているわけです。審議会で議論をさ れているからいいではないかと。ところが私は日額と運用利回りは密接不可分だと思っ ているわけですよ。それも単一しかできないと、今は言い切っているわけですね。その 日額を決める権能は運営委員会にしかないということになれば、いま厳しいから上げっ こないって、そう言われるのに決まっている。そうしたら、もう選択肢が狭まられてく るわけで、狭い所でやらなければいけないのですよ。だからここで根本的な問題をちゃ んと議論をしてくれということです。 ○桜井委員  厳しい中で全て上げるというのは、業界としては厳しいですねということです。 ○蒲原勤労者生活課長  長谷川委員からのご意見についてですが、建退と林退の基準が違うということについ ては、制度の健全性を根本として、どういう指標で見るかということだと思うのです が、私どもは基本的には将来払うべきものに対する積立金をいま持っていると、即ち累 積欠損が生じていない、あるいは累積剰余がある程度あるということが、根本的なとこ ろではないかなと思っています。そういう状態を維持するためにどうするかということ を、建設の実態、林業の実態に合わせてやる。建設の実態はいま300億の剰余がある。 だけども5年後にそれが赤になってしまう。そうであれば、赤にならないようにやると いうことで、毎年の黒を1つの指標としていたということです。  一方で林業の場合は、将来累積欠損を解消することに向けて、単に単年度で黒という だけでは、なかなかうまくいかないし、ある意味では累積欠損比率という指標で見る と、財政が悪化している状況になっている。したがって、そこは建退と違って、もう一 つの累積欠損比率を維持する、あるいはより改善をするという基準を入れたということ で、根本の基準は一緒だけれど現状に当てはめる時に、異なってくるということではな いかと思っています。  あといくつかありましたが、証紙の助成については間違いなく、最初に入る時に、加 入促進の意味で特定業種については、1冊目の手帳について一定の日にちの助成が講じ られているという現状があります。それぞれの日にちが建設の場合と各それぞれの場合 と数字がちょっと違っているということを言われた。いちばん少ないのが実は建設なの です。ただ、これについては、いろいろ基準があって、いわば1年間の3分の1を基本 的には補助対象にするという考え方なのですが、実は3分の1の補助対象にしても、建 設の場合は仕事が公共事業と民間とそれぞれあって、公共事業の事業費の積算に証紙代 金が入っているという前提で、先ほど言った働くべき日数の3分の1の後に、全体の仕 事量のうち、民間の割合を掛けることによって計算をして、いま50日となっているわけ です。実はそういう考え方になって出来ているので、その考え方とは別に、何かプラス アルファーできないかということについては、説明、理屈がつく説明というのが今のと ころ、ちょっと厳しいのではないかと思っています。 ○田勢委員  資料7について申し上げたいのですが、建設業で1日とかあるいは期間を限って雇用 される方たちと、このデータに出ているのは10年でやっていますが、この常用雇用の 方、それも退職金を払った会社から統計を取っているので、これ自体は比較の対象にな るデータではないのではないか。払っていない所もたくさんあるし、払われるだけ良い よなというのがこちらの感じなのです。常用雇用と建退の対象になっている所を単純比 較をする。それも例えば35年働いたらどうか、そもそもこれ自体が比較になるデータで はないのではないか。  中小企業で申し上げれば、退職金無しで自己都合・会社都合で辞める人も当然いま す。最近の企業はそもそも退職金というのは、給与の後払いということですから、それ は給与にもう入れてしまって、退職金はそもそもうちはないんだよと、そういう制度で 雇用されている人もたくさんいるわけです。先ほどから何かこれを比較しろ、比較しろ と言っていて、どちらが高い、どちらが安いなんて言っていますが、そんなものは、そ もそも比較できるようなデータではないと思います。中小企業の厳しい所を言えば、 100万円もらえるのはすごい、素晴らしいなという程度の羨ましさですが、実態が違う、 状況が違うから比較すべきではないと私は思います。労働の実態、先ほどからいろいろ お話が出ていますが、それぞれの実態に合わせてそれに最適なシステムだと、当時思わ れたものが適用されて、採用されてきたわけですから、それはその世界の中で議論をす べきではないかと思います。いたずらにデータだけを引っ張り出して比較して、多い少 ないという議論は、ミスリードするものだと思います。  もう一つ申し上げたいのは、日額云々という議論を労使でするとかしないとか、した 方が良いとか悪いとか、いろいろ議論がありますが、今の我々の任務というのは何か。 このままズルズルとこの審議会を数を重ねても、これ皆さんご賛同をいただけると思う のですが、そういう議論をしていては、いつまで経っても結論が出ないわけです。  先ほど部長からも説明がありましたように、まず今日も血が出ている。この血が出て いるものを止めないでよろしいのかと、受益者たる共済の対象になっている方たちも血 が出ていることについては、本来関心が高いはずですから、対症療法はまずやろうと、 それがこの部会の目的の第一ではないか。もちろんその対症療法をする時に、病気の根 本の議論は当然すべきなので、それはすべきだと思いますが、そればかりやっている と、命を落とすことになりかねません。特に林業のほうなどはもう命が落ちる寸前かも しれません。とにかく早く利回りについて結論を出して、制度そのものの議論はまた別 途していただくなり、効率よく進める場ではないか。委員の1人として大変申し訳ない のですが、ここで延々議論をするのも意味はあると思いますが、しかし、使命は違うの ではないかということを一言申し上げさせていただきます。 ○辻村委員  中小企業退職金制度の認識の違いだろうと思うのです。それは退職して老後の問題、 そういった機能を果たすということであれば、それ相応の制度にすべきだというのは当 然のことではないでしょうか。そういうところが認識の違いですから、私はこれ以上の 論議はしません。先ほど35年、30年の資料を出していただけるということですから、私 は一定の良い制度にしていこうと、そしてこの退職金共済制度がそれなりの機能を果た すような制度にしていこうという論点から、そういうことを申し上げているのですか ら、お願いいたします。 ○齋藤部会長  数字の見方はいろいろ議論がありますから、それについて必ずこうでなければいけな いというのも、なかなか言いにくいところがありますから、それはそれで議論だという ことにしておきたいと思います。次回は今まで議論を進めてきましたので、同じことを 何回もやっても仕方がないというような気がしますので、少しこれからの当部会での議 論を取りまとめる方向に向かっていきたいと思います。したがってそれに参考になるよ うな資料を作っていただいて、それを基にして議論をしていきたいと思います。次回は 3月20日を予定していますが、事務局からご漣絡をさせていただきたいと思います。 ○佐藤委員  今の部会長のまとめだと、次回にとりまとめると受け取れるのですが。それは次回の 議論の結果次第だというふうに思いますか。 ○齋藤部会長  必ずとりまとめるとかそういう予断は持たないで、議論をしたほうがいいだろうと思 います。  最後に今日の議事録の署名委員を小山委員と讃井委員お願いをしたいと思います。長 時間にわたりましてありがとうございました。 6 配付資料 (1)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の運営改善の方向について (2)「建退共制度に関する実態調査」について (3)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度における利回り別の財政状況の今   後の見通し (4)各機関におけるGDP成長率の予測について (5)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の予定運用利回り見直しの考え方   (案) (6)予定運用利回り見直し後の退職金額について (7)産業別退職金額の水準について 照会先  厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課  担当:河野・簑原  03(5253)1111(内線5376)