03/02/13 第3回医療安全対策検討会議ヒヤリ・ハット事例検討作業部会議事録            第3回 ヒヤリ・ハット事例検討作業部会                    議事録                       日時  平成15年2月13日(木)                           10:30〜12:30                       場所  厚生労働省共用第7会議室 〇作業部会長  定刻になりましたので、ただいまから「第3回ヒヤリ・ハット事例検討作業部会」を 開かせていただきます。委員の皆さまにおかれましては、お忙しい中をご出席下さいま して、ありがとうございます。きょうは全員お集まりということでございます。  本日の議事です。議事次第に書いてございますように、大きく2つございます。  1つは、医療安全対策ネットワーク整備事業の第5回の集計結果について、というこ とでございます。これは定例です。  2つ目が、ヒヤリ・ハット事例の年間分析結果というものをこの前全体を通して見ま したが、そこから見た主な課題、ということを議論したいと思います。  議事のそれぞれについて順番に説明及び議論を進めていきますが、資料の確認をまず 事務局からお願いします。 〇事務局  では事務局より資料の確認をさせていただきます。  資料1    医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)         第5回集計結果の概要について。1ページ。  資料2−1  第5回全般コード化情報の分析について。5ページ。    2−2  全般コード化情報集計結果、図表資料。  資料3−1  第5回重要事例情報の分析について。8ページ。    3−2  重要事例情報−分析集。    3−3  重要事例情報−集計結果。報告事例のまとめ資料。  資料4−1  第5回医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析について。2ページ。    4−2  医薬品・医療用具・諸物品等情報集計結果。集計まとめ資料。  資料5    ヒヤリ・ハット事例の年間分析結果からみた主な課題(案)  以上です。 〇作業部会長  ありがとうございます。資料はお揃いでございましょうか。では議事次第どおりに進 んでいきたいと思います。医療安全対策ネットワーク整備事業第5回集計結果を進める ことにします。  前回と同様ですが、全般コード化情報の分析については武藤委員。重要事例情報の分 析については増子委員。医薬品・医療用具等情報の分析については事務局から、それぞ れ第5回の集計結果ということについてお伺いします。その上で質疑応答をしていただ くということで進めたいと思います。では武藤委員から集計結果の全体概要とコード化 情報の分析の説明をお願いします。よろしくお願いします。 〇武藤委員  報告させていただきます。資料1をご覧ください。  今回、報告期間は8月27日から11月26日までです。全般コード化情報は、平成14年 7 月 1日から平成14年 9月31日までの 3カ月間に発生したヒヤリ・ハット事例です。  4.を見ていただきますと、全般コード化情報に対しては8375事例、重要事例情報に 関しては 583事例、医薬品等に関しては 201例ということになっております。  資料2−1をご覧ください。全般コード化情報の分析について、概要をお話ししま す。先ほどお話ししましたように、8375事例、89施設から報告がありました。分析の方 針は前回と同じです。1つは単純集計。もう1つはクロス集計です。  2の4)のところに書いてありますが、特に報告事例の多かった「処方・与薬」「ドレ ーン・チューブ」「療養上の世話、療養生活の場面」これは転倒・転落が多い、それか ら「集中治療室」「小児」これについて詳細に分析しました。影響度の大きい事例の割 合が高い「医療機器の使用・管理」「輸血」についても個別に分析しましたので報告し たいと思います。  3ページから文書で概要が書いてあります。実際のグラフを見ていただきながら説明 をしたほうがわかりやすいと思います。資料2−2を開けてください。これについてグ ラフを見ながらご説明いたします。  1ページ。発生月。発生曜日。曜日については平日が多い、それから土日も多いとい うことです。  2ページ。発生時間帯については全事例です。ピーク時間が8〜9時台です。これは 前回までの傾向と違っております。前回は10時から11時くらいですが、前にずれまし た。多分、理由は処方・与薬の発生時間のピークが前方にずれたということが考えられ ます。  図4の発生場面です。これは前回と同じように、一番多いのが病室。ナースステー ション。薬局・輸血部。ICU・CCU・NICU、これを一つにまとめるとかなりの 量になります。  5ページ。図9は当事者の職種です。これは全事例です。圧倒的に看護師さんが当事 者であることが多いです。今回の特徴は一番右のほうに事務職員というのがあります が、これの頭が出ております。多分、診療情報管理士さんからの報告が増えているので はないかと思われます。  図10は当事者の職種経験年数です。これもこういう勾配があります。0年、1年で全 体の20%です。3年目までで30%を占めております。右の11〜20とか21〜30というの は、これが飛び抜けて多くなっているのは、年齢階級を一緒にまとめたので多くなって いるということです。  6ページ。図12の発生場面です。これは前回とも変わりありません。処方・与薬がダ ントツに多くて、次がドレーン・チューブ、療養上の世話です。療養上の世話は転倒・ 転落です。これが3大ヒヤリ・ハットです。この傾向も変わりません。  7ページ。図13の発生要因です。これも相変わらず確認、観察をあげる方が多かった です。心理的条件や勤務条件があがっております。後でも問題になりますが、システム 要因としてあげている方が少ないということがここでも伺えます。  8ページ。図14の影響度です。ヒヤリ・ハットには2種類あるということはご承知だ と思います。1つは間違いが実施されたが患者さんへの影響度が少ないものと、実施前 に発見して、事前回避したという例があります。実際に間違いが実施された例が一番多 くて、大体全体の3/4を占めております。  間違いが事前発見されて患者さんに実施されなかった例が残りの1/4 です。その中で 真ん中あたりにありますが、事前発見して患者への影響が大きい、というものが83例あ りました。これも後でお話ししたいと思います。  11ページ。これからは全体事例をさらに個別に掘り下げた報告です。まず処方・与薬 の場面です。処方・与薬に関しては、発生場面と内容のクロスで見ますと、一番多かっ たのは表7に現れておりますが、右から3番目の無投薬です。2番目が処方・与薬のそ の他のエラーでした。3番目が真ん中あたりの投与速度が速すぎる。4番目が過剰与薬 です。無投薬に至っては全体の1/3 です。薬が与えられていないという状態ですね。  図15は発見者です。もちろん同職種が発見とか当事者本人が発見が多いですが、患者 本人、家族、付き添いに関しては 100件ぐらいありました。薬に関しては患者さん本 人、家族、付き添いからの指摘もあるということです。  12ページ。図16は処方・与薬に関する当事者の職種経験です。0年が30%以上を示し ておりましてダントツです。部署配属年数を見てみましても処方・与薬に関しては0年 が40%とダントツでした。  13ページ。図18は発生の要因です。これは処方・与薬に関する発生要因です。やはり 全体の傾向と同じですが、確認、心理的条件、勤務条件があります。処方・与薬の場合 には真ん中あたりの連携というのが第4位ぐらいにあがってきております。医師・看護 師・薬剤師からの連携ということでしょうか。  14ページ。処方・与薬に関する影響度の分析です。図19で処方・与薬に関しては、間 違いが実施されているのが80%と圧倒的に多いということです。  15ページ。ドレーン・チューブの図21です。発生時間帯です。ドレーン・チューブに 関しては発生時間帯の傾向がありませんでした。ドレーン・チューブは自己抜去が多い ものですから、のべつまくなし自己抜去という感じでしょうか。全体の傾向としては、 先ほどいいましたように8時台に発生ピークがありましたが、ドレーン・チューブに関 しては発生ピークの顕著なピークが見られないということです。  図22は患者・性別で見たものです。ドレーン・チューブの場合には男性がかなり多い です。男性は我慢強くなくて、抜きたがってしまうのでしょうか。  16ページです。これもドレーン・チューブの発生要因です。図24です。確認、観察、 特に観察を指摘する人が多かった。ですから、ドレーン・チューブの自己抜去が多いの ですが、患者に対するアセスメントの方法とか、そういう工夫が必要であると考えまし た。  17ページ。ドレーン・チューブの発生場面×内容のクロスです。表の10で見ますと、 自己抜去と自然抜去が圧倒的です。ただチューブ類の接続はずれというものも第3位に あがってきております。  18ページ。ここからは医療機器の使用・管理に移ります。表11の発生場面×内容のク ロスで見ますと、人工呼吸器が76件、輸液ポンプが61件というように、人工呼吸器と輸 液ポンプでかなりの割合を占めております。次が酸素療法、次が血液浄化用機器です。  下の図25では、発生要因に関しては確認と観察、心理条件というものがあります。  19ページ。医療機器の使用・管理について発生要因の詳細です。先ほどのものを詳細 に見てみますと、確認が一番多くあがってきております。医療機器・器具・医療材料の 管理が不十分、確認が不十分というような報告です。  図26の影響度です。医療機器に関しては、特徴的なものは、実施前発見の患者への影 響は、大きいというものがあがってきております。11件あります。これは実施前発見さ れたものの中の約40%ぐらいを占めております。  20ページ。表13です。ここからは輸血を扱っております。輸血に関しては発生場面、 内容に対して、製剤の取り違え輸血、患者の取り違え輸血がありました。かなり重大な エラーであると思います。  表14では、輸血に関しては当事者職種と発見者を見ますと、もちろん看護師さんが多 いのですが、医師が22件と第2位にあがってきております。  21ページ。図27です。輸血に関しても0年の方が多かった。配属年数の0年も多かっ た。これは圧倒的にほかよりも0年のピークが非常に高い。  22ページ。発生要因・輸血です。これも確認があがってきますが、輸血の場合には連 携が第2位にあがってきました。輸血の場合、医薬品もそうでしたが、医師や薬剤師、 看護師、検査等の連携が非常に問題になってくるということでしょうか。  23ページ。輸血に関する影響です。輸血に関しては図30で見られますように、実施前 発見で患者の影響度が大きいというものがかなりあがってきております。15件です。  次からは療養上の世話に入ります。療養上の世話は転倒、転落が多いのです。表16で 見ていただいても転倒・転落が多いのですが、その次に意外に多いのが右にある無断外 出と外泊で74件です。真ん中にある禁食指示の不履行、安静指示の不履行、こういうも のもあがってきております。  24ページ。図31です。療養上の世話で患者の心身状態として問題なのは、障害をもっ た方、歩行障害並びに精神障害等の障害を持った方が多いということです。  次からはICUに関する問題点です。図32の発生場面です。集中治療室です。第1番 目にあがってくるのがドレーン・チューブということです。全体傾向では処方・与薬が あがってきますが、ICUの中ではドレーン・チューブ類の使用・管理がダントツに高 くなっております。2番目が処方・与薬です。  26ページ。次がNICUについて見てみました。図33ですが、NICUでは処方・与 薬がありますが、次がドレーン・チューブです。そして3番目に給食・栄養というのが あがってきました。給食・栄養に関しては表19で詳細に見ております。一つは、内容間 違い、量の間違いということでした。以上です。 〇作業部会長  ありがとうございました。では重要事例情報を増子委員お願いします。 〇増子委員  重要事例情報の分析について増子から報告させていただきます。  資料3−1をご覧ください。この収集期間に関しましては、報告されたものが 8月27 日から11月25日までの3か月であります。施設としましては登録施設が265 ですが、報 告してくださった施設は89施設です。  収集件数に関しましては、下に表があります。総収集数が583 です。空白や重複等で 無効のものが92件、有効件数が 491件であります。これに関しましては資料3−3をご 覧ください。491 件の全事例をあげております。これについてはまた後ほど触れたいと 思います。  分析の概要です。資料3−2を開けてください。 1ページに目次があります。この 491事例の中から、21事例を分析しましたので報告させていただきます。  2ページをご覧ください。今までですと2ページの右側にありますヒヤリ・ハットの 具体的内容ということだけから私どもは分析させていただいていたのですが、左側のほ うにありますように患者さんの基本情報、全般コード化事例情報から、いま武藤委員か ら説明がありましたが、その中から報告されているもので全般コード化事例のほうか ら、患者さんの基本情報をとらせていただいております。ですから、事象そのもの、患 者さんの背景、あるいは誤りに関するものが以前よりも正確に収集できるようになりま した。  この例えば59の事例です。不十分な指示確認による与薬ミス、ということがありま す。この事例をまとめますときに、こういうタイトルと、下のほうにありますキーワー ドも入れさせていただいております。そして全般コード化事例から、いつ起きた事例な のかとか、あるいは発生時間帯はいつであるとか、発生場所がどこであるかとか、どう いう患者さんで、発見者は誰で、当事者は誰であるかということです。内容についての ことであるとか、要因はどういうことであったのか、ということを全体コード化事例か ら取りあげて細かく分析ができるようになりましたということです。  3−1に戻ってください。2ページです。分析対象事例の選定の考え方は、分析して 公開することが有用な事例を選定しております。そして選定の考え方は2ページの(1) (2)(3)にありますような選定の規準をとっております。  今回は毎回報告事例の多い、チューブ・カテーテル類について事例の9例を分析をま とめております。それも3−2の目次をご覧いただきますと、事例の 335から 483まで がチューブ類の分析になっております。  患者さんの特定や識別に関連するものも報告数が増えておりますし、このことは非常 に大切なことでありますので、異なる場面ごとに4例を分析しております。これは後の ほうの4事例、255 事例から477 事例までが患者さんの特定や識別に関する事例です。  その他、全般を通じて、事例全体を見ていただくとわかりますが、物、薬剤ですとか 機械等の特性を主な要因として指摘する事例も含まれておりました。これらに関しまし ては物を改善することで、人の認知的負荷の軽減や、記憶の混乱の誘発防止につながり ますので、ヒューマンエラーを防止することができるという観点から、検討会で有効な コメントが得られると判断して分析をしております。  物の事例は、3−2の例えば305 とか396 とか101 とか 293、483 など、その他にも ありますが物に関連した事例が入れてあります。  全般コード化事例からいろいろな情報をいただいておりますが、そこにつけておりま す事例の基本情報に入れておりますキーワードは、3−1の資料の2ページの下から3 ページにわたってキーワードを載せております。  4ページは、分析結果及び考察です。情報の概要です。全体の概要としましては、 491件が有効な報告であったということでです。改善策として有効な対策が施設で報告 され検討されている事例が、前よりもかなり増えてきているということです。そして報 告数が比較的多かった事例としましては、下に表がございます。  与薬(点滴・注射)に関する事例、チューブ・カテーテルに関する事例、転倒・転落 に関する事例、与薬(内服・外用)に関する事例、調剤に関する事例。これを全部合わ せると 311件で63%で、主に取りあげた事例はこういうものがあります。  手技・処置区分に横断的に、手書きの指示の誤読、伝達不十分、例えばよく読めなか ったとか、あるいは解釈するほうの受けたほうが解釈ミスというようなことが依然と多 く含まれております。患者の特定や検体の識別に関する事例も多く報告されておりまし た。  発生要因につきましては、思い込み、多忙、確認不足と分析する事例が依然と多く見 受けられております。適切な改善策を導き出すための原因究明ができてない事例もかな りあります。確認作業を増やすことで対応しようとする事例や、職員は作業手順の変更 を守るという前提でマニュアルの改訂を改善策とする事例も目立っております。  改善策については、作業プロセス全体の中で、その行為が必要かどうか、安全性を高 める業務の合理化が必要かどうか等のシステムの改善の視点で検討した事例が少なく、 職種や部門の視点にとらわれないで、組織横断的な視点でより改善策を立案するように 留意していくべきであると考えております。全体概要は以上のとおりです。  与薬に関する事例です。処方に関してシステム的な改善をたてるに至っていないもの があります。  未投与や誤投与、点滴速度の間違いについては、思い込みということによって起きて しまっているということで、このような思い込みとか、個人の記憶に頼ること自体がリ スクであると考えますし、認知によるエラーに対する改善策が、確認の徹底、というこ とだけでは予防にはなりにくいのではないかと思います。  名称や外観が類似した経口剤と注射剤を取り違えた事例を、この21事例の中にも取り あげております。事例によっては、薬剤によっては患者さんの死亡につながる場合もあ りますので、ヒューマンファクターを考慮した製品改善を期待したいと思っておりま す。  薬剤の自己管理に関しましては、リスクアセスメントの観点を強化する必要があるの ではないかと思っております。  5ページです。次はチューブ・カテーテル類、転倒・転落に関する事例です。  患者さんの痴呆とか意識障害による自己抜去、患者さんの状態に起因すると分析され ているものが多く見受けられます。与薬とか注射のように手順の見直しが事故の予防に なるわけではありませんので、リスクアセスメントのほかに、常に観察をするとか、あ るいは抑制の安全な方法とか、チューブ類の使用安全性とか、患者周囲の環境整備など が対策として取りあげられておりますが、それは当然のことであると思います。  挿管チューブの抜去に関しては、既に分析がなされておりますが、システマティック な具体策はなかなか示されておりませんので、根本的に挿管の必要性とか、そういう チューブ類が実際に必要なのかという根本的な検討がなされなければならないと思いま す。  また術後のせん妄等による自己抜去や、チューブの切断などの事例も21事例に含めて おります。術後のせん妄は起こりうることであり、ある程度は予測可能ですので、患者 さんの生命にかかわる危険がある場合については、防止対策としてセデーションについ ても考えてもいいのではないかと考えております。その際には患者さん及びそのご家族 に対する説明のあり方についても検討が重要であろうというふうに思います。  医療従事者間の連絡・伝達ミスに関連する事例です。医療従事者間の連絡・伝達ミス による事例としては、主に口頭指示の聞き間違いや伝達不十分で受けてのほうの解釈が 異なっているなどの事例が見られております。口頭指示はどうしてもやむを得ない場合 には仕方ないと思いますが、その際のルールづくりを検討する必要があると思います。  連絡ミスによりヒヤリ・ハットが発生している事例も多いのですが、またその中には 他者の発見によって早期にヒヤリ・ハットに気づく場合もありましたので、こういう事 例に関しては、少し大切に考えて、この際、どのようにして発見できたのかというよう な状況を詳細に明らかにしていくことが参考になるのではないかと思います。  6ページです。患者の特定や検体の識別に関する事例です。患者さんの特定や検体の 識別について、思い込みで間違えてしまうという例が多いのです。IDカードがカタカ ナ表記であるためにエラーを誘発している事例が見られます。電話のみによる口頭指示 ですが、エラーが発生している事例が多くみられます。職員がフルネームで名前を呼ん で確認しても、患者さんというのは何か慌てているのか、あるいはご自分であると思っ て返事をしてしまうというようなこともあります。また患者確認のためのリストバンド に誤記があったということもございます。  患者の検体や確認は、複数の手段で確認することが望ましいと思います。記載がカタ カナだけでなく、漢字とか、漢字とカタカナを併用することもいいのかなと思います。 氏名だけではなく同姓同名ということもありますので、生年月日を確認するということ も必要かと思います。口頭指示の場合よりはFAXのほうが記載で伝達されますので、 院内の状況を踏まえて、合理的な適切な仕組みを検討する必要があると思います。  その他注目したい事例です。例えば人工呼吸に関するヒヤリ・ハット事例とか、学生 による器械の操作ミス、記録物の紛失に関するヒヤリ・ハット。情報システムに関連し たもの。患者さんが離院した事例。調理室の職員によるヒヤリ・ハットなども見られる ようになっております。  人工呼吸器の事例では人工呼吸器装着中のチューブの抜管の事例が報告されておりま す。これらは検査ですとか看護師がケアをするときに、人工呼吸器や体を動かす際に発 生しております。患者さんの検査とか、あるいは放射線を撮影する場合にポータブルで 病室で撮影する場合もありますので、そういう患者さんに関連する他部門の人たちも、 安全な移動のための基本的事項を研修する必要があると思います。  学生による機器の操作ミスですとか、記録物の紛失に関することですが、今はどれだ けのレベルの技術を学生がやっていいのか、ということも一方では検討されているよう でございますが、実施できる看護技術を明確にしていく必要があろうかと思います。ま た学生の実習記録は学生が持ち歩きますので、そこには患者さんの名前とか住所を書か ないように指導することが必要かと思います。  情報システムに関連して、院内全体での連携がまだ不十分であったためにエラーを引 き起こしたということがありますが、情報システムを統括的に管理する担当者を設置す ることが望ましいと考えます。  パソコンはどんどん増えてきておりますが、パソコンの入力に関連した事例として、 末端からの誤入力による指示が見逃されて実施してしまうケースなどがみられておりま す。パソコンを使用した情報管理法について、入力内容のチェック機能や警告システム の導入、確認方法、などを検討する必要があろうかと思います。  7ページです。以上まとめとしましては、報告件数は前回の約半分となっております が、詳細な報告事例が増加しております。報告数が多い事例は、前回と同じようなもの ですが、比較的有効な改善策が少しずつ増えているということです。  こういう有効な改善策を検討して記入されているということは、医療安全対策ネット ワーク整備事業をとおして、ヒヤリ・ハット事例の分析及び改善の質がさらに向上しつ つある、それを見て学習するということから、少しずつ向上しているのかなということ が伺われます。  今回からは、可能な範囲で全般コード化情報とリンクさせることで、これまで以上に 分析が詳細にできるということは、改善の提案につなげることができて大変によかった と思います。  事故防止というのは組織全体で防止するのだという姿勢をもって、医療の主体者であ る患者さんに十分な説明を行って、患者さんにもそこに参加していただいて、一緒に防 止していくということが必要かなと思います。  今後の課題としては、前回と同様に、現場の分析への取り組みを支援するために分析 事例集の作成及び活用、分析のための教育用ツールの開発などが必要であろうと考えて おります。  事例の具体的な内容についての記述です。それは具体的内容について記述がまだまだ 不足している、あるいはあいまいで事例の状況がつかみにくいものであるというような ことなどです。  要因に関して、どうしてそういうことが起こってしまったのかということです。思い 込みとか確認不足ということがあるわけです。なぜそうせざるを得なかったのかという 背景要因の分析がなかなかされていない事例がまだ含まれております。  改善策の具体的な内容がわからないものもまだあるということです。  組織的な背景の要因というものが分析につながってなく、改善策が確認の徹底などと いう個人な努力や責任に帰するような表面的なものになっておりますので、こういうこ とは予防につながっていかないのではないかというような、組織的な背景要因などを もっと分析していくべきであろうと思います。  記載用紙のフォーマットについては、現在ヒヤリ・ハット事例検討作業部会で進めら れている検討を引き続き行って、記入者がより報告しやすい形式にしていく必要がある と思います。  個々の事例を横断的に統一的な視点で見たり分析したりする必要性が求められます が、検討班としても、今後もそういうことも検討をしていこうというふうに考えており ます。全体的に、分析した結果ですが、物の観点から事故を防止するという分析が全体 的には弱いという感想をもっております。例えば個人の観察ですとか確認にとどまら ず、チューブ類なども、特に患者さんが動くことを前提にした物の開発などの必要性を 提言していくというようなことも必要と思います。  3−3の資料の全般を見ていただくとわかりますが、事例のあげ方についてです。 490数例をここにあげておりますが、本当によくわからないというような事例がほとん どです。21事例を探すのがやっとという状況です。事例のあげかたに関しては、数では なく、きちんとしたものを書いていただきたいと思います。いまはインターネットで公 開しておりますが、それをもっともっと活用していただけると、私どもの専門的なコメ ントを付けておりますので、もっと学習できるのではないかと期待しております。イン ターネットの引き方も、例えばキーワードも随分蓄積できてきましたので、キーワード 検索とか、その他の引きやすい努力もしていかないとならないかなと思います。  この3−3の資料をリスクマネージャーが書いてくださるといいと思いますが、どう も記録をしているのは当事者であったり、その他の人で、リスクマネージャーが書いて いるとはまだまだ確信が持てないでおります。リスクマネージャーがその役割を果たす と思いますが、まだリスクマネージャーは成長の途上であります。すべての職種を横断 的に把握して、バランスよく分析する力をもったリスクマネージャーを育てていくとい うことと、その人の成長を助ける組織での位置づけとか、組織のトップの方々の権限を 与えるとか、あるいは活動をしやすくするとか、あるいは医師や他職種と対等にディス カッションできるように成長していっていただきたいですし、そのことの支援を医療施 設のトップの方々にぜひお願いしたいというのが、今回の分析の感想であります。以上 です。 〇作業部会長  ありがとうございました。いろいろと問題も提起されました。では最後に事務局から 医薬品、医療用具等情報の分析の説明を受けてから、皆さんの質疑を受けたいと思いま す。よろしくお願いします。 〇事務局  では事務局から、第5回医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析についてご説明いた します。  資料4−1です。まず1ページ目に全体の分析対象と今回の報告件数を記載させてい ただいております。総事例数 201、うち医薬品関連が 153、医療用具が38、諸物品が10 です。パーセントをみますと全事例数のうち各々占める割合というのは前回と同様の数 字が得られております。  2としまして、医薬品関連情報の要因別件数をまとめさせていただいております。今 回におきましては、その他37件で24.2%というのが一番多く報告されてございます。続 いて規格違いというものが35件で22.9%報告されてございます。その次が勘違いが24件 で15.7%報告されております。  前回の報告におきましても一番多く報告されましたのが規格違いです。Aという薬の 25ミリと50ミリとかという規格違いの間違いというものが前回同様に多く報告されてお ります。前回の多い要因として集計しましたヒューマン・エラーについては、今回勘違 いというものの中に同様に集計されております。  その他の37件のうち、検討班におきましては、その他の中に管理上の問題ではないか というような事例が9件で5.9 %ほど報告されております。例えばですが、Aという薬 Bという薬を生食に溶かしておいて用意しておいたものをとり間違えたとか、Aという 患者さんとBという患者さん用に薬を用意しておいたものを間違えそうになったとか、 そういう事例が若干報告されています。  続きまして2ページ目です。3としまして医療用具関連情報の要因別件数ということ で記載させていただいております。その他というものが17件で44.7%で一番多く報告さ れてございます。続きましては管理が不十分であるというものが13件で34.2%です。続 いて扱いにくかったというものが要因として多く報告されております。前回もその他に 次ましては、管理が不十分であったというものが多く報告されておりますが、今回も同 様の報告が得られていると考えております。  4としまして、諸物品情報につきましては、その他、管理が不十分であった、あるい は故障していた、というものが多く報告されております。  続いて資料4−2に具体的に医薬品情報、医療用具、諸物品の情報を全事例を載せて おります。この中で例えば17ページをご覧ください。  医療用具情報ということで集計しております。1番目に故障していたという報告がさ れております。これも先ほどの10事例の報告と同様ですが、事例の内容と意見等を簡単 に報告されておりますので、なかなか事例の解析がしにくい状況になっております。で はこのポンプと同様の報告としまして、過剰投与というものが報告されております。こ の要因を調べてみますと、機械が故障していたというよりも、チューブ、点滴ラインが 曲がって装着されていたとか、装着の問題というようなことも報告されてございます。  同じページの例えば 4番です。扱いにくかった、というような報告がされております が、これは20cc/時間というようなところを2.0cc /時間とした、小数点の位置が分か りにくいという指摘を受けております。備考にも書いてございますが、ポンプ類のワー キンググループ、医薬品医療用具等の対策部会の中で、このようなポンプ類の表示の仕 方、小数点以下の数字を少し小さくするとか、小数点以下の数字の識別性を高めるとい うことが検討されているところです。  18ページをご覧ください。9番目に管理が不十分だったという報告がされておりま す。これもシリンジポンプ等の問題です。最初にシリンジを正しく装着されているかど うかというところが問題になるわけですが、この辺につきましても、はずれ警報とよう なものを医薬品医療用具等対策部会のほうで検討しているところです。  その他としまして、何例か報告されております。その中で例えば22ページをご覧くだ さい。ここでもやはりポンプの問題が報告されております。取り扱い上の問題ではない かというようなことで検討をされております。例えば34番ですと、これもシリンジが正 しく装着されていないというようなことがございますので、この辺の最初の管理という か、適正な設定等をお願いしていくことがヒヤリ・ハット事例を防ぐというようなこと になると思います。簡単ですが以上です。 〇作業部会長  ありがとうございます。いま3つについてご説明がありました。これから時間がござ いますので少しご意見を伺いたいと思います。これが終わりましてから年間分析の結果 から見た課題ということで議論してみたいと思います。個別も大事ですが、次に関連す るようなことも心がけていただきましてご質問をいただければと思います。ご意見もま た伺わせていただきたいと思います。いかがでしょうか。 〇佐野委員  口火を切らせていただきます。資料2−1の3ページ目です。分析結果のところで す。発生時間帯の問題がございます。8〜9時の間が多いということですが、これはた またま事務系統の事例が増えたためであるということで、この情報が報告の数によって ずれてくるということがございますので、当事者別と時間帯別で考える。例えば、8〜 9時台ではたまたま1番目は事務系が多いが、2番目が看護系であったとか、3番目は ドクターであったというような系列が一つできる。  当事者別で、その当事者だけを中心としたときに、時間帯でどこがピークになるのか というようなものは、実際に利用しやすいデータではないかという気がするのです。そ の点に気づきました。 〇武藤委員  8〜9時というのはちょっとわからなかったのですが、処方関係が少しずれた、そう しますと事務系の報告が増えたということは確かです。でもそういう分析も必要だと思 います。 〇作業部会長  前回とずれたということよりも、職種別にピークになる時間帯が変わる、それは業務 改善とか、そういうことに結びつけられるであろうというご意見だったと思います。そ の他にはいかがでしょうか。 〇山路委員  発生要因のところでこの前も申し上げたと思いますが、多忙であったということが随 分たくさん出ております。恐らく、今回、ヒヤリ・ハットの大きな背景の一つになって いるのではないかと思います。多忙であったというだけでは、主観的な判断で客観的に どうなのかという意味で何の参考にもならないのではないか、どう多忙であったのか、 勤務条件が当時はどういう条件で、夜勤の体制であるとか、看護基準がどうなのかと か、他の病院に比べてどうなのかということと、どういうふうに因果関係があるのかと いうようなことを知らしめるような、客観的なデータとなるようなことが、この課題の 中でも重要事例の分析の課題の中でも書かれておりますが、もう少し分析が必要ではな いかという気がします。 〇武藤委員  事務局にお尋ねします。多忙であったというのはさらに下におりるということはでき ましたか。 〇事務局  事務局よりご説明いたします。コードを決定しているところで、多忙であったという 下に、さらにそれ以上細かく分類しておりません。現在のコード体系では多忙であった というところまでしかコード上は分類できないという形になっております。 〇増子委員  重要事例の方では、あげられた事例の内容でしか分析できませんので、専門家のコメ ントとして多忙であったというような表現に関しましては、その時間帯のスタッフが何 人であったとか、あるいはそこに関わっていた人の課題がどの程度あったのか、という こともぜひ書いてほしい、というフィードバックをコメントの中に入れているというこ とにとどまっております。 〇作業部会長  いまのことについて何かご意見ございますか。川村先生の分析でこの辺のことについ てのコメント何かございませんか。 〇川村委員  多忙であったということは、その時間帯に業務が多かったということで、主観的であ るとおっしゃいますが、業務量、あるいは業務密度対労働力、あるいは個人の能力のア ンバランスで多忙という事態が起こってくるわけですが、問題はそういう多忙というプ レッシャーにさらされていたということであって、その時の勤務人員がどれだけであっ たとか、まで記載を求めると、負担は大変に重いのではないかという感じがします。  現場におりましたら、多忙さというのは感覚的にわかりますのでそういう書き方をし てしまうのだと思いますが、どこまで求めるか、もし多忙となるなら、ある程度、多忙 の中身をフォーマットで示さなければならないのではないかと思います。  私の持っている事例では、あせっていたという言葉が、1/3 の事例背景の間接的 な要因にはなっていたと思います。 〇松月委員  実際に分析をしているときには、それを書かせるのは可能です。そこをやらないとシ ステムの改善にはつながっていかないのです。ですので具体的にはそれを皆のイベント レビューのような形で書かせているのです。ですので、ある程度進んできていると思い ます。現場のほうは日常のことなので、進んできていると思いますので、もしそれなら そのようにフリーにでもいいですから幾つかは書いてください、といえばいけると思い ます。実際にやります。それをやらないと、いつまでたっても事故がなくならないと か、解決していかないので、実際はそこまで分析しているのではないかと思います。 〇作業部会長  多くはね。 〇土屋委員  参考までに申し上げます。実は人間工学のほうで一部記録を取り出して、気がついた 点ということであげられた点です。まずひとつは、ずっと業務が持続をしているという 業務であるという特性は、これは他の職種にはない、医療に限ったことかもしれない。 それから非常に中断が多い。他のことが入ってくる。それが多忙とかにも関係してくる と思います。そういうものが、これは少しの例だけをデータとしてとられたときの人間 工学の人の意見として、それは特殊だと私は最近いわれました。  ですからこういう医療というものの人間環境というか、業務環境の特殊さというもの も、きちんと調査をする。このヒヤリ・ハット事例ということだけではなく、普通の データがどうであるのかということをやる必要も出てくるのではないか。そういう特性 をみながら対策を立てて行かないと、中断がないといっても無理な話ですから、そうい うものを前提とした安全のヒューマン・エラー対策というものを考えていかないといけ ないのではないかという気がいたします。 〇作業部会長  よろしいでしょうか、ではこの問題はこのぐらいにします。その他ございますか。 〇土屋委員  先ほどの重要事例でもシステムの問題が少し出ておりました。例えば私もずっと入力 エラーということでやりました。例えば薬品選択画面において、文字数を2文字ではな く3文字以上にするべきであるということを提言しました。いま国立大学などは3文字 以上ということをやっております。こういう規格というか安全規準というか、こういも のはシステムに対してはいまは全くないわけです。それぞれのベンダーが勝手に自分の ところで入力方法を決めてやる。こういうシステムについての安全指針というようなこ とを考えていかないと、これからシステムがらみのヒューマン・エラーというのは結構 出てくると思います。  ちなみに私の調査では、頭2文字が同じ組み合わせは、例えば49,800ぐらいありま す。わが国の医療用医薬品の中でね。3文字になると2,000 通りに減ります。これが3 文字以上にしたほうがいいという一つの根拠であります。こういうことをシステムがら みでやっておかないと、我々はどうしても印字されたものは間違ってないということが 先に働いてしまって、エラーが見つかりにくくなっているということもあると思います ので、ぜひ、そういうことについての安全規準をどうやったらいいのかというのは、こ こにも業界の方は出ていらっしゃいませんし、そういうことについての検討が必要なの ではないかという気はします。 〇作業部会長  システムのことについてですね。 〇原田委員  関連してです。情報システム関連につきましての事例が3つの報告にバラバラに入っ ているというのが気になりました。例えば、医薬品のほうの資料4−2の17ページ目の 2番です。複数の規格が存在したということで、インスリンの与薬というか、薬の払い 出しが間違ったという事例です。意見として出ておりますのが、プリントアウトの仕方 が悪かったというのが出ております。これなどは、私自身がフィールドを見せていただ いたときに、実際にプリントアウトした場合に、今までは連続用紙に出てきていたの が、別々の紙に出てきたので、量が分かれていたのでわからなかったという事例が確か にあるのです。  その意味でも、情報システムを入れたことによる問題点というものも、全く違うもの が出てくる可能性があります。それがしかもいろいろな部署を横断的に出てくる可能性 があるという意味で、いまのこのシステムからどうしたらいいのか、ちょっとよくわか りませんが、何らかの形でワーキンググループか何かで、どういうふうにして安全を保 障していくか、あるいはその問題をどこで扱うのかということをご検討いただいたほう がいいかと思います。 〇作業部会長  ありがとうございます。今の件に関して少し議論しましょう。土屋委員のお話は、シ ステム上で3文字を入れるということも含めて安全規準のようなものですね。それを規 準として示して、その規準に合致しているかどうかということを、そろそろ社会的なし ばりとしてあってもいいのではないか、ということですよね。  情報システムを入れることによって、どういうエラーが起こっているのかという研究 をどこかでやっていた気がするのですが、やっていませんか。 〇事務局  医療情報システム開発センターで昨年の研究としてやっていただきました。そこでい ろいろなシステムを導入することによる問題、メリットとデメリット、長所と問題点を とりまとめいただいたことがございます。それも参考に皆さんに普及啓発をしていただ くということはあります。 〇作業部会長  ありますね。それはぼくも入ってます。それはわかるのですが、それには土屋先生も 入りましたが、それだけではなく、もうちょっと調査系で何かありませんでしたか。 〇土屋委員  私が前に勤めていました病院で、導入前と導入後で調剤エラーがどういうものが変わ ったのかということを、前後で調査したことがございます。  その結果、例えば、名前と規格をきちんと書くようになった。ところが以前の手書き のときには、その薬は名前と規格を書かずに、あるAという30ミリの錠剤ですが、それ が90ミリという処方がされていることが手書きでは多かった。ところがコンピューター 化したことによって30ミリ3錠という書き方になったら、それが他の30ミリ3錠との間 での間違いです。今まで全く0であったエラーが、導入したことによって増えてしまっ た。  例えば眼軟膏と点眼液が、カタカナがきてその後に漢字3文字というパターンが一緒 になってくるので、そういうものが出ました。そこで今度は眼軟膏の軟膏という字を平 仮名にしたらまた0になった。そういうように表示上の工夫ということによって、新た にエラーが発生したものを防ぐことができる。  当然、導入したことによって読みにくかったことによるエラーはなくなったわけで す。それから3剤で量を10倍間違えたとか、原薬量か製剤量かというのは( )をつけ て(原薬量)と書かれることによって、そのエラーはなくなったというような前後の比 較をしたデータはございます。 〇武藤委員  関連です。例えば情報システム上で、 1回量投与量と1日投与量と製剤量、成分量、 その規格を標準化しようというノウハウを医療情報システム開発センターでやっていま すか。 〇作業部会長  やっております。標準化しようというのはやっておりますよね。 〇武藤委員  情報システムの上でです。 〇作業部会長  それは僕はちょっとわかりません。 〇武藤委員  例えば電子カルテの上で、いまいったような成分量とか製剤量とか、そういうものの 表示を、全国一律にしたらいいというか、そういう標準化作業はやっておりませんか。 〇作業部会長  安全対策会議の一番大本ですが、その会議の中で幾つか重要な概念が示されたと思い ます。その中に、物の使用の安全という概念があります。製品の安全というところから 使用の安全という概念が示されて、とても大事なことがあります。今のはそのことと関 係ありますよね。  それから物の世界では、ここは物のところがありますが、ユーザビリティテストとい うのがあって、そこの使用の、今までは熟練した医療者がそのことを前提にして、きち んと使えるというところからの製品の安全でよかったのですが、そうではないだろうと いうことです。それで使用の安全という概念が出てきて、そこに合致する形でユーザビ リティテスト、つまりもう少し低いレベルで、使用者の能力の期待値が低いレベルでこ れがうまく使えるのか、というテストが要求されてもいいのではないでしょうかね。 〇土屋委員  医薬品も医療用具のところもそうですが、ユーザビリティテストというのは、ほとん ど今まで行われていなかったという珍しい領域です。それは専門家が扱うからというこ とが前提になっていたというのがあるのだと思います。それはそうです。  しかし、現実こういうヒヤリ・ハットなどを見ると、経験年数0年のところでピーク が来ているということは、デザインそのものをユニバーサルデザインでやるしかないの ではないか、そういうことを今後検討していく。一部の製薬企業でユーザビリティテス トを始めたところもございますが、そういうことをきちんとやっていくということが、 使用の安全の意味では非常に重要ではないかという気がいたします。 〇作業部会長  物の世界でも時々最初のころにあったと思います。メーカーによってちょっとずつ 違っていたということがありましたが、その愚は繰り返さないようにしたいですね。そ の他にはいかがでしょうか。後半に議論する話までいっていると思いますがいかがで しょうか。 〇川村委員  今回はチューブ類の管理のトラブルの事例が大変に多かったものですから、大変関心 をもってみました。医療現場のエラー・トラブルというのは、答えが明確な事例、コメ ントもしやすい事例と、答えにくいというか、確定的なことが言いにくい、つまり多分 こちらを立てればあちらがたたずというような医療現場のアンビバレントな部分の中で 起きるものがあります。そういう時には当事者たちの経験などに任されながら、上手な バランスをとってやりなさいという状況の中で起こる、まさにチューブ類の自己抜去の 問題はそうだと思います。手術室の体位固定の問題もそういう感じがします。  現場で答えの出にくい、しかしどの医療現場でもそれは大変な問題で、結果がよけれ ば自分たちのとったやり方はOKですが、しかし微妙なバランスの狂いで重大な事故に もなり得ます。例えば自己抜去というのは、きちんと拘束すればいいということが一つ の事例で書いておられます。しかし拘束することによって起こる循環障害とか、また危 険なこともあり得ます。非常に苦しい状況に患者さんをおきますので、人権の問題等も 含めて、現場の人間は非常な葛藤におかれて、そこの微妙なバランスが個々の病院や 個々の医療技術者によって非常に幅があります。  そういう答えの出にくい問題が、一番現場を悩ますわけで、まさしく今回の事例はそ ういうものが対象になっています。  後のディスカッションにも入ると思いますが、ではそういう事例を集めて、安全の観 点から、ガイドラインを示していく専門家の研究グループというものを作っていくとよ いのではないかと強く感じます。  コメントも非常に観念的で、前に評価しましょう、いろいろと対策を考えておきま しょう、それはごもっともという感じがするのです。では具体的にどうするのですかと いうのが、現場が非常に切望していることです。事例をフィードバックされたときに、 自分たちがあげたことが大変に良かった、一歩前に進んだというように思えること、答 えの出にくい問題ですからこそ、やらないといけないテーマではないかというふうに思 います。 〇作業部会長  とても大きい問題が出てきたように思います。そうです。僕はトレードオフという言 い方をしておりますが、この問題をどうするか。現時点ではマニュアル類というものに ある程度は示されているのだが、そのマニュアルが結構抽象的で現場の個々の人たち が、その技術を適用するときに、どうも頼りきれないというところがある。それはマ ニュアルと現場のフィードバックの問題で少しは解決できる気がしますが、大きい問題 であると思います。問題はたくさんあります。臨床的な問題も結構あります。  肺塞栓症の問題だって、手術をするかしないとか、ヘパリンを入れるとか入れないと か、そういうトレードオフの問題はたくさんあります。その辺は結構難しい問題です。 ただ、いまもう少し踏み込むと、もう少し現場が楽になるのにという放置された状況は あるかもしれません。 〇原田委員  チューブ・カテーテル類の自然抜去、自己抜去というのは本当に難しい問題だと私自 身も感じております。観察が絶対に必要であるというのはわかります。ではその観察を どうやれば支援できるのかということも、もう少し物のレベルで考えることができるの ではないか。  例えば、どういうふうに配置してあれば観察が容易にできるのか、遠くからでもチェ ックができるとか、もう少しせっかくITの技術が出てきたところで、何かモニター類 でできることはないのかとか、そういう目で見るということも必要かと思います。  そういう意味で、増子先生からもお話がありましたが、どういう経緯で発見されたの かとか、早期に発見されたときに、どういう要因でうまく発見できたのか、どういう要 因でうまく発見できなかったのか、ということの分析も今後は必要かなと思っておりま す。 〇作業部会長  早期に発見された事例の支援に結びつくようなことですね。 〇松月委員  抑制とカテーテル類の自己抜去に関しては、この間ちょっと調べました。再挿入をど のくらいしたのかというのは、約半分です。ということは半分の方はそのまま抜去のま まになっているのです。そういう実態があるわけです。それをもう少し深めていくと、 集中治療室で絶対に抑制をしない、それからセデーションもかけない、でも自己抜去0 の病院というのがあるのです。では何をやっているのかというと、そこではそろそろこ の患者さんは気になりだしたぞということになると、別のケアをするのです。例えば背 中をマッサージしたりとか、お風呂に入れたりとか、そういうふうにして、患者さんと いう人間がそこに注意がいかないようなケアをしている。そのかわりに大変らしいので すが、でもそういう視点で見て行く。すると根本的な解決になっているわけです。  だから抜きたくならないような状態にもっていっているわけです。ケアをしながら。 それは集中治療室で医師も随分協力してくださるそうです。  そういう例もありますので、深く取り組めばあながち解決策が見つからないものでは ない、というのが現場の感想です。 〇武藤委員  全く同感です。チューブ・ドレーン・カテーテル、やはりそれこそ半分が抜かれても 大したことはないというのは、適応が問題です。気管内チューブの挿管適用、あとはI VHの適用、尿道カテーテルの適用、術後の抗生剤の何日までやるかという、この適応 をエビデンスに基づいて厳密にやれば不必要な、あるいは不適切な医療行為がなくなれ ば、そうすればエラーなどもなくなる。すごく単純な話ではないかと思いますが、なか なか難しいでしょうかね。 〇作業部会長  話はそこまで行きますね。(笑) 〇土屋委員  医薬品のほうで一番多いのが複数規格ということです。これは実はいま医療機関は一 生懸命品目数を減らしたりしようという中で、一番簡単に調整ができるのが複数規格を やめるということが、この事故防止という意味でもいいのですが、ただその場合に一つ 問題がございます。  そういう場合には大体小さい方の規格にするのですが、その小さい規格のほうにしま すと、保険のほうで点数稼ぎをしているのではないかということで、これで怒られると いうことが現実としてあります。要するに10ミリと 5ミリの関係は 2倍の関係になって ない。量的には 2倍であるが、薬価が違うのです。そういうことで 5ミリを使うという ことは点数稼ぎをしているのではないかということで、基金のほうから怒られたりする ということもあります。  これは別にそういうつもりでやっているわけではないということがあっても、なかな かそれが言えない。だから対策というものはある意味で複数規格、本当に必要なもの と、あったら便利というものは少し減らそうかということをやる。そういう別の意味の 障害というものもありますから、保険上の問題というものも、こういう全体的な、保険 の問題というのはまさに減らしましょうという話になって、いろいろなことが起きてい るここでの話と、例えば後発品に対しては2点を余分に付けますということであれ、む しろ似た名前をいっぱい増やしてしまうほうにいってしまったりとか、保険とこの医療 安全という話が必ずしもかみ合ってない気がいたします。  ぜひそういう観点も含めて、総合的に見ていただかないといけないのではないかとい う気がいたします。 〇三宅委員  今の複数規格のことは、私も以前から何回かいったことかあります。確かに統一すれ ば一番いいのですが、どうしても必要なものがあるわけです。すると、少なくとも2つ の規格があれば、それは見ても触ってもわかるように形を変えるとか、必ずそういうこ とを義務づければかなり違ってくるのではないか、そのように思っております。  ですから、確かに保険の点数その他のことがあるかもしれないのですが、できれば1 つの規格が一番安全ですが、どうしても必要な場合には、形を変えて作るということが 必要ではないかと思います。 〇作業部会長  ありがとうございます。その他にはいかがでしょうか。 〇土屋委員  ちなみに、複数規格の間違いが多いということがございますので、いま一応医療情報 システム開発センターのほうの医薬品標準委員会のほうでは、名前を細切れにしまして タグ付きの名前にしまして、例えばその病院で2規格があるときには、2という字を大 きく印字できるようにする。今は普通ですと同じフォントでしかできない、これを明朝 体をゴシックにするとか、大きくするとか、そういうコントロールができるような名前 というものを現在作っております。そういうことも先ほどのシステムの話にも関係して きます。  システムがエラーを防止するという一方で、この複数規格とか、記号違い、そういう もののエラーに対しては、そういうシステムを入れたところには、そういうメリットか 出るような名称というものを作らないといけないのか、ということで現在作成中でござ いますので、そういうことも一つの対策かなという気がします。 〇作業部会長  ありがとうございました。この議論はあとで一緒になると思いますので、次の議題に 進みたいと思います。  次は今までの 1年間のヒヤリ・ハット、あるいは重要事例、あるいは医療用具、医薬 品の分析を通じて見えてきたものを、結果を単純に前回は見たわけですが、そこから今 後の課題ということで抽出しうるものを考える。それに対しての対応を考えていこうと いうことであります。武藤先生ご説明お願いします。 〇武藤委員  では資料5をご覧ください。 1年あまりにわたりましてこのヒヤリ・ハット事例で事 例の分析と収集を行ってきました。そこからさまざまな課題が出てきましたと思いま す。いま気づいた段階での具体的な課題を簡単にまとめてみました。  具体的な課題として、1)医療機関全体のシステムに関しての話です。  1番は、組織的な取組の徹底ということです。指摘にもありましたように、手書きや 口頭指示による誤解釈や伝達不十分による医療従事者間の連絡・伝達ミスの事例などが あります。いわゆる情報伝達エラー、コミュニケーションエラーの問題です。  次は夜間です。夜間と日中では大分対応が違っているのではないか。特に輸血に関す るエラー事例などは、夜間の事例が報告されております。  それに対する課題としては情報技術、医療情報システムを含めて、情報伝達の合理化 方策を検討すること。2つ目としては、医療機関における、夜間の安全対策を検討する ことということです。  2番は、従事者に対する教育研修の問題です。特にヒヤリ・ハット事例に新人看護師 やローテーション後間もない看護師さん、あるいは研修医によるヒヤリ・ハット事例が 多いです。その結果として新人特有の知識不足が指摘されております。  課題としては職員、特に新採用職員はもちろんそうですが、経験を積んだ方でも配置 換え直後の職員に関する安全対策、あるいは安全教育が必要ではないでしょうか。  2)医薬品です。年間集計を通して、医薬品に関連した事例が最も多く報告されてお ります。無投薬、投与量間違い、投与時期の間違い、医薬品の取り違えです。問題とし ては名称や外観の類似性、及び同一薬剤の複数規格の問題が指摘されております。  課題としては、医療関連事故が最も多いことから、院内の医薬品関連のより有効な事 故対策システムを検討することだと思います。確かに医薬品は、処方から調剤、使用に 至るまで、大体50〜60ステップという非常に複雑な過程ですので、それを通観して見て 行くというシステムはなかなか大変でしょうが、これが必要であると思います。それか ら名称や外観の類似性の問題です。  3)医療機器の問題です。医療機器の使用・管理に関する事例は、職種経験が長くて も部署配属期間が短い場合には発生しております。特に人工呼吸器などは問題がありま す。どういうベテランさんでも、配属間もない、職種が変わったところで人工呼吸器に ぶちあたりますと、そこで事故が起こるということです。  医療機器の使用・管理に関する事例の中では、組み立て間違いや点検管理ミスが多い です。  また故障、誤動作、扱いにくい、ことが要因として指摘されております。  重要事例報告では、輸液ポンプ・シリンジポンプ・人工呼吸器等に関する事例か多 く、要因としては操作者と機器のインターフェイスの問題が指摘されております。やは り使いやすい操作パネルとかということでしょうか。  主な課題としては、医療機関における安全な医療機器の使用に向けた方策を検討する ということです。  使用・管理を徹底する観点から、保守点検を含む院内の業務システムを検討するとい うことです。これにはMEさんの活躍が期待されていると思います。  あとは企業においても事故防止の観点から、より優れた操作性を有する製品の開発や 情報提供方法を検討すること。それぞれの輸液ポンプなどで、パネル表示がメーカー毎 に全部違っているというふうになっている。それがさまざまなメーカーが入り乱れてお りますから、これで間違えるなというほうが大変であります。  3ページです。4.ドレーン・チューブです。ドレーン・チューブの使用・管理に関 する事例の多くは自己抜去であるが、これらの事例は時間帯や曜日による発生頻度に変 動が少ないことが特徴です。  自己抜去の要因として、せん妄や痴呆等の患者の状態をあげるものが多いが、抑制帯 の使用方法に起因する事例もあります。  課題としては、自己抜去防止の観点から、患者のアセスメントツールの開発が必要で す。リスクアセスメント、それと実際の例えば気管内チューブの適応問題とか、そうい う医療行為そのものの適切性の判断も必要だと思います。  5.転倒・転落です。療養上の世話や療養生活の場面における事例では、転倒・転落 が圧倒的に多いです。  小児のベッドからの転落や、電動ベッドからの転落等の重要事例報告がみられており ます。痴呆性患者さんが電動ベッドのベッド冊の間に頭を突っ込んで、首が圧迫された という重要事例かありました。  課題としては、より安全な患者の療養環境のあり方について検討することが必要で す。  6.小児の患者です。10歳以下の患者に関する事例が比較的多く、中でもNICUに おける事例の頻度が高かったです。NICUは病床数そのものは少ないのですが、事例 報告数としては病床数の割りには多かったということです。  主な課題としては、小児患者やその療養環境の特性を考慮した小児領域の安全対策を 検討することが必要だと思います。  7.ヒヤリ・ハット事例の収集・分析・提供システムに関してです。重要事例の報告 の具体的内容の記述が、分析するには不足しているものが多かったです。発生要因に関 しては、思い込み、認識不足があげられており、依然としてシステムの改善に結びつく 分析がされておらず、原因究明が不十分であります。そのため改善策も注意喚起や確認 行為の強化にとどまっております。個人の確認注意とか、確認判断を責めるよりは、シ ステムアプローチとして何かアドバイスができればいいのではないかと思います。  与薬・輸液ポンプ・チューブの自己抜去、転倒転落、人工呼吸器、コミュニケーショ ンエラーなど、報告されている主な重要事例は前と同じような傾向にあります。  課題としては、各医療機関における事例の要因分析・周知方法の改善とその記述手法 の普及啓発を図ることが必要です。現場でもわかりやすいマニュアルとか、そういうこ とでしょうか。  関係者がより活用しやすい形での結果の提供方法を検討することです。  今回、全体を通して、かなり大量の報告が集まっておりますから、ぜひとも事例のわ かりやすい形での現場へのフィードバックです。ホームページには掲載されております が、もう少し現場でわかりやすい形が必要ではないかというご提案です。以上です。 〇作業部会長  ありがとうございました。 1年間の年間分析結果から見た主な課題の抽出でありま す。これについてご議論をいただきたいと思います。現在おこなっている分析の体系が あります。それに関することが一つの大きなカテゴライズです。抽出された課題につい て、さらにこのスキームとは違った枠組みで何かをしなければならないこと、大きく2 つに分けて考えてみたいと思います。ご議論お願いします。  まず最初のほうのこの枠組みの中でさらに力を入れるべきとか、さらに詳しく見るべ きところという議論がありますでしょうか。  この中でひとつあるのは、重要事例の活用方法について、もう少ししっかりやるべき ではないかという気がします。いかがでしょうか。確かに私も厚生労働省のこのヒヤリ ・ハットのネットワーク事業の説明をするときに、インターネットをこのように引くの だという、実は厚生労働省安全対策ツアーというファイルを作っているのですが、すご いのです。7つか8つぐらいの階層に下りていかないといけないぐらいで、きっと何回 も行ったことのある人でないと行けない宝島であるという気がします。宝島であるには 間違いはないのですけど。  それのシステム的な改善は簡単にできると思います。もう少し活用方法ということで 何かありますか。  この重要事例がとても役立つということで時々お話を申し上げているのは、病院の人 たちがよくリスクマネージメントのところで検討をするのは、ほかの事例ではないです か。ほかの事例でよく中身がわかっていて、コメントのほうは隠しておいていただい て、うちの病院ではどうなのかということをしっかり徹底的にやっていただくと、結 構、リスクマネージャー、あるいは一般の職員を含めて力がつくのではないか、という ふうにご提案を申し上げているのです。それについてはいかがでしょうか。そういうこ とをやっているところは、恐らく自分の病院にも事例はあるから不自由はしない、とい う意見も聞かれそうな気もします。よい回答が示されているという点ではいいと思いま す。 〇武藤委員  重要事例の中で重要なのは、結構、専門家のコメントの中に参考文献とか、あるいは ガイドラインがあがっています。自分の実施施設でそういう問題があったときに、類似 の重要事例を引っ張りだしてくる、そこからいもづる式にいろいろな情報が集まってく る、それがすごくいいと思います。そういう利用の仕方もあるのではないでしょうか。 〇作業部会長  そうですね。 〇佐野委員  まさしくそうですが、こういうような宝物がここにあるということを知らない人たち のほうが多いのではないでしょうか。したがって、例えば日本医師会とか、あるいはい ろいろな病院団体というところに、こういうことをやっておりますということをPRし たら、随分違うのではないかという気がします。ほとんどの人たちは知らないのではな いでしょうか。そういう実感があります。 〇三宅委員  先ほどの増子さんの報告の中でも、システムへの改善に結びつけるような報告が少な いという話がありました。そこが結局、その施設に任せている現状においては、そのシ ステムにどう改善すればいいのかというような考えには至ってないのだが、こちらのほ うから、こういうふうなシステムの改善が考えられるのではないでしょうか。あるいは それをこちらからフィードバックとしてその施設に与えて、その施設からまた回答を貰 うような、そういうことでシステムを変えて行くというような作業が一番大事ではない かという気がしています。  非常にこれは大変な作業であると思いますが、できれば一つでも二つでもそういうも のができていけば、それが広く広がっていくのではないかという気がしております。 せっかくこれだけいろいろな情報の中から、少なくともこういう問題については、まだ システム的に取り組めるのではないかといものについては、そういう作業をすれば、次 のステップに広がるのではないかという気がします。 〇松月委員  そういうことを活用してもらうための一つの方法として、媒体にしてご覧くださいと いうことも一つの方法だと思いますが、もう一歩踏み込んで積極的に、例えば、監査で はなく教育というか、強制的な教育のような感じで、例えばグループを作って、報告が あったらまずそれが行くという感じで、分析をする力であるとかシステムにつなげる力 というのは、それぞれ大変に重要なことなので、皆さんそれぞれに努力はしていると思 いますが、やはり中途半端ではないかと思いますので、ここで私たちが得られたもの を、そういう形でいくグループがあってもいいのかなという気がします。 〇作業部会長  ちょっと確認します。それは院内でという意味ですか。それとももうちょっと違うも のでしょうか。 〇松月委員  厚生労働省がということです。 〇作業部会長  なるほど、するとリスクマネージャーの教育のところとか、そういうフレームでやる のかなという感じですよね。 〇松月委員  ただリスクマネージャーでも、例えば重要なものにはすごく関わりますが、日常的に いまここにあがってくるような、例えば気管内チューブの抜去というようなのは、結 構、現場サイドに任されていることが多いのです。実際に現場でやっている、もちろん リスクマネージャーも含めてですが、やっている分析の現場にちゃんと行くという形が とれたらいいかなと思います。  例えば病院中で、そのシミュレーションを例えば病院の中で一回やって皆で聞きま しょう、そういうことをやってもいいのかなと思います。 〇作業部会長  いろいろなアイデアが出されております。 〇原田委員  現在の分析のカテゴリーの中の話になるかどうかわかりませんが、2点あります。1 点はうまく使っていただくためには、もう少しシステムにお金をかける必要があるとい うことがあります。お金といいましても大したお金でなくてもいいと思います。もう少 し検索性をよくする。とりわけフルテキストでちゃんと検索をかけて、自分が興味のあ る例えば薬品名であるとかに関連するものが一挙に出てきて、しかもそれが見やすい形 で出てくるようにするということがまず1点です。  それからもう少しお金がかかる可能性ですが、何か入れたとき、あるいはあるもの を、こういう事例を探しているということを入れたときに、類似事例をきちんと検索し てくれるようなシステム、これは人工知能の技術を少し入れると多少可能になってくる と思います。そういう形で、これからどんどん事例が増えていきますので、関連する事 例をきちんと見せられるようなシステムを作っていく。そこに多少のお金をかけていく ことが必要ではないかというのが 1点です。  もう 1点は、三宅先生がおっしゃったと思いますが、今のところは匿名というか、一 方的に報告をするだけですね。ですから例えば具体的な情報がなくて理解ができないと か、そういうことであれば、ここだけとにかく見直してくださいというような情報を、 すぐにフィードバックしたいことがあるとか、そういうやりとりがいまのところは出来 なくなっている。それはヒヤリ・ハットというものが、名前を出さないということを前 提にして報告されているということがあると思いますが、基本的にダイレクトに委員の 先生方のところにメールが来ているわけではなく、センターを介していますので、セン ターのところできちんと守秘義務が守れるような形で、しかしセンター経由できちんと フィードバックできる仕組みです。  こことここについての情報だけを、もう一回教えてくださいという問い合わせができ るようなシステムを作っていくと、もっと重要な事例、これは大事であるが情報が足り ないから重要事例にできないというところが改善できるかなと思います。  それができますと、例えばある事例が報告されて、それに関連するのは類似事例でこ ういうものがありますということを、こちら側で、先ほどの類似事例集のようなものか ら引いてきて、これを参考にしてほしいというようなことをフィードバックしていくと いうことができますと、逆に、もっと報告によるメリットがありますので、きちんと報 告していこうというモチベーションにもなるかと思います。そうやって返していく方法 について、少しご検討いただければと思います。 〇三宅委員  いまおっしゃったこととかなり近いことです。そういうことを、別の委員会では検討 されているようですが、第三者機関ですね。そういうことろでそういう作業ができれば いいという気がします。  それから川村先生がおっしゃったことは非常に重要なことです。例えば、抑制の問題 であるとか、そういうものを研究会というようなことで、どういうものが許されるの か、むしろ今は抑制ゼロであるということをいわれたために、患者さんがお見舞いに来 たときに抑制されていたということでクレームが来たりすることがあるわけです。  ですから、抑制というのは必要があってしているわけで、それを十分に説明をしない といけないのですが、その時には、こういう規準のときには許されるのだということを 国民にちゃんと知ってもらわないといけないと思います。その意味でも、研究会のよう なことで、今まで非常にファジーで非常にわかりにくいことは、できるだけ明確にして 皆に知ってもらうとか、そういう作業も必要かなという気がしております。 〇土屋委員  今までのデータをデータベース化するということが、先ほどから出ている話だと思い ます。そういうことをやらないと、次にこのシステムの弱点とか、そういうことを知る ためには、皆に使ってもらって、現実にそういう検索で、ではこの検索ができるために はこの項目が必要であるとか、先ほどの例ではないのですが、その下に項目がないとい うことになれば、そういうことが出てくると思います。  ですからまず当面は、見やすいというか、少なくとも2アクションが3アクションぐ らいで、そこにたどり着けるような、簡易なシステムというか、システムというほどの 話ではなく、目次があってそこに飛べればいいのですが、医薬品を見ようと思うと一生 懸命根気がいるので、そういうことを含めた、まず見やすさについて早急に改善をして いただく。すると意見がいろいろなところから出てくるのではないかという気がしま す。 〇作業部会長  インターネットという媒体は即時性があっていいと思います。それからどこでも使え るからいいと思います。本当に皆が使うのかというのが半分ぐらいあります。というの はちょっと遅れるが、起こっていることはそれほどいまこの時でないとという話ではな いから、 その意味ではCDとかいろいろな方法があってもいいと思います。使いやす いということは必要ですね。それから類似事例がよく引けると、きっととても役立ちま すよね。その辺をぜひ事務局というか、上の委員会にあげていただければと思います。  今は重要事例の活用についてがかなり多かったのですが、そのほかにこれから研究が 必要とか、調査が必要とかということについてのご意見を伺えればと思います。 〇山本委員  2つございます。1つは今回の調査でも出していただいた施設が33%ぐらいです。特 定機能病院とか、国立病院ですから、日本の医療をリードする病院の割りには非常に少 ないかなと思います。と申しますのは、昨年度私たちが誤接続に関して特定機能病院と 国立病院へアンケートをとった時にも、25%しか回答がなかったのです。ですからむし ろ反応がない施設に対してどうするのか、それをしっかりやっていただくのが、全体的 なレベルを上げるには重要かなというのが1点です。  もう一つ医療機器の立場から提案があります。輸液ポンプとかの事故が非常に多い、 それもかなり健康被害が大きいということは、今回の調査でも、あるいは昨年度東京都 がかなり大がかりな調査をしておりますが、その時にも出ております。その時に、東京 都の調査ではそれを保守点検する担当者が誰かというような質問もされております。看 護師さんがやっている施設がほとんどだということです。  一方臨床工学技士さんの教科書のようなものを見ると、扱う機器というものは生命維 持に関係するものということで、透析とかそういうものについては保守・点検をするこ とと記載しておりますが、輸液ポンプ等については何も触れていません。ですから輸液 ポンプなども臨床工学技士さんが扱うというようにしていただくと、もっと事故が減る のではないかというように感じるところでございます。以上です。 〇作業部会長  今のことについてございますか。 〇石川委員  関連します。今まで3回のものを見ますと、先ほど武藤先生のまとめにもありました が、医療用具の中で 119件あったのですが、その中で一番多かったのが、27件の23%で 管理不足というのがあります。これが一番大きな要因です。その他に、例えばこれに類 似して、例えば故障していた。これも原因はわかりませんが、ひょっとしたら管理が不 足していたために故障がわからなくて、使うときにわかったということがあるかもしれ ません。誤動作していた。これももし管理をちゃんとしていればよかったのかもしれな い。これはよくわからないのです。事例を読んでも、細かく読むのですがわからないの です。ここがわかると、我々の企業側としても何らかの手が打てるのかなという気がし ているところです。  いま山本さんがおっしゃったように、実をいうと管理というのは医療法の中の施行法 にも書かれていて、本来ならば病院でやらないといけないことですが、どうも聞いてい ると仕組みそのものが足りないのかなと思います。先ほどの多忙であったということも 含めてですが、それなりのスタッフが揃ってないために起きていることもあるのかなと 思います。もちろんメーカーとしてやらないこともある。ユーザビリティを考えないと いけないこともある。  その中で逆にアプリケーションをどんどん高めるために、ソフトウエアをどんどん発 展しますと、なおさら複雑になるかもしれない。そういうリスク&ベネフィットをどこ で線を引くのかということもあると思います。  管理というところで、誰が、というところをもう一回皆さんで考えないと、要するに 部分でしか対応できなくて、全部が見られなくなるのではないかという不安をもってお ります。 〇目黒委員  当事者の臨床工学技士です。この前の会議でも他の委員会の席上でもいつもいうので すが、基本的にはマンパワーの問題があるという大前提があります。それでこの報告書 を見ていていつも思うのです。教育一つに関しても、輸液ポンプ、人工呼吸器、歴然と しているのです。看護師さんたちの新人教育をやったり、あるいは取り扱いについての 説明が終わった後に、クレームがどんどん減ってくるのです。  4月から前任者から引き受けて機器の中央管理をやりはじめましたが、マニュアルに 則って、電池を交換するとか、電源がきちんと入るというような基本的な保守・点検を やれば、すごくクレームか減るのです。歴然としております。  呼吸器に関しては、もっと先生たちも認識を新たにしてほしい部分がたくさんありま す。教育とか、いろいろなことが出尽くしておりますが、臨床工学の部分については、 臨床検査や放射線等のように組織がきちんと出来上がっていれば、意見をもっていける 場所がすごくありますが、当センターでも我々の部分は手術部の下になっていて、意見 を吸い上げる場所も一カ所ぐらいしかない。意見があまり上には届かない。それから 我々のもっている情報もなかなか行きにくいという状況があります。これはほかの国立 病院でも同じではないかと思います。  それから忙しさについても臨床工学でいえば、臨床業務が主体になっている部分が今 まで多かったものですから、管理がある意味ではなおざりにされていた部分がかなり表 面化してきているのではないかと思います。私も人工心肺等いろいろな臨床の業務を やっておりました。その中で業務の多忙さからいえば、看護師さんたちの忙しさもわか る。  その面でいえば、我々の場合には手術をやって、翌日検査が入ってまた手術という面 ではかなり過酷な労働を強いられている状況も多々あると思います。そういうものがあ まり表に出てこない。  検査、放射線、薬剤のように組織が出来上がっていると、長がいてそこにいろいろな 問題点が吸い上げられて施設のいろいろな方々に一応の情報が流れていき、改善という ことがあるのですが、どうもオーガナイズされていないとそういう意見が届かない。 我々もなるべくそういうように組織を作ってほしいというのですが、それが届かないの が今の現状かなという気がします。まとめをどうしたらいいのかわからないのですが、 そういう事実はあると思います。  このヒヤリ・ハットでもそうですが、輸液ポンプでもうまく入らないというクレーム は正直いって数が多いです。その使い方は、一つの例で、輸液ポンプですが,多剤併用 で三方活栓をいっぱい使って多剤がいっぱい入っていく。入らないからこれはおかし い、機械に責任転化される部分も多々ある。それは僕は看護師さんたちを責められない と思います。  まだ点滴がきちんと入ってないのに、では入らないから輸液ポンプで押しましょうと いう議論がなされている場合もある。  そういう部分が何かもう少しうまくいき、きちんと機械の取り扱い説明を看護部と連 携をとりながら、何か月間に一回ずつやるとか、先生たちを含めて呼吸器なり、そのほ かにも輸注ポンプ、それから低圧自動吸引器という小さな器械ですが、実は感染におい て重要な器械である場合もあります。そういう器械の取り扱い説明などもやらないとい けないということを常に思いながらやっております。その辺をいつも僕もいろいろな会 に出ていてマンパワーについてはいうのですが、あまり進んでいかないのでその辺が寂 しいと思っております。 〇作業部会長  ありがとうございます。福永先生、先生のところは結構器械を付けている患者さんが 多いですね。そういうところでの今のMEさんとか看護師さんの業務とその安全という ことについてお願いします。 〇福永委員  ぼくらが一番問題視しているのは、人工呼吸器です。だから特にそれに関してはキン ジストロフィー病棟では千人近くが呼吸器を付けているので、臨床工学技士が配属され ているところは、今は国立療養所の中では10箇所ぐらいでしょうか。一つは臨床工学技 士を増やしてほしいということと、あるいはまた臨床工学技士、あるいは他の関連もあ りますが、教育だと思います。だから 1年目の特に新人であるとか0年1年2年の方々 のヒヤリ・ハットが一番多いわけですから、教育してどうすればいいのか。  4月からうちの病院にも30名近くの新人の看護婦さんが来ますが、そういう教育シス テムの問題があります。それから臨床工学技士の問題からいえば、連携の問題という か、これもあまり管理者として臨床工学技士をよく知らないことも多いものですから、 今年はぜひそういうことで呼吸器に関しては臨床工学技士と看護師と一緒になって、呼 吸器についてのワークショップを考えております。  だからいかに教育システムをうまくやって、理解を早めて、できるだけそういうもの をなくするのかということが大事になってくると思っております。 〇作業部会長  ありがとうございます。 〇川村委員  全般的なことを蒸し返すようですが、原田先生がおっしゃったように、現状のシステ ムを少しいじったりする可能性があり得るのでしょうか。というのはマイナーチェンジ にしてもフルモデルというのは大変にお金がかかる。例えば、この情報で知りたくても 知れない問題がありますね。高度化情報で管理が誰をしていたのかとか、あるいはどう いう多忙であったのかというような、もう一つ向こうの部分が知りたい。いま多く私な どが勉強になるのは、重要事例の詳細な事例です。そこからわかったことを反映させ て、高度化情報でももっとこれだけわかってもいいはずではないかというような、少し 改善ができる可能性はあるのでしょうか。それが一つです。  もうひとつは、 1年たちましたので、社会に対してと報告者に対しての説明責任のよ うなものが出てくると思います。その時にこれまでに領域別にいろいろなことが明らか になりましたが、国レベルで、あるいはメーカーレベル、あるいは教育レベル、あるい は個々の組織レベルで、どういう問題があって、これからどう解決するように進まない といけないと思っている、というような整理が必要ではないかと思います。  先ほど、チューブ類の管理のところで増子委員がおっしゃいましたが、ちょっとわず かにおっしゃったのは、動いてもチューブにはずれができないような力を吸収してくれ るようなチューブの材質もメーカーに作ってもらいた。メーカーに改善してもらうばか りではなく、新規にこういう観点で開発していただきたい、というような国の会議であ るからこそ、そのレベルで提言するようなことを、解決レベルに応じて整理して、報告 者にとっても、これがそういう形で変わっていきつつあるということにしなければいけ ない。非常に労力のある仕事をやってよかった、という見える仕組みを作っていかない といけないと思うのです。  それでないと、かなりこの先に減衰していくのではないか、疲弊していくのではない かという感じがしないでもないのです。この2点です。最初のシステム改善の可能性が あるのかどうかも含めてお願いします。 〇医療安全推進室長  川村委員からご指摘いただいた2点についてご説明いたします。  第1点のシステムの改善の問題です。このヒヤリ・ハットシステムは幾つかのサブシ ステムからなっております。各々のシステムを常に見直していくべきであると思ってお ります。その意味で、例えば、結果を検索しやすい、活用しやすいシステムの構築、こ れもやらないといけないことであると思っております。これは主にソフトウエアの開発 ということになると思いますが、そういう形で検討をしておりますので、きょうのご意 見を踏まえまして、より使いやすいような形で見直していきたいと思っております。  調査の体系について。調査システム、情報収集システム、もしくは分析に必要な情報 をどうやって得るのかという点についてのご指摘がありました。この点については、現 在、このヒヤリ・ハットシステムの情報収集の方法、フォーマットを見直しております が、この中で対応できるというか、するべき部分と、もしかしたら別途に調査体系を組 んでやっていく部分があります。  例えばで申し上げます。これまでいろいろと投薬のミスのこと、与薬関連ミスのこと が指摘されておりました。現在、厚生労働科学研究の一貫として、医薬品の安全な管 理、情報伝達としての処方箋等の記載に関する検討、これがどういう実態なのか、ここ にご参加いただいている委員の何人かの先生には、そちらでもご足労をおかけしており ますが、そのような形で別途システムを組んで、もしくは検討するべきところにフォー カスを当ててやっていく部分と、幾つかのやり方があろうかと思います。非常に重要な 問題であると思いますので、そのような形でこのシステムを今後とも常に見直していく 必要があるのではないかと思いますので、ご意見を頂戴できれば大変にありがたいと 常々思っているところであります。  2点目です。説明及び活用責任についてのご指摘がございました。説明責任という意 味では、実はこの前回ここでおまとめいただきました通年の結果、これは各医療関係団 体に幅広く提供しております。特に例えば医師会、看護協会につきましては、部数を 200 冊ほどが必要ということもございましたので、各都道府県の支部レベルまでいくよ うな形で提供をしております。もちろんそれと同時に、今回、情報提供していただいて いる医療機関にも同様の形で提供をしているところであります。  ただそれだけではなく、それが具体的な改善方策に生かされるべきという活用に関す る点、責任と申しますか、その点に関しても非常に重要だと思いますので、今回、まさ に武藤委員からご提言いただきましたものは、非常に完結におまとめいただいておりま すので、1行もしくは2行のご指摘になっておりますが、こういうことをもしこの場で おまとめいただければ、それに基づいてできるだけ早く、年度内にできるものは年度内 に、新たな研究、それから予算が必要なものについてはそれが確保でき次第、という形 でこの情報を、ヒヤリ・ハット情報をもとに、我々医療安全の対策、システムが変更が 必要な部分について変更できるような検討を進めていくべきであるという趣旨で、今回 ご指摘いただいたのではないかと思っております。  その意味では、今回いろいろと1年間ご検討いただいておりますのが、この情報は無 駄にするということではなく、これをできるだけ生かして、必要な対策を講じてまいり たいと思っておりますので、その点で、そういう方向でご議論をおすすめいただければ ありがたいと思っているところであります。 〇武藤委員  付け加えます。川村先生がおっしゃったように具体的な分野別にアクションプランを やっていく必要がすごくあると思います。それももう少し具体的な数値目標の設置をし てやるとすごくいいと思います。例えば2005年までに50%減とかですね。それにやるに は実をいうと調査が必要です。ベースラインデータが全くないのです。ヒヤリ・ハット というのはボランタリーで出しているものです。それから報告者の認知レベルにかなり 依存しているのです。ですからこれは疫学調査ではないのです。これはもちろんすごく 重要な調査ですが、これと併行して疫学調査が必要です。特にインシデントとアクシデ ントのカルテ、数万件の調査をレビューアーを使ってやるとか、それも実際には欧米で あるアメリカやイギリスやオーストリアではやられていることです。そういう疫学調査 を来年度あたりにやっていく必要があるのではないかと思います。  それがベースラインデータになって、次のアクションプランになっていくのではない かと思います。  もう一つ、医療安全のEBMのデータベースが必要だと思います。EBMデータベー スはたくさんありますが、その中で医療安全のところを切り出したもの、そういう情報 のデータベースが必要ではないかと思います。例えばアメリカでは、アメリカの厚生労 働省の政府系のシンクタンクですが、AHRQなどが医療安全に関してのデータベース 集を作っている。そうしたような欧米の事例も活用しながら、わが国で活用できるEB Mに基づく医療安全データベースということになっていくと思います。 〇作業部会長  ありがとうございます。 〇土屋委員  それと同時に、ぜひデータをお作りいただき調査をしていただきたいと思いますの は、作業環境とか、いわゆる医療において、どういう条件になっているのかというデー タが実際にはないのです。すると例えば外観を変えようとしたときに、これが識別でき る明るさがあるのかないのかということも含めて、そういう基礎データが全くないとい うのが現状です。そういうことを側面支援できるようなデータ作りも必要なのかなとい う気がします。 〇原田委員  先ほど安全推進室長からシステム改善が可能であるということでしたので、元気を出 してあと 2点ほどお願いしたいと思います。  1点目は増子先生からも話がありました、報告者が誰であるのかという情報をきちん ととれるようフォームを改善していただきたいというのが1点です。  もう1点は、たまたま個人的な機会に恵まれまして1年分の全般コード化情報を分析 させていただきました。まさに隔靴掻痒といいますか、途中まではわかるのですが、こ こから先がわからないという気持ちが非常に強くありました。それを全部フォームで改 善できるのかというと、それはかなり難しいと思ったのです。それを全部入れ込んだ フォームになりますと、何枚も見ていて、私は関係ないのになぜこれにこだわらないと いけないのかという気分に絶対なるということを考えます。すると時にコンピューター を使ってということを考えたときに、インターラクティブな入力方法です。例えば多忙 であるということがチェックされたときに、何を聞くのかという形で、ある答えが出た ら次の問題が出でくるというようなものを、少しお金をかければできると思います。ぜ ひそこもご検討いただければと思います。 〇作業部会長  ありがとうございます。最後の点はいまこういう経験を積んでいるから少しそれが見 えてくる話ですよね。 〇三宅委員  いまお話になったことは、非常に私も大事であると思っております。ひとつはこれは 報告が意外に施設として少ないというのは、非常に煩雑であるから報告しにくいという とがあると思います。ですから、必要な情報を得て、詳しい情報はこちらから聞いてい く、そういう仕組みが必要だろうと思います。  これについては私は正確には覚えておりませんが、評価機構がいまは情報を集めてお ります。あの時に、プライバシーの問題が非常に議論になったと思います。その時に私 の記憶では、報告者の名前は評価機構のところには届くが、そこから先は全部匿名に なって分析をする。必要な情報はまた機構を通せば現場に問い合わせることができる、 というシステムになったというふうに記憶しております。  それは統計の専門家が秘密を守れるような処理ができるのであるということで、スタ ートしたという記憶しております。  ですから統計のきちんとしたシステムを使えばおっしゃったような仕組みはできるの ではないかと思います。  もう一つ、もっとこの報告をできるだけ簡便な方法で、重要な情報が入ったときには それを細かく聞いていく、そういうことでやっていかないと報告の数も増えないし、一 つひとつが十分に生かされないのではないかという気がしております。  ですから先ほどのように重要な情報については、そこの施設といろいろな情報のやり とりをして詳しく調べるということが必要ではないかと思います。 〇作業部会長  ありがとうございます。要するにダブルブラインドのやり方でシステム的にやってお ります。それは方法としてありますし、それは可能であると思います。ただ、医療機関 が評価機構の安全推進協議会というところに出しているのですが、そことの距離と、も う一つは国がやっている事業との距離感が違う気がしておりまして、そこが気になりま す。  時間がまいりましたのでこの辺でやめたいと思います。私は個人的に気になったの は、患者参加という観点のデータがないと思っております。いろいろなことを恐らく患 者さんも心配しているが、医療側の努力に任せきりというものも嫌だという感じがある ような気がするのです。そこが実態としてどうなっているのかというところも、そろそ ろ調べてもいいのではないかと思っております。 〇山路委員  いまの話は言いたいと思った話です。資料3−1の7ページのまとめのところで患者 参加ということがいわれております。これが 1年間の分析の中で因果関係がどの程度あ ったのかなかったのか、見ると患者さんとか家族が投薬ミスを発見した事例もあるよう ですから、その辺のところをもう少し強調していただいて、これからの主な課題の中に 繰り返してこの点をいっていただきたいと申し上げたいと思います。 〇作業部会長  患者参加というのは一つのツールとしての他に、もう少し医療側が何をやっているの かということをわかっていただくという大きな意味をもっている気がします。ですから そこも考えたいと思います。  いまご議論を幾つかしていただきました。そしてかなり重要な、もしかするとなかな か進まないかもしれないと思われるご意見もございました。このようなご意見を集約し ていただきまして、今後、検討部会の親部会がありますのでヒューマン・エラー部会で あるとか、医薬品・医療用具等検討部会、あるいはもっと大きい会議もございますの で、そこに適宜相談していただきたいと思います。そして別途調査研究が必要な場合に は、そのようなことが組み立てられる。  このヒューマン・エラー部会の中でできる、つまり例えばシステムの変更であるとか 活用について、少し便宜が図れるというようなことは、考えていきたいと思います。時 間がまいりましたので本日の議論はこれまでとしたいと思います。次回の作業部会の日 程について事務局から連絡をお願いします。 〇事務局  次回の日程につきましては、これから四半期毎ということでお願いできればと思って おります。5月中をめどに委員の皆さま方のご都合を調整させていただいて開催したい と思います。詳細につきましては後日ご連絡を差し上げますのでよろしくお願いしま す。 〇作業部会長  では本日はこれで閉会をいたします。ありがとうございました。                       (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                       電話 03-5253-1111(内線2579)