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B  看護師等養成所自己点検・自己評価指針

−「自己点検・自己評価の領域・項目」、「基準」「資料(データ)」「点検」−


−自己点検・自己評価指針の活用にあたって−

1.この指針は、文字通り、看護師等養成所の自己点検・自己評価のための指針として作成したものである。
2.本「指針」は、「自己点検・自己評価項目」、その「基準」、自己点検・自己評価のために必要とする「資料(データ)」 および、「基準」を踏まえて、「点検」する視点をあげ、構成している。
3.「基準」は、各養成所において、自己点検・自己評価についての知識と方法を理解しながら進めていけるように、各自己点検・自己評価の項目について、どのように見極めていけばよいのか、基本的な説明を含めて記述している。
4.「指針」の後半には、各項目で設定した「点検」を一覧できるようにした上で、各項目に対して、自養成所がどのような現状にあるのかを測定できるように、「非常によく当てはまる」から「全く当てはまらない」の尺度を設定してある。
5.この指針は各養成所が活用して、自ら改善して行くための指針であり、養成所間の相対的レベルを測るものではない。3で述べたように、各養成所が、常に評価結果に基づいて、改善の方向を見出し、その方向に向かって努力して行くための指針である。
6.評価が高くなることは、「基準」の内容が示すように、各養成所が自らの設定した教育理念・教育目的達成に向けて、常に自己点検・自己評価の機能を働かせながら、看護師等養成所としての自校の水準を維持・発展するように努力していることを示すものである。
7.評価のカテゴリは9領域あり、「点検」は59項目を設定しているが、一度に全ての領域と項目を改善できるとは限らない。自己点検・自己評価が継続的に、計画的に実施できるようになって行くことに意味があるので、実際に取り組める領域や項目から始めることが望ましい。
8.この指針に基づいた評価結果について、より客観性のある方向付けを得るためには、さらに第三者評価を得る(機会を設定する)ことが望ましい。


自己点検・自己評価 カテゴリー 基準 データ、資料
I 教育理念・教育目的
 社会の変化に対応し、医療・看護に対する人々のニーズを満たし、質の高い看護を提供できる保健師助産師看護師の育成は看護師等養成所の責任である。科学技術が高度化、細分化し、ますます価値観が多様化する将来に向けて、看護の質の保障をどのように担っていくのかの意識のもとに保健師助産師看護師教育が行われなければならない。
教育理念・教育目的を表示した文書
教育理念・目的がどのような考えから導き出されたかが記述された文書
1)法的整合性と独自性
2)教育理念・教育目的の意義と周知
これらのことをとらえ、看護師等成所において、各養成所の教育に対する(哲学的)考え方、教育活動全般に関する指針を示したものが教育理念・教育目的である。
 保健師助産師看護師の教育は教育基本法・学校教育法・保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下、指定規則)に基づいており、これらの法律と教育理念・教育目標との整合性についてはもっとも基本的な検討事項である。しかし、これらの法律の単なる遵守にとどまるのではなく、教育理念・目的は看護師等養成所の教育活動の基盤であり、指針であるため、それぞれの養成所が、看護・看護専門職・看護基礎教育の本質をどのようにとらえているのか、養成所の個性や特徴、設置母体の精神などを顕現したものでなければならない。
 教育理念・教育目的は、養成所が担う社会的責任から、誰にでもわかるように明示しなければならないが、特に教師にとっては教育活動の指針であり、また、学習者にとっては学習過程の指針を示すものでなければならないため、この両者にとってそれぞれの目的の達成のための方向性が理解できるように、具体的で実現可能な表示の仕方が必要である。
関連する法律との整合性について検討した結果に対して記述された文書

養成所の個性・特徴・設置母体の精神について記述された文書

教師及び学習者が教育理念・教育目的をどのように認知し、教育及び学習活動にいかされているかについて記述された文書(調査書)
3)看護専門職についての考え方
 人間のとらえ方
 人間の健康に関する考え方
 人間の社会のとらえ方
看護・看護学の考え方
4)看護教育についての考え方
 看護基礎教育のねらい
 教育の社会性と責任
 設置母体の理念
 地域社会との連携
 養成所の存在意義と責任
 看護職教育の質の保障
 看護学、看護教育の発展と追求
 教育理念・教育目的を評価するに当たり、以下のことについて十分に検討され明示されているかを点検する必要がある。
看護専門職についての考え方
保健師助産師看護師は看護学を学問背景としている専門職である。
したがって看護学、つまり、看護の対象である人間、健康、社会(環境)をどのようにとらえ、看護をどのようにとらえるかが、教育理念に明確に示されなければならない。この看護のとらえ方が教育課程の編成を決定し、教育の結果としての保健師助産師看護師の像を決定する。
看護教育についての考え方
保健師助産師看護師を育成するための看護基礎教育に於いてどのような人材を育成したいのかを明確に示す必要がある。保健師助産師看護師の教育は、人々の健康の保持・増進にかかわる社会的責任をになっているという認識に立ち、社会の要請、設置母体の理念、看護学の発展の方向性を見据え、専門職業人としての自律性、倫理観、判断力、実践力をどのようにとらえて看護の質の保障をするのかを明らかにしなければならない。
看護、看護専門職、看護基礎教育をどのようにとらえているかが記述された文書
5)学習・教育の考え方と学生のとらえ方
学習・教育観
教育姿勢・学生とのかかわり
教員の役割
学生観
 学生の成長についての考え方
 社会人学生のとらえ方
 学習者としての尊重
学習・教育の考え方と学生の捉え方
学習・教育をどのようにとらえるかによって学生へのかかわりは変化する。看護師等養成教育は高等教育であり、学生は自ら学ぶ存在であり、1人の成人として尊重される存在でもある。学生が自己教育力を身につけ、自ら積極的に看護を追求していく姿勢を育成することが重要である。また、社会人学生も増えてくる傾向にあることも考えると個々の学生の背景をどのように考慮し、かつ学生が自ら学ぶことをどのように支援していくのか、学生のとらえ方と学びを支援するための学習環境(特に教員・職員)をどのように整えているのか評価・点検することが重要である。
学習者である学生の捉え方について記述された文書
学生の学びを支援するための学習環境(特に教員・職員)について記述された文書

卒業時における学生の到達度を示す資料
6)教育理念・教育目的の評価
学習・教育成果の評価の考え方
教育理念・教育目的は固定されたものではなく、継続的な改善を前提として設定されなければならない。社会的ニーズ、学習者の背景は常に変化し、看護学も学問的な発展を目指している。看護基礎教育はそれらの変化、発展の方向性を把握・分析・解釈し、時代を担う看護専門職を育成するためには、教育理念・教育目的の不断の点検・改善は必須のことである。したがって、教育の結果をどのようにして評価するのかについての考え方も示し、その有効性を点検し評価するこが必要である。
10教育理念・教育目的の点検・評価計画

図1.教育理念・教育目的の設定に含むべき条件

  <点検>
 卒業時点において育成する保健師助産師看護師がどの様な資質を有しているかが明示され、それが「保健師助産師看護師の資質」であることが学生、教師にとっても明確にわかるように表現しているか
 育成する保健師助産師看護師の質を保障するために、どのような教育内容、教育方法、教育環境を整えようとしているのかについて述べているか
 看護、看護学教育、学生観について、教師の教育活動の指針になるように明示され、実際に指針となっているか
 教育理念・目的は、学習者にとって学習の指針になるように具体的に明示され、実際に指針となっているか
 自養成所の教育上の特色を明示しているか
 
II 教育目標

 1)教育理念・目的との一貫性

 2)目標内容の側面とそのレベル

 3)設定意図とその明確性

 4)目標の実現可能性

 5)教育目標の評価

教育目標は、教育理念・目的を達成するために設定した教育内容について、目標として表現し設定したものである。教育内容は、教育的に意図した学習経験のまとまりごとに区分され、それが科目−単元−一回ごとの授業の内容として組織化されるので、教育目標は、(分野別目標−領域別目標−)科目目標−単元目標−授業単位の目標へと展開していく階層的な構造を成している。科目目標の上位に置かれるのが「教育目標」である。したがって、「教育目標」は全ての科目の授業を通して最終的に学生に修得させようとする能力、すなわち、卒業時にどのような能力を修得させようとしているのかを具体的に示しているものであり、教育活動の最終的なゴールを表すものとして明示されなければならない。それは、教育理念・教育目的との一貫性がなけれならないものである。
 教育目標を明示することは、教師にとっては、教育活動の、学生にとっては、学習活動の明確な方向とその達成を評価する基準として欠くことができないものであり、教育の保障につながるものである。
 看護師等養成所の目的は、専門職業人としての看護実践者を育成することである。したがって、各養成所の「教育目標」は、卒業時に保健師助産師看護師としてのどのような能力を修得させようとしているかを明示していなければならない。そして、その目標設定にあたっては、看護の専門職教育における卒後教育、継続教育の視点から、看護基礎教育の目標達成レベルをどこにおくのかというとらえ方からの検討も必要である。つまり、各養成所の「教育目標」は、看護基礎教育において、看護実践者としてどのような能力について、どのようなレベルのものを修得させるのかについて明確に、かつ具体的に保障することが必要である。教育理念・目的の実現のために、どのような内容をどのレベルまで到達させるのか、期待する具体的行動や思考の特徴が明確に教育目標として示されていなければならない。目標内容としては、知識・技術、倫理性、自立性、責任性、指導性、協調性、柔軟性、探求性、国際性の側面から考える必要がある。到達レベルについては、達成目標、向上目標、体験目標の区別を明確にして表示する必要がある。また、教育目標には、前述した看護実践者としての能力の育成と専門職として生涯学習の視点から自立した学習者としての能力の育成、つまり、生涯に亘る人間としての成長保障に関する内容も必要である。
 さらに、教育目標は、具体的な教育内容の抽出・精選、教育の方法論に直接関連し、教授・学習活動へとむすびついていくため、妥当で実現可能なものであるかを常に点検・評価することが必要である。
 目的の実現のためには、教育にかかわる全員が教育目標について共通認識を持つことが不可欠であり、そのための討議・検討が必要になる。学習者も教育目標を理解し、何をどこまで学べばよいのかが具体的にイメージできることは学習意欲を維持し自主的な学習姿勢を形成するために不可欠である。したがって、社会の人々や学習者が理解できるように表現し明示しなければならない。
<点検>
 看護実践者としての能力を育成する側面と、学習者としての成長発達を促すための側面の両側面から教育目標が設定されているか
 教育目標は、設定した教育内容を網羅(包含)し、かつ最上位の目標として、教育活動のゴールが読みとれるものとして示されているか
 看護専門職としての卒業後の継続教育の在り方を示した上で、看護基礎教育の教育目標の設定が考えられていることが述べられているか
 教育目標において、目標内容と到達レベルが対応し、具体的で実現可能な目標として明示されているか
 教育理念・目的と教育目標が一貫しているか
11教育目標及びその目標設定の意図が記述された文書
学則、履修要覧、養成所案内

12卒業時の看護実践力の到達状況

13国家試験の合格状況

14就職後の就労状況に対する施設側の評価

15卒業生の看護実践力についての自己評価

16卒業生の大学・大学院への入学、編入学状況

図2.教育課程における教育目標の位置づけと設定に含むべき条件

III 教育課程経営

1)教育課程編成者の活動

組織的活動
教員の教育課程についての理解とその活動

 教育理念、教育目標との整合性教育課程経営は授業と経営・管理過程をつなぐ活動であり、教育課程を編成し、運営する活動を意味し、授業そのものの効果を規定する活動である。すなわち、教育課程の編成と運営は直接的に授業の善し悪しに影響することについて自覚されていなければならない。ここでは、教育課程編成者のこのような意図性(自覚)を問題にする。教育課程を編成する時点では、単に教育課程の形式を整えるのではなく、各教育内容がどのように授業の中で展開されて行くのかが明確に意図されていることである。また、教授・学習過程では、教育課程の編成意図すなわち、教育目的・目標に向かって授業を実施することが意識されていなければならない。そして、その達成をみる評価活動の段階においては、具体的な個々の授業目標の達成と教育目的・目標との整合性(一貫性)において検討することが必要である。そのためには、教育課程編成委員会等の活動が常に学校の組織において機能している必要がある。

<点検>
教育課程の編成者は、カリキュラムと授業実践、教育の評価の関連性を明確に持ち、それぞれの関連を有機的に整え、調整する活 動を行っているか
教育課程編成者の活動は、教職員全体の活動が教育理念・教育目的の達成につながるように、組織的な活動になっているか

17編成した教育課程がどのように実践され、その評価はどのようになっているか、その評価結果をどのように教育課程改善につなげるかを明確にした文書

18教育課程編成委員会等の目的、 機能・役割を示した文書
2)教育課程編成の考え方とその具体的な構成
教育課程編成の考え方とその具体的な構成
 教育課程の編成にあたっては、どのような教育課程編成の考え方(モデル)に基づいているかについて、明確でなければならない。看護師等養成所として、看護の専門職育成のためにどのような教育課程が適切であるか、その考え方が自覚されている必要がある。例えば、看護の考え方、看護の技術、看護の対象者である人間の理解に関する内容では、それぞれが「看護」の実践的体系の一領域としてあるだけではなく、学問的には、それぞれが一つの体系をもった内容としてあることを考えるならば、単に一つのカリキュラムモデルだけでは意義のある教育課程の構成はできない。看護の技術を教育するためには、技術という特徴から、「工学的モデル」の採用は意味があるであろう。しかし、看護の考え方や人間の理解は、一つに集約されるものではなく、多様な考え方を教育することが必要である。このためには、考え方の多様性を教育するためのカリキュラムモデルを選択する必要がある。したがって、教育課程編成にあたっては、どのような考え方に基づいて、教育課程を編成しようとしているかが明確になっている必要がある。この中には、学生の成長発達だけではなく、学習への動機付け、学問への興味関心・追究などを意図して、何を必修とするか(どのような内容を基本として設定するか)、何を選択とするか、等についてもその考え方が明確に述べられていることである。

<点検>
教育課程編成をどのような考え方に基づいて編成したかを述べているか
採用したカリキュラムモデルを妥当とする根拠を、看護学教育の内容の点、および学生の成長発達と学習の理解の点からら述べているか

19教育課程編成の考え方とその具体的な構成を示した文書
3)教育内容の階層的関連性とその配分の考え方
教育内容の階層的関連性、配分の考え方
 基礎分野、専門基礎分野、専門分野についての考え方と各分野の具体的な内容をどのようなものとするかその考え方が明示されている必要がある。つまり、基礎分野として設定した内容がなぜ「基礎」と位置づけられるのか、何に対する基礎なのか、が明確になっている必要がある。専門基礎分野についても同様に、設定した内容が、専門分野のどの内容とどのように関連しているのかを明確になっている必要がある。専門分野は、看護学の内容で構成されるが、看護の実践者を育成するために妥当な内容が選択されていなければならない。そして、それが基礎分野、専門基礎分野とどのように関連しているかが明確になっていなければならない。
 指定規則には各分野の単位が明確に定められているが、各養成所においては、具体的に設定した各分野の教育内容にどれだけの単位と時間数を配当するのかについて、根拠を明確にもっている必要がある。単位数と授業にかける時間数は、設定した教育内容がどのように授業され、学生によって、どのように学ばれるのかということと関連していることを理解して設定されなければならない。
20教育内容の階層的関連性、配分の考え方を明示した文書
 学生便覧、履修要覧等
4)科目・単元構成
科目・単元構成
 設定された各分野の教育内容は、さらに、科目として区分・構成される。つまり、科目は、「既存」しているのではなく、教育理念・目的、教育目標との一貫性の基に、意図的に「まとまり」をつけ、区分して構成するものである。したがって、カリキュラム編成にあたっては、この科目構成の考え方が明確でなければならない。どのような科目として構成するか、設定された各分野の科目(群)が直接的に各養成所の教育理念を反映し、養成所の特色を示すものとなる。このような考え方は、養成所独自のものと、医療の現状や将来性を見据えた上で、文献検討等を踏まえ、看護専門職育成のための科目として、妥当であることが十分に検討されていなければならない。
 科目が構成されたならば、その科目の内容をさらに授業実践に向けて、より下位のまとまり(通常、単元と言われる)をつける。ここにおいても、単元間の重複や関連性が明確に意識され、科目目標との整合性がなければならない。

<点検>
各分野の教育内容について、その分野の内容とした根拠を述べているか
時間と単位の配分(設定)の根拠を述べているか
科目構成、単元構成の考え方と根拠を明確にして構成され、その考え方は教育理念・目的、教育目標との整合性をもち、構成された科目は看護実践者を育成するのに妥当であり、かつ養成所の特色をあらわしているか

21科目・単元構成の考え方を明示した文書
5)教育計画
 単位履修の考え方
教育計画:単位履修の考え方
 養成所は、指定規則に定められた就業年限を遵守した上で、学生が効果的に学修できるために、科目の履修方法を考慮していなければならない。単位制の基本的な考え方を十分に理解し、単位修得の期限、それに基づいた教育計画が立案されていることである。現代の生涯学習の理念を踏まえ、従来の、通年で単位を修得する考え方のみではなく、セメスター制、パートタイム学修制、科目履修制など、柔軟に取り入れ、可能な限り、学修の支援をする方法を提示しておくことである。つまり、どのような内容を、いつ、どのような頻度で履修させるかの考え方が明確でなければならない。
 一方、育成する看護実践者の質を維持するためには、学生は科目間の有機的関連を十分に理解し、各科目で修得した知識・技術が統合されて理解に至っていることが重要である。この意味において、科目の配列(履修の順序性)は意図的に計画されなければならない。
 単位履修の方法とそれに伴う制約は、教師、学生の双方が明確に理解している必要があり、明示されていなければならない。

<点検>
単位履修の方法とその制約が教師・学生の双方がわかるように明示され、その方法が学生の単位修得の支援となっているか
科目の配列は、単位履修と看護実践者になるために養成所が設定したその質を維持して修得できるような配列になっているか

22教育計画:単位履修の考え方
 学生便覧、履修要覧等
6)教育課程評価の体系
単位認定の考え方

 評価用具、評価基準、
 評価の時期、
 単位認定は、養成所が設定した教育内容を修得したことを学生に対して認めるものであり、社会的には、育成する看護実践者(卒業生)が、看護実践者としての必要な能力を学修したことを保障するものである。したがって、単位認定にあたっての考え方は、教育理念、目的、教育目標との一貫性がなければならい。この意味において、養成所が設定している全科目の評価の時期、評価基準(認定基準)は明確に設定され、全ての授業担当者に理解されていなけれならない。また、単位認定の方法は学生に明示され、それが学修の支援につながっている必要がある。つまり、単位認定は、設定した教育課程の評価に直接的に関連しているのである。授業の形成的評価がどのように科目の評価とつながり、それがどのように単位認定とつながるのか、授業担当者の裁量と学校としての基準との関連を明確にしておく必要がある。

<点検>
単位認定の方法について、授業担当者の裁量と養成所としての基準が明確にされ、教師、学生の双方が理解できるように明示しているか
単位認定の基準(設定)は、看護専門職に必要な学修を認めるものとして十分に根拠があり、妥当であるか

23単位認定の考え方、方法を明示した文書
IV 教授・学習・評価過程

1)教育内容(教材)のまとまりの考え方

教育課程上設定した教育 内容と教材の一貫性

授業の考察とシラバスの作成
 教材設定の意図
  教材観
  看護観
  学生間
  教育・学習観
 具体的な指導目標
 授業の具体的な展開
  具体的な指導内容
  具体的な指導方法
 具体的な評価の方法

教授・学習過程は「授業」と同義であり、教師が教授し、学生が学習する過程は、教師と学生の双方向コミュニケーションおいて成立することを前提にしている。学生、教育内容、教師の3要件によって、教授・学習過程は成り立つ。
 ここにおける学生は、学生一般ではなく、当該の授業をうける当該の学生(特定の学生:集団、個人)であることを理解していなければならない。
 教授・学習過程における教育内容は、当該学生に対する当該の授業において教授・学習される教育内容であり、教材と言われる。教材とは、学校の教育目的を達成するために教育課程として設定した教育内容を、当該学生が修得できるようにするために意図的に設定した(教育目標を達成するための)材料という意味であることを理解していなければならない。したがって、各科目の教育課程上の位置づけ・目標のみならず、養成所の教育理念・教育目標との一貫性を常に意識して教材を設定できることが求められる。
 当該授業の教材の設定においても、授業の実践においても、看護教師としての教育観(学習観)、看護観、学生観が意図的にも、無意図的にも反映される。したがって、教材をどのような意図の基にどのような内容として設定しているのか(教材観)についてだけではなく、自らの看護観、教育観、学生観を明確にしていなければならない。これは、当該授業についての十分な考察を行うことを意味している。この考察にあたっては、看護理論や研究成果、看護の実践的知識など、文献検討を踏まえて看護学教育としての妥当性・客観性を常に追究することが重要である。
24教育内容(教材)のまとまりの考え方、各科目の教育課程上の位置づけ・目標を記述した文書
学生便覧、履修要覧、
シラバス

25教材研究資料を整理した資料

 ・看護学教育としての妥当性の追求
 さらに、当該の授業を行うにあたっては、当該学生の当該授業に対するレディネスを明確に捉えた上で、当該授業の目標、具体的な指導内容(教材に含まれる下位の内容)、具体的な指導方法、具体的な評価方法を設定できなければならない。当該授業の指導目標を設定するにあたっては、その授業において到達させる目標がどのようなものであるか、すなわち、達成目標、向上目標、体験目標の区別を明確に意図して設定する必要がある。
 当該授業内容(教材)の考察を踏まえ、指導目標の設定、具体的な下位の指導内容の設定、具体的な指導方法、具体的な評価方法について、計画書として明示したものがシラバスであることを理解している必要がある。つまり、シラバスは教育目的・目標との一貫性、整合性を常に意識して作成されなければならない。
 ・教育内容間の関連と発展
 また、当該授業は、教育課程全体の中での授業であるという意味において、必ず、他の授業との直接的、間接的位置関係がある。教師は、当該授業を実施するだけではなく、その授業が他の授業(科目、内容)とどのような関連性を持ち、どのように他の授業(科目、内容)の基礎となり、発展したり、あるいはまた、重複しているのかについても明確に意識してシラバスを作成し、かつ授業を行う必要がある。  

図3.教育課程における教授学習過程(授業)の位置づけと構成因子

  <点検>
教育内容(教材)のまとまりづくりの考え方が科目目標との整合性を踏まえて明確に述べられているか
教育内容のまとまりは、看護学の教育内容として理論、研究成果、看護の実践的知識など、文献検討を踏まえて教材研究を行い、妥当性がある内容となっているか
当該教育内容と他の教育内容との関連において、重複や整合性、発展性などについて明確になっているか
 
2)教育方法の考え方
 ・授業形態、授業の展開過程
教育方法の考え方
 教育方法は、教育目的を達成するために教師によって意図的・計画的に行れる教育活動の方法である。教育方法は、単に方法と言っても、次のような区別がある。1.どのような形態(履修形態)の授業にするか、2.学生をどのように構成して授業の対象とするのか、3.授業の展開過程において、学生に対して具体的にどのような指導の方法をとるのか、4.どのような教材・教具を用いて指導するのかについて理解し、これらを、教授・学習過程に合わせて、すなわち、当該授業の内容、学生にあわせて意図的に選択し、それを効果的に実践できることである。
26教育方法の考え方
具体的に授業の内容・方法が記述された文書
 シラバス
 ・履修形態
講義・演習・実習
1.履修形態の選択
 履修形態としては、講義、演習、実験、実習がある。
教師は、各履修形態の特徴を十分に理解した上で、設定した授業内容に適した形態を選択する必要がある。例えば、実習を履修形態に選んだ場合、それを選択した意図があるはずである。教育内容の中で、その授業がなぜ実習という形態でなければならないのかが問われる。
27具体的な授業の展開過程を示した資料
 講義計画・実施資料
 演習計画・実施資料
 実習計画・実施資料
 ・一斉授業
 個別指導
 小集団指導
 (通信指導)
 (面接指導)
2.授業の対象とする学生の構成を意図的に設定して方法を選択
 授業を受ける学生の構成から指導方法を選択するには、一斉授業(クラスや学年をひとまとまりとして)、小集団(グループ)指導、個別指導がある。教師は当該授業において、学生をどのように構成して指導を行うのか、それぞれの特徴を十分に理解した上で選択する必要がある。
 ・指導技術
発問・説明等
3.授業の展開過程における具体的な指導の方法(指導技術)
 実際の教授・学習過程では、教師は教育内容の説明のみならず、そ
れを効果的に行うために、また、学生の理解や、学習意欲、課題の追究を支援するために、多くの指導方法(指導技術)を持っているものである。指導技術としては、「説明」「発問」「指示」「演示」などがある。これらの指導技術について、教師は意図的に、かつ効果的に授業の中で実施できるようになっている必要がある。
 さらに、学生の理解は当該授業内において完結するものではなく、授業終了後にも追究し、深化することが期待される。したがって、教師は学生が授業内容についてさらに興味を深化させ、追究していくための支援ができることも教育方法の1つとして重要である。
28学生に課している課題や支援の内容を示した資料
 ・教材・教具

 ・ティームティーチング

4.どのような教材・教具を用いるかの選択
 教材・教具は先に述べた教師の指導技術の一環として、また、学生の理解を深め、支援するために欠くことができない。したがって、教師は、授業で使用する教材・教具に関する知識を持ち、意図的に選択し、効果的に活用できる力を持っている必要がある。
 また、設定した当該授業の内容は、常に一人の教師で行う必要はなく、各教師が持っている専門領域や経験を効果的に活用して、複数の教師で授業を行う方法(ティームティーチング)なども行われてよい。ティームティーチングは、当該授業において複数の教師によって授業を行う方法であるが、科目や単元を複数の教師で授業する場合もある。いずれの場合においても、教育内容についての考え方、教育方法についての考え方について、教師間での充分な連絡調整が必要である。さらに、教育方法は直接的には、当該授業を行う教師の問題であるが、各授業を通して、教育課程全体、養成所の教育目的に到達して行くことを考えるならば、各授業の中で、どのような教育方法を実施するかという教師間の共有と調整があることも重要である。そのため、教師会議や領域担当者会議が計画的に開催され、検討結果が授業の実施に反映されている必要がある。また、その内容を記録したものがあり、授業後の評価時にも活用できるように整理されている必要がある。

<点検>
教育課程を構成する各授業科目について、履修形態(講義、演習、実習)、具体的な学生の授業におけ構成、教授・学習の展開過程 における指導技術、授業の中でとる指導技術等についての教師の考え方を看護学教育の視点から明示し、実践しているか
当該授業の展開過程の他に、学生の学習が深化、発展するための方法を意図的に選択し、学習を支援しているか
学生に対し効果的な教育指導を行うにあたり、教師間でどのよう な連絡調整(教育内容や方法についての打ち合わせ・教育内容の重複の調整など)を行っているかが述べられているか

29教師会議記録、領域別会議記録
3)評価の考え方
評価の考え方
 教師は学生の学習意欲の高揚、個性の涵養、思考力及び総合的判断力の向上を図るなど学生の資質向上のために、授業計画に基づいて教育指導を行うと共に、教育指導方法の改善を不断に行うための条件整備に努めていなければならない。これは評価のフィードバック機能として重要な点であり、教育の一貫性を保障する上で欠くことができない。
30評価の考え方
具体的な評価計画が理解できる文書、評価結果の分析内容と活用方法が記述された文書

31評価計画を明示した文書
到達の見極めと改善へのフィードバック
 授業の実践においては、授業科目毎に授業計画の作成を行い、その授業の方法を提示すると共に、それがいかに学生の学修の活性化と教師の教育指導方法の改善に貢献しているかを点検・評価する必要がある。
 授業評価に関しては、学生に対し効果的な教育指導を行うことを目的として、教師の教育指導方法のあり方を検討するための評価結果活用システムが明確でなければならない。さらに、それがいかに機能し、教師の教育指導方法の改善・向上に貢献しているかが明らかになっていることが大切である。
 教授・学習過程において教育評価の意義は、教育目標の実現をめざして行われる教育活動に関する決定にあたって、必要な資料を収集し、整理して、それらをフィードバックする重要な手続きである。この手続きにおいて、明確にしておかまければならないのが、評価目標、評価内容、評価用具、評価基準、評価の時期等とそれぞれについての考え方である。
 ・評価目標、評価内容
 ・評価用具、評価基準、評価の時期
 評価目標とは、教育内容を学習者が身につけたときの状態を具体的要素と能力的要素であらわしたものである。授業単元ごとに明確にされた指導目標に基づいた評価計画を立案し、評価目標、評価内容を明確にして実施する必要がある。
 看護基礎教育においては、看護実習を授業の一形態と位置づけ展開しているが、授業単元としての具体目標が明確にされているか確認が必要である。学生個々に受持対象を通して教育内容の構造化を行い、評価目標・評価内容を設定しているか、評価者は評価目標や評価内容を十分理解している教師であるかなど点検をする必要がある。
 評価内容(評価の領域:たとえば認知領域・精神運動領域・情意領域等)に応じて、評価用具(筆記試験・面接法・観察法・レポートなど)、評価基準、評価の時期(事前的評価、形成的評価、総括的評価)を明確にして実施する必要がある。
32看護学実習評価表
 ・評価結果の活用;教師、
学生、教育課程経営
 教師は自分の教育活動の効果を確認しつつ、学生の学習状態についての情報を必要とする。例えば、授業の開始時に小テストによる診断的評価を行い、学生の学習状態を把握したり、授業中には学生個々の反応を観察し、発問によって確認し、修正をしながら授業展開をしている。また、授業終了時にはポイントの整理を行い次のステップへ進めるかどうかを決定している。このようなフィードバックの機能が働いていることが重要である。
33学生による授業評価結果
 看護学教育を受ける学生は、高等教育であり、かつ専門教育を受ける者として、自らの学習の経過や成果を自ら認識し、主体的に学習し続けることが期待される。したがって、教師からの評価結果を活用し、自らの学習をより深めて行けるようになる必要がある。評価結果が公正で明確であれば、自己の学習課題が理解しやすく学生の学習意欲につながると考えられる。そのためには、提出されたレポートや試験成績、実習記録などは、適切な時期に返却され学生が自己の学習活動に活用できるようにしていることが重要である。
34提出物・試験結果の返却状況
実習記録の返却状況
 教育課程経営においては、各科目の教育目標達成度の評価結果を収集・検討し、教育内容、教育方法および教育環境を点検す教育点検システムがあり、その仕組みが開示され、それに関する活動が実施されていることが重要である。また、教育点検システムは、学習・教育目標の設定、学習・教育目標達成度の評価方法・評価基準などの適切さを社会の要求や学生の要望に照らして点検できるように構成されており、実際に点検が行われている必要がある。点検にあたっては、システムを構成する会議や委員会などの恒常的な記録が開示されていることも必要である。

<点検>
評価と指導の表裏一体性を踏まえた評価計画が立案・実施され、評価結果は、明確な意図のもとに活用され、実際に授業が改善されているか
可能な限り、学生および教育活動を多面的に評価するために、多様な評価の方法を取り入れ、目標の達成状況を評価できる方法であり、目標の達成状況が明確に捉えられているか
評価の方法について、特に単位認定のための評価については、学生に公表(認定基準等)し、公平性があるか
各授業の評価計画が教育課程全体へフィードバックできるようなシステムとして位置づけられ、実際に機能しているか

35教育点検システムについて
明示された文書

図4.教育課程における単元評価のフィードバックシステム

V 経営・管理過程と財政

1)設置者の意思

経営・管理過程は教授・学習過程と教育課程経営を円滑に実践していくための活動であり、管理職にある者の考え方に基づいて行われ、管理職にある者の考え方の明確性とその実現のための活動が具体的であることが必要である。
 養成所の自己点検項目内容について、管理者としての考え方が組織内において明示されていること、それが教織員に理解されていなければならない。明確性には、機関の設置目的、教育理念・教育目的、教育目標との整合性がなければならない。具体性とは、活動のための計画性とその実施について、行為レベルで示されていることである。それは、各組織内活動との有機的連関性が保持されているものでなければならない。

<点検>
養成所の設置、教育理念、教育目的、教育課程運営、教育評価、および養成所の管理運営に関する管理者の意思が具体的かつ明確に表示され、教職員に理解されているか

36養成所設置の意図を明記した文書

37経営・管理にあたって、管理職にある者が教授・学習過程と教育課程経営をどのように捉えているかを明記した文書

38それが教織員にどのように理解されているかを示す文書
2)財政基盤
財政基盤
 養成所の運営にとって、財政基盤は最重要課題である。学生の教育の費用のみならず、教員の教育的資質の向上、研究に必要な経費、学習・教育環境の整備など、常に十分な財源が確保されているとは限らないであろう。収入の基盤、支出の根拠、その両者において学習・教育に負の影響が及ばないようにすることが重要である。つまり、管理者は、どのようにして財政基盤をととのえるのかその基本的な考え方を明確にしておかなければならない。また、教職員は、自らの所属する養成所がどのような財政基盤に基づいてなりたっているかを十分に理解していることも重要である。

<点検>
養成所の財政基盤をどのように確保しようとしているかについて明確な考え方をもち、学習・教育に負の影響がないようにしているか
教職員は、養成所がどのような財政基盤のよって成り立っているかを理解しているか

39財政基盤の根拠を示す資料

40財政基盤についての教職員の理解(程度)を示す資料
3)行政的決定過程との関連
行政的決定過程との関連
 看護師等養成所の経営・管理過程では、常に、指定規則との関連で養成所の運営が意識されている必要がある。養成所指定時の水準を維持するだけはなく、より発展して行くように運営されなければならない。そのためには、指定規則を遵守することによって、同規則が求めている教育の水準を自らの力で維持できることである。また、単に遵守するだけではなく、養成所の主体性を十分に発揮した教育活動を展開することが重要である。それは、いわゆる「自由裁量」とされている内容について、どのような考え方に基づいて、どのような教育内容を、どのような教育課程としてそれを構成し、さらにそれをどのような教授・学習過程に載せて行こうとしているかが明確に示されていることである。
 また、養成所としての設置において、保健師助産師看護師国家試験受験資格を付与する教育機関としての水準をどのように維持しようとしているかについて明示できなければならない。

<点検>
養成所の水準を設置指定時からどのようにして維持していくかを述べているか
養成所の水準を設置指定時からどのようにして発展させていくかを述べているか
自由裁量について、科目構成のどのような内容に表しているか、そしてそれが自校における教育の質を高めることにどのようにつながっているかを述べているか

41行政的決定過程との関連 指定基準の遵守と自由裁量について教育活動の中でどのように取り入れているかを示す文書
教育課程構成の考え方と構成された教育課程
4)指導体制
教職員の質(力量)と量の確保
 講師の選定
 教職員のモラール
組織体制の在り方
 校務分掌等
指導体制:教職員の質(力量)と量の確保
 各養成所は、その教育理念・目的に応じて最も適切と思われる教職員の組織を設け、これに必要かつ十分な教職員を配置し、教育活動の成果を収めることに努力する必要がある。これは、授業科目の講師の選定にもつながる。経営管理においては、教職員の選考、資格審査、任免、昇格等教職員のモラールに関する規定も含めて、明確になっている必要がある。
 看護師等養成所の教員は、看護の専門職者を育成する責任を担うのであるから、経営管理の点から、各教員の専門性の質をどのように維持・向上しようとしているかについても、明確に示されている必要がある。また、量的な必要性についても、自校の設定した理念・目的の達成のために必要な量として考えられていなければならない。

<点検>
記述された組織体制・規定とその実施が一貫し、さらに改善の対策が明確になっているか

42指導体制:教職員の質(力量)と量の確保
教員選考、資格審査、任免、昇格等に関する規定を明記した文書
教職員のモラールをどのようにして維持高めようとしているか
その考え方が示してある文書

43校務分掌が明記された文書
5)学習・教育環境
 施設設備の整備と完備

 臨地実習において、学生のケアを受ける対象の権利およびプライバシーの保護

学習・教育環境:施設設備の整備と完備
 効果的に教育目的を達成するために学習・教育環境を整えておくことは当然のことである。指定規則の遵守にとどまらず、より良い環境の中で教育・学習が行われるようにする必要がある。そのためには、管理者がどのような考え方のもとに学習・教育環境を捉え、整えて行こうとしているのかが問われる。
 看護師等養成所として、規模の大小があっても、学習・教育環境において質的な格差がないように常に意識し、意図的、計画的に整備していくことが望まれる。
44学習・教育環境:施設設備の整備と完備を示す資料
 保健師助産師看護師教育は、看護の専門職を育成するのであるから、学習・教育環境として、特に図書・文献資料の整備、看護の技術を習得するための器具機材の整備は重要である。また、質の高い臨地実習施設の確保とその施設が学生の学習・教育環境としての考え方を持てるように働きかけることも、整備の一貫として重要なことである。このような働きかけは、実習施設で直接、学生の指導にあたっている教師が普段に行うだけでは不十分であり、養成所の管理者の考え方とその働きが重要である。一方、学生が実践する看護の対象となる患者等に対して、患者の権利およびプライバシーが侵害されることがないように、学生の受け持ちとなることへの依頼・承諾、実習記録の取り扱い等について、養成所の基本的な考え方、姿勢を明確にしておく必要がある。
45臨地実習施設との連絡・調整をどのように行って学習環境を整備しているかを示している資料

46臨地実習で学生が受け持ちとなる患者の権利とプライバシーの保障について、学校の考え方を示した文書

47学生の臨地実習中に発生する事故への対応を示した文書
 学生の臨地実習に伴って発生する事故への対応  さらに、臨地実習においては、学生自身が事故を起こしたり、巻き込まれたりすることがないとは言い切れない。このような事態において、学生への障害を可能な限り最小限に止め、学習の継続が可能になるような手だてを整えて置く必要がある。
 また、学生は、養成所という環境の中で、友人と出会い、将来をかたり、自らの看護に対するイメージや職業観を形成していくのである。この意味において、学習・教育環境は「刺激とゆとり」が感じられものであることが望ましい。この「刺激とゆとり」は、養成所の物理的環境のみならず、教職員の関わりも重要な要素である。

<点検>
学習・教育環境について、管理者としてどのような考え方をもって整備しようとしているかが示され、その考え方に基づいて整備計画が立案され、実施されているか
保健師助産師看護師教育に必要な施設設備が計画的に整備され、また、医療・看護の発展にあわせて、整備・改善できるようになっているか
自養成所の学習・教育環境が、学生の学習にとって、また教師にとってどのような影響をもたらしているかをみる視点をもち、その情報を的確に把握し、環境の改善を行っているか

48教師・学生が学習環境をどのように捉えているかを示す資料
6)自己点検・評価体制
自己点検・自己評価の体制
 看護師等養成所としての設立の認可を受けた養成所は、以後、養成所としての「教育の水準の維持」と「創意工夫のある教育の追究」を図ることによって、常に質の高い保健師助産師看護師を養成していく責任と義務がある。各養成所はそのための「内部的品質保証の仕組み」をもっていなければならない。この内部的品質保証の仕組みが「自己点検・自己評価」である。
 養成所の管理運営にあたって、管理者は養成所の教育理念の基に教育目的がどのように達成されているのかについて、また、自らの養成所が保健師助産師看護師養成所としての水準を維持しているのかを自己点検・自己評価できなければならない。そのためには、自己点検・自己評価についての知識と方法を持ち、さらにその結果を活用して自ら改善していく知識と方法をもっていなければならない。
 自ら点検し、評価するためには、何をどのように見極めるかの知識と方法を持つことが必要であり、点検・評価項目を設定し、それを見るための資料を収集・分析し、その結果を自らの養成所の教育理念・目的に照らして評価できなければならない。そして、その結果を改善していくための手だてを明確にもち、それを実現していくことである。
 自己点検・自己評価は、管理者のみが行うものではなく、またできるものではないので、組織的、体系的に取り組む体制を整える必要がある。これは、養成所の全教職員が常に自らが所属する養成所の「教育の水準を維持・発展」するために活動しているという認識の形成にもつながるものであり、自己点検・自己評価が目的化してはならない。

<点検>
自己点検・自己評価の意味と目的を理解し、実際に自己点検・自己評価を行うための知識と方法を明確に持っているか
養成所の自己点検・評価体制が整えられ、活動され、その機能が養成所ののカリキュラム運営、授業実践にフィードバックされ、養成所の理念、目的、教育目標が維持・改善されているか

49自己点検・自己評価の体制を明示しした文書
50自己点検・自己評価の活動を示した資料
51自己点検・自己評価によって改善された教育活動を示した資料
7)養成所の将来構想
養成所の将来構想
 各養成所は、養成所が開設されて後、現在置かれて状況を踏まえて、時代の変化にともなって、養成所に対する社会の要請が変化することを常に意識し、それを具体的に、養成所の在り方として、すなわち、養成所がどのように発展していくかその将来構想を明確に持っている必要がある。

<点検>
養成所の将来像を構想として表現しているか

52養成所の将来構想
養成所の将来構想を表現した文書
養成所案内等
VI 入学者の選抜とその考え方
入学者の選抜に関する考え方
具体的な選抜方法
入学者選抜についての組織の編成
学生定員の充足状況及びそ
の状況に対する判断と対応
編入学についての考え方
入学者募集の方法
入学者の選抜とその考え方
 教育理念・目的目標を実現するためには、教育理念、目的つまり教育方針を適切に反映した入学者選抜の方法の実施によって入学者を確保する必要がある。入学時にどのような能力を重要視する必要があるのか、それはどのような選抜方法(筆記試験−科目の設定、論文、面接−個人、集団、その他)によって妥当なのかが検討され、入学者選抜方針が決定され示されなければならない。また、入学者選抜方法とその後の成績の推移などからこの入学者選抜方針が妥当であるかの評価を計画的に行う必要がある。
 また、教育理念・目的に適った教育を行い、教育活動を有効に行うため、特に看護基礎教育において特徴的な演習や臨地実習における教育効果を高めるためには、学生定員と在学生数の比率が適性な範囲であるか、在学生数に対する社会人入学生、編入学生の比率について不断に検証していくことが必要である。

<点検>
教育理念・目的との一貫性から入学者選抜についての考え方が述べられているか
入学者状況、入学者の推移について、入学者選抜方法の妥当性及び教育効果の視点から分析し、検証されているか

53入学者の選抜に関する考え方、選抜方法について記述された文書
入学試験に関する規定、養成所案内、学生募集要項
54入学試験志願者数、受験者数、入学者数
55学生定員と在籍学生数の比率
56在籍学生数に対する一般試験入学生、社会人入学生、推薦入学生、編入学生の比率
57退学者、休学者、留年者数
58選抜方法別の成績の推移
59学生募集に関する活動状況
VII 卒業生の就業・進学状況評価
卒業生の資格取得状況;看護師、保健師、助産師
卒業時の学生の進学状況;保健師、助産師、大学編入
卒業時の学生の看護に関する実践能力の習得状況
卒業時の学生の就職状況
期待する卒業生像と実際の卒業生像の比較
 看護職の活躍の場が多様化する中で、看護師等養成所は教育理念・教育目標に応じた卒業生を養成しているか把握している必要がある。
 また、期待する卒業生像についても、実際との比較に置いて、妥当であるのか検討していなければならない。そのため、卒業後に、看護の実践能力をどのように発揮しているのか、卒業時の習得状況との関連で把握しておく必要がある。特に就職先での評価は、在学中の教育内容が看護の現場で必要とされる実践能力の基盤となりえているのかを判断する情報として把握している必要がある。そのため、卒業生の就職先との情報交換や調査の実施などが計画的になされている必要がある。
 
60卒業時の学生の進学状況;
保健師、助産師、大学編入
61国家試験合格状況
62卒業生の就職状況
63卒業生の進学状況
64卒業生の看護実践能力を評価した結果とその分析が記録されている文書
65卒業生の状況に関して就職先へ依頼した調査の結果とその分析が記述されている文書
卒業生の職業的発達に関わる活動状況
就業状況、職能団体活動、研究活動、継続教育、卒後教育等
看護職は専門職業人として社会への貢献が期待されている。実績として、卒業生の活動状況を統計的に整理し、把握しておくことも必要である。

<点検>
卒業生の就職・進学状況を分析した結果は、教育理念・教育目標に添っているか
卒業生の就職先での評価を把握し、問題を明確にし、教育を改善するために、就職先との情報交換や調査の実施などができる体制が整っているか
卒業生の活動状況を把握し、統計的に整理し、教育目的、目標、授業の展開に活用できるようになっているか

66卒業生の動向が記録されている文書
VIII 地域社会との連携、国際交流
1)地域社会との連携
 ・地域住民に対し、健康や看護について啓蒙・普及活動
 ・看護学実習やフィールド研究における施設提携・地域社会との連携
 ・看護学教育研究活動を通した地域社会への貢献
地域との連携
 看護師等養成所にとって、地域とは、ただ単に「そこに在るもの」としてではなく、意図的に関わり、「形成するもの」としてとらえる考え方がある。言い換えれば、地域は、静態的概念としてではなく、動態的概念として考えられる必要がある。
 そのために、看護師等養成所は、養成所が設置されている地域の住民や団体、保健・医療・福祉施設との連携に関する考え方を明確にもっている必要がある。また、地域住民に対し、健康や看護について啓蒙・普及活動につながるような公開講座などの実施を通して、地域に貢献していることが重要である。看護学教育研究活動を通した地域への貢献としては、ボランティア活動など地域のニーズを反映した取り組みを通して貢献している必要があり、そのためには、地域ニーズの把握の方法についても計画性があることが望ましい。これは、養成所が地域から活用される側面である。
 一方、養成所が地域を活用する側面も考えられる。養成所が設置されている地域は学生にとっては、重要な学習環境である。地域の特徴を把握し、それが看護学実習やフィールド研究において活用されるならば、養成所と地域との関係はより密接になる。養成所の個別性を発揮する一つの方法として、このような密接な関係を通して、地域の諸資源を含んだ教育課程を開発することも可能になる。
 以上のような二つの関わりを通して、地域も養成所も発展していくことが「連携」の在り方として捉えられていることである。

<点検>
社会との連携において、地域のニーズを把握し、看護教育活動を通して貢献しているか
養成所の教育活動について、地域社会のニーズを把握する手段、養成所から地域社会へ情報を発信する手段を持っているか
地域の特徴を把握し、地域内における諸資源を養成所の教育課程へ取り入れができているか

67地域との連携
地域住民や施設と連携し健康や看護について啓蒙・普及活動になるような公開講座などの活動状況
68ボランティア活動の実施状況

69看護学実習やフィールド研究における施設提携・地域社会との連携状況
70看護の日の行事としての実施状況
71看護養成所進学希望者への進路指導

72教育課程の内容に養成所が置かれている地域社会の特色が反映されていることを示す内容
2)国際交流
 ・学生の国際的視野を広げるためのシステム
 ・教員の国際的視野を広げるためのシステム
国際交流
 看護師等養成所においても、国際的視野を広げるための教育は必要であり、そのための授業科目の設定や自己学習できるシステムが必要である。例えば、外国の文献が蔵書されているか、インターネットの活用は容易であるかなど。
 また、海外からの帰国学生の受け入れや留学生の受け入れについても地域のニーズに応じて体制を整える必要がある。さらに、海外留学を希望する学生に対しては、英文での卒業関係書類や単位認定書類の準備ができる必要がある。

<点検>
国際的視野を広げるための授業科目が設定されているか
国際的視野を広げるための自己学習システムが整っているか
海外からの帰国学生や留学生の受け入れについて応じる体制があるか
海外留学を希望する学生に対応できる体制があるか

73国際交流
教育課程における国際的視野を広げる考え方、科目設定
学校施設設備における自己学習システム帰国学生や留学生の受け入れ状況
英文での卒業関係書類
IX 研究

研究活動の必要性・目的
 教育活動への還元

研究活動の保障

研究活動の評価

 大学は、学術研究の中心的機関であり、研究活動はそなえるべき基本的なものとして明確に位置づけられている。看護師等養成所における教員の研究活動は、大学のようには位置づけられていない。しかし、看護師等養成所の教員にも、下記の意味において、研究活動は不可欠である。
 看護師等養成所は看護の専門職業人を育成する看護基礎教育を担い、高等教育機関として位置づけることができる。また、看護基礎教育の学問的背景である看護学は、現在発展過程にある新しい学問領域であり、体系化が進められている段階である。このような背景の中にあって、変化し続ける社会の期待・ニーズに対応しうる専門職業人としての保健師助産師看護師の育成をめざす必要がある。そのためには、養成所の教育活動全般に対して批判的、創造的な検討をし、さらに、自らの専門性を探求し、常に新しい情報を取り込み 、創意工夫した教授・学習活動を展開することによって、養成所の教育水準の維持・向上を図ることができなければならない。
 創意工夫のある教育活動には、文献のクリティークを踏まえ、研究成果を活用できる力、および看護の事象、教育の事象について分析的に捉え、そこに問題や課題を見出す力がなければならない。このような能力は、研究活動を通して培われるものである。特に、看護実践者を育成することに重点が置かれる養成所の教員には、看護実践について、常に研究的関心と、それを追究をしていく研究的姿勢、研究活動が求められる。
 これらの教員の研究活動は、養成所自体による研究活動の支援体制が整っていることによって保障される。まず、教員1人1人が研究に価値をおき、研究活動の意義を認め、教員相互で支援し合う養成所の文化を創り上げるとともに、養成所自体が研究活動を奨励し、時間的(研究時間の確保)、財政的(研究費の支給)、環境的(研究室・情報検索システムなど物的環境)支援の具体的内容を提示する必要がある。また、研究活動は教員個人の興味・関心ではなく、必ず教育に還元できるのであり、この視点から研究活動の計画・成果について評価を受けるシステムを養成所内部に持つことも必要である。
 看護学及び看護教育の研究そのものが学際的傾向があるため、自施設のみではなく、他の施設及び他の領域の研究者とのネットワークを養成所として積極的につくること、あるいは、学会・誌上発表を通して研究成果についての評価と他の研究者との交流・連携をもつこと、研究協力に関する依頼に対してコミットメントし積極的にかかわること、これらの日常の活動を通して教員自らが研究的姿勢を育成していくことが、視野の広がりと専門性を高め、教育活動に還元される。

<点検>
 教員の研究活動は保障(時間的、財政的、環境的)されているか
 教員の研究活動を助言・検討する体制(システム)が整っているか
 研究に価値をおき、研究活動を教員相互で支援し合う文化的素地が養成所にあるか

74研究活動状況
紀要・研究業績の発行状況
教員の学会入会状況
学会発表状況
誌上発表状況

75教員に対する研究活動支援に関する状況
研究活動への時間的保障
研究費の確保・活用状況
研究環境状況

76研究の協力状況
他校との研究ネットワークの状況


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