03/01/31第14回労働政策審議会雇用均等分科会議事録           第14回労働政策審議会雇用均等分科会           1.日時: 平成15年1月31日(金)15:30〜17:30 2.場所: 省議室(9階) 3.出席者:    労側委員:秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:志村委員、遠藤委員、山崎委員    公益委員:若菜会長、渥美委員、樋口委員、奥山委員、今田委員 ○分科会長  それでは、ただいまから第14回「労働政策審議会雇用均等分科会」を開催します。本 日は佐藤博樹委員、前田委員、吉川委員、岡本委員が欠席です。  それでは議事に入らせていただきます。  議題は前回に引き続きまして、「今後のパートタイム労働対策について」です。  昨年の9月以来、委員の皆様には今後のパートタイム労働対策についてご議論いただ きまして、前回の最後にまとめの段階に入るということで、その集約に向けて各委員の 皆様のお考えをまとめていただくように、ということでお願いしました。  本日は、これまで議論された問題、あるいは必ずしも十分に議論されていませんけれ ども、言及しておかなければいけない問題、こういった問題について、公益委員を中心 にしまして、労使のご意見も入れて整理していただいた成果として、お手元にお配りし たとおり、たたき台を用意させていただきました。今後はこのたたき台をもとにご議論 いただくということにしたいと思います。そして、その上で報告書の作成に向けて、各 委員のご協力をお願いしたいと思います。  まず今日は、最初に事務局のほうからたたき台を朗読していただきまして、その後で 公益委員のほうからたたき台の考え方なり、あるいは主なポイントについてご説明をい ただく。その後に労使の委員から、公益委員からの説明の足りない部分、あるいは是非 とも強調しておきたいような部分について、そういう点がありましたらご発言をいただ きたいと、こういう手順を考えております。  それでは最初にたたき台、報告書案の朗読をお願いします。 ○事務局  それでは朗読いたします。                 (報告案朗読)                 ○分科会長  どうもありがとうございました。それでは、このたたき台の主なポイントについて、 公益委員からご説明をお願いします。 ○公益委員  それでは、ご説明いたします。これまで公労使により何回となく、それぞれの立場か ら真摯な議論が進められてきたわけですが、今回のたたき台を作成するに当たりまして 、公益の一員として特に留意した点についてご説明したいと思います。  まず、何よりも労働市場の現状を踏まえる必要があるわけでして、今後の、さらには 日本経済の全体像を見渡したとき、いま何が求められているのかというような視点から 、特に公益委員として何よりも国民のスタンスに立った議論が必要だろう、というよう なことで検討を行ってまいりました。  少子高齢化が急速に進展する中で、現在、本文にもございましたように、税制や社会 保障制度についての改革議論が進んでいっているかと思います。個人や企業が活力を取 り戻し、就業形態に関わらず、誰もが意欲と能力を十分に発揮できる社会を形成してい くということが、今後ますます不可欠になってくるというようなことが認識されるわけ ですが、特に就業形態が現在のように多様化している中で、こういったものを実現して いくためには、まず税、社会保障制度を働き方に中立的な制度に改革していくというこ とと並びまして、当分科会で検討しております企業における働きに応じた公正な処遇制 度を確立していくというようなことが不可欠である、というように認識しています。  パートタイム労働を巡る税制、社会保障制度は、これが創設された当時、パートタイ ム就業というのはどちらかというと例外的な働き方であるというような、この実態を前 提として作られてまいりました。  私としては、昨今の税制、あるいは社会保障制度の改革は、財政面での問題解消とい うような視点がございますが、それよりも根元的に少子高齢化といった社会構造、これ を前提とした経済構造の変化に対応しなければ、我が国の存立自体が危うくなるといっ たような社会認識を持っております。ただ、税や社会保障制度が改革され、多くの人が 就業意欲を持って働こうと思っても、その意欲を満たすだけの雇用の受け皿がなければ 、そこでは失望感を助長するだけに終わってしまうというようなことが考えられます。  そこで、働き方に中立な税、社会保障の改革と並びまして、「働きに応じた公正な処 遇」を確立することは、個々人の意欲を引き出し、企業や社会を活性化する上で、車の 両輪の役割を演ずるものであるというように期待しております。  このたたき台は、いま述べましたような考え方を、より広範に、かつしっかりと周知 させるための、いわば触媒としての役割を果たすべきものである、というように考えて おります。したがいまして、このたたき台を巡って労使の意見が分かれる点があるかと 思いますが、これまでの分科会での議論を踏まえますれば、向かうべきベクトルの方向 性については異なるといったものではなく、むしろ目的地への到達の速度、その時点に 多少なりとも差があるという程度のものであるのではないだろうか、というように考え ております。  したがいまして、このたたき台に関する労使の意見は、必ずや調整可能なものである と信じておりますが、以下、たたき台の中で特に労使に留意していただきたい点につい て、何点かコメントをさせていただきます。  まず最初、2頁の最後のパラグラフにございます、「必要な法的整備」というような 文言です。このパラグラフの冒頭部分の労働関係・社会保障関係法制の整備が行われて きたことの流れを踏まえたものです。法的整備を行うに当たっては、労使の合意があく までも前提であると考えております。そして、昨年末の政労使合意で行われましたこと のプロセスが、このようなプロセスといったものがやはり重要であるというように考え ております。その上で必要なものについて法的整備を行っていく、というような基本認 識を述べたものでして、パートタイム労働法がまずこれに当たるかどうかということで はなく、どの法律が該当するかはその都度検証すべきものであると考えております。そ の方向性を示しつつ、「当面」ということで、通常の労働者との均衡を考慮した措置の 考え方を指針に示すことを提示しました。  続きまして2番目の留意点ですが、3頁のいちばん下のところに、今度は(4)とい うことで、「職務が通常の労働者と同じパート労働者の取扱い」についてという項目が ございます。現在の指針には、事業主が講ずべき措置ということが規定されております が、通常の労働者との均衡を考慮という基本的な考え方に対して、何を基準にして考え ていくのかということについて、必ずしも明らかになっていないということから、この 点を明らかにすることが重要なのではないか、というように思っております。働きに応 じた公正な処遇の視点から、イ、ロの考え方を指針に規定し、事業主が所要の措置を講 ずるに当たって考慮しなければならないということで、事業主が講ずる措置について方 向性を与えたと考えております。  労使が話し合いながらパートタイム労働者の雇用管理の改善に取り組む中で、すぐに は対応できない場合が多々あるかと理解しておりますが、しかし、是非この考えを考慮 しながら取り組んでいっていただきたい、というのが公益委員としての思いです。  3番目の留意点、6頁の最後の部分ですが、5の「その他」といった項目、その中に 「一定期間経過後」というような文言が書かれております。実態把握を指針改正の一定 期間経過後行うとしたのは、パートタイム労働を取り巻く税、社会保障制度が今後見直 しを経て、着実に変化していく中で、企業の雇用管理、労使のパートタイム労働に対す る取組みが、どのようになるか把握する必要がある、との認識からです。その際、この 指針の影響を調べる必要もあります。これらの状況を踏まえ、問題点の分析を行い、パ ートタイム労働対策として求められる施策について、幅広い検討を行い、その結果に基 づき、必要な施策を講ずることが重要である、というように考えております。  税、社会保障制度の改革がいつ行われるのか、政府の考え方を私はわかりませんが、 これらの改革後、指針に基づく取組みはタイムラグを置きながら、雇用管理に対して影 響を確実に及ぼすという気持ちを含めて、期間を明言することをせずに、実態把握を行 う必要性を述べたものです。以上です。 ○分科会長  どうもありがとうございました。それでは、今日お示ししたたたき台につきまして、 労使の委員の方からご発言があれば伺いたいと思います。 ○労側委員  最初に、この「たたき台」という言葉を再三再四使われていますけれど、これには「 (報告)(案)」とありますが、どちらが正確なのでしょうか。報告案をたたき台にす るということは、これをもとに引き続き議論をして、内容をいわば改善するなりすると いうことも含む、ということで理解していいのでしょうか。 ○分科会長  その点は私が申し上げます。これは今後取りまとめに向けて進んでいくわけですが、 その間で、今後労使からの意見を十分受けとめて調整を図る必要がある、というように は考えております。そういう趣旨です。 ○労側委員  調整を図る。今日を皮切りに議論していく。 ○分科会長  そういうことです。 ○労側委員  それで、いま公益委員の方からもコメントを3点ほどいただいたのですが、労側委員 として総括的にご意見を申し上げ、あと各論等についてはそれぞれの委員のを含めて意 見を述べたいと思います。  まず前書き等、それからいま公益委員からおっしゃられた現状認識及び今後の課題と いうか方向性のところなのですが、これまでの分科会での意見を踏まえながらまとめら れたということですが、率直に言って、なぜこういう報告ができたのかな、というのが 率直な気持ちです。どういうことか申し上げますと、この間の10年に及ぶパート法の施 行後の現状認識について、所定内給与を通常の人と比較して、格差が広がっているとい うことは言及していますが、それのみならず、いま起こっている事態というのは、まさ に有期契約労働者の雇い止めの問題、あるいは正社員からパートタイム労働者に置き換 えの問題という、非常に生活を不安定的に、あるいは雇用を安定的に確保できないとい う事態は、現実に起こっているという、この姿に対して全く言及しない。なぜそのよう になっているかということについて、私どもの認識は「記」以降1にありますように、 現在のパート法3条の努力義務規定に基づいた指針では、何も強制力はなくて、結果、 その役割を果たさなかったという認識のもとにこの間ずっと議論してきた。私などはそ ういうつもりだし、公益委員の方々も法改正の必要性を再三再四、言葉の表現はそれぞ れ異なりますけれども、必要であるということを言ってきたかと思うのです。そういう ことからすると、現状認識の差異はもちろんあります。あると同時に、対応方針として 指針改正。現状の3条の規定に基づいた指針改正という従来手法をさらに踏襲するとい う、これについてなぜこういう報告ができたのか。もちろん使用者の方は一点たりとも 改正反対というように申し上げてきましたから、そういう立場ですが、多くの公と労の 意見はそうではなかったのではないかという、そういう認識です。  特に2頁の下段のところの、いま公益委員がおっしゃられた、周辺の労働関係・社会 保障関係の法整備を行いつつ、労使が昨年12月に確認した「ワークシェアリングに関す る政労使合意を踏まえつつ、今後とも必要な法的整備を着実に行っていく」という、こ の書き方というのは何を言っているのか本当にわからないです。そこのところを、いま 最後に「5 その他」を説明する際に、必ずしもパート法そのものをどうするかという ことを言っているわけではない、というようにおっしゃられていますけれども、この書 き方をどのように理解していいのか。  「5 その他」と関連して2頁を見ますと、私どもはただちにやるべきだと言ってい るのですけれども、抜本的な法改正は、では、いつ頃になるのかなという、これは全然 見込めませんよ。何か指針の実態調査をして、その後問題点の分析を加えて、それで必 要な措置を講じます。その間、労働関係・社会保障関係法制の整備もあるでしょう、と いうように言っていて、研究会報告が言っている、いわば法制化というのにもしモノサ シを置いた数値、あれがいつ頃できるのか。この報告案でですね。ぜひ公益委員の方に お聞きしたいのですが、これも見えないということ。  それから、この労働関係・社会保障関係法制整備ということは、どういう意味かちょ っとわからないのですが、私の認識では研究会報告は労働基準法の規制緩和、労働者派 遣法の規制緩和、これをやることによって雇用機会を増やしなさいと。さらに、いわば パート労働者の公正処遇も合わせてやりなさいというように、3点セットで、パッケー ジでいきたい。そういう周辺整備をやりなさい、あいまってというときの、いわばパッ ケージというのだけを、仮に研究会報告をモノサシにした場合に、むしろやるべきこと は、ただちに均等待遇の法制化を行うというのがまずベースであって、それが2頁に、 処遇改善というか、現在起こっているパートタイム労働者の問題については一向に改善 しないという認識です。  それから、仮に3条の努力義務規定に基づいた指針、(1)から(4)。いま公益委 員のおっしゃり方は、いままでの指針はそういうモノサシがなかったので、今度は新た にモノサシを作るから公正な処遇が実現するとおっしゃっていますけれど、日本経団連 が出した「パート労働者の処遇問題に関する見解」の中に、流れとしては行政の介入を やめてくれと言っているわけですね。中でもこの指針でいう(3)の転換に関する条件 の整備及び、もっとも公益委員がおっしゃられた(4)については、反対であると言っ ているわけです。この指針をお願いする使用者団体が反対すると言っているのに、それ で変わりますよなんていう、ましてや根拠が努力義務だという、そこもまた、それは私 も説明に苦しむわけです。仮に現状の3条に基づいて指針を改正した場合であっても、 全く効果が期待されないのではないか。ここをどう説明されるのか。「いや、使用者団 体はいいですよ。賛成します」と諸手を挙げて、「やりましょう」というように言って いるならまだいいけれど、当事者が反対すると言っているのに、公益委員の方が「変わ るんだ、変わるんだ」といくら言われても、私ども、全然それはちょっと。だからこそ 、法律できちんと強制力を出さないと駄目ですよ、というように思っているわけです。 そのところをちょっと履き違えているのではないか、というように1つは思います。  それから行政機関の役割について、職業安定所などについて書いているのですが、い ま起こっている、例えば年次有給休暇がパートタイム労働者に十分適用されていなかっ たり、そういう基準行政に関わるトラブルがいっぱいあるわけです。それは5頁の、4 の上の真ん中辺に、「パートタイム労働法及び指針を施行する都道府県労働局、労働基 準監督署」というように書いて、これで読み込めというのかもしれませんけれど、職業 安定所なり短時間労働援助センターのことも書いて、基準行政の山を、問題点、課題と いうのも、もっと浮き彫りにするべきではないかと思うのですけれども、この辺は全く 言及されていないというもの。  それから、公益委員は説明されなかったが、私どもがちょっと問題にしているのは、 指針改正以外のところ、2の「多様な働き方の選択肢としての『短時間正社員』」とい う、これはどういう人かというのがちょっと。短時間正社員というのは、パートタイム 労働者ではないのでしょうか。別の方なのかどうか。  今度改正するという指針の中には、「パートタイム労働者から通常の労働者に転換」 というのを書いていますよね。この4頁の2は、いわば通常の労働者とパートタイム労 働者との転換も視野に入れていると思うのですが、そういう転換制度を私どもは法律条 項にきちんと付けるべきだと、この制度には同意しているのですが、いまパートタイム 労働者の雇用不安、あるいは有期契約に伴う問題について、合理性を持たないのはいっ ぱいあると。したがって、いわば無期契約のパートタイム労働者をきちんとするのだと いうことが、むしろいま問われているわけであって、そのことがそういう立場で、この 選択肢というのが書かれているのかどうか読み込めません。中でも、パートタイム労働 者と短時間正社員は違うみたいなイメージにとらえ得るので、その辺の理解が1つあり ます。  それから、もう1つ。通常の労働者から短時間労働者へ行き来できる転換制度といっ た場合に、その均等待遇の法制化ルールがない中でこれをやった場合に、いわばいまま で確保した労働条件を大きく変更・低下させて短時間パートタイム労働者になるという こともある。この制度を本当に有効に機能させるためには、まさに均等待遇というのが ないと、通常の労働者が「私はパートタイムをやりましょう」なんていうようなことは 、たぶん起きないと思うのです。せっかく作っても、それが機能しないことはあり得る 。そういうことについても言及していない、という観点からすると、この2の「短時間 正社員」という問題については全然。たぶんこれをパートタイム労働者が読んだときに 、これは誰を言っているのか、自分たちと違う方を言っているのか、というように思う と思うのです。そういう意味での言及を、少しいただきたい。  それから5頁の、いま公益委員がかなり重視された「税、社会保険制度の見直し等」 ですが、税、社会保険制度は国がやっている見直しですよね。この書き方を見ると、例 えば税については「検討が行われることが求められる」という、年金保険と医療保険に ついては「検討が望まれる」。それから、まさに年金・医療保険については「その動向 を見守る」という、非常に客観的に書いてあるのですが、「就業調整に影響を及ぼして いる企業の配偶者手当制度についても、関係労使による見直しへの取組が求められる」 と、これでもかなりきついのですね。この辺の流れがなぜこのようになるのか、ちょっ と理解しにくい。  6頁、その他です。その他というのは、これは報告を受けた側の大臣はどのように扱 うのでしょうか。まず、そこをお聞きしたいのと同時に、これ自身の持つ意味合いとい うのですかね。いまパートタイム労働者の実態把握は定期的にやられていますよね。そ れではなくて、別で調査を行うというようにおっしゃられているということなのか。先 ほど申しました2頁の関連と、この5の関係、私どもが素直にこれを読んでイメージす るのは、実態把握をして、指針を何とか改正していて、まず税、社会保険制度を改革し 、その後というようにパート法をやるとすると10年以上かかるのかなというように。だ から公益委員がおっしゃられた、目標を決めて段階的という、そのタイムスケジュール というのですかね、そういうことからすると、この報告書がどういうスケジュールにな るのか、ちょっとお聞きしたいと思います。以上です。 ○労側委員  個別の内容については、いま労側委員のほうからおっしゃったことと重なりますので 、簡単に感想と、1点確認をしたいという点について申し上げたいと思います。  いま読み上げていただき、公益委員のほうからも、公益委員として国民のスタンスに とった内容というように、このたたき台の位置付けといいますか、申し上げていただい たわけですが、率直に言って現状認識や、それに基づいた具体的な方策について、研究 会の報告より内容的には後退しているというように言わざるを得ない、そのようにまず 感想を持っています。  法律が制定されて10年経った、先ほど労側委員がおっしゃったような個々の問題を踏 まえれば、パートタイム労働者の均等待遇の原則をまず打ち立てるということが当然必 要な状況になっていると考えますが、そこの点については、この前文からも、1からも 、全く読み取ることができません。このことをいちばん主張の中心に置いてきた労働側 委員の一員として、大変残念と申し上げるしかありません。  私はこのパートタイム労働の、いままでの議論を受けとめて、均等待遇原則を確立し て、そこに向かっていくという、そういう道筋の上に立てば、むしろ雇用システムの変 化や関連する法整備を牽引するということになる、というようにも思っておりまして、 このたたき台ではむしろ雇用システムの変化や関連する法整備に、非常に委ねられた受 け身の姿勢になっている、というように思われますし、パートタイム労働者の処遇改善 に正面から取り組むというメッセージは、内容からも感じられません。  という感想をまず申し上げて、そのことと別の、これは疑義があって質問ということ になりますが、2頁後段の「したがって」以降に書かれている、「昨年12月の『多様な 働き方』」云々、いわゆる政労使合意を受けて、それを「踏まえつつ」というように言 っている、この「踏まえつつ」ということはどういうことなのかを、まず伺いたいと思 います。  特にこの中では「短時間正社員」などの文言も入っておりますが、先ほど労側委員が おっしゃった2の「短時間正社員」のあり方にも疑義がありますし、パートタイム労働 者の処遇改善には、パートタイム労働者でない、現実的にはここで言われているワーク シェアリングというのは労使合意ということが、やけに私は強調されているように思わ れてなりません。その点からも、ここになぜこのことは、少なくともいままでの審議会 の中でも、このワークシェアリングに関する政労使合意の中身の議論等はなかったとい うことも含めて、ここに書かれていることについて、むしろ必要がない、削除する必要 があるというように考えている。そういった意味で、ここについては質問をさせていた だきたいと思います。  もう1点は、これも公益委員のほうから税、社会保障の動向について触れられ、労側 委員のほうからもおっしゃった点について、最後の4点目の、パートタイム労働の就業 に影響を及ぼす、税や社会保障に関連するパラグラフについては、事務局がこの間の議 論のときにご説明があったように、従来のこの審議会の建議がこのことに触れている以 上に踏み込んでここは記載する、というようにご説明があったように承知していますが 、いずれも非常に、そこに踏み込んだという書きぶりにはなっておりません。その点で は、昨年12月に報告がされました男女共同参画会議の影響調査専門調査会の報告も参考 に「検討が望まれる」ですとか、「動向を見守る」という受け身的な、消極的な書きぶ りではなく、パートタイム労働者の処遇改善に関わっては、税制、社会保障制度が就業 の選択に中立性を確保することが重要という、そのことを明らかにした書きぶりにここ はする必要があると思いますし、むしろ年金や医療というのは厚生労働省の、同じ省の 中のテーマでもあり、ここがむしろ非常に受け身的な部分は、こここそきちんと重要で あるという認識に立って見直しを求める、ということにまとめたほうがいいのではない かと思っています。一旦、私のほうは以上です。 ○分科会長  他には、労側はよろしいですか。では、使側委員どうぞ。 ○使側委員  公益委員の先生方が大変苦労されて、ここまで取りまとめをされたということについ て敬意を表します。その上で使用者側の基本的なスタンスについて、述べさせていただ きたいと思います。  この点については、これまでの審議会の中で述べてきたことを改めて整理したもので ある、というようにご認識をいただきたいと思います。いま、この分科会で検討してい るパートタイム労働者の公正処遇の考え方というのは、企業の人事処遇管理に非常に大 きな影響を及ぼすもので、企業自身においてはパートタイム労働者も含めまして、多様 な従業員の働きに応じた公正な人事処遇制度の追求に、いま現在努力しているところで して、仕事の内容、責任、業績成果などを通じて、企業への貢献度をどのように適正に 評価するかと、そういった仕組みの整備・充実に、いま現在取り組んでいるところでし て、これを一律に法律で規制しようとする考え方につきましては、基本的には反対とい うようなことです。  また加えまして、企業が自主的に取り組むべき雇用管理等の問題につきまして、行政 が関与する、行政指導による介入というのは、極力つつしむべきであるというように考 えているところです。  それが基本的なスタンスでして、記の1の中に書いてあります(1)から(4)の内 容につきまして、改めて我々のスタンスを申し上げておきたいと思います。  まず1つ目、(1)の通常の労働者とパートタイム労働者との間の公正な処遇を目指 すために企業の労使がどのように取り組むかという問題ですけれども、この辺につきま しては私どもとしても、公正な処遇を目指すということは非常に重要だと考えておりま して、そのためにいまここに書いてあるような、パートタイム労働者に対する処遇の説 明のことですとか、雇用管理の改善に当たって、パートタイム労働者の意見を聴くため の工夫でありますとか、苦情の申出に対する自主的な解決、こういったことにつきまし ては必要であって、企業としても取り組んでまいりたいと考えております。  こうしたことがいちばん重要でありまして、この努力を着実に積み重ねることが、パ ートタイム労働者の雇用管理の改善が進むいちばんの近道だと考えておりまして、その 暁に公正な処遇が実現すると考えているところです。  それから(2)の職務の内容、パートタイム労働者の意欲、能力、経験、その成果等 に応じた処遇につきましても、基本的には進めるべきだと考えておりますが、職務の内 容、意欲、能力ばかりではなくて、ここに書いてありますような成果、あるいは企業に 対する貢献度の向上といったような諸要素にも、適切に考えていかなければなりません 。それを処遇に反映させるということが、企業にとっての重要な政策であるということ です。ただし、それは企業が自主的に決めるべきことでありまして、法律等の規制とい うようなことにつきましては、反対であるということを改めて繰り返しておきたいと思 います。  それから通常の労働者への転換制度の(3)の問題ですけれども、働き方の選択肢を 拡大するということは、確かに重要であると考えております。ただ、これをパートタイ ム労働者が通常の労働者へ転換するという、この制度を設けること、これを法律等で規 制することにつきましては、適当ではないと考えています。基本的にこうした制度を設 けるか否かというのは、企業が自主的に考えるべきものであって、どのような雇用形態 で採用するか、それは企業の裁量に委ねられるべきものであると考えます。同様の業務 を行うパートタイム労働者に対して、通常の労働者の採用に当たって優先的に応募機会 を与える、という現行の指針がありますけれども、それにつきまして基本的には変える べきではないと考えております。  それから(4)の「職務が通常の労働者と同じパートタイム労働者の取扱い」につい てです。先ほど公益委員から、考慮しなければならないこととして、イ、ロを位置付け るというようなご説明があったわけですけれども、これにつきましても、同じ職務、同 じような人材活用の仕組み、運用等を基準に、通常の労働者とパートタイム労働者との 均衡処遇を求めることというのは、基本的には外形的な基準で処遇の均衡を求めるとい うようなことだととらえられるということでありまして、これにつきましては大変問題 だと私どもとしては思っているところです。  基本的には企業や職場の実情に即しまして、貢献度を個別仔細に評価した上で、処遇 のあり方、均衡のあり方を考えるべきだと、私どもとしては考えているところでして、 従業員の人事労務管理や処遇は、企業労使が自主的に決定すべきことであって、その内 容について法律等で規制介入を設けるべきではないと。加えまして、多くの企業はいま 現在、人事労務管理について、大きな精力を注いで見直しに取り組んでいるところでし て、こういう中で短時間就労者、パートタイム労働者の処遇改善という結果にならざる を得ないような規制を設けるということ、それによる行政指導を強化しようとする姿勢 につきましては、大きな疑問を持たざるを得ないというように、いま現在考えていると ころです。  いま申し上げた点につきましては、文書化して、後ほど分科会長のほうにお届けした いと思います。その他の細かい点につきましては、また後ほど言及させていただきたい と思います。以上です。 ○分科会長  他の使側の委員の方はいかがですか。 ○使側委員  やはり法律で云々というのは、確かに問題があると思いますので、続けていきたいと 思いますが、段階的に、やはり合意を得ながらやることというのは必要であって、ただ 私どもは企業によっても、大きいところはいいのですが、小さいところというのは、や はりある程度のものをもって、示して、示唆して、それで突き上げていかなければいけ ないということでないと、なかなかそこまで到達できないということがあると思うので す。ですから、余裕のある企業、力のある企業と力のない企業、その辺のバランスとい うのはやはりありますので、私はちょっと意見が違うかもしれませんが、ある程度のこ とは指針の中で示してきちんとやっていくということによって、日本の企業がそういう 柔軟な対応をしていく、時代に合ったやり方を取っていくということを示す必要がある というようなことを感じています。 ○労側委員  公益委員から現状のことにつき前段でお話しいただいたことについては、私もその部 分については十分理解し、ここの中でいろいろ議論してきたことは理解しています。各 論については、労側委員から言われましたので、それについては、いま触れませんが、 いま使用者側の委員からパートの処遇改善への規制反対という言われ方をされ、また21 日に出された経団連の見解にもそのことが示されているのですが、今まさに企業が個々 人の能力を発揮していくためにも、皆が意欲を満たすような受け皿が必要だということ は、先ほど公益委員がおっしゃったとおりだと思います。  そのことさえも否定するようなことを今の段階で本当に言われるのですかと。いろい ろやっていますよ、と片方ではおっしゃっていながら、パートタイマーの処遇改善をす ること反対、そして見解の中では、まず通常の労働者の処遇の見直しが優先ですね、と いうことまでおっしゃっているわけです。そういうことも含めて企業も生き残っていく ために、そして個々人も生き生きと働いていけるために、皆でこうやって話をしてきて いるし、いま日本が置かれている立場も含めて議論しているはずなのに、「パートの処 遇改善反対」とおっしゃる思いが、私はとても理解ができません。  そのことはあえて、団体としてもおっしゃり、また今日も使側委員が先ほどおっしゃ ったのですが、そういう理解をしてよろしいのですか。そこをちょっと。 ○使側委員  パートの処遇改善反対という言い方ではないのでして、パートタイム労働者さんが発 揮されている成果、企業貢献度に応じて処遇するということについて、反対ということ ではないということです。おっしゃるような通常の労働者の処遇方式の見直しを、いま 現在進めています。パートタイム労働者の処遇のあり方についての見直しを否定すると いうわけではない。もちろん両方ともやっていく必要があるというのが基本的なスタン スでして、ただ優先度としては、まず通常の労働者のほうを考えていくことが、現在、 企業が直面している大きな問題だということです。 ○労側委員  出された文面を私は読ませていただき、また今日、先ほど使側委員が発言されたこと から、どうしてもパートの処遇改善という結果になることについて反対という表明をさ れたことについて、理解できないということを、私の個人的な感想ですが、そのことだ け述べさせていただきます。 ○労側委員  日本経団連の見解のことを使側委員がお話しになったと思うのですが、経営側の皆さ んはデータの見方から始まって、処遇改善というか、格差はないというふうにおっしゃ っているとすれば、そこはまず大きな認識の違いだと思います。今日の報告は「所定内 給与」というふうに賃金面に言及していますが、実際に起こっているのは本当に福利厚 生を含めて、いろいろ通常の労働者とパートタイム労働者との不公正であり、説明のつ かないような、要するに「パートだから」ということで、いろんなことがいま行われて いるわけです。  そこに「労使に任せてくれ」というわけです。今まで、10年間任せてきたのです。努 力義務規定で強制力のない法律ですから、それでいろいろいま起きていることについて 、どうするかというのを当分科会で9月に始まった議論です。少子高齢化など、いろん な文書を経営者団体も作っていますけれど、そのときに公正な処遇、公正なルールに基 づいた公正な基準というのが今こそ求められている。それは経営者の責任だと思います 。そこを「企業に任せてくれ」ということだけで、日本経団連という経営者団体の総本 山がそういうスタンスでいいのかどうかということは、私は再考していただきたいと申 し上げたいのです。 ○使側委員  個々の企業が行うべき雇用の管理の問題について、一律的なルール化はやはり問題だ ろうというふうに思います。そのあり方については、基本的には、その個別企業の中で いちばん実情をよく知っている労使が判断するというのが最適なルールではないかと私 どもは考えています。外側から、外形的な基準によってルール化するのは、大きな禍根 を残すようなことになりかねないと私どもは思っています。 ○労側委員  お二人の使側委員が、若干意見が違うというふうに受け止めているのですが、使側委 員は、今は時期的にまだ早いけれども、将来的には必要ではないかというような。 ○使側委員  いや、自由に労使で話し合ってできるような所はいいと思います。あってしかるべき と思いますが、全くそういうことのないような企業が小さい所にはあるわけです。経営 者もそこについては、あまりやっていない。労働者ももちろん、パートの人たちもそん なことは眼中になくて、ただ働いている。知らず知らずのうちに格差が出来ているとい うことも当然あると思います。ですから、そこらはある程度の、こういうことをやりな さいというものを示して、実質的に企業がそういうものを知って、いろんな事例を把握 して、そういうものを漸進的に取り入れて、均衡処遇を図るような形に、そういう指導 をしていく必要があるというふうに私は言っているということです。全部が駄目だとい うのは、私とはちょっと違うところがあるかもしれません。 ○労側委員  違いますね。 ○公益委員  使側委員の話を伺っていて、非常にこれまでの議論を積み重ねてきた者にとっては、 非常に残念に思うわけです。確かに、いろいろ企業側が懸念されるものはないとは言え ないと思うのですが、まず使側委員の姿勢は、企業労使の自主的な取組みでやれるのだ と。我々がこの報告書で示しているものは、企業からみれば全く外的な基準なのであっ て、そういうものを押し付けられたのではとてもじゃないけどやれない、というご意見 です。その一言だというふうに私は要約できると思います。  その経緯を何度も報告書(案)の中でもふれているように、均衡処遇を実現するとい うことがパートタイム法の3条で謳われているわけですが、具体的にそれが実現すると いうことが非常に困難な問題だということも、日本の労働市場の中で労使に認識があっ たわけです。それを踏まえて、建議として、具体的に均等を実現していくために、それ ぞれ職場なり、いろいろ問題があるだろうから、労使が知恵をしぼって策を考えましょ う、考えなさいということが出されて、それ以後今日まで長年かけて労使を含めて、調 査なりをやって、1つの基準を考えてきたものなのです、これを外的基準と使側委員は おっしゃっていますが。  そういう認識は何かというと、やはり労使でそれぞれの努力だけではなかなか実現し づらい。さらにそれを超えた具体的なものを考えていかないといけない。それも労使で 考えてくださいということで、具体的に考えた結果として出てきて、ようやく日本のい ろんな企業の様々な状況を考えて、それを前提にした上で、1つの均衡を実現するため の基準を示せたわけです。それを我々は分科会の中で基本としながら検討を加えてきた というのが今日の状況です。  そういう意味からいえば、そういうものに関係なく、労使の自主的な取組みでいいん だ、ここで与えられた基準は全く外的なものだというような、そういう報告書が示して いる案についての姿勢というのは、やはり残念という言葉を超えて、少し遺憾に思うと いうふうに言いたくなるような使用者側の姿勢だと、私は受けております。  それは十分使側委員もこれまでの経緯を勉強されたと思いますので、そういうことを 前提とすると、今の認識は企業サイドとしても合理性に適うものではないと思います。 特にこの均衡に関してはモノサシ研以降、使用者側もいろいろ今の多様化を前提とした 場合に、均衡にふさわしいパートタイムの処遇改善が企業として課題であると、それを 解決するために労使が知恵を出しましょうということについて、積極的に関わってきた という経緯があるわけです。それを前提とした場合、この期に及んで、自主的に取り組 むのだから、外的基準なのだから、こういうものは今の企業努力に任せればいいんであ って、という議論はどんなものでしょうか。  ましてや、多様化を前提として、奥田会長もおっしゃっているように、これからの産 業社会というのは多様性をどう企業社会の中に取り込んでいくか、企業サイドも働く側 もそれを軸に、という議論をされているわけです。そういうものを前提とした場合にこ の均衡問題というのは、きわめて重要な問題なのであって、特にパートタイムの問題も あるかもしれないけど、今は正社員のことが優先なのでパートタイムの均衡問題なんて 議論するのは、というような議論の立て方は、この問題に対する非常に真面目な真摯な 経営者側の取組みであるとは言えないと私は判断します。以上です。 ○使側委員  私どもとしては、例えば公正な処遇について、否定するものではありませんで、それ だからこそ(1)であるような説明を求められたときに、これに応じるということとか 、(2)にあるような、様々な要素に基づいて処遇をするというふうなことをまずやっ ていきましょう、というふうなことを企業側にも呼び掛けているところでして、これを まずやることが公正な処遇を実現するための第一歩であるというふうに認識していると いうことです。  パートタイム労働者の処遇のことについては、基本的には通常の労働者の処遇の見直 しということと、併せてパートタイム労働者の処遇のあり方の見直しというものも、当 然優先というか、比重の置き方というか、その辺が違うわけです。企業家としては、通 常の労働者の処遇のあり方の見直しについて、そちらに比重を置かざるを得ないという のが現状だということです。その辺のことを申し上げているわけです。 ○公益委員  (1)の説明をすればいいというご議論なのですが、もう少し中身について、具体的 なレベルで思考していただきたいのですが。均衡を考慮し、処遇を決定し、そういうこ とを説明するときに、どういう基準で、何を基準に説明して、これは均衡にふさわしい 、公正な基準なんですよ、処遇なんですよ、処遇でないですよと、それをどういう基準 でするかということを考えた場合に、明らかに、我々が報告書で提示しているような均 衡処遇の基準というものがどうしても必要になってくるという関係にあるものです。た だ一方的に何かの基準でもって説明をするということで、納得が得られるかどうか、説 明をするためには、やはり納得が得られるということが重要なのです。説明というのは 、そういうものである、一方通行のものではない。そのためには、基準というものがな ければ、説明できない。そういう構成になっているということをご理解いただきたいと 思います。以上です。 ○分科会長  いま、公益委員が指摘された点についてどうですか。 ○使側委員  処遇のあり方についての基準というのを、企業の中の労使で判断して決めていくとい うのが筋ではないかと、私どもとしては考えているということです。多様な要素があっ て決められていいのではないか、というようなことです。それを労使がお互いに納得す るような形で決めているのであれば、それで公正性の一部が担保されているというよう に認識しています。 ○労側委員  私の質問にお答えいただきたいのですが、使用者側のご意見は、公益側の皆さんがい ちばんコアと思っている(4)のところに真っ向うから反対しているわけですね。3条 の努力義務規定に基づいた指針ですから、それでも反対と言っているのに、公益委員の 皆さんが「いや、よくなりますよ。いままでの指針よりよくなります」というのは、こ れは全然わからないです。  だから、私は法律でと。いやなものは、法律だと従わなければまずいから、当然のこ とを言っているわけです。説明を求めたり、立証責任を簡単に書いていますけれど、現 状で雇う場合に、パートの、特に女性の多くは有期契約ですから、「私は何でこうなっ ていますか」と会社に求めたときに、ものすごい不安を感じながら説明を求めています 。「あっ、次に契約更新してくれるのかしら」と。何か文句言っているみたいに見られ ちゃう。私なんかの法律は、立証責任というのは法律事項にしているのです。やはり、 労働者に権利として与えると。先ほどおっしゃったように、説明ぐらい当然じゃないか というように思いますが、実態を考えたら、どれだけこれを活用して労働者が説明を求 めるかというときに、加えて指針だと。  力関係は全部パートと労働者は違いますから、更新というと、決死の覚悟で説明を求 めるような構造になっていくと私は思います。その認識が皆さんにどうも弱いんですね 。実態をあまり把握していないのではないかと思います。だから、もっと法律でという ことです。どの企業もやるわけですから、公正な競争ルールです。Aという企業は一生 懸命やった、Bという企業はやらない、ということの不公正さをなくすというのが法律 の一方の役割ですから、そういう時代に入ったということを是非公益の皆さんに理解し てもらいたいし、いくら立派な指針、いままでの指針と違うと言われても、誰も確信を 持てないのではないですか、経営側のいまの態度を見ていたら。その説明をいただきた いのです。 ○公益委員  説明を求められても、なかなか説明できないのが実態かと思いますが、労使それぞれ の意見を聞かせていただきまして、一見対立しているように見えながら、非常に似たよ うなことを主張しているところもあるように思います。と言いますのも、共通認識とし て、就業形態に関わりなく、意欲と能力を発揮できる環境を整備していくというような ことについては、もちろん温度差は存在するものの、共通した認識かと思います。問題 なのは政府がどこまで介入していいのかというようなことについて、大きく意見が対立 しているように思えるわけです。特に雇用管理についての行政の介入というのは、非常 にナイーブな問題でして、どこかで線を引かなくてはいけないというようなことがある のではないかと私は思います。  介入するべきところ、介入するべきではない点については、もちろん個別労使で自主 的に決めていくというのが望ましいかというふうに思いますが、その基準をどう考える のだろうかということでして、例えば経済学の分野で考えるときには、同じ「均等」と いう言葉を使う場合にも、機会の均等なのか、結果の均等なのかというようなことを分 けて議論してくるということがあるかと思います。例えば。結果の均等であれば、パー トと一般の労働者との間の時間給に換算したときに、結果として等しくなければならな いというようなことがあれば、これは完全に結果としての均等を求めるというようなこ とになるかと思います。あるいは男女雇用機会均等法においても、クォーター制みたい なものを導入してくるということは、ある意味では結果としての均等を求めていくと。  今回の議論で出てきますのは、例えば先ほどから議論になっている(4)を見まして も、給与の決め方、処遇の決め方について均等にしてくださいということでして、結果 として、パートと一般労働者の間の賃金についても結果としての平等を求める、公平性 を求めるというようなところまでは踏み込んでないということが議論だと思います。私 は機会の均等については、これはやはり行政としても介入するというようなことが、例 えば男女雇用機会均等法というようなところでも、認められていますように、それにつ いてはあってしかるべきだろうと考えていまして、同じ「均等」という言葉、「均衡」 という言葉を使うにしても、そこをちゃんと議論していただきたいというのが労使に対 するお願いです。すべて、駄目とか、すべてよいということではなく、議論を整理して ほしいというようなことでして、1つのメルクマールとして、私はいま機会、あるいは 結果についての公平性、というようなことについて考えてはいかがでしょうか、という ようなことを提言させていただきたいと思います。  もう1点ですが、労側委員の、あるいは労働側から説明の要求が出た「短時間正社員 」の扱いですが、私は、これはなぜ労働側が反対しているのかという理由がよくわかり ません。と言いますのも、短時間正社員というのは、言葉は短時間ですから、パート労 働者であることには間違いないわけです。労働時間が短いという労働者ですから、これ はパート労働者でして、むしろ労働側が言っているのは、正社員という言葉のほうに捉 われた点ではないかと思います。なぜ、ここについて反対しているのか。例えば職務の 内容が従来の正社員と同じで、ただし労働時間が短いという場合は、雇用条件について 均等の扱いをしていくというような考え方になっていると思いますが、どの点を問題視 して、この項目に反対であると言っておられるのか、むしろご説明をお願いできればと 思います。 ○労側委員  研究会報告に「正社員」がいて、「短時間正社員」がいて、その下に「パートタイム 労働者」が「主婦等」という書き方でいる。それで、短時間正社員というのはバイパス という説明があった。パートと分けているわけです。ところが仕事に着目していなくて 、最初に「基幹的な役割」というのは短時間正社員で、いわばパートだとこちらのほう は「補助的な労働」という。そういうことがずっと経緯としてあって、だとすると、「 パート正社員」という言葉は使えるでしょう。あえて使わないというのは、なぜかと私 は聞いているのです。パートの皆さんに聞くと、「私は短時間労働者だけど」と。正社 員という言葉がメッセージとして伝わる意味合いを、どうも分けて考えているのではな いか。パートの二極化というのですか。どうしても、そう読める。  一方で指針の1では、「パートタイム労働者から通常の労働者への転換」という言葉 を使っていますね。2のほうは、選択肢を広げるための「短時間正社員」という言葉を 使っていますから、同じなのか、違うのか、そのこともわからない。私は転換制度には 賛成です。だから、短時間労働者からフルタイム労働者、フルタイム労働者から短時間 労働者に転換できる制度は、私どもは賛成する。その場合は、ちゃんと均等待遇原則を 確立してやらないと、時間比例がないままやってしまうと、「フルタイムから短時間に いくと、これだけ下がっちゃうじゃないか」と考えて選択しませんから、機能しなくな る。だから、こういう制度も均等待遇というのはベースだと言っているのですが、どう も分けて考えているのではないかというのは、ずっと前から思っていて、加えて、有期 のパートも結構多いものだから、その区分けもあるのかなと。その辺についても全然わ からないと言ったのは、そういう意味です。 ○労側委員  重なりますが、3頁の(3)は、パートから通常の労働者への転換について触れられ ていますね。例えば、6時間パートタイマーから8時間の正社員への転換のことが触れ られていると思います。4頁の2の「短時間正社員」は、フルタイマーが短時間正社員 になることが、たぶん触れられていると思うのです。6時間のパートタイマーから6時 間の正社員になることが触れられているのかどうかは、ちょっとここからは読めないの です。そこはきちんとしないと、短時間正社員という言葉だけが先に歩いて、その思い は皆それぞれが違う。6時間のパートタイマーを短時間正社員と見るのは、ここでいう のは、フルからパートになった人を指し、なおかつ、いまあるパートタイマーがフルタ イムになることもここで指すと読むのでしたらわかるのですが、ちょっとそう読んでい いのかどうかがわからないことが、まず1点です。  もう1つ真ん中辺に、「具体的にどのような働き方や処遇の仕組みを作っていくこと が働きに応じた公正な処遇の実現に繋がるのか事例を示す」と書いているのですが、1 でフルタイマーとパートタイマーの均等のことを話していながら、2でまた何か別の公 正な基準というものの事例を示すというようにも読めるので、1でパートとフルのこと を言い、2で、もしパートとフルのことを言うとすると、この均等の事例という意味を どう捉えていいのかわからないので、そこはちょっとクリアーにしておいたほうがいい だろうということで質問していると受け取っていただければいいのですが。 ○労側委員  同じ短時間正社員の問題で、先ほど労側委員も言ったのですが、2頁目の政労使合意 の「短時間正社員」という言葉と、先ほどの2の、ここで政労使が合意している内容が 2に出てきているという、同じ「短時間正社員」ですので、そういうことではないとい うことも、そこは明確にしてもらいたい。政労使で合意した短時間正社員が、ここで言 う2ですということは違う、ということでいいわけですね。 ○事務局  いまご議論いただいているところは、15年度の予算に盛り込んで、厚生労働省として 推進したいと考えている事業の内容の説明でもありますので、事務局からの発言をお許 しいただきたいと思います。混乱があるようで大変申し訳ないと思いますので、また書 き方等は工夫したいと思います。  まず、政労使の合意の「短時間正社員」と、4頁の2の「短時間正社員」は、同じ概 念であるという私たちの理解です。その具体的な中身は何かというと、2つのケースが あると思います。単純に説明いたしますと、8時間の正社員が6時間の正社員に移れる ような仕組みと、もう1つは、いま労側委員から事例が出されましたが、6時間のパー トが6時間の正社員に転換できるケースと、2つの役割を担った雇用形態であると思い ます。ですから言い方を少し変えますと、パートについては3頁の(4)のイが適用さ れ、正社員と通常の労働者、通常の労働者というのはフルタイムの正社員ですが、その 処遇決定方式と全く同じ処遇決定方式が適用されるパートタイマー、これが「短時間正 社員」です。そういうことが、もし理解をしにくいということでしたら、はっきりする ような文章の工夫が必要と思います。 ○労側委員  6時間のパートタイム労働者が6時間の正社員に転換できるという、その言葉の意味 は、6時間のパートタイム、その場合有期ということですね。期間も定められる労働者 パート、6時間パートが、期間の定めのない6時間のフルに、正社員に転換できるとい う理解でいいですね。そこは区分けないですね。「正社員」の使い方がやはりきちんと しないと、数字でおっしゃると無期契約というふうに皆認識しているわけです。 ○事務局  おっしゃるとおりと思います。通常正社員というのは、雇用契約期間に定めがないと 思いますので、短時間正社員も、雇用契約期間に定めがないということが、原則だと思 います。 ○労側委員  いま事務局から、この4頁の2の中には、6時間パートから6時間短時間正社員も含 まれるという話があったのですが、この2と1、1のほうが指針になると思うのですが 、指針にそれが入らなくて、2に分けているという理由は、どういう違いになってくる わけですか。 ○事務局  指針で最も関係がある所は、先ほど申し上げたように(4)のイが該当する所で、イ が実現されるということになると、それは短時間正社員になるということであると理解 しています。  その指針の内容と違う位置付けで書いたということは、先ほど言いましたように15年 度の予算に盛り込んでいますので、予算が成立しましたら、関係の業界団体や労使のご 協力をいただき、具体的な事例をモデル的にどんどん作っていきたい、こういう取組み をしたいと思っていますので、指針の内容としてではなく、独立した位置付けでここは 書いています。 ○公益委員  3頁の(4)のイのケースは、パートタイマーとフルタイマーであるということが前 提で、そういう形態で処遇において均等処遇をするルールについて、ここでは触れてい るわけですね。これがそういう場合には正社員だったり、あるいは有期、無期になりま すよということは、ここでは一切触れていないと、私は理解しています。  それはあくまでもパートタイムで働く人と、フルタイムで働く人、働き方に違いはあ るが、この(4)のイのようなケースは同じような職務についている、その両者につい ては賃金の決定方式をそろえます、ということを言っているに過ぎないわけです。こう いうケースについては、例えばフルパートタイムの人が無期になるだとか、正社員とし て処遇するとか、そういうことはここは触れていない。  後の問題は、こちらの「多様な働き方」とか、あるいは「転換」というのは正にその 転換なのであって、パートタイムで働いている人がフルタイムへの転換をすると、それ は雇用形態の変化なわけです。そういう制度を導入したらどうですかという議論。だか ら(4)の所は、あくまでもパートタイマーの処遇に関する問題という理解をしていま す。間違ってないと思うのですが。 ○使側委員  4頁の2の「短時間正社員」の位置付けについて、ちょっと改めて確認をさせていた だきたいのです。いまの事務局のご説明によりますと、まず15年度予算で事例を研究し たいという趣旨が大きいというふうな説明だったと思うのですが、そのために前半で、 こういった連続的に変化できる仕組みが設けられたような事例がありますと書いてあっ て、それを踏まえてちょっと研究してみましょうというような趣旨で2のことを書いて あると、私どもとしては受け取っていたのです。それを踏み越えて、短時間正社員につ いて普及させていくべきであるとか、転換についての仕組みをどうするこうするという ような議論の結論を、2で書いているという趣旨なのでしょうか。 ○事務局  昨年末のワークシェアリングについての政労使の合意についてですが、そのことはこ の2頁の下から4、5行目から書いてあります。「短時間正社員」など働き方の幅を広 げる取組みを政労使で進めていくということの合意があったと思います。そのために15 年度に取りかかりたいと思っていますのは、短時間正社員という仕組みをすでに導入し ている所については、その導入の経験をいろいろお伺いしたいと思いますし、これから 導入されようとしている所についても、一緒にいろいろ研究をしていきたいと思ってい ますので、いわばそういう事例を積み重ねて、調査研究しまして、それを産業界の皆さ んにお示しすることによって取組みを広げたい、そういう考え方です。 ○使側委員  ご趣旨はわかりました。ただ、私ども日本経団連が参加しました「ワークシェアリン グに関する政労使合意」については、あそこに団体名が書いてありましたように、日本 経団連として出ているわけでして、他の使用者団体の方々は実は参加されていないので す。したがって、審議会ベースでこの書き方をされたときに、他の団体の方々について は必ずしも賛同を得られない可能性もあるということでして、ちょっとここで書くのは いかがなものかという意見を。我々日本経団連は参加した者ですからいいのですが、他 の団体の方々は責任をもってこれを了解しているわけではないということを、ちょっと 注意しなければいけないと考えられますので、ここに入れるのはちょっと適切かどうか 、大いに疑問だというふうに思っています。 ○公益委員  この場でこのまま両方、労使それぞれいらっしゃるわけですから、それについてここ で合意する分には構わないわけでしょう。 ○使側委員  それは、他の団体の方々のご意見を伺った上でないと駄目ですけどね。その意味では 、この書き方だと我々日本経団連しか入れないということですよね。 ○労側委員  私の受止め方にもし誤解があったら訂正いただきたいのですが。私は、いちばん初め に、ここになぜ「ワークシェアリングに関する政労使合意」を書き入れているのかとい うのを疑問に思っておりました。いまの事務局のお話ですと、つまり15年度事業をやる ために、どうもここにその記載が入ったように受け止めてしまいますが、そういうこと でもともとこの2番の「短時間正社員」という、いわゆる「多様な働き方の選択肢」と いうのを関連付けておいていたという認識がないものですから。正直言えば、何か事業 をやるために立てて、それと関連するために、ここに「ワークシェアリングに関する政 労使合意」を書き入れたというふうに、私はちょっと受け止めてしまっているのです。  そのこともさることながら、先ほども使側委員の言葉の中で、「関係労使」、「労使 の自主的取組み」とおっしゃるのですが、労働組合として反省するという立場に立った 上でなのですが、パートタイム労働者というのが、本当に対等な労使という所に立てる ような状況に今なっているのかどうかということが、ひとつどうしても気になっていま す。そのときに組織率も3%というような状況が反省点であるわけですが、いわゆる正 社員の労使というようなところに、そのことをむしろ引き寄せて考えていらっしゃるよ うに聞こえてしまうのです。そのことも含めて、ここで「政労使合意」ということを入 れていることが、私自身としては、労使の合意があるということを前提条件のように、 このものごとが進んでいくように思われてならないので、そこがとても気になる。した がって、この記載は削除をしてもらいたいというのが、意見なのですが。つまり、そう いうことなのでしょうか。これは事務局に伺いたい。 ○公益委員  たぶん行政は言いづらいことと思うので、私が代わりに言います。行政が、これを是 非入れてほしいというようなことで入れたものではありません。むしろ公益としてこの 点、やはり今後の社会を見通した上でむしろ進めていく必要があるだろうという認識で 、そこから出てきた「多様な働き方とワークシェアリングに関する政労使合意」という ものをここで引いているだけでありまして、むしろ行政のほうにお願いして、そういう 研究も同時に進めていく必要があるのではないかということがあったわけです。因果関 係が、行政のほうが先に言い出して、それを進めるためにここに入れたのではないかと いうのは、私は誤解ではないかと思います。 ○使側委員  2の「多様な働き方の選択肢としての『短時間正社員』」ですね。パートからフルタ イムのほう、通常の労働者への転換というのは、パートとの兼ね合いでそちらに移行す るようなことも考える、と書いてあるのですが、この場合は全くパートから、同じ6時 間なら6時間の正社員に移行するような勧めではなくて、単なる予算で絡みが出たので 、事例を踏まえてそういうものを図るというだけのことであって、直接パートのことと の関連性というのは間接的にはあるのですが、直接的にはないような気がするのです、 短時間正社員についても。そこを、パート労働者の関係でそういうふうにしなさいとか 云々ということではなく、単なる多様な選択肢としてこういうのもあると、それについ て事例で後からやるというだけのことであって、全体から見るとちょっと場違いな感じ がしないでもないです。 ○事務局  いろいろご意見頂戴してありがとうございます。予算を取りたいために、予算を執行 したいためにここに入れていただいているということではありません。もしこういうこ とについて合意をいただけるのであれば、そのための予算は15年度予算に盛り込んでい ますと言ったほうが、適切だったかと思います。  私どもの気持としては、ワークシェアリングの政労使の合意で、短時間正社員の取組 みなどを進めるという合意がありますので、その合意の当事者である政府としてどうい う支援ができるかという観点から、こういった取組みができるかと考えたことが第1点 です。  また(4)のイというルールがありますが、短時間正社員という枠組みが制度化され れば、(4)のイの処遇が実現しやすいということがありますので、そういう観点から も、ここにこういう形で入れたらどうかということです。公労使の先生方のご発言を聞 いて、どういう形でこれを修正するのか、位置付けを変えるのか、また検討させていた だきたいと思います。 ○労側委員  関連ですが、これのパートの処遇が不安定なところをいかに引き上げるというか、公 正な処遇にしていくかということでこれも議論が進められていると思うのです。そうい う意味で、ちょっと言葉の使い方も皆で確認しないといけないと思うのですが、先ほど 事務局がおっしゃった6時間パートが6時間正社員にも含まれるということでしたら、 3頁の(3)の「通常の労働者への転換」の所にきちんと、「通常の8時間労働者にも なるケースがあり、また、6時間の正社員になるケースもあり」と、ここにきちんと入 れればそのことがわかるのですが、ここにはそのことが入ってなくて、こちらの2に入 っているところが非常にわかりにくいです。 ○事務局  指針の中での位置付けと申しますか、言葉の問題ですが、パートタイム労働法におい ては「短時間労働者」という言葉で、ここではいま「パートタイム労働者」という言葉 を使っていますが、それはよく使われている言葉を報告に盛り込んだということでして 、すべての通常の労働者と比べて時間が短い方を、「短時間労働者」と定義しています 。  そういうことから、パートタイム労働法の中での「通常の労働者」というのは、いわ ゆる正社員、それもフルタイムの方たちを想定しているという位置付けです。その方た ちよりも短い方たちすべてを「短時間労働者」と呼んでいますので、パートタイム労働 法の体系の中、指針の中では、「短時間労働者」という形で、いわゆる「パートタイム 労働者」と呼ばれている方、さらには「短時間正社員」とカギ付きで呼んでいる方たち も、同じ短時間労働者という枠組みになるので、「短時間正社員」は、この指針の中で は、パートタイム労働者から正社員への、通常の労働者への転換制度という形になりま すと、労働時間の変更という形になるわけです。 ○労側委員  事務局などのお話ですと、4頁の2を「多様な働き方の選択肢としてのパートタイム 正社員」というように置き換えても、全然意味合いは変わらない。あるいは文面の中に 、「このような多様な働き方の選択肢の中に『短時間正社員』」という、これも「パー トタイム正社員」と変えても全然意味合いは変わらないと。皆さんが思っているのはど うもやっぱり違うように感じるのです。だからそこは、いま言ったように変えても全然 意味は変わりませんと言うのならいいですけど、本当に変わらないですか。 ○事務局  変わりません。 ○労側委員  差別というか区別……。(4)のイのほうはこれに当てはまる、転換できる条件だと 言うと、では(4)のロの人は関係ありませんとなると、やはり基幹的労働力で、必ず フルタイムと均等処遇されているパートタイム労働者をフルタイムに転換するというこ とが前提にあって、他の方のパートタイムは転換できる制度が利用できないみたいな、 そういう印象がどうも流れとしてあって、不思議なのです。そうではないですか。 ○事務局  そうではありません。理解が違っているわけではないのですが、そのことがわかりや すく書けてないということだと思います。様々なご意見を頂戴いたしましたので、事務 局の責任で公益の先生方と相談しながら書き直してみたいと思います。 ○使側委員  今聞いた方々の位置によってもいろいろ違ってきます。2の所に、「多様な働き方の 選択肢としての『短時間正社員』」とある。だからいろいろな形がこれからも出てくる と思うのです。今日公益委員のお話をお聞きする前に、現在の、例えば労働市場や経済 の問題とか、あるいはこれから先の社会の変化とかについて、相当長い時間をかけて説 明いただいた。その上でもってこういう指針が出たという、私は非常に今日はわかりや すい説明で、ありがたく思っています。  その中でいろいろこれから起こる変化、10年前の話も出ていましたが、10年前と現在 とは全然違います。来年は、さらに大きな変化が起こるかもしれません。それを法律で 決めるとか、揚げ足を取ったりなんかするようなことでもって決めても、混乱を招き起 こすばかりだと思うのです。  我々経営者としては非常にいま厳しい状況に置かれている。これは先生もおっしゃら れるとおりです。この自由経済、競争市場の中で日本の労働者を受け入れる受け皿とし ての企業を残せるかどうか。これは本当に真剣に考えていかないといけない時期です。  ですから、私はこの指針に反対ということではないのです。大枠では全然問題ないと 思っています。ただ、経営者側の意見としては、この法制化は非常に厳しい。それから 企業家と労働者が対等で話をするとすれば、すべて解決するのではないかという立場に 立って、私はいつもお話申し上げていることですので、そういう立場で、経営者側の意 見は大いに賛成です。ちょっと意見ですが、申し述べさせていただきました。 ○分科会長  最初に、労側委員のほうから「記」の前文について、なぜこのたたき台がこうなった のか、法制化の道筋をどう考えているのか、というご質問があったと思いますので、ち ょっと説明したいと思います。  ここにも書いてあるように、パートタイム労働者について、「働きに応じた公正な処 遇」をいかに実現するか、これが正にテーマなのです。これを実現するためには、やは り通常の労働者を含めた全体の働き方、その処遇のあり方を見直すことはどうしても必 要になってくると思うのです。  このことを考えますと、やはりパートタイム労働者の雇用管理の改善というのは、雇 用システム全体の変化とか、先ほど公益委員から話がありましたが、それに影響を及ぼ す社会制度の改革というものの中で、現実には改善が図られていくと思っています。  そういった現実の雇用システムの変化、それから社会制度の改革を背景に置いた中で 、雇用管理の改善がどれだけ進むか、その中で、初めて現実的な社会的なルールが考え られていくべきものでないかと考えたわけです。  現状を考えますと、パート法が成立して以来、確かにこの前文にあるように、格差は かなりありますし、ある意味では拡大しているという所もある。これは何かというと、 一体均衡というものの考え方が何かということが、具体的なもので示されていないとい うことが非常に大きい。  やはり、何よりもまずこのことを示して現状を変える必要があるというのが公益委員 の思いです。その示された考え方で、それを基準にして労使を含めた国全体の合意形成 を図る中で、段階を踏まえながら改善策を示していくのが、いちばん現実的なやり方で はないかということです。  したがいまして、現段階ではこのたたき台にあるような指針を示して、その考え方を 社会の中に浸透させ、そして定着を図っていくことが何よりも求められているのだと思 うのです。その指針の浸透の状況を踏まえて、時期は労使の取組みということもありま すが、やはり、指針に示すことによってかなり前進すると私どもは考えておりますが、 その定着の度合を見て、それによって次の対策というものを考える。  その中には、もちろん法改正もあり得るでしょうし、指針の改正もあるでしょうし、 それはやはり、将来その変わった現状を踏まえてどういう政策判断をするかという問題 でして、いまの時点で、これから変わっていくものについて拘束するような、いま、先 に法規制があり得るという形で示すのは妥当ではないと考えた、そういう結果です。だ から手法の違いと言えば違いなのですが、そういうふうに考えた結果です。 ○労側委員  会長の認識は全然私は違っていまして、通常の労働者の処遇の見直しがまず大前提だ と。日本経団連のほうも(4)の最後に、通常の労働者の処遇の見直しが最優先の課題 だと。同じ認識だといま理解していますが、この問題はいま始まったことではないので すね。正社員の方と言われる方とパートタイム労働者の問題の見直しにあたって、ここ 2、3年で起きた現象では理解できますよ。この見直しの問題、課題、正社員の賃金制 度とかいろいろ処遇制度は前からあったことなのです。努力義務規定に基づいて10年や ってきたわけですよ。相変わらず格差があって狭まらない。だから私どもとしては、直 ちに均等待遇の法制化をして、賃金の制度については、ある程度期間を必要としましょ うと前から言っているのです。その旗を掲げ合うことによって、労使が、ああ、5年後 には賃金も含めて全面施行されるのだなと。努力が違ってくるのですよ。その周辺整備 をしてからどうしましょうか、指針もありますね、法律もあるかもしれない、というこ とは、全然変わらないのですよ。40時間制の話も前にしました。労働基準法の改正、48 時間を40時間にする時に、あれも40時間は93年にしますというふうに法改正をしたから 、関係労使が週休2日制を導入しながら、経過措置を講じて実現したわけですよね。こ ういう手法も実際にあるわけですから、なぜそのことをいま出せないかということが、 一方で基準法も改正していて、派遣法も改正というか出しているのに、こっちはわかり ませんなんていう言い方は無責任だというのですよ。本当に全然わからないのですか。 ○分科会長  まず最初の正社員の処遇のあり方の見直しが優先するということで、公益の考え方は 使用者と同じではないかということをおっしゃいましたが、それは全くの誤解でして、 私どもはパートに対する公正な処遇のあり方を検討する時には、同時に正社員の働き方 、雇用システムを変えなければ実現しないだろうと。同時にやるということを言ってい るわけですよ。さっき使側委員がどれだけ正確におっしゃったかは別として、その優先 順位が違うのだというような趣旨のことがちょっとありましたが、決してそういう意味 ではないです。パートの公正処遇が実現するために、全体のシステムの見直しが必要で しょう、ということを言っているのであって、全然そこは意味が違いますので、申し上 げておきます。  それから、もう1つは旗を掲げるというお話がありました。そして、労側のパート法 の場合でも、制定はするけれど、施行は5年先だと。 ○労側委員  賃金に限って。 ○分科会長  かなり賃金がウエイトかかってますから、賃金部分については5年先だということな ので、そこの手法についてはどれがいいかという問題で、私どもとしてはやはり現状を 見ながら最善の策をその段階、段階ごとに出していくというのが、政策判断としてはベ ストであろうということで、さっき公益委員がおっしゃいましたけど、目標に向かうと ころはほぼ同じようなことなのでしょうが、ちょっと進める手法が違うというだけで、 果たしてそれが現実的にどれだけ変わってくるかということについては、ちょっと私は 労側委員とは見解が違うということになってしまうのですが。 ○公益委員  先ほど私2点ほどご質問しまして、1つは短時間正社員制度について、ご質問しまし た。それについては、もう十分議論していただいたのですが、もう1点のほうです。例 えば使用者側は、政府による介入というのは雇用管理についてするべきではないという 意見を示されました。  その時に、例えば同じ均等という問題におきましても、機会の均等の問題と結果の均 等の問題と両方あるでしょう、というようなことを申し上げたと思います。例えば、差 別の問題。これについては、政府が介入するというのは、雇用管理においても当然だろ うというふうに私ども思っていますし、さらには、機会の均等ということについても同 じだろうというふうに思っているのですが、その点どう認識なさっているのか。その点 もだめですよというような、機会均等についても、これは経営権の問題、あるいは個別 労使で議論すべき問題であって、政府が云々というふうにするべきものではない、とい うような認識なのか、その点いかがでしょうか。 ○使側委員  機会均等と結果の均等の話なのですが、ここの公正処遇の話の中の(4)のことに関し て言えば、結果として結果の均等というふうなことを志向しているというふうに、ちょ っと私どもとしては認識せざるを得ないと思っておりまして、そうした形での介入とい うふうなことについては、やはり避けなければならないと考えているところです。  一般論としての機会の均等については、ちょっと。 ○公益委員  ここでは処遇の決定の仕方について均衡にしてくださいということを言っているわけ ですね。 ○使側委員  それであったとしても、結果の均等、結果の平等というふうなことを実現することに なってしまうと、それはいかがなものかと私どもとしては考えているということです。 ○公益委員  これは具体的に言えば賃金の支払い方式。同じ仕事なのだから、違った賃金の支払い 方式ではおかしいではないですかという議論なのです。結果として、賃金水準がパート タイムの人とフルタイムの人と違うかもしれないし、そういう意味ではルールを同じに しましょうと。結果として受け取る賃金レベルを一緒にしなさいということは一切言っ てないというのが、この1つの提示している基準というものの特徴であるわけで、そこ はやっぱり正確に日本語を理解していただきたいというのが、我々の要望するところで 、それが違ったらもう議論にならないという。 ○労側委員  先ほどから労側委員が言っているとおり、こういうような経営側の考えがある時に、 こういうものを出しても果たして処遇改善につながるのですかと、こういうことを言っ ているわけです。今まさに言われたことはそういうことですよね。こういう状況の中で 、こういうような規制のないようなものを出しても、自信をもって職場を改善するとい うように私どもちょっと見づらいわけですよね。同じではないかと。文書がはっきり出 ているのですよ。そういうふうに処遇改善という結果とならざるを得ない規制に反対し ますということをはっきりとうたっているわけですから、そういう経営側も反対の考え のもとにこういうものを出しても結果は同じではないかと。 ○分科会長  ちょっとそれは別として、使側委員、今この(4)のイでもロで同じですが、方式を合 わせてくださいということなので、出た結果は当然要件によって違うということなので すが、その点はご理解いただけましたか。 ○使側委員  私としては個人的にはなかなか理解しにくいというのは、方式を合わせろということ 自体がまず飲み込めないということでして。 ○分科会長  どこが飲み込めないのですかね。要件がここに書いてあるのですよね。「通常の労働 者と同じ職務を行うパートタイム労働者」。それから後は、人材活用の仕組みとか運用 について差異がはっきりないというふうな要件が満たされた場合は、方式を同じにして くださいよ、ということを言っているので、それが飲み込めないと困ってしまうのです 。 ○使側委員  それだけのあり方という考え方ですね。そういうふうな限定の仕方というのは、かえ って企業の創意工夫を狭めてしまうのではないかということです。 ○分科会長  そうだとするとお聞きしたいのですが、やはり均衡処遇、同じ職務で人材活用の仕組 みが同じ人を、同じ方式にしないで均衡扱いにするというのは、何か別にうまい案があ りますか。何かあれば出していただいたほうがいいと思いますが。これはかなり練って 、ずっと長い研究会報告等々を踏まえて出されたもので、公正であると思っているので すが、やはり使用者側のほうから見て、もっとこういうふうにしたほうがいいとかとい うことがあれば、具体的にお出しいただいたほうがいいと思います。 ○使側委員  まず1つの前提として、外形的な基準というのを設けていますよね。 ○公益委員  外形とおっしゃっているのは、何を外形とおっしゃっているのですか。 ○使側委員  だから同一の処遇というふうな視点と、それからここに書いてあるような異動の幅と かといったような基準だけで企業としては、その処遇の決定方式を変えているわけでは なくて、そのほか特に長期勤続を期待するような通常の労働者に対しては、企業として は、期待とか将来への企業の貢献度といったようなことを考えて処遇の決定の方式を変 えているというふうなことでして、そうしたことまでも含まれているというふうなこと として、我々としてはこの意義はなかなか読み取れないということで、先ほどの方式を 合わせるということの結果というようなことについてはちょっと理解がしにくいという ことです。 ○公益委員  仕事内容が同じというのは、具体的にはその職に求められる役割とか人間というよう なものが、同じ仕事、例えば、ある種の事務をやっていたとしても、その場合にその人 に期待される時間内だけでやる、あるいは、そういう時間外でも期待されることもあり うる、あるいは、その職務を超えたようなプランニングだとか全社的な、そういうよう な期待されるものが違った場合には、それは同じ職務と言っても違う職務というふうに 考えましょう、とここでは言っているわけですね。  そういう意味で、ここで言われているものはすべて一般的な基準なわけでして、それ ぞれ職場とか企業の中で、状況次第でその判定というようなものがかなり柔軟に行える ような、いわゆる基準になっているということで、もう少しここで言われているこうい うルールを真摯に理解していただいて、具体的にこういう方法で企業をやってみたらど うかと、具体的に企業サイドの雇用管理に携わっていらっしゃる方に、こういうお話を したら、1つの方法として非常に興味深く聞いていただいている、というような実態が あるわけです。つまり、みんないろいろ悩んでいるけれども、なかなかうまくいかない 。でも、1つの方法として、これは方向性として非常にいいのではないか、という評価 も現実としてあるというのも、私は知っていますので、そういう状況で外的基準、外的 基準、これはここの企業においては非常に当てはめにくいものであるというふうに言わ れても、逆に言えば使側委員のそういう企業サイドの評価が私などにはわかりにくいと いう理解なんですけど。 ○分科会長  いま使側委員がおっしゃった将来の期待というのもあるので、この中に入ってないで はないかというふうなご趣旨もあったかと思うのですが、結局、将来の期待というのは 、人材活用の仕組みとか運営といったものと関連しているわけですよね。ですから、異 動の幅とか頻度とか役割の変化に将来の期待というのがはっきり出ていくので、それは 要件の中に含まれていると考えているところなのです。  もう終わるようにしますが、特におっしゃりたいことがあればご意見伺います。 ○労側委員  この中に記載をされていない事柄について、この間、労働側委員が触れてきた事柄で 2点、箇条的に申し上げたいのは、やはり疑似パートの問題をこの中でも取り上げるべ きだということと、有期契約労働者の問題について、特に労働条件分科会の中では、今 般、いろいろやりとりがあった中で、有期契約労働者ということの問題について、検討 をしていくというような動きといいますか、そういうものも出てまいりましたので、も ともとパートタイム労働者の女性を見た場合に、6割が有期という現状を踏まえると、 このことが大変問題の所在としては大きいという認識は言ってきた。その点についてや はり触れておく必要があるというふうに思います。 ○労側委員  職務評価手法をですね、これから賃金制度とかいろいろ見直しが始まるということも ありますから、国として職務評価手法の開発みたいなものをきちんとやるということも 、これからパートタイムの公正な処遇の上で大切だから・・。 ○分科会長  それでは時間になりましたので、今日の分科会は終了しますが、ただこのたたき台に つきましては、引き続いてご意見を伺いながら、次回のとりまとめについて作業を進め るというふうにしたいと思います。今日言い足りなかったことについても、労使の皆さ んから意見を十分受け止めて、その上で公益委員と協力しながら、調整していく必要が あると考えております。そういうことで、事務局のほうにも精力的に対応していただき たいというふうに思っているところです。  なお、すでにお持ちのご意見については、本日の審議会以降に文書の形で事務局に対 して、私宛に提出していただければ、それを参考にさせていただきたいと思っておりま す。  今日は時間を超過しましたので、これにて閉会とさせていただきますが、お手元 に「平成15年度の雇用均等・児童家庭局の予算(案)の概要」についてという資料がご ざいます。これは、後ほどご覧いただくということにしたいと思います。  それでは、分科会はこれで閉会とさせていただきます。  本日の署名委員は、秋元委員と山崎委員にお願いしたいと思います。  次回の日程ですが、これについては事務局のほうからご連絡をさせていただきます。 議題は、引き続いて「今後のパートタイム労働対策について」ということです。本日は 長時間にわたってご議論いただきましてまことにありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)