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「基本方針(案)」に関する意見の募集結果について


1. 経緯

 薬事・食品衛生審議会血液事業部会において審議されている「基本方針(案)」について、以下の要領で、広く一般から御意見を募集した。

 (1)期間:平成14年12月24日〜平成15年1月13日
 (2)告知方法:厚生労働省ホームページ
 (3)御意見送付方法:電子メール、FAX又は郵送
 (4)受付数:  9件(うち個人6件。団体3件。)
 (5)意見数:119件

2. 御意見の概要

 いただいた御意見の概要は以下のとおり。

<前文: 2件>
 1.  血液製剤の定義について、本方針での血液製剤は、法第9条第2項第2号に定める血液製剤とすべきと考える。本方針は、前文にも記されているとおり、法第9条により定められる基本方針であるから、その中の血液製剤は法第9条の定義に基づくべきものと考える。
 2.  前文16行目を「本方針並びに、本方針に則して・・・」としていただきたい。

<第1節:19件>
 1.  基本方針(案)に記載されている4つの基本理念には賛成する。また、政府、地方自治体、献血センター及びメーカーの役割と責任を明確に確立するという日本政府の努力も支持する。しかし、国内自給を達成する努力の一環として、科学的な正当性のない、輸入製剤よりも国内製剤を優先する方針、政策、及び規制手段には賛成しかねる。すべての血液製剤を国内血漿由来とするという政策は、患者の最新の治療へのアクセスを制限し、輸入製品に対する人為的な市場障壁を生み出し、危険な誤解を引き起こす。
 2.  4つの「基本的な考え方」として、(1)安全性の向上、(2)国内自給原則・安定供給の確保、(3)適正使用の推進、(4)公正かつ透明な実施体制を掲げており、当然、優先順位もこのように考えられる。ところが、安全性の向上の具体策は第6節になってやっと言及される。分量からしても、国内自給原則・安定供給の確保に偏重しており、安全性の向上の視点を欠いた記述が延々と続く。最も重視すべき安全性の向上を軽視しているとの批判を免れない。まず第2節に安全性の向上を記述すべきである。また、「(2)国内自給原則、安定供給の確保」にも「(1)安全性の向上」の視点を反映させることが肝要である。
 3.  輸血医療において最も重要なことは「国民の理解と参加」であり、これが第1節の最初にないことは奇異な感じを覚える。輸血療法への国民の協力に敬意を表するとともに、輸血を最小限にする新しい医療技術の開発や適正輸血の確立を推進することを求めるべき。
 4.  安全性の向上に関し、血液製剤の使用は、他に代わる治療法がない場合に限り、必要最小限の量を用いることが医療の原則であることを述べるべき。
 5.  (1)(1)では、一般の医薬品とは異なる安全性確保対策が必要な血液製剤の特徴として、一般の医薬品との対比の中で特徴を述べるべきである。すなわち、「しかし、人の血液を原料として製造されていることから、厳格な品質管理に限界があり、ロットごとにも有意な品質の差がある。問診や検査によるスクリーニングには限度があり、製造過程における感染性因子の不活化処理等も完璧ではないため、感染リスク等を完全には否定できないなどの特徴を有する。」と記載することが望まれる。
 6.  血液製剤は献血血液であるために、安全性の確保については限界があることが明らか。遺伝子組換え製剤のような代替製剤は、比較的一定の安全性を確保することが可能であり、血液製剤よりも安全性の高い治療法を実現するために、代替製剤の開発を推進する必要があることを述べるべき。
 7.  (1)の「(1)安全性の向上」の第三段落を、「また、用法、効能及び効果について血液製剤と代替性がある医薬品(以下「血液製剤代替医薬品」という。)は、血液製剤と同様の安全性の確保及び向上を図ることとする。」と修正願いたい。
 8.  血液製剤と同じ安全レベルでは、代替製品である必然性に乏しいことになる。人の血液由来でなければ、より厳格な品質管理が可能だからだ。ここは、「特定生物由来製品に該当する場合は、血液製剤と同様の対策をとり、血液製剤以上の安全性の確保及び向上を目指すこととする。」とすることを提案する。
 9.  「血液製剤と同様の安全性の確保」という記述は、あたかも血液製剤代替医薬品が血液製剤より劣るかのように述べられており、現実に則していない。これらの製剤は、原料が不均一である血漿分画製剤とは別の形で安全性は保たれている。
 10.  近い将来、血液凝固第VIII因子、第IX因子のほとんどは遺伝子組換え製剤へ変わり、血液由来製剤の役割はほぼなくなると考えるべき。この10年にわたる使用実績と安全性から見て、今後血液由来製剤に依存する必要は乏しくなっており、遺伝子組換え製剤への切り替えを推進すべきことを述べる時期に来ている。
 11.  (1)の「(2)国内自給原則、安定供給の確保」の第一段落4行目の「海外の血液に依存しなくても」を「海外の血液や製剤に依存しなくても」に修正願いたい。
 12.  基本方針(案)では、言葉の面でも根底にある原則においても、献血に基づく国内自給が、より安全な製品、説明責任、安定供給につながると強調されている。これは、血液法案に係る国会審議全体を特徴付けた考え方と同じであるが、その根底にある論理には欠陥がある。科学的な証拠、海外での経験、あるいは日本における経験にさえ基づいたものではない。欧米において同様の問題に取り組んできた海外の規制当局が認めている基本的な事実、すなわち、原料血漿について献血と非献血を区別する制度は、供給に関する重大な問題を引き起こすということが完全に無視されている。
 13.  (1)の(2)について、倫理性、国際的公平性等の観点に立脚した場合、国内自給が妥当であるとの理由が明確ではない。むしろ、国内血液製剤と輸入血液製剤とのバランスを保つことが、安定供給及び安全性の向上という意味合いから推奨されるべきである。
 14.  国民の献血負担には限界があり、自給の原則に応じた医療を実現するために、医療技術の見直しを推進することを基本方針に述べるべき。また、国内自給の実現には遺伝子組換え製剤の開発を推進しなくてはならない。
 15.  (1)の(2)における国内自給が要請される理由について、基本方針(案)では薬害エイズが輸入売血からもたらされ、もし国内自給が達成されていれば防げたとの視点がまったく欠落している。「海外からの血液感染症の流入を防ぎ、又倫理的、国際的公平性の観点に立脚し」などとすべきである。
 16.  (1)の(3)における適正使用について、第7節で詳述されているが、ここでは理念だけ述べられ、具体性に乏しすぎる。少なくとも輸血療法委員会等、院内体制の整備には、ここでも言及しておくべきである。そこで第1項に加え、「一般の医薬品とは異なる安全管理が必要なため、院内に輸血療法委員会等を設置するなどして、適正使用を推進する必要がある。」を加える。
 17.  (1)の(4)の公正かつ透明な実施体制の確保について、情報公開のみでは「公正かつ透明な実施体制の確保」はできない。血液消費者や献血者の血液事業への参画を担保すべきである。すなわち、広く国民が意見を述べられる血液フォーラム等を開催し、審議会への反映を保障すべきである。
 18.  なぜ「国民の理解と参加」が(2)として構成されているのか。本来なら(1)(4)の中に含めて記述すべきである。国民参加を献血のみ想定するのではなく、積極的に血液事業に口を出す必要がある。また、虚偽申告などによって「生命と健康が脅かされる」可能性があることにも言及すべきである。
 19.  日本政府がこれらの基本方針(案)を最終的にまとめるに際して、我々のアイディア、予測、データ及び国際的な経験を役立てていただくため、最終的にまとめられる前に、血液事業部会の皆様とお話し合いの機会をいただけるようお願いする。

<第2節:12件>
 1.  需給見通しは、見通しのみを詳述するのではなく、達成すべき数値目標として掲げなければならない。
 2.  輸血用血液製剤は、「平成20年度において145万リットルを確保し、すべて国内献血でまかなうものとする。」としていただきたい。
 3.  (2)「原料血漿の需給の現状及び今後の見通し」について、平成20年度における原料血漿の見込量を117万リットルとしているが、この確保量は厚生労働省が機械的に7万リットル毎年上乗せして都道府県に指示してきた結果に基づくものである。日本赤十字社は最大限の努力を傾注して目標をすべて達成してきたが、その結果を数理計算によって原料血漿の供給予測とすることは意味がないと考える。
 4.  (2)について、「117万リットルが供給可能と予測される。」を「117万リットル程度が必要と予測される。」に修正願いたい。
 5.  「117万リットルが供給可能と予測される。」を「117万リットルを国内献血で供給するものとする。」に修正願いたい。
 6.  免疫グロブリン製剤については、「平成20年度において109万〜115万リットルを確保し、すべて国内献血でまかなうものとする。」としていただきたい。
 7.  アルブミン製剤については、「平成20年度において88万〜95万リットルを確保し、血液製剤代替医薬品を除き、すべて国内献血でまかなうものとする。」としていただきたい。
 8.  アルブミン製剤については、原料血漿が大幅に不足している。国内自給のために、遺伝子組換え製剤の開発推進の必要性、医療現場での医療の抑制を真剣に考える必要性について明示する必要がある。
 9.  (3)の(2)の血液凝固因子製剤について、第一段落「すべて国内献血で・・・」の前に「一部を除き」を加え、第二段落「今後ともこの状況が確保される見通しである。」を削除し、第三段落の最後に「これらについては今後国内自給が推進される必要がある」を加えていただきたい。
 10.  「血液凝固因子製剤については、血液製剤代替医薬品を除き、平成20年度において、すべて国内献血でまかなうものとする。」を加えていただきたい。
 11.  先進諸国では遺伝子組換え型の第VIII・第IX因子が主流になっていることから、「近い将来、血漿由来第VIII因子製剤と第IX因子製剤はほとんどいらなくなる。ただし、特殊な凝固因子製剤については、血液製剤として供給する必要が続く。特殊な血液製剤については海外からの輸入も引き続き必要である。」と述べるべき。
 12.  第5節(1)の第一段落と関連し、(3)に関して、(1)免疫グロブリン製剤及びアルブミン製剤、(2)血液凝固因子製剤のあと、(3)としてその他の製剤の見通しも説明すべきである。血液製剤の他の製造国から見た場合、このような考え方は自分本位と思われ、日本の患者の立場としても安全性、安定供給を考慮すると国内・輸入のバランスをとることが必要と思われる。

<第3節: 4件>
 1.  第3節(1)では、血漿分画製剤、遺伝子組換え製剤を含めた「国内自給」の定義をまず明確にしていただきたい。
 2.  アルブミン製剤の国内自給率が現在33.8%であり、平成20年を目途に国内自給の達成を目指すとされている。しかしながら、前節においては平成20年度におけるアルブミン製剤の需要予測は、163万リットル〜170万リットル、原料血漿の供給予測は117万リットル程度とされている。国内献血による自給を目指すということなのか、国内遺伝子組換え製剤も想定した国内自給なのか明確にしていただきたい。
 3.  第2節(3)(1)で示された、国内の製造能力120万リットル、原料血漿確保目標108万リットルに対し、国内献血に由来する血漿分画製剤の使用量は64万〜80万リットルであるという現状を認識し、献血由来製剤が国民に還元される「具体的な方策」をこの節に反映していただきたい。
 4.  第3節は「国内自給が確保されるための方策に関する事項」となっているが、(2)の「国内自給を確保するための基本的な考え方」にいう「確保されたすべての原料血漿が血液製剤として国内に供給」されるためには、市場原理に任せるという形で放置するのではなく、そのために何をしなければならないか、いつまでにするのかという具体的な方策について触れる必要がある。例えば、血液凝固因子製剤の国内自給を目指した平成2年度においては厚生省薬務局長から日本病院会、全日本病院協会、全日本自治体病院協議会の各会長宛てに「献血からつくられた血漿分画製剤の適正価格での優先購入」を含むお願い文書を発出している。

<第4節:28件>
 1.  「(1)献血推進に関する基本的な考え方」の1行目に「献血を国家的事業と位置付け、献血運動の普及促進に取り組むこと。」を記載していただきたい。
 2.  「(2)献血の推進に関する具体的な方策」について、一行目に、「内閣総理大臣を本部長とする「献血推進国民本部(仮称)が新設されるよう、各省庁の関連部局に対して働きかけを行う。」ことを記載していただきたい。
 3.  「(2)献血の推進に関する具体的な方策」について、献血者の確保を含む献血の推進は、献血推進計画を策定する国及び都道府県、並びに市区町村の責務である。もとより日本赤十字社は従来どおりの協力を引き続き行うが、あくまでも地方公共団体が第一義的に献血推進を行うことを明確にした記述としていただきたい。まず、都道府県の項では、「・・・広報や献血組織の育成、献血者の確保等献血を推進していくために必要な措置を講ずること・・・」としていただきたい。また、市町村の項では、「国及び都道府県とともに献血を推進していくために必要な措置を講ずること及び採血事業者が・・(途中省略)・・献血会場の確保、献血者の確保、献血への理解を求める・・(以下省略)」としていただきたい。
 4.  成分献血については、血小板採血を二週間おきに年12回やると、残り30週間は全血採血以外できない合理的な説明を求める。血小板採血12回、血漿採血12回、合わせて年24回できるようにすべきである。
 5.  輸血の副作用を減らし、献血者一人一人からより多くの採血ができるよう、600ml全血採血を行ってもよいのではないか。200ml全血採血は言うに及ばず、400ml全血採血と比べても副作用が軽減されるはず。
 6.  採血量の年間制限を体重によっては緩和してよいのではないか。
 7.  18歳未満については200ml全血採血のみ認められているが、全血採血より負担が軽いはずの成分採血ができないのは不思議である。体調や血液成分の変化を考慮して、16歳からの成分採血を検討してもよいのではないか。
 8.  200ml全血採血の需要が小さいならば、200ml全血採血に制限を設けてもよいのではないか。例えば「18歳未満」「体重50kg未満」「累計の献血回数が10回未満」のいずれかに合致した場合のみ受け付ける、とする。献血初心者には400ml全血採血に対する不安がある場合も多い。10回までは200ml全血採血を受け付けることによって400ml全血採血に対する不安を徐々に解消すれば、その後継続的に協力してもらうことも期待できる。
 9.  400ml全血採血の基準を満たしていても、献血者によっては自分の経験や体調を考慮して200ml全血採血を希望することがある。現場ではそのような献血希望者に対し執拗に400ml全血採血を求めたり、中には心無い言葉を浴びせ、献血希望者を傷つける職員もいるという話がある。最初の献血でそのような不愉快な思いをしたために、二度と献血をしたくなくなったという話も聞く。日本赤十字社も献血者満足を実践し、(1)献血について献血者が不愉快な思いをした事例の収集、(2)事例の整理及び献血者接遇の訓練システムの整備、を制度化することを提案する。
 10.  献血者と非献血者との差をもっとつけてもいいのではないか。医療保険が税・保険料と自己負担でまかなわれるならば、血液事業も同様に献血義務制にして、非献血者からは税・保険料を徴収するべき。それが困難であれば、代わりに献血者に金品で償還してもおかしくないと考える。
 11.  献血には移動にかかる費用も発生するので、金銭面の支援が必要。また、ボランティアのすべてが無償である必要はないと思うので、何らかの謝礼を出した方がよい。金券粗品配布について海外からクレームがあったと聞くが、「物」を配布されても困るという積極的協力者の声もあるので、一律の規制ではなく、選択の余地を残した上での再考をお願いする。
 12.  「血液検査を始めとした健康管理サービスの充実」として、ヘモグロビンA1c、尿酸、LDLコレステロールの血液検査付加を希望する。また、献血10回に1回は希望の血液検査をしてもらいたい。
 13.  健康管理サービスの充実は、純粋な献血思想になじまず、検査目的の献血などを増長する恐れがある。献血者の利便性の向上は、健康管理サービスのようなものではなく、献血したいときに献血できる環境作りであるべきで、献血以外の目的(献血者の健康管理)を持ち込むべきではない。
 14.  近年行われている採血業務の効率化による固定採血場所の移転・統合・廃止は、必ずしも献血者側の事情を考慮しているとは思えない。献血会場の確保の決定基準はいかがか。
 15.  採血事業者の項では、7行目に「・・・献血者登録制度による献血者や献血推進団体との連携の確保を図ることが重要である。」としていただきたい。
 16.  ボランティア活動の項では、1行目に「国は、官公庁及び企業等にボランティア活動である・・・(途中省略)・・・献血ボランティア休暇制度導入等、進んで献血しやすい環境作りへの取組を行うこと。」としていただきたい。
 17.  具体的に国民が献血できる環境が整備されていないと思う。会社・公務員とも献血のために有給休暇(半日有給制度があればそれを利用。)を取得でき、平日の献血の確保が円滑に行われるように進めていただきたいと考える。
 18.  教育現場においての献血思想の普及のため、7ページ4行目「学校での献血思想教育の実践を図ることが重要である。」としていただきたい。
 19.  「・・・学校においても、献血への理解を図ることに留意することが重要である。」は、日本人の感覚からすると所属団体によっては半強制的な意味合いがあり、自由意志に基づいた供血が常に行われるものではない。あくまでも各個人の自由意志によるべきことを提唱すべきであり、賛成いたしかねる。
 20.  現在日本赤十字社が行っている繁華街での献血は、各種ウイルス感染陽性率が高いという報告(平成14年日本輸血学会にてシンポジウム「輸血感染症−現状と課題」座長:田所憲治(東京都西赤十字血液センター))があることから、今後の安定供給及び安全性の向上のためには推進されるべきではない。
 21.  7ページ10行目の「採血地」の表示については、血液製剤代替医薬品における動物細胞等の使用も考慮し「採血(取)地」としていただきたい。
 22.  「国内献血由来製剤を適正に使用すること」と「消費者としての選択の機会を保障すること」は、どちらが優先されるべきなのか明確ではなく、インフォームド・コンセントの際に医療現場で混乱をきたすのではないか。
 23.  献血による原料血漿が不足している状況下で、患者が常に献血と非献血を選択する機会を得られるとは限らない。
 24.  日本赤十字社が今後導入を検討している採血ドナー登録制度は、既に一部輸入メーカーではシステム化されており、消費者として安全性を第一に選択(例えば消費者が輸入製剤の方が安全と考えること)しうるのか疑問が残る。安全性と国内自給のどちらが最優先されるのか明確にされたい。
 25.  血液製剤の表示に関する項目は、献血由来製品の需要拡大を図ろうとするかのような表現であり、献血の推進との関係が理解しがたい。
 26.  採血地及び献血または非献血の表示に関する項は、第7節に移行することが望ましいと考える。また、「献血を推進する観点」というより「国内自給を推進する観点」の方が適切である。
 27.  献血または非献血の問題は、国内自給に係る倫理性からの議論であるべきで、製品の献血・非献血から安全性を議論するのは適切ではない。献血・非献血の正しい意味を患者と医療者に周知するためには、有償・無償だけでなく、採血国及び都市、供血者登録制度の有無、供血者群の年齢、性別等詳細な比較が必要であり、単に献血・非献血だけを示すことは患者を欺いていることになる。
 28.  危機管理は、災害時のみとは限らない。輸入血液製剤や代替医薬品の供給ストップ、貯留されていた製剤の大量汚染など、いろいろな場合が想定される。

<第5節:17件>
 1.  「(1)血液製剤の製造及び供給に関する基本的な考え方」において「海外の血液に依存しなくても済むよう」を「海外の血液や製剤に依存しなくても済むよう」としていただきたい。
 2.  「国内自給を推進するものとする。」とあるが、「推進」では弱い。「国内自給を原則とする。」に変更する。
 3.  安定供給よりも安全性が重視されるべきであるから、「国内の献血由来血液は、血液製剤として有効かつ安定的に供給されなければならない。」は強すぎる。なぜなら、安定供給よりも安全性が重視されるべきだからである。そこで「国内献血由来血液は、血液製剤として有効かつ安定的に供給される必要がある。」に変更する。
 4.  血液法の決まりとして、需給計画を用いる方法に強く反対する。なぜなら、国内自給を達成するための道具として、輸入製剤に対する差別と不公正な取扱いにつながるだけだからだ。基本方針(案)では、日本は国内自給を推進し、緊急時あるいはそれらの製剤が日本で製造できない場合にのみ輸入するということが基本として述べられている。このような状況では、需給計画は、政府が市場を導く手段になっている。これは、海外のメーカーに対する大きな障壁を生み出す。
 5.  基本方針(案)は政府の役割を強調しすぎており、自由で開かれた市場の重要性が十分強調されていない。市場の閉鎖性、革新性の阻害、競争の制限に影響を及ぼすような政府の方針は、これらの基本方針(案)が避けたい問題そのものを生み出す結果になる可能性がある。基本方針(案)では、政府が安全で安定した供給に対する責任を負っているということを示そうとする一方、日本の患者が最新の治療にアクセスすることを保証する開かれた市場、競争、及び革新性が持つ役割について述べていない。
 6.  (2)の「製造業者及び販売業者は・・・・・・供給の確保に努めることが重要である。」が意味不明である。輸入製剤よりも国内献血由来を優先させろという意味か。いずれにしろ、「安定的な」という語を挿入し、安定供給への努力規定とする。
 7.  (2)の第三段落における国による研究開発の支援について、具体的な方策が不明瞭である。国内自給が推進されるのであれば、今後輸入血液製剤はもとより国内でも競争意欲の欠如により開発意欲は抑制される可能性がある。遺伝子組換え凝固因子製剤の製造方法、加熱処理、拡散増幅検査(NAT)の技術は海外から導入されていること、さらに欧米ではプリオンに関しても、官民一体となって意欲的に研究を進めている。日本の研究レベルは欧米のレベルに至らないことから、将来の安全対策に不安を感じざるを得ない。これらを考慮した上で、具体的な方策を記載されたい。
 8.  国内で製造されていない稀少血液製剤に関しても、パテントを取得するなどして、積極的に国内自給に切り替える旨を加える。さらに、血液製剤代替医薬品の推進について加える。
 9.  「審議会」には、専門学会から代表を出すような公平な人選を望む。
 10.  (3)の「原料血漿の配分」については、需給計画に規定するのは「原料血漿の標準的な価格」ではなく「原料血漿の価格」としていただきたい。理由は、標準的な価格では、その後の採血事業者と製造業者の個別交渉に委ねられかねないからである。
 11.  第三段落は、国が配分に関する責任を持つことを明確にするため、「採血事業者及び製造業者は厚生労働大臣の指示に基づき、需給計画を尊重して原料血漿を配分することが必要であり、厚生労働大臣は計画が尊重され、原料血漿が配分されるよう求めなければならない。」としていただきたい。
 12.  (3)には、原料血漿の配分結果を厚生労働大臣に報告させ、必要に応じ、勧告等の措置をとる旨を記載する。
 13.  (4)の「血液製剤の確保」は「安定供給のために必要な血液製剤の在庫の確保」とすべき。また、これには血液製剤代替医薬品を含むことを明記していただきたい。
 14.  (4)の第三段落は「国は、危機管理上必要な血液製剤在庫の義務化やそのために必要な財政措置等を講ずることとする。」と修正いただきたい。
 15.  (4)は、第四段落として、「輸血用血液については、離島・僻地等における地域保健医療確保の観点から、国は地方自治体における緊急時対応のために必要な血液の備蓄制度等の整備を図る必要がある。」ことを新たに加えていただきたい。
 16.  (4)について、国内自給を推進するのであれば、国の責任で備蓄をお願いしたい。
 17.  在庫と供給に関して、メーカーと輸入業者が市場需要に基づいて在庫を蓄積する責任を負っていることには同意するが、このことと、業界及び輸入業者に対して政府があらゆる種類の予想外の災害に準備するように公式に要求することとは異なると考えている。我々の業界はグローバルに展開しており、その第一の責務は、世界中で求められる血液製剤を必要な患者に届けることである。在庫を備蓄することよりも、予想外の事態が生じたときに、患者に血液製剤を供給するためにベストを尽くすことが業界の責任である。このような備蓄は、現在血液製剤を必要としている患者を苦しませ、死に至らせる可能性さえある。約2年前に世界が直面した遺伝子組換え第VIII因子製剤の不足は、現在では解決され、当該製剤の入手可能性は以前よりも改善している。世界の他の地域で潜在的な自然災害に備えて在庫を蓄積しているために、血液製剤を日本の患者に供給できない場合、日本でどういう反応がおこるだろうか。通常の需給変動の範囲内で、市場の需要に対応するために適切な量の在庫を維持することがメーカーの責任であり、その範囲を超える予想できないリスクに備えることは政府の責任であると考える。

<第6節:18件>
 1.  (1)の「安全性の向上のための取組」の中に「国は輸入血漿、輸入血漿分画製剤及び血液製剤代替医薬品についての安全確保について検査項目や国家検定等の面で内外格差を是正すべきである。」旨を追加記載していただきたい。
 2.  すべての血漿分画製剤を、最もリスクが高い「特定生物由来製品」に分類するとしている。当協会の製品は、世界で入手できる最も安全なものであると確信しており、輸血に使用される全血と同じ分類に位置付けることはできない。製造プロセスにおける献血者の審査プロセス、分画プロセス、及びウイルス不活化の工程で異なる方法をとることにより、ウイルス感染のリスクを大幅に削減できることが、欧米当局において認識されている。医薬品副作用調査データもこのことを示している。
 3.  遺伝子組換え製剤を「特定生物由来製品」とすべきではないと考えている。製造工程がまったく異なり、いかなる意味においても輸血のための血液とは同等となりえない。
 4.  改正薬事法の条文に基づけば、(1)の(1)は改正薬事法第42条(医薬品等の基準)に基づくものであると考えるが、条文では「必要な基準を設けること」となっており、「付加的な基準を設けること」とはなっていないので修正願いたい。
 5.  同様に(1)の(2)は、改正薬事法第12の2(許可の基準)に基づくものであると考えるが、条文では医薬品等の全般に関する基準となっており、血液製剤のみへの付加的な基準とはなっていない。他に基づく条文があるのであれば、示していただきたい。
 6.  同様に、(1)の(3)は、改正薬事法第68条の3(直接の容器等の記載事項)に基づくものであると考えるが、条文では「生物由来製品」、「特定生物由来製品」等であることを示す表示となっており、またこれらの製品は「保健衛生上特別の注意を要するもの」、「保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための措置を講ずることが必要なもの」と定義されている。このことから、「感染リスク等を有するため・・・必要な付加的な表示を行うこと」の記述は、「生物由来製品、特定生物由来製品等であることを示す表示を行うこと。」と修正願いたい。
 7.  9ページ2つ目の・の中ほどにある「採血事業者は、献血による感染症の血液製剤を介した伝播をできるだけ排除するために、」の文章は、「採血事業者は、血液製剤を介した感染症伝播の危険をできるだけ排除するために、」と修正願いたい。
 8.  続く「また、国及び採血事業者は、あらかじめ献血者に対し、検査を目的とした献血を行わないよう周知徹底する必要がある。」については、法第5条(地方公共団体の責務)に「献血について住民の理解を深めるとともに、採血事業者による献血の受入れが円滑に実施されるよう、必要な措置を講じなければならない。」とされているので、「また、国、地方公共団体及び採血事業者は、」と地方公共団体を加えていただきたい。
 9.  第4節(1)の若年層への普及啓発の一層の推進、健康管理サービスの一層の充実、及び第6節(1)第三段落の検査目的の献血をしないよう周知徹底することに関し、最近我が国における若年者のHIV陽性率が、他の先進国に比べて高いことを考慮した場合、これらを両立することは困難であると思われる。若年者のHIV感染に関して、国が若年者に献血人口増加を求める場合、どのような対策をとっていくのかを定義されたい。
 10.  (1)の第三段落について、検査目的の献血のみが危険なわけではない。金券目的であったり、休暇目的、集団献血での非自発的な献血など、いろいろ考えられる。これらを排除し得る適切な問診と、その問診に対して真摯に答える責務を規定すべきである。
 11.  採血事業者の取組の最後に、「国は公衆衛生の見地から、一層の感染症検査実施体制の整備を図る必要がある。」と付け加えていただきたい。
 12.  日本赤十字社の検査体制に無駄が多いと考える。NAT検査を国内三か所で行っているならば、他の検査も同様にこの三箇所でやれるはずである。少なくとも日本全体の検査部門の人件費は削減できるのではないか。
 13.  (1)の医療関係者の取組について、インフォームド・コンセントで必要とされる説明は「安全性」ではなく「危険性」である。また、この項は、「安全性の向上」というより「適正使用の推進」に含めるべき事項である。
 14.  (1)について、遡及調査は、記録及びサンプルの保存のみでできるわけではない。早急に遡及調査のできるシステムを構築すべきである。
 15.  (2)の第二段落は、「安全性の向上」に関する項目ではなく、「公正かつ透明な実施体制の確保」に関する項目である。第一段落における具体的な体制整備について言及されていないため、中央薬事審議会企画・制度特別部会の報告書「新たな血液事業のあり方について」に記載されている安全監視体制に関する記述を書き加える。
 16.  (3)において、危機管理は、危険性が明確に判明した場合にのみとられる措置ではない。血液製剤由来である「可能性」さえあれば、迅速に対応を講じなければならないことを明記すべきである。
 17.  「採血事業者、製造業者等及び医療関係者は、市販後段階の安全確保措置として、感染因子の混入が判明した場合に、その時点において遡及調査を速やかに講ずることを可能とするため、」の文章について、市販後段階の安全確保措置は保健衛生上の観点から考えるべきであり、単純に「感染因子の混入が判明した場合に」と位置付けるものではないと考える。また、血漿分画製剤においては製造工程におけるウイルス除去・不活化処理が施されており、科学的評価のための『血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン』も示されている。このことから、上述の文章から「感染因子の混入が判明した場合に、その時点において」を削除願いたい。
 18.  (3)において、「院内血輸血は・・・原則として行うべきではない。」とあるが、危機管理を考えれば、いたずらに選択肢を狭めるべきではない。院内血輸血については、一般の献血と同様の安全性を求めていけばいいだけではないのか。

<第7節:10件>
 1.  血液製剤の適正使用は重要であり、安定供給を確保する上で重要な役割を果たすが、特定の製剤の使用に関して医師の判断に影響を及ぼすことを意図した政府の方針は、輸入製品への差別を生み出す可能性がある。輸入製品であれ国内製品であれ、特定の医薬品に制限を設ける前に、患者のニーズにまず第一に対応すべき。
 2.  適正使用について、医療に必要な量の評価については述べられているが、実践的な方策の施行については、臨床現場の十分な理解が得られるだけの根拠が示されていない。日本の医療従事者は、国内血のみで医療を行う方策を自ら開発し、輸入血液製剤に頼る医療を見直さなければならない。輸血医療の専門家を育成し、使用指針の根拠となるような臨床研究を積極的に進めることを明記する必要がある。
 3.  適正使用の確立と同等以上の位置付けとして、デスモプレッシンや活性型第VII因子による止血治療のように、輸血量を低減する治療法の開発を推進することも重要な課題として掲載すべき。
 4.  主たる使用者である医療機関関係者、中でも医師への指導・教育について、指針を定め、また治療記録(カルテ)の開示と第三者機関による定期または不定期の検査により、的確な情報の提供とそれが実際の医療現場に有効に伝わっているかの検証をお願いする。
 5.  (1)について、適正使用ガイドラインの普及及び見直しについても言及し、国の定期評価には血液製剤代替医薬品を加える。
 6.  (2)について、「輸血業務の責任医師の設置」を追記する。
 7.  (2)について、地域の基幹病院においては「輸血学会の認定した輸血専門医と認定技師が常駐して血液製剤を一元管理する輸血部門の設置」として、周辺の病院の啓発にも努力してもらわなければ実効は上がらない。
 8.  (3)後段は、(1)に含めるべき事項である。
 9.  (3)に、家庭療法における適正使用の徹底についても言及する。
 10.  国内献血由来製剤の適正使用を進めたいのであれば、その使用に際し、患者(又は家族)から同意書を取り、日本赤十字社で保存するようにしたらよいのではないか。

<第8節: 9件>
 1.  血液製剤代替医薬品に関しては、各項目の中に含めるものとする。
 2.  血液製剤代替医薬品は、輸血医療の安定供給、安全性の改善や国内自給の達成のために最も大切な事項であり、独立した項目として扱うべき。
 3.  血液製剤代替医薬品について計画的な製造及び供給を行うことは、遺伝子組換え製剤の需要拡大を抑制する可能性があり不適切と考える。
 4.  (1)の第二段落中の採血国は「採血(取)国」としていただきたい。
 5.  血液製剤代替医薬品に関して「採血国及び献血又は非献血」の表示を行う目的が理解できない。血液製剤代替医薬品に含まれる血液成分の採血国等のことか。その対象は非献血アルブミン配合遺伝子組換え製剤か。第4節でも述べたように、献血と非献血について正しく説明できる資料の添付なしに、このような表示を行うことは患者に対して正直とはいえない。
 6.  (1)の第三段落は「特定生物由来製品と同様に行うこと」とし、「が望ましい」は削除していただきたい。
 7.  (1)の第五段落の「いわゆる人工血液等」は仮称であり、例示としてふさわしくないので削除願いたい。
 8.  (2)は、適正使用の項に含め、かわりに「公正かつ透明な実施体制の確保に関する事項」の節を設ける。
 9.  (3)として、「献血による国内自給や安全性の向上に必要な予算措置を、国及び地方公共団体は講ずるべきである。」旨を新たに加えていただきたい。


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