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部会報告書


品種 じゃがいも(商品名:「ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統」)
性質 害虫(コロラドハムシ)抵抗性及びウィルス(ジャガイモYウィルス)抵抗性
申請者 日本モンサント株式会社
開発者 Monsanto Company (米国)


 日本モンサント株式会社から申請されたじゃがいも3系統(商品名:「ニューリーフY・ジャガイモRBMT15-101、SEMT15-02、SEMT15-15系統」)のうち、1系統(商品名:「ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統」)について、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下「審査基準」という。)に適合した安全性評価がなされているか否かについて検討し、以下のような結果を得た。


I 申請された食品の概要
 ニューリーフY・ジャガイモには、コロラドハムシの防除に効果を発揮するBacillus thuringiensis subsp.tenebrionisが産生する蛋白質(以下「Cry3A蛋白質」という。)を産生させる遺伝子(以下「cry3A遺伝子」という。)、及びジャガイモYウィルス由来の外皮蛋白質遺伝子(PVYcp遺伝子)が導入されており、3つの系統(RBMT15-101系統、SEMT15-02系統、SEMT15-15系統)がある。
 Cry3A蛋白質は、コロラドハムシの消化管において、中腸上皮細胞の特異的受容体と結合して陽イオン選択的小孔を形成する。その結果、消化プロセスが阻害されコロラドハムシは死に至る。また、ジャガイモYウィルス抵抗性の機序は十分解明されていないが、ニューリーフY・ジャガイモにおいて、PVYcp遺伝子の転写産物は認められたが、PVY cp蛋白質は検出限界以下(検出限界1μg/g生組織重量)であったことから、ジーン・サイレンシング機構を介在して抵抗性が付与されていると推察されている。
 選択マーカー遺伝子として、NPTII蛋白質を発現させるアミノ配糖体系抗生物質耐性遺伝子(以下「nptII遺伝子」という。)が導入されている。
 なお、本報告内容については、3系統のうちの1系統(SEMT15-15系統)についてのものである。

II 審査結果
1 生産物の既存のものとの同等性に関する事項
 審査基準の第2章第1の各項に規定される資料(1.遺伝的素材に関する資料、2.広範囲な人の安全な食経験に関する資料、3.食品の構成成分等に関する資料、4.既存種と新品種との使用方法の相違に関する資料)について検討した結果、当該食品と既存のものが全体として食品としての同等性を失っていないと客観的に判断し、当該ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の食品としての安全性を評価するために、既存の食品を比較対象として用いる方法が適用できると判断した。そこで、既存のじゃがいもとの比較において、審査基準の第2章第2以下の各事項に掲げられた審査基準に沿って審査を行った。

1) 遺伝的素材に関する資料
 SEMT15-15系統の宿主は、じゃがいもSolanum tuberosumの一栽培品種であるShepody種である。遺伝子供与体としては、PVYcp遺伝子はジャガイモYウィルスの天然分離株O系統株に、cry3A遺伝子はBacillus thuringiensis subsp. tenebrionis BI256-82株に由来する。また、nptII遺伝子はEscherichia coliのトランスポゾンTn5に由来する。

2) 広範囲なヒトの安全な食経験に関する資料
 Shepody種は通常の食用の栽培種であり、広範囲なヒトの安全な食経験がある。cry3A遺伝子の供与体であるBacillus thuringiensis subsp. tenebrionisについては、ヒトの直接の食経験はないが、これを基材とする生物農薬等としてこれまで世界各国で安全に使用されてきた。nptII遺伝子の供与体であるE.coliはヒトの腸管内に存在する一般的な細菌である。また、PVYcp遺伝子は、天然型ジャガイモYウィルスの外皮蛋白質遺伝子と基本的に同じであるため、これまでも、ヒトはじゃがいもの摂取を通じてPVYのウイルスRNAや外皮蛋白質を摂取してきたと考えられる。

3) 食品の構成成分等に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統は、構成成分等(蛋白質、脂質、繊維、炭水化物、有害生理活性物質等)に関し、既存のじゃがいもと同じ程度であった。

4) 既存種と新品種の使用方法の相違に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統は、食品としての利用方法は既存のじゃがいもと同等である。なお、既存のじゃがいもとの栽培上の相違は、コロラドハムシ及びジャガイモYウィルスの防除に薬剤散布を必要とするか否かの点のみである。

2 組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統は、Cry3A蛋白質の発現によりコロラドハムシの食害を受けず、さらにPVY cp遺伝子の導入によりジャガイモYウィルスに抵抗性を持つため、それらの防除のための薬剤散布を軽減することができる。この点以外、栽培方法、利用目的及び利用方法は従来のじゃがいもと変わらない。

3 宿主に関する事項
 じゃがいもSolanum tuberosumは、通常の食用の栽培種であり、広範なヒトの安全な食経験がある。この品種の一つであるShepody種が、ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の親品種である。また、有害生理活性物質であるソラニン等の産生等が知られているが、それらに関する情報は十分に得られている。

4 ベクターに関する事項
 ニューリーフYジャガイモ SEMT15-15系統の作出にはプラスミドPV-STMT15が用いられた。これらプラスミドは、主としてE.coli K-12株の誘導株であるE.coli MV1190株において構築されたバイナリーベクターである。
 プラスミドPV-STMT15は、それぞれ1コピーのPVY cp蛋白質産生に関与する遺伝子カセット(P-FMV/PVYcp/E9 3')、Cry3A蛋白質産生に関与する遺伝子カセット(P-Arab-SSU1A/ cry3A/NOS 3')、NPTII蛋白質産生に関与する遺伝子カセット(P-NOS/nptII/NOS 3')、AAD蛋白質産生に関与するaad遺伝子、その他oriV領域及びori322領域等を含み、そのサイズは13,499bpである。
 PV-STMT15に存在する全ての遺伝子は、その特性が明らかとなっており、既知の有害塩基配列を含まない。また、PV-STMT15には細菌中で増殖が可能な塩基配列が含まれるが、植物細胞中では自律増殖しない。

5 挿入遺伝子及びその遺伝子産物に関する事項
1) 供与体に関する事項
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統に導入されているPVY cp遺伝子はジャガイモYウィルスの天然分離株O系統株に、cry3A遺伝子はBacillus thuringiensis subsp. tenebrionis BI256-82株に由来する。また、nptII遺伝子はE.coliに由来する。
 PVY cp遺伝子は、天然型ジャガイモYウィルスの外皮蛋白質遺伝子と同一であるため、これまでも、ヒトはじゃがいもの摂取を通じてPVY cp蛋白質を摂取してきたと考えられる。なお、1994年に米国で実施された調査によれば、非組換えじゃがいものPVYウィルス平均感染率は19%であった。また、1999年に欧州で実施された調査では、非組換えじゃがいものPVYウィルス平均感染率は9.5%であった。さらに、昭和63年度に北海道で行われた調査では、日本のじゃがいものPVYウィルス自然感染率は平均21.2%であった。
 発現蛋白質であるCry3A蛋白質、NPTII蛋白質については、すでにニューリーフ・ジャガイモやラウンドアップ・レディ・大豆等において、厚生労働省の審査基準に基づく食品としての安全性が審査済みである。

2) 遺伝子の挿入方法に関する事項
 PV-STMT15の、親品種であるShepody種への導入には、アグロバクテリウム法が用いられている。

3) 構造に関する事項
 SEMT15-15系統には、PVY cp遺伝子、cry3A遺伝子及びnptII遺伝子が存在している。また、aad遺伝子、oriV領域及びori322領域も含まれることが示されている。但し、aad遺伝子については、細菌の遺伝子発現調節下でのみAAD蛋白質を発現することから、植物体中では発現しないことが、ELISA法で検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であることより確認されている。なお、既知の有害塩基配列は含まれていない。

4) 性質に関する事項
 Cry3A蛋白質は、コロラドハムシ等特定の鞘翅目昆虫の消化管において、中腸上皮細胞の特異的受容体と結合し陽イオン選択的小孔を形成する。その結果、消化プロセスが阻害され昆虫は死に至る。また、ジャガイモYウィルス由来のPVY cp遺伝子を導入することにより、ウィルスに対する抵抗性を獲得する。
 NPTII蛋白質は、ATPの存在下でアミノ配糖体系抗生物質をリン酸化し不活化する。

5) 純度に関する事項
 遺伝子導入に用いたプラスミドPV-STMT15は塩基配列がすべて決定されており、その特性も明らかになっている。また、宿主に導入された遺伝子は、それらの特性が明らかとなった遺伝子のみである。

6) 安定性に関する事項
 じゃがいもは栄養繁殖により種イモの増殖がなされるため、後代で遺伝子型が分離する可能性は極めて低く、目的遺伝子(cry3A遺伝子及びPVY cp遺伝子)が安定して機能していることは、圃場試験や生物検定により確認されている。

7) コピー数に関する事項
 サザンブロット分析及びゲノムウォーキング等の結果より、SEMT15-15系統には、3カ所の部位に挿入されており、第1挿入領域には2コピーの完全なT-DNA領域が、第2挿入領域にも2コピーの完全なT-DNA領域が、第3挿入領域には1コピーのT-DNA断片がそれぞれ存在することが明らかとなっている。
 また、各挿入遺伝子の近傍の塩基配列も全て明らかとなっている。

8) 発現部位、発現時期及び発現量に関する事項
 SEMT15-15系統においては、ウェスタンブロット分析により、PVY cp蛋白質は検出限界以下(検出限界1μg/g生組織重量)であった。PVYに自然感染したじゃがいもShepody種の葉においては、平均27.6μg/gのPVY cp蛋白質が発現しており、また、PVY cp RNA量は、ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の葉におけるPVY cp RNA量の約8.4倍であること等から推定すると、仮にニューリーフ・Yジャガイモ SEMT15-15系統でPVY cp蛋白質が発現しているとしても、その発現量はPVY自然感染じゃがいもShepody種における発現量を大きく下回ると考えられる。
 また、SEMT15-15系統におけるCry3A蛋白質及びNPTII蛋白質の平均発現量は、生組織重1g当たり塊茎で、それぞれ0.126μg、4 ngである。さらに、SEMT15-15系統においては、ELISA法により、AAD蛋白質は検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であった。

9) 抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に関する事項
 NPTII蛋白質は29kDの蛋白質であり、ATPの存在下でアミノ配糖体系抗生物質をリン酸化し不活化する。NPTII蛋白質については、すでにニューリーフ・ジャガイモ等における厚生労働省の審査において、安全性が確認されている。

10) オープンリーディングフレームの有無とその転写及び発現の可能性に関する事項
 SEMT15-15系統における外来のオープンリーディングフレームは、Cry3A蛋白質、NPTII蛋白質及びPVYcp蛋白質の発現に係るもののみであることが、サザンブロット分析及びゲノムウォーキング等の結果により確認されている。
 また、PVYcp遺伝子の転写は認められたが、PVYcp蛋白質は検出限界以下(検出限界1μg/g生組織重量)であった。
 さらに、プラスミド・ベクターの選択マーカーであったaad遺伝子も導入されていたが、aad遺伝子は、細菌の遺伝子発現調節下でのみAAD蛋白質を発現することから、植物体中では発現しないことが、ELISA法で検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であることより確認されている。

6 組換え体に関する事項
1) 組換えDNA 操作により新たに獲得された性質に関する事項
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統に新たに導入された性質は、Cry3A蛋白質の発現によりコロラドハムシの食害を受けず、さらにPVY cp遺伝子の導入によりジャガイモYウィルスに抵抗性を示す点のみである。

2) 遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する資料
 a 供与体の生物の食経験に関する事項
 cry3A遺伝子の供与体であるBacillus thuringiensis subsp.tenebrionisは、ヒトの直接の食経験はないが、これを基材とする生物農薬としてこれまで世界各国で安全に使用されてきた。
nptII遺伝子の供与体であるE.coliは、ヒトの腸管内に存在する常在性細菌である。
 さらに、PVY cp遺伝子は、天然型ジャガイモYウィルスの外皮蛋白質遺伝子と同一であるため、これまでも、ヒトはじゃがいもの摂取を通じてPVY cp蛋白質を摂取してきたと考えられる。

 b 遺伝子産物がアレルゲンとして知られているか否かに関する事項
 Cry3A蛋白質、NPTII蛋白質及びPVY cp蛋白質が、アレルゲンとしてアレルギー誘発性を有するということは報告されていない。

 c 遺伝子産物の物理化学的処理に対する感受性に関する事項
 ア  人工胃液・人工腸液に対する感受性
 多くの既知アレルゲンは、ペプシン及びトリプシン消化に対して安定であることを踏まえ、Cry3A蛋白質を人工胃・腸消化液に反応させ、ウェスタンブロット分析した結果、人工胃液中でCry3A蛋白質の免疫反応性は、30秒後に完全に消滅することが確認された。人工腸液中では、68kDのCry3A蛋白質は速やかにトリプシン耐性の55kDのフラグメントに変換された。
 また、PVY cp蛋白質については、十分な試料の調製もできなかったことから人工消化液等の試験は行われていないが、非組換えじゃがいもにおいて天然のPVY感染率が比較的高いことが報告されていることも考慮すれば、問題はないと判断できる。
 NPTII蛋白質については、人工胃液及び人工腸液中で免疫反応性が速やかに消失することが、ニューリーフ・ジャガイモ等における厚生労働省の安全性審査において確認されている。
 なお、AAD蛋白質については、植物体中で発現しないことが、ELISA法で検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であることより確認されている。

 イ  加熱処理に対する感受性
 Cry3A蛋白質は、加熱により免疫反応性の99%以上が失われることが、ELISA分析により確認されている。

 d 遺伝子産物の摂取量を有意に変えるか否かに関する事項
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の塊茎中の各発現蛋白質の平均発現量は、生組織重1g当たり、Cry3A蛋白質で0.126μg、NPTII蛋白質で 4ng、 PVY cp蛋白質で検出限界以下(検出限界1μg/g生組織重量)となっている。なお、AAD蛋白質については、植物体中で発現しないことが、ELISA法で検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であることより確認されている。
 日本人の一日一人あたりのじゃがいもの平均摂取量46.1g(国民栄養の現状2000、じゃがいもといも類加工品との合計摂取量)を全てニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統に置き換えて計算すると、加工損失等がないとして、一日一人あたりの予想摂取量は、Cry3A蛋白質で5.81μg、NPTII蛋白質で0.18μg、PVY cp蛋白質で46.1μg以下となる。

 e 遺伝子産物と既知の食物アレルゲンとの構造相同性に関する事項
 自然感染ジャガイモ由来のPVY cp蛋白質について、既知のアレルゲンとの構造相同性を検索するため、アレルゲン及びグリアジンをキーワードとして抽出した蛋白質との配列の比較をデータベースを用いて解析した結果、PVY cp蛋白質と8個の隣接したアミノ酸配列が一致するような配列はなく、既知アレルゲンとの間に相同性は認められなかった。
 また、発現蛋白質であるCry3A蛋白質及びNPTII蛋白質については、すでにニューリーフ・ジャガイモやラウンドアップ・レディ・大豆等において、厚生労働省の審査基準に基づき審査済みであり、問題はないと判断できる。

 f 遺伝子産物が一日蛋白摂取量の有意な量を占めるか否かに関する事項
 日本人の一日一人あたりの蛋白質の平均摂取量79.2g(国民栄養の現状、2000)に基づいて計算すると、Cry3A蛋白質、NPTII蛋白質及びPVY cp蛋白質の一日平均予想摂取量の一日蛋白摂取量に対する割合は、それぞれ0.0000073%、0.0000002%、0.000058%以下と極めて少ない。

 以上、aからfの結果から総合的に判断すると、Cry3A蛋白質、NPTII蛋白質及びPVY cp蛋白質がアレルゲンとなるとは考えにくい。

3) 遺伝子産物の毒性に関する資料
 Cry3A蛋白質について、マウスを用いた強制経口投与試験を行った結果、最大投与量5,220 mg/kgまで投与しても有害な影響は認められなかった。この投与量は、日本人(体重50kg)がじゃがいもから摂取するCry3A蛋白質の一日最大予想平均摂取量5.81μgの約4,500万倍に相当する。
 また、自然感染ジャガイモ由来のPVY cp蛋白質についてのマウス急性毒性試験は行われていないが、毒素配列データベースを用いて検索を行った結果、PVYcp蛋白質と類似性を示す既知の毒性蛋白質はないことが確認された。
 なお、AAD蛋白質については、植物体中で発現しないことが、ELISA法で検出限界以下(検出限界値6.7ng/g生組織重量)であることより確認されている。 さらに、NPTII蛋白質については、すでにニューリーフ・ジャガイモ等における厚生労働省の審査において、安全性が確認されている。

4) 遺伝子産物の代謝経路への影響に関する資料
 Cry3A蛋白質は酵素活性をもたないため、代謝経路に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。また、PVY cp蛋白質についても、その発現レベルは非組換えのPVY自然感染じゃがいもよりはるかに低いと考えられることから、代謝経路に及ぼす影響はあるとしても極めて低いと考えられる。
 NPTII蛋白質は基質特異性が高く、その基質となりうる化合物又は分子はじゃがいも中には存在しない。

5) 宿主との差異に関する資料
 主要構成成分(総固形物、ブドウ糖、ショ糖、ビタミンC及び可溶性蛋白質)及び有害生理活性物質(グルコアルカロイド)について、既存のじゃがいもとの間で比較したところ、ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統ではブドウ糖の値で、親品種のShepody種との間で統計的有意差が認められたが、文献値の範囲内であり、意味のある相違はないと考えられた。また、組成成分(水分、蛋白質、脂質、灰分、粗繊維質、炭水化物、熱量)の分析の結果、SEMT15-15系統で脂質の値に親品種との間で統計的有意差が認められたが、これについても文献値の範囲内であり、意味のある相違はないと考えられた。

6) 外界における生存及び増殖能力に関する資料
 1993年から1997年にかけて、米国及びカナダで野外試験が行われているが、ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の生存・増殖能力は非組換えじゃがいもと同等であった。

7) 組換え体の生存及び増殖能力の制限に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の生存・増殖能力は非組換え品種と同等であることから、生存・増殖能力の制限要因についても両者の間に変化はないと考えられた。

8) 組換え体の不活化法に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統は、物理的防除(耕耘)や化学的防除(除草剤の散布)など、じゃがいもを枯死させる従来の方法によって不活化される。

9) 諸外国における認可、食用等に関する資料
 77系統は、1998年に米国食品医薬品局(FDA)及び環境保護庁(EPA)により、食用及び飼料としての安全性評価が終了し、販売認可が得られている。また、栽培については、米国農務省(USDA)において1999年に認可されている。

10) 作出、育種及び栽培方法に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統と既存のじゃがいもとの栽培方法の相違は、コロラドハムシ及びジャガイモYウィルスに防除に薬剤散布を必要とするか否かの点のみであり、他の点では同等である。

11) 種子の製法及び管理方法に関する資料
 ニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統の製法及び管理方法については、既存のじゃがいもと同様である。種イモによる系統の維持・管理は行われておらず、現在では、マイクロ・チューバーとして培養保存されている。

III 基準適合性に関する結論
 以上のことから、日本モンサント株式会社から申請されたニューリーフY・ジャガイモSEMT15-15系統については、申請に際して提出された資料を審査基準に基づき審査した結果、人の健康をそこなうおそれがあると認められないと判断される。


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