02/12/16 第13回労働政策審議会雇用均等分科会議事録            第13回労働政策審議会雇用均等分科会 1 日時 平成14年12月16日(月) 13時00分〜17時00分 2 場所 専用第21会議室(17階) 3 出席者     労側委員:岡本委員、秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員     使側委員:前田委員、志村委員、遠藤委員、山崎委員     公益委員:若菜会長、渥美委員、奥山委員、今田委員、佐藤(博)委員 ○分科会長  ただいまより第13回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日はご多忙 の中、ご出席いただきましてありがとうございました。本日の欠席委員は樋口委員、吉 川委員の2名です。本日の議題は前回に引き続き、今後のパートタイム策についてで す。本日は前回説明があったように、以前に示された論点のうちの残りの論点である短 時間正社員制度、能力開発・就業支援、税・社会保険などの就業調整に関する問題につ いて議論いただきたいと思います。同時に、前回の議論の続きをそのあとでしていただ きたいと考えております。資料に基づき、事務局より説明をお願いいたします。 ○事務局  資料1の「柔軟で多様な働き方の選択肢としての短時間正社員制度」について説明い たします。1頁目として、現状のフルタイム正社員か補助的パートの二者択一でない多 様な働き方の選択肢の1つとして、パート研報告では短時間正社員を提言しておりま す。ここでの定義は図表1の上に書いてあるように、「フルタイム正社員より1週間の 所定労働時間は短いが、フルタイム正社員と同様の役割・責任を担い、同様の能力評価 や賃金決定方式の適用を受ける労働者」という考え方であります。短時間正社員につい ては2つの仕組みという形で考えています。フルタイム正社員が正社員のまま短時間で 勤務する形の場合と、外部市場からの参入という場合の形態です。こういった短時間正 社員について、そのニーズを調べたのが図表2です。  現在、実際に制度があるのは正社員であって、育児、介護を行う者を対象にした場合 で27%と多く、あとのケースとして、正社員であって、育児、介護以外で短時間勤務を 希望する場合を対象とするとか、パート等の非正社員で短時間正社員への転換を希望す る者を対象にするとか、その他、外部からきた人を直接対象とする制度というのはまだ 少ないのですが、今後検討の可能性があるものについては、いずれのケースについても 20%前後ある状況です。  2頁の図表3は、正社員にこの短時間正社員制度の利用希望を聞いたところ、「利用 したい」という人が19%、「将来利用する可能性あり」が35.6%ということで、ニーズ はかなり高いことが言えるかと思います。  3頁の図表4は、パートタイム労働者に短時間正社員制度の利用希望を聞いたもので す。多いのは下の2にあるように、「残業や転勤がほとんどない短時間正社員制度」と いうのを利用したいという人が46%ですが、上の1の「残業も転勤もフルタイム正社員 と同様の短時間正社員制度」も利用したい人が17%いるという結果が出ております。  次の4頁は、正社員の人に現在の仕事を複数の短時間正社員が分担することは可能か どうかを聞いたものです。ある程度の事業所や正社員、パートの人たちが、短時間正社 員制度の可能性を考えているわけですが、この制度が広がっていくための課題として、 例えば、現在の正社員の仕事を複数の人で分担することができるかどうかを聞いたもの です。「今のままで可能」と答えた人が17%、「工夫すれば可能」と答えた人は47.8% で、工夫の内容としていちばん多かったのは「仕事内容を明確化して細分化する」で 84%、「分担する者同志で連絡を行う」が72.4%でした。一方、「不可能」と答えた人 が20%おり、その理由については「内容的に仕事を分けることができない」が72.6%、 「連絡業務等が多くなり過ぎる」が42%、「特定の時間帯に対応が必要」が35.8%と いった状況でした。  現在、短時間正社員制度をフルタイム正社員とパートタイムで働くといった二者択一 という中に、中間的な働き方もいろいろ用意してはどうかということで、短時間正社員 を制度として定着させ、これを足掛かりとして多様就業型ワーク・シェアリングを普及 させていくという考え方の下に予算要求しております。これは「多様就業型ワーク・ シェアリング導入モデル開発事業」ということで考えております。どのような働き方や 処遇の仕組みを作っていけばいいのかについて、モデル事業を通じて明らかにすること で予算要求しているわけです。説明は以上です。 ○分科会長  ご質問ご意見がありましたらお願いいたします。 ○労側委員  理解を深める意味で伺います。上のほうに1週間の所定時間は短いがということでフ ルタイム正社員、短時間正社員について説明があります。いま事務局が言われた外部労 働市場からの参入という言葉を使われて、ここで補助的パートと言われている人たちも 短時間正社員にキャリアアップ・基幹化ということでいく場合、区分けの仕方で、正社 員という使い方は契約期間が無期で期間の定めがないということで短時間正社員とする のですか。つまり、フルタイム正社員のまま短時間正社員という言葉を使われたので、 契約期間の定めのない契約だと、言葉の表現は私もよくわからないのですが、「主婦等 」という外部労働市場と言われている人が短時間正社員にいくということは、契約期間 に期間の定めのない形の人たちがいくのでしょうか。有期で、かつ補助的なパートとは 非常に言いにくいのですが、その人たちが短時間正社員にいくと言えば、契約は無期、 契約を変更していくという理解でいいのですか。 ○事務局  これはあくまで概念図であり、具体的にどういった契約の変更を伴うかなどといった ことについては、これからモデル事業をしていく中で考えていくことかと思います。こ こで位置付けている短時間正社員の考え方は、いまいろいろと議論していただいている 中で、仕事の内容とかさらにはキャリア管理の実態など、実際の正社員と同じ人で時間 だけが短い人たちについて、パート研報告の中では同一処遇決定方式を取ったらどうか と言われており、そういった位置付けになるような人たちを、ここでは短時間正社員と 呼んでいるということです。さらにこのような人たちをどのような形で増やしていく か、いろいろな道筋を作ったらどうかということでの提案と認識しております。 ○労側委員  契約は様々ですが、正社員という使い方は、通常契約期間は無期ということです。フ ルタイム正社員というのは、単に働く時間がフルタイムということだけではなくて、契 約期間も期間の定めがないということになると思います。その人たちが短時間正社員に いく場合もあるし、主婦等ということから考えると、有期の人が契約更新でいくという ことになるわけですか。研究会報告では、短時間正社員という仕組みを「バイパス」と いう言葉を使っているのです。バイパスというのはフルタイム正社員に直接にはいかな いが、外を通っていくという意味でバイパスという言葉を使ったのでしょうか。どうも この概念図がわかりません。  補助的パートと言えば、補助的フルタイムもいると思うのです。男女間の賃金問題の とき、やはり仕事の与え方という議論になり、女性は補助的労働が多いとかということ がありました。この図の仕方がちょっとよくわからないのです。さらに、将来も含めて 3つのグループを認めた上で短時間正社員制度を作るのかどうかという点についても理 解しにくいのです。 ○事務局  バイパスという言い方は、人によって例えば育児やその他別のニーズにより、短時間 を希望し、すぐフルタイムで勤務することに支障がある人もいるわけです。そのような 人についても、仕事がキャリアアップしていく中で短時間正社員という道を通って、あ る時期がきたらさらにまたフルタイムでも働ける状態になったとき、このような形で 通っていくこともできるのではないかという意味合いでバイパスという言葉があるのか と思います。必ずしもすべてこの道を通ってという意味ではないと認識しております。  補助的フルタイムもいるのではないかというお話については、もちろんいろいろな形 のフルタイム正社員がいると思います。フルタイム正社員の中でもいろいろな人たちが いることに合わせ、短時間正社員もあり得るのではないかということです。ある意味で ここは3つに見えますが、フルタイム正社員のほうでいろいろな形が出てくれば、ここ も様々なバリエーションが出てくるのではないかと思われます。 ○労側委員  私の認識はこのような分け方ではなく、契約期間の定めのない、いわばフルタイム労 働者がおり、契約期間の定めのない短時間のパートタイム労働者がいて、かつ合理性を 持った有期契約のパートタイム労働者がいるという3つの区分ならば理解できるので す。補助的パートという仕事の内容等で区分するという発想はよくわかりません。正社 員同志の話ですが、正社員であっても、補助的フルタイムがいるのではありませんか。 双方向で行き来できるという仕組みは、もちろん私も大賛成であり、そのような仕組み を作らなければいけないと思いますが、現状の姿を認識する場合、補助的パートがある ことをそのままにして、その中からキャリアアップを図り無期の短時間正社員という仕 組みを作ろうと、3つのことを固定化することが前提になっている気がするのです。 ○事務局  お手元のファイルの「パートタイム労働研究会報告」の28頁、下の三角の図をご覧く ださい。この概念図は上にいくほど仕事の難易度、残業、配転の厳しさとなっており、 仕事の内容を示しています。それに応じて賃金や雇用保障が高いという図になっていま す。横を見ていただくと、フルタイム・パートと分かれています。この図は、従来二元 的な雇用管理だったものを、灰色で塗られている中間的な雇用形態、いまもできている とは思いますが、中間的な雇用形態を作ることによって、連続した働き方ができるよう にという概念図なのです。  はっきり言えるのは、上の白い三角の右のほうに点々で切られている小さい三角は短 時間正社員だということです。問題は中間形態の所です。中間形態にはフルタイムと パートタイムがあるわけです。また、いちばん下の白い所は、いま労側委員が言われ た、いわば補助的なフルタイムと補助的なパートだということになります。  中間的な雇用形態とされている灰色のパートタイム労働者を、例えば短時間正社員と して位置付けるかどうかというのは、多分いろいろな意見があるのではないかと思いま す。それについて、この分科会でも是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。ま た、先ほど事務局が言った来年度の概算要求で、短時間正社員のモデルを業界の協力を 得て作っていこうということですから、その中でいま問題意識として出された有期雇用 のパートタイム労働者、その有期雇用も更新型でない人は該当しないと思いますが、更 新型で実態として常用的に働いている人の場合をどのように位置付けるかについては、 多分もっと議論していただく必要があるのではないかと考えております。 ○労側委員  理解を深めるために、先ほど説明があったモデル事業の予算要求の具体的な中身につ いて教えていただきたいと思います。概念図は研究会報告でまとめられたものを示して あるわけですが、これをここで議論して、これからもしこちらの方向でいこうとなった 場合、この表そのものについて皆さんの認識が合っていないと誤解が生じるのではない かと思います。例えば、フルタイム正社員から短時間正社員、矢印の所に「育児介護と の両立」というのがあり、いま育児・介護休業法で短時間勤務制度というのがあるの で、そのことを指しているのではないかと思うのですが、そのときに短時間正社員にな るというか、この位置付けはいまと何か変わることがあるのかどうかについても確認し たいと思います。先ほど労側委員からもありましたが、正社員とは何かというところの 定義、いろいろな切り口があるとは思いますが、今後もこの表現でいいのかどうかも含 めて、正社員の定義をどのように位置付けられているのかお聞かせください。 ○事務局  現在、概算要求している多様就業型ワーク・シェアリングの導入モデル開発事業につ いて説明いたします。事業の概要としては、制度導入に係る意識調査、制度導入の実態 調査を広く行いたいと思っています。さらに、検討委員会を設け、その中で制度導入に 当たっての秘訣のようなものについて開発していただく、ある意味でこのようなこと、 導入するに当たっての留意点とか、制度導入の効果の検証方法も含めて、秘訣という形 で考えを出していただくことを考えております。それによって、制度導入に伴い発生す ると思われる問題点やその解決方法などについて、あらかじめ道筋をつけ、企業におけ る制度の導入を促すものを考えていくということであります。  それができた後、今度は業界、これは業種がいくつになるかは予算の査定によるわけ で、いまの段階ではまだ数字はわかりませんが、いくつかの業界に実際に取り組んでい ただく委託事業のような形にし、それぞれの業界においての意識調査、業種別での秘け つについて、もう少しブレイクダウンした検討委員会もしていただくことを考えており ます。さらに、その業種の中で、モデル企業を選んでもらい、そこで実際にこういった 制度を導入してもらい、その中で制度適用者が出てきた状況を追跡調査する形を取り、 その結果をまたフィードバックさせて秘訣というやり方でうまくいくのか、その点をさ らに検討したいと考えております。いまの要求段階では3年計画で考えているところで す。  現在、育児、介護について短時間勤務の制度がありますが、それとの関係はとの質問 ですが、それを変えるものではなく、逆に育児、介護という対象だけでなく、他のケー スでもそういった形で短時間勤務を希望できる人を増やしていく、もう少し普遍化させ ていくといった仕組みを考えるというものです。 ○公益委員  正社員について、研究会報告の中で明確に書かれていない所もあるわけですが、委員 会で暗黙のうちに前提としていたこと、正しくないかもしれませんが、私の理解では パートタイマーの中で基幹的労働力化しフルタイマーと同じ仕事に従事するパートが出 てくると思うのです。雇用管理の実態も比較できるフルタイマーと同じであれば、ルー ル5で同一の処遇決定方式を適用してくださいと言っているわけです。そのようなパー トタイマーであってもフルタイマーと同じ処遇決定方式を適用されている人の中で、も し比較するフルタイマーが雇用期間に定めなしであれば、雇用期間についても同じもの を適用した者が短時間正社員であると思います。ルール5が適用されている人の中で も、実は雇用期間の定めある人とない人が出てくるのです。定めのない人が短時間正社 員であるというのが、多分研究会での多くの人が暗黙の前提としていることだと思いま す。フルタイム正社員とは行き来があるわけですから、フルタイム正社員が雇用期間の 定めなしと想定しているならば、短時間正社員というのは雇用期間の定めなしと考えま す。  もう1つ、補助的パートがみんな雇用期間の定めがあるというわけではなく、ここも 実は2種類あるのです。雇用期間の定めない補助的パートもいるし、あるパートもいま す。暗黙のうちに前提としたのは、短時間正社員は基幹労働力化したパートでフルタイ マーと同じ処遇決定方式が適用され、さらに、比較されるフルタイム正社員と同じよう な雇用報酬を適用するという段階まで進んだ者が短時間正社員だという理解です。 ○労側委員  フルタイム正社員のほうに補助的パートと書いてあります。フルタイム正社員の中に 補助的フルタイム正社員、このような場合はどうなるのですか。この両方からの行き来 はないのですか。あくまでも基幹労働力を持っている、労働をしていて行き来はある が、補助的正社員と補助的パートと同じ仕事をしていたら比較はできますよね。ここで の行き来はないのですか。 ○公益委員  同じ仕事をしている人であれば、基幹的、補助的ではなく、同じ仕事で同じ雇用管理 であれば同一処遇決定方式を適用しなさいということです。報告書でルールとして挙げ ているのはそこまでです。さらに、雇用方針まで揃えれば、短時間正社員になると考え ます。 ○労側委員  正社員とパートタイムがいると、そこの均等待遇というのは、まさに労働の質、労働 の量などを見ながら比較するものは、同じ仕事ならば基幹的労働力同志のフル・パート だと私は考えています。比較するのは量や質だと思うのです。補助的なフルの仕事と補 助的なパートの仕事が比較しやすいわけですから、その行き来は、もちろんキャリア アップという問題もありますが、現状からいってこれだと行き来する道がないのです。 ○公益委員  易しい仕事からよりレベルの高い仕事に移っていくというルール3はあるわけです。 ○労側委員  それもありますし、横の行き来もありますよね。 ○公益委員  横に対応する仕事があるならば、正社員転換という言い方をしていますから、当然あ るということです。この絵に書かれていないだけだと思います。一般的に、世の中の動 きというのは下のほうはフルタイムはいなくなっているわけです。対応する仕事がなく なってきている現状があるからこのような絵になっているわけです。ルールで言えば、 ルール3で正社員転換もあるから、補助的な仕事であってもそれに対応する仕事があっ て、それを進める企業も当然あり得ると思います。その中でも、スキルが上がっていけ ば、それに応じて処遇してくださいというルール3があるわけです。これはわかりやす く、簡略化して書いてあるのです。 ○労側委員  これは転換制度とは違うのですか。双方向転換とは違うのですか。同じことを言って いるのではなくて、違うことを言っているのですか。双方向転換、つまり、短時間正社 員からフルタイム正社員へ、フルタイム正社員からパートタイムへということで、希望 する転換制度を作ったほうがいいのではないかというのはあるのですが、この図はそれ とは違うのですか。 ○公益委員  通常の正社員転換というのは、パートからフルタイムへの転換です。それはもちろん 含まれます。その場合、仕事があれば下のほうも書く必要はあるかもしれません。 ○公益委員  公益委員に伺いたいのですが、フルタイム正社員で、概念として補助的フルタイム正 社員というのはあるのですか。例えば、現実としては大いにあると思うのです。現実と してあるということとは別に、それを概念付けるもの、あるいは法律上の構成要件など はあるのですか。ただ現実があるだけではないのですか。 ○公益委員  実態とすれば、フルタイムの人が、例えば育児、介護で短時間で移る仕事があれば、 すべてのレベルに短時間正社員というのはあり得るわけです。ある仕事に、法律上短時 間勤務の仕組みが用意されていれば、論理的にはあり得るわけで、スキルのレベルとは 別にできているわけです。 ○公益委員  ここで言う補助的フルタイムというのは、要するに雇用の期間の定めのない正社員の 中で、強いて言えば、基幹的な仕事に従事している者と、その周辺で一般事務の補助的 な仕事に従事している者、そのような形での実態上の分け方だと思います。法律的な意 味ではなく、そのような意味合いでの短時間、フルタイムということです。 ○公益委員  正社員の定義である期間の定めがあるかないか、という点を崩してしまうと訳がわか らなくなってしまうと思います。 ○公益委員  それは正社員であって、通常は雇用期間に定めがないということが前提となっている わけです。 ○公益委員  そこは押さえておかなければならないと思います。話がわかりにくいのは、補助的 パートの「パート」というのは、要するに一般的なパートのことですか。これは短時間 ではないのですか。 ○公益委員  短時間正社員でベースになるのは、あくまで比較可能なフルタイム、同じ仕事に従事 していて、雇用管理の実態は変わらない人なのです。ベースになるのはルール5を適用 されている人です。それ以外は全部下の補助的パートになるのです。ルール5が適用に なる人がベースにまずあり、その中で雇用期間に定めのない人になると短時間正社員に なるわけです。そこに書いてあるように、「同様の能力評価、賃金決定方式の適用を受 けている」、そのような短時間労働者のことです。 ○労側委員  「丸子警報器」事件、あれはどうだったのでしょうか。比較されたのは女性同志だっ たと思います。労働時間が15分ぐらい短いということで事件になった丸子警報器はどの ように理解されているのですか。あれはその後実際に和解になりましたよね。 ○公益委員  補助的パートと短時間正社員、パートの段階がキャリアアップのところにいくつもあ るのです。矢印の所です。フルタイマーと同じ仕事に従事し、雇用管理の実態もフルタ イマーと同じ人、ルール5を適用されている人がいるわけです。そのベースの中で、雇 用期間に定めがない人を短時間正社員と呼んでいるのです。 ○労側委員  同じ仕事をしていて処遇決定方式が同じならば、フルタイムと短時間正社員との間に 行き来があり、比較するものがあるからできるということですか。 ○公益委員  そうです。 ○労側委員  下に補助的パートと書いてありますが、フルタイム正社員の中にも、補助的というの は仕事の質を見ているわけですよね。フルタイムでも基幹的なフルタイム正社員もいれ ば、定型的な業務をやる補助的なフルタイムもいるわけですから、定型業務的なフルタ イム正社員と、いわば定型業務的なパートタイム労働者が同じ仕事をしたときに、同じ 仕事をしているのだから行き来はできないのですか、またその行き来があるのではない かと聞いているのです。 ○公益委員  この概念図は現状を示しているのではなくて、これからこのような制度として作られ るのではないかという概念だと思うのです。現状は補助的ではないパートタイマーも基 幹的なパートタイマーも、ここにたくさんいるわけです。そのような現状が改革され、 来るべき理想的な正社員及びパートタイム状況というのは、このような図だということ だと思います。現状を的確に表した図ではないという理解です。 ○労側委員  あるべき姿ということで、もしこの図を見るとすると、ここに書いてある「主婦等」 という書き方は非常に適切ではないと思うのです。 ○公益委員  そこがとても混乱しているのです。 ○労側委員  その辺について、これをどう使ってどう整理するのかはそれぞれが整理しておかなけ れば、現状ということで見たとしてもいかがなものかなと私は思いました。もし、そう ではなくてこれからのことだとすれば、この辺の表現はもう少し適切なものにするべき だと思います。  ○公益委員  イメージとしての短時間正社員、丸子警報器事件はこの短時間正社員という言葉は 使っていないが、まさに実態として短時間正社員だという認定をしているのではありま せんか。同じ職種で同じ作業をし、労働時間も同じで反復継続して更新されているわけ で、まさに短時間正社員であるという事実認定の下に、言葉は使っていませんが、あの ような判決が出ているのではありませんか。 ○労側委員  補助的パートがキャリアアップして短時間正社員になり、あるときまた正社員になれ るという道を作ったということですが、丸子警報機事件では、基幹的労働力というのが どのような意味かわかりませんが、要するに仕事内容は女性同志で同じだったのです。 あの女性が女性正社員と男性正社員だとしたら、内容からいって補助的女性正社員だっ たかもしれません。その女性同志を比べたものがあの事件だと私は認識しています。相 互転換という認識をすれば、この概念図はもう少しシンプルに、基幹的労働力ではな く、労働の流れを見てやる仕組みがあってもいいのかなと思っているのです。双方向転 換制度ではないというのなら別ですが、もう少し書き方を正確にしたほうがいいと思い ます。 ○事務局  これはパート研でこのような考え方が出され、この均等分科会で議論いただき、私ど もとしては来年度の予算要求でそれがうまく通ったときに、どのような形でするのか、 いまの議論も含め、現状認識と今後どうあるべきかというのを検討していきたいと思い ます。いま全体でパートタイム労働対策を議論していただいているわけですが、そのよ うなことを踏まえて考えていきたいと思います。 ○労側委員  先ほど正社員の定義を無期だということにしたらという話がありましたが、公益委員 が言われた補助的パートの中には有期も無期もあるということですから、この図では補 助的パートも正社員に入ることになります。そこの整理はここではどうなるのですか。 ○公益委員  法律上と企業の意識にずれがあるのが実態です。事実、いまパートについて調査する と、半分くらいは雇用期間の定めなし、半分が有期で繰り返しということになっていま す。そこで、「社員ですか」と聞くと、社員とは思っていないケースも結構あります。 法律上の扱いと企業の中の扱いにずれがあるのは事実です。上辺だけを言ったら理想に なりますが、法律上だけではなくて、企業としても社員として意識しているかどうかと いうことです。 ○労側委員  今後モデル事業としてやっていくことの中で、基本的にフルタイムが短時間になって いくということですが、例えば、時間当たりの賃金単価を下げずに同じだという考えに 基づいて事業展開が当然されるという認識でよろしいのですか。労働時間が短くなり、 育児・介護などは多分6時間くらいのところで短時間勤務をやっていると思いますか ら、社会保障の支給要件に引っかからないとは思うのですが、時間によっては、この条 件が引っかかっていく可能性があると思うのです。そういったことについては見直しを していくとか、そのような議論は今後していくのかどうかを伺いたいと思います。 ○事務局  時間当たりの単価の問題ですが、これはここに書いてあるように、「同様の賃金決定 方式の適用を受ける」という考え方で、その部分は8時間の人が6時間になるといった 考え方で進めていきたいと思っております。社会保険の話は、現状での仕組みがありま すが、就業調整の関係で現在いろいろと動きがあったりするものもありますので、大き な社会の制度としてどのように考えるかということについては後ほど説明いたします。 ○労側委員  短時間正社員制度が1つの議論の項目立てになることについて、以前、それ自体を否 定するという考え方ではないが、パート労働者の現実的な問題を解決していくことが、 この短時間正社員制度と非常に絡まってきてわかり辛いのです。むしろ、パートタイム 労働者の現実的な問題が解決していくことの延長に短時間正社員というものが示される ということではないかと考えています。資料の中の図表3で、短時間正社員制度の利用 を希望する正社員の調査の答を出されていますが、例えば、拘束時間が長過ぎること が、収入減であっても利用したい、主体的に両立をしたいという理由、つまり、拘束時 間が長過ぎる正社員の働き方が問題だと言っているという意味では、むしろ短時間正社 員制度だけの中で解決する問題ではなく、正社員全体の働き方の見直しということがこ の中で提起されているのだと受け止め、その上で短時間正社員制度はパート労働問題と は切り離して考える必要があるという結論に私としてはなりました。むしろ、これは短 時間正社員になって拘束時間が長いことをクリアすることではなく、働き方の見直しと いう観点をこのパート労働問題の中でも認識していく必要があるのではないかと思いま す。 ○分科会長  いろいろとご意見が出ましたが、先ほど事務局が言われたような方向で、今後事業も 展開されていく中で今日の議論も受け止めていただけると思います。他にご意見がなけ れば次に進みたいと思います。 ○労側委員  事務局から支援事業という話で、いまの意見を整理していきたいということでした が、短時間正社員という言葉自体は別として、双方向転換制度は、やはりルールの中に 位置付けていくべきだと思うのです。支援事業ではなく、大きなパートタイム労働の法 律の枠組みの中に私は位置付けていくべきだと考えていますから、そのような意味では 重要な議論の観点だと思います。支援事業というのはトータルな最後のまとめなのかも しれませんが、パートタイム労働の位置付けの中でこの問題をやらなければ駄目だと思 います。 ○事務局  おっしゃるとおり2つの視点があり、これをいかに普及させるかという意味の1つに 導入モデル事業があると考えています。ルールそのものについては、この後議論してい ただきたいと思います。いままでの労使の考えの引き続きの部分もありますので、そち らのほうで転換制度の話もしていただければと思います。 ○分科会長  特に他になければ、資料2の説明をお願いいたします。 ○事務局  資料2は「能力開発・就業支援」についてです。いま議論していただいている今後の パートタイム労働対策を考えるという中では2つの視点で、1つには均衡処遇をどうす るかという話があり、もう1つ、9月に開始した際、基本方針を考えていくという話が ありました。そちらのほうの中で、どのようにいまの状況を考えるかということで報告 いたします。  まず能力開発についてですが、現在は都市部等において職業能力開発促進センターと 都道府県立職業能力開発校において、短時間の就労を希望する者に対して、必要となる 基礎的な能力を身に付けさせるための短時間の就業訓練を実施しているところです。訓 練科目としては、それぞれ地域や企業のニーズに基づき設定されたコースがあり、パソ コン操作や販売実務、介護等の基礎的な訓練を実施しているところでございます。平成 14年度は1万7,900人を予定しております。  2のパートタイム労働者に対する就業支援についてですが、大都市にパートバンク、 中規模都市にパートサテライトを設置しており、パートタイム雇用の円滑な需給調整 と、雇用の安定を図るための総合的なサービスを集中的かつ効率的に提供している状況 です。設置箇所は平成13年度末の段階で214カ所です。2頁から4頁にかけては、事業 主が従業員の能力開発に取り組むのを支援する助成金を紹介しています。従業員の能力 開発という中にはパートタイム労働者も含まれると考えて構いません。最初の「キャリ ア形成促進助成金」は目標が明確化された教育訓練の実施や職業能力評価の実施、キャ リアコンサルティングに係る体制整備を行う事業主に対して助成するものです。具体的 な内容については2頁、3頁の表に書かれてあります。特に、サービス業、流通業等、 パート比率の高い業種では、事業主がパートも含めた従業員の能力開発という観点から もこの助成金を活用することが十分考えられるのではないかということです。  4頁は中小企業を対象にしたもので、中小企業でも都道府県知事から中小労働力確保 法に基づき認定を受けた事業協同組合の構成中小企業者か、もしくは都道府県知事から 中小労働力確保法に基づく改善計画の認定を受けた中小企業者が対象です。この場合、 こういった改善計画に事業の高度化等に伴い必要となる職業訓練等に関する事項に加え て、雇用管理の改善に関する事項を含めている場合に「中小企業雇用創出等能力開発助 成金」の支給を受けることができるものです。これについても、労働者の中にはパート を含めて考えて構いません。 ○分科会長  資料2について、ご質問ご意見をお願いいたします。 ○労側委員  パート研の報告の中で、「評価・処遇手法の開発」という記述があり、これから国と しても取り組みをきちんとやっていくべきだと思うのですが、厚生労働省では様々な職 種に必要なスキルや能開のあり方を体系化していくために、業界と連携しながら能開の 適正な評価手法を開発しているという記述があります。このノウハウを公共材として、 企業において活用されるようにしたらどうかという指摘があります。これから同一価値 労働、同一賃金という職務の違いなどをどのように評価するかというときに、職能評価 のシステムは非常に重要だと思います。  最近発表された男女間賃金格差の研究会の中でイギリスの例やカナダのオンタリオ州 の例があり、いわば、外における評価システム制度などを紹介しています。我が国にお いても、あのようないろいろな多様な労働の質ができている中で、企業内を超えた社会 的評価システムがあるということは非常に重要だと思うのです。別にそれはパートに限 らず、いわば正社員と言われる人たちを含めたものであり、そのような意味で、新しい 今後の労働力需給を考えた際、能力開発は従来型の能開だけではなく、そういう意味で のシステムというものも積極的に検討を加えていく必要があると思います。  就業支援については、ここに書いてあるような「雇用に関する情報の展示、提供」は パートだけではないと思うのです。結局、就業支援をどのような範囲で見るかにもより ますが、やはり募集、採用に当たり、年齢要件があります。新聞等に入ってくる広告、 チラシ等を見ても、パートタイム労働者に年齢要件があり、子育てを終えた人たちの仕 事探しもなかなか年齢に引っかかりできないということに対して、むしろどのように対 応していくかということも含め、就業支援を考えないとまずいのではないかと思いま す。年齢については、募集に当たって努力せよとの努力義務条項が行政サイドにありま すが、結局、男性もそうですが女性も年齢要件で仕事がなかなか見つからないことにつ いては、就業事業支援は重要だと思われます。この観点が全くないので、そのことにつ いてどのように考えているのか、2つの点について伺いたいと思います。 ○事務局  職業能力開発体系というのは、いまいくつかの業種に関して開発されているもので、 それが整っていけば使われる部分があります。体系として、職務の部分でいくつか分類 し、さらにどういった能力が必要かという形で出てくるものですから、これが直接ここ での分析にはなりませんが、確かに、公共材として広く伝わっていけば重要と考えま す。 ○事務局  関係局がきていますので、少し説明させていただきたいと思います。 ○事務局  ご指摘の能力評価制度ですが、ブルーカラーについては技能検定である程度固まった もの、実績のあるものがあるのですが、今後、ホワイトカラーについてはなかなか能力 評価制度という観点では難しいと考えており、報告の中にもありましたが、現在、電機 業界等から順番にスキルの部分、コンピテンシーとして企画力とか分析力、リーダーシ ップ等についてどのような能力評価が考えられるかを検討しているところです。 ○事務局  年齢制限緩和について少しお話しいたします。ご指摘のあった募集、採用に当たって 年齢制限があることを、できるだけ機会を確保していくために年齢制限の緩和あるいは 撤廃を進めていこうということで、昨年10月から改正された雇用対策法が施行されてお ります。事業主の募集、採用に当たっての年齢制限をできるだけ課さないという努力義 務が課せられるというわけです。それに基づき、事業主の指針が設けられており、その 指針に基づき年齢要件を課すことはやむを得ないというような事項が10項目定められて います。それに基づき、現在、パートバンク等も含めて公共職業安定所が求人の受理の 際、そのような年齢制限の緩和あるいは撤廃の趣旨を伝え、できるだけ年齢制限を課さ ない、あるいはどうしても指針に照らして必要だという場合であっても、できるだけ年 齢の範囲を広げてもらうという取り組みを進めてきております。  昨年10月に施行されてから1年ちょっとたつわけですが、やはり、年齢の問題は単に 募集、採用の部分だけではなく、その後の企業の中での働き方というところにも関わり 合ってくるものですから、我々は昨年10月の改正法の施行をまず第1歩とし、様々な場 面での周知、啓発や窓口等での指導を行うことで、できるだけ理解をしていただき、実 際の募集、採用に当たり、できるだけ広く応募できるように取り組みを進めているとこ ろです。 ○労側委員  能力開発について伺います。ここに訓練科目や期間、時間については12時間以上150 時間未満と幅広い時間帯が示されており、項目によってそれぞれ違うとは思うのです が、項目ごとに訓練時間との関係がわかるような資料を後で出していただければと思い ます。もう1点、実績に6,816人とありますが、この訓練を受けた人たちが就職に結び 付いているのかどうかについてお聞かせください。 ○事務局  資料は後ほど提出したいと思います。実績は具体的にどれくらいかということはわか りませんが、一般的な数字で申し上げますと、公共職業訓練を受けた人、修了後1カ月 以内で大体6割以上が就職している状況です。パートタイム労働者のコースについては 特別なことはわかりません。 ○使側委員  キャリア形成促進助成金についても、実績などがわかれば後で教えていただきたいと 思います。この財源は雇用保険3事業ですね。 ○労側委員  職業紹介を専門にやっているパートバンクにおいては、そこで紹介した雇入条件と実 際の話が違うという場合は、紹介したパートバンクがきちんと責任を持つのか、それは 労働基準の話だということで基準局へとなるのか、どこがこの責任を持っているので しょうか。示された内容と実際が違うという場合、労働者がそれを指摘し、紹介者であ るパートバンクに行き、ここが違うと言ったときに、事業主に対して話はしているの か、それとも紹介したままで、後は労働者本人の問題となっているのか、その辺はどう なのですか。 ○事務局  求人募集の際、いろいろな求人の条件を書いた求人票を提出してもらうのです。その 際、幅があるような場合とかいろいろあるのですが、そういった求人条件の中身と全く 違うということであれば、申出をいただいたパートバンクあるいは安定所のほうで企業 に確認することはやっております。 ○労側委員  そのようなことは結構多いのですか。 ○事務局  数まではわからないですが、昨今非常に雇用情勢が厳しい中で珍しいことではありま せん。 ○労側委員  能力開発についてなのですが、パートタイム労働者に職業に関する知識を付与すると いう項目があるのですが、パート用に特別な職業訓練コースを設けて、この人たちの就 職先はパートで就職しているということなのか、そこはどのような区分けになっている のでしょうか。 ○事務局  この資料の表記が正確ではなく、パートタイム労働を希望する人たちに対する能力開 発ということであり、したがって、このコースを受けた人は、当然パートで働いている と思われます。 ○分科会長  他にご意見ご質問がなければ、次の資料3の説明をお願いいたします。 ○事務局  資料3の税・社会保険等就業調整に関係する問題について説明いたします。図表1は パートタイム労働者の年収を見たものです。平成13年は女性の場合、90〜100万円が 14%、100〜110万円の所が、13%と多くなっています。そのようなことから、図表2は 年収の調整をしているのかどうかを聞いたものです。ここで「関係なく働く」というの は、所得税の非課税限度額や厚生年金等の加入要件に該当する年収、所定労働時間に達 しても関係なく働くという場合で、「調整の必要がない」というのは、年収、所定労働 時間が少なくて調整する必要がないということです。  2頁の図表3は、勤続年数別に就業調整をしているかどうかということで分けて、平 均の年間賃金収入を見たものです。1年未満の場合だとかなり少ないものがあるので、 それを除いた1、2年から10年、19年までのカーブで見ると、やはり就業調整をしてい る層としていない層では、賃金カーブの、角度というか、そういった面でも就業調整を しているグループは、横這い気味ということが言えるのではないかと思います。  3頁の図表4は、こういった年収等の調整をしている理由を聞いたものですが、いち ばん多いのはいちばん上の「所得税の非課税限度額を超えると税金を支払わなければな らないから」ということです。2番目に多いのが「一定額を超えると配偶者の税制上の 配偶者控除がなくなり、配偶者特別控除が少なくなるから」という配偶者の関係のもの でそれが40%。3番目が「配偶者の健康保険、厚生年金等の被扶養者から外れるから」 というものでこれが34.5%。4番目に「一定額を超えると会社の配偶者手当が貰えなく なるから」というもので22.9%ということになっています。  4頁の図表5は、会社の配偶者手当が貰えなくなるからということに関連して、企業 の規模別にそういった家族手当の支給割合を見たものです。あまり規模にかかわりなく 8割前後、こういった手当が支給されているということがわかります。  図表6は若干数字と、何を指しているのかが見にくいかもしれませんが、上から順番 に貰っていない、支給制限103万、こういう順番で時計回りに回っているものです。こ こで聞いているのは、年収103万円を超えないように考慮している労働者の中で、労働 時間を増やすと家計全体の手取りが減ると思っている方、これが全体の方たちですが、 その中で、配偶者手当を貰っているのか、貰っていれば支給制限はどうなっているの か、そういったことを聞いたものです。貰っていないという方が28.4%、支給制限が 103万円だという方が、51.6%というようなことですが、ここで言えることは、実際に 103万円を超えないようにしている方で、労働時間を増やすと家計全体の手取りが減る と思っている方で、実際にそこで手取りが減るのは配偶者手当の支給制限が103万円の 方、51.6%の方は実際にそうやって減るわけですが、貰っていない方はそこのところは 実際は減らないわけですし、また、その支給制限額が103万円とは違う所の場合は、こ こでは影響を受け ないということで、そういう意味ではかなりの方が誤解している面があるという表で す。  5頁の図表7は、事業所に、パートへの社会保険の適用状況を聞いたものです。すべ てのパートの方たちに社会保険を適用しているというのが18.8%で、パートに、社会保 険に入るかどうかといったことを含めて、その働き方を選択させているというのが47.5 %。適用されないようにそれ以下に抑えているという事業所が21.5%ということです。  6、7頁は税制についてです。パートタイム労働者に対する税の仕組みということで すが、先週、12月13日に与党の税制改正大綱が出ました。7頁の下のほうに書いてあり ますが、その税制改正大綱の中に配偶者特別控除の上乗せ部分を廃止するということが あります。7頁の左上に階段状のものがありますが、その上乗せ部分のところを廃止し て、下側の103万円から、パートタイム労働者本人の年収金額103万円から141万円の層 については、手取りの逆転現象を生じさせないということで、ここのところは残すとい うことです。この改正は平成16年度分以後の所得税、平成17年度分以後の個人住民税に ついて適用ということです。  8頁は社会保険制度についてです。現在、社会保険の適用ということでは、1つのメ ルクマールとしてその労働時間、労働日数といったことで言うと4分の3というのと、 年収でいうと130万円。そういったものが基準になっていろいろな保険の適用関係がで きております。  これに関して9頁、10頁ですが、年金制度の見直しについて、12月6日に「年金改革 の骨格に関する方向性と論点」が公表されました。これは平成16年の年金改革に向け て、これまでの各方面の議論を参考にして厚生労働省で、改革の骨格に関して今後の議 論の叩き台として取りまとめたものです。この「平成16年の年金改革の基本的視点」の 中で特に(5)、「少子化、女性の社会進出、就業形態の多様化等の社会経済の変化に的 確に対応できるものとすること」。そういった基本的視点を受けて、その支え手を増や す取組みという所です。支え手を増やす取組みの意義が書かれていますが、10頁の上か ら2つ目、「就労抑制的な仕組みについては見直しを進め、個人にとって多様な選択が 可能となる制度としていくことが必要である」。それから「女性や高齢者等の支え手を 増やす取組に当たっては、高齢者雇用の推進、短時間労働者の能力の有効発揮、さらに は多様就労型ワークシェアリングなど雇用政策面での取組との連携が重要である」。  その下、「多様な働き方への対応」ということで具体的には「就労形態の多様化に伴 い、厚生年金の適用のなかった者に対して年金保障が充実されるようにするとともに、 年金制度の支え手を増やす観点から、短時間労働者等に対する厚生年金の適用を行う方 向で検討する」ということです。具体的にその検討をするに当たっては、その下の(1)、 (2)、(3)にあるように、給付と負担のあり方とか、賃金の低い被保険者が増加すること が年金財政にどのような影響を与えるか、また、医療保険における取扱いをどう考える か。こういったことについてもさらに検討を続けるということが論点として挙がってお ります。以上です。 ○分科会長  どうもありがとうございました。ただいまの資料3についてご質問、あるいはご意見 がありましたらお願いいたします。 ○労側委員  いろいろな所でいまの制度に関わる問題が出されているわけですが、いずれにしても 働く人が就労調整をすることなく、自由に自分の能力を発揮できるような制度にしてい くべきだと思います。その中で特にパートに関係しては、いま1つだけでは生活が成り 立たずに掛け持ちパートをやっている方たちが増えていると認識していますが、その方 たちにきちんと社会保険制度が適用されるような仕組みを考えていかないと、今後、先 ほど支え手を増やすということもありましたが、そういう観点からも制度自体の見直し ということは重要だと思いますので、それぞれの所で議論するだけではなくここのパー ト問題の大きな課題ということで、きちんとした対応が必要ではないかと思います。 ○労側委員  この税・社会保障の現在の仕組みが、結果として賃金抑制に機能しているという問題 点は、データだけでなくさまざまな意見の中からも出ていることで、やはりそれ自体を 変えていく必要があるとまず考えていますし、この間パート法ができてからその都度こ の議論が検討の俎上に躍ってきたわけですが、総論的な壁を出ないままきている現状に なっていると思います。そういった意味ではいまさまざまな動きがありますのでそれを 精査する必要はもちろんありますが、この問題をこの今回の審議会の中の重要な議論の 経過なり、結果としても出していく。そこは問題意識としては就労抑制、結果として賃 金抑制というような機能を見直すという視点で意見をまとめていく必要が、審議会とし てもあるのではないかと思っています。その上で当然これだけでは十分機能することに はならないので、この間話し合ってきている公正処遇の確立が、それと切り離せないと いうことは、改めて申し上げておきたいと思います。  見直しが仮にある場合、一方で、その負担が一挙に増えるような状況があることも想 定されます。そういった点については、やはり、現実にはこういう働き方、こういう働 き口しかなく、働かざるを得ないという人たちも多いわけで、負担が一挙に増えること にはならないような仕組みも、検討としては必要ではないかと思います。以上です。 ○分科会長  使側委員どうでしょうか。 ○使側委員  中小企業でも全国大会とかいろいろやっていて、各業界から要望がかなり出されてい るのですが、特にこのパートの研究会の報告にありますように、パート労働者の存在と いうのは単に補助的なものではなくて、非常に主戦力になるということで、中小企業の 企業者もやはり頼りにしているという状況があります。そういう中でこの非課税限度 は、かなり中途半端で思いきった就業ができない、踏み込んだ勤務意欲がなくなるとい うこともあるので、十分な働き方をする上の1つの隘路になっていると思うのです。そ んなことで、その金額までは出てこないのですが、大幅に引き上げてくれということ は、税制の要望のときにいつも言っているのです。しかし、なかなかそこには行ってい ないという実情があります。  就業調整をかなりされて企業主も困っているという実態がありますので、この辺を少 し大幅に、上げるようなことを少し考えていただきたいというようなこともね。引き上 げる。 ○労側委員  そういう要請。 ○使側委員  先ほど言ったように引き上げる。就業調整をするということで、大変な繁忙期にいな くなってしまうとか、そういうことが企業主としてままあるのですよ。 ○労側委員  引上げですよね。 ○使側委員  もっと上げてほしい。 ○労側委員  いままでずっと引き上げてきて、結局問題は解決しないまま、そこでの就労調整はい くらに上げてきても問題は残ったわけですから、そこは。 ○使側委員  ですから金額的にはね。いくらという表示はどこからも上がって来ないのですけど ね。これは私どもというより、業界のいろいろな所からも、そういう意見が上がって来 ているということを言っているだけです。そういう状況なんです。 ○労側委員  上げるだけでは解決しないと思うのですが。 ○分科会長  ほかにこの点についてご意見ありますか。 ○公益委員  先ほどの短時間正社員、そういうジャンルを設けた場合、例えば、いま1人でやって いる仕事を2人でやるようになるというような場合に、社会保険制度との関係だと、4 分の3というところをクリアしないと社会保険が適用にならない。このままだと、短時 間正社員は社会保険が適用にならないおそれというのは、かなりあるわけですか。 ○事務局  短時間正社員をどういう時間帯で使うかという使い方、使い方と言うか、その方がど ういう形で働くかということではないかと思います。20時間で働くとか、そういう場合 もあるでしょうが、半分までいかなくても、普通より短い時間であればいいという働き 方のケースもあるでしょうから、一概に社会保険の適用の外になるという話ではないか と思います。 ○使側委員  この税制・社会保険の適用拡大について、パートタイム労働者自身の声というのは資 料か何かあるのでしょうか。 ○事務局  こういった適用拡大について、パートの方がどう思われているかと、そういったこと ですか。 ○使側委員  はい。 ○事務局  私どものほうではちょっとわかりません。年金局のほうでそういった声をどういう形 で把握しているか、そこは聞いてみないとわかりません。 ○労側委員  私ども、先ほど労側委員がおっしゃったように、パートタイム労働者の労働権をきち んと確立するということで、社会保険、交渉等の権利まで担当するという意味で、いま の社会保険の加入要件130万円については65万円、労働日数の4分の3条件を2分の1 ということでまとめているわけですね。その場合、130万円を65万円にしたときに危惧 されるのは、使用者側は65万円を超えない、小刻みに1時間労働とか2時間労働とかい うふうに出てくる可能性もある。それは0円にすればなくなるかという話もあるのです が、そこのところを。危惧はありますが大胆に変えて、安心して社会保障制度が適用さ れるということが必要ではないかということです。  もう1つは、この年金の論点の中にあるのですが、仮に65万円に要件を下げた際に、 多くのパートタイム労働者が社会保険の、保険ですから加入負担、本人の負担と使用者 の負担と両方出てくる。この負担がどうかなという話も当然あるのですが、だから変え ないというのもまずいので、そこは知恵を出して何か。負担があるからということで均 等待遇。均等待遇すればコストも上がるのではないかという負担感と、社会保険の負担 感というダブル負担感みたいなものを理由にしてかなり消極的なご意見がある。事実、 その事実はあるわけですが、その辺のところは。先ほど。。さんは知恵を出せですか、 それでは言いにくいのですが、実際にそういう声があるということですね。 ○分科会長  この点についてご意見ありますか。 ○労側委員  社会保険の適用拡大問題ですが、特に一部の業界に限ってでも、やはり雇用面に相当 マイナスの影響が出てくるということを、私どもとしては特に懸念しています。いま現 在パートさん、特にサービス業で非常に雇用が増えていますが、サービス業は特に、業 務の繁閑が激しいといったことがあって、このパートタイム労働者に適切に働いていた だいてやっとコストの合理化とか効率化をしているわけです。そこで一部具体的な提案 があったのですが、そうした形の適用拡大になってしまうと、低収益の下で、コストが その経営を非常に圧迫するということが、大変懸念されるところであって、働き方の多 様化といったことに対して、かなり雇用面でのマイナスの影響が出てきてしまうと大変 懸念しているところです。この辺ごくごく慎重に対応すべきだと思っているところで す。 ○分科会長  ほかにご意見ありますか。  それでは時間の関係もありますので次に移ります。9月24日にお配りした「パートタ イム労働に関する論点案」と最後が、その他のその他になっていますが、その部分につ いて何かありましたら。 ○労側委員  前回もお話をしたかと思いますが、パートタイム労働者は、有期契約で働いている方 が結構多い。前回行われた育児・介護休業法の改正の際にもお話をしたのですが、育児 ・介護休業制度の適用から、有期であることを理由にして除外されている。これは別に パートに限らず、派遣労働も当然入るわけですが、そういう形の労働者が増えている中 で育児・介護休業制度、有期、無期にかかわらず適用される制度は、やはりきちんと議 論していかないとまずいのではないかと思いますので、そのことだけ申し上げておきま す。 ○分科会長  では、いまのご意見は、特にそれについて議論をするということではなくて、議事録 にとどめるということでよろしいですか。  では次に進めさせていただきます。資料4ですが、これは前回の議論を踏まえて前々 回のものに、さらに事務局のほうで付け加えていただいたものです。一応この論点にし たがって、本日も具体的なご意見を中心にして議論を進めたいと思いますが、時間もだ いぶ限られてきましたので、意見の重複は避けていただきたいと思います。では早速 ルール1の必要性について。そこからご議論お願いいたします。 ○使側委員  ここに「パートの基本的人権も守られていない状態」とありますが、何か具体的な事 例があるのですか。これはかなりゆゆしい問題だと思うのですが。 ○労側委員  例えば福利厚生施設を利用できないとか。要するに、説明つかない差別というのが結 構ある。それで駐車場は、正社員中心の駐車場でパートは利用できないとか、慶弔規定 は全く適用されないとか、どうしてかと聞いても、「パートだ」という理由しか考えら れないような相談が結構ある。要するに説明がつかないのです。人権問題的な要素がか なりあるということを言っているのです。  公益側にちょっとお聞きします。再三再四言っているのですが、研究会報告は、多様 就労型の労働基準の緩和とパートの均等処遇とは、言葉はあちこちですが、特に、パッ ケージだとおっしゃっていますね。明日の労働条件分科会でどうも大詰めの議論があっ て、いわば、その研究会報告が言っているような方向になりそうだと。それから、派遣 に関わる会は26日ですか。これも研究会報告が言っているような拡大になりそうだと。 そっちのほうは進んでいるわけですね。パッケージという意味は、私どもが素直に読め ば、基準法の改正及び派遣法の改正は次の通常国会というように進んでいるにもかかわ らず、こちらのほうは、これからの議論とは言うものの、パッケージという意味がどう も理解できない。研究会報告は参考ということでいままで議論を重ねてきてはいるわけ ですが、2つの面でちゃんと進んでいて、こちらのほうは全然先が見えないということ について、どう考えていいのか。そのパッケージ論というのをどう理解したらいいの か。研究会報告に全部従えばいいというわけではありませんが、出ていますよね。研究 会報告のまとめにも出ている。「対策の方向のまとめ」ですか。70頁に「総合的なパッ ケージとして進めることが大切である」と言っているわけです。もちろん私どもは基準 の改正というのは反対です。反対ですが、仮にもそういうふうに進めていくのなら、や はりパッケージとしてやっていかないと本当に雇用の値崩れがどんどんきて、原則ルー ルの中で進んでいくということからすると、私はこのパッケージというのは、均等待遇 ルールを法制面でもきちんと作ると理解しているのですが、こっちのほうを先にイメー ジするということを、どのように考えたらいいのか。  これは政府に対する要望ですから、事務局はどう考えるのかでしょうね。研究会はそ う言ってますよというときに、受けた事務局。これは均等、局長の下に設けた研究会で すよね。 ○事務局  早い段階で労側委員からそういうご質問が、この分科会でも何回か出ましたのでその ときにも申し上げたのですが、就業形態が多様化するということ自体は、基本的には企 業と働く人たちのニーズが合致をして、そういう流れになっていると思っていますの で、その就業形態の多様化自体は不可逆的と言うか、これを元に戻すような政策をとる ことは適当ではないと思っております。その上で、現状でいいかという問題について は、この研究会報告に書いていることは私どもの気持と同じでして、もし、その就業形 態の多様化を進めるについて、企業側から見て、選択肢がまだ狭いと言いましょうか、 就業形態の多様化の観点から見て障害があるということでしたら、制度改革を必要とす ると思いますし、また、その就業形態の多様化ということが、働く人たち1人ひとりが 自発的にそういう就業形態を選択できるということになっているかという観点から、も し、そうでないということであれば、その多様な就業形態間での処遇の公正さの問題と いうことについて、現状では不十分だと認識しております。  そういう、いわば車の両輪として政策を総合的に進めていくということが、ここで言 う「総合的なパッケージとして進めていく」ということの意味ではないかと考えていま す。 ○労側委員  労働条件分科会、民需の分科会にも労側委員がいるのですが、労側はこぞって反対し ているにもかかわらず、あとの3者構成機関の2者のほうはそれぞれ、100%でなくて も賛成で動いている。一部の委員の反対、労側の委員の反対を押し切ってやろうとして いる。それでも進めるという。いま進んでいる局面ですよね。そっちはそっちで、3者 構成の同じ機関で、一部の反対があってもどんどん進めてしまう。こっちのほうは全然 見合わない。同じ3者構成機関にもかかわらず。パッケージと言っている中で、どうい うふうに展開していくかというのは、本当にいま瀬戸際だと思うのです、この分科会で ね。  そこを本当にいま問われているので、私はそこは強く言いたい。派遣期間がどんどん 増え、派遣労働が物の製造にもどんどん入っていって、例外的に残るだけという、そう いう雇用の多様化に伴う均等待遇というのは、もう欠かせない要件。私はセーフティネ ットだと思うのです。そういう認識に立って対応するのか。そこは関係ない、ルールな んか必要ないというふうに言うのか。それは全然違うと思うので、本当にそこは是非、 その辺のご議論は真摯にしていただきたいということです。 ○労側委員  ルールの内容に関連して、よろしいでしょうか。 ○分科会長  では次の「ルールの内容」にいきましょう ○労側委員  ルールの内容に関連して確認したいと思います。ここで「同じ職務」という表現と 「職務の同一性について」という表現が出てきます。このとらえ方ですが「同一価値労 働・同一賃金」という表現はあまりこの間、この場所ではあまり使ってこなかった。私 はそういうことを前提にと思っているのですが、研究会の中でそれはどういうふうに議 論されてきたのか。その確認でいいのかどうかも含めて教えていただきたいと思いま す。  最近厚生労働省の中の、男女間の賃金格差問題に関する研究会の報告が出されました が、その中では、対象は男女間の賃金格差解消ということですが、パートとフルとの間 でも同じことが言えるのではないかと思います。そこでは同一価値労働・同一賃金原則 は、やり方によって実現は可能という報告が出されているので、そのことも含めてこの 場で確認をしておきたいと思いますので、お願いします。 ○公益委員  同一価値労働・同一賃金、同一労働・同一賃金ということについていろいろな解釈が ある。この報告書は、同じ職務であれば同一処遇決定方式ですね。これは、同じ仕事で あれば同じものさしで評価してくださいということを言っています。ものさしについ て、こういうものさしでなければいけないというところまで踏み込んで議論するかどう か。ですから同一価値労働・同一賃金、このものさしではかれば、同一労働だと言われ ているのであれば、それを支持しているわけではない。つまり、現状を考えれば、どの 仕事にも当てはまるというものさしがあって、これではかれば同一価値と測定できる、 という議論はしていないということです。  ですから、同じ仕事であれば、同じものさしで評価してください。ものさしについて は、その仕事に合理的なものさしを用意してくださいということで、このものさしはい けないですと、ものさしは提示していない。そこまで提示しないと同一価値労働・同一 賃金にならないというのであれば、そこまでは言っていない。私は現状ではその同一価 値労働をはかるものさし、どこの会社でものどの仕事にも当てはまって、みんなが受け 入れるものがあるとは思っていません。だからそこはそれぞれの労使で、納得できるも のさしを適用してくださいと言っています。そこまでで、それを同一労働・同一賃金と 言えば、そうだと思います。 ○事務局  男女間、賃金格差と研究会の話、ご指摘いただいたのでそこについては私のほうから お答えしたいと思います。この研究会、確かに一部委員から、同一価値労働・同一報酬 原則についても、もっと突っ込んで書くべきかとか、あるいは、職務価値評価の問題も 取り上げるべきという議論も、中ではありました。タイトルの中でそういうことも含め て議論をしたわけですが、結論から言うと、我が国が批准しているILOの100号条約、 ここで言っている同一価値労働・同一報酬、その内容は、いわば男女差別のない賃金原 則ということであって、性別による差別がないというものを指示しているのが、ここで の定義ということになっております。  むしろその男女間賃金格差縮小のためのアプローチとして、この研究会で非常に問題 だとされたのは、格差の原因である職階差。いわゆる職階につく比率が男女間で大きな 差がある。これが非常に大きな要因で、それに続くものとして勤続年数の差。こういっ たものが指摘されている。格差縮小のためには、そこにストレートに対応したほうがい いというのが主流で、同一価値労働原則というのが最も馴染む職務給、これにこだわる というふうな誤解を与えてしまうのではないかという観点から、この研究会で取り上げ たものはまさに差別、実態的な賃金の差というのをなくしていくための方策を整理して いったということであって、同一価値労働・同一報酬の中身がそのものであるというこ とでご理解賜りたいと思います。 ○公益委員  いまのことに関わって整理の2頁、労側は、仕事以外に処遇決定方式を異にする合理 的理由がないという、こういう論理の立て方ですね。職務が一緒であれば、同じ処遇決 定方式を適用してくださいというのが労の主張です。だから、その中に処遇差の合理的 理由になるもの、ならないものというのがありますが。ここはものさしの要素のことを 言っているわけですね。研究会報告はそのことは言ってないのですが、労側としては、 勤続年数は合理的な要素になるが、学歴はならないという、要素まで議論をしようとい うことですか。つまりこれは、パートとフルだけではなくて。フルにも関わるわけです よね。フルについても、現状こういうものがあれば、これはよくないと、こういう主張 をされると理解してよろしいですか。 ○労側委員  私もそのように。 ○公益委員  そう考えているということですね。 ○労側委員  そう。業務ですよね。要するに。 ○公益委員  賃金決定要素に、学歴を入れてはいけない。だけど勤続年数はいい。例えばこういう 議論をされてると。 ○労側委員  勤続年数は要するに、経験というところですね。 ○公益委員  はい、経験。 ○労側委員  経験的要素で見るということです。これは素直に、現行の正社員と言われている方の 賃金決定要素をそのまま持ち込んでいる。 ○公益委員  ただ、一般的に学歴というのも1つの現状に入っていますよね。 ○労側委員  労働の価値という観点からすると、その学歴がどうのこうのというのは、あまり関係 ないじゃないですか。 ○公益委員  関係ないと。 ○労側委員  ええ。その研究会報告はまた次回。私どもは、法律にした場合に、その合理的理由は 何かという議論をしているものですから。研究会報告は、法律の中身は、合理的理由に よって差別してはならないと言うけれど、ガイドラインの枠組でキャリア管理の話を。 あれも法律にあわせやめても、キャリア管理の形態の違いによって適用できると認識し ていいのか。 ○公益委員  研究会報告というのはあくまでも、処遇方式を異にする合理的理由の例示としてキャ リア管理の実態というのを挙げたのですが、その処遇差、同じ仕事で同じキャリア管理 の人たちについて、どういう要素で処遇水準を変えていいかについては議論していない のです。それはまさに同じ仕事でキャリア区分に入った人については、賃金の決定要素 です。  だから、その処遇差を決める要素については、特にこれが望ましいとか、これはいけ ないという議論をしているわけではない。当然、男女は駄目ですよ、それは現行法で駄 目なわけですから。ただし経験とかそういうことは言っていない。 ○労側委員  ただ、キャリア管理の違いというのはその入り口。要するに、将来まで見込んで人事 ローテーションを組むような管理の仕方と、職務的なガイドラインで契約されている労 働者と違うのではないかと言うんですけど。では、たまたま職務でパートの労働者がい ろいろな経験を持っていて、いまこの瞬間に、公益委員がおっしゃることで言わせれ ば、百貨店の呉服売場で職務でやっているパート労働者と、専門性を持ったパートの労 働者と、人事ローテーションでたまたま不利というのは、そのキャリア管理が違うか ら。いや、違っていいのではないかというのをね。実は従来型のいままでの雇用システ ムであって、これからはそれでいいのかという面で、ちょっと議論をしてきているので すよね。やはり労働の価値で見たらどうでしょう。人事ローテーションのほうはここで 言うと、労働の付加などが当然違ってくるから、その辺のところを、要素で見比べなが ら判断したらどうでしょうかと考えているのです。だからそこは、私ども研究会でちょ っと議論のすれ違いがあるのかなという感じがしないでもないです。  ただ、使用者側がおっしゃる労働時間の長短が合理的理由になるというのは。この パートタイム労働のルール・議論のときに。そもそも議論なんですよね。使側委員。こ こは本当にそもそも議論なんですよ。モジキリになってしまうというとこの議論、縄飛 びかしらとなってしまうので。そこはどうしても使側委員、譲れないんですかね。モジ キリになるという。 ○使側委員  前回もやっぱり、ご理解いただけなかったようなんですけども。労働時間の長短が、 例えばある程度の期間で累積すると、例えばその職務経験の違いとか、あるいはOJT の量の違いとか、企業に対する貢献度の違いとか、そういったことに反映してくると思 うのです。それをどういうふうに処遇するかということなんですが、ある程度事前に企 業側で、労働時間の長短によって、処遇の決定方式を違えてという形でやる場合もある でしょうし、逆に、同じにするけれども、評価の方法で違うという場合もあると思うの です。その辺の選択のやり方というのは、やはり労使によってある程度自由に決めてい いのではないかと思います。仮にその労働時間の長短が、職務の成果とか、あとは全然 違いがないというような業務があれば、無駄にすることはあるのでしょうが、それが何 かということについて、必ずしも企業、労使で一致しているわけではないと思うので す。だからその辺をあらかじめ事前に設定しておくというのは、企業の実態とかなり合 わないのではないかなと、私としては思っております。 ○使側委員  前回私もこの時間のことについては申し上げたのですが。もしかしたら、時間の長短 ということだけでは解決がつかないことなのかもしれないとも思います。ここの項目を 少なくすればいいというものでもないかと思うのです。と言うのは先ほど先生がおっ しゃったように、もし将来的に労使の中でお互いが納得できるような合理性というもの を探っていくとすれば、やはりそれぞれの企業の中で、こういう時間の差があって、こ れが違うということについて、もし合意ができるのであれば、それはそれでいいのでは ないかと思います。これをどうしても取らなければいけないということでもない。研究 会報告の中間のときに拘束性という言葉がありました。あれはいろいろ問題があるとい うことで、最終報告には取られたわけですが、たぶん中間の所までは、その拘束性とい うのがある種、非常にわかりいい基準だという企業もあるということがあって載ったの ではないかと思えるとすれば、これは別に一律でなければいけないということではない と思います。それぞれの企業の中でいろいろな選択肢をとって、お互いが納得できる基 準ができるというほうが、パートタイマーの方々、また、企業にとっても非常に納得で きる働き方ができるという、この審議会なり分科会なりが狙っている方向に近づけるも のではないかなと思います。 ○公益委員  いまの労働時間の長短という要素は、感覚的には確かに長時間働いているほうが給料 が高くてもいいか、短時間のほうが給料は安くてもいいかという、感覚的な納得の仕方 はあるのかなと思いますが、もう少し煮詰めてみると、いろいろな要素にばらけるので はないかなという気がします。例えば長く働いてきた、そうすると、いままでの勤続年 数と言いますか、勤続量みたいなものが、たぶん多いだろうと思うのですね。勤続量、 あるいは企業に対する貢献度、経験量など、そういう要素に、むしろ分解されてしまう のではないかという気がするのですが、どうでしょう。 ○使側委員  確かに分解されていくということがあるのではないかと思います。それならそれで全 然構わないと思いますが、こういうことを企業で進めていく上で、最初から1つの仕事 について、労使できっちり分けられるものでもないのではないかと思うのです。やはり ある種、その企業の中で試行錯誤をしていきながら、こういう基準がというものができ ていくのではないかと思いますので、こういう基準を作ろうというときに最初から大変 立派なコンサルタントとかそういう人がついている企業であれば、それは非常にわかり いいと思いますが、それぞれの会社の仕事というのは本当に千差万別、分かれているわ けで、それぞれの企業のやり方も違うと思いますので、とりあえず最初は、例えば時間 の長さとかそういうもので、もし納得性があれば。それぞれの会社でのことですから、 それは時間じゃないよねということだとすれば、その会社にふさわしい企業を作ればい いと思います。最初から、そういうものではないということにしてしまうと、それぞれ の話合いの進み具合が非常に持ちにくくなってしまうことがあるのではないか、と思う のですが。 ○公益委員  意見というか感想です。この、労働時間の長短ということで使が書いている所で、労 働側が少し疑問に思われるのは、従来、こういうスケールを出してきたときには、同じ 時間、同じ職務で働いているにもかかわらず、要するに正社員は長く働くことが予定さ れている。まあ、働き手。パート等の短時間は、要するに、短く働くことが予定されて いる。というようなことがその基準の前提にあって、実際に同じ仕事を同じ時間やって いても、そういう前提のもとで、結果的に賃金の額が違っていいのではないか、という ようなことに対する疑問がやはりあるわけですね。こちらで議論しようというのは少な くとも、各個別の企業の中で具体的にどういう基準を立てていくかは、いま、労働時間 の長短ということが持っている意味合いの中に、全体としての勤続の量などで考えるの であれば、それをベースにして各個の企業が、具体的なその企業で、労使の自由な交渉 の中で出てきた合意に基づいてやればいいのでしょうが、ここでは、基本的にそういう 各個の企業を越えた所での、公正な処遇のルールを立てていこうということですから、 そういう観点からするとこの労働時間の長短ということが持っている意味合いを、いま 使側委員がおっしゃったようなところとはちょっと違った形で、受け取られる可能性が 強くある。したがってそういう点では、実際に同じ時間働いているにもかかわらず、そ ういう予定の点、労働時間の長短という中だけで合理性があるんだと言われると、それ は少し問題ではないかということだろうと思うのですね。 ○公益委員  やはり時間の長い人のほうが、それだけ能力の伸びも当然多いですよね、経験が長い わけですから。その結果、次の段階になったときに、その会社の体制も大きいという形 で、結果として時間が長い人が昇格したり、評価を受けるということはあるでしょう。 そのことが逆に、短ければ程々の処遇でいいみたいな形で、拡大して使われていること が多いので、それはやはりなくしていかなければいけないわけですよ。そうすると、時 間が長いということが含まれている、キャリアを積んでいるのが結果として長いから、 貢献が大きいから評価する。それはそれでいいのですね。ですからそういうものは、時 間の長短以外の所に還元できるものはできるだけ、仕事の中身、貢献、能力というふう にきちっとしていくということがすごく大事だろう。そうすることによって、単に時間 が短いという形で、能力や貢献が同じにもかかわらず、低く評価されているということ をなくしていく。それが大事だと思うのです。それを進めるためには、はじめから、時 間の長短にもそういうことが入っているのですから、残してもいいですか、いいのでは ないかというふうにしてしまうと、全然改善されていかないのではないかと思います。  皆さん考えているような形で実際お話を伺ってみると、単なる時間の長短のことを言 われているわけではないので、それはほかの要素に、みんな入れられることなのではな いか。だから、そういう努力をしてくださいということなんですね。そうすることに よって、いま、時間の長短で出ているところが、実際は貢献とか能力とか、そういうほ うに置き換わっていって、時間の長短のところだけは基本的に時間比例、という形に 持っていけるのではないか。そのためには、はじめから時間の長短というのを決定要素 に入れたのでは、全然進まないというふうに考えています。 ○公益委員  先ほど公益委員との間でちょっと揺れていた、処遇差の合理的理由となると考えるも のの中に「職務の違い、職務の遂行能力の違い(キャリア勤続年数)」とありますよ ね。この勤続年数の意味について労側委員、経験というようなことをちょっとおっしゃ ったのですが、キャリアと経験、ここで、前に挙げているキャリアというのは。私はそ れと連動するのだと思ったけれども、それ以外にキャリア。それ以外と言うとちょっと 言葉が強すぎますが、ここでキャリアと挙げているのは、そういう経験以外のものが 入っている。後ろの勤続年数を、経験が中身だと考えると、前のキャリアというのは何 ですか。先ほど聞いていて、そのとき質問すればよかったのですが、ちょっとそれが。 ○公益委員  勤続年数だけでははかれない。営業をやったり製造をやったり、全部加算して勤続年 数ですから、それぞれの経験と言いますか。勤続では、30年働けば30年すべてを。 ○公益委員  そうですよね。ですから、その中にいろいろな仕事、例えばいままでの日本の企業の 形態だと、人事異動をして、いろいろな仕事をやってきますよね。そのいろいろな仕事 が経験になっている、それはわかるのです。勤続年数という言葉の中には、そういうも のが含まれるという、そのご説明は十分わかるのです。でも、そういうふうに説明する と、前のキャリアというのは。そのキャリアという言葉で呼ばけているものの中身はど ういうものをイメージされていたのですかということをちょっと。これは批判でもなん でもありません。ここで書かれている意味合いを。 ○労側委員  経験・熟練度。経験を重ねることに伴う貢献度。 ○公益委員  勤続年数という表現がまずいのかな。 ○労側委員  言うところの勤続30年とか勤続20年、だから素直にそれ。長いからということではな いんですよね、こういった勤続年数というのは。 ○公益委員  能力の所に「遂行的な」と言っていることは、どういうふうにしたらいいのか。そう いうレベルと、そのバックにある蓄積されたパフォーマティブとは限らないのですが、 そういうものを含めるとか、どうかということだと思うのですね。 ○労側委員  ええ、これはそこも含めているのです。 ○公益委員  それで、能力主義というのは、俗に言ういまの実績というのと、限りなくその人が 持っているそういう奥にある。 ○労側委員  潜在的な能力ですか。 ○公益委員  そう、そういうものも含めるかという。そこでその違い。 ○公益委員  そういうのを含めると、学歴というのも入ってくるのではないですか。 ○公益委員  そう、そうするとそのパフォーマティブなもの以外のものを入れ始めるとすごく混 乱。 ○公益委員  やっぱり資格経験、そういうものは、能力も、潜在的な要素になると言えるのではな いですか。だから、そこら辺を入れてくると、こうやって分けている意味がまた。 ○公益委員  意義がちょっと崩れてくる。 ○労側委員  基本的な職務で全部言いたいのだけど、現行の正社員の賃金決定要素はこういうのも 入っているし、それは否定できないだろうということもあってこれを入れているのです が、では、その職務遂行能力はどうやってはかるのか。次へ展開できるのですが。これ をやった場合でもこの形は残っているのです。しかしアルバイトは否定もできないね と。キャリアと勤続年数。 ○使側委員  いまの職務遂行能力の違いのところですが、これは異動したあとその職務に慣れとか 経験が全くなかった場合の処遇のあり方はどういうふうに考えているのですか。例えば 人事系統をずっとやっていた人が、ある日突然営業畑、あるいは経理畑に異動した場合 の職務経験とかキャリア、勤続年数というのはどのように換算するつもりでおっしゃっ ているのですか。 ○労側委員  例えば勤続ゼロ年、学校を卒業して入ってきたという方は、要するに全く経験なし で、むくな労働。同じ仕事をしている場所で、会社はまだ1年目だけれども、ある経験 を持って入ってきている方がいらっしゃると。それはその過去の経験をどのように見る かという中で違ってくるわけです。ものの考え方とか。それは公益委員がおっしゃるよ うに、人事ローテーションで配転を繰り返してきて呉服売場にいますという方と、呉服 売場だけで契約して入ってきた方とキャリア管理が違うから、当然処遇差があっていい ということと同じような議論だと思いますが。しかし、職務処遇の違いの中に、その仕 事に必要とされるかどうかという議論はまたあるのです。呉服売場で専門性がどれだけ 必要か、要求される議論はあって、そのものと本人が持っている遂行能力、目標などい ろいろ出てきますが、ちゃんとそれを遂行されているのかどうかとか、ものさしを決め て判断しているのではないかという感じがします。 ○使側委員  その場合、例えばいままで築き上げてきた賃金水準が、A職務からB職務に変わった 場合に、職務経験が全くない所へ異動した場合の賃金水準について合理的な水準まで見 直すということまで含めて考えていらっしゃるのかどうか。 ○労側委員  それは正社員同士ですか。 ○使側委員  例えば正社員同士です。あるいはその場合、パートさんと比べてという意味もあると 思います。 ○労側委員  正社員同士は当然いまの労使の議論の中で、それぞれ経験を持った人ですね。それぞ れについて異動は行っているわけですから、これは過去の経験をどう評価して、どう分 析して決定するかというのは、それぞれの個別の労使の中で決めているという話です ね。それとパートタイマーをそこにどう適用させるか。社員がやっているのと同じよう にパートタイマーも同じようにやりなさいということをここでは言っているわけです。 それが職務遂行能力の違い。先ほどの呉服の話ではないですが、AからBに移ったか ら、最初に入ったときの時給になるわけではないでしょうということを言っているわけ です。そこはきちんと評価をしてなっているわけです。それは正社員と同じではないで すか。 ○使側委員  繰り返しますが、B職務に移った場合の職務遂行能力が、もとのA職務の職務遂行能 力よりも低いといった場合、B職務に移ったときの賃金水準とパートタイム労働者との 間で、処遇差の合理的理由と考えていらっしゃると受け取っていいのかどうかというこ とです。わかりにくいですか。 ○公益委員  正社員についてはわかりませんよ。職務遂行能力、発揮可能な遂行能力で見るとすれ ば、その考え方は同じ仕事のフルにもパートにも適用してくださいという考え方です。 もしそういう賃金体系なら、異動してきて落ちれば、落ちた評価をするということで す。実態はいまそうしていません。実態の話は別の話です。 ○使側委員  そこまで勤めていてご主張されていらっしゃるのですか。落ちるということも含んで していらっしゃるのかどうか。 ○公益委員  実態はそういうことがないという実態です。 ○労側委員  同じものさしでやっているわけですから、同じものさしで比較してパートタイム労働 者と、いわば正社員が決めている決定方式と同じ仕事であれば、同じように。 ○公益委員  それは仮に極端な話、Aという企業が社員でそういうケースの場合下げていますと。 労使で合意されているとなればそれはパートタイマーが入っても同じようになるという ことはありますが、要するに社員と同じ扱いにしなさいということを。いま下げていな いのに、今度新しくしたから下げますということとは違います。 ○分科会長  すでに定刻を過ぎておりますので、お急ぎの方はそこで退席していただくことにいた します。あと15分ぐらい延長したいと思いますが、残りの方はよろしいですか。いくつ かありますが、これを一括して、特に今日ご意見を是非というところをそれぞれおっ しゃっていただきたいと思います。  あとは一括で2(2)のフルタイムと職務は同じだけれども、合理的に処遇決定を異 にする理由がある場合の処遇水準の均衡配慮。それと理由の説明、特に他に必要な例。 それからルールの位置付けということになります。いま申し上げた部分について、どれ でも結構ですのでご意見をいただきたいと思います。 ○労側委員  全体的なところでもあるのですが、使用者側の方の意見の中には、これまでずっと議 論の中でもそうだったのですが、労使の納得が必要だと。つまり労使の議論の中ですべ て進めていくべきではないかという意見が中心的にあると受け止めているのです。もと もと今回のパート労働の議論の基本的なところで言えば、労働組合がない、労働組合に 入っていないというパートの方たちがほとんどだということの中で、どこまで労使での 納得が説得性を持つのかということを大変疑問に持っています。特に1対1、経営者と いわゆるパート労働の1人の方が労使で議論をして、契約内容について納得するという ことは、基本的には労働者は非常に弱いと。だからこそ労働組合を作っているという認 識に立てば、立場も全く違うという、留意性が違うということの中で、やはり納得性を 持つ形の契約内容ということは申し上げにくいですが詭弁だと思わざるを得ません。そ ういったことの中で、やはり10年間進んでこなかったということで言えば、ここはまさ しくルール化ということをきちんと法的にも確保するべきだと思います。  私はいま国民生活審議会に出ているのですが、この中でも内閣府が雇用人材情報化委 員会という報告を出しました。これも夏ぐらいに出したものですが、この中にパート労 働のこともかなり重要な柱立てとして書かれておりまして、内閣府のほうでもパート労 働の問題についてはかなり注目度が高い。まして処遇改善を進めていかなければいけな いという方向で、それぞれの立場、内閣府または厚生労働省と連携をとりながら議論を したい、ということもこの委員会の中でも発言がありました。本当に隔たりが非常に強 い中で、大変不安に思っておりますし、これを一歩でも二歩でも進めていくということ を、どこに公益側の委員の方にお願いするのかありますが、このままでは本当にここだ けの問題ではなくて、全体的な問題としても残すのではないかという気がしておりま す。 ○使側委員  この対比表の中でも書かれてありますように、確かに一部不適切な事業主の方はいら っしゃると思うのです。パートタイム労働法をしっかりと運用していくということで パートタイム労働者の方々に雇用契約をしっかりと確認していただく、ということも非 常に重要になってきているのではないかと思います。その中からお互いにその内容を確 認することで、少なくとも働く人にとってどういうことかを確認できるのではないかと 私としては思っております。 ○分科会長  時間もありませんので、公益の先生にお伺いしたいのです。いまルール化について双 方から意見が出されました。かねてからそうなのですが、ある所では考え方に共通の部 分もあるのかもしれませんが、まだ隔たりがあるということも事実だろうと思います。 これについて公益の先生から、どなたでも結構ですがどうお考えか、先生にお願いしま す。 ○公益委員  感想だけですが、私も基本的にはいまの企業社会の中でパートとして働いている人た ちが同じ仕事、同じ仕事かどうかの基準はもちろん具体的に難しいのですが、言葉で言 いますと同じ仕事をしながら正規か非正規かということで、処遇の格差が出てきた。こ れから短時間を中心とするような、個人の生活と仕事を両立させるような働き方という のは、これから企業社会で働き方の中核になっていく流れの中で、そういう流れをある 程度誰にとっても望ましい働き方の1つとしていくためには、いままでもってきた非正 規、正規という雇用形態の違いから出てくる、あまり合理的ではないような格差を作る 基準を見直す必要はあるのだと思います。その点では先ほど労側委員がおっしゃったこ とに基本的には同じ視点で持っています。  一方でこういう企業の実態からすると、一気に法律の形等も含めてどこまで踏み込ん で基準を立てるか。公正な処遇のルールを立てるかというときには、やはり労使の熱心 な議論の中である程度落としといいますか、了解のところが必要なのではないか。た だ、いま使側委員がおっしゃったパートタイム労働法の中で、したがってその雇用契約 の明確化をすれば十分ではないかとおっしゃったところについてはちょっと疑問を持っ ております。ここで問題にしているのは契約の中身の明確化、もちろん指針等でそうい うことをするように雇入通知書、基本的な労働条件を明確にするということはもちろん 言っているのですが、そういう問題とは別途、いま言った必ずしも合理的ではないよう な基準によって処遇差が出てきたようなところの、その判断の基準をもう少し見直して 考えていこうということですから、労働契約の中身が明確になるような形で進めていく というのとはちょっと筋の違う問題ではないかと思っております。ですから、そういう ところの論点を少し労使のほうで共通の認識に立っていただいて、できるだけ1歩でも 2歩でも近づけられるような議論と、それから基準を立てていただくように、公益委員 の1人としてお願いしたいと思います。 ○公益委員  パートタイム法が施行されてから、その当時の状況と現在の雇用状況というのはかな り違うのだろうと。そこはこの議論の出発点のときではないかと思います。  つまり、先ほど労側委員がおっしゃったように、多様化ということが着実に進行して いるような状況で、その時点における雇用についてのルールをどう整理するか、そうい う問題に関して我々は取り組んでいるのだと理解しております。  そういう状況で多様化の中で、かなりコアになる雇用の形態がパートタイム労働の問 題なのです。パートタイムについての法律が作られて、そこでふさわしい処遇というこ とが打ち出されて、進んで、現在あるわけですが、それにふさわしい処遇を労使でどう 考えるかということの問題、関心だと思います。この問題は、働いているパートタイマ ーだけの問題ではなくて、企業サイドにおいても確たる強力な労働力であるパートタイ ムについての雇用管理をどう合理化するかということは、かなり経営上の重要な課題に なっていると思うのです。そのときに合理的なルールをどうすればいいのかということ で、この研究会で議論されてきた明確化の方法というものが議論されている。そういう ふうに位置付けすると、我々の中立的な観点から言えば、労使双方ともこのルール化に 当たっては非常にポジティブなのです。取り組みというものが期待されるのではないか というのが、我々のとらえ方なのですが、現状においては特に使用者サイドにおいて は、こういうルール化に対してあまり積極的な姿勢を取られない。なぜかということに ついて、どうも労働者側も我々もあまり理解しづらい。いままで言ったいろいろな前提 をおいた場合、使用者サイドにとっては非常に不都合なルール化が行われるのではない かという見方がされているのではないか。もう少し積極的にこうしたルール化というこ とが企業サイドからメリットがあるのだという、そういう視点というようなものをお持 ちになったほうが、これからの企業にとっても意義があることだと思います。どういう 形でルールの明確化をすることが、いまの雇用状況の現状においてどうかということに ついては議論はあり得ると思うのです。このルール化そのものに対してあまり積極的で はないということ、その姿勢については何度も言いますように疑問に思いますし、この ルール化は企業サイドに積極的な意義があると私は考えてこの議論に参加いたしまし た。そのことについて何度も申し上げているので、最後にしたいのですが、そういう考 えでおります。以上です。 ○分科会長  それでは時間になりましたので、他に特になければ今日はこれで終わりたいと思いま す。年末年始を挟んで時間がこの間空きます。これまで9月から8回にわたりいろいろ 議論し、各側のご意見はそれぞれ出していただいたということもございますので、そろ そろまとめの段階に入るということで、今後は議論の集約に向けて、それぞれ委員の方 にお考えをまとめておいていただきたいと考えておりますのでよろしくお願いします。 それでは今日の署名委員は遠藤委員と岡本委員にお願いしたいと思います。よろしくお 願いします。次回は1月23日15時から17時、場所は9階省議室です。今日は大変超過い たしまして私の不手際で申し訳ありませんでした。長時間ありがとうございました。こ れで閉会いたします。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課企画法規係(7876)