02/12/13 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成14年12月13日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年12月13日(金) 14:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(13名)五十音順   大 野 泰 雄、 金  井   淳、◎河 村 信 夫、 堺   秀  人、   首 藤 紘 一、 菅 谷   忍、 谷川原 祐 介、 長谷川 紘 司、   早  川   浩 、藤 上 雅 子、 村 勢 敏 郎、 矢 崎 義 雄、   柳  川   浩 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名) 風  祭   元、 小 嶋 茂 雄、○長  尾   拓、 南 部 鶴 彦 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 安 倍 道 治(審査管理課長)、    豊 島   聰(審査センター長)    姫 野 孝 雄(審査センター企画調整部長)、    平 山 佳 伸(審査センター審査第一部長)、   森   和 彦(審査センター審査第二部長)、   辻 村 信 正(審査センター審査第三部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部 会をこれから開催させていただきます。当部会の委員数は17名で、本日4名の方が御欠 席です。若干遅れている先生がいらっしゃいますけれども、現在のところ11名の御出席 を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告させていただきます。そ れではどうぞよろしくお願いいたします。 ○河村部会長 お忙しいところありがとうございます。本日の審議に入りますけれども、 審議に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。それと資料作成に関係され た委員のお名前もお願いします。 ○事務局 それではまず資料の確認をさせていただきます。資料1〜6までがあらかじ めお送りした資料でございます。本日の席上配付資料といたしましては、本日の議事次 第、座席表、当部会の名簿、それから資料7として「医薬品第一部会審議品目の薬事分 科会における取扱い及び毒薬・劇薬の指定の要否について(案)」、資料8として専門委 員の名簿をお配りしております。ございますでしょうか。それから平成13年1月23日 の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関与された委員の確認でありますが、本日の議 題については関与委員はいないということでございます。よろしくお願いします。 ○河村部会長 ありがとうございました。では審議に入らせていただきます。議題1の カルブロック、審査センターから審査概要の説明をお願いいたします。 ○事務局 資料1、カルブロック、カルブロック錠8mg及び16mg、一般名アゼルニジピ ンについて審査センターより御説明いたします。 本年8月30日に開催されました本医薬品第一部会において御審議いただいた結果、本 薬はCYP3A4による代謝を受け、グレープフルーツジュースとの併用により血漿中薬物濃 度が上昇することが示されていましたが、CYP3A4に関する薬物相互作用についての検討 が不十分であるとされ、追加検討を行った上で再度審議されることとなりました。また、 本薬の副腎機能に与える影響、光毒性及び光感作性に関しても併せて御指摘を頂きまし た。 本部会における審議結果を踏まえた審査センターでの審査内容を御説明いたします。 本薬の副腎機能に与える影響、光毒性及び光感作性に関しては、それぞれ追加試験が実 施されました。新たに実施されたラット単回及び反復投与試験において、レニン・アン ジオテンシン系を介したものと予想される一過性のアルドステロン濃度の上昇が見られ ましたが、比較対象の類薬においても同様の変化が認められており、本薬特有の変化で はなく、また光毒性、光感作性については、in vitro及びin vivoのいずれの試験系に おいても本薬は陰性であり、これらについて問題はないと判断いたしました。  薬物相互作用に関しては、CYP3A4代謝阻害薬物による本薬のin vitro代謝に及ぼす 影響、健康成人でのイトラコナゾール併用による本薬の血漿中濃度への影響、シンバス タチン併用による本薬及びシンバスタチンの血漿中濃度への影響をそれぞれ検討する試 験が実施されました。  イトラコナゾール併用により本薬の血漿中濃度は上昇し、その程度は比較対照薬とし て用いたフェロジピンと同程度でした。フェロジピンの添付文書においてはイトラコナ ゾールは併用注意とされておりますが、本試験のイトラコナゾールの投与量は50mgであ ったのに対し、承認用量としては200mgまで増量可能であること、本薬との併用症例は 国内臨床試験症例に限られることから、イトラコナゾールを含むトリアゾール系抗真菌 剤及びHIVプロテアーゼ阻害剤とは併用禁忌とされました。  シンバスタチンとの併用では、本薬の血漿中濃度には影響がありませんでしたが、シ ンバスタチンのAUC、Cmaxが非併用時に比べ2倍程度増加いたしました。また、本試 験の投与症例8例中1例にCPK上昇が認められました。この結果を踏まえて、シンバ スタチンなど代表的なCYP3A4阻害薬は併用注意とされたほか、本薬とHMG-CoA還元酵素 阻害薬との併用の可能性が高いことから、市販後の安全対策として申請者より発売前ま でにアトルバスタチン、プラバスタチン及びジゴキシンそれぞれと本薬併用時の薬物動 態試験を実施すること。発売後は、発売直後から1年間を目標に、HMG-CoA還元酵素阻 害薬併用時のCPK値推移などについて評価可能な3,000症例の使用成績調査と、長期 使用患者において使用実態下のHMG-CoA還元酵素阻害薬との併用による影響を重点調査 項目とした特別調査を実施するとの計画が示されました。さらに、目標とする使用成績 調査結果が得られ本薬の安全性が確認されるまでは、本薬の導入施設を使用成績調査の 実施が可能な施設を中心に自社MRによる説明が可能な施設に納入し、慎重な導入を図 る予定であることが示されました。 以上のように、今回新たに提出された資料により本薬の相互作用についてかなりの情 報が得られ、これらの内容は添付文書により医療現場に情報提供されることとなったこ と、発売前の薬物動態試験と市販後調査の両面から更に相互作用について検討する計画 が示されたことから、審査センターは本薬の安全性を確認しながら医療現場に導入して いくことが可能であると考え、本薬を承認して差し支えないと判断し、本部会において 再度審議されることが適当であると判断いたしました。  本薬は新有効成分含有医薬品で、再審査期間は6年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬の いずれにも該当せず、分科会へは報告が適当と判断しています。御審議のほどよろしく お願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。先生方、御記憶でございましょうが、1回こ の会にかかりまして、いろいろ宿題が出てちょっとストップになっていたものが再度上 がってきたというわけでございます。それで一応副腎細胞の肥大に関して、光毒性及び 光感作性について、それから薬物の相互作用について改めて申請会社側から返事が来た という格好でございますが、いかがでございましょうか。この前いろいろ一遍に御検討 いただいたという記憶がございますが、先生、いかがでございましょうか。 ○谷川原委員 前回の資料で、グレープフルーツジュースによって非常に影響を受ける という特徴が示されていたのですが、恐らく当然予想される薬物間の相互作用に関する 検討が全くなされていなかったということで、前回それを指摘させていただきました。 といいますのは、やはり市販後早期に相互作用等による有害事象などが否定できないと いう懸念があったわけでございますが、今回追加試験をしていただきまして、やはり予 想どおりイトラコナゾールによってこの代謝がかなり抑えられて血中の薬物濃度が上が ると。またシンバスタチンの併用は、今度は逆にシンバスタチンの方が約2倍に血中濃 度が上がって、それで8例中1例にCPKの上昇も結果として得られたということでご ざいますので、今回センターから御説明ありましたように、やはりかなりリスクの高い 組合せに対して併用禁忌というレベルで安全性を確保した方がよろしかろうと思いま す。  またHMG-CoA還元酵素阻害剤は、同じ代謝酵素が関与するアトルバスタチンとの試験 が未実施、代謝酵素ではないのですが、そして同じ系統であるプラバスタチンとの相互 作用等も発売前にしていただけるということで、これは非常に結構なことではないかと 思います。また私がちょっと心配しましたのは、例えば仮に既に海外等でかなり使われ ているものを日本へ持ってきたのであるならば、かなり使用経験というか、自発報告等 の種々の安全性情報があると思うのですが、国内で開発をして、そして治験のとき若し くは相互作用等の検討が不十分であるときに、市販後早期に何か問題が出るのではない かという心配があったわけです。今回、申請者の方の意見では、取りあえず一気に発売 をするわけではなくて、MRが完全に把握できるような施設に絞って、当面1年間はそ の使用実態下での安全性の情報というのをしっかり取って、それで徐々に慎重に市場に 導入するという、これも大変望ましい姿勢だと思います。当部会の品目ではございませ んが、イレッサという抗癌剤の治験の症例が非常に少なくて、発売後非常に短期間で多 くの患者さんに使われて、今いろいろ議論が出ているようではございますが、やはりま だ未知のリスクがある場合というのは、このような形で慎重に市場に導入していただく ということが、そういう健康被害を未然に防ぐ上で大変重要なことではないかと思いま す。恐らく申請者側のビジネスとしては非常にマイナスになるのかもしれませんが、や はり国民の健康といった意味ではこの方が有り難い、大変いい姿勢であると思います。  ただ、一点だけ申し上げたいことは、今回の対応は大変素晴らしいと思うのですが、 データから見て当然予想されたことが、余りここまで議論されずにこの部会まで上がっ てきたというところが、なぜそうなのかということです。申請時期が非常に古かったと いうこともあるようですけれども、やはりこの薬剤が検討された時期がたとえ古くても、 あくまでもその承認する時点での水準で判断をして、仮にこれは随分昔に治験をされ、 当時はそういうことまで手が回らなかったとしても、現時点で承認するのであるなら、 現時点での科学水準で御判断していただけますように審査センターの方にもお願いした いと思います。以上でございます。 ○河村部会長 ありがとうございました。審査センターの方は何かございますか。 ○審査センター長 ただいまの谷川原先生の御指摘は非常にごもっともで、審査センタ ーに向けられた問いかけが含まれていると思いますので、私の方から少し御説明させて いただきたいと思います。  審査センターといたしましては、薬物相互作用の検討についてたとえ申請時期が古い 品目でありましても、現時点で医療現場で用いられる以上、発売開始早期に相互作用に 起因するような重篤な有害作用が発生することを未然に防ぎ、また仮に発生したといた しましても、早期に発見して対策が講じられるように審査過程において所要の措置を講 ずることが肝要と考えております。しかしながら、今回のカルブロック錠につきまして は、今御指摘のとおり調査会以来の過去の審査経緯にとらわれた面がありましたことは 否めない事実と考えられます。そこで今後の対策といたしましては、次のような二点を 審査センター内で確認いたしましたので、それをここで御報告させていただきたいと思 います。  一点目は、承認審査の過程で留意しなければいけないことでございます。開発時期、 それから申請時期、それまでの審査経緯に関係なく、承認審査時の科学水準において必 要な薬物相互作用に関する検討の実施を申請者側に求めまして、承認の可否の判断材料 にしていくというふうに考えております。  二点目は、市販後の対策に関することでございます。薬物相互作用に懸念がある薬剤 につきましては、市販直後に適切な安全性情報の収集を行い、安全性を確認しながら医 療現場に導入していくようにすること。それからまた、安全性が確認されるまでは販売 元が安全性情報を把握できる施設に納入を限るなどのように、投与症例数をコントロー ルするようにしていくことも重要と考えられますので、このような方向で指導していき たいと考えております。併せまして、得られた安全性情報の医療現場への速やかな提供 ということも指導していきたいと考えております。以上でございますが、これは薬物相 互作用に限ることではございませんで、審査センターにおける方針ということで確認し たことを報告させていただきました。 ― 堺委員着席 ― ○河村部会長 ありがとうございました。どうぞ、矢崎先生。 ○矢崎委員 1回目の議論が余り記憶になくて申し訳ありませんが、質問させていただ きたいと思います。ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は14剤ございますよね。も う数年前から、グレープフルーツとジヒドロピリジン系のカルシウム薬の相互作用とい うのはすごく有名な事実ですが、問題点の一つはこの系のカルシウム拮抗薬が今までそ ういう目で詳しく審査されていたかどうか。もしそういう事実が分かった状態で、初め ての審査であった場合にこういうことが分かったら、振り返って今までの薬剤をどうい うふうに評価するか、チェックするかということはどうなのかと。要するに、これだけ 経験が少ないからということで詳しく調べられましたが、ジヒドロピリジン系のカルシ ウム拮抗薬も広く使われてます。ですから、これだけ特別なのかどうか、厳しい文言が 妥当かどうかということ。  もう一つは、14剤目の持続性のカルシウム拮抗薬というのが一つ特徴的で、それは臨 床薬理的に調べられたということで、実際に臨床的に例えば同類のアムロジピンと同じ ような効果があるか。すなわち、例えばカルシウム拮抗薬の臨床的な有用性を損なうも のとして、血圧が下がったときに脈拍が増加するのです。そういう現象があるのですが、 持続性のカルシウム拮抗薬はそういうことがなくて、比較的忍容性が高い、そういう意 味で臨床的な有用性があったと。これは1回目の審査ではちょっと記憶にないのですが、 そのような利点があったのかどうかというのをちょっとお聞きしたいと思います。 ○河村部会長 薬剤の利点の話と、今までのものはどうなっているかということですが …、では審査管理課長。 ○審査管理課長 審査管理課の方からちょっと御説明させていただきます。既存の薬は 既にこのジヒドロピリジン系で13種類の成分があるということですが、私どもが既存の 添付文書を見る限りは、多くはこのグレープフルーツとの併用についての記載がござい ます。ただし念のためでございますので、一応既存の類薬について添付文書上きちんと 答えているかどうか確認させていただきたいと思います。 ○矢崎委員 後からこういうことを調べてほしいという指導はされていないのですか。 ○審査管理課長 これまでもこういうケースが起こった場合には、実は品物については 安全対策課の方から関係企業に連絡を取りまして、それぞれの成分についての自主点検 をする、必要な場合には添付文書に注意書をきちんと書くということでこれまでも指導 してきております。 ○河村部会長 そうすると、もしもこういうものが抜けていたら、それを検討してもら い添付文書に反映させるということはやっていただくと。 ○審査管理課長 これまでもそのようにやってきておりますので、これについても念の ためもう一度確認させていただきたいと思っております。 ○河村部会長 よろしくお願いします。 ○事務局 では本薬とアムロジピン等の他の1日1回投与型のジヒドロピリジン系カル シウム拮抗薬との比較に関してですが、本薬はアムロジピン対照とした20症例ずつの二 重盲検の24時間の血圧推移を見る試験を追加で実施しておりまして、その結果からアム ロジピンと同程度の降圧効果等が見られております。また、俗に申します反射性頻脈と 言われるものに関しても、アムロジピンと比べて問題になるような頻脈等も見られてい ないという結論が得られておりますので、その試験からは少なくともアムロジピンと同 程度の効果と安全性が担保できるのではないかと考えております。 ○河村部会長 矢崎先生、よろしゅうございますか。後で御発言しますか。では谷川原 先生。 ○谷川原委員 今の矢崎先生の御質問に関連してなのですが、申し上げたいことは2点 ございます。グレープフルーツジュースとの関係は同じカルシウム拮抗剤でも程度に差 がありまして、前回の資料はグレープフルーツジュースとの相互作用だけのデータしか なかったのです。そのデータを見る限り、同じ系統の薬剤でも最も影響が大きいという ことをこの資料が意味していましたので、それが特にグレープフルーツジュースが危険 であるという議論ではなかったのです。と申しますのは、グレープフルーツジュースと の相互作用を見ておきながら、いわゆる薬剤との相互作用が一切検討されていなかった ということが私が指摘させていただいたもので、グレープフルーツジュースとこれだけ 相互作用があるのだったら、他の薬剤との相互作用も当然予想されるのですが、それに 対して何がしかの検討がなされていればそれで判断できたのですが、前回の段階では全 くその資料がなかったということでしたので、今回新たに追加で出させていただいたと いう経緯でございます。 ○矢崎委員 グレープフルーツジュースの作用が、カルブロックで突出して大きかった ということは…。 ○谷川原委員 最も大きい部類に入ると思います。 ○河村部会長 ほかに御発言ございましょうか。どうぞ。 ○村勢委員 副腎皮質系に関することを質問させていただいたのではないかとうっすら 覚えているのですが、先日審査センターの方からこういう動物実験の追加をしてという ようなことで、それに対する回答についてこれでよろしいかどうかという意見を求めら れて、私は結構ですとお話をしたのですが、従来のこういう検査の過程についてちょっ とお伺いもしてみたかったのです。と言いますのは、この薬剤は副腎球状帯の細胞の肥 大が動物実験で6〜7割とかなりの確率で見られたことから、この辺の副腎皮質の異常 はないかどうかということを質問したと記憶しているのです。動物実験を追加してくだ さるというのは非常に結構で、きちんとやってくださったのかと思うのです。この副腎 皮質系統に関しては、何もこの薬剤に限らずジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗剤に かなり共通した変化と考えるということで、25ページに書かれているのですが、そんな ふうに結論されて、ではこの薬はどうなのかということに関して、ほかもそうなのだか らこの薬に関してもこれ以上は特に検討しなくてもいいという態度が伺われるのです。  従来、この系統の薬でこういう副腎の球状帯皮質の異常がかなり認められていたと思 うのです。従来はこれをどういふうに扱われていたのか、これも何かよく分からないけ れども、みんな共通した変化だからこの私たちの薬だけ責めないでくれというようなこ とで経過をとったのかどうかという、従来の審査方法に対しての質問です。  もう一つ、かなりたくさん使われているお薬なのですが、ほかの薬剤で今まで臨床的 に長期間使っていて、副腎皮質に対する影響というのは何か報告されているのかどうか、 そのようなこともちょっとお聞きしたいと思います。 ○河村部会長 これはどなたかお答えいただけますか。 ○事務局 類薬との並びのお話についてお答えさせていただきます。まず今回のことに 関して、審査報告書に書き足らなかった部分があるとの先生の御指摘だと思います。本 剤が類薬と同じような動物実験での結果が得られているからというだけで、本剤に関し て安全だと決めたわけではございません。  まず第一に、本剤は主にラットで副腎に関する変化が見られていたのですが、そのラ ットでの血漿中濃度と現在の用法・用量の最大投与量でヒトに投与した場合の血漿中濃 度というのは約30倍程度の開きがありまして、ラットの方が30倍くらい高いというこ とが示されておりますので、血漿中濃度から考えてそのような変化が起こるような曝露 をヒトで受けるというのはまずないであろうというのが一点。  また、このようなラットですとか、他の薬剤ではイヌでも副腎に関する変化が見られ ているものがあるのですが、現在13成分承認されておりますジヒドロピリジン系カルシ ウム拮抗薬の中で、副腎に関する副作用が添付文書に記載されるようなレベルのものが 報告されている薬剤がありませんでした。基本的にラットやイヌといった動物で見られ るような変化であって、ヒトで問題になるようなことはないであろうと判断いたしまし て、本剤に関しては副腎に関する安全性に問題はないと判断させていただきました。 ○村勢委員 従来も大体そういう取扱いというか、考え方で経過してきたわけでしょう か。 ○河村部会長 御存じでしょうか。従来ということは…、どうぞ。 ○審査管理課長 市販後におきまして、一般論で申し上げますと制度としては副作用報 告制度がございますので、現場でとらえられた副作用につきましては安全対策課の方に 報告されます。それで因果関係が否定できないものとして重要なものについては、新し い治験が得られた都度添付文書に新しい情報を追加して、より安全な使用に努めていた だくということで周知徹底を図っておりますので、現時点においてこの添付文書上記載 がないということは、その種の重篤な副作用報告が上がってきていないことになるもの でございます。念のため、これについてはもう一度事後的にもこれまでの副作用報告に ついて確認してみたいと思います。 ○河村部会長 村勢先生がおっしゃっているのは、これくらいの副腎の変化があっても 従来は認めてしまったかということですね。認めていて、それで副作用報告が上がって きていないならまあいいだろうということだと思いますが。 ○審査第二部長 過去の13成分一つ一つを全部見ているわけではないのですが、一応動 物実験でヒトよりもかなり高い曝露量で毒性的な変化としていろいろなものをとらえる のは、一般的によくあることでございます。ただその場合、その変化というのがそうい った同じ系統の化合物に共通して見られるものであるかどうか、それから種を越えてそ の変化が共通して現れるものであるのかということは、審査の過程において常に注目し て見ていることでございます。  さらにそうやって動物で見られる変化というのが、実際にヒトで臨床試験をやったも のの中でそれに関連すると思われる副作用が出ているかどうか、これは必ず審査の過程 でチェックしております。確かにこのカルシウムブロッカーで、ジヒドロピリジン系の ものについて、確かに今回の御指摘を契機に過去のものを見直しているのですが、やは り同じような系統の化合物で同じような動物での変化は現れていて、そしてそれぞれの ケースにおいてヒトの副腎に影響が出て、それが臨床的に問題となる副作用につながっ ているというケースは幸いなことになかったということであります。そうして今までこ の系統のカルシウムブロッカーというのはたくさん承認されておりますし、日本では血 圧コントロールの中で一番たくさん使われる薬の一つになっております。そういうこと で、審査の過程でも一応臨床と基礎を結び付けて必ず見てきているということは言える と思います。 ○河村部会長 ほかに御発言ございましょうか。大野先生、どうぞ。 ○大野委員 光毒性に関して私が再考をお願いしたのですが、その理由と申しますのは、 このニフェジピンタイプのカルシウム拮抗薬で添付文書を見ますと、結構「光感作性あ り」という文章が書いてあるのです。この薬物について見ると、UVAの部分に吸収の ピークがあるのです。そういうことがありまして、今まで光毒性に関してはUV吸収が あって、皮膚の適応薬についてだけ光毒性試験を要求していたのですが、ほかにカルシ ウムアンタゴニストとかキノロン系の薬物といったもので光毒性を内服薬でも出すもの が結構あるという事例をかんがみまして、それについての光毒性を見ていただいた方が よろしいのではないかということでお願いしたのです。  またもう一つは、in vitroの光毒性試験で非常に感度のいい方法が国際的にも確立さ れている状況ですので、それでやってみたらいいのではないかということをお願いした わけです。今回、その感度のいい方法でやってみまして、かなりネガティブだったとい うことです。ただ、アムロジピンやニカルジピンなど、そういう従来のカルシウムアン タゴニストで光毒性がin vitroで検出されたということです。  それから光感作性試験に関してはin vivoでやっているのですが、アムロジピンにつ いてはあったけれども、この薬物についてはなかったということでございます。この方 法は、in vitroの光毒性試験は光感作性を検出する方法ではないので、光感作性がある ものでネガティブになることが結構あるのです。それからin vivoの試験でもネガティ ブになることもあるのですが、この報告した部分の方法くらいしか有効な方法がありま せんので、それでネガティブであったということで、一応治験の内容としてはよろしい と思います。今回の会社側の回答では、そういうネガティブだったけれども、類薬に光 線過敏症が認められている旨は添付文書に記載して注意を喚起するということも回答に ありますので、そういった回答でよろしいのではないかと考えます。 ○河村部会長 ありがとうございました。ほかに御発言ございましょうか。菅谷先生、 どうぞ。 ○菅谷委員 メーカーの対応がこのように簡単にというか、短期間にできるときっかり 出してきたということについては、私は従来からの経過を見て非常に驚きを感じており ます。もし、こういうことがその気にさえなればできるのだということであれば、何も 市販後、市販後と言わずにやはり承認前にきちんと対応させるべきだと。その上できち んと検討して承認する必要があると思います。ですから、市販後に対応すればいいのだ という安易な考え方はするべきではないという感じがしましたので、できるだけメーカ ーにきちんと対応させるということを事前に主張していくような体制をつくっていくべ きではないかと申し上げておきます。 ○河村部会長 確かにそのとおりだと思いますし、メーカーさんにもそのような御意見 があったということをお伝えください。 ○事務局 そのように伝えさせていただきます。 ○河村部会長 ほかにございましょうか。私がちょっと心配しているのは、市販後調査 を登録制度でやるということがきちんとできるかどうか。では私のところも使いたいか ら登録してと言ったら、お前のところは駄目だと言われる可能性があるのではないかと 思っているのですけれども、その辺は実際メーカーさんはどのように考えているのです か。どうぞ。 ○審査第二部長 実際の市販後の計画が非常に肝要であるということで、会社の営業サ イドまで動員をかけて実際にどのようなやり方ができるのかを検討させました。実は今 回追加でやっているいろいろな試験結果の中で分かってきたことは、この薬が思ってい たよりもいろいろな相互作用が現実に出てくることだと思います。しかも一番問題にな ったのは、シンバスタチンという非常によく使われているコレステロールの低下剤との 相互作用が現れて、しかもシンバスタチンの方の血中濃度が上がってしまったというこ とです。これでこういった薬との併用は全部注意してやらなければいけないという厳し い制約がかかることになってしまいました。  実を言うと、この薬を現場に持ち込む際には、かなり使いにくいということを現実に は引き起こしますので、端的に言って非常に使いやすいからどんどん使っていくという 薬ではないということが明らかになりました。添付文書の中に「併用注意」というふう に書いて、しかもそういうことを市販後初期の使用において併用薬を点検しながら使っ てくださいとお願いするということにならざるを得なくなったと。こうしますと、実際 にうちにも使わせてくださいという施設よりは、面倒臭いから余り使いたくないという 施設の方が圧倒的に多くなるだろうというのが、会社側としての見通しだという答えで す。そんな薬が本当に要るのかという話もなくはないのですが、ただ一方で光感作性や 光毒性の試験結果を見ますと、in vivo、in vitroの試験でいろいろ問題はあるにして も、従来のアムロジピンでポジティブに出るものがネガティブに出たというところもあ って、詳しく見るとこの薬にもそれなりのメリットになりそうなところが現れてきてい ると、こういうこともございます。ですから、やはり現場の先生方には従来の薬で光感 作性、いわゆる光線過敏症のようなケースに遭遇した際に、この薬を一つのチョイスと して考えていただくということもあり得るのではないかと。ただ、その場合には、併用 薬剤に十分注意してお使いいただくということを詳しくきめ細かにお伝えしていく必要 があると、こういうことを一応会社側も考えているというお話まで詰まってきておりま す。そういうことをるる聴いてまいりますと、発売直後に一気に販売攻勢をかけて売り まくるということが現実的にはほとんどできないし、この作業の過程でそうする薬では ないという認識に変わったということを確認しております。 ○河村部会長 そうだそうですけれども、現場のMRさんには相当頑張る人も出てこな いかと思っておりますが、それは後のことですからほかに…。はい、どうぞ。 ○谷川原委員 私も今回のこの市販後の対応というのは、非常に評価すべきところが大 きいと思います。今現在ICHの議論の中で、市販後の早期安全対策というものをどう するかというエキスパートワーキンググループがございまして、現実に薬物相互作用と いうのを治験の中ですべてもうやり尽くすというのは、やはり事実上不可能なのです。 日本ではやはりソリブジンの事件もございましたし、海外ではセリバスタチンがゲムフ ィブロジルとの相互作用で結局いろいろな死亡例等が問題になって消えていったわけで す。ああいう問題は、どうやって今後再発を防ぐかというところに、市場に導入すると きに非常に慎重かつ段階的な導入というのが一つの対策として今議論されております。 もしこのカルブロックのアプローチが非常に成功すれば、今後の一つのモデルケースに もなり得るのではないかという意味で注目したいと思っております。 ○河村部会長 ありがとうございました。そういうようなお話でございますが、どうぞ 矢崎先生。 ○矢崎委員 先ほどよく見るとメリットがあると、こういういろいろなことがあるのに どうして14剤目が発売されるのかなと思って…。今メリットがあるとおっしゃったので すが、私は薬価の方で有用性といったものを判定しなくてはならない。そのときに審査 センターのそういう御意見が、メーカーさんがこういうメリットがあってこうだと言わ れてよく調べると、エビデンスとしてはっきりしたものは多くの場合ないのです。です から、その辺がメリットがありそうだというコメントがありますと、そういう方向で十 四番目だけれどもこういうメリットがあるというストラティジィになってくると思うの です。ですから、その辺本当に臨床的に有用性がきちんと確認されているかどうか、そ うでないかということを明確にしていただかないと、最終的に臨床的有用性を評価する ときになかなか困難なことがあるので、その辺もよろしくお願いしたいと思います。 ○首藤委員 あちこち「おそれがある」という言葉がたくさん出てきまして、このグレ ープフルーツの場合も「おそれがある」と書いてあるのですが、これは多分8例中8例 上がっているのではないかというのですが、そういうときにも「おそれがある」という 言葉でいいのでしょうか。 ○河村部会長 8例中8例であるが、「おそれがある」で片付けておいていいのではな いかと、「必ず出る」というふうに書いた方がいいのではないかという…。 ○首藤委員 「出るので」と断定することはないのではないでしょうか。 ○河村部会長 これはお役所の言葉もあるのでしょうが。 ○首藤委員 全部「おそれがある」なのですが、ほかのところもこれなのでグレープフ ルーツも「おそれ」という…、言葉で言うと同じレベルになってしまうのだという感じ です。 ○河村部会長 どうぞ。 ○審査第二部長 固有の話が一点ございまして、実際に今回の御指摘に沿って検討する 過程で、グレープフルーツジュースとの併用でどのくらい確実に血中濃度が上がるのか ということも調べたのです。実は研究報告も幾つもあるのですが、ブランドが違うとか ロットが違うだけでも増強の度合いが全然違うということが分かっております。グレー プフルーツジュースによっては、ほとんど大して上昇しないようなものもあるのです。 そういうことが一応事実としてありますので、確実に3倍上がるというものではないと いうのが、本質的なところとしてはそういうことが言えると。ただ、むしろそういう話 とは別に、ユーザーに対する警告の仕方として確実性のある話でないかのような、そう いう誤った印象を与えるという意味で「おそれ」だけでは不十分ではないかという御指 摘だとすれば、それは個々のケースについて蓋然性をよく考えて表現として整理する必 要があるかと思います。ただ、今回のこのケースに関して言いますと、グレープフルー ツジュースによって上昇する程度が非常に高かったということも事実ですので、今の「お それがある」という表現だけで十分にユーザーに対して危険の度合いが伝わるかどうか というのは、確かに問題になっています。したがって、添付文書の中にグレープフルー ツジュースとの併用の具体的なケースをデータとして載せ、どの程度上がることがあり 得るのかというのを併せて示して理解を得るようにしたいと考えております。 ○首藤委員 今データは上がっているのですね。 ○河村部会長 よろしゅうございましょうか。ほかに御発言ございますか。この薬剤は 言うなれば1回ここで落第したものでございますので、今度は隠していたデータではな いだろうと思うのですけれども、それに沿ってかなり短期間に返事が来たということは 大変喜ばしいし、今後も市販後調査をきちんとやるというのも喜ばしいし、何よりもこ れだけ御議論いただいたのは大変喜ばしいと思うのですが、ほかにも何か御発言ござい ましょうか。ではこれはきちんと記録に残してくれるでしょうから、これは薬事分科会 の方に報告という扱いになるのだそうですけれども、よろしゅうございますか。では一 応そうさせていただきます。  それでは次は医薬品デスモプレシン・スプレー10協和、ADHでございますが、適応 症の追加でございます。御説明お願いいたします。 ○事務局 それでは資料2、デスモプレシン・スプレー10協和について御説明いたしま す。本剤の有効成分酢酸デスモプレシンはアルギニン・バソプレシンの誘導体で、スウ ェーデンで開発され、中枢性尿崩症治療薬剤として使用されております。本邦において も昭和53年に点鼻製剤、平成11年にスプレー製剤が承認されています。  一方、夜尿は年齢とともに自然に減少していくものの学童期低学年及び高学年に見ら れる重篤な夜尿症児は本邦において約6〜12万人存在すると推定されています。海外で は本剤の抗利尿作用に基づく夜尿症に対する臨床開発が行われ、現在米国を始め49か国 で承認されております。本邦においても、夜尿症を追加効能として臨床試験が実施され、 承認申請が行われました。  それでは審査内容について簡単に御説明いたします。本剤の審査においては、平成9 年に新医薬品第一調査会及び平成10年に同第五調査会で審議が行われ、その後審査セン ターにおいて審査がなされております。資料8で示しますように、当時の第五調査会の 座長であった部会長の河村先生を始め、五十嵐委員、西川委員、藤森委員、松浦委員、 横山委員、吉岡委員、吉村委員を専門委員として指名いたしました。 規格、安定性、毒性、薬理及びADMEについては、審査の過程において申請者から 適切な対応がなされたことから、特に問題はないと考えております。  臨床試験成績は、前期第II相及び最高用量決定のための用量追加試験を含む第II相臨 床試験及び塩酸イミプラミンを対照とした第III相比較試験の成績を中心に構成されてい ましたが、調査会より用量反応性の検討が不十分であったこと、塩酸イミプラミンに対 する同等性(非劣性)が検証されず、さらにプラセボを対照とした比較臨床試験が実施さ れておらず、本剤のプラセボに比較した有効性が証明されていないこと等の理由により、 本剤の臨床的有用性を確認することは困難であり、適切な第III相比較試験の実施が必要 であるとの見解が出されました。これを受けまして申請者は、一次性の夜間尿浸透圧低 下を認める夜尿症患者を対象に、夜尿日数減少を主要評価項目としてプラセボを対照と した第III相二重盲検群間比較試験を実施しました。主要評価項目である夜尿日数減少は 本剤群では4.3±4.1、プラセボ群では1.7±3.1であり、本剤群で有意に夜尿日数の減 少を認め、本剤の有効性を検証いたしました。 本剤の安全性について、特に水中毒の防止に関する検討がなされ、提出された臨床試 験においては明らかな水中毒を認めた症例はなかったものの、添付文書において水分摂 取に関する留意事項及び電解質のモニターの必要性についても記載し、注意喚起を図る こととしました。また、本剤は夜尿症の専用製剤であり、既承認の中枢性尿崩症用剤の 2.5スプレーとは製剤の形態は同一で含量が4倍となっております。このため医療過誤 防止の観点から、お手元に製剤及び表示のサンプルをお示ししましたが、製剤の外観上 の識別性を高め、実際には色を変えることと、「夜尿症用」と記載することを行いまし た。さらに含量違い製剤の取り違え等に対する注意喚起を徹底するよう指導いたしまし た。  以上のような審査の結果、夜尿症の効能・効果で本剤を承認して差し支えないとの結 論に達し、本部会で御審議いただくことが妥当であると判断いたしました。本剤は、劇 薬に該当し、再審査期間は4年間、薬事分科会には報告を予定しております。よろしく 御審議のほどお願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのように、これは鼻へプシュッとやる 薬でございまして、最初のころ出てきたデータではきちんと入ったかどうか分からない ということもありましたし、対照薬に困るということがあって大分長引いたようでござ いますが、御意見ございましょうか。我々泌尿器科医から見ますと、主に6歳以上の夜 尿症に使っているのですが、6歳や7歳はまだ発育期でありましてそれから止まる者が 多いので、使い始めてしまって6歳から70歳まで使ってしまうのだというとどうにもし ようがないという意見もありまして、途中で時々休んでもう止まっているかどうかを調 べるという添付文書になっております。御発言、御意見ございましょうか。どうぞ。 ○早川委員 小児科の早川でございます。今先生がおっしゃいましたように、これは子 供に使われる薬でございまして、基本的には結構だと思うのですが、この表現で一般の 夜尿症を適応と言いますと、今先生の御説明がございましたが、やや乱用されるおそれ があろうかと思います。それでこの添付文書の案を見ますと、6歳ということはよく見 ないと分からないように書いてございますので、これはもう少しその点も分かりやすく 添付文書にも書いていただいて…。要するに一般に夜尿症というのは、3歳でも4歳で もお母様が困るから使おうかという安易なことだとちょっと使い過ぎになってしまうお それがあり、それは本来のこの薬剤の目的ではないと思いますので、その辺ももう少し 工夫していただいたらいいかなと。小児科の臨床医としてそういうことを今感じました。 以上でございます。 ○河村部会長 何か…、どうぞ。 ○事務局 センターより御回答いたします。その点につきましては、専門協議でもかな り議論になりまして、当初この6歳以上というのは注意事項の冒頭に書いてございまし た。先ほど河村先生がおっしゃったような議論もございまして、6歳以上になったらす ぐ使っていいのかということが特にそのときの問題でして、むしろ6歳以上でもすぐに 使われては困る、実際にはもう少し上の高学年の方になって使われるのが本来ではない か。ただ、臨床試験で実施された成績からは、6歳以上なので書かざるを得ないが、そ の前に自然経過をきちんと見ること、あるいは使うとしてもきちんと観察することとい うのが冒頭に書いてあって、むしろそちらの方を注意喚起した方がいいのではないかと いう議論がございまして、このような書き順になった次第でございます。 ○河村部会長 大分いろいろ議論がありましたけれども、落ち着いたところはこれだと いうのが実態でございます。それから「夜尿症」という言葉も、今排尿障害研究会の方 では名前を変えろとか何とか言っておりますからね。 ○早川委員 そうでございますね。これもいろいろ議論がございますが、世間一般に分 かりやすいのは夜尿症だろうと思うのでございますが、どういう表現が適切なのか、私 もこの方面は必ずしも専門ではございませんのでちょっと控えさせていただきますが、 そういう議論がございます。 ○河村部会長 よろしゅうございますか。ほかに…、先生どうぞ。 ○村勢委員 まとまった意見になるのかどうか自分も心配しているのですが、私小児科 医でないものですから、夜尿症がどのくらい深刻なものであるかどうかちょっと分から ないという点が一点。  内科ではこういう夜尿症というのは余り見ませんので、これもよく分からない。ただ、 バソプレシンをこういう使い方にするというのは、こういう使い方もあるのかという印 象と、いやこういう使い方は邪道ではないかという印象をまず持ったということなので す。というのは、ホルモン剤の使い方というのは、従来足りないものを補うというのが 基本でして、この小児の場合夜尿症でも十分尿は濃縮されているわけですので、決して バソプレシンが足りないわけではないと。しかし、そういう作用があるからもっとここ で使ってしまえという、本来のホルモンの使い方とは大分違う使い方であるということ が一つです。  それから夜尿症というのはいろいろな原因で起こるのでしょうが、一つにはバソプレ シンに対する反応が弱い、まだ未熟であるということもあろうかと思うのです。バソプ レシンの血中濃度にしてみても、あるいは尿の濃縮度というものもきちんとサーカディ アンリズムがあるわけでして、それを無理矢理抑えてしまって、あるいはモディファイ してしまって何か障害というのが起こらないのであろうか。これはとても科学的よりは インプレッションであれなのですが、そういうことが起こらないのであろうかというこ と。  それからいろいろな形が夜尿症にはあるのでしょうけれども、先ほど言ったように申 告数が分からないのもありますが、自然経過に任せては本当にまずいのかどうか、そこ でこれをわざわざ使う必要があるのかどうかというのが何となく疑問になってくるので す。ちょっとまとまりませんけれども、そういう印象を受けたということです。 ○河村部会長 センターの方から、今の内分泌学的な影響についてのお話を中心に返答 できますか。 ○事務局 内分泌学的なデータにつきまして、今すぐの回答は難しいのですが、この小 児の夜尿症の中にはいろいろな分類がございまして、特に今回の適応は「効能・効果」 の冒頭に書いてございますように、「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う下記疾患」 とし、夜尿症、つまり尿の浸透圧が低下した方、本剤が有効と考えられる方に対して使 うというのが目的でございます。つまり夜尿症でも、中には尿浸透圧が低下していない 方がございますので、その方には本剤は使用する必要はないというのが今の考え方です。 本剤の乱用につきましては、これも専門協議で大分議論になったのですが、確かに先生 がおっしゃられるように自然経過に任せるというのも一つの方法ではございますので、 そういう点からいっても例えば使い方として再燃性、もし夜尿になったら最初の3か月 あるいは半年使ってやめて、またもう一度出てしまったらその年はもうやらないと。次 の年になってからもう一度トライする、乱用は是非防止しなければいけないということ で、そういうことを基に添付文書上は記載を整備しております。 ○村勢委員 ちょっとよろしいですか。 ○河村部会長 どうぞ。 ○村勢委員 質問として提案したわけではないのでお答えしづらかったのだろうと思う のですが、夜間尿の浸透圧低下型というのは夜尿症のときに一々その辺まで点検して、 あるいは検査して鑑別診断して使われるものかどうかということがありますので…。そ の前に夜尿症というのはそれほど深刻なのかなというのですが、早川先生、何か小児科 の方面から…。 ○早川委員 夜尿症は深刻でございます。それは確かでございますが、今出ましたよう に様々なタイプがございまして、心理療法でも十分行くのもございますが、ここに薬を 使うというのは特に深刻で、かつ年長、例えば小学校で合宿、修学旅行等へ行こうとい ってもこれが理由で行けないとか…。行けないことは大したことではないように思われ ますが、それがきっかけでまたいろいろと心理的葛藤が生じて児童の生活に影響がある ということは容易に考えられます。そういうような深刻な患者さんが対象だと思うので すが、今のもう一つの御質問の浸透圧とか尿の比重、おねしょだというので一々調べる かという御質問だと思うのですが、それは確かにこのお薬の本来から考えまして、何で もかんでも夜尿症といえば用いるというのは非常によろしくないので、これは是非調べ てこれに適応したものだけによく考えて使えという趣旨の説明が小児科医としては欲し いというのが、先ほどの私の発言でございます。 ○村勢委員 それに関連して私がちょっと心配なのは、夜間の浸透圧低下型というのは、 寝る前にたくさん水を飲む傾向のある人がこうなるということではないのですね。とい うのは、バソブレシンの使い方で一番心配なのは水中毒だと思うのですが、寝る前に飲 む癖がある子ですと、水中毒というのが一番心配になるという意味での質問です。 ○早川委員 夜尿症のこういう意味の臨床検査の定番と申しますか、決まりというのは、 私もちょっと勉強が足りないのでございますが、恐らくないのではないかと思うのです。 ですから、今先生がおっしゃったような子供もおりますし、余り水をたくさん飲まなく ても毎晩夜尿で困るという子供もおりまして、とても多様でございますので、お答えし にくうございます。 ○河村部会長 センターから何か…。 ○事務局 センターよりお答えいたします。今先生がおっしゃられた寝る前の飲水とい うことに関してですが、本剤を使用するに当たりましては、特に水中毒の観点から添付 文書中の「2.重要な基本的注意」の(2)に記載してございますが、「投与の2〜3時間 前(夕食後)より翌朝までの飲水は極力避け、就寝前の排尿を徹底し、指示した投与量を 厳守するよう指導すること」と記載してございます。水中毒の観点から、先生がおっし ゃるように特に寝る前の飲水については適当ではないというふうに考えております。 ○河村部会長 専門協議でもその水中毒の件、それから浸透圧の件、いろいろ議論があ りまして、それだけの縛りを付けようと。普通おねしょをしたからパッとやる薬ではあ るまいと、まず夕方は水を飲まさないようにしなさいとか、余り怒りなさるなとか、お 灸をすえたらどうですかということから始まって、最後にここに至るのではないかとい う概念で審査したような記憶がございます。どうぞ。 ○審査第二部長 ちょっとだけ追加をさせていただきたいのですが、ホルモンの薬剤と しての使用というのは、補充療法を基本にという御指摘がございました。その点に関し て、今回の夜間浸透圧低下型の夜尿症について、この資料の中に臨床薬理試験の成績と いうものが載ってございます。これは概要の164ページに載っているのですけれども、 お子さんの血中のバソプレシン濃度を測るというのはなかなか大変なことではあるので すが、研究としては夜尿のお子さんで血中のAVP、アルギニン・バソプレシンの測定 をしたというデータが一応示されています。これが確実にすべての臨床例で担保される かどうかというのはなかなか難しい点があるのですが、一応夜尿のお子さんは夜間のA VPの上昇が余り芳しくないケースのようであるということで、そこに補充するような 形で使うという原理になっていると。そういう考え方が示されているということは一応 お知らせしておきたいと思います。  ただ、実際に個々の患者さんの診断をするときに、全部採血をして調べるというのは さすがに難しいものですから、そこでそのような病態背景を持っているということを間 接的に確認するために尿の浸透圧、比重を正確に測定してくださいと、添付文書の使用 上の注意の中に記載するようになったという経緯でございます。 ○河村部会長 よろしゅうございましょうか。ほかに御意見ございますか。よろしかっ たら、これは薬事分科会の方へやはり報告という扱いにさせていただいて御異議ござい ませんか。ありがとうございました。  では三番目はセルセプトカプセル250というものでございます。御説明よろしくお願 いします。 ○事務局 それでは引き続きまして、議題3、資料3、医薬品セルセプトカプセル250 の効能追加にかかわる輸入承認事項一部変更承認の可否等について、審査センターより 御説明申し上げます。 本剤の有効成分ミコフェノール酸モフェチルは、米国シンテックス社(現在のロシュ・ バイオサイエンス社)で開発された、リンパ球の増殖抑制を主作用とする代謝拮抗型の免 疫抑制剤であり、本剤は既に平成11年9月22日に「腎移植後の難治性拒絶反応の治療」 の効能で、また平成12年12月22日に「腎移植後の拒絶反応の抑制」の効能で承認を取 得しております。我が国においては、平成9年の「臓器の移植に関する法律」(平成9年 7月16日、法律第104号)施行後、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植についても少数 例ながら実施されてきており、また、海外医療施設にて移植を受けて帰国した患者もい ることから、日本移植学会から海外等での臨床成績を評価し、移植後の拒絶反応抑制に 用いる薬剤をできるだけ早期に承認するよう要望書が提出されております。これを受け て、類薬であるシクロスポリン、タクロリムス及びアザチオプリンにつきましては、既 に平成13年4月の医薬品第一部会において、心、肝、肺、膵、小腸の移植に対する効能 追加について審議され、承認は可とされております。本申請はこれらの類薬に倣い、本 剤に心、肝、肺、膵及び小腸移植後の拒絶反応の抑制を効能追加する承認事項一部変更 承認申請でございます。 本剤の専門協議では、本日の配付資料8に示しますように、岩崎委員、小椋委員、小 柳委員、門田委員を専門委員として指名いたしております。 本申請資料では、国内での臨床試験の実施は困難であることから、国内及び海外にお ける使用実績や公表論文等から、本剤の有効性が説明されております。心移植につきま しては、アザチオプリンを対照とした海外二重盲験比較試験において、シクロスポリン 及びステロイド併用下で、主要評価項目である「移植後1年以内に死亡又は再移植した 割合」で非劣性が示されており、国内での心移植症例11例全例で本剤が使用されており ました。肝移植につきましても、アザチオプリンを対照とした海外二重盲験比較試験に おいて、シクロスポリン及びステロイド併用下で、主要評価項目である「移植後6か月 における拒絶反応を少なくとも1回経験した症例の割合」でアザチオプリンと比較して 有意に低い値を示し、移植後12か月及び36か月での成績でも非劣性が示されており、 国内でも48例の使用経験が示されております。肺移植に関しては、海外においても検証 試験の実施が困難であり、海外での使用経験及び公表論文並びに国内実施20症例中16 例での使用経験が示されております。膵移植及び小腸移植に関しては、さらに国内症例 が少ないことより、海外での使用経験及び公表論文等により本剤の有効性が示唆されて おります。  審査センターは、本剤が申請された臓器移植において必要な薬剤であること、海外に おける臨床試験成績及び使用実績から本剤の移植医療における有効性は示されていると 考えられること、安全性についても腎移植時と同様なプロファイルであり、個々の症例 の状態に合わせて用量調節されることから、本剤の有効性及び安全性は提出資料より示 されたものと判断いたしました。  また、移植患者に対して本剤を使用する免疫抑制療法には専門的知識及び技術が必要 と考えられることから、添付文書の警告欄において、「臓器移植における本剤の投与は、 免疫抑制療法及び移植患者の管理に精通している医師又はその指導のもとで行うこと。」 と記載いたしました。さらに国内における本剤の有効性、安全性を確認するために、市 販後に全例調査を行うことが必要であると考えております。  以上のとおり、審査センターでの審査の結果、本剤の心移植、肝移植、肺移植、膵移 植、小腸移植における拒絶反応の抑制に対する有用性が認められることから、承認して 差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議することが妥当と判断いたしました。な お、本効能における対象患者が少ないことから、再審査期間は10年とし、薬事分科会で は報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのとおり、移植のときの免疫抑制に使 うという薬でありますが、ほかの免疫抑制には使う予定は今日本ではないのですね。外 国では尋常性乾癬とかベーチェットなどに使われているようですが、日本では移植だけ …。 ○事務局 この薬剤につきましては、今のところ腎移植のみでございます。 ○河村部会長 御質問、御発言ございましょうか。はい、どうぞ。 ○矢崎委員 実際外国で心移植以外に使われている場合、これは今臨床試験で既に国内 でやられているのでしょうか。そういう目的でこのお薬が…。 ○河村部会長 このお薬の治験がやられているかどうかということですか。使われては いるのですね。 ○事務局 心移植につきましては全例で使われておりますけれども、治験を組むような 症例数はございません。 ○河村部会長 心移植は11例でしたか。 ○事務局 現在のところ、国内では心移植において11例ございます。 ○河村部会長 それが全部使われているのですか。 ○事務局 その全例で本剤が使われております。 ○矢崎委員 失礼しました。この質問が悪かったのですが、これは心移植の免疫抑制で 申請されている薬で、ほかでは…。 ○河村部会長 どうぞ、御説明お願いします。心だけではなくて、既に腎は通っている と…。 ○事務局 現在のところ、本剤につきましては腎移植について承認を得ておりまして、 今回の申請はそれに心、肝、肺、膵、小腸を追加する申請でございます。 ○矢崎委員 今座長が言われた目的で、臨床試験などがこの薬で行われているかどうか …、ほかの適応拡大の目的でやられているかどうかということです。 ○河村部会長 国内でやられていますか。 ○事務局 リウマチにつきましては現在やられているという話でございます。 ○河村部会長 だそうでございます。 ○矢崎委員 リウマチですと、20例とかそういうものではなくて、結構広範に使われる わけですよね。ですから、そういう情報が入っていなくて、これは心移植あるいは腎移 植の拒絶反応抑制剤ということで申請されて、その後もう少しコモンディジーズとして 使われる場合にいろいろな問題点が出てくると思うのですが、そういうのはどうなので しょうか。例えばこれは少数例ということで、ある程度オーファンドラッグ的な薬価が 付きますよね。次に比較的広範囲に使われる場合に、やはりちょっと問題になってくる のですが、それはどうなのでしょうか。 ○審議官 多分これは腎移植ということでもう薬価が付いていると思うのです。また、 それでこういうふうに心などを増やしたときに、どういう使用状況になるかということ で、多分先生も御苦労されて薬価の見直しなどをやられていると思うのですが…。 ○河村部会長 何かございますか。 ○事務局 先生の御懸念の点は多分安全性かと思うのですが、一応安全性のデータにつ きましては、腎移植の場合と大して違わないということを確認しております。 ○矢崎委員 例えばクローン病で抗TNFモノクローナル抗体のオーファンドラッグと して相当高価な値段で出ていますよね。その後、関節リウマチということで適応が出て きた場合に、やはり対象の患者数が随分違うのです。ですからそういう情報がどの程度、 本当にもう移植だけで来るとやはりそれは患者さんのためで、少し申請が高くても早く 実地に移さないといけないということはあるのです。ですからほかの臨床の、近い将来 そちらに適応が拡大するとか、何かそういう情報はやはり申請のときに付けていただい た方がいいと思いますので、よろしくお願いします。 ○河村部会長 よろしくお願いいたします。今のところ、ここは薬価については余り考 えないで、薬剤の有用性について考えるところでございますので、そちらを主体にして いくと、情報は今後入れていただくと。現在どれくらいやっているかということ…、現 状は把握しているのでしょう。先生のところにも御報告できるようなことがありました ら、御報告なさってください。 ○事務局 現在すべての動いている治験についてはまだ確認はしておりませんが、少な くともリウマチについては動いているということだけは…。 ○審議官 外国との効能・効果の差があった場合には、今どういう計画であるのか、将 来的にどうなるかといった情報も、場合によってはこの段階で取りまして伝わるように したいと思います。やはり市販後申請などがありますので、薬価の申請資料がまた別に あると思うのです。そのときにやはり経済課の方にお話されて、きちんと直近の情報も 取ることが必要かもしれません。 ○矢崎委員 それが中医協で菅谷先生や委員の方にいつも質問されるところなので、よ ろしくお願いします。  ○河村部会長 御意見ございましょうか。既に外国では非常に使われていて、向こうで 移植して帰ってきた人が困るというようなことは確かにございますので、よろしかった らこれの承認を可として薬事分科会の方へ報告という扱いにしたいと思いますが、その 前に何か事務局の方で御発言があるそうです。 ○事務局 事務局から免疫抑制剤一般の取扱いというか、本薬の取扱いについて簡単に 御説明させていただきたいと思います。実は昨年の春でございますが、シクロスポリン、 タクロリムス、それからアザチオプリンについて今回申請があった効能と同じように心 臓、肺、膵臓、小腸等について効能拡大の御審議を当部会でお願いしたところでござい ます。その結論として、承認して差し支えないということでございましたが、これらの 心臓以外の効能につきましては、国内では症例数がまだ極端に少ないということもござ います。それでまた高度先進医療にも入っていないということでございまして、それで 事務的な扱いとして、心臓以外の効能については、国内の症例がある程度集まってから 承認するという扱いにさせていただいたところでございます。本剤につきましても、同 じようにある程度国内の症例数が集まって高度先進医療になっております肝臓、それか ら心臓、肺について事務的には今回承認をということで取り扱わせていただいて、膵臓、 小腸については国内の症例数がある程度集まってくるまで、他のタクロリムス、それか らシクロスポリンと併せて国内の症例数を見ながら承認という扱いにいたしたいと考え ております。 ○河村部会長 そうすると、例えばこれは小腸移植を受けるときは最初から最後まで薬 剤も技術料も全部自費になりますが、この薬を使った場合は日本の国で認められていな い薬を使ってしまったということになって、それで何かの事故が起こった場合は厚生労 働省は関係ないと、使った医者の自己責任であるということになりかねないという点は どうなのですか。 ○事務局 一応薬事法上の承認ということで、おっしゃるとおり効能に入っていないと いうことでございますので、そういう扱いになるかと思います。 ○河村部会長 御質問、御発言ございましょうか。 ○矢崎委員 今の適応外使用の件ですが、これは今厚生労働省で検討されている医師主 導の治験の範囲にこういうものが入れば非常に使いやすい、単に個々の症例で主治医の 判断、自己責任でというよりは、ある程度そういうくくりの中で入ると大変有り難いと 思いますが、その方向で検討していただく…、今後どうなのでしょうか。薬事法が今度 改正されますが、そのときに自己責任で主治医が判断するのではなくて、医師主導型の 治験ということに入れば、大分使いやすくなるのではないかと思います。 ○河村部会長 どうぞ。 ○事務局 今御指摘の医師主導の治験につきましては、今年7月に薬事法が改正されま して、来年の7月まで1年以内に施行するということになっておりますので、現在施行 に向けて検討中でございます。医師主導の治験といいますのは、あくまでも臨床試験を 計画される医師又はその医療機関の方で責任を持っていただくということになりますの で、その範囲で治験として取り扱うという制度でございます。 ○河村部会長 一応薬剤としては、小腸についても膵についてもいいであろうというこ とをここでお認めいただいたことが記録に残るから、それを自己責任で使う場合におい てもある程度、公式ではないけれどもみんなが有用性があると認めた薬であるというこ とは記録には残りますが、何かちょっと惜しいような気がすること。それとどうせこれ はその後血液の方、骨髄移植に出てくるでしょうし、そうしたら私は臓器移植に使う薬 だとしてくれた方が何でも使えていいのではないかというと、そうはいかないのだそう でございます。それで今のような御発言になったわけでございますが、そうすると今の ところ心臓、肝臓、肺にかかわる効能ということになって、膵臓と小腸については部会 としては承認して差し支えないということにするけれども、実際の承認については先ほ ど御説明のありました国内の症例の収集状況を見て、適当な時期に事務局にお任せする という扱いでよろしゅうございますか。どうぞ。 ○審査管理課長 平成11年からですけれども、承認審査の内容につきましては企業の申 請概要と同様に公開することになっております。本件のような特殊なケースで、有用性 が評価できるもののタイミングを見て、技術との関係でそこが裏打ちされたところで同 時に使っていただくと。これは医療現場の混乱を防ぐということでやっております。な お、今回御議論いただいた部分で、最終的に承認取得に至らない幾つかの効能につきま しては、実はこの薬事審議会で審査した内容は結論が得られています。結論が得られて いないというのは、承認取得という意味で結論が得られていませんので、その審査概要 についてもマスキングしてその情報は外には出さないということでございますので、一 般の方、現場においてはそこの部分の効能についての最終評価というのは、情報は一応 閉ざされています。  一方、医師主導の治験でこういったものをお使いになるということに関しましては、 医師主導の治験のリクワイメントを満たした形で医療施設において実施されることにつ いては医師の責任で、問題なく実施が可能であろうと考えております。 ○河村部会長 何か少々わだかまりがあるけれども、そういうことだそうでございます。 肝臓と心臓、肺も含めて一応ここで御承認いただいたということにしようかと思います が、よろしゅうございますか。では薬事分科会の方へは御報告ということでございます。  議題4でございます。レナジェル、レナジェル錠、フォスブロック錠だそうです。御 説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは引き続きまして、議題4、資料4、医薬品レナジェルの輸入承認の 可否、医薬品レナジェル錠250mg及びフォスブロック錠250mgの製造承認の可否等につ いて、審査センターより御説明申し上げます。 本剤の有効成分塩酸セベラマーは、米国ジェルテックス社において合成されたリン酸吸 着作用を有するポリカチオン性ポリマーであり、消化管内で食物から遊離したリン酸イ オンと結合し、吸収されることなくそのまま糞便中に排泄され、リン酸の体内への吸収 を抑制することにより、透析中の慢性腎不全患者における高リン血症を改善するとされ ております。既承認の同効薬としては沈降炭酸カルシウム剤がございますが、本剤はこ の沈降炭酸カルシウム剤と比較して血清カルシウム値を上昇させない利点があるとされ ております。なお、本剤は海外では1998年に米国で承認されたのを初めとして、現在の ところ26か国において承認を取得しております。 本剤の専門協議では、本日の配付資料8の4ページに示しますように、小嶋委員、堺委 員、重松委員、仙波委員、林委員、山手委員、吉村委員を専門委員として指名いたしま した。  本剤の規格及び試験方法、安定性、毒性、薬理、吸収・分布・代謝・排泄に関して提 出された資料の内容には大きな問題はございませんでしたので、臨床試験について述べ させていただきます。有効性に関しましては、高リン血症を有する透析中の慢性腎不全 患者230例を対象に、沈降炭酸カルシウム錠を対照とした無作為化非盲験第III相試験が 実施されており、申請用法・用量にて8週間投与後の血清リン濃度については本薬群で 5.62mg/dL、沈降炭酸カルシウム群で5.59mg/dLであり、血清リン濃度の低下作用におい て非劣性が示され、血清カルシウム濃度については本薬群で9.13mg/dLであり、沈降炭 酸カルシウム群での9.65mg/dLと比べて有意に低く、本剤の優越性が示されました。ま た、高リン血症を有する腹膜透析患者36例を対象とした一般臨床試験におきましても、 申請用法・用量にて8週間投与後同様な効果が確認されました。  さらに、高リン血症を有する透析中の慢性腎不全患者157例を対象とした長期投与試 験において、申請用法・用量にて48週間まで目標血清リン濃度4以上6mg/dL未満が維 持されることが示され、48週の累積目標血清リン濃度達成率は94.4%でありました。以 上の結果より、本剤の透析中の慢性腎不全患者における高リン血症に対する有効性は認 められると判断いたしました。  次に安全性に関してですが、沈降炭酸カルシウム錠を対照とした無作為化非盲験第III 相試験において、副作用発現率は本薬群で60.9%であり、沈降炭酸カルシウム群での 40.0%と比較して有意に高く、主なものは便秘及び便秘の増悪、腹部膨満、上腹部痛等 の消化器症状でありました。重篤な副作用としましては、長期投与試験で発現した吐血 1例のみであり、この症例に関しては十二指腸潰瘍に本剤が物理的な刺激を与えた可能 性が推定されております。以上より、副作用に関しては頻度は沈降炭酸カルシウム錠よ り多いものの、本剤の減量又は中止を考慮する必要のある一部の症例を除いては薬物療 法で対処可能であり、便秘等の症状に注意し投与することで、本剤の安全性は確保され ると判断いたしました。 以上のとおり、審査センターでの審査の結果、本剤の透析中の慢性腎不全患者におけ る高リン血症に対する有用性は認められたことから、承認して差し支えないと判断し、 医薬品第一部会で審議することが妥当と判断いたしました。なお、本剤は再審査期間6 年、原薬及び製剤は毒薬、劇薬いずれにも該当しないと判断しており、薬事分科会には 報告を予定しております。御審議のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのとおり、腎不全、慢性腎不全の患者 に対する高リン血症の吸着剤に属するものだと思いますが、御意見、御発言ございます か。 ○堺委員 専門委員の一人でもございましたので、そのときに指摘させていただいたこ の添付文書に注意書きを付け加えていただいたのです。と申しますのは、カルシウムが 低下する可能性がありまして、外国ではそういう例もあるようですが、それが遷延して 二次性甲状腺機能亢進症の悪化を招くおそれもあるということを申し上げました。それ を踏まえて、添付文書の「重要な基本的注意」で「(3)本剤の使用に当たっては、定期 的に血清リン及び血清カルシウム濃度を測定すること。低カルシウム血症の発現あるい は発現のおそれがある場合にはビタミンD製剤やカルシウム製剤の投与を考慮するこ と」。加えさせていただいて、これでよろしいとは思うのですが、一般に定期的に検査 せよというときに、何か慣例というか、どのくらいの頻度でやるのが定期的なのだとい うことは何かあるものでしょうか。「定期的」と書いておけばこれでいいではないかと いう気がしてしまうのですが、注意をされた方としてはではどのくらいなのかと思うか もしれません。今までのこういう慣例で定期的というのは、もちろん薬によっていろい ろ違いますが、幾ら何でも5年に1回ではまずいとか、1年に1回ならいいとか1か月 に1回はやらないといけませんとか、何かそういう慣例というか、文章には規定がない けれども、およその共通理解というのはあるのでしょうか。 ○河村部会長 透析の患者はそれはきちんとやっているでしょうけれども、「定期的」 というのはお役所言葉では…。 ○審議官 この申請データ上ではどういう頻度で試験されているか…。 ○事務局 事務局の方から御説明させていただきます。本剤の第III相試験におきまして は、用量調節を2週間おきに行うこととされておりまして、測定は実際は1週間に一度 になっております。その治験の行われたプロトコルにおきましては、最初の8週間は2 週間ごとに測定して用量調節を行うと。それ以降は、1〜4週間の幅を持たせて個々の 患者に応じて測定して用量調節を行うとされております。 ○審議官 そういうデータを出して、後はドクターがというところでしょうか。 ○堺委員 やはり添付文書が余り分厚くなってもどうかと思うのですが、何かそういう ものが読み取れるようなデータが付くことが望ましいかなと思いまして、今発言させて いただきました。 ○河村部会長 慢性腎不全の患者ですから、少なくとも2週に1回はどうせ取っている だろうとは思いますが、例えばツモールのマーカーなどでしたら3年に1回でいいとい うのもありますし、定期的に3年に1回という…。 ○堺委員 薬によって違いますので、このくらいが妥当だということは判断できるよう なデータが添付されているとよろしいかと思います。 ○河村部会長 ある程度のことは指標として載せられるのですか。 ○事務局 この点につきましては、その辺の情報を医療現場に適正に伝えるように申請 者の方に指導したいと思います。 ○河村部会長 いえ、先生のおっしゃっているのは、添付文書に載せてしまった方がよ くないかということでしょう。 ○事務局 事務局から補足させていただきます。今までの添付文書にも、先生が御指摘 のように「定期的」というのがよくございました。それでこれまでの部会でも非常に分 かりにくいのではないかという御指摘等がございました。例えばそのときに、別の品目 ではありますが、添付文書以外に医療機関向けの情報提供という手段もございますので、 そういうところに例えば2週間おきとか1か月おきということで情報提供させた例もご ざいますので、この品目についてそういう形が適当かどうかということも含めまして、 検討させていただきたいと思います。 ○河村部会長 よろしゅうございますか。ほかには…。これは堺先生に伺いたいのです が、最高量9gに決まったのはどういうわけですか。 ○堺委員 これは第III相試験で決まったのです。 ○河村部会長 試験が行われていないから…、何か第III相のbという方は、外国で27 とかすごい量を上げてやったのもありますが。 ○事務局 事務局より御説明させていただきます。9gの設定根拠につきましては、第 III相試験で最高用量9gとして実際に治験を行って特に問題がなかったということで、 申請用法におきましても9gとなっております。 ○河村部会長 ケイキサレートなどというのは、効かないと分量をどんどん上げますよ ね。それと同じような使い方をなさるかどうか…。 ○事務局 海外におきましては用量制限がございませんで、海外の治験においては最大 15.4gを投与した症例がございます。また、海外で行われている治験につきましては、 重篤な副作用は出ていないということでございます。 ○堺委員 アルミニウムが使えなくなってしまったものですからこういうものが出てき たわけで、実際には見ながら使うと思います。下がっていかないときには…。 ○河村部会長 証拠がないからということで9gになっているのだろうと思いますが、 ほかに御発言ございましょうか。承認可として、薬事分科会の方へ上げさせていただき ます。どうもありがとうございました。  その次は希少疾病用医薬品ボセンタンだそうです。ボセンタンを希少疾病用医薬品と して指定することの可否について、事務局の方からお願いします。 ○事務局 それでは御説明させていただきます。希少疾病用医薬品の指定につきまして、 資料5を用いて御説明させていただきます。今回、指定の申請がなされているものはア クテリオンファーマ シューティカルズ ジャパン株式会社のボセンタンでございます。 予定されております効能・効果は、肺動脈性高血圧症であります。肺動脈性高血圧症は、 肺血管抵抗が上昇しそれにより平均肺動脈圧が異常に高い上昇を来す疾患でございま す。大別して「原発性肺高血圧症」と「特定の疾患に伴う肺高血圧症」の二つに分類さ れております。  原発性肺高血圧症は特定疾患に指定されておりまして、平成13年度における受給者数 は544件でございます。また、文献等から推定される「特定の疾患に伴う肺高血圧症」 の患者を合わせますと、肺動脈性肺高血圧症の患者数は全体で約6,000人程度と推定さ れております。したがって、希少疾病用医薬品の要件である5万人以下を満たすものと 考えられます。  肺動脈性肺高血圧症は極めて予後不良の疾病であり、現時点においては心肺又は肺移 植以外に根治的な治療法がございません。現在までに原発性肺高血圧症については、プ ロスタサイクリン製剤が承認されておりますが、有効でない症例もあり、また「特定の 疾患に伴う肺高血圧症」に対する効能で承認されている薬剤はございません。  以上のように、対象疾病が重篤であると認められること、現時点で有効な薬剤がない ことから、医療上の必要性はあるものと認められます。また、肺動脈性肺高血圧症には、 多種類の疾患に伴う肺高血圧症が含まれますが、治療面においても同様に扱うことがで きると考えられております。肺動脈性肺高血圧症のうち、原発性肺高血圧症と膠原病に 伴う肺高血圧症を対象にした海外での臨床試験において、本剤により運動耐容能の改善 が示されております。また米国及び欧州では、肺動脈性高血圧症の治療として昨年及び 本年にオーファンドラッグの指定を得て承認されております。現在、国内においてもこ れらの臨床試験が実施されているところでございます。したがって、本剤の開発の可能 性はあるものと考えております。それでは本剤をオーファンドラッグに指定する件につ きまして、御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○河村部会長 ありがとうございました。これを希少疾病用医薬品としてここで御承認 いただけるかどうかという問いかけだそうでございますが、この薬剤についての御意見、 御質問ございましょうか。重篤な疾患に対する薬ですので、認めてよろしゅうございま すか。では薬事分科会の方へ報告ということにさせていただきます。  次は報告事項だそうでございます。センターの方からよろしくお願いします。 ○事務局 医療用医薬品の再審査結果について報告いたします。資料としては、資料6-1 の「アクタリット(原体)」、「オークル(原体)」、「モーバー錠100mg」、「オークル 錠100mg」から、資料6-13の「塩酸エピナスチン(原体)」、「アレジオン錠10」、「ア レジオン錠20」まで、合計13成分の再審査報告書でございます。これらの品目につき ましては、市販後の使用成績調査・特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、 それぞれ審査の結果、いずれの品目についても薬事法第14条第2項各号(承認拒否事由) のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について は変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものであります。これらの結果につき ましては、近く各々通知する予定といたしております。 ○河村部会長 再審査したけれども、すべてカテゴリー1で特に問題なかろうというこ とでございますが、御質問ございましょうか。ではこれは報告事項でございますので、 皆様に御確認いただいたという扱いにさせていただきます。どうもありがとうございま した。ほかに事務局の方から御通知ございますか。 ○事務局 事務局から新薬の承認の関係について御報告させていただきます。7月5日 及び8月30日の当部会において御審議いただきました、リゾビスト等6成分11品目に つきましては、10月8日付けで承認させていただきましたので、御報告させていただき ます。 ○河村部会長 ありがとうございました。次回の開催日その他をお願いします。 ○事務局 次回の開催日につきましては、決まりましたら後日御連絡いたします。 ○河村部会長 年内はとにかくこれで終わりのようです。どうも御苦労様でございまし た。皆様、良いお年をお迎えください。                       ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -