02/12/06 第12回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第12回労働政策審議会雇用均等分科会 1 日時 平成14年12月6日(金)13:00〜17:00 2 場所 共用第7会議室(5階) 3 出席者    労側委員:秋元委員、片岡委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:前田委員、志村委員、遠藤委員、山崎委員    公益委員:若菜会長、渥美委員、奥山委員、樋口委員、今田委員、    佐藤(博)委員 ○分科会長  定刻になりましたので、ただいまから第12回労働政策審議会雇用均等分科会を開催い たします。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本日の欠席は 岡本委員と吉川委員の2名です。  それでは議事に入ります。本日の議題は前回に引き続いて、今後のパートタイム労働 対策についてです。前回は労使から具体的な御意見を述べていただいたので、これを基 に事務局から労使の意見として整理していただいて、本日の資料として用意をしていた だいています。今日はこれに沿って議論を進めたいと思います。また、時間が限られて いますので、すでにここに書いてある意見については重複を避けていただいて、ここに 書かれている以外の意見、あるいは労使への御質問、御意見、それに対する回答という ことを中心に、本日の議論を進めていただきたいということをお願いしておきます。そ れでは議論を整理するという意味もあって、各論点に沿って、労使からの具体的な御意 見を中心に、先ほどのようなやり方で進めたいと思います。  まず並んでいる順にやっていくので、1番目の「ルールの必要性」について、ここに 書かれている以外の御意見、御質問等があればお願いいたします。 ○労側委員  ルールの必要性の使用者側の意見のところの、いちばん上に書かれている内容につい て質問させていただきます。1つは、「パートの雇用管理改善が必要」と御意見を述べ られているのですが、ここでいうパートの雇用管理の改善について、この中身がどうい うことを指しているのかを教えていただきたいと思います。  それから、必要だとおっしゃっているのですが、それを必要とすることを実行するに は、「ルール化ではなく」とあるのですが、具体的な対策が必要だと思いますが、その 具体策についてどうお考えなのかについて教えていただきたいと思います。  もう1つは、「現行法を理解して実行することが必要」とあるのですが、これができ ていないという上に立って御発言されたと思うのですが、この現行法を理解して実行で きていない原因をどうとらえているのか、その点について質問させていただきたいと思 います。 ○使側委員  まず1つ目の御質問で、雇用管理の改善が必要だというところなのですが、前回の審 議会の場でも発言しましたように、パートタイム労働者と使用者との間で雇用契約がし っかりと結ばれていて、お互いが納得して確認しているかどうかということです。こう した点について、必ずしも十分でない面があるのではないかということです。その辺を 出発点としていくことが必要だと申し上げました。その辺のことを指しているというこ とです。  したがって、パートタイム労働法の中で、そういったことをしっかり努力義務として やっていくということが求められていて、その辺を事業主側として理解、実行していく ことが必要だということで、改めてルール化ということを求める必要もないのではない かということを言ったつもりです。 ○労側委員  2番目のこととも関係するのですが、個別の労使で労働契約締結時に契約内容を確認 することが重要ということはいま発言されたことと重なると思うのですが、それをする ことは当たり前のことだと思うのです。その当たり前のことをあえておっしゃるという ことも非常に残念なことだと思いますし、この間意見が寄せられたペーパーを資料とし て出させていただいたのですが、その中にも書面による労働条件の通知がないという事 例も紹介されています。労働条件の書面明示も当然のことですし、労働契約の内容を確 認することは、されなければいけないことだと思うのですが、それをあえてやることと ご理解されていることについては、とても残念というか、私どもはそれはあって当たり 前と理解しているのですが、その点はいかがでしょうか。 ○使側委員  一部不適切な雇用管理をしている企業、事業主がいることはあると思います。その辺 のことについて、現行法をよく理解し、実行することをより徹底することがまず必要だ と考えているところです。 ○労側委員  必要性について2つほど申し上げます。パートや派遣などの雇用形態が多様化してい る、非典型雇用者の割合が高まっているということで、それに対応する意味でもきちん とした均等待遇原則のルールが必要だというのが1点です。  2つ目に、ここ2〜3日の新聞報道等を見ると、研究会報告も雇用の多様化という観 点で、派遣労働者の派遣契約の規制緩和、契約期間の延長、裁量労働制の拡大というこ とが必要だと研究会は言っています。もう1つは、そういうことと同時に新しいルール の確立がセットということを言っているのですが、次の通常国会に基準法の改正、労働 者派遣法の改正はもう日程に上って、そのための建議がなされようとしています。  一方、私どもはそれに対して反対をしているのですが、セットだという均等待遇ルー ルについてまだ明確でないという意味で、むしろセットである以上、均等待遇ルールの 確立は急がなければならないという意味で考えているので、そういうことをきちんと私 どもの意見として入れていただきたいと思います。 ○分科会長  他にいまの論点1について、公益の委員の方から何か御質問はありますか。 ○労側委員  ルールの必要性の項目で、使用者側の意見として整理をされていることの質問、見解 を1点お聞きします。職種別のデータを見ると格差拡大は見受けられない。むしろ労働 力需給は逼迫しているということで、改善という意見を書かれていますが、第10回の際 に資料で出していただいた職種別、勤続年数別、一般労働者とパートタイム労働者の賃 金格差にかかわる資料がありますが、この内容を改めて見た場合でも、少なくとも勤続 年数の長くなる状況の中では格差が開いているということや、平成8年と平成13年では 格差が拡大しているという結果が明らかになっています。それが調査からも見て取れま す。そういう意味でも、格差の拡大が見受けられないということについて、一体どこを 指されておっしゃっているのか、理解ができないという意味で、もう1度改めてこの御 意見についてお聞きしたいと思います。  また、前回分科会に寄せられた大変多くの意見をまとめたものをいただいたわけです が、やはり率直な声の中に、「同じ仕事をしているのに何で賃金がこれほど違うのか」 という多くの意見がありました。こういう声を受け止めるという意味からも、格差の拡 大状況に対する経営側の意見、認識を改めてお聞きしたいと思います。  また、パートで働く人の賃金が実態の中では、これも分科会に寄せられた意見を拝見 したわけですが、最低賃金に張り付いていて、一方で正社員の職も得られず二重三重の 掛け持ちパートをするしかないという実態なども紹介されています。1,800時間働いて得 られる賃金よりも生活保護の支給額とか、月22万と聞いている自己破産で認められる最 低限の生活費、こういった額からも非常に遠い実態を訴える声、こういった内容を含め て、格差拡大の認識について改めて伺いたいと思います。 ○使側委員  すべてがすべて格差拡大がないとは言い切れないところは、データ上は確かにあると 思います。ただ、中には例の一部にあったように、格差が逆に縮まっているという例も あるわけで、その辺は労働市場の動向、需給逼迫の動向等によって状況が違ってきてい るのではないか、その辺のことも斟酌しないと、このデータの正確な理解にはならない と私としては考えているところです。  勤続年数別の見方については、特に一般の方の取扱いがどのようになっているかを別 途のデータ等を見ながら解釈しないと難しいところがあると思います。つまり、例えば 配転等によって能力向上があったという場合も含めて「一般」といっていた場合に、そ の辺のことも加味して、一般の方の賃金水準等が決められていたとしたら、差が出てく る可能性はあるのではないかと思うのです。その辺はデータ上は明らかになるわけでは ないですね。 ○労側委員  次のルールの内容とも絡んでくるのですが、いずれにせよ労働力の需給関係で見ると いうことは、売り手と買い手の市場情勢で賃金は決まるということで、それは否定はし ませんが、ここで私どもが議論しているのはルールの話なのです。正社員と言われてい る方々と、パートとの処遇の決め方の要素に問題はないのかが、格差を生み出している 要因という認識を考えて議論していかないと、売り手市場が高まれば上がります、弱ま れば下がりますということではなくて、安定的なネットをどうするかという意味では、 公平性、まさに均等だと思うのです。そういうものの考え方をここで整理しましょうと いうのが議論なので、その認識が違うと議論にならないものですから、この辺は大事だ という認識なのです。 ○公益委員  いまのことにも少し関係してなのですが、このデータですが、1つは統計上出したの は、企業を超えていろいろな企業や産業のものが入って、平均を比較したものです。我 々がここで議論するのは、同じ企業の中で働いているフルタイマーとパートタイマーで 、それも同じ仕事に就いている人たちが公正な処遇になっているかどうかなのです。こ のデータは非常に大事なのですが、我々が議論をする内容に直接それに基づいて議論で きるようなデータではありません。我々が議論するのは、あくまで同じ企業の中で働い ていて、かつ同じ仕事をしているパートタイマーとフルタイマーなのです。これはそう いう同じ企業ではないのです。日本の社会全体を比較しているものです。  もう1つは、ここで8割ぐらいの格差があっても合理的な格差ならいいのです。同じ 企業内で同じ仕事に就いていて、いま水準の違いがあると。例えば仕事内容ではなくて 、能力とか、成果で見ての賃金体系で、一定の水準の格差がある。これは合理的な格差 なのです。ですから、ここだけの差があるかないかというだけで、我々がここで議論を する公正なルールが導入されているかどうかは判断できません。  他の資料を見ると、同じ企業の中で同じ仕事に就いている、フルとパートの処遇とい う点でいうと、実はここで議論をする公正な処遇が行われていないケースが結構あると いうデータが得られるのではないかということです。 ○分科会長  いまの点についてどうですか、どなたでも使用者側の委員。いまの公益委員のポイン トはそこだと絞られて、それを踏まえての意見はありますか。 ○使側委員  データがないのでよくわからないのですが、確かにここに前々回に示されたデータは 企業横断的に見た平均値のデータだというのは私も理解をしているところです。企業内 で格差が広がっているかどうかについて、パート研の報告の中でお出しになられている ということでしょうか。 ○公益委員  1つはものさし研のときの調査も含めて、企業内でどのくらい格差があるか、納得で きるかどうか、実態としてどうかというデータは載せています。ものさし研のほうには 載っていたと思います。もちろん納得している人もいるわけですが、そうでない人が半 分くらいいます。それは同じ企業内の同じ仕事をしている人のフルタイマーとパートの 比較のデータです。 ○使側委員  企業横断的なデータを平均値で取ったときにこういう状況だというのは、前々回の資 料だと思うのです。仮にこの企業属性などを統一したとしたら、もっと格差が縮まる可 能性はデータ上はないのでしょうか。 ○公益委員  合理的な格差であるかどうかが問題なのです。極端なことを言えば、格差が4割あっ ても、合理的な賃金形態で決めていればいいのではないかというのが、私の考えなので す。そうしないと、使側委員のところは同じ賃金水準になるのが望ましいという議論に なりますが、後ろの主張と違うと思います。仕事や成果で賃金水準が違うというのが望 ましいというのが、経営側の主張だったと思うのです。これは職種や、いろいろコント ロールしたら同じ賃金水準になるということが望ましいと経営側が主張されるのであれ ば、そうなると思います。 ○使側委員  前提となる認識のところの議論ですので、平均値で取るかどうかという問題はあるの でしょうけれども、こうした格差というような状況であれば、実態としてこういうよう な状況であれば、ルール化についてこれ以上進める必要性はないのではないかというの が、私の基本的な認識です。 ○事務局  ものさし研のときのデータというのは、10月9日の資料1の14頁で、事業所に関して のものですが、社員との処遇の格差を縮める必要性をどういうふうに企業が認識してい るかというようなことで、データとして出させていただいております。 ○公益委員  前回から賃金格差の問題が出てきたときに、中小企業の話を中心に議論が出てきたと 思うのです。問題は賃金格差がどこで大きいのかということを見ると、中小企業よりも むしろ大企業のほうが、一般労働者とパートタイマーの賃金格差は平均で見る限りにお いては大きいということがありました。必ずしも中小企業の問題ではないということは 、私は言えるのではないかと考えています。その点、どういうふうにお考えなのか御意 見をいただきたいと思います。 ○使側委員  社会の状況を無視した話は意味がないのです。私は現在の日本の経済の状況は、大変 な問題だと思うのです。中小企業にとっては存続できるかできないかの問題です。公平 とか、公正という問題は、自分たちがちゃんと利益をあげて、まあ普通の経営状態にあ るときには、おそらくそれを第一に考えると思います。  いま現実の問題として、例えば従業員の賞与をカットするとか、給与をカットする場 合、まず社長が3年前から最初に自分の月給を半分に落とします。それから、その次の 1年には管理職が手当をカットされます。それで最終段階で従業員に「どうぞ、ひとつ お願いします」ということで、協力するということでやるのです。これが普通の経営で す。経営者はみんなそう考えるのは当たり前です。  そうでない企業は存続していきません。これから少子化です。2007年からどんどん人 口が減っていくのです。そのような身勝手なことをしている企業に誰が就職しますか。 いまの状況というのは、就職先がないからやむを得ずという形で辛抱しているというの が多いのです。これから新たにパートタイマーで雇うという人も、賃金をカットされて いる会社に入る場合に文句なんか言えません。そういう社会の環境にあるということを 頭に入れながら、何十年先にわたっても影響を与える法律の改正というのは、もっと慎 重であるべきだと私は考えています。  これから1年後、2年後、例えば日本の経済がよくなってきたときにガラッと変わり ます。労働者がいないのです。企業が求めても、給料が安いからいかないという状態に 必ずなるのです。そういう社会状態のときにこの議論をしたら、また違った話になるの ではないかと思います。だから私はあまり短兵急にこの話を詰めていく必要はないと思 っています。  基本的に中小企業というのは、中国という40分の1の月給のところと競争していくの です。その中で一体何を目安にその仕事をしていくかというと、個々の人間の感性とか 、そういうものを求めて、それによって得られるいろいろな成果を商いしていくという ことになっていかざるを得ないのです。市場経済に基づいた賃金格差による競争という のは不可能です。みんな潰されます。そういうような状況の中で、いまいろいろなこと が起こっているということで、いままでの右肩上がりの天からお金が降ってくるような 関係の中で議論をしたらとんでもないことになると思います。 ○公益委員  中小企業の実態は私も理解しているつもりなのですが、その一方で先ほど申し上げた のは、大企業において格差が大きいという問題は、これは雇用契約は多分大企業はちゃ んとやっているのではないかと思いますし、あるいは雇用管理の改善についてもいろい ろ努力している。それにもかかわらず賃金体系が、パートタイマーと一般労働者の間で 最初から違っています。  パート労働者のほうはどちらかというと市場賃金で決めるというやり方をしているの に対して、フルタイマーのほうはそうではない、その企業固有の賃金の決め方をしてい ます。こういう二重性が片方であるということに1つ原因があるのではないかと思って いるのです。その点についてどう考えたらいいのか。いまここで議論をしているのは、 賃金水準の問題と同時に、賃金の決め方についての二重性について議論をするというよ うな話でしたので、その点についてどう考えていらっしゃるでしょうか。 ○労側委員  ルールの必要性のことで質問があるのですが、いちばん最後の使用者側の資料の中で 書かれている「ルール化は労働市場に歪みをもたらす」とあるのですが、労働市場に歪 みをもたらす具体的な内容についてどうお考えなのかお聞かせいただきたいと思います 。いま労働市場に歪みがあるからこそルール化が必要だということで、いまここで議論 をしていると私は理解しているのですが、逆の形でここではおっしゃっているのではな いかと思いますので、この具体的な内容についてお聞かせ願いたいと思います。 ○使側委員  1つの例が、いわゆる職務分離などが起きる可能性があるのではないかと懸念される ということです。 ○分科会長  次に進めます。2のルールの内容の(1)です。この部分について御意見、御質問が あればお願いいたします。  先ほど公益委員から、特に大企業の決め方についての御質問がありましたから、その 辺との関連で使用者側のほうから何か御意見はありますか。  大企業について、特にこの均衡について問題があるのではないか、というご指摘があ りました。それの関連で補充のご質問をお願いします。 ○使側委員  公益委員の御質問の内容が、例えば職種を同じにしても差があるという御質問の趣旨 ですか。 ○公益委員  いや、私の質問の趣旨はそうではありません。平均値で見たときにかなり大きな違い があるというのがまず1つです。その上で、パートは単純労働、フルタイマーについて は専門的なものという分離が大企業では進んでいるのではないかというような、その点 について賃金の決め方についてはある程度整合性をもったような決め方がなされていく し、特に短時間正社員の議論が出てきているわけですから、中間的な働き方というもの を増やしていこうという考え方が大企業にあるのではないかと思っているのです。そう いった点についてどうお考えでしょうかということです。 ○使側委員  平均値で見るときは大変難しい要素がいろいろ入ってくるのではないかと思うのです 。 ○公益委員  賃金水準だけではなくて賃金の決め方自身の問題として、それが違っているだろうと 思うのです。中小企業の場合はわりと似たようなところがあるように思うのです。 ○使側委員  平均的なことが話せるかどうかわからないのですが、やはりフルタイム労働者とパー トタイム労働者との間では、公益委員がおっしゃるように仕事の内容がかなり大きく違 っているということで、それに基づいて処遇の決定方式をそれぞれのほうで決めている と思われます。しかも勤続年数の差があるということで、大きな差が出てきてしまって いるのではないかと思うのです。この辺は実態をお聞きしたほうがいいのかもしれませ ん。 ○公益委員  いまのところはテーマそのものと思われる、とても重要な点なのでもう1度確認した いのですが、旧来のパートタイムの人は単純労働、フルタイムは基幹で、だから違った 賃金体系は合理的なのだと、そういう1つのフレームワークがあったと思います。この 研究会でもそうですが、出発点は、そういう分業が崩れてきている、実態として働いて いるパートの人たちの多くが、基幹的、専門的な職務に就いているのだと。それは中小 企業だけではなくて、大企業においてもそれが進んでいるし、それは同時に企業もそう いう雇用管理の方向に進んでいるのだと。これは我々がやったいろいろな調査で、そう いう点については確かめられているわけです。そういう現状で、いまの公益委員の質問 になろうかと思うのです。  同じような仕事をしているパートとフルがいる。そういう状況で、これまでと同じよ うな、違った賃金の決め方をすることについて、使用者側はどう考えていらっしゃるの かという質問になろうかと思うのです。いかがでしょうか。 ○使側委員  大企業かどうかわかりませんが、多分いまいろいろな雇用管理がパートタイマーに対 してある程度進んでいるというのは、新聞等で見れば、流通などが進んでいるのではな いかと思います。そういう業種というのは、実にパートタイマーも基幹的な要員だとい う自覚が非常に進んでいる業界なのだろうと思います。日本全体というふうに言えば、 仕事に見合ったというこの報告書の方向は、私は正しいのだと思いますが、ルールの必 要性というときに、いま現実に国で何がしかの足枷をかけてしまうことについて、どう なのかという視点もあるのだろうと思います。  多分いろいろな小売業界がやっているような例を見ながら、他の業種もそういう勉強 をきっといましているところなのだろうと思いますし、正社員の人たちの処遇について も、いわゆる年功というものから職務を見ようという方向に、各社いま必死になって換 えていこうとしているような部分もあるのだと思います。究極的にはパートタイマーの 同一職務同一処遇ということが達成されるには、やはり職務に対して賃金が払われると いうふうにならないと、究極の形ではなかなか難しいのだと思いますが、そこに近付け たいということだろうと思います。フルタイマーのほうでも同じ職務で同じ処遇という のが、日本の中ではそれほどきっちり固まっているわけではないということからします と、パートタイマーの中で同じような仕事をしていても、フルタイマーと違う処遇をし ているという現実があるということは、これはやはり現実なのだと思うのです。それを 放置していていいとは思いませんが、急にそういうことをルールでやると混乱があると いうのがあるのではないかと思います。確かに何年か前のパートタイマーの方々の意欲 というか、就職の志望動機が変わってきていることは確かだと思いますが、それに追い つく経営者の速度に若干の差があるということなのではないかと思います。 ○使側委員  仕事の内容が入口から違うのではなくて、同じ仕事をしている場合であれば、フルと パートだからといって分けること自体は、やはり改善すべきことがあると思います。む しろ私は大企業はそのようなことは率先してやっているのではないかと思っていて、む しろそのデータを上げているのは中小企業なのではないかと思っていたのです。  中小企業の関係は公益委員がおっしゃるように、そこの違いはなかなかということで すが、かえって中小企業のほうは数字も小さいものしか出てこないと思うのですが、私 は中小企業のいろいろな入口の違いのデータを上げていたのではないかという認識をし ていたのです。大企業であればそれは結構なことなのですが。 ○公益委員  使側委員のおっしゃることはよくわかります。パートとフルでも、同じ仕事をしても 日本のいろいろなこれまでの企業の雇用慣行から、なかなかそれを同じというふうには 難しいという、そういう認識はかなり多くに受け入れられている現状だと思うのです。 ここで示したルールというのは、まさにそうした日本的な働き方の仕組みを前提にして 、将来的に職務給になるかはわかりませんが、現状を前提にして、それでもそういうパ ートとフルの間の均衡を図るためには、どのような仕組みがいいのかということで提示 されたルールなのです。  上からバサッとかけたルール化とおっしゃいますが、このルールの中身を細かく検討 していけばわかることだと思いますが、ある意味では非常に大まかなルールというもの なのです。使側委員がご心配されているような、それぞれの企業の中の特殊な事情があ るでしょうけれども、そういうものを考慮しながら、それを完璧に無視するという、絶 対に職務給にならなければできないというものではなくて、現状の企業のルールを前提 にした上で、それでなおかつ均等なルールを図るためには、こういうものの考え方、こ ういう整理の仕方をすれば、いろいろ悩んでおられる事業主の方も、そうした均衡処遇 に近付けるルールをそれぞれの企業の中で作り上げていけるのではないでしょうかとい う、そういうルールだと思うのです。  ある意味では、これから後で企業の中身の検討に入ったら明らかになると思いますが 、同一職務についても何かいろいろ規定して、均等処遇方式を異にする合理的な理由も あるかもしれないけれども、こういう場合はあるのだとエクスキューズし、さらに処遇 決定方式を合わせればいいのです。レベルを合わせなくても方式を合わせればいいのだ という、そういう日本的な雇用ルールのいろいろな特性を考慮した上で、企業が導入で きるのではないかというような中身のルールなのです。ここで示しているルールという のは、何か同じ職務なのだから同じ賃金にしろというような大まかなルールでは必ずし もないわけです。同じようにする、均衡を図る上で実現するために、こういうルールを 用いれば、それに限りなく近いような形が実現する場合もあるし、かなり離れる場合も あるけれども、そういう現状を前提とした場合にはこのルールがいいのではないかとい うような、そういうルールの中身なので、中身の細かい、実際に企業の中でどうかかわ るかということを抜きにして、全体的なルールがガサッとかけられるから、それは日本 のいまの状況から言えば時期尚早だというような、そういうとらえ方をされるというの はあまり生産的ではないのではないか、というのを使用者側委員の方にお考えいただき たいと思います。 ○公益委員  労使の方で多少誤解があるかと思っているのは、1つはパート研報告で出ている、パ ートタイマーは基幹労働化して従来の正社員と同じ仕事に就いている人たちが出てきて いる、だけど賃金の決め方が違う、これが問題ではないかというのが出発点です。では フルタイマーとパートタイマーで同じ仕事をしていた人がいます。これはどうしたらい いのかといったときに、賃金の水準とか、賃金の決定要素については何も議論をしてい ないです。賃金水準を合わせるとか、決定要素として職務で決めなければいけないとは 一言も書いていません。同一処遇方式というのは同じ賃金決定要素で評価し、賃金につ いては賃金水準を決めてくださいということです。ですから、ある企業は職能給プラス 職務給で決めてもいいのです。ある企業は仕事プラス勤続で決めてもいいのです。いま 法律上決めてはいけないのは性別です。あとは基準法で社会的身分です。それ以外につ いて合理的な要素で入れて、賃金を決めていいのです。  水準についても支払い能力がありますから、その支払いの中で賃金水準を決めればい いのです。賃金水準と賃金の決め方の要素について、これを入れてくださいということ は一切書いていません。ですから、同じ仕事であれば同じ処遇決定方式を適用してくだ さいと言っているだけです。  ただし、同じ仕事でも同じ処遇決定方式を適用しなくてもいい合理的な理由があるの です。ここで言っている合理的理由というのは、異なる処遇決定方式を適用する場合に 合理的理由は何かという議論をしているのです。賃金決定要素に入れていい合理的要素 という議論ではないのです。賃金決定方式を異にする合理的理由が何か、そこをキャリ ア管理による実態と言っているのです。  賃金決定要素の何を入れるかについては一切書いていません。ただ、時間の長短は原 則時間比例です。ですから、そこを少し整理していただければいいと思います。お二人 の使側委員から出ていましたが、賃金水準については言っていないのです。例えば社員 に対する非常にきつい状況があるとすれば、パートタイマーだけ低くするのは問題だと 言っているのです。同じ仕事をしていればフルタイマーも同じ賃金決定要素を適用し、 もしかしたらフルを下げればパートも自動的に下がるとか、そういうふうにすべきで、 パートだけは低くていいというのはおかしいのです。パートだけ違う賃金決定要素でい いというのはおかしいのです。同じ働き方であれば、ということだけです。 ○公益委員  お二人の使側委員から、やはり究極の目的としては、同じ職務であれば同じような賃 金の決め方にもっていくという方向性はやはりそうだという御発言があったと思うので す。ただ、いますぐにといってもちょっとどうかというところで、例えば時間をおいて 、一定の期間、一定の期間というのは3年か5年かわかりませんが、それ以降について そういったガイドラインを適用していくということを考えられていらっしゃるのか、一 定の期間とはどう考えているのかと、ちょっといまのタイミングで聞いておきたいので すが。 ○使側委員  私もちょっと考えているのは、いまこういうようなパートとの処遇の差が現状がこう なっていて、これはやはり処遇についても当然考えていく必要があるということで、そ のためにはパート研の先生方がお書きになったこういうものさえわかっていないわけで すから、いろいろなやり方があるということが書かれています。  こういうものを示すなり、あるいはもっとこんなに進んだ事例があるということを企 業家に認識をさせて、実態を十分に認識させる必要があると思うのです。そういう中で 企業の意識アップ、あるいは業界団体が中心となってそういうことに積極的に取り組ん でいくことが必要であって、例えば相談、講習会、PRというものをしながら、実態を 知りつつ知らしめていくというようなことを当然やって、その後にどの程度そういうも のが行きわたったかということをある程度把握した上で、あまり強制力のあるものは困 るのですが、ルールなり、ガイドラインを入れていくこと。何となくちょっとしたステ ップが必要ではないかという気がするのです。  ただ、その時期がそんなに長くても困るわけですから、そこはもう徹底的にやって、 早い時期にどんどんレベルアップして、やはりやることというのは企業家にとっては当 然の責務だと思いますし、そういうことは重々皆さんも承知でいるわけですから、そこ はある程度持っていくような形のシステムを作るというのは必要だと思いますので、そ の前にすぐにルール化というのではなくて、少し自主的な取組みをさせるような環境づ くりが必要ではないかと思うのです。 ○公益委員  例えば3年とか。 ○使側委員  いや、そんなに長い間に処遇のイライラが積もると労働者にとっても大変でしょうし 、企業側にとってもそこは失態だと思うので、そこはできる限り短いほうがいいと、私 としてはいいと思います。やはりお互いに協力をしないと駄目だということがあります 。ただ、それがあまり強制力を伴うのは困るというのはあります。 ○公益委員  そうすると、一定のルールというものは何かビジュアルな形であったほうがやりやす いのではないですか。 ○使側委員  そうです。そのルールの認識が入口から何となく閉ざしたような感じがあって、何か 強制力みたいなものがあるような感じがあるのです。最終的には、そうではなくて、こ れをやれということではなくて、いろいろなものから自分で取捨選択できるような、広 い意味でのアドバイスみたいなサゼスチョンがあって、そこが企業家にとって.... 。 ○公益委員  やり方はいろいろなアプローチの仕方があると思いますが、目標値のようなもの、3 年後の目標値はこうですというような形で出していくということはあり得る話。 ○労側委員  いまの公益側のリードが3年後と。前から公益委員が10年間パート法が施行されて、 平成8年と平成13年を比べても格差が拡大しているという調査の内容がありました。加 えて派遣とか、いろいろなタイプの労働者が増えてくる、パートも増えてくるという中 で、3年後とか何とかという話で、私は議論する話ではなくて、それは直ちにきちんと 原則とされる法律をつくるべきだと思います。  最初から先行きみたいな議論というのはちょっと、現状認識がものすごく違うのです が、その辺は公益側はどう考えているのでしょうか。 ○公益委員  公益委員が全部そういう了解でやっているわけではないのです。たまたま公益委員が そういうお話をされたのです。 ○分科会長  中身をどういうふうに理解するかということが重要なので、関連していますから、2 のほうも含めて御意見をお願いいたします。 ○労側委員  先ほどから使用者側の委員の皆さんから、同じ仕事をしている場合にフルとパートの 違いは改善すべきということで御発言をいただいているので、そこのところは認識は同 じだと思うのですが、資料2の具体的な中身に入りますが、2頁の(処遇差の合理的理 由となると考えるもの)の中に労働時間の長短というのが入っているのです。労働時間 の長短だけで、フルとパートだけで仕事が一緒なのに扱いが違うのはおかしいから、何 かルールをつくろうと言っていて、先ほどから使用者側の委員の方もそのことはそうす べきだとおっしゃっていると思うのですが、ここに書いてあることと中身が違うと、こ のままだと理解してしまうので、ここでおっしゃっている意味はどういうことなのか教 えていただきたいのですが。 ○使側委員  これは私のところの発言だったと思います。労働時間が長いか短いか、これは単独の 問題ではないと私は理解していまして、例えば労働時間が長い方については長期的に人 材育成をするとか、そうしたさまざまな要素と組み合わされる問題だと考えています。  加えて、労働時間の長短の要項には、「時間帯」と書いてありますが、例えぱパート タイム労働者の中でも時間帯によっては高い賃金を払う場合もあり得るわけで、パート タイム労働者の中でも多少長めのパートタイム労働者の方が賃金水準の高いような時間 帯にかかったりする場合があり得るわけです。そうしたことを考えたときに、労働時間 の長短、時間帯、人材育成の長期的な方針等が絡み合うと、処遇の決定方式、あるいは 処遇差の合理的理由になり得るのではないかと私自身は考えております。 ○労側委員  労働時間の長短というのがまさにフルとパートの違いだと思うのです。そのことを合 理的な理由になるとされてしまうと、ここで何を議論しているのか意味がなくなってし まいますよね。そのことはご理解していただいた上で、中身について合理的なものであ るかないかの議論をまさにしなくてはいけないと思うのですが、そういうことではない のでしょうか。 ○使側委員  労働時間単独だけを取り上げてということだと、処遇決定方式について十分な根拠と はならないと私としては考えているということです。 ○公益委員  基本的な考え方として、他の条件が一定の場合ですね。仕事が同じで、他の条件が一 定の場合、時間の長短というものを処遇決定方式を置くことにする合理的理由と考える か考えないか、あるいは水準についてです。そこが他の条件が一定であれば、処遇決定 方式を置くことにする基準に入らない、あるいは水準を決める要素に入れないというこ となのかどうかが大切だと思います。そうではないとなると全部崩れてしまうのです。 ですから、男女の場合と同じです。他の条件が一定の場合、男女だけでいろいろな処遇 差が生じるのはおかしいという、仕事が違うとか、能力が違うとか、これはいいわけで す。フルとパートについても当然入るわけです。他の条件が一定の場合に、時間の長短 というのをどう考えるかということを少し確認させていただきました。 ○使側委員  公益委員がおっしゃるような状況が現実的にあり得るのか。 ○公益委員  原則です。原則論が大事なのです。原則を立てておかないと。あとは距離を議論すれ ばいいのです。原則から離れる、仕事が違うとかは別の議論になるのです。つまり、時 間帯で仕事が違うというのは仕事が違うということなのです。原則は何かということだ と思うのです。 ○分科会長  労働時間は十分な根拠にならないというお話でしたが、その意味は処遇決定方式を異 にする根拠にならないという意味ですか。 ○使側委員  労働時間の長短が処遇差の格差が生じ得る合理的な理由になり得るのではないかとい うふうに。 ○分科会長  処遇決定方式を違う根拠になるかならないかと。 ○公益委員  それだけで違う賃金の決め方をするかどうかということなのです。時間が短ければそ う考えられるかどうかと。 ○労側委員  8時間と6時間の差について、それはあるでしょうと。ただ、6時間の人と8時間の 人の賃金の決め方が、それだけでいいということにはならないのではないですかとこち らは言っているわけですが、それでいいのだと。6時間の人の処遇の決め方と、8時間 の人の決め方と。例えば両方まったく同じ仕事をしているのに、賃金の決め方が違うと いうことについては、いかがかということなのです。 ○使側委員  いや、先ほど申し上げたように、長短によっては時間帯の問題が出てくるという話に なります。そこによっては、処遇決定方式が変わり得るのではないかということです。 ○公益委員  フルタイマーも同じですよね。時間帯の話ではないと思います。時間の長短の話を議 論しているのです。 ○使側委員  業種によって、仕事によっては、例えば6時間と8時間というのだとあまり差がない かもしれませんが、例えば3時間と8時間とか、そうなった場合に長短で本当にまった く差がないものかというのも、これはどうなのだろうと。例えば仕事の疲労度とか、そ ういうものが時間によって非常に加算されてくるようなものだとか、そういう業種もな いことはないと思いますが、どうなのでしょうか。 ○分科会長  それは時間の長短だけの問題ではないというのもありますが。 ○使側委員  前提条件が変わってくれば話の内容は変わってきます。ですから、同じ仕事という前 提条件にしたら賃金はみんな同じになるのです。私はこの前も申し上げたのですが、同 じ仕事などはできないと言っているのです。レジを打っている人も速さが違うのです。 ○公益委員  それは能力です。 ○使側委員  ですから能力給というのは。 ○公益委員  能力はいいですと先ほどから言っています。 ○使側委員  それだったら決める必要はないです。誰が能力差を判定するのかという問題が出てく るし、能力によっていろいろなことが決まるということになると、その判断基準という のは、企業家とか、あるいはその管理を任された人しかわからないわけですから。 ○公益委員  そのことについては一切言っていないのですよ。それをどう評価しなさいということ は一切言っていませんよ。 ○使側委員  それだったら法律で決めるルールなんてものは要らないというのです。 ○公益委員  決めてませんよ。 ○使側委員  何で決める必要があるのかということになってくる。 ○分科会長  処遇決定方式を異にする合理的な理由がある場合の考え方、処遇水準の均衡配慮とい う考え方をどう考えるかという、(1)についての御意見をお願いします。 ○労側委員  いまの議論と似ているのですが、契約期間の違いを合理的な理由の1つに挙げていま すが、いまの議論からすると、現場は違いますが同じ仕事をしていて、契約期間の違い が合理的な理由になるということが理解できないところですが、この考え方はどういう ことで契約期間が理由になっているのかをお聞きしたいと思います。 ○使側委員  処遇の内容はいろいろあると思うのですが、特に短期の方について必要とする、短期 の人に相応しい処遇と、期間が長い方についての処遇、いろいろなものがあり得ると思 うのですが、差があるものはいくつかあろうかと私自身は思いますが。 ○労側委員  いま言われたのは 職務遂行能力とは別に「契約期間」があるということですか。 ○使側委員  職務遂行能力とは別に期間が合理的な理由になるのではないかと思いますけれども。 ○労側委員  例えば2カ月契約の方が来ましたと。それから、いろいろな専門技術職種を持ってい る方が、たまたま契約で2カ月だと。正社員よりものすごく職務遂行能力はあるのに契 約期間が短いから差がありますよと説明するのと、2カ月だけれどもその方が持ってい る遂行能力などを見て、それで差を説明するのと全然違うと思うのです。これは契約期 間が短いからというだけで、いろいろ合理的になっているのは、ちょっと違うのではな いかと思います。むしろ「職務遂行能力」とか、そういう面での判断要素です。むしろ 別の面で判断する要素が出てくるのです。ですから単に期間が短いから長いからという ところで、使用者の合理的理由でという考え方を、私どもは持っているのです。 ○公益委員  いまの期間が短いから長いからというのは、有期の中で期間の長い人と短い人がいる ということですか。それとも無期と有期とで短いということですか。 ○労側委員  無期と有期の違いです。正社員との関係という意味での比較ですから。 ○公益委員  期間が長い短いとおっしゃるから、私は有期の中で、例えば1年と2カ月の人とで、 職の違いをおっしゃっているのかと思ったのですが、そうではないのですね。 ○労側委員  しかもこれは契約ですから、契約後、更新した場合はどういう考えになるのか。繰り 返し繰り返し更新した場合、あくまでも契約は2カ月なら2カ月で、また新たに2カ月 というようになるのか。その場合のことと両方質問してみたのです。 ○分科会長  「更新」のことも含めて、いまの点はどうですか。 ○使側委員  例えばある一定期間のプロジェクトだけをする方が、パートタイム労働者だったとし ます。その方に対する処遇の方式と、同じような仕事かもしれませんが、たまたまその 期間だけそのプロジェクトに入った正社員の方がいる場合、それぞれプロジェクト単位 で雇われる方と、そこに入った正社員の方とは、別に処遇の決定方式が異なっても構わ ないのではないですか。例えばそのプロジェクト担当だけの方について、より契約的な 、プロ野球と同じような形で、より高いペイを払う場合も当然あり得るわけですから、 そうした差を付けても、特に専門的な方について、そうした払い方をしてもいいのでは ないかと思います。 ○分科会長  更新されている場合はどうでしょうか。 ○使側委員  そのプロジェクトが更新される場合についても、やはりその契約内容はそのまま、再 び同じようにするということもあり得るのではないかと思います。 ○分科会長  プロジェクトの更新ということで質問されたのですか。 ○労側委員  この考え方も聞いたほうがいいのですが、そういうことと仕事の内容ですね。仕事の 内容は同じだけれど、ただそういう特殊なチームをつくると、そのことが処遇に違いが 出てくるというのは、どうも理解できないわけです。 ○公益委員  ここの質問は、雇用契約期間の有無が処遇決定方式を異にする合理的理由に入れてい いかどうか、という質問なのです。一応パート研では雇用契約の有無自体、それをもっ て処遇決定方式を異にする合理的事由にするとは限らないとしております。それは何を 見ているかというと、キャリア管理の実態です。例えば有期であっても、実態が更新さ れているような、実態として異ならない仕事の仕方をしていれば、同じキャリア管理の 実態が、フルタイマーでいるとすれば、その人と同じ処遇決定方式にしてくださいとい うことです。つまり適用されるという考え方なのです。これについて経営側はどう考え るかということなのです。  こういう場合は形式的に有期なのだから、とにかく外すべきと考えられるのか、実態 として見ることについては反対しないのかということを、是非教えていただければと思 っています。これを見ると、形式的に有期であれば、もうすべて外すということなので しょうか。基本的には同じ仕事をしていて、同じキャリア管理のフルタイマーがいる場 合ですよ。いなければいいのですが、同じプロジェクトにフルタイマーとパートがいる というケースですよ。その場合、単に片方は有期ということをもって、処遇決定方式を 異にする合理的理由になるとお考えなのかどうかということです。 ○使側委員  裁判所の判断とは異なるかもしれませんが、契約優先という考え方からすれば、契約 の自由という意味からすれば、やはり異にする場合もあり得るのではないかと思います 。 ○公益委員  一応確認します。実態で見ると、育児休業については短時間労働者でも、有期である というだけで育休が取れない形になっていますよね。これはもうそうなっているわけで すが、これとは違う扱いをするということですか。つまり育児休業について言えば、パ ートタイマーで有期であっても、実態で判断して育児休業取得の権利が発生するわけで すね。有期であることを実態で判断するということが、指針になっていますが、これは 育休だから、これと異なる扱いをするという理解でよろしいのですか。 ○使側委員  もちろん法律上の扱いは実態ではないかもしれませんが、特に労使がお互いに決めら れる処遇の問題については、原則として契約のほうを優先すべきではないかということ です。 ○分科会長  あとは特に(2)、「処遇水準の均衡配慮」の中身として、「処遇決定プロセスへの 参画」「それぞれの能力向上に応じた仕組み」「正社員転換制度」ということがありま すが、この辺について御質問、御意見はございますか。 ○労側委員  2頁の下から2つ目の枠に、「労務管理上必要に応じて行うけれど、新たな仕組みを 必要とするルールとしては不適切」という、使用者側の意見がありますが、労務管理上 必要に応じて行うということが、実態として行われていると認識しているのかどうか、 お聞きしたいと思います。この必要性を感じない使用者のもとでは、これは全く機能し ないわけですから、そのことについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思 います。 ○使側委員  世の中の経営者がすべて悪だということであれば、やっていないでしょう。そんなひ どい経営者だと、やはり企業経営はやっていけないと思います。原則的に成果を出され たパートタイム労働者には、処遇改善等を行っているというのが実態ではないかと思い ます。もちろん企業全体として企業業績が悪くなれば、経営者自身も給与のカット等を 始めて、正社員のボーナスカット等をやっていくのでしょうけれど、明らかに成果が認 められるような方については、それなりの処遇をしていると私は思っておりますし、大 多数の方々はそうではないかと思います。たまたまいま現在は平成不況で、長期的に経 済が悪い状況になっていますから、実態としてなかなか改善していかないというのは、 そうなのでしょうけれど、労務管理上やっていないということはないと、私自身として は思っています。 ○使側委員  そのとおりです。企業の存続がなければ、月給が払えないのです。それもお分かりの ことであって、企業は第1に企業の存続を図るわけですから、それに対して協力してい ただけるかいただけないかは、今度は従業員自身の判断なのです。それを誰かに頼って 、「お前はこういうことをしては悪い」と言われても、会社が成立しなかったら、どう にもならないではないですか。そういうときに協力を求めるわけです。悪いことをする ために従業員の給与をカットして、それをどこかほかのおかしな所へ寄付するとか、そ ういうことをやっているわけではないのです。みんな必死になってやっているのです。 その中での判断なのです。こういう問題は、善意に解釈していただきたいと思います。 ○労側委員  先ほど入口のところで、労働契約の内容そのものも、きちんと法律に基づいてやられ ていないと片方で言われて、今回はちゃんとやっているのではないかという話もあって 、それぞれに発言の趣旨が違うのではないかというように受け取られました。きちんと やっておられれば、何もルールを作る必要もないし。 ○使側委員  そうです。 ○労側委員  それが問題だからこそ、いまルールを作ろうとしているわけですから、そのことにつ いて是非御理解いただきたいと思います。 ○使側委員  世の中には法律を作ると、それを過大に指摘したり、悪用したりする人がいるのです よ。そういう問題もありますから、よくお考えいただきたいと申し上げているのです。 みんな善意でやっていますから。 ○労側委員  「よく考えろ」というのは、何をよく考えろとおっしゃるのですか。法律を守らない 人間に対しては、それに対する制裁をきちんとやっていくということが。 ○使側委員  そんなことは当たり前のことです。ただ悪用する人がいるのです。悪用するというの は、素人にはわからないのです。 ○労側委員  素人というのは、どういうことですか。 ○使側委員  我々みたいな素人です。 ○労側委員  だったらそれなりにきちんと認識するように、経営者団体やその他の人たちが、それ を収拾することをやればいいわけです。 ○使側委員  普通一般の人間に、法律論というのは分かりません。だから裁判にかけたりするわけ です。 ○労側委員  なぜ実態がこれだけあがっているかと言えば、現在の法律が効力を発揮していないか ら、その実態を訴えて法律改正をという声があるのです。いまの自分たちの人格の問題 や労働条件が差別的に扱われることに対して、法律の現状が効力を発揮していないと思 う人が多いからなのです。その点で「法律を知らない人が多い」などと言うのは、大変 失礼なことですよ。むしろみんな知っています。知らないのは経営者であって、法律の 本来の目的は。 ○使側委員  経営者だって、法律を知らない人はたくさんいます。 ○労側委員  それはちゃんと教えてあげてください。 ○使側委員  私にはそんな義務はありませんから。あなたの言い方は極端ですよ。 ○分科会長  ちょっと話が逸れていますので、戻しましょう。特に(2)について新たな御意見が なければ、一応先へ進めて、また何かあれば追加して言っていただくようにしたいと思 います。  (3)の処遇違いの説明をすることについては、いかがですか。 ○公益委員  使用者側の御意見で、「労働契約内容を納得してもらうことで十分」とありますが、 納得してもらう手段として、やはり説明するのではないですか。ここでおっしゃる「納 得」というのは、どういう内容をおっしゃっているのでしょうか。どういう手段で納得 してもらうのか。説明とは違うのでしょうか。もしそれをパートさんから聞かれたら、 どうするのですか。 ○使側委員  パートさんと契約を結ぶときに、契約内容の案の段階で、うちの労働契約の内容はこ れこれこうです、これでいいですねということを提示して、相手方が納得すれば、それ でいいのではないかということです。要するに、その労働契約内容はこうですというこ とを示すわけです。 ○公益委員  例えば「フルの方はどうなってるんですか」、というように突っ込まれたらどうする のですか。 ○使側委員  いま現在、法律的にそこまで求められてはいないわけですから、義務としての必要性 はありません。企業としてボランタリーに説明することはあり得るのかもしれませんが 、それをいま現在ルール化する必要はないというように、私どもとしては考えていると いうことです。 ○分科会長  ただ納得を受けるについては、差をきちんと説明しないと納得できないのではないか という質問ですね。 ○公益委員  納得できないのではないかという気がするのです。 ○分科会長  ですから法律上の義務があるかないかということとは、ちょっと関係がないようです が。 ○使側委員  パートタイム労働者がどのような契約を結ぶかということについて説明して、お互い に納得すればそれで良いという、その範囲だと思います。 ○公益委員  必ずしも私自身としては納得していないのですが、いいです。 ○労側委員  公益委員がおっしゃっていた項目ですが、ここの左に「正社員との処遇の違いを説明 することについて」という質問があって、それについてどうですかということでおっし ゃってくださったわけで、あなた個人の契約内容についてどうですかということと、こ こでいま議論しなければいけないことは違うと思うのです。そのとき同じ仕事をしてい るのに、あの人より私の賃金が低いと思ったら、やはりそこでは納得しないし、モラル も上がらないし、意欲も出ない。みんな意欲を持って一生懸命働いてもらおうと思った ら、それなりの納得性が必要ですから、必要ではないですかということに対して、ここ では質問していると思うのです。そのことについてはいかがでしょうか。 ○使側委員  その企業が必要性があると感じていらっしゃれば、企業としてボランタリーに説明す るということについて、私どもというか、私が止めることはできません。ただ、それを ルール化することについては、いま現在正社員の方についても、そこまで求められては いない状況ですので、その点についてルール化する必要はないのではないかと考えてお ります。 ○公益委員  なぜ必要ないと考えるのでしょうか。格差があるときに働いている人にとっては、な ぜ格差があるのかという理由を知っているのと知らないのとでは、分からずに格差があ って働いているのと、例えば職務や斯々然々で違いがある、そのためにパートさんはい くら、正社員はいくらという状況のもとで働くのとでは、勤労意欲については、かなり 改善されるというように考えるのが、通常合理的な雇用管理のスタンスではないかと思 うのです。知ることによって何かトラブルがあるとか、まずいとか、そういう御懸念が あるというのは、どういうことなのでしょうか。知らせないことの合理的な根拠は何で しょうかということを、お聞かせいただければと思います。 ○使側委員  他人の契約内容を説明するという責任が、どこから生まれてくるのかということだと 思いますが、その辺はどうなのでしょうか。 ○公益委員  企業の雇用管理制度についての説明で、Aさんは実際に月にいくらもらっています、 Bさんはいくらですよ、あなた方は100円低いですよという問題ではないわけです。要す るにフルタイマーというのは、こういうことで賃金が決まって、パートタイムはこうい うことで決まっていますよ、こういうルールに基づいてあなたはいくらという、そうい う一般的なルールということだと、私は理解しています。「他人」と言うことの他人と は何ぞや。 ○使側委員  他人というのは、この場では正社員だろうと思います。ただ責任が違います、具体的 にパートタイム労働者の責任は、これだけのものですというように説明したときに、パ ートタイム労働者のモラルのほうに、逆の影響が出てくるような場合もなくはないと思 うのです。ですから、その辺も懸念材料だと考えております。 ○使側委員  この間、5つの企業をヒアリングしていただいて、そこには「問われたこともないし 」というのがありましたね。確率の問題ではないにしろ、たまたま5つがそうだったの かもしれませんが、結構そのような事例が出てきていれば、また別でしょうけれど、た だ普通の企業ですと、何か事があれば必要な都度、かなり説明している所はあるのでは ないかと思うのです。実際に優秀な企業であれば、定期的に幹事を決めてグループに分 けて、そういう提案を箱に入れろという社内提案制度みたいなことをやっている所も、 結構ありますので、そういう中での解決も、かなりあると思うのです。ですから、あえ てそこで責任を課すほどのことかなと思います。そこまできつくやるべきことかなと。 ○公益委員  もともとルールのところは、基本的にはパートタイマーから質問を受けたら、答えて くださいということなのです。ですから、そういうように聞く人がいなければいいわけ です。最低はいまの基準法の労働条件明示。ただし先ほどの納得してもらうということ を考えたら、「なぜなの」と言われたときは、「分かりません」「教えません」と言う のではなく、説明してくださいというルールなのです。そのときに「分かりません」「 教えません」と言っていいのかということなのです。聞かれたらちゃんと説明してやる ほうが、合理的な理由が違いをつくっているわけです。それを説明していただいたほう が、企業にとってもプラスになるのではないかということです。 ○分科会長  聞かれた場合には説明する必要があるのではないですか、という質問について、使用 者側はどうですか。 ○使側委員  企業が自主的にやるという意味では、よろしいのでしょうけれど、それをルール化す ることまでは、必要ないのではないかと考えます。 ○労側委員  私どもの意見としては、疑似パートも含めて使用者に説明責任を課すという意味は、 多分2回あると思います。最初は契約のときですね。契約のときに、「こういう理由で あなたはこういう水準です」ということは、当然行われます。その後、実際に働いたら 、同じ仕事の場に正社員とパートの方がいらっしゃって、「なぜ同じ仕事にこんなに差 があるんでしょうか」という発議が、多分労働者のほうからあると思うのです。それに 対して使用者側は、「なんでそんなこと、あんた言うんだ」などと、細かいことを聞く と思いますが、労働者側からのこういう理由でということは言わなくても、労使の外的 な面で、「これだけあるのになんでなんですか。理由を聞かせてください」と言われた ときに、使用者側はちゃんと説明をする責任がありますということを、ルール上明確に しなさいというのが、私どもの意見なのです。なければないで、本人が納得していれば いいわけであって、それはやはりちゃんとルール化したほうが、私は企業のためにもい いと思うのです。 ○使側委員  多分、多くの企業は、そうやって質問されれば、「答えないよ」とは言わないのでは ないかと思うのです。やはりそのパートタイマーの方にも、そこで続けて働いてもらい たいと思えば、担当の人も一生懸命説明するだろうと思います。ただしそれを絶対説明 しろ、こういうルールにするということに対しては、まだそういう時期だろうかという ように思っているということであって、多くの企業は自ら進んで説明しているというよ うに、私は信じておりますし、そういう例をどんどんどんどんアピールしていくべきだ と思います。やはり正しい聞き方というか、やはり働く側の方々も、もし納得がいかな いのであれば、質問してみようという気持を持ってもらうことは、一向に構わないこと ではないかというように理解しました。 ○公益委員  現実問題としては、私もおっしゃるとおりだと思っています。そのときに例えばそう いう説明義務を、法律上の義務にするかどうかということとは切り離して、実際上説明 したほうが、当然労使関係は安定しますし、その方も納得するということはあります。 問題はその説明をするときに、やはり正社員とパートの働き方については、こう違うの ですよ、その違いは、こういう客観的なルールにしてあるのですよというものをもって 説明したほうが、むしろお互いが納得できると思うのです。ですからここでの議題は、 誰が見てもその違いがはっきり分かるような、違いは違いとしてちゃんと処遇に跳ね返 るのだというようなルールを作ってはどうかということですから、使側委員がおっしゃ られるようなところとは、全然違わないような気が私はするのです。  今はそのルールがないから、個人的に非常に違ったことがある、会社によっても全然 違ったものになるというように、そのルールが非常に不明確になっています。場合によ ってはそれが単に道義的な雇用管理上の問題以上に、法的にもちょっと問題があるとい うことが出てきているから、それを少し方向付けと言いますか、ルールの明確化をしま しょうということだろうと思うのです。そのときにルールの明確化が速い遅いと言われ ますと、いろいろ違いはあるだろうと思いますが、そういう方向でルールを明確化する 必要性は、いまの使側委員のお話でも出てくるだろうと思うのですが、どうでしょうか 。 ○使側委員  確かに全体的なことかもしれませんが、この報告書に書いてあるような視点が、説明 するときの1つのツールとして、大変有効だということについて、私は否定的な意見を 持っているわけではないし、今までよりも分かりやすいものがたくさん出てきたという ことは、すごく良いことだと思いますし、これを是非経営側も労働側もしっかり勉強し 、それぞれの下の組合、個別の企業に周知していくことは、とても大事なことだと思い ます。  しかしこのルールについても、いくらここで議論しても、これで絶対というものは、 多分なかなかないと思います。それぞれ個別の企業に行ってみれば、必ずこういう場合 はどうなのだろうというものがあるのだろうと思います。そういうときに「こっちの基 準で見ればこうだね」とか、「あっちの基準で見ればこうだね」と言いながら、その会 社の中でいい基準を作っていくということなのだろうと思います。それにはある程度の 時間もかかるだろうと思います。  説明の仕方も、徐々に納得性の高いものになっていくのではないかと思いますし、説 明するときに「正社員とパートタイマーだから違うんだよ」というように説明して終わ ってしまう企業というのは、ないだろうと思います。そういう意味ではその方向に行っ てもらいたいという気持はあるし、そういうことが出来ていない会社も、多分あるのだ ろうと思いますから、そういう所については、指導をしていくということについては、 別にいいわけです。ただ、それが「国のルールだよ」とすぐ言うことについては、どう なのかという疑問を持っているわけです。 ○公益委員  これは全然反論でも批判でも何でもないので、そういう形で聞いていただきたいと思 います。いまの場合もそれぞれの企業の中で、そういうルールを適用していこうとする ときに、それぞれの企業の特殊性があることは重々承知しているわけです。ただ、こち らである程度決めていこうというのは、言ってみれば規模とか業種といった違いによら ず、正規と非正規とのかかわりの中で出てくる処遇格差を、客観的な判断ができるルー ルとして設定しようということなのです。そのルールも、基本的にはその核になるルー ルの設定ですから、それを作って、さらにそこに、どういう基準で公正なルールとして いくときの基準を当てはめていくかは、各企業の中でいわゆる自主交渉と言いますか、 労使交渉などで決めていただくのがよろしいのではないでしょうか。それはその会社の 中の事情で、それこそゴールではないのですが、何年間のスタンスでやっていこうとい うことは、あってもいいと思うのです。  ですからここの中で決めるのは、あくまでも最低限のコアになるところですから、ど こにおいても基本的に従うというか、守っていく、あるいはそれをモデルにするという ことでのルールだろうと思います。そういうものがあったほうが、私はどこの会社でも やりやすい気がするのです。説明もしやすいし、働く側にも納得してもらいやすいとい うことに繋がるのではないかと思うのです。 ○分科会長  本当は(3)に行ったほうがいいのかもしれませんが、いま話が出ましたので、その 間に(4)の何かほかに必要なルールがあるかという質問について、何かございますか 。 ○公益委員  2つあります。1つは、「企業内外の救済制度を作る」とありますが、これはパート とフルの公正な処遇をどう実現するかということですね。フルタイマーについても、こ ういう制度はないわけですよね。パートタイマーだけにこういうものを作るということ を提案されるのか。その企業で正社員にもそういう制度があれば、パートにも作ってく ださいという1つの考え方があるわけですが、正社員にない所まで含めて、「パートだ け作れ」と言うお考えをお持ちなのかどうか、これが1点です。  2番目の「空きポストに関する情報提供」ですが、これは現行指針の「通常労働者へ の応募機会の付与」と、さらにそれ以上のものを考えられているのか、現行の指針と同 じ内容をここに挙げられただけなのか。 ○労側委員  内外の救済制度と、処遇差の合理的理由の説明のあるなしということで、どうしても 納得できないという場合、既存の事業所の中でも、いろいろな相談制度などがあると思 いますので、そういうものを活用してもいいし、なければないで、それを作っていただ くと。特にパートがたくさんいらっしゃる事業所では、そういう仕組みがあったほうが いいと思いますので、そういうことで考えております。外の場合は紛争というイメージ ですが、労働局に置いている個別紛争調整委員会のような制度を活用してもいいでしょ う。いずれにしろ、そういうものを扱う仕組みがここでも出来ますということをやるべ きだというのが、1番目です。  2番目の指針のところは、正社員の方が辞めて空きが出ましたという場合、いま働い ているパートタイマーの方にお知らせをして、私は正社員になりたいという希望があれ ば、その方を優先的に採用するというようなことも含めた対応が、今回私どもが言って いることです。それを法律のルール上、きちんとしてくださいという意味です。 ○公益委員  ひとつ確認していいですか。前半のほうですが、例えば正社員について苦情を聞く仕 組みとか、個々人の要望を聞くとか、アンケートとか、いろいろやりますね。そういう ことをやっていれば、それと同じようなものをパートタイマーにも適用してくださいと いうことなのか、正社員について何もやっていない会社にも、さらにパートに作ってく ださいということまで組み込むのか、それはどっちですか。 ○労側委員  それは前者のほうです。 ○公益委員  企業外の救済制度のほうですが、個別労働紛争調整でいいということですか。それと もパートに関して、もう一つそれ専門の制度を作ってほしいということですか。 ○労側委員  多分、起こり得る局面は個別労使紛争ですから、今それはそれで労働局がありますよ ね。そういう所を活用してやることも、あって良いのではないかという意見です。まだ 細かくは検討していませんが、新しく作るというのも望ましいけれど、労使紛争ですか ら、今ある仕組みでやるということです。つまり我々が言っているルールというのは、 法律上のルールを言っていますから、法律の手続に沿ってやる仕組みを、まず事業所の 中で、それから会社の外で用意してはどうですかということです。ガイドラインであれ ば、それはあまり必要ないのかどうか分かりませんが、私は法制化のことを言っていま すから、そのことでちゃんとした仕組みを作ってほしいのです。 ○公益委員  この課題は、いまの紛争処理の促進に関する法律のもとでも乗っかりますから、ここ に書いてあると、特にパートだけの紛争の窓口を立てろという感じがあったのですが、 そうではないのですね。 ○労側委員  そうです。 ○公益委員  現行の制度でも、十分乗っかりますから。 ○労側委員  私も何遍か話はしているので、新しく起こすことでもないかと思いますが、3つ目の 「・」の「パートの多くが有期であり」という所に、ちょっと付け加えてほしいのです 。まず雇用の基本というか、労働契約の基本は、期間を定めない雇用を基本としてやら なければならず、有期の場合はその期間の合理性を明確にさせるべきだということを前 提にして、私はこの3つ目の「・」を書き替えてほしいのです。やはり労働条件分科会 のほうで、有期契約がどんどん拡大するという中で、これが原則になってしまって、無 期の契約が例外みたいな形では困るのです。あくまでも基本は無期契約であって、有期 の場合は合理的な違いが必要だということを言ってきましたので、そういうことを付け 加えてほしいのです。 ○公益委員  その「・」の下から2つ目に、「労基法第3条に雇用形態の違いを含める」という御 意見が入っていますね。こういう御意見の前提ですが、第3条の国籍・信条・社会的身 分を理由とする労働条件の差別的取扱い禁止規定に、「雇用形態の違い」を入れるとい うことは、雇用形態を差別的な事由の1つという形で入れることになります。この趣旨 は、具体的にパートで雇用することが、差別的事由の1つに当たるということなのです か。 ○労側委員  差別的事由ではなくて、法律的なものがあればつきますよね。法律になくて単に、あ なたはパートだからという差別では駄目だということです。 ○公益委員  合理的な違いというのは、どういう意味ですか。第3条で規定しているのは、個人の 努力などによっても、いかんともし難い属性的な要因というように理解しているのです が、雇用形態というのは、実態としての働き方の形態なわけですから、その違いは同じ である、そういう扱いにしろということですか。 ○労側委員  それはそう思います。第3条の解釈が、性とか国籍といった生来持っているものを取 り除く差別だという解釈が、多数となっているのかもしれませんが、現状としてパート というのは社会的身分という、非常に言葉に表せないものなのです。いちばん典型型な ものは、「疑似パート」などと言っています。そういうことまで、もう少し広く解釈す るような第3条にしたらどうですかということを込めているわけです。 ○公益委員  ご趣旨としてはそういうことが、「雇用形態の違い」という背景にはあるのですよね 。 ○労側委員  ええ。ですから説明の付かないようなもので、どうもパートで差別されているという こともあるわけですから、ILOの第111号の精神も踏まえて、そういうことをちゃんと 第3条に盛り込んだほうがいいと。最近は学説でも、若干そういう声が上がっていると 聞いているのですが。 ○公益委員  公益委員ということではなく、あくまでも一労働法学者個人としては、国籍・社会的 身分という並びでいきますと、例えば性別というのが落ちていますね。性別が落ちてい たのは、以前の労基法第6条の2の「労働時間規制を中心とする保護」というのが、女 性については特別にあるからという理由で落ちていたわけですよね。もちろん、それだ けとは限りませんが。今度の改正では、あそこの部分の「労働時間の規制」とか「危険 ・有害」などは、全部撤廃されましたよね。そういう点では第3条に性を盛り込むこと についての支障は、ある程度なくなったわけです。そういう点で、性というものをあそ こに盛り込んでいくべきだという議論だったら、私もよく分かるのです。しかし雇用形 態の違いとか、社会的身分にパート契約の形態も入るということになると、かなり厳し いギリギリの議論をしないとということになると思います。そういう気持が私にはある ものですから、「雇用形態の違い」というのは、どういう趣旨で入れられているのかな ということをお聞きしたのです。 ○分科会長  それでは(3)、「ルールの位置付け」の論点に入りたいと思います。これについて 御意見、御質問がありましたらどうぞ。 ○労側委員  これも述べていたつもりなのですが、入れていただけなかったので。(3)の「均衡処遇 ルールは、法的に位置付けられていないガイドラインとして作成する」ということにつ いて、私どもは(1)のパート労働法という形を取るかどうかは別にしても、新しい法制化 が必要だと言っているわけです。(3)の場合は10年間、行政のガイドラインでやってきた けれど、実効が上がっていないわけです。そういう中でまたガイドラインでやるという ことは、マスコミも議論する必要はないと言っていますので、その趣旨のことを付け加 えてほしいのです。 ○公益委員  労使にそれぞれあります。労側は、最終的には法制化だけれど、一定の準備が必要だ ということですね。この準備というのは、具体的にどういう形で進めようと考えられて いるのか、少し教えていただきたいと思います。  あと、使用者側はここを見ていただきますと、法規制は不適切だけれど、改善は必要 だということは、お二人の使側委員がそういうお考えでしたね。企業が十分認識してい ないと困るのですが、やはり長期的には時間の長短にかかわらず、フルとパートの公正 処遇が出来ることが望ましいというお考えはあるようですので、自主的な取組みを促す ために、どうしたらいいとお考えなのか、使用者側と。つまり何もなくて、ただ「ちゃ んとやってください」と言うだけでは済まないでしょう。やはり「何らかの基準」と言 われているわけですから、その基準と、ここで言っている公正なルールというものとが 違うのか、何かの基準をもって、それを進める取組みをどうやってすればいいというよ うにお考えなのか、教えていただきたいのです。 ○労側委員  私どもが前回紹介した、パート・有期契約労働法の中身を、ちょっと説明しておきま す。その中で、労働時間が短いことを理由にして、あるいは契約が有期であることを理 由にして、差別してはならないという原則に基づいて、例えば社会保険の加入を課すと か、労使協議を課すということについては、直ちに法律をやってもらうと。  賃金の原則の支払いについては、5年ぐらい置いたらどうかと。なぜかというと、い ままでも議論になっていましたように、「正社員」と言われている方々同士の仕組みの 整理などが必要でしょうし、賃金要素、例えば諸手当の取扱いなどをどうするかという のも、直ちに出来るものと出来ないものとがありますから、そういう問題もあります。 また長い間培ってきた賃金の仕組みの議論も、多分当分必要だと思います。そういうこ とを労使の中で決定する時間が3、4年は必要かなという意味なのです。その間、例え ば来年法改正をして有効化できれば、5年間になりますよ、全面施行しますよというと ころで、逆に労使の議論を深めてもらうということも期待して、経過措置を置いている わけです。 ○使側委員  先ほど労側委員は、(3)は要らないとおっしゃったけれど、私たちは(4)がほしいなと 思います。もっとも船を造っても、みんなが乗ってくれなければ困ることですが。労働 局を通じて、厚生労働省さんの外郭団体、あるいは私どもの民間団体を利用していただ くことも結構ですが、そういうものを予算化していただいて、委託事業か何かをつくっ ていただきたいと思います。私どもも組織を通じて、末端には何百万と要るわけですか ら、そこまでいかなくてもそういう機会を多く増やして、PR資料なり、現状認識のい ろいろな資料なり、こういうことをやらなければ、いずれは駄目ですよ、どんどん努力 してやりましょうというような、経営者の意識を高揚するような場をどんどんつくって 、互いに話し合うと。そこにパートの方も呼んで、パートの方のいろいろな意見を聞く のもいいでしょう。そういう機会を設けて、少し全国的にやるようなことが、第1ステ ップではないかと思います。公益委員がおっしゃる基準と言われても、ちょっとアレで すが、いずれにしても労側委員からも、3年ぐらいの準備期間ということがありました ので、その少し先のほうでやるということを。 ○労側委員  私どもはまず作って明らかにしたほうが、労使はやりやすいと思うのです。 ○使側委員  いや、作る前にそういう実態を。何かやっても乗ってこなければ。 ○労側委員  やはり方向がないと。 ○使側委員  上だけのものを作っても、乗ってこなければ仕様がないことなのです。やはり実態を 踏まえてものを作らないと、予算でも何でもみんな不用になってしまう傾向が、最近強 いのです。いろいろな補助金でも、ただ上で「作ってやれ」と言って実態に合っていな いから、不用がうんと出ているという実態があるわけです。ですから、そこはやはり実 態に合わせていただいて、実態を把握した上で徐々に進むと。 ○労側委員  1993年の法律から10年間は、そういうものをやるということできた部分があるのです 。今おっしゃったメニューの中のものは、相当入っていると思うのです。やはり労働側 の実態というのもあるわけですから、そのことをバランス良くというか、同じ土俵に乗 せてメニューを。 ○使側委員  それはやはりこちらの使用者側の。 ○労側委員  自主的な取組みというのは、具体的にはどういうことを考えていらっしゃるのですか 。 ○使側委員  自主的な取組みというのは、企業が自らそういう意識を高めて、どんどんやっていく という気力をつくらせろということです。 ○労側委員  1993年の法律について、それをやったけれど不十分だという認識なのですか。 ○使側委員  末端のほうは、まだ分かっていないのではないですか。 ○労側委員  やはり企業には公正競争というものがあるではないですか。公正な労働基準ですが、 同じルールのもとにお互いの企業が競争したほうがいい。個別労使に任せたのでは、あ る企業は、こんなことをやったら損だなどというようになりかねない。やはり横にらみ というのがあるわけですから、本当に公正な競争ということからすると、やはりあった ほうがいい。これだけパートの比重が高まる中で、私は今こそ社会的ルールが必要だと 思うのです。 ○使側委員  私は、その問題は社会が判断する問題だと思うのです。企業がとか労働者がというこ とではなく、企業を判断するのは社会なのです。ちゃんとしている企業というのは、必 ずそこへ人が集まるし、いい加減なことをやっていると、必ず今にはじき飛ばされます よ。ですから、それを自主的にという意味を込めて申し上げていると思うのです。 ○労側委員  ただ逆に言うと、学校を卒業してもこれだけ就職する機会がないとか、失業者がいる 中で、物事がだんだんだんだん下方修正しているわけですよね。そういうことで安定的 なものをつくるという意味でも、社会的にルールを作ったほうがいいし、少子化などの 議論も、いま盛んにされていて、社会保障の問題も事実の中で、ちゃんと社会ルールを 作ったほうが、将来中長期的に考えたら、非常に安定的な社会になるのですよ。 ○使側委員  いまの少子化の話というのは、法律では全然作ってありませんから。 ○労側委員  いや、基盤づくりという意味です。 ○使側委員  もう一つは、この問題もそうなのです。企業経営者が、企業家が自発的にそういう方 向に行くという姿勢を持ってくれば、自ずから解決していく問題ですよ。それを我々は やろうということを、いま申し上げているのではないですか。 ○労側委員  でも1993年から、10年経っているのですよ。 ○使側委員  10年であろうと20年であろうと、それは日本社会のレベルの問題なのです。 ○労側委員  そんなことはないですよ。 ○使側委員  それはそうですよ。例えばあなたがこう決めたということを、明日からできますか。 できないでしょう。人間の習性や慣習を、一遍に変えることは難しいのですから。今ま でずっとやってきたことを明日から改めろというのは無理です。 ○公益委員  感想だけ申し上げます。私がこちらで公益委員という形でお話させていただいている 背景には、もちろん時として一研究者個人という立場で、お話させていただくこともあ りますが、やはり基本的には、社会で皆さんがどうお考えになっているかということを 、常々頭の中に置きながら、いわば社会で考えられている意見や要請を、公益としてお 話するという視点を持っているのです。先ほど使側委員との関係でお話したルールのあ り方の問題についても、やはりひとつ核になるようなものがあって、その上でそれをど う組み立てていくかは、労使の自主的な交渉にという観点で、お話させていただいてい るのです。  社会が決めることだというのも、もちろんそうだと思いますが、そういう意見がここ では全然明らかにされていないかというと、少なくとも私との関係では、社会が時代の 流れの中で、要請の中で、雇用形態や就業形態がどんどん多様化していく中で、おそら くこういうルールの設定を求めているのではないかという気持というか、理解、認識を 持っているので、そういう発言でお話させていただいているのです。 ○使側委員  それは分かりますが、世の中はまた変わっているのですよ。もっと変わっていますか ら、この論議をしていると、私は古くなってしまうと思います。やらなくてもちゃんと 世の中は動いていくと思いますから、そう申し上げているのです。だからあと2、3年 余裕を持ったほうがいい。先ほど5年とか6年という話も出ていましたが、少なくとも 3年ぐらいはきちんと見ながら、論議を進めたらどうですかという話なのです。 ○公益委員  それもそうかもしれませんし、それも別にどうのこうのということではないのですが 、平成5年にパートの働き方の雇用管理改善を目的とした法律が作られて、1999年にも 指針が改正されて、その中で自主的な労使の、とりわけ事業主の努力というものを前提 にしながら進めてきたわけです。しかしその中で、必ずしも効果が上がっていないとい うことが、1つの現実としてあるのではないですか。 ○使側委員  社会背景があるのですよ。 ○公益委員  もちろんそういう社会背景も踏まえた上で考えても、国民みんなが、働く人たちの多 くが、あるいは事業主も含めてそうだと思いますが、思った以上に成果が出ていないと いう社会的な背景、社会的な事情があるのではないでしょうか。そういう事情をできる だけ、何とかもう一歩前進させようではないかという考えではないですか。 ○使側委員  法律を作ればそれが進むかというと、進まないと思いますよ。 ○公益委員  もちろん法律を作ったからといって、明日から、さあ、やりなさいで進むとは、到底 誰も思いません。ここの人たちも思っていません。 ○使側委員  では、もう少し待ってもいいではないですか。 ○公益委員  しかし、それが基本的な最低のルールでしょうということです。そのルールの上でど う積み上げていくかは、時間と。 ○使側委員  いまはルールがゼロではありません。社会のルールというものがあるのですから。 ○公益委員  そのルールがあまり公正でないという社会的な認識があるのではないですか。 ○使側委員  そんなことはないですよ。 ○公益委員  基本的にはフルタイマーとパートタイマーについて、パートタイマーであることによ って、不利益に扱うことはしないでくださいと言っているだけの話です。それを否定さ れるかどうかなのです。中国と競争しなければいけない、賃金を下げなければいけない という非常にきつい状況にあります。そのときにパートだけ、働きに応じて低いのが問 題だと言っているのです。パートだけでなく、社員も下げればいいのです。社員よりも パートのほうが不利益なことが問題だと言っているだけです。公正な処遇をしてくださ いと言っているのです。企業がきついのもよく分かります。  もう一つは、個々の企業で困っている会社があるからやらないということでは困るの です。経営者側として将来、日本の企業経済をどうしたらいいのか、そのときにどうい うルールが必要なのかということを、是非議論していただきたい。困る会社はゼロだな どとは言いませんよ。困る会社があることは私もよく分かります。その人たちに頑張っ てもらうためには、どういう方向に持って行くことが大事なのかということを、是非議 論していただきたいのです。困る会社があることは分かりますよ。 ○使側委員  いや、私はそんなことは申し上げていません。ルールがあろうとなかろうと構いませ ん。ただ法的な規制でそれが全部収まるかどうか、これは疑問ですよということを申し 上げているのです。 ○公益委員  ただ規制については、先ほど公益委員が言われたように、個々の企業内の賃金の決め 方などを、水準の決め方まで決めるようなルールではないのです。その中で労使、ある いは経営側として考えてくださいという、基本的な考え方だけなのです。 ○使側委員  経営者はみんな、そこまで考えているのですよ。 ○公益委員  みんな考えているのであれば、全然問題ないではないですか。 ○使側委員  ただ世の中には例外というものがありますから、悪い会社もあるでしょう。悪い労働 組合だってあるのですから。そういういろいろな問題が、すべて一点を見つめて、これ は悪だから法規制しろというのは、ちょっと早すぎるのではないですかと申し上げてい るだけです。 ○公益委員  使用者側の御意見を拝見すると、「何らかの基準は必要であるが」と書かれています ね。この「何らかの基準」というもののイメージですが、具体的なものはどのようにお 考えなのでしょうか。 ○使側委員  使用者側にもいろいろな意見がございます。私はまだ早すぎるという意見を持ってい るだけです。 ○公益委員  いやいや、中身ですよ。 ○公益委員  時期は別にして、中身についてです。使側委員は「20年後」と言われるかもしれませ んが、中身は何なのか。先でもいいですよ。 ○使側委員  私は、やはり自主的判断でやるというのが、いちばん望ましいと思っております。 ○公益委員  いや、自主的判断の中身の基準です。 ○公益委員  自主的に判断する基準というのは何ですか。 ○使側委員  基準は、自分が判断すればいいではないですか。 ○公益委員  それはルールがないということですね。 ○使側委員  法律で規制することはない。 ○公益委員  おそらく使用者側の方たちの考え方も、かなり違いがあることが明らかになりました 。明らかに使用者側もそうしたルールなりが、ここでは示されているのです。何か「ル ール」という言葉が一人歩きして、すごく悪者になってきているのですが、一定の雇用 のあり方を秩序付けていくような方向性が、特にパートタイマーに関しては必要だと。 それに対して企業は、かなり自主的に取り組んで、いろいろ悩んでいるという状況もあ る。その辺は同じなのですが、自主的に取り組む、方向、そして「ルール」という言葉 は良くないのかもしれませんが、一定の基準、考え方の必要性というのは、確かにある わけです。使側委員のお考えの中にも、かなりあるのではないかと思います。  そういう意味で、ここで示した考え方というものが、皆さんが考えておられるものか ら、そんなに遠いものであるのかというのが、すごく疑問なのです。お話を伺っていた ら、お二人の使側委員のおっしゃっている考え方も、企業もこのぐらいのルールなら、 大枠のところはついていけるかもしれない、ただし特殊なところはという括弧があるの でしょう。そういう意味でここで示されているルールは、企業のいろいろな雇用管理を がんじがらめにするようなものではなく、一定の考え方でそれぞれの企業の中で、それ ぞれの状況に応じてアレンジできるものです。  逆に言って労働側から見たら、一般的すぎるのではないかという批判が出されるかも しれません。そこをいま労働側は、ぐっと我慢しているという状況ではないかと思いま す。私はやはり審議会ですので、議論の集約というのも、心の中にあるわけですから、 そういうことから言えば使用者側のお考えも、そういうルールの必要性については、徐 々に集約されていくのかなという期待を持っているのですが、そのあたりはいかがです か。 ○使側委員  当然、そういう方向を会社の経営者や従業員の方は大切にしていますし、そこで大き な違いがあって、トラブルになっても困りますから、そこはやはりきちんとした待遇を するというのが、経営者としての根本的な問題だと思いますし、私たちとしてみれば、 そのように持って行っていただきたいということです。経営者の方にはできる限り、そ ういうことでの意識アップ、レベルアップをしてもらって、努力をして、そういうもの に到達してほしいとは、当然思っていますから、そこをどうやっていくかということを 、いま考えているわけです。私たちにしてみれば、前段階で何かワンステップほしいな ということを、先ほど言っただけです。  いずれにしても基準というもので、経営者に本当に法律的に義務化されてしまうと、 責務となってしまうのは困りますが、そうではなく、そういうものを示して、少しはこ れに近づくような形で取捨選択しながら、自分の企業独自の実態に合った方法を取り入 れて、うまく会社経営をしていくというのは、当然のことだと思います。時期の問題は ありますが、そういう程度のルールであれば、いずれはそういうことに向かって行くこ とが、やはり必要なことだろうと思います。 ○使側委員  基本的には使側委員のお考えに沿うものかと思いますが、私は少なくとも法律みたい なものを決めて、それに近づくべく時間をかけてやっていきましょうという考え方は、 自分自身は持っておりません。このペーパーに書いてありますように、今こういう報告 を皆さんにお見せして、それぞれの企業に勉強していただくことについては、何の異存 もありません。どういう実態かという、はっきりしたイメージを持っているわけではあ りませんが、例えば半分ぐらいの企業がこういうことをやっているけれど、できていな い企業については何かするということで、その後にガイドラインのようなものを作ると いうことであればいいと思います。  確かにいま10年ということはあるのだろうと思いますが、多分本当に意欲的なパート タイマーの方々が、すごくたくさん出てきたという時代の中で、そういう実態とか、世 の中のパートタイマーの方々の声というのは、多分会社だけではないと思うのです。や はりパートタイマーの方々も比較するというときに、どういう視点で比較していけばい いのだろうかということを勉強する期間というのは、いまの日本の中では必要なのでは ないかと思います。  そういう意味では先ほど使側委員がおっしゃった(4)という感じのものが、あって然る べきではないでしょうか。そして、そういうものが少しずつできたところで、また次の 段階を考えるほうがいいと思います。無闇に混乱を起こしてするよりも、やはりパート タイマーの方々というか、短時間で働くといういろいろな形が出てくる中で、雇用形態 の多様化というものに対応していく姿になるのではないかと、私は思っております。 ○労側委員  パート法ができたときから10年経ったわけですが、数のみならず、10年前のパート労 働者とは、ポジションも変化してきています。加えて圧倒的多数が女性だという中で、 その女性の方々も自立して生活しようという変化が、パート法ができたときとは全然違 ってきていますし、活動形態もものすごく変化しています。そういう中では、やはりち ゃんとしたルールを作ってやらないと、このままいくと労働市場が乱れていきます。最 近も乱れているけれど、もっともっと乱れていきます。そういうことに対しては、やは り今こそ社会的にきちんとしていかないと。10年後とか何年後と言っても将来、一体ど うなっていくのかというのが描けないわけです。そういうことを私たちは真剣にとらえ ているわけです。  規制緩和をどんどん進めて、労働契約期間が延びたりして、不安定雇用をたくさん増 やしてどうなるのですか。税収も入ってこないのですから、国にとってもマイナスです よ。そういう時代認識を本当にしてもらわないと。それで「この分科会ではガイドライ ンにしました」などというのは、世の中に本当に説明してください。確かに個別企業は 大変です。しかしいま社会的に何が問題かということを、判断していただかないと駄目 ですよ。個別的議論だけをされるというのは、私は本当に。もちろん組合だって、個別 問題を話すことはありますよ。しかし社会的問題は何かというのが、こういう分科会の 役割ですから、そういう観点でしっかり議論してもらわないと本当に困ります。 ○労側委員  使側委員の言葉尻をとらえる意味ではなく、どういう方法があるかということでお聞 きします。いまパートで働く人も勉強して、会社も勉強してということと併せておっし ゃいましたが、私はいま伺っていて、パートや有期で働いている人が、何を勉強すれば 、自分の労働条件を具体的に改善できるエンパワーを持ち、自己実現できる働き方にし ていけるかというのは、どういうことを言っていらっしゃるのかと思ったのです。やは り対等な関係が持ちづらく、有期契約で働く期間もどんどん短くされ、1カ月単位で成 果を問われて引下げの理由にされ、有期で働かざるを得ないような状況も、もう一方で 生まれているわけです。  パートの人についても、初めに実情として申し上げたように、1つのパートだけでは 生活できないから、2つや3つという労働時間をトータルすれば、2,000時間を超えるよ うな状況の中で働く人たちが、どうやって何を勉強すれば、自分自身の労働条件の向上 に繋がるとお考えなのか。私は、それは非常に困難だと思うので、そこの内容について 経営と同じような土俵で言っていただくには、現状認識が違うと思います。これは質問 でもあるのですが、いかがでしょうか。 ○使側委員  パートタイマーの自立ということも、大いにあると思いますが、例えばこれを正社員 とパートタイマーのルールの内容について、職務の同一性やキャリア管理の実態という ものが、具体的にどういうところを指して言うのかということについては、私自身、「 こういう場合はどうですか、こういう場合はどうですか」ということを申し上げて、公 益委員に「これはキャリア管理だ」とか、「これは職務が違うんだ」などと言われて、 ああ、そうかということもないことはないわけです。  具体的に自分たちの仕事の中で、それが本当のルールという場合に、ではどういうこ とが職務の同一性なのか、キャリア管理の実態の違いというのは、どういうことなのか というのは、お互いに話し合うとか、自分たちの会社の中で、どのようなことに整理さ れるのだろうかということをやっていかないと、すぐに「職務の同一性」とか「キャリ ア管理の実態」などと言っても、各企業に行けば、それで説明はなかなかつかないだろ うと思うのです。そういう時間を持つことが、お互いに納得できて、処遇差もこれだっ たら仕様がないだろうとか、これだったらもっと近づけていくべきだろう、という議論 に繋がっていくのではないかと思います。その趣旨以外には何もありません。 ○分科会長  ほかに何かございますか。いまの段階で特段なければ、本日の議論はここで終わりに させていただきたいと思います。本日の署名委員は、前田委員と吉宮委員にお願いしま すので、よろしくお願いします。  次に日程の話ですので、事務局からお願いいたします。 ○事務局  次回は12月16日月曜日、13時から15時です。場所は17階専用第21会議室です。議題は 、引き続き今後のパートタイム労働対策についてです。前回説明させていただきました が、以前お示しした論点のうち、残りの論点である短時間正社員制度、能力開発、就業 支援と、税・社会保険等の就業調整に関係する問題について議論していただき、その後 の時間で、本日の議論の続きをしていただけたらと思っております。 ○労側委員  前回、国民から意見を聞いたものをもらいましたね。あれは事務局がテーマ別に、論 点別に整理しますということではなかったのですか。それは個々で勝手にやりなさいと いうことですか。 ○事務局  はい。いろいろな方から寄せられた、いろいろな御意見ということで、それを集計す るというよりは、生で見ていただきたいという形でお配りさせていただきました。 ○分科会長  それでは本日は長時間、どうもありがとうございました。これで終了いたします。 照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)