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中間まとめ


1.麻しん

(1)現状認識
  1)患者発生状況
         (1)発生動向調査からの推定値
(2)年齢分布
(3)死亡者
(4)麻疹感受性者
  2)ワクチンについて
         (1)麻疹対策の中での位置付け
(2)効果
(3)副反応
(4)予防接種率
  3)世界の現状
         (1)世界での接種方法

(2)今後の方策(案)
      短期的に1歳児を中心とした低年齢層での流行を減らす方法は?
<選択できる接種方法>
  (1)1回法(現行の方策)
  (2)2回法(先進国型)
  (3)キャッチアップ(発展途上国型)
  → 現在の日本に早急に必要な方法は1回法の徹底。
          ただし、1歳児(12-15ヶ月)の接種率の向上を目指す。
将来的には、海外諸国と同様に2回接種にすることも検討する。

(3)今後しなければならない研究・調査課題
         (1)乳幼児の麻しん患者の罹患状況、接種状況の詳細
(2)乳児への予防接種における効果・副反応について
(3)正確な予防接種率の把握
(4)短期戦略による成果(罹患者の減少状況)の評価


2.ポリオ

(1)現状認識
  1)患者発生状況
         (1)1960年には5600人を超える流行があったが、それ以降激減した。
(2)1980年以降、野生株によるポリオ患者は0人。
(3)一方、1980年以降はワクチン株によるポリオ患者は15人。

  2)ワクチンについて
         (1)生ワクチン(メリット・デメリット)
(2)不活化ワクチン(メリット・デメリット)

  3)世界の現状
         ・先進国では不活化ワクチンが主流となりつつある

(2)今後の方策(案)
   1) ワクチン由来ポリオ麻痺を防ぐために不活化ワクチンに変更することはメリットが高いか?
(1)不活化ワクチンの有効性
(2)不活化ワクチンの副反応

2) 具体的に不活化ワクチンに変更するとすれば
(1)混合ワクチンの必要性
  ・利便性(高い接種率を維持し、小児への負担を軽減する方法として)
  ・海外での安全性、有効性
(2)海外で実績を残しているワクチンとSabin株(日本産)の違い
(3)接種時期
(4)流行が発生したとき用の生ワクチン備蓄

(3)今後しなければならない研究・調査課題
       
(1) 国内でのポリオ由来麻痺発生状況についてのサーベイランス
(発生が無い事を確認するため)
(2) 乳児への予防接種における効果・副反応について
(不活化ワクチンに問題がないかどうかをチェックする。)


(1)現状認識

 1)患者発生状況

  

(1)発生動向調査からの推定値

 年間患者数はこの10年間で明らかに減少しているものの、いまだに定点届け出数で25,000人前後、推計で10-20万人程度の発生があるという持続的な麻疹患者発生。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P3より引用

過去50年間の麻疹患者数と麻疹が死因として報告された死亡者数

※「報告書資料集」図1a

(2)年齢分布

 年齢別に比較すると、1歳代が最多であり、次いで6〜11か月、2歳の順で、2歳以下の患者報告が49%を占めている。現在の麻疹流行の中心的な役割を、この低年齢層が担っていることを強く認識しておく必要がある。また成人麻疹の中では20〜24歳群が最も多く、次いで10歳代後半、25〜29歳の順である。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P4より引用


小児科定点からの麻疹年齢階級別患者報告数

(1999(平成11)年14週〜2002(平成14)年29週累計)感染症発生動向調査より

小児科定点からの麻疹年齢階級別患者報告数

※「報告書資料集」図5a


小児科定点からの麻疹年齢階級別患者報告数

(1999(平成11)年14週〜2002(平成14)年29週累計) 感染症発生動向調査より

小児科定点からの麻疹年齢階級別患者報告数

※「報告書資料集」図5b

(3)死亡者

 我が国では麻疹による死亡例が毎年報告されており、厚生省(現:厚生労働省)の人口動態統計をみると、数千人の麻疹による死亡者が出ていた50年前と比較すると、死亡数の減少は著しい。また年齢階級別の比較では、0〜4歳児の死亡が大半を占め、特に0、1歳児の占める割合が多い。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P4−5より引用

過去50年間の麻疹患者数と麻疹が死因として報告された死亡者数

過去50年間の麻疹患者数と麻疹が死因として報告された死亡者数

※「報告書資料集」図1a

(4)麻疹感受性者

 2000(平成12)年度の国勢調査ならびに感染症流行予測調査の結果から年齢別麻疹感受性人口を推計した。0歳児で61万人、1歳児で55万人、定期予防接種対象である1〜7歳半では約120万人の小児が麻疹感受性者であることが推計された。成人麻疹で問題になっている20歳代においては約40万人、全年齢群では300万人弱であると推計された。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P5より引用

日本における麻疹感受性者数の推計、2000(平成12)年

2000(平成12)年度 感染症流行予測調査より(グラフ内数字人数)

日本における麻疹感受性者数の推計、2000(平成12)年

※「報告書資料集」図11



 2)ワクチンについて

  

(1)麻疹対策の中での位置付け

 麻疹に対する特異的な治療法は存在しない。公衆衛生学的にいえば麻疹流行、個人レベルでは麻疹ウイルスの感染・発病に対する確実で有効な予防手段は麻しんワクチンしかない。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P6より引用

(2)効果

 麻しんワクチンの免疫獲得率は高く、ワクチン効果(Vaccine effectiveness: VE)は95%以上と言われている。最近の調査結果でもこのVE並びにワクチン接種者における麻疹抗体保有状況は概ね維持されている。
  2001(平成13)年度感染症流行予測調査によると、ワクチン接種群における抗体保有率は極めて高いと言える。しかし、0-1歳児の抗体保有率が80%と他の年齢群に比し低いこと、20歳代でわずかながら抗体陰性者が認められること、抗体価が10〜29歳で若干低下していることについては今後注意深く経過観察していく必要がある。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P6−7より引用

(3)副反応

 麻しんワクチン接種後の主な(臨床)反応は接種後7-10日前後に時に発疹を伴う発熱を認めることである。1996(平成8)年度から予防接種後健康状況調査が実施されているが、2000(平成12)年度までに報告された5年間の累計を図1に示す。発熱は接種後8日に、発疹は10日にピークが認められた。2000(平成12)年度予防接種後健康状況調査(接種後28日間)によると、0〜13日に初発した発熱は18.2%(うち38.5℃以上は10.7%)であり、発熱のほとんどは0〜13日に初発している。発疹は8.8%(うち6日以内が2.5%、麻疹ウイルス増殖に伴う発疹の出現時期である7〜13日は 4.9%)、局所反応は2.9%(うち3日以内は1.0%)、蕁麻疹は2.8%(うち1日以内は0.2%)、けいれん(このうち90.5%は発熱を伴うけいれん)は0.34%であった。
 次に、平成6年の予防接種法改正に伴って実施されることになった予防接種後副反応報告は平成7〜12年度の6年間に総計618件の報告があった。報告頻度が高いものとしてはアナフィラキシー等の即時型全身反応、発疹、および発熱であるが、脳炎・脳症の報告も平成8、9年にそれぞれ1例報告されている。なお、平成10年度以降の年間報告数は前半3年間の報告数の2分の1以下となっており、特に予防接種後3日以内に発生する即時型の反応を中心とした副反応報告は大幅に減少している。
 1996(平成8)年〜1998(平成10)年にかけて、ワクチンからゼラチンが除去あるいは低アレルゲン性ゼラチンへの改良が行われており(2.1)麻しんワクチンの歩み 参照)、予防接種後副反応報告の減少は、この効果が現れているものと推察される。大阪府堺市での調査においても、最近、予防接種後の保護者や主治医等からの相談・問い合わせ件数が減少しており、これは接種後3日以内の相談(アレルギー反応、発熱等)が大幅に減少していることと関連しているものと考えられる。
 なお、予防接種後副反応報告はワクチンとの因果関係がすべて直接証明されているわけではない。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P7より引用


図1 麻しんワクチン後健康状況調査累計報告 1996(平成8)〜2000(平成12)年度

図1 麻しんワクチン後健康状況調査累計報告

※「報告書資料集」図14

(4)予防接種率

 1978(昭和53)年10月以降、麻しんワクチンが定期接種となったが、厚生労働省算出の実施率は、近年おおむね90%を超えており、高い実施率を維持している。しかし、この実施率は、分母が1歳人口、分子が1歳から7歳半までの間に定期接種として麻しんワクチンを受けた人数となっているため、おおまかな傾向を掴むには有効であるが、厳密な意味では正確とは言い難く、いくつかの方法で予防接種率の算出が試みられている。
 厚生省(現:厚生労働省)の予防接種副反応研究班(磯村班)の調査による定期接種対象者の麻しんワクチン接種率は、現在の我が国の接種率の実態をより反映していると考える。平成11年度77.1%、平成12年度 81.1%であり、ようやく80%を超えたところであるが、地域によっては50〜60%と低い。
 次に2001(平成13)年度感染症流行予測調査から得られた麻しんワクチン接種率を示す。1歳(生後12〜24か月未満)児の接種率が50.0%と低く、麻疹患者の中では1歳児が最も多いことを考えるとこの年齢での接種率を向上させることが麻疹対策上の急務である。2歳(生後24〜36か月未満)児では78.8%に上昇するものの十分とは言えない。また、MMRワクチン中止(1993(平成5)年4月)直後に生まれた年齢群である7歳(生後84〜96か月未満)児の接種率に落ち込みが認められる。
 我が国には多くの予防接種率算定方式が混在しており、接種率算定を全国で統一したものにし、比較検討していくことが重要である。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P7−8より引用



 3)世界の現状

  

(1)世界での接種方法

 ほとんどの先進国では、麻しんワクチン接種方針としてMMRワクチンの2回接種法がとられている。また2回接種の理由は、1回の接種で免疫ができなかったものにも確実に免疫をつけるためと、1回目で免疫のついたものにはその免疫を増強するためである。この理由は、ほとんど排除に成功している米国、カナダなどの1回接種から2回接種に至る歴史をみると明らかである。いずれの国も1回接種の予防接種率を上昇させたあと、ワクチン接種者を中心とした麻疹の小流行が頻発し、2回接種を導入することにより完全に麻疹伝播を抑制できたという歴史に裏付けされる。MMRワクチンが勧奨される理由は、おたふくかぜ、風疹、そして先天性風疹症候群もその公衆衛生学的インパクトは決して低くはなく、1回の接種により3つの疾患の予防ができる利点を生かしているものである。
 一方、途上国においては、まず可能な限り定期接種において、1回のワクチン接種を徹底することを目標としている。しかし、種々の理由によりその接種率をあげることはできず、2回接種方針をとっても定期接種のみでは、全体の接種率を上げることが不可能である。そこで補足的予防接種キャンペーンを行い、対象期間中、対象地域におけるすべての小児に対して麻しんワクチンを一斉接種することにより、予防接種率を上げようとするものである。

※「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」P9より引用

国名 接種方法 接種率 患者数 死亡数
アメリカ
合衆国
MMR2回接種 91%(19〜35ヶ月児、2回接種)以前の1回接種の接種率は96% 100人
人口10万当り0.04、
2001年
2人
カナダ MMR2回接種 96%(2歳児における接種率) 28人(確定診断例、1999年) データなし
イギリス MMR2回接種 88%(1999/00に2歳になるコホート) 72人(確定診断例、2001年) 2人
フランス MMR2回接種 84.2%(2歳児2000年)、90%6歳児 2001年) 10,000人(推計値2000年) 10人以下
ドイツ MMR2回接種 84.6% 人口10万当り46.8 データなし
イタリア MMR2回接種 80%程度(2歳児、2000年) 人口10万当り60 7人

出典)
アメリカ: FASTATS, National Center for Health Statistics, CDC
カナダ:
 
1) Canadian National Report on Immunization, 1998. Health Canada.
2) Update:Vaccine-preventable diseases. Volume3 Nimber3. Health Canada.
イギリス: Communicable Disease Surveillance Center. PHLS
フランス:
 
1) Invs. Calendrier vaccinal 2000. Bulletin epidemiologique hebdomadaire No 06/2002.
2) Bonmarin I, Levy-Bruhl D. Measles in France: the epidemiological impact of suboptimal immunization coverage.Eurosurveilllace volume07No.04, April 2002.
ドイツ: Surveillance of measles in German, Gesundheitswesen.
イタリア: ISS. Measles increase in Italy. Eurosurveillance Weekly issue14, April 2002.

※「報告書資料集」表6



2.ポリオ

(1)現状認識

 1)患者発生状況

  

(1)1960年には5600人を超える流行があったが、それ以降激減した。

我が国のポリオ制圧の歩み

我が国のポリオ制圧の歩み


出典:厚生省 『伝染病統計』による。

※「ポリオ根絶等委員会報告書資料」資料2−1

(2)1980年以降、野生株によるポリオ患者は0人

(3)一方、1980年以降はワクチン株によるポリオ患者は15人

生ポリオワクチンの副反応

生ポリオワクチンの副反応 (1970-2001)
地域 年令 性別 ワクチン 材料
1970 岩手 2Y1M F   P2 糞便
東京 7M M 有 (1)   P3 糞便
北海道 11M F 有 (1)   P2 糞便
1971 福岡 31Y M   P2 糞便
1972 愛知 1Y3M M 有 (1)   P2+P3 糞便
北海道 9M M   P2 糞便
1973 富山 8M M 有 (1)   P2 糞便
北海道 5M M   P2 糞便
北海道 3Y3M M   P2 糞便1)
群馬 1Y6M M   P3 糞便2)
広島 7M M 有 (1)   P2 糞便
1974 山梨 3Y11M M   P2 糞便2)
神奈川 1Y2M M   P2 糞便2)
1975 福岡 10M M 有 (1)   P1+P2+P3 糞便
1977 神奈川 1Y3M M 有 (1)   P2 糞便
北海道 2Y10M M 3) 有 (2)   P2 糞便
1978 福岡 10M M 有 (1)   P2+P3 糞便
1979 広島 1Y2M F 免 有 (2)   P2 糞便1)
1980 大阪 8Y8M F   P2 糞便
熊本 5M M   P2+P3 糞便
長崎 8M M 有 (1)   P2+P3 糞便
1981 愛知 8M M 有 (1)   P2 糞便
富山 9M M 有 (1)   P2+P3 糞便
1983 北海道 1Y1M M 有 (1)   P2 糞便
1985 東京 5M M   P2 糞便
1986 福岡 10M M 有 (1)   P3 糞便
1991 大阪 9M M 有 (1)   P2+P3 糞便
1992 福岡 8M M 有 (1)   P3 糞便
神奈川 4M M 有 (1)   P3 糞便
1993 福岡 19Y M   P3 糞便
大分 9M M   P2 糞便1)
北海道 1Y6M M   P2 糞便
1994 熊本 6M M 有 (1)   P1 糞便
1998 北海道 36Y M   P1 糞便
京都 2Y1M M 有 (2)   P3 糞便
2000 宮崎 37Y M   P3 糞便

出典: ポリオワクチンを巡る最近の状況と我が国の将来 平成12年8月31日
公衆衛生審議会感染症部会 ポリオ予防接種検討小委員会

※「ポリオ根絶等委員会報告書資料」資料2−2



 2)ワクチンについて

  

(1)生ワクチン(メリット・デメリット)

(2)不活化ワクチン(メリット・デメリット)

ポリオワクチンの特性

不活化ワクチン(IPV) 経口生ワクチン(OPV)
○血中抗体できる ○血中抗体できる
×腸管免疫生じない ○腸管免疫できる
×腸管でのウイルス増殖を抑えない ○腸管でのウイルス増殖を抑える
×血中抗体価の低下早い
  →ブースター接種必要
○免疫は終生免疫
×皮下注射による接種 ○経口接種のため簡易
  ただし、
○他の不活化ワクチンと一緒に使える
  →混合ワクチンの製造が可能
 
×高価 ○安価
○免疫不全者にも使える ×免疫不全者には使えない
○ウイルス排出しない ×便中にウイルスを排出する
  ワクチン由来株による2次感染を引きおこす可能性がある。

参考文献

 

・新しい予防接種
 (神谷 齊編、日本小児医事出版社)

・新・予防接種のすべて
 (堺春美編著、診断と治療社)

・予防接種の手引き
 (木村三生夫、平山宗宏、堺春美編、近代出版)

・予防接種ハンドブック
 (厚生労働省エイズ結核感染症課監修、日本医事新報社)

・新予防接種法による予防接種
 (平山宗宏、水原春郎、日本小児保健協会)

※「ポリオ根絶等委員会報告書資料」資料1



 3)世界の現状

  

 ポリオ対策に関しては、現在は世界的には生ワクチンを使用している国が大多数である。しかし、先進国の多くは後述するワクチン関連麻痺(VAPP)への危惧から不活化ワクチンへと切り替えている。また、フィンランド、オランダなどの北欧の国々では一貫して不活化ワクチンのみを使用し、ポリオを制圧してきた経緯がある。

世界におけるポリオワクチンの使用方法

  使用中のワクチン 投与回数 投与スケジュール 変更時期 備考
アメリカ IPV 4 2M, 4M, 6〜18M,
4〜6Y
2000 OPVは特別の場合のみ
オーストリア IPV 4 2, 3, 4, 13M    
フランス IPV 4 2, 3, 4, 16M   すべてIPV
ドイツ IPV 4 2, 3, 4, 11M   すべてIPV
スウェーデン
デンマーク
IPV 4 3, 5, 12M, 5Y 昔から  
ノルウェー IPV 4 3, 5, 11M, 6Y    
イタリア IPV/OPV併用 2+2 IPV×2 (2, 4M)
OPV×2 (10M, 2Y)
  IPV2回接種後
OPV2回接種
イギリス OPV→IPV     2002年に
OPV→IPV
へ移行予定
 
スペイン OPV→IPV   2, 4, 6, 18M    

※「ポリオ根絶等委員会報告書資料」資料3−2



(2)今後の方策(案)

  1) ワクチン由来ポリオ麻痺を防ぐために不活化ワクチンに変更することはメリットが高いか?

  

(1)不活化ワクチンの有効性

 不活化ワクチン接種後の抗体産生についてはP. L. Ograらの詳細な研究がある。不活化ワクチンを約1ヶ月間隔で3回接種して血清中の抗体の消長をみると、生ワクチンを同様のスケジュールで投与した場合と同じように1回目投与後1週間でIgG, IgMが上昇し始め、IgGは2、3回目の投与でさらに上昇するが、IgM抗体はむしろ下降する。生ワクチン接種後に見られる鼻咽頭や腸管からの粘膜型IgAの分泌は不活化ワクチン接種によっては誘導されないとされている。(資料1)しかし、不活化ワクチン接種者は非接種者に比べて、咽頭でのウイルスの増殖が抑制され、腸管での増殖は起こるが糞便への排泄期間の短縮が観察され、(資料2) 近年、不活化ワクチンを皮下接種することにより粘膜免疫を誘導する可能性が指摘されている。
 もともと不活化ワクチンの有効性は1954年、米国のフランシスによって、広範の野外実験によって証明された。40万の子どもをランダムに2分して片方には不活化ワクチンを、他方には偽ワクチンを接種した。偽ワクチンのグループでは70症例、不活化ワクチンを受けたグループでは11症例が麻痺を起した。さらに他の地域で20万人の子どもには不活化ワクチンを接種、他の20万人には接種せずに、ポリオ発生率を比較した。接種を受けなかったグループでは445人が発症したのに対して、受けた子供では71例に麻痺が発生した。この結果から不活化ワクチンは麻痺性ポリオに対しては80−90%有効であると結論された。ちなみにこの野外実験に使われたワクチンは開発当初のソーク不活化ワクチンである。またこのような偽ワクチンをもちいる大規模実験は現在では不可能である。
 その後、ヒューストンでの流行に際してのメルニックの調査では不活化ワクチン効果は96%であった。セネガルでの1型ポリオの流行時の調査ではDTP/不活化ワクチンの1回接種によって36%、2回接種によって89%の有効率が得られた。これも対照群と比べたポリオ発症阻止率である。

※「ポリオワクチンに関する追加報告」P2−3より引用


(2)不活化ワクチンの副反応

 不活化ワクチンは副反応の極めて少ないワクチンである。乳児に不活化ワクチンのみを筋肉内または皮下注射したとき現われる副反応として、0.5−1.5%に注射部位の発赤、3−11%硬結、14−29%圧痛が挙げられている。多くの国で採用されているDTPまたはHibと不活化ワクチンとのの混合ワクチンの場合には、特に不活化ワクチンの副反応が加算されることはないとされている(アベンチスーパスツール、コンノート研究所)。不活化ワクチンは40カ国以上で使用されていて、少なくても1億2千500万人以上に接種されているが、製造所に寄せられる苦情として特定なカテゴリーに当てはまるものはない。とくに神経系の疾患としてギランバレー症候群との関係が懸念されたが、その頻度はバックグランドと差がない。
 米国のワクチン副反応届出システムに、不活化ワクチンが重症な疾患に関与しているとの報告はされていない。フランスでは1990年から94年までに5600万回接種が行われたが、ワクチン関連の重症例の報告はなかった。  最近のフランスと米国の不活化ワクチン市販後調査によると、接種部位の反応と発熱が記載されているが、同時にDTPのうち特に百日咳菌体を含むワクチンが接種されているので不活化ワクチンによるものかどうかはっきりしない。しかし、対照としたDTPのみの接種との副反応の出現率は同じである。その他に、ワクチンに起因するような臓器疾患の報告はない。

※「ポリオワクチンに関する追加報告」P2−3より引用



 2)具体的に不活化ワクチンに変更するとすれば

  

(3)接種時期

 不活化ワクチンによる抗体の持続に関するカナダでの調査結果では、生後2ヶ月の乳児に2ヶ月間隔で2回不活化ワクチンを接種して、その14ヵ月後に中和抗体価を測定した結果、抗体保有率(4倍以上の抗体価)は1型、2型は98%、3型は85%であった。そして、2回目接種から14ヶ月後に3回目の不活化ワクチンを接種すると、4―6歳までのすべての小児に、1―3型に対して抗体保有率は100%であった。また、スウェーデンのボチガーらはソーク不活化ワクチン4回接種(9、10ヶ月、2歳、10歳)して、18年後に中和抗体を調べたところすべて陽性であったと報告している(表1)。追加接種によって生ワクチンと同様に、かなり長期間抗体の持続が可能であることがわかる。
 不活化ワクチンを採用している国では、基礎免疫として2回接種(生後2−3ヶ月以内に初回、約6週後に2回目接種)し、その後、追加接種を2回行って行っているが、追加接種の時期は国によってさまざまである。追加接種の時期については今のところ定説はない。
 また2型野生株ウイルスによるポリオ患者は1999年以来世界中で発生していないことから単価ポリオワクチンの可能性もある。

不活化ワクチン接種後の抗体維持

Study IPV n Time of primary dose(mo) Time of booster dose(yr) Time after primary dose(yr) % Testing positive for antibodies(GMT)
Type 1 Type 2 Type 3
Bottiger IPV 250 9、10 2、10 18 100(217) 100(247) 100(181)
Faden eIPV 27 2、4、12   4 100(230) 100(260) 100(240)
Guerin eIPV 39 3、4、5 1.5、5 5 194(62) 100(81) 195(40)
Stehlin IPV 23 3、4、5 1.5、5 8 195(30) 100(82) 195(42)
Swartz eIPV 83 2、4、10   7 198(131) 100(116) 195(62)

(Plotkin S. A. et al、Vaccine 3rd、W. B Saunders Company、p356, 1999より)

1 Bottiger M. polio immunity to killed vaccine: An 18-year follow-up. Vaccine 8: 443-445, 1990.
2 Faden, H. et al. Long-term immunity to poliovirus in children immunized with live attenuated and enhanced-potency inactivated trivalent poliovirus vaccines. J.Infect. Dis. 168:452-454, 1993
3 Guerin, unpublished data Pasteur Merieux Lab. 1989
4 Stehlin , unpublished data Pasteur Merieux Lab, 1983
5 Swartz, personal communication, 1997

※「ポリオワクチンに関する追加報告」P3−4より引用



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