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第5回全体会
参考資料

組み合わせ決定(マッチング)について(案)


1.組み合わせ決定制度の必要性

 研修施設が、公募で研修採用を行う場合、研修希望者が複数の施設に採用希望を出すこととなるが、これに伴い内定辞退による欠員や過剰採用への対応が必要となる。また、研修医が複数施設から内定を受け取った場合、締め切り日の差異などで、希望の病院と契約を結ぶことができない可能性がある。こうした非効率を回避するため、全国一斉に、すべての研修希望者と研修病院が合理的、かつ効率的に組み合わせを決定できるシステムが求められる。

2.組み合わせ決定の概要

 研修希望者に対して研修施設、プログラムの情報を提供し、研修先を自由に選択し、研修プログラム提供側の意向もふまえた上で、研修希望者と研修プログラムを合理的で透明かつ効率的に対応付け、研修希望者に対して研修プログラムを決定するためのシステム。

3. 組み合わせ決定の流れ

<要件>
1. 研修希望者(大学卒業予定者)
2. 研修施設(研修プログラム責任者)
3. 組み合わせ決定を実施する機関

図


<米国マッチングの実際>

米国では、NRMPというマッチング実施組織がマッチングシステムを運営している。

1.研修プログラムの登録

研修施設は、NRMPに研修プログラムの登録を行い、登録番号をもらう。

2.研修プログラム(研修施設)の公開

各施設のプログラム一覧は、NRMPのホームページに掲載される。

3.研修希望者の登録

研修希望者はNRMPに登録する。(登録の要件として、マッチングの結果で研修先が決まった場合は、必ずその相手と研修する契約を結ぶなどの規約がある。)登録後は、NRMPのホームページ上で、研修プログラムの閲覧・検索ができる。ただし、必要があれば希望者が直接、研修施設より資料を取り寄せる。研修希望者は、希望する研修プログラムを選択する。

4.希望する研修プログラムへ応募

研修希望者は希望する研修プログラムを、NRMPへ登録する。また、希望する研修プログラム(研修施設)へ、それぞれ必要書類を添えて応募する。
(各研修プログラムの定員と希望者数等の応募状況は、ホームページで公開される。)

6.面接

研修施設から面接希望者へ、面接可能の連絡を入れる。研修希望者は研修施設と直接交渉して面接日を決定する(面接日は、NRMPにより決められた期間内に行う)。面接(あるいは採用試験等)を実施する。

7.順位表の提出

研修希望者は期限日までに、希望する研修プログラムについて希望順位表を作成し、NRMPへ送る。研修施設側も同様に採用を希望する研修希望者について希望順位表を作成し、NRMPへ送る。

8.マッチング

NRMPは、提出された希望順位表に基づき、希望順の高いもの同士を優先してマッチさせるアルゴリズム(コンピューターソフトウエア)を利用して、コンピューターでマッチングを行う。

9.結果の通知

マッチングの結果は、研修希望者と研修施設との双方に同時に通知される。

10.研修契約

マッチングの結果に基づき、研修希望者と研修施設との間で研修契約を結ぶ。


(参考)

Gale-Shapley アルゴリズム
(参加者と参加病院のマッチング)


図


マッチングの流れ

1.初期設定
(1)参加者(S)と参加病院(H)はそれぞれ希望順位表を作成している。
(2)参加病院の募集定員はそれぞれ1名と仮定する。
(3)希望順位表に列挙する数は任意とする。
(4)参加者S1は、すでに1回目のマッチングの手順において、第1希望であった参加病院H1の希望順位表にS1は入っていなかったので、参加者S1希望順位表からはすでに参加病院H1は削除されているものとする。

2.
手順(1)
参加者の選出
 参加者の中から、希望順位表で仮マッチの相手がなく、希望の参加病院が列挙されている参加者を選出。→参加者S1

3.
手順(2)
参加者の希望順位表の確認
 参加者S1の希望順位表では、第1希望はすでにアンマッチとなっているため、最も順位の高い参加病院は第2希望の参加病院H2である
参加者S1の希望順位表
順位状態病院名
削除H1
 
H2
 H3

4.
手順(3)
参加病院の希望順位表の確認
 参加病院H2の希望順位表を確認したところ、S1が載っている。


5.
手順(4)
ポストの確認
 参加病院H2のポストを確認したところ、ポストは空いている。
参加病院H2の希望順位表
順位状態参加者名
 S2
 S3
 S4
 S5
 
S1

6.
手順(5)
仮マッチ
 参加病院H2と参加者S1とが仮マッチとなる。
参加者S1の希望順位表
順位状態病院名
削除H1
仮マッチ
H2
 H3

<手順(1)に戻る>

7.
手順(1)
参加者の選出
 次の参加者S2が選出される

8.
手順(2)
参加者の希望順位表の確認
 参加者S2の希望順位表を確認すると、第1希望は参加病院H2である

9.
手順(3)
参加病院の希望順位表の確認
 参加病院H2の希望順位表を確認すると、S2が載っている

10.
手順(4)
ポストの確認
 参加病院H2はすでに他の相手と仮マッチしており、ポストは埋まっている

11.
手順(6)
仮マッチの相手を確認
 すでに仮マッチしている相手を確認すると、参加者S1である
参加者S2の希望順位表
順位状態病院名
 
H2
 H3
 H4


参加病院H2の希望順位表
順位状態参加者名
 
S2
 S3
 S4
 S5
仮マッチ
S1

12.
手順(7)
順位の比較
 参加病院H2の希望順位表で、S1とS2の順位を比べると、すでに仮マッチしているS1よりS2の順位の方が上である

13.
手順(8)
入れ替え
 参加者S1と参加病院H2との仮マッチを破棄し、参加者S2と参加病院H2を仮マッチとする。参加者S1の希望順位表から参加病院H2を削除する。

参加者S1の希望順位表
順位状態病院名
削除H1
削除H2
 H3


参加者S2の希望順位表
順位状態病院名
仮マッチ
H2
 H3
 H4
参加病院H2の希望順位表
順位状態参加者名
仮マッチ
S2
 S3
 S4
 S5
破棄S1

 なお、参加者S2と、参加病院H2の組み合わせについては、参加病院H2の希望順位表ではS2より上位の者がいないので、この組み合わせで決定となる。

14.
手順(1)
にもどり、次の参加者を選出

<以下、この手順を繰り返す>

15.
終了
 仮マッチの相手病院なしで、希望順位表のリストが空でない参加者がいない状態になったら、この手順は終了する。
 終了時に仮マッチ状態にある相手が、最終的な組み合わせとなる。


(参考)安定なマッチングとは・・・
 もしある学生が内定した病院よりも行きたい病院があり、かつ、その病院も今の内定者よりもその学生を採用したいと考えていたり、あるいは今は内定者が決まっておらず、その学生を採用してもよいと思っている場合は、安定なマッチングと呼ばない。学生と病院とのいずれの組み合わせも(相手がいないよりはいくらかでも良いといえるような)内定者が決まっており、かつ誰もが不満な状況にはないとき、安定なマッチングが成立していると呼ぶことができる。


(参考)

マッチングが使用されている外国での例


○研修医と病院のマッチング

 ※米国のマッチング
実施機関・・National Residency Matching Program(NRMP)
範囲・・全国

 ※カナダのマッチング
実施機関・・Canadian Intern & Resident Matching Service
範囲・・全国

 ※英国の地域別マッチング
実施機関・・地域医療団体
範囲・・エジンバラ、バーミンガム、ニューキャッスル等の7地域において、それぞれの地域単位で行われている

○その他職種のマッチング

 ※カナダ(トロント、バンクーバー、アラバマ)
対象・・新聞記者の就職先
実施機関・・Articling Student Matching Program


*出典
 "The NRMP As a Labor Market : Understanding the Current Study of the Match" Alvin E.Roth,etc (JAMA, April 3, 1996, Vol.275, No.13,pages 1054-1056)


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