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「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」報告書

 本検討会は、平成14年4月以降、救急救命士の業務のあり方等について検討を重ねてきたが、このたび、ワーキングチームから提出された報告書を基に検討した結果、別添のとおりとすることについて、本検討会として意見の一致を見たので報告する。

平成14年12月11日

救急救命士の業務のあり方等に関する検討会
座長 松田 博青


(別添)

救急救命士の業務のあり方等について

I 総論

 心肺停止患者の救命率の向上を図るためには、バイスタンダーによる救急手当、搬送時の救急救命処置、医療機関の専門的治療の各段階で最善の措置が講じられることに加え、関係者相互の緊密な連携の下に一刻も早く次段階への橋渡しを行っていくことが必要である。
 秋田市など一部地域において救急救命士による気管挿管が違法に行われていた件に関しては、救急関係4学会による検証作業結果の報告が先般行われ、病院実習、搬送記録、関係機関の監視・指導体制などに関して問題点が指摘されている。今後、これらの指摘を踏まえ、制度の適正な運用や関係職種間の信頼関係の再構築等を図っていく必要がある。
 メディカルコントロール体制の確立が、救急救命士の業務拡大を行っていく上での前提であり、24時間の医師からの指示・指導体制、教育・研修体制、少なくとも、除細動及び特定行為等の対象となる心肺機能停止患者への処置に対する検証票を用いた事後検証等を含めた事前事後のメディカルコントロール体制の整備を早急に図る必要がある。その際、メディカルコントロールは、救急救命士の業務の適正化と向上を図るための協同作業であるという認識を関係者が共有した上で、医療行政と消防行政の緊密な連携によって必要な体制整備を図っていくことが必要である。
 メディカルコントロール体制の構築には、地域における医療関係者の幅広い参画と協力が不可欠であり、病院実習の受け入れ体制や指示・指導体制の充実を図る必要がある。特に、メディカルコントロールの中核機関となる救命救急センターについては、機能格差の是正を図りつつ、各二次医療圏への設置を将来的目標とした整備を促進すべきである。さらに、ドクターカーの一層の配備や活用、医療機関と消防機関の連携の一層の強化など、医師がより積極的に救急現場に赴くことができる方策も推進すべきである。また、メディカルコントロールや救急救命士の研修等に携わる専門医の絶対的不足を考えると、救急専門医の養成・確保方策のあり方について関係学会の意見等を踏まえて更に検討を深め、その充実強化を図る必要がある。
 救急救命士の処置範囲の拡大に伴う対応を含めたメディカルコントロール体制の整備に当たっては、医師、医療機関等の協力が不可欠であることから、万一の事故・訴訟発生時を想定し、救急救命士及び関与する医師、医療機関等の法的責任が明確化されるよう、業務委託等の際には適切な契約の締結等を図ること、また、患者及びその家族等に対する情報開示の方法について、各自治体ごとに、あらかじめ明確化しておくことが必要である。
 救急救命士の処置範囲の拡大など救急救命士の業務の高度化と資質の向上を図っていくためには、現行の養成課程や国家試験のあり方の見直しが必要である。この場合、今後拡大される業務の具体的範囲や救急救命士の充足状況等も勘案しつつ、心肺停止患者に対して安全かつ有効な処置を行うという観点に立って、卒後研修を含めた養成方法や養成期間の問題など、そのあり方を検討していく必要がある。
 各救急隊に少なくとも一人の救急救命士を配置することを目標に救急救命士の養成を推進しているが、配置率の全国平均は6割程度にとどまっており、地域格差も相当見られるので、このような状況を早急に是正するため、具体的な需給計画に基づいて救急救命士の養成、採用の促進を図るべきである。


II 各論

1 除細動

 除細動は心室細動の第一選択治療として迅速性が強く求められる処置であり、「包括的指示下での除細動に関する研究会」中間報告を踏まえ、プロトコールの作成、普及を図るとともに、講習カリキュラムに沿った必要な講習が行われるようにするほか、実施後の医師への報告様式の普及など事後検証の仕組みの具体化を図るなど、事前・事後のメディカルコントロール体制を早急に整備する等の準備を尽くした上で、平成15年4月を目途に、広く救急救命士に対し包括的指示による除細動の実施を認めるべきである。
 アメリカで公共施設への除細動器の配置等が急速に進んだ背景には、有効性と安全性の双方に優れているとされる二相性波形除細動器(以下「新型除細動器」という。)の普及がある。 包括的指示化に合わせ、新型除細動器について切替えに要する費用・期間等の検討を踏まえた具体的な導入スケジュールに基づき救急隊において早期導入を図る必要がある。
 無脈性心室頻拍についても早期の除細動が必要であり、包括的指示化に合わせて、救急救命士による除細動の対象とすべきである。

2 気管挿管

 気道確保の方法として既に救急救命士に認められているラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウェイは、安全性に優れていることはもちろんのこと、適切に使用すれば気管挿管と比しても遜色のない有効性を有するものであることを再認識し、救急救命士が取扱いに習熟しているこれらの器具の最大限の活用を図るべきである。
 気管挿管については、「救急救命士による適切な気道確保に関する研究」の報告にもあるように、院外心肺停止症例全体の救命率向上に寄与するとの根拠は得られていない。しかしながら、気管挿管でなければ気道確保が困難な事例も一部存在することから、医師の具体的指示に基づき救急救命士が気管挿管を実施することを限定的に認める必要がある。
 救急救命士に限定的に気管挿管を認める上で必要となる条件は、別紙のとおりと考えられるが、特に、病院における実習の成否が、救急救命士による気管挿管の制度化に当たって最も重要な課題である。したがって、病院実習については「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」の研究結果を踏まえた実習ガイドラインの作成、普及を図り、専門医の指導の下に患者のインフォームドコンセントを得ること等、当該ガイドラインに沿って適切に実習が行われるよう、関連団体、受入れ医療機関等と十分協議する必要がある。
 気管挿管でなければ気道確保が困難な具体的事例については、「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」の研究結果を踏まえたプロトコールについて周知を図る必要があるが、気管挿管の危険性を十分に認識し、適応外事例に対する実施がなされないよう十分留意すべきである。
 救急救命士資格を有するだけで気管挿管を認めることは適当でないとされたことを受けて、「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」の研究結果を踏まえ、気管挿管に必要な専門的知識に関する講習と、所定の30症例以上の病院実習を修了した者を、都道府県等において個別に認定する必要がある。
 同じく、再教育についても同研究結果を踏まえ、既存の再教育の機会等を有効に活用しつつ、救急救命士に対し気管挿管に関する適切な再教育を実施する必要がある。
 ついては、これらの諸条件について整備、普及を図った上で、平成16年7月を目途に、必要な講習・実習を修了する等の諸条件を満たした救急救命士に、限定的に気管挿管を認めるべきである。

3 薬剤投与

 救急救命士に薬剤投与を認めることの適否については、「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」の中で関係学会等による検討を行った結果、文献検索等による心肺蘇生時の薬剤投与(エピネフリン、アトロピン、リドカイン)の有効性を示す明確な根拠が見つからなかったこと、副作用が生じた場合に適切に対応する能力と準備が必要であること、高度の医学的判断を要する行為であることなど、除細動や気管挿管に比較するとより危険を伴う行為であること、併せて、これに対応したものを含めたメディカルコントロール体制の整備が十分でないこと等を理由として否定的な意見が多かった。
 一方、薬剤の有効性に関しては、EBMという考え方が確立する以前から普遍的に使用されているため、その効果を検証しようとする試みがなされなかったと解し得ること、適正に行われれば心肺停止患者の救命率向上に一定の効果を期待できること等を踏まえ、必要な教育を受けた救急救命士に対し、十分なメディカルコントロール体制の下で医師の具体的指示が確実になされることを前提に、エピネフリンの使用については認めてもよいとの意見があった。
 これらのことを踏まえれば、救急救命士に薬剤投与を認めることについて、直ちに結論を出すことは困難であるが、救急救命士が医療機関において必要な技術を日常的に習得できる体制や、実習、業務、事後検証、再教育が一貫して行える体制整備を含め、担当医と救急救命士が日頃から顔の見える関係を築き、相互の連携と信頼の下にメディカルコントロール体制が構築されることを前提とした上で、次のような検証等を行い、これらの結果を踏まえて、本検討会において早期に結論を得るべきである。
1)  救急救命士が行うものとした場合の薬剤の有効性と安全性に関し、ドクターカー等における研究、検証を、心拍の回復に必要となる最小限の薬剤に限定して行うこと。
 その際、平成15年中を目途に、これらの研究、検証の結果をできるだけ早く得るようにすること。
2)  各地域におけるメディカルコントロール体制の整備状況の把握及びその質の評価。
 上記の結論として、救急救命士に薬剤投与を認めるとした場合には、次の点について必要な措置を講じ、早期実施を目指すべきである。
1) 心拍の回復に必要となる最小限の薬剤について、救急救命士が安全かつ適切に使用するための、適応、禁忌及び用法、用量の標準化等。
2)  薬剤投与が除細動、気管挿管に比較して高度な医学的判断を要する行為であることにかんがみ、必要な知識と技術を習得することはもとより、医療職種として必要とされる倫理観や判断能力を培うことが必要とされることを踏まえた現行の半年課程のあり方を含めた養成課程及び国家試験等の見直し。


(別紙)
気管挿管を認める上で必要な条件

1 知識・技能の十分な習得

(1)必要な知識の習得
(1) 免許取得済み者に対する講習等
 「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」報告を踏まえたカリキュラムに沿って、免許取得済み者に対する講習を行うこと
 さらに、養成カリキュラムの追加、変更について検討すること
(2) 国家試験の見直し
 「救急救命士国家試験のあり方等に関する検討会」において、国家試験の見直しを行うこと

(2)必要な技能の習得
(1) 実習ガイドラインの整備、普及とガイドラインに即した実習の実施
 「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」報告を踏まえ、実習ガイドラインの整備、普及を図り、ガイドラインに即して適切に実習を実施すること
(2) 実習の受講資格
 必要な知識を習得した者
(3) 実習内容
 地域メディカルコントロール協議会の依頼を受けた医療機関において、専門医の指導の下に、全身麻酔症例を対象に所定の30症例以上実施すること
(4) インフォームドコンセント
 実習に際し、専門医の指導と責任の下に、実習について十分な説明を行った上で、患者のインフォームドコンセントを書面で得ること
(3)研修(講習・実習)修了の認定と登録
(1) 研修修了の認定
 救急救命士は実習先の病院から交付された実習修了証明書(仮称)を都道府県に提出し、都道府県は都道府県メディカルコントロール協議会の意見を聞いた上で救急救命士に対し研修修了の認定書を交付すること
(2) 研修修了者の登録
 都道府県は研修修了の認定書を交付した者を名簿に登録し、名簿の管理を行うこと

(4)再教育
   「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」報告を踏まえ、気管挿管の実施に必要な知識、技能を習得し、研修修了の認定書を交付された救急救命士に対し、気管挿管の技術を維持するために必要な再教育を実施すること


2 事前・事後の十分なメディカルコントロール

(1)プロトコール等の作成
   「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究」報告を踏まえ、対象となる症例、手順等に関するプロトコール等を作成、普及し、救急救命士はそれを遵守すること

(2)医師の具体的指示
   実施の際における個別ケースごとの医師の具体的指示を受けること指示した医師は、指示内容を記録し保管すること

(3)事後検証
   救急救命士は、搬送直後に、初診医に必要な報告を行うこと地域のメディカルコントロール体制の下で、検証票を用いた事後検証を受けることその際、検証票に初診医の意見が反映できるようにすること


3 事故・訴訟発生時の体制整備
(1) 救急救命士及び医師の法的責任の明確化
 万一の事故・訴訟発生時を想定し、救急救命士及び研修や具体的指示等に協力する医師、医療機関の法的責任が明確化されるよう、業務委託等の際には適切な契約の締結等を図ること
(2) 患者及びその家族等に対する情報開示
 患者及びその家族等に対する情報開示の方法について、各自治体ごとに、あらかじめ明確化しておくこと

4 その他
   当該条件については、実施状況等を踏まえ、必要に応じて検討を加えること


「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」委員名簿

朝日 信夫 救急振興財団副理事長
  石原 哲 全日本病院協会常任理事
  犬賀 武敏 姫路市消防局救急救命士
  宇都木 伸 東海大学法学部教授
  円山 啓司 市立秋田総合病院中央診療部手術室長
  上嶋 権兵衛 大宮市医師会市民病院副院長
  北崎 秀一 山梨県総務部長
  木村 佑介 東京都医師会理事
  金 弘 船橋市立医療センター救命救急センター長
島崎 修次 日本救急医学会理事長
  杉山 貢 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター病院長
  高橋 昭 出雲市外4町広域消防組合消防本部消防次長
  武田 純三 慶應義塾大学医学部麻酔科教授
  土屋 章 日本病院会常任理事
  土居 弘幸 静岡県健康福祉部技監
  外山 孚 長岡赤十字病院副院長
羽生田 俊 日本医師会常任理事
平澤 博之 千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授
松田 博青 日本救急医療財団理事長
  三浦 孝一 京都市消防局安全救急部長
水ア 保男 東京消防庁救急部長
  南 砂 読売新聞社編集局解説部次長
  森 正志 仙台市消防局警防部長
  森山 弘子 日本看護協会副会長
山本 保博 日本医科大学附属病院高度救命救急センター長
  (25名) (五十音順、敬称略)
  ◎は座長

○はワーキングチーム(WT座長は島崎委員)

[照会先]
 厚生労働省医政局指導課(担当)佐々木、古川
  電話 03-5253-1111 (内線)2559、2555


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