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介護報酬見直しの考え方

平成14年12月9日
社会保障審議会介護給付費分科会

 当分科会は、平成13年10月から今日まで17回にわたり、今後のサービスのあり方を含め、介護報酬の見直しについて議論してきた。

 介護保険施行後の2年半余の実績を踏まえたサービスの課題としては、在宅サービスの利用者が増加する一方で、施設入所を希望する者が依然として多い傾向が見られるほか、在宅・施設サービスともに質の向上と効率化を図らなければならないことが挙げられる。この場合、介護サービスや保険料負担においても、地域によって大きな格差があることにも留意しなければならない。また、施行後初めてとなる今回の介護報酬の見直しにおいては、当初の設定が実態に即して合理的であったかどうかの検討を踏まえた見直しを行うことも必要である。

 平成15年度に予定される介護報酬の見直しにおいては、以上のような観点を踏まえ、在宅重視の理念の実現やサービスの質の向上と効率化など、以下に掲げる考え方に沿って、各サービスの担うべき役割を念頭におきつつ、報酬体系や単位について所要の措置を講ずるべきである。

 介護報酬の全体の改定については、第2期介護保険事業計画期間の介護サービスの増大及びこれに伴う保険財政への影響が大きいことや、近年の賃金・物価の下落傾向、介護保険施行後の介護事業者の経営実態を踏まえ、保険料の上昇幅をできる限り抑制する方向で、適正なものとすることが必要である。

 また、介護の質の向上と効率化を図る観点から、事業者間の公正な競争と事業運営の効率化を促すため、事業コストが適切に評価されるよう介護報酬を設定することが必要である。

 なお、当分科会において、介護報酬とともに制度面の見直しに関する数多くの指摘がなされたところである。介護保険法附則において、施行後5年を目途に見直しを行うこととされているが、これらの課題については早急に検討を行い、見直しが可能なものについては、必ずしも5年後を待たず、逐次実施を図るべきである。また、制度の見直しに向けて必要な検討体制について、早期に整備すべきである。

I 基本的な考え方
 介護保険制度施行後初めてとなる今回の介護報酬の見直しにおいては、限られた財源を有効に活用するため、効率化・適正化と並行して、制度創設の理念と今後の介護のあるべき姿の実現に向けて、今回は、必要なものに重点化した見直しを行うことが大切である。
 このため、在宅重視と自立支援の観点から、要介護状態になることや要介護度の上昇を予防し、要介護度の軽減を図るとともに、要介護状態になっても、できる限り自立した在宅生活を継続することができるよう支援する。また、いったん施設に入所した場合でも、在宅生活に近い形で生活し、将来的には、できる限り在宅に復帰できるよう支援する。
 また、個々の利用者のニーズに対応した、きめの細かく満足度の高いサービスが提供されるよう、サービスの質の向上に重点を置いた見直しを行う。
 さらに、痴呆ケアの確立と質の確保を図る。
 なお、施設と在宅の関係、施設ごとの特性や経営主体による諸規制等にも配慮することが必要である。

II 具体的な方向
1. 居宅介護支援(ケアマネジメント)
 居宅介護支援(ケアマネジメント)の業務の実態等を踏まえ、利用者の要介護度に応じた包括単位を廃止し、要介護度に関わらない一律の評価とする。
 また、居宅介護支援の質の向上を図る観点から、一定の種類数以上のサービスを組み合わせた場合を評価するとともに、利用者の居宅の訪問など一定の要件を満たさない場合の評価を見直す。
2. 在宅サービス
(1) 訪問介護
 訪問介護の適正なアセスメントを図る観点から、身体介護と家事援助が混在した複合型を廃止する。また、「家事援助」から「生活援助」に名称を改めるとともに、短時間のサービス提供や生活援助について、自立支援、在宅生活支援の観点から適切に評価する。
 さらに、訪問介護の質の向上の観点から、3級訪問介護員によるサービス提供の場合の減算の算定範囲を拡大する。
 いわゆる介護タクシーについては、適切なアセスメントの下に、算定対象を限定し、適正化を図るべきである。
(2) 通所サービス
 要介護者の在宅生活を支援するとともに、利用者の利便性の向上や家族介護者の負担の軽減を図るため、6〜8時間の利用時間を超えてサービスを提供する場合を適切に評価し、延長加算を新設する。
(3) 訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション
 円滑な在宅生活への移行、在宅での日常生活における自立支援を図る観点から、訪問リハビリテーションを評価するとともに、通所リハビリテーションについて、個別的なリハビリテーション計画に基づくサービスを評価する。
(4) 居宅療養管理指導
 きめ細かく個別的な指導管理の充実を図り、利用者の在宅生活における質の長期的な維持・向上を目的として、月当たり算定回数や単位数の再編を行う。
(5) 痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)
 痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)において、痴呆性高齢者が安定的に自立した生活を営むことができるよう、夜間のケアを含めたサービス内容についての入所者ごとのアセスメント等を行うとともに、夜間介護体制の整備されたグループホームについて、夜間ケア加算を新設する。
3. 施設サービス
(1) 特別養護老人ホーム
 画一的な集団処遇ではなく、在宅での暮らしに近い日常の生活を通じたケアを行う観点から、入所者の自立的生活を保障する個室と、少人数の家庭的な雰囲気の中で生活できるスペースを備えた小規模生活対応型特別養護老人ホーム(仮称)で行われるユニットケアを評価する。これに伴い、居住費について自己負担を導入し、低所得者対策も講じた上で、在宅との費用負担の均衡を図る。
 また、特別養護老人ホームにおいて要介護度の高い者について報酬上も配慮する。
(2) 老人保健施設
 入所者の介護度の改善と在宅復帰を進める観点から、老人保健施設において、日常生活動作等の維持・向上を重点とした個別的なリハビリテーション計画に基づくサービスを評価するとともに、老人保健施設が行う訪問リハビリテーションを評価する。
(3) 介護療養型医療施設
 介護と医療の役割分担、他の介護保険施設との役割分担を図る観点から、長期にわたる療養の必要性が高く、要介護度の高い者の入院を評価する。また、個別的なリハビリテーション計画に基づくサービスを評価する。
 経過措置に従い、療養病床を有する病院の看護職員6:1/介護職員3:1の人員配置の評価を廃止する。
 さらに、介護保険適用病床と医療保険適用病床の機能分化を図る一方で、介護保険と医療保険の制度の狭間で患者の受け入れ先がなくなることを防ぐため、一定の医療処置を要する者を対象に、重度療養管理を新設する。
 なお、介護報酬設定における人員配置の評価の在り方については引き続き検討することとする。
(4) 施設入所者の在宅復帰の促進
 施設入所(入院)者の在宅復帰を指向したサービスを評価し、在宅復帰を促進するため、退所(退院)前の施設と居宅介護支援事業所の連携を積極的に評価する観点から、退所(退院)時指導加算を再編し、退所(退院)前の連携について必要な加算を新設する。


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