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年金制度改正に係るこれまでの意見の整理(案)
〜平成14年10月29日社会保障審議会年金部会資料より抜粋〜


検討項目 論点 委員意見 備考
5.支え手を増やす方策
(1)取組の意義
○就労形態を含めた個人のライフスタイルの多様化に対応して年金保障の充実を図るとともに、少子高齢社会においても給付と負担のバランスを図り安定的な制度運営を行っていくことが重要ではないか。

【安定的な制度運営を行う観点から支え手を増やす取組を評価する意見】

  • 働く女性は増えているけれども厚生年金の被保険者は増えていない。女性の雇用者が年金の支え手となることが必要。第3号被保険者は支え手として期待できる。(井手)
  • 女性、特に第3号被保険者を中心に支え手を増やす考え方、また、高齢者の雇用拡大によって支え手を増やす考え方に賛成。(渡辺)
  • 雇用形態に対する事業主負担の中立性を確保することが必要。(山崎)
  • これ以上、支給開始年齢の引上げや給付の引下げ、保険料の引上げなどはすべきでない。保険料を払える人を増やすことに目を向けるべき。(今井)

【年金保障の対象を拡大する観点から評価する意見】

  • 労働形態、家計の形態が多様化する中で、これまでの制度ではカバーされなかった人々も年金制度の恩恵を受けるようにするべきである。(若杉)
  • ワークスタイルの多様化が進んでおり、仕事の内容でなく「立場」により保険料の負担や給付が変わることは納得性に欠け、また届け出漏れなどで一層の空洞化が生じるおそれもある。<再掲>(井手)

     公的年金制度は、自らが自らを支えるのであり、加入者を増やすこと自体は長期的には財政的には中立であるので、原資の提供者を拡大するというように受け止められる「支え手を増やす」という言い方は適切ではない。(若杉)

【関連して外国人労働についての検討が必要とする意見】

  • 少子高齢化が急速に進む中、外国人労働のあり方について、本格的な国民的論議の課題として取り上げる必要がある。(矢野)
 
(2)短時間労働者等に対する厚生年金の適用 ○短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を図るべきではないか。その場合、保険料負担の増加、年金財政への影響、健康保険との取扱いの均衡等について、どのように考えるか。

○派遣労働者に対する厚生年金の適用拡大について、どう考えるか。

【短時間労働者に対する厚生年金の適用を進めるべきとする意見】

  • ライフステージに応じて多様な働き方をする女性にとって(今後は男性も)、短時間労働者である期間に関しても厚生年金を適用することが、将来の保障のために必要。(井手)
  • 所得のある者は保険料を拠出するのが原則であり、非正規就労者への厚生年金の適用を拡大する。しかし、定額の給付があるため、低賃金の者への適用拡大には限界。(堀)
  • 短時間労働者についても、同じ雇用労働者としての均等待遇の観点から、社会保険に加入する権利を認めるべき。(大山・山口・小島)
  • 短時間労働者の適用については、年金・健康保険一体の原則で進めるべきであり、短時間労働者に対する適用拡大による財政効果については、厚生年金のみならず、医療保険や税も含めて考えるべき。(山崎)
  • パートタイム労働者の均等待遇が生産と雇用を増やし、年金財政を支える。(大澤、杉山)
  • 事業主負担については、雇用形態、労働時間、賃金等に対して中立的な、賃金の支払総額を課税標準(外形標準)とする賃金支払い税方式を採用すべき。(山崎、杉山)

【短時間労働者に対する厚生年金適用との関連で、第3号被保険者制度の見直しが必要とする意見】

  • 短時間労働者に厚生年金の適用拡大を実施する場合には、公平性の観点から第3号被保険者制度の見直しが必要。(井手)

【短時間労働者に対する適用拡大を論じるには定量的な議論が必要とする意見】

  • 支え手の拡大について、定性的な議論だけでなく、年金財政に与える影響について定量的な議論が必要。そもそも、支え手の問題を論じる前に、基礎年金と2階部分の役割など制度の抜本的な改革の方向を決めることが必要。(矢野)

【適用拡大については対象となる被用者や事業主の同意が得がたいとする意見】

  • パート労働者等を多数雇用する企業では、医療保険を含めて負担が増えるパート労働者本人の同意が得られないことや事業主負担が増えることを理由として、反対する意見が強いことに留意する必要がある。(矢野)

【個人事業所の労働者保護の観点から考える意見】

  • 一定の年齢とともに主たる収入がなくなった場合に生活を支えるという年金の役割を踏まえ、現在は任意加入になっている5人未満の個人事業所にも厚生年金を適用すべき。(大山・山口・向山)
 
(3)高齢者の就労促進 ○現在の在職老齢年金の仕組みについて、高齢者雇用との関わりをどう評価するか。

【在職老齢年金制度が一定の就労促進効果を有するとの意見】

  • 在職老齢年金制度の就労阻害効果が主張されるが、賃金が増えれば「賃金+年金」も増えるなどから疑問。支給開始年齢が完全に65歳まで引き上げられるまでは、基本的に現行制度の枠組みを維持すべき。屈折点となる所得額、限界税率は見直しの余地がある。(堀)
  • 平成6年の在職老齢年金制度の見直しは、雇用情勢が悪化する中で高齢者の雇用を維持する一定の効果があったとも考えられる。(山崎)
 
○高齢者の本格的な就労を促進していくため、就労に対して年金制度の影響が及ばないような新たな仕組みを検討することについてどう考えるか。

【在職老齢年金制度以外の方策についての意見】

  • 高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられる。(神代)
  • 繰り下げ支給案は、限界税率が変わらなければ就業阻害効果は現行と変わらない点、(2)事業主が在職老齢年金をあるものとして賃金額を決定するおそれがあり、賃金抑制効果も現行と変わらない点で、問題がある。(堀)
  • 支給開始年齢が65歳に引き上げられた後は、支給開始年齢という考えを廃止し、年金額の調整を行った上で60〜69歳のいつからでも受給できる考えに変えるべき。(堀)
  • 高齢者を雇用することの年金財政上の貢献に応じた事業主負担制(メリット制)の導入を提案。(山崎)
  • 在職者にも年金を全額支給した上で、年金と給与を合算して思い切った課税強化を図ることも考えられる。(山崎)
 

(敬称略)



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