02/11/28第11回労働政策審議会雇用均等分科会議事録           第11回労働政策審議会雇用均等分科会            1.日時 : 平成14年11月28日(木)15:00〜17:00 2.場所 : 厚生労働省省議室(9階) 3.出席者   労側委員: 岡本委員、片岡委員、秋元委員、吉宮委員   使側委員: 前田委員、志村委員、遠藤委員、山崎委員   公益委員: 若菜会長、渥美委員、樋口委員、今田委員、佐藤(博)委員 ○分科会長  定刻になりましたので、ただいまから第11回労働政策審議会雇用均等分科会を開催い たします。どうも本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうござい ました。  本日は奥山委員、吉川委員、佐藤(孝)委員が欠席をされています。  それでは早速、議事に入らせていただきます。本日の議題はお手元にありますように 、前回に引き続いて「今後のパートタイム労働対策について」です。前回、公益委員の 先生から検討項目を立てて、それに沿って労使からの意見を具体的に述べていただいて 議論をしたらどうか、その必要があるということでしたので、それに基づいて事務局で 検討項目というものを準備されていますので、最初にそれを説明していただきたいと思 います。 ○事務局  お手元の資料No.1です。この論点は企業内でのフルタイム正社員とパートタイム労働 者との間の、公正な処遇を実現するためのルールについてでして、この論点についてあ る程度議論していただいたあと、後日、就業調整や短時間正社員、能力開発、就業支援 といった事柄について、議論していただくということで考えています。それでは資料No. 1を簡単にご説明させていただきます。  1番目が、フルタイム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するた めのルールを明確化していく必要性について、どう考えるかです。2番目がそのルール の内容で、(1)「フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者について、 処遇決定方式を異にする合理的理由がない場合に、処遇決定方式を合わせる」という考 え方について、どう考えるか。併せて、その場合に職務の同一性について、またその合 理的理由といったことについてもどう考えるかで、お聞きしたいと思います。その中で 、また労働契約の期間の問題についても言及していただけたらと思います。  (2)は「フルタイム正社員と職務は同じだが、処遇決定方式を異にする合理的理由 がある場合のパートタイム労働者については、処遇水準の均衡を配慮する」という考え 方について、どう考えるかです。併せてその配慮の内容として、いくつかの方策を講ず ることについてどう考えるかをお聞きしています。  (3)は、すべてのパートタイム労働者に対して、正社員との処遇の違いやその理由 を説明することについて、どう考えるかです。(4)は、その他にフルタイム正社員と パートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するために何か必要なルールがあるかで お聞きしています。  2枚目の3はルールの位置づけということで(1)、(2)、(3)に書いてあるような手法に ついてどう考えるかでお聞きしています。3枚目以降については、参考資料ということ で、いま申しました論点の中で「ものさし研」「パート研」と書いてありますが、そち らのほうの関係の抜粋ですので、併せて付けているところです。以上です。 ○分科会長  どうもありがとうございました。  ただいまの検討項目について、労使それぞれ時間を20分ずつでお考えを述べていただ いて、そのあとで公益委員の先生方を交えて質問あるいは、労使からそれに対する意見 の補足をしていただくことで進めてまいりたいと思います。  まず労側委員から、20分という予定でお願いします。 ○委員  私から、いま事務局が述べました論点案に沿う形になるかどうか、一応考え方を述べ させていただきます。  1つはルールの必要性についてで、これは現状認識をどう踏まえるかの主張によって 調整が付いてくるかと思いますが、疑似パートを含めてパートタイム労働者が非常に基 幹労働化している現状なのですが、正社員との処遇差は一向に改善されず、むしろ拡大 していることがある。私どもが行っているいろいろな労働相談などを見ましても、有給 休暇がないという、非常に基本的な権利についての相談が後を絶たないことからみます と、正社員との処遇格差は、まさに身分格差と言っていいほどの現状にあるのだろうと 。  パート労働に関わらず、派遣などいろいろなタイプの就労形態が生まれてきています が、今後ますます経済的要因などを考えますと、正社員と言われる方以外のいわば非正 社員がどんどん増えていくことになるし、雇用労働者に占める割合も3割に迫ろうかと いう中で均等待遇原則というものの考え方の確立は急務であるという認識です。さらに 男女が共に仕事と家庭を両立できるという、係り方暮らし方を実現しようというのがい まその気運が強まっているわけですが、中でも雇用失業情勢を踏まえるとワークシェア リングという議論も進んでいるわけです。労働時間短縮によるワークシェアリングとい う枠組を作るためにも、働く時間の長さ短さによらず、均等な待遇を確保されているル ールの確立が必要であるという意味です。さらには我が国が既に批准しているILO156 条約、家族的責任条約がありますが、パートタイム労働者の多くは女性であること。中 でも仕事をやめているのは育児、介護を担う女性という現状で、社会的未成熟という中 で均等待遇原則と併せて社会的制度の充実も欠かせないことがあると。  ILO175号条約、パート条約やEUのパート指令、有期指令あるいは派遣労働に関す る指令など多様な雇用形態における均等待遇の原則を定めるということは、もう国際的 な流れと言ってもいいわけで、我が国も国際社会の有力な一員であると考えると、そう いう国際的流れに沿った形で考えていく必要がある。  均等待遇原則を確立して、どんな雇用形態であっても普通に働けば、自立して生活で きる賃金が保障されることが必要である。そして少子高齢化社会という現状において、 社会保障を担う支え手みたいなものを増やすことも避けられない現状になると、均等待 遇原則による確立は極めて重要と考えます。  今日、お手元に前回の分科会の議論を踏まえて私ども連合が、昨年の定期大会で決定 しました法律の要綱骨子案を資料として配付させてもらっていますが、この法律の骨子 案の積極的な意義はパートタイム労働者と有期問題を結合した法案要綱を作っています 。再三再四この分科会でも私どもは意見を述べているわけですが、パートタイム労働者 の多くは有期契約という現状の下にありまして、均等待遇原則の確立と併せて有期であ るがゆえに、雇用が非常に不安定である、使い勝手のいい労働者がどんどん増えていく のではまかりならないという現状で、有期契約という雇用形態による差別を禁止するこ ともこの法案要綱で述べていまして、そういう意味ではパートの均等待遇と有期契約の 均等待遇というのは、極めて重要であるということです。  そのほかにも、社会保険の加入に関する使用者の義務、労使協議におけるパート労働 者の参画、就業規則の作成・変更に伴うパート労働者の参画などもありますし、加えて 賃金支払原則で言えば、もちろん均等待遇の観点で支払原則があるのではないか。時間 外労働についても短時間労働、契約就労時間を超えたら時間外労働を命じてはならない こともたしかに述べています。  相互転換も述べています。全部を説明すると時間がありませんから、11番目に「契約 期間と期間を定める理由の明示」ということで、仕事が継続してありながら有期契約は 合理性にもたないということで、これはヨーロッパ等でも見られるように、基本的な雇 用の形態は長期雇用。期間の定めのない雇用は原則であるという認識の下に、有期であ る場合にはその理由を明示させることが必要であるというのと、12番目には契約の更新 の歯止めを作っていて、合理的理由のある有期なので1回だけは大目に見るけれども、 それ以降は認めないという更新の回数も制限しています。14番目は空きポストに関する 情報提供で、期間を定めのない契約の労働者を募集する場合、空きがある場合にそこで 働いているパート労働者にその情報を提供して、仕事の機会を確保すること。さらには 社会保障の加入義務を怠った場合などについては、罰則を科すことも加えていまして、 この法案要綱を私どもは何としても実現したいところで、いうところのルールの必要性 をこのようにして準備しているわけです。  ルールの内容です。これから述べる内容は、私どもの連合の中で組織内討議をいまお 願いしている内容で、決定をみていない状況ですが、この分科会でのテーマにあります ので、とりあえずそれを紹介して意見に代えたいと思います。  まず私どもとして、処遇差の合理的理由がある場合とない場合を考えていて、先ほど 申し上げたパートタイムの短時間労働、あるいは有期契約労働を理由にしなくてはなら ない場合でも、合理的な理由があれば処遇差があってもいいということですが、その合 理的な理由とは何だということで、1つ目は職務の違いがあれば差があってもいい。そ の職務の違いはどのように考えるかで、職務内容の難易度。肉体的、精神的負担などの 労働の負荷、資格や免許など業務に要求される知識・技能、それから業務や利益保障に 対する責任の度合があります。2つ目に、労働者自身が持っているキャリア、勤続など の職務遂行能力の違いも、処遇差の合理的な理由に挙げてもいいのではないか。加えて 、いま正規労働者の中にも持ち込まれている成果・業績の違いなども、合理的理由とし て挙げています。  さらに、この設問の中にbとして、キャリア管理の実態が同じか異なるか、どうする かですが、私どもとしてはキャリア管理の実態が同じか異なるかではなくて、仕事の内 容で判断すると考えています。そういう前提を置いて、合理的理由とならないものとし て何を考えるかですが、学歴、性別の違いをもって差をつけることは合理的理由にはな らない。あるいは採用手続の違い。採用する場合に現状はちょっとどうなるかわかりま せんが、多くは縁故なんていう採用も結構あるわけですが、採用手続の違いなどによっ ては差をつけてはならない。この当分科会の議論のベースというか資料になっている報 告の中で、最大の論点にされた拘束・結び付きの程度についてです。所定外労働の可能 性の有無あるいは労働時間、休日、夏期休暇等の休暇設定の自由度、あるいは兼業規制 の有無、雇用契約期間の違い、配転・転勤の可能性の有無については合理的理由になら ないということで、いま議論をお願いしています。残業、配転、転勤の有無については 中でも議論があるわけですが、転勤があるかもしれないという可能性の違いだけで、そ の段階でもう雇用管理区分を区分して、そこで差をつけるようなものはいかがなものか ということで合理的にならないということですし、さらには入口の段階からキャリア管 理の違いということでコース区分をしますと、よく思い出すのは雇用機会均等法の例で す。これも全国転勤有り無しということで、結果総合職は男性、一般職は女性と区分け されていて、いわば均等法の実質的な平等は確保できないと。コース別管理というのは そういう例がありまして、まさに時間外労働、配置転換、転勤というものを合理的な理 由に入れてしまいますと、そういうことが起こることが懸念されますので、私どもとし ては先ほど申し上げた家族的責任条約、あるいは男性でも女性でも仕事と家庭を両立で きることを考えますと、配転等の分を含めたものを合理的理由にあげることについては どうかなということで、組織内討議をお願いしている内容です。  研究会報告では賃金のところをかなり念頭に入れていますが、私どもとしては賃金だ けではなくて社員食堂や継続した福利厚生、あるいは慶弔休暇、解雇の手続、つまり整 理解雇をする場合に多くの企業は、まずパートの労働者からという実態が多いわけです が、いわばこの問題についてもちゃんとしたルール、正規労働者と言われている方々と 同じようなルールで、手続で行ってもらう。あるいは安全衛生などについては、同じよ うな制度を適用するということで考えています。  労働契約の契約期間が有期か無期かという問題ですが、先ほど申し上げましたように 基本的には労働契約は有期であることや、契約期間が違うことを処遇者の合理的理由と するのは適切でない。本当にテンポラリーな一時的な業務雇用について問題はいろいろ ありますが、責任の違いや職務の違いとして説明できるのではないかと考えています。  (2)のフルタイム正社員と職務は同じだが、処遇決定方式を異にする合理的理由が ある場合のパート労働者についてはどうかですが、処遇決定プロセスへの参画あるいは 能力の向上に応じた処遇の仕組み、正社員への転換制度というのは、処遇決定方式が異 なっていようとも、異にする合理的な理由があろうとも、そういう転換制度は行ってい けるのではないかと考えています。また現在の職務が異なっていても、あるいは同じ職 務を行う正社員がいない場合、つまりパートタイム労働者のみの職場が考えられますが 、そういう場合でも処遇決定プロセスへの参画や能力の向上に応じた処遇の仕組、正社 員への転換制度作りは必要であると考えていますし、職務は異なっているからと除外す るのでは多くのパート労働者の処遇改善、納得性の向上に繋がらないのではないかと考 えます。  均衡配慮義務の措置として、正社員転換制度を上げていますが、これはやはり均等待 遇原則があってできる制度だと。つまりルールがない中で、正社員から短時間正社員へ 転換できる場合、労働条件はどのぐらい下がるかわからないのでは不安で、仮にそうい う状況がない中でその制度を作った場合には、この制度は機能しないことが明確で、正 社員転換制度と均等待遇は両輪だと考えるべきではないかと思っています。  転換制度等についてですが、多くのパート労働者は公正な処遇を受けている実感を持 てないでいることは、将来にとっても大きな損失ですし、パートタイム労働者もフルタ イム正社員も同様に企業にとっては貴重な人材であると考えます。その観点から、職務 が異なれば処遇決定方式に違いがあってもよいということにはなりません。能力を高め ていくための機会をより多く、より平等に与えられるべきではないかと考えます。  (3)は、すべてのパート労働者に対して、正社員との処遇の違いやその理由につい てどう考えるか。これについては、現在は疑似パートがたくさんいるわけですが、そう いう方も含めてパートタイム労働者に対して同じような仕事をしても、なぜ正社員と処 遇差があるのかをきちんと説明されているとは言い難い現状にあります。パートだから ということでなく、企業に処遇差の改善を求めることは、適正な雇用管理を行うことに 繋がるのではないかもあるし、またその説明を聞くことでパート労働者の納得性も高ま るのではないかと考えて、これは当然であると考えます。  (4)は、その他にフルタイム正社員とパート労働者との間の公正な処遇を実現する ために、何か必要があるのではないか。これについては、まずその処遇差の改善のため に、救済制度というものを事業所の中と外に設けることが必要になる。特に外について は現行ある個別紛争などのシステムがありますが、そういう制度を活用しながら救済制 度をちゃんと整備する必要がある。先ほど申し上げました、さらに処遇差の合理的理由 については、使用者に説明責任を課すことが必要になるわけです。  パートタイム労働者の多く、約7割と数字が頭に入り込んでいるのですが、7割が入 っている有期契約労働者という現状の中で、その多くが短期契約の反復更新を繰り返し ている。こういうのは、実質的に常用化している有期のパート労働者の雇用保障という ものも確保していく必要があるということで、そういうルールを作るべきだということ です。  無期の労働者を採用するに当たって、有期のパート労働者に対して情報提供するとい う空きポスト情報の提供も義務付けるということは、使用者に義務付けることも必要に なるということですし、研究会報告が直ちに均等待遇原則などのルールを制定した場合 に、雇用機会の抑制が働くことのご心配をされている面がありますが、これは均等法を 作るときもそういう話がありました。そういうことは当然懸念されますが、その場合例 えば派遣に切り替えたことなどについては、派遣法の中で均等待遇原則を確立すべきだ し、さらに派遣会社からある一部だけ仕事を委託した場合について、比較する労働者が 法人が違うことを考えますから、そういう場合は比較する通常労者の範囲を企業の外に 拡げる。ILO175号条約にもあるように同一企業、同一産業あるいは同一地域というと ころで比較すべき労働者を拡大することが必要ではないか。さらには労働組合法に定め られている労働協約の拡張適用についても労働者の4分の3要件とありまして、これは なかなか使い勝手が悪い。したがって、この拡張適用要件を廃止されることによって、 そういうのに対して対応していくことが必要になる。さらには、労働基準法3条につい て均等待遇部分のことをおっしゃっていますが、この中に「雇用形態の違いによる差別 の禁止」を盛り込むことによって、いわば均等待遇は確保されるという意味で、そうい う整備も課題としてあるように考えています。  パートタイム労働者の労働条件の決定の参画について、現行のパート法でも就業規則 の作成・変更についてはパートの云々と書いてありますが、私どもが問題意識として持 っているのは、労働基準法の協定事項を定める場合についてのパート労働者の参画も検 討に値するのではないかということで、そこも少し議論いただければと思います。  最後に、3つ目のルールの位置付けです。連合としては、先ほど連合の法案要綱を基 に説明させていただきましたが、合理的理由のない処遇差の改善の中では、まさにいま 求めているのは均等待遇原則の法制化です。このことをきちんとやっていくべきである と考えます。その場合に、疑似パートと言われる方々に対する対応をどうするか。研究 会報告もその旨を言っていますが、それについてさらに重要なこととなりますので、疑 似パートの救済ができるようにやるべきだと思います。  4つ目に、法制化を直ちにと申しましたが、私どものパート有期契約労働法も、法律 を決めた場合の施行は5年間という経過措置を置きます。したがって、仮に次の通常国 会にこの法律を定めようと政府が提案した場合、翌年からすぐにできるかとなりますと いろいろな課題があるので、直ちには難しいだろうということで経過措置をきちんと設 けることによって、いわば準備を労使がそれぞれ行っていくことが必要ではないかと考 えます。  現行パート法というのは均等待遇の理念すら浸透させていないという現状にあります し、新たな立法もしくはパート法の抜本改正などによってまず均等待遇、均衡処遇の原 則を明らかにするという話。仮に研究会が当面の措置と述べているようですが、法律的 根拠を持たないガイドラインということにもし結論付けるなら、この分科会で議論する ことはないのではないか。何のために議論するのかというのは、まさに法制化に向けた 議論であって、私どもはそういう立場で臨んでいることを最後に表明して、意見に変え ます。以上です。 ○分科会長  それでは使用者側委員からお願いします。 ○使側委員  事務局からご提示いただいた論点の案についてですが、まずルールの必要性の問題に ついて使用者側としては、パートタイム労働者の雇用管理の改善に努力する必要性は、 いま現在もあるだろうと考えているところです。たしかにパートタイム労働者の管理に ついて、さまざまな問題が生じていることは認識していて、それを少しずつ改善するこ とについては努力していきたいと考えているところです。その際、パートタイム労働者 さんと事業主さんとが結ぶ労働契約の内容を、それぞれがしっかりと確認し合って、お 互いが納得して働いてもらうことがいちばんの基本となっていて、それが最も重要であ ると考えているところです。ただし、今回パートタイム労働研究会の報告の中で提示さ れているような労働条件の決定の問題については、労働基準法などで定められている最 低限の法律事項を除けば、基本的には労使が自主的に決めるべきことだと考えていて、 その中で公正のあり方について個別の労使の間で議論されていると認識しています。一 律的な公正の基準を定めることについては、こうした労使の多様な労働条件の決定のあ り方を、かえって歪めることになるのではないかと懸念しているところです。  パートタイム労働者とフルタイム労働者との間で、処遇の格差が開いてきたというご 指摘がありますが、これについては一般的な労働市場の需給の動向などを少し詳細に見 てもらえると、多少様子が違っているのではないかと私どもは考えていて、前回のこの 分科会でご提示いただいたような職種別や職務別の分析をしてもらうことからわかるよ うに、労働需給が切迫しているようなIT関係の職種では、かえって改善しているよう な状況もあることから、一方的にパートタイム労働者の処遇が悪化しているわけでは必 ずしもないだろうと考えているところです。ルール化を進めることによって、パートタ イム労働者の需給にかえって逆の影響が出てこないかを懸念するということです。した がって、この必要性については現状は積極的に賛成しているわけではないということで 、ご認識をいただければありがたいと思います。もちろんパートタイム労働者の雇用の 管理の改善については、個々に進めていく必要があると認識しています。  ルールの内容についてです。まず企業における処遇の決定のあり方については、さま ざまな要素を考慮して決定している企業が大部分だと考えています。例えば先ほど労働 側の委員からのご指摘もありましたように、職務の内容や困難度、複雑度、それに伴う 責任のレベル、必要とされる熟練度や職能のレベルといったようなことについて、処遇 の決定方式や水準を決定させるための1つの大きな要素になっています。そのほかにも いくつかありまして、私どもの言葉で申し上げると拘束性、転勤の有無や仕事の内容の 転換の有無の可能性、課業配分の自由度や残業の有無、勤務場所の変更の有無といった 先ほどの転勤と同じですが、雇用契約期間の長い短い、就業継続時間の長短といったよ うなこと、就業時間帯の相違といったようなことも含めて処遇のあり方を検討している ところです。加えて長期に育成する方針があるかどうか、それに伴う個々の勤労者に対 する期待度の相違、あるいは退職されるリスクの相違といったことも、処遇の中身を決 定するための大きな要因になっています。別の要因としては成果とか付加価値の質や量 といったようなことも、処遇のあり方を大きく左右します。また現在の多くの企業では 、次第に成果給的な要素を取り入れる企業が多くなってきているとは思うのですが、対 労働組合との関係もありまして勤続年数や年齢といった要素も、まだまだ無視できない 合理的な要因になっていると考えているところです。  そのほか環境的な要素として、地域における物価水準や賃金水準、労働力の需給状況 といったようなことが総合的に加味されて、賃金が決定されていると考えているところ で、仕事の内容・責任といったようなことやキャリア管理の実態の差といったようなこ とは、いま申し上げた点の中に含まれていると考えています。公正さという中身を考え たときに、多様な要素が組み入れられていると考えていて、職務の同一性、キャリア管 理の実態といったようなことだけでは多少狭いのではないか。企業の賃金決定について 、それだけで判断されてしまうとかなり実態と離れてしまって、かえって現実性がなく なってしまうことを懸念しているということです。職務の同一性について3つほど要素 が掲げられていますが、基本的にはこうした要素が職務の判断要素として入るのは理解 できますが、ただ実際にこれが適応できるかどうかを、なお十分検証していく必要があ るだろうと考えているところです。  bの項目については先ほど申し上げた点で、カバーされたと思っているところです。 そういうことを踏まえて、(1)の均等処遇原則ですが、同じ職務、同じキャリア管理 の実態が仮にあったとしても、その他の要素もあることとか、処遇決定方式については 労使が双方納得していればいいということですので、基本的には、同じ処遇決定方式に 合わせることで狭く考えなくてもいいのではないかと考えています。契約の自由という ことをもう少しお考えいただければ、ありがたいということです。  (2)の均衡配慮原則ルールについては、処遇決定プロセスへの参画のことですが、 現行のパートタイム労働法において就業規則の制定・改定についてパートタイム労働者 の意見を聴く法律がありますが、この現行法で基本的にパートタイム労働者さんの意思 については、十分に反映され得るのではないかと考えています。具体的にこのプロセス への参画の中身がどのようなことを考えていらっしゃるのかが、ちょっといまだにはっ きりはしていないのですが、別途新たなプロセスを作ることについては必要ないのでは ないかと考えています。  仕事の内容・役割の変化、能力の向上に応じた処遇の仕組みですが、企業としてはパ ートタイム労働者さんの仕事とか業績とか、その能力の向上が明らかに認められるので あれば、それを処遇に反映させることは当然行うべきだろうと考えています。労務管理 上の必要性があれば、現在でも行っていると思っていて、これを仕組みという形で作る こと、ルールを設けることについてはいかがなものかと考えているところです。  パートタイム労働者さんの正社員への転換制度ですが、現行の事業主の努力義務で既 に十分ではないかと考えています。パートタイム労働者さんに空きポストを優先的に知 らせるかどうかについては、現行の努力義務で十分で、企業が自主的に判断すればよろ しいことではないかと考えているところです。以上のようなことから、ルール化につい て、これを強制するようなことについては企業の自立性を損うことから、基本的には賛 成し難いというスタンスです。  (3)のパートタイム労働者に対して正社員との処遇の違いや、その理由を説明する ことについてですが、冒頭に申し上げたようにパートタイム労働者さんとの雇用契約の 内容について、当事者が互いに確認することが非常に重要で、その設定は企業の側とし ても実行していくことが必要だろうと考えているところです。ただし、フルタイム労働 者との契約内容の違いや理由についてまでを説明する必要があるかどうかの点は、疑問 を持たざるを得ないと考えていて、比較するフルタイム労働者をどうするのかという技 術的な問題ともあって、なかなかこの点は賛成しにくいと考えているところです。  (4)のその他については、いまのところ特に積極的に考えているところはありませ ん。  ルールの位置付けですが、冒頭のルールの必要性で申し上げたように、基本的にルー ルの必要性を改めていま必要かについては、現状は必要ではないのではないかというス タンスですので、どの選択肢からというようなことを問われたときには、ちょっとお答 えをしにくい状況です。以上、簡単ですが、説明に変えます。 ○分科会長  ありがとうございました。  それでは、一応労使双方のお考えが出されましたので、まずは公益の先生から労使双 方に対してご質問があれば、お願いします。 ○公益委員  いまの使側委員のご発言に関してちょっと質問なのですが、ルールが必要ないとおっ しゃって、ただパートタイマーに対する雇用の改善は考えておられるということだった と思いますが、その雇用の改善の中身はどんな点で、どう改善しようとお考えなのでし ょうか。 ○使側委員  基本的には、お互いが労働契約の内容を確認して、しっかりそれを企業の現場の中で 実行していくことに尽きると考えているところです。何が公正かについて、個別の労使 が基本的に納得することがいちばん重要だろうと考えていて、その納得の基準をその労 働契約の内容を追って見ていってほしいということです。そういうことが、パートタイ ム労働者さんの雇用管理の改善の、最も大きなポイントになっているだろうと考えてい るところです。 ○公益委員  そうすると、それはいまの制度で十分に足りているというお考えですか。 ○使側委員  基本的には、この現行法のパートタイム労働法を企業がよく理解して実行することが 大切だろうと思っているところです。 ○使側委員  いま使側委員がおっしゃいましたが、まだまだルールといいますか、そこにいく以前 に自主的な取組みをしていないような企業がかなり見られることは事実です。たしかに パートの部分は経営者に聞くと、これは私の恥部だということで、なかなかいいたがら ないような経営者が本当に多いのです。あまりこういうようなものが先行してしまうと 、なかなかまだ自主的に取り組むことさえできていない企業も、もうちょっと意識改革 をして高揚させて、同じ土俵に並ぶぐらいのところに何か引っ張り上げるような手立て はたしかに必要なのです。それはルールによって、どんどん付いて来いというのもいい のですが、その前にそれなりにもうちょっと自主的な取組みができるような環境整備と いいますか、そういうスタイルであまり強制力のない形で持っていくことが、前段階と して1つ考えられるのではないかと思うわけです。いまいろいろとルールをご説明され たことが、中小企業の下のほうはこんなことでがんじがらめになって本当にできるかど うか。それを示したときに「何だこりゃ」というぐらいの話で、ただ全く実効性が伴わ なければどうにもならないことなので、その前に一斉の取組みをもうちょっと勧奨させ たほうがいいと思います。  それから前に公益委員が、もうパート法の普及の時代は終わったのだとおっしゃった のですが、なかなかまだ下のほうに浸透していない企業が大変多くて、その辺は私ども は団体の責任も感じているところですが、もうちょっとそこを行いつつ、もうちょっと 低いところにも標準を合わせていただきたいというのがあるのです。 ○公家記委員  私も、いくつか質問させていただきたいのです。まずは使側委員の2の(3)のご説 明で、ここで「パートタイム労働者についての正社員との処遇の違いや、その理由を説 明することについてどう考えるか」で、これはフルタイムとパートタイムとの問題、格 差についてというご発言だったと思います。もう一方、パートタイムの対局にある働き 方は、一般に正社員という表現でされることがありまして、要するに疑似パートの問題 、俗称パートの問題について(3)に関しては、どのように考えていらっしゃるかです 。 ○使側委員  疑似パートさんについては、まずどのような仕事の実態にあるかを明確にしていく必 要があると考えていて、それを私としては大変申し訳ないのですが詳らかに知らないと いうことがありまして、いま現在明確にすべてをお答えできるわけではないのですが、 基本的には仕事の内容がどのような実態にあるかということをまずは調べていく必要が あるだろうと考えています。その上で、仮に仕事の内容が同じかどうかを見て、それで 処遇の決定方式についてお互いが納得できる範囲であれば、先ほど申し上げたように処 遇の方式を変えると申しますか、異ならせることについてお互いが納得する範囲で決め ていけばいいのではないかと考えています。 ○公益委員  いまご質問したのはパートタイムという、ここでのご説明ではフルタイムとの対比と いうことでしたので、労働時間の違いということでご説明なさったのかなと思いました 。片方の疑似パートというのは、必ずしも労働時間は短いわけはないというような、正 社員と労働時間は同じでありながら、なおかつ仕事の面については多々違っている点も あるかと思いますが、その点について格差の問題、例えば賃金だけではなく、いろいろ な処遇において差が付いていることについて、どうお考えになっているかを質問したい のです。 ○使側委員  先ほど処遇の決定方式についていろいろな要因があると説明しましたが、その処遇の 決定方式を1つひとつ見ていって、疑似パートさんと正社員さんとの間でそれぞれ違い があるのであれば、処遇の決定方式も差があって当然ではないかなと考えます。そこで 労働時間が仮に同じであったとしても、それぞれ先ほど申し上げたような処遇の格差の 要因に差があるのであれば、疑似パートさんと正社員さんとの間で処遇の格差があって もいいのではないかと考えます。 ○公益委員  (3)は、理由を説明することについてどう考えるかですが、その点については説明 する必要があると考えていらっしゃるということでしょうか。 ○使側委員  例えばパートさんとの契約のときに、お互いがその労働契約の内容を確認するという 範囲で、お互い納得するということで十分だと基本的には考えます。 ○公益委員  それは、パートと呼ばれているからという話ではないわけですね、そこの理由は。 ○使側委員  ですから疑似パートさんと、どのような労働契約の内容を結ぶかで十分ではないかな と考えます。 ○公益委員  組合にももちろん質問があるのですが、経営側から始まったから後で。いまのことで 2つあるのですが、1つ目は契約のときでも例えば何か質問されたときに何も説明しな くていいのですという趣旨なのか、研究会報告ではパートの方から契約なり契約更新の ときに、例えばいま同じような売場主任という仕事にパートの人が就いていて、正社員 で就いている人がいる。このとき、賞与が自分にはなぜない、何故かと聞かれたときに 、これはまた納得してもらうことが必要だというお話があったわけですから、そうする と説明する必要があるだろう。これまで、する必要はないと言われているのかどうか。  2つ目は組合側からは不満なのでしょうが、研究会報告では別に契約の自由を否定し ているわけではないのです。つまり合理的な理由があれば、雇用区分を分けていいと言 っているわけです。現状はパートというだけで、仕事内容もキャリア管理の実態も同じ 人で格差が大きい。これはいくら契約の自由といっても少し問題ではないかと言ってい る。もう1つは同じ仕事で、同じキャリア区分として客観的に契約が違った場合、同じ 処遇決定方式と言っているのは別に賃金決定要素をこうしなさいとは言っていないので す。いま賃金決定要素として、法律上含めてはいけないのは男女ですね。男女という要 素を入れてはいけない、社会的身分で入れてはいけない。少なくとも今回、労働時間の 長短は入れない。それ以外の仕事の比重を大きくするか、能力の比重を大きくするかは 経営側の自由です。賃金決定方式を拘束しようなんていうのは、一言も書いていないで す。ですから、ちょっとそれは経営側が合理的と考える賃金決定要素で、給与を決めて いいのです。それをなぜ賃金決定要素まで制約するというふうに報告書を読まれたのか 。そんなことは一言も書いていないはずです。 ○使側委員  質問されたときに説明をするかどうかは、求められれば説明をするということは必要 だと思います。ただ基本的に、内容の説明の範囲に留まると思います。賃金決定要素を こうしなさいというのは書いていないそうですが。 ○公益委員  書いていないです。そういうことは別に主張していません。 ○使側委員  ただ、処遇の決定方式として職務の同一性と、キャリア管理の実態を掲げてらっしゃ るのですが、例えば職務の同一性に基づいて賃金決定を考えるとなると、いわゆる職務 給的な記載が出てきてしまうと考えられますが、それも含めて幅広い賃金決定方式だと はちょっと読みにくかったのですが、その辺はどう解釈するのですか。 ○公益委員  まず出発点として、比較の対象を判断するときに同じ仕事に就いている。フルタイマ ー、パートタイマー、それは出発点です。ただ、そのあと職務給を導入してもいいです し、あるいは職能給でもいいわけです。例えば正社員の売場主任とパートタイマーの売 場主任がいる。キャリア管理の実態も同じだとします。この場合、同じ処遇決定方式を 導入してくださいとなるわけです。そのときに職能給でもいいわけです。そう書いてあ ります。事例の中には職能給でも。もちろん職能給プラス職務給的な、つい先ほど言わ れたとおりです。いろいろな要素を合わせてやっているわけですから、そこまでこうし ろというのは全然。それはあくまでも労使で話し合って、企業が合理的だという賃金決 定要素を取り入れればいいと報告書に書いてあることです。 ○使側委員  処遇の決定方式について、合理的な理由とすることについては私どもとしては先ほど 申し上げたような内容を当然含めるべきだと考えていて、この2つの要素だけで判断さ れてしまうと、あまりにもルールが狭すぎると考えるということです。 ○公益委員  もう一度確認なのですが、1つはまず基本的には同じ仕事をしていて、かつキャリア 管理の実態と違わなければ同じ処遇決定方式を導入してくださいと。このときの賃金の 決定要素は、いろいろな要素を入れられる。問題なのは、処遇を異にする合理的理由が あれば変えてもいいと言っているわけです。それについて組合側のキャリア管理の実態 と違えば、違う処遇決定方式にしてもかまわない。つまりパートについては職務給にす る。正社員については職能給にすることも、キャリア管理の実態が違えば変えてもいい と書いてあります。それはいま使側委員が言われたのと、ほぼ同じではないかと。 ○分科会長  いまの公益委員のに対して使側委員は。公益委員の説明されているのと使側委員のお っしゃっていることは同じではないかという投げかけがあったのですが、それに対して はどうですか。 ○使側委員  やはり、ちょっと理解できにくいところがあります。 ○公益委員  いまの話でよろしいですか。使用者サイドからパートタイムの雇用の改善の必要性あ りというご意見を伺って、大変意を強くしているという。その前提に立つことになった ら、この労使の協議の合意はきっとあるのではないかと思った次第です。その先なので すが、使側委員のご意見は、労働条件の労働契約内容を明確にして、労使がそれを確認 し合ってすることが最大の改善へ向けてのことだというご意見。使側委員からは、いろ いろと改善の必要性は使用者側は感じているけれども、いろいろな企業の条件、さまざ まなレベルがあってなかなか難しい条件で、少しずつ実態を見ながらという。改善が必 要であるという問題意識の下に、現状を今後どうするかの方向としては、お二方の委員 からそういうご意見が出された。お伺いしていて、おそらく使側委員の労働契約の内容 を明示化して納得するというもののもう少し具体化する方向、あるいはなかなか難しい 現状で使用者側も努力している。これから大変だけれどもやる。やるならばそれをもう 少し具体化して、今後どうするのかという提案が出されるべきだろう。  我々のこれまでの研究会などの積み重ねというのは、まさに使用者側のいろいろな苦 悩を少しでも先に1歩でも進めるという観点から、具体的にその改善へ向けての方法と して、こういう方法はどうですかと出してきた案なので、こういうのを出されたら現状 は大変で、なかなか特に中小企業ではこういう傘、ルールを上からはめられては動けな い。現状では逆に使側委員の場合は、十分労使でできるのだという一般論のレベルで終 始しているという。  それはやはりこの問題が提起されて、いま個別のルールを少しずつ明示して、これに ついてはどうかという、議論としてはもう少し改善へ向けての具体的な意見なり方向な りを示していただきたいのが正直なところです。いまの公益委員のいろいろな質問に対 するお答えをお伺いしていても、具体的なレベルになると、やはり、あまり明確なお答 えがいただけないというのは、まさに一般論のレベルで、入り口のレベルでまだとどま っておられるという印象は拭えない。具体的に改善に向けての具体案を出して、そこで 、労使双方で話し合うことが必要なのではないか、というのが私の印象で、是非忌憚の ない意見をここで出していただきたいと思います。 ○公益委員  私は別に使用者側をいじめようと思って発言しているのではなくて、その主張の意図 するところをもう少し理解したい、という前向きの視点からご質問したいと思うのです 。先ほどから何度か「個別労使で決定」という言葉が出てまいりました。日本語という のは難しいもので、「個別労使」というのは、どういうことを意味しているのかなとい うことでありまして、例えば同一の企業の中にもたくさんの労働者がいる。その労働者 の集合体と使用者、そして個々の企業という意味で「個別労使」というふうに使われた のか、それともそれぞれの1人ひとりの労働者、1人の労働者と1人の経営者が契約を して、お互いに満足できればいいのではないかという意味で使われたのか、どちらなの だろうかということを明確にしておきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。 ○使側委員  両方の意味があるのではないかと思っています。契約内容について確認するとなりま すと、やはり1人のパートタイム労働者と契約の当事者、どなたになるか分かりません が、この間の確認のレベルの話になると思いますし、パートタイム労働者に適用する就 業規則の改定の話であれば、現行のパートタイム労働法の中では、パートタイム労働者 の代表という形で、意見を聞くという形になっていますので、そのレベルでの対応とい うことになってくると思いますので、場合によって、多少レベルが違ってくるのかなと 思います。 ○公益委員  例えば1人の労働者と1人の経営者の間で契約が結ばれ、それでお互い満足すればい いではないかと。今度はまた次のケースとして、別の労働者と同じ経営者で契約が結ば れればとなってきた時に、おそらくAさんとBさんでは同じ仕事をやっていながら、同 一の企業の中で差が生まれてくる可能性がある。こういうことを認めるというご主張で おっしゃったのか。要するに、同一労働であれば、同じ企業においては同じ賃金が払わ れるべきだという考え方は、持っていらっしゃるのかどうかというところなのです。 ○使側委員  場合によっては、そういうパターンも出てくる可能性はあると思っているところです 。 ○公益委員  そういう型というのは、同じ仕事をしながら違った賃金が支払われることが出てき得 るというお話ですか。 ○使側委員  企業の経営状況によって、多少の変動は出てくるのかなと思います。 ○公益委員  同一の企業の中ですか。 ○使側委員  同一企業の中で、Aという時点とBという時点で企業の業績状況が多少違っている、 しかも、地域の労働力需給の差もかなり出てきている場合について、望ましいのはもち ろん同じというパターンになるのでしょうが、違いが出てくる可能性もあるのではない かと思っているところです。 ○公益委員  同一時点において、AさんとBさんは同じ仕事をしています。ところが、個別に契約 がなされることによって、結果としてAさんとBさんの間に処遇の差が生まれてくる。 これを容認するのかどうかという点なのです。要するに、同一労働、同一賃金というこ とです。男女というのはついていませんが、その点についてはどう考えていらっしゃる かということです。 ○使側委員  ごく近接している時点であれば、同じような賃金を基本的に払う。同じような処遇に することが望ましいと思います。 ○公益委員  そこの労働者の時には、例えばフルタイマーとパートタイマーというのも同じ仕事を していれば、同じ時間給については同じものが払われると考えておられるということで すか。 ○使側委員  それは多少違うということです。 ○公益委員  それは、どうしてそうなるのでしょうか。 ○使側委員  同じ仕事をしていても、個々の中小企業では成果が違うのです。大企業で同じような ことを上から言われ、たとえそれで怠けようと仕事をしようと、勝手にやっているのと 違うのです。個人の能力に頼って仕事をやらせているのです。ですから、同じ内容の仕 事をやっていて賃金が違っても、それは仕方のないことなのです。だから、それを使用 者側が決めることに対して、いちいち苦情をつけたり、法律で規制したり、それはかえ ってマイナスの作用になるという意味です。それは確かにほかの問題もあります。同じ ような条件で違う賃金を払う。そうしたら、その人間はそんな会社を辞めればいいので す。労働者にも選択の自由があるのですから。 ○分科会長  ちょっと議論を戻して、公益委員のご質問に使側委員、ご説明していただけますか。 ○使側委員  基本的には、今の私の説明はちょっと不十分だったという点があります。先ほど申し 上げましたように、賃金の決定の要素については、多くの要素があると申し上げました ので、その範囲内で説明ができるのであれば、差があるという説明に変えたいと思いま す。 ○公益委員  今の点は、例えば同じ労働で同じキャリア管理というものは、同じ賃金決定をする。 それに成果の部分があって、成果が違えば給与水準が違ってくる場合です。ただし、同 じ賃金体系を適用すると言っていますが、それはいいのですか。使側委員が言われてい るから、そういうことであれば、我々が言っていることと同じことなのですか。 ○使側委員  それは同じになるでしょう。経営者が馬鹿でないと、同じに結果を生む。 ○公益委員  ところが、実はそうなっていないのではないかと言っているわけです。 ○使側委員  それは世の中ですから、そういうケースもあります。しかし、それを法制化するのは おかしいのではないかと言っているわけです。 ○公益委員  今はそんな時で、そういういろいろな経営者がいらっしゃる。使側委員も使側委員も そういう経営者を理解していただいて、パートの雇用改善を進める必要があると言われ たのです。これまでは、なかなか進んでこなかったのです。そうした時に、どうしたら そういう人は理解してもらえるのか、あるいはパートの方から質問を受けた時、説明す るわけでしょう。経営側が言っても、パートの人が納得しないかもしれない。それはや はり、ある程度こういうものが公正だという考え方があったほうが、企業としても進め やすいし、パートの人の納得も得やすいのではないかということなのですが、そういう ものは全然要らないのか。それぞれ個別に何が望ましいのか。つまり、改善というのは 、何かが望ましいと思ってやるわけです。そうでなければ改善とは言わないのです。そ のほうがばらばらでいいのだろうか。あるいは、個々の経営者と労働者が納得すれば、 みんなばらばらで会社の中で人事管理はできるのでしょうかということなのですが、い かがですか。 ○使側委員  やはり、パートというのはかなり貢献されているわけですから、経営者にとって貴重 な人材であることは間違いなくて、そこにうんと不平があるようであっては困るわけで 、そういうところを経営者としては改善するという努力は、当然していると思います。 しかし、企業も生き物ですから、企業のそれなりの実態にうまく合わせてやっていくこ とは、当然大切なことなのです。  ただ経営者側も、同じ仕事をしていてちょっと賃金が違うということがあれば、そこ はもう少し考えてやったらいいかなという気持が出てこないと、なかなか取り組めない ということですから、そういうものを勧奨するようなもの、例えば効率的に急に持って いくのではなくて、みんなで取り組もう運動みたいな、そういう運動の展開から始まっ て、分からせる時は徐々にやっていく。もう少し経てば、あまり法律の制約のないシス テム、何かそういうものにうまく乗っていく。そういうところから始めないと、先ほど 私が言いましたように、全くそこにいっていない企業があるものですから、急にポンと 1階から30階に上げられてしまって、あと階段を降りるのが分からなくなったという企 業もあるわけです。逆にいうと、その規模によってだいぶ意識も違うと思うのです。で すから、労働組合の人事の確立している、きちんとした中小企業であればいいのですが 、ほとんどはもう大変小さい企業でありまして、パートでも奥さんでも本当に家族的と いうのが多いわけですから、そこは30人から20人以下が80%と多いわけです。そこらの ことを、私たちのほうとしてはどうしても考えてしまうわけです。 ○公益委員  そうすると、使側委員のご意見は、ルールは全く要らないということではなくて、ル ールと言ってしまうと、法律とか、かなり強制力のあるものをイメージしますが、そう ではなくて基準、基準づくりというのはやはり必要だと思っていらっしゃるのですか。 ○使側委員  思っています。法的強制力というのではなくて、通達であっても、例えばそれをグズ グズ言うのではなくて、通達の前の、通達でやっているから何とかという圧力があるも のではなくて、ある程度もう少し自主的にやらせるようなものがないと。経営者はでき る限りそれを取り入れて、いいものはやはり取り入れてやる経営の責任はあると思いま す。そこは経営者によっても違いますが、私どもからすれば、そういうふうにお願いし たいという気持はあります。 ○使側委員  世の中はいろいろな変化が起こっていまして、例えば派遣社員というものがあります 。そこへ頼む時には、経営者がこういう条件でお願いしますよということです。そうす ると、そういう社員を集めてくれるわけです。そういう時には、ちゃんと契約が入るわ けです。これは契約して、社員が納得して入ってくるわけです。ですから、そういう方 法もこれからは社会的に一般的になってくるのではないか。私はそう思います。何も法 律をつくらなければ、これは改革にならないということもないと思います。 ○公益委員  今の点についても、派遣会社については派遣法で守るべきルールがあるわけです。何 もそこにルールがないわけではないのです。それを理解していただきたいと思います。 ○使側委員  ですから、そういう方法で、何も新しい法律をわざわざつくらなくてもいいのではな いですかということです。 ○分科会長  一応使用者側にだけのご質問が出ましたので、公益の先生から労働側に質問していた だいて、その中で意見という形で出していただいてもいいです。 ○公益委員  職務の違いは、均等処遇できない合理的理由だというお話で、キャリア管理の違いと いうのは認められないということですが、残業の有無というのは、別にキャリア管理の 違いには入れていない。パートも残業する場合もあるし、残業しない場合もある。正社 員でも、残業する場合もあるし残業しない場合もある。これを一応確認させていただき ます。  今度はもう少し具体的な例です。こういう具体的な例の場合はどう考えるかというこ とですが、一社一事業所。ですから、転勤はないのです。百貨店の和服売り場に、ほか の百貨店で外商をやっていた人をパートタイマーで雇う。1日はフルタイムで週3日短 時間勤務です。和服の販売ということで、パートについては職務で契約して雇っている から、そういう形でやる。他方正社員については、和服というだけではなくて、もう少 し婦人服、紳士服という衣料関係の中で人材を育てるという形で採用し、処遇を決めて いる。ですから、その人たちは職能給で給与を決めている。これはいけないわけですか 。ある時、正社員が和服売り場に異動してきた。元外商をやっていた人が、服売り場で 職務を限定していたとすると、これは同じ給与体系を適用しなければいけないとお考え なのかどうかということです。キャリア管理の違いというのは、こういうことを言って いるわけです。 ○労側委員  その辺も大議論になっていまして、将来に見込まれる能力、適性という意味で、いわ ば「キャリア管理」というふうに、多分研究会の報告は使っているということです。外 形的に、今は同じような職務をしていても、将来を期待される労働者とそうでないもの を区分するということなのです。その場合は、私どもとしては合理的理由の中に職務の 違いの要素、例えばその業務に必要とされる技能・熟練、あるいは労働の負荷とか、そ こで測られるのではないですかと。入り口から将来を期待されるということだけで、入 り口から区分管理をするのはどうかということで、問題が発生した時に、そこで判断し ないようにするということなのです。 ○公益委員  我々は別に将来の育成を考えて、例えばある正社員については和服だけではなくて、 婦人服の仕事も経験させ、紳士服の仕事も経験させるという、例えばそういう異動の実 態があるということを、キャリア管理の実態の違いと言ったのです。将来こうするだろ うということだけで言っているわけではないということを、ご理解いただきたいという ことと、今みたいな場合、労側委員、どうすればいいですか。和服の仕事をやっていた だくのでパートで雇っている方と、そうではなくて、この方は婦人服全体を見てもらう 能力を育成するために、実際は異動させている。この時に、両者にどういう賃金体系を 適用するのですか。 ○労側委員  そこは、処遇の違いの中で勘案してみるということです。 ○公益委員  職能給にしなければいけないというわけですか。 ○労側委員  そこまでは言っていません。その中で企業が持っている仕組みや同じ決定様式を適用 するのですが、今おっしゃるように、この方はいろいろな仕事を異動しながら働いてい る。しかし、今は一緒にやっている。だから、違っていいではないかというのが、公益 委員のおっしゃり方。これ自身は職務の違いを必要とされる熟練度ということでみれば いい。 ○公益委員  そうすると、多分私が言っていることと同じなのではないか。 ○労側委員  だから、その意味で、その違いを入り口から管理区分に分けなくてもいいではないで すか、と言っているわけです。 ○公益委員  その時に、実態としては違う賃金体系が適用されるということですね。 ○労側委員  それはあり得ます。どうも研究会報告は、入り口から分かれてしまうということが、 結果、内容……どうも私どもは懸念していて、うちの中でもそこは議論がありました。 やはり、そこは実態で判断するしかない。いろいろ要素がありますから、職務の違いの 中で判断できるのではないですかと言っているわけです。 ○公益委員  キャリア区分が実態として分けることが合理的であった場合、1つはキャリア区分間 の異動です。もちろん、そのルールは別になければいけないというふうには、研究会報 告で言っています。つまり、入り口で入ったら異動できないというのは、やはり困る。 分ける以上、異動のルールも必要だというふうには考えないのですか。 ○労側委員  ですから、何でパートに女性が多いかということですが、私どもはパートタイム労働 者であっても、生活もでき、あるいは仕事と両立できるという仕組みが、我々が目指す 望ましい社会だと思うのです。そういう意味で、今は正社員同士もありますが、そうい うルールが確立していないゆえに、結構あった区分、雇用管理区分で女性は家族責任が あるからということで、あるいはこういう労働者はいけませんということで、分けられ てしまうということは、何も変わらないではないかということが問題意識にあるもので すから、そういうことで今議論しました。 ○公益委員  2番のルールの内容の(1)の所で、「フルタイム正社員と同じ職務を行うパートタ イム労働者について、処遇決定方式を異にする」。これは先ほどのご説明だと、同一の ほうがよろしいという相対的なご意見があったかと思うのですが、この格差の問題とか 、あるいは処遇決定の問題、これを議論する時に、格差是正というと、今までの正社員 あるいはフルタイマーの所得、賃金というものを一定にして、パート労働者の雇用改善 という形で格差をなくそうということを、多分暗黙のうちに理解していらっしゃると思 うのです。そうなってきた時には、企業経営者のスタンスから見れば、人件費が高まる だけではないかという問題点は必ず出てくるわけです。  そういった時に、片方で正社員あるいはフルタイマーの雇用条件についても、場合に よっては歩み寄りというものがあり得るのではないか。そうしなければ、総人件費とい うのはどうしても上がってしまうということは、必ず経営サイドから出てくる問題です 。そうした時に、この(1)で考えれば、何が現在フルタイマーあるいは正社員とパー トタイムの間で賃金決定が大きく違っているだろうか。もともといろいろ違いがあるの ですが、その1つに生活給のところがあります。配偶者手当の問題、あるいは扶養手当 の問題、こういう問題について、多分パートはほとんどのところがない。正社員のほう はある企業が多いということになってきた時に、場合によっては、それをなくすことに よって同一の賃金体系にもっていくことがあり得ると思うのですが、その点についてど うお考えになるか、いかがでしょうか。 ○労側委員  私どもはそれは議論をしていまして、昨年の私どもの春闘基本構想の基本方針の中に は、その属人的な要素、つまり、仕事と関連しない手当のありようについて、戦後作ら れた賃金決定、賃金制度というクラスと世帯賃金ということで決められた要素がたくさ んありまして、それは企業にかなりかぶせてきた。現行の仕事の変化、あるいはものの 考え方から考えますと、職務関連等の手当は、当然仕事関連手当ですから必要ですが、 仕事に関係ない生活給手当については、本来改善すべきだということを言っていまして 、具体的にいうと、いろいろな算入によって、配偶者手当や扶養手当は金額が違うので すが、多額な金額を支給している企業に呼ばれまして、基本的には基本的な賃金の中に 組み入れていただいて、その原資をみんなで配分しあうということがあっていいのでは ないでしょうか、という問題提起をしています。  直ちになくせというのは、例えば2万4,000円の手当を、年間にすると一時金が入った らかなりの金額なのですが、それをいつまでになくすということを定めに入れられて、 段階的になくしていくということにしないと、いわば時間当たり賃金の算定基礎ができ ませんよということを考えていまして、そこは今検討して、その方向に今向かいつつあ るという認識をしています。  もう1つの原資配分をしている労使合意の大前提に、新規社員の処遇水準とパートタ イム労働者の水準の歩み寄りということを訴えまして、これも多分これから個別労使で 議論していけば、当然そこが議論の争点に残ると思います。ただ、ここで仮に中小企業 のレベルにおける年間の収入の物差しと、いわば大企業における物差しとを一律に議論 して、一方は300万から340万程度のレベルのところを下げなさいという意味で、パート のということはどうかとなりますが、ある一定水準ということからすると、そこは歩み 寄ることも当然考えられますし、そこは個別労使で配分の組替えですから、個別労使の 話合いで、ここは工夫されて知恵は出てくるのかなと考えています。ワークシェアリン グの議論も、それこそその観点で議論されないと、ワークシェアリングの時間当たり賃 金を出せませんので、強くそこは問題にしているのです。 ○公益委員  その点になると、ちょっと「個別労使」という言葉になってしまうので、いかがなも のだろうかという、まさにルールを議論している中で、両方から「個別労使」と言われ ると、困るところもあるのです。例えば、なぜこれまでこれが進んでこなかったのだろ うか。使用者側のほうからも、やはり国民的な運動が必要ではないかと。すぐにこれを やれと言っても、やはり現実とのギャップがあって、そう出来ない面があるだろう。ま さにそうだろうと思うのです。労働側からも、ちょっと時間が欲しいということがあっ たわけですが、ただ今後を考えた時に、やはりタイムスケジュールみたいなものを考え て、いついつまでにこうしていきますという、すぐにやれという法制度の立て方もある でしょうし、時間、期限を切って、こういった方向でいつからこれは発効するとかとい う形のものもあると思うのです。そういうことについては、かなり現実を押し進める上 で力になってくるのかなと思っておりまして、ほかの国でもそういった事例が多々あり ますので、その点はどうお考えでしょうか。 ○労側委員  先ほど紹介した私どもの法案要項も、5年の経過をおいています。ですから、最低、 目標をいつやるかということにして、あとは、今言った賃金制度の改善なり、あるいは 社会制度、例えば扶養手当とか配偶者手当の社会的な新体制をどうするかということも 必要ですし、企業内で出来るものを社会的にすべきものもありますから、そういう面も 含めて5年間の経過措置をおいて、その代わり、その間に向けていろいろ、役所でいう と作業ごとのいろいろな取組みもあるでしょうし、企業ごともあるし、そういうことを 織り込んでいくということで、5年間の経過措置をおいているわけです。そこは、そう いうご理解を是非いただきたいのです。 ○公益委員  ちょっと使用者側に、使側委員どうですか。 ○使側委員  何年といっても、いろいろな企業の実態がありますが、例えば3年ぐらいの期間をお いてやってみて、ある程度のところで調査しながら、そこを見て、ある程度の段階に伸 ばすとか、もうかなりになっていれば少しいくということも、考えられないことはない 。ただ、何年というのを言われてもちょっと。 ○使側委員  今の経済状態というのは、異常な事態です。景気のいい時は、正社員よりパートの給 与が高かった時があったのですから、今度もう少し経済が普通の状態になった時にもっ とゆっくり考えて。この雇用形態だって、終身雇用制が壊れる時代も来ると思います。 これから少子高齢化でどんどん人口が減って、外人労働者を入れなければいけないだろ うとか、そういう論議が起こっている時に、今この失業率が上がっている時に、これを 全部法制化したら、ちょっと時期尚早ではないかという感じが非常に強いのです。もう 少し冷静に、時間をおいて考えたほうがいいのではないかという気がします。 ○公益委員  先ほどの組合の話でも、基本的には総人件費額を増やせない状況というのは、多くの 企業はそうです。議論をしているのは、いわゆる正社員とパートの配分の仕方です。例 えば経営側が仕事や貢献で評価しますと言った時に、正社員とパートもそう見た時に、 実はもう少しパートに配分しなければいけないのかもしれない。そうした時の配分の仕 方を変えるということが、公正な処遇になるのではないか。別にパートを上げなければ いけないと言っているわけではないのです。フルタイマーとパートタイマーについて、 総枠人件費の分け方の観点で見た時に、いろいろな要素で決めるというのはいいですが 、例えば正社員について決めている要素で考えた時に、パートについての配分が少なす ぎるということがあれば、これは直す必要があるのではないか。組合はもうそういうこ とは分かっていて、正社員のほうを見直す必要があると言ったのです。ですから、パー トを上げなさいと言っているわけではないのです。総人件費の配分の仕方を、もしかし たら見直す必要があるのではないかということです。 ○公益委員  労働側の委員の方々にお伺いしたいのですが、今日のご主張を伺っていたら、パート 問題の均等処遇は、有期雇用の問題と不可分であるというご主張で、大変難しい難題で すが、そういう設定をすること自体が、パートの賃金、労働条件その他の均等処遇とい う問題と、雇用の不安定性という、この両方の問題が不可分であるという問題意識だと 思うのですが、少し視点を変えて、有期雇用が持っている特有の問題としての、雇用の 不安定性というのは、例えば有期の1年とか2年とかの区切られた期間で、それが反復 するかどうかという問題なので、そういう反復とかについての条件整備というか、ルー ルの整備がされていけば、雇用の不安定性に関しては、そうしたルール化の方向で問題 が処理される。  もう一方の均等処遇の問題は、今言ったように、職務というようなものを基準におい て、同一ならば同一処遇。同一であるかどうかの条件のところに、キャリア管理の違い というのは、具体的には正社員のキャリア管理と非正社員のキャリア管理の違いによっ て、合理的なある種の違いは認められるという方向で、均等処遇を考える。そういう手 順ということで、今ここで労働側が提起された有期の問題の均等、パートタイムの問題 の均等というのは、処理するというお考えにはなりにくいですか。もちろん、この2つ は不可分でという、その議論を立てると、どうも立てている議論と噛み合わないのです が、今言ったような整理で、有期のパートの問題の均等というのは、解決されていくと いうお考えにはなりにくいですか。 ○労側委員  再三再四、有期問題とパートの均等待遇問題は不可分だと申し上げているのですが、 今、公益委員がおっしゃったように、基本的には労働契約の話ですから、基準法の議論 をしている労働条件分科会も、前回公益の皆さんから、労働条件分科会にも労働側がい るのだから、そこでやればいいというご意見もあったので、早速労働側委員と相談をし て、「どんな議論になっているの」と聞いた時に、ここでいう素案があるのですが、1 の「労働契約に係る制度のあり方」の中に、「労働契約内容の明確化」「労働契約の期 間」、その期間の中に「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに係るルールについて」 と。ここの3の所で言われる、例えばこの仕事は3カ月で終わるから、3カ月契約だと いうのは、まさに説明がつくのです。  同じ仕事をずっと続けているにもかかわらず、3カ月契約を繰り返すというのは何な のという、このルールが今基準法の世界でないではないですか。きちんとルールを作っ ていただければ、自動的に解決します。そういう議論は労働条件分科会でまだされてい ないようなので、労働側は盛んに主張してみたけれども、事務局が全然受け止めてくれ ない。また、有期契約報酬の均等化についても、これは均等分科会の世界だと、労働条 件分科会の事務局は答えているみたいですが、結局お互いが何か、こっちで言うと労働 条件分科会というし、労働条件分科会で言うとこちらというふうに、どこで議論された かはっきりしないわけです。そこも改めて事務局に聞きたいのですが、そういう区分け をきちんとされて議論しますと言うなら、私どもは納得しますし、それがないものだか ら非常に不安で、置き去りにされてしまうのではないかということなのです。 ○公益委員  有期雇用の反復契約というか、更新、雇い止め等のルールについては、労働条件分科 会で議論されることになって、していると私は理解していますし、ルール化されると理 解しています。それならば、その問題はそれでいいと。 ○労側委員  契約のリカバーの有期の話はですね。ところが、有期契約の均等待遇問題。契約に基 づく均等待遇はこの分科会でやっていますが。 ○公益委員  そういう区分けで議論していくということに関しては、同意されているということで すか。 ○労側委員  そこは事務局に聞きたいのです。私どもは合同会議という前からお願いしているので すが、事務局がどういう。 ○公益委員  だから、区分けでいくという議論でいいわけですね。 ○労側委員  事務局が区分けしますということであれば、それでいいし。 ○公益委員  今言った有期雇用の問題は、基本的には有期雇用というよりも、正社員と非正社員の 間の処遇の格差という位置づけで理解してよろしいわけですね。さらにもう一言いうと 、先ほどの公益委員とのご議論から理解するところは、長期的な雇用を前提とした社員 と、そうではない人との間の仕事に関しては、その場、その状況で理解すればいい。そ の職場における実態で理解をしていけばいい。同じ職務であっても、Aさんの場合には 長期的な雇用を前提とした雇用管理の下にある職務を遂行して、Bさんは必ずしもそう ではない。そういう場合には、同じ職務であっても、ある種の違いをおいても、合理的 な違いがあるものとして認める。そこは同意されると。 ○労側委員  仕事を判断する場合という中に期間を入れずに、職務の違いとか、本人が持っている 能力の違いとか、結果を記載すれば成果とかいうことで、ピックアップしたらどうでし ょうかと言っているわけです。 ○公益委員  長期的な視点で雇用管理をしているという点では、同一ですね。 ○事務局  今の論点の整理をさせていただきたいと思います。今、公益委員から話がありました ように、反復更新そのもののルールについては、労働条件分科会だと思います。ただ労 側委員がおっしゃっているように、労働契約の期間が有期だとか無期だとか、そういっ た場合に、フルタイム労働者と同じ職務を行う、ここでいえば2の(1)の所ですが、 パートの処遇決定方式を異にする合理的理由となるかどうか。そういった部分での議論 ということで、bでも挙げているところですが、労働契約の期間が有期と無期のパート タイム労働者がいるけれども、この判断をどういうふうに考えるかということでありま す。  ですから、そういうことをここの場では議論していただくのですが、それに対して労 側委員は、有期と無期のそれを分ける必要はないというご主張だということで、それに 対して使側の委員がどう考えていらっしゃるかとか、公益の委員もまたどういうふうに 問題意識を持っていらっしゃるか。そういうことでご議論していただくということで、 この設問を設けているところです。 ○分科会長  今、事務局がまとめられたもので、労側はいいわけですね。要するに、有期、無期、 それを基準に入れるというのはおかしいということですね。使用者側は、この点につい てどうですか。 ○使側委員  基本的には、処遇決定方式の大きな合理的な理由の1つとして、有期、無期の差は含 まれると考えています。 ○分科会長  特に公益のほうからは、何かありませんか。 ○公益委員  研究会報告で、例えば有期であることによって、処遇決定を変える合理的な場合もあ る。有期であっても、実態として継続雇用で長期になっている場合は、それは合理的理 由に入れないという判断です。例えば2カ月だけ、お歳暮の時期に雇うパートの人に退 職金がないというのは、合理的な理由だと思っています。そこにパートがいるけれども 、この人はもう2年や3年ずっと勤めている。形式的には1年契約だけれども、事実上 もう3回も4回も更新しているといった時に、処遇を異にする合理的理由にはならない と考えています。  もう1つ、キャリア管理の違いですが、雇用期間の長短とは別なのです。例えば先ほ どの和服の例で言いますと、その人も1年契約でも長く勤めていれば、それは和服とい う中でキャリアを極めていくわけです。正社員の人は和服だけではなく、紳士服も婦人 服も和服も、幅広い能力を広げる。ですから、それはどちらもある面では、長期の雇用 を前提としたキャリア管理が行われていることはあり得るということです。ですから、 パートだから短い雇用管理だとは考えていません。いろいろなキャリア管理の実態があ るということです。 ○労側委員  ですから、この法律もそうですが、基本的なものの考え方を法律で示して、合理的な 理由は何かというものを、枠組みだけ定めて、あとは、今言われたように個別にいっぱ いあります。そこは、それである程度判断すべき要素は、いろいろな物差しを与えるこ とによって改良できるのではないか。これを全部拾うことはできませんから、原則だけ 示して、あとはいろいろな手法を使ってやっていく。もう1つは、職務評価システムと いうか、結局我が国もこれからそういう方向にいくという人もいるし、社会的に個別労 使が判断できる職務評価システムみたいなものを、やはり研究を重ねて準備していくと いうのを、例えば5年後に新しい法律がスタートしますよという過程の中に、そういう ものを織り込んでいって、労使も参加して、政府なりが準備していく。そんなこともあ るし、やることがいっぱいある。そこは、そういう意味で私どもは考えています。 ○公益委員  使側委員の最初の説明の中で、労働時間の長短も賃金決定の要素に含まれると言われ たのですが、これはかなり重要なポイントで、そうであれば、パートとフルタイマーの 公正な処遇というのは、ちょっと難しくなる。基本的には、労働時間の長短は賃金決定 要素と言えないという考え方だと思うのです。つまり、時間の長短は時間比例。もちろ ん時間の短い人、つまり時間が短いことによって、処遇が低くてもいいという考え方を やめていくということです。もちろん、その中に貢献とか成果で見たら、時間の短い人 が結果として評価が悪くて、賃金が低くなっている。これはいいのです。ただ、時間が 短いということをもって、初めから賃金水準が低くていいとお考えなのかどうかです。  例えば、フルタイマーで1週40時間働いている正社員の人が、子育て期間中30時間の 勤務に変わる。これは短時間勤務で、パートタイマーです。この人たちは通常給与は月 給制で4分の3になります。もし使側委員のご意見だと、4分の3にしなくていいのだ と、4分の2でも、時間が短くなったのだからとお考えなのかどうかということです。 ○使側委員  労働時間が長くなればなるほど、ストレスの度合いも大きくなるだろうと。それゆえ に、処遇の差が出てくることもあり得るのではないかという意味合いで、先ほど申し上 げたところです。公益委員が今、短時間勤務の例を出されましたが、今のパターンは、 基本的には元の40時間のほうに戻るという事例だろうと思います。この場合については 、4分の3という形のパターンもあり得るでしょうけれども、例えばそうではない形で 、恒常的にパートタイム労働者のほうに移るといったことについては、別の考え方もあ っていいのではないかと考えるところです。 ○公益委員  短時間正社員に対する考え方というのは、同じ仕事をしていれば、時間に比例して給 与もということです。だから、時間単価で考えれば、同じ仕事をしているのだったら時 間に関係なしにというふうに、日経連は主張しているのではないかと思いますが、いか がでしょうか。 ○使側委員  今申し上げましたように、基本的にごく短期間労働時間短縮して、しばらくそれが経 って元に戻るというパターンについては、確かにおっしゃるように時間単価を一緒にす るということで、緊急対応型のワークシェアリングを実施するというパターンもあり得 ると思うのですが、そうではないパターンについては、例えば労使間で話し合って、別 のパターンを用意することもあり得るのではないかと思っています。 ○公益委員  そうすると、例えばパートタイマーで、6時間勤務のパート、4時間勤務のパートで レジの仕事をしている。これは時間比例でなくていい。つまり、同じ賃金体系を適用さ れないと。もちろん成果を見たり、能力を見たりする要素はあります。そういうもので の差以外に、時間でも差がついていいのだ、時間の長短で差がついていいのだとお考え ですか。 ○使側委員  そういうパターンもあり得るのではないかということです。 ○公益委員  パターンがあり得るというのは、どういう場合があるのですか。つまり、原則はどち らですか。 ○使側委員  例えば、その人がどのような時間帯に働いているか等によって、違ってくる可能性は あると思います。 ○公益委員  例えば、時間帯での要素ということですね。 ○使側委員  今の時間の長短ということに関してですが、たまたま今、公益委員が百貨店の例を出 されたわけですが、例えば百貨店の例ということで申し上げると、パートタイマーの方 がお客様がいらっしゃる時間にだけ、何時間か勤務される。フルタイマーとか、正社員 と言うのかもしれませんが、そういう人たちは、お客様が帰られてから残業でいろいろ な仕事をせざるを得ない。そういうことがあるといった場合に、お客様がいる間は、も しかしたら同じことかもしれませんが、1日の仕事量ということを思えば、やはり、そ こにはフルタイマーとパートタイマーの差があっても私はおかしくないのではないかと 思ったりします。そういうことが多分、業種だとか企業によって、いろいろな例がある のではないかと思うのです。それを全部一律に、どこかの1時間というのを見ると、そ の1日の時間の中でも随分違うということがあるのではないか。この辺りが、原則とい うことで決めるというのは、結構難しいことではないかと思うのです。 ○公益委員委員  今の使側委員が説明されたのは、仕事が違うということなのです。ですから、基本的 な考え方は、仕事も同じでという前提の上で、時間の長短。もちろん、その後仕事の成 果で見たり、能力を見たりしてもいいのです。その部分で違いがあるのは、もちろんか まわないのです。極端なことで、仕事も同じで能力も一緒で成果も一緒な時に、時間が 短いほうが割り引いていいのかということなのです。これは原則です。 ○使側委員  今おっしゃられたようなことを聞くと、少し分かるような気もしますが、先ほど使側 委員とかおっしゃっているし、多分労側委員もおっしゃっているのではないかと思うの ですが、そういうことについての理解が、私たちこの委員でさえもよく分からないみた いな感じのところがある中で、日本中全部の経営者なり、組合側の労働者のリーダーと いう人たち、今度はパートタイマーの代表と話せということだとすると、そういう人た ちも、これがどういうことだというのを理解するには、結構な時間がかかると思います 。  前回公益委員が啓蒙の時代は終わったのではないかと言われましたが、私はまだまだ 啓蒙の時代というのは決して終わってはいないと思いますし、今初めて、こうやって真 剣になったというか、パート労働法が出来た時の法律は、それでも、紙で条件をきちん と明示しなければいけないとか、そういう面では結構徹底されてきているのではないか と思いますが、処遇についてのことを、パート労働法から労使が本当に真剣に汲み取っ たかというと、まだであって、今非常にいろいろな多様な例が出てきていますが、それ はその業界なり、その企業なりが、本当にパートタイマーが基幹的な要員だということ を察知したので、それを高めていっているのではないかと思うのです。そういう意味で は、ルール立てということについて、原則をまず理解するというか、そういう期間は絶 対必要なのではないかと思います。 ○労側委員  ずっとこの間のご議論を聞いていますと、やはりコスト増という観点からの発言で、 積極的には賛成になれないというふうにおっしゃっているように、どうしても聞こえて しまうのですが、あるシンポジウムで経営者の方がこういうふうに言われているのです 。「公正な処遇をすることはコスト増になるけれども、生産性の向上や意欲の向上、職 場の活性化などを考えれば、コスト増を吸収しても上回るものがある。コスト面からの みパートを見ている企業というのは、今後成り立たないのではないか」という発言を、 経営者の方がされているのですが、そのことに対してどういうコメントをいただけるの か、お願いしたいのです。 ○使側委員  そのとおりです。私のところはメーカーですからアレですが、同じ仕事をやらせてい ても、同じ成果は絶対ないです。人間それぞれ違うのです。生産性を向上させるという ことは、そこなのです。それをお金で左右するのか、時間で左右するのか、あるいは上 司におべっかを使って左右するのか、そういう問題でなくて、本人がその気になって、 自分の能力を100%発揮してもらう。このために、公正な対応を経営者はやっていかなけ ればいけない。こういう意味です。ですから、細かい法律がどうのこうのという問題で 解決する問題ではないのです。 ○労側委員  その時の公正な処遇というのは、まさに同じ仕事をしている人には、同じ処遇をして くださいということだと思うのですが、使側委員が言っているのは、違うことをおっし ゃっているように聞こえたのですけれども。 ○使側委員  中小企業の中では、2人に同じ仕事をやらせて、同じ成果というのはないです。です から、それを同一視して、全部法律でもってがんじがらめに縛ってしまうということは 、かえって能力とかいうものを殺してしまうことになると思います。 ○使側委員  おっしゃっていることは、そのとおりだと思います。ただ、今企業は賃金だけではな くて、いろいろな経費を考えなければいけないということがあります。今はいろいろ税 外負担の問題でも、保険料の問題もだいぶ議論しているようですが、そういうものとか 、今は極端にいくと、外形標準課税などという、いろいろな税がどうなるかというふう に、いろいろ税調でやっているのですが、そういうものがまだ導入されていないのです が、例えば導入された時に賃金にかかるとか、人を雇えばお金がかかるし、賃金を上げ る時にもかかる。ほとんど85%の赤字企業も含めてかかってくる。今はそういう新しい 税をやっているので、私たちも反対しているのです。だから、企業者というのは常にそ ういういろいろなものが経営の中に入ってくるものですから、どうしても賃金のほかに 、いろいろなことも考えなければいけないということで、できれば、あまり負担のない ようにということで、そういうことをどうしても考えざるを得ないということなのです 。 ○労側委員  公正な処遇ということを、是非考えていただいて。そのためにここで議論していると 思いますので、そのことは是非分かっていただきたいと思います。 ○公益委員  公正な処遇といっても、我々は別に、同じ仕事をしていれば同じ給料を払えなどと言 っていないのです。成果が違えば、成果の違いを評価していいです。ただし、公正に成 果の違いを評価してください。これは多分、労側も一緒なのです。ですから、多分使側 委員が言っていることと変わらないと思うのです。是非、そこをご理解いただければと 思います。 ○使側委員  ただ、法制化してマイナスになるような、もうおっしゃるとおりなのです。中小企業 というのは、現在どこを対象に競争していると思いますか。40分の1の月給の中国なの です。おそらく、デパートだって同じになると思います。メーカーだけではないと思う のです。一般の商社関係も同じような形になっていくと思うのです。 ○公益委員  前回私が発した発言がどうも十分伝わってないのかもしれないので、もう一度確認し たいのですが、すでに啓蒙の時代は終わったという意味は、十分に啓蒙できているから 、これでもう十分ですというつもりで言ったわけではないのです。もうすでに法律が出 来てから10年経っている。にもかかわらず、なぜそれが前進、改善されていかないのだ ろうか。この問題を考えた時に、もう次のステップに入ってもよろしいのではないでし ょうかと。それがすぐにということではなく、例えば時間経過を考えるということも重 要でしょう。いずれにしても、具体的にどういうふうにすれば、この問題を解決するこ とが出来るのだろうかということについて、どうすれば前進させられるのだろうかとい うことを、労使で考えてほしいというつもりで申し上げたことであったわけです。一応 、念のために。 ○分科会長  今までの中でご質問がなかった点で、1つ確認したいのですが、論点の2の(3)に ついて、正社員との処遇の違いやその理由を説明するということについて、使用者側の ほうではその必要はないので、本人のことをきちんと説明すればいいのだというご意見 なのですが、労側では、もし説明するとすれば、どういうことを説明したらいいか。そ の辺は、具体的にはどういうイメージを持っていらっしゃるのですか。 ○労側委員  正規社員、フルタイム労働者と短時間労働者の間に処遇差があった場合、なぜ差があ るかというのを、事業主が立証する。 ○分科会長  具体的には、どういうことを言ったらいいというふうにお考えですか。 ○労側委員  例えば職務の違いで差をつけるとか、あるいはこういうことで成果が少し違うから、 こういう差をつけているとか、先ほどの合理的理由の範囲の中で説明してもらわないと 、それは納得しないでしょうということで、説明責任を事業主に課すということを、私 どもは言っているのです。 ○分科会長  つまり、本人のことだけではなくて、正社員との違いを、今のようなことで説明する 。 ○労側委員  使用者の方々は、競争が激しいという言い方をされるのですが、そのこととパート労 働者で人格を無視しているような処遇の仕方が現状あるということを、どうも認識され ていないような感じがするのです。均等待遇とは何ぞやということをもう一度議論しな いと、競争のためだからどうでもいいというお話ではないと思うのですが、ちょっとそ こはご認識が欠けているような気がします。 ○使側委員  認識は欠けていないですよ。ちゃんと企業を経営していますし、みんな納得して仕事 をしていただいていますからね。そんな生やさしい問題でもって、今の企業経営などは 絶対できません。従業員がみんな会社を愛する、仕事を愛するという形に持っていかな いで、何で企業の存立ができるのですか。 ○労側委員  ルールをきちんとつくって、そのルールでもってお互いに公正に、企業家もそのまま やってもらいましょうとなるわけでしょう。 ○使側委員  ルールは、マイナス効果を生むようなルールであっては困る。こういうことを申し上 げているのです。 ○労側委員  ルールをつくって、競争を同じ土俵でやりましょうと言っているわけです。 ○使側委員  そうそう、同じ土俵で。 ○労側委員  ルールなき競争は駄目ですよと言っているわけです。現状はそうではありませんかと 。加えて、いろいろな相談から、人格を無視するようなことが行われている、合理的な 説明がつかないようなことが行われているということについて、ちゃんとルールをつく ってやりましょうと言っているわけです。 ○使側委員  今やっているこの議論が。 ○労側委員  そこはちょっと本末転倒なところがある。競争が激しいからと。 ○使側委員  そんなことはないです。悪いことをする奴を対象に法律をつくる。これは分かります 。しかし、悪いことをするのがあまりレベルが低すぎるのです。そんな程度のことを。 経営者の素質の問題、これは大変です。30人とか20人とか10人でも、企業の社長ですか ら、そういうところまで全部ひっくるめて、一律に法律でもってがんじがらみに縛ると いうのは、おかしいのではないですか。それはちゃんとやっている企業にとっては、マ イナス効果を生みますよということです。 ○公益委員  むしろ、そういう危ないところがあるからこそ、きちんとしたルール、ガイドライン をつくって、別におおそれた指導などと言うわけではないですが、きちんとした情報提 供をして、ルールをつくってという、非常にすぐれた、先を見越して、そういうパート タイムを均等待遇でますます労働者の生産性を上げて、企業の利益を上げる。その線で は、ある意味では放っておいてもいいということは、逆に言えるわけです。そうではな いところで、もうきちんと日本の産業、企業を堀り起こしてレベルアップさせるために は、きちんとした公正なルールを引いていただいて、労働者も気持よく能力を発揮でき るような制度にしていきましょう。そのために、我々は知恵を出そうではないかという ことで、ちょっと、やはり議論がひっくり返っていると私は思います。 ○使側委員  ですから、それを法律で規制するということはないのではないですかと言っているの です。 ○公益委員  どうすればいいのですか。 ○使側委員  それは教育していけばいいではないですか。小学校の生徒を教育するのと同じような ことではないですか。 ○公益委員  小学校も教科書が必要でしょう。 ○使側委員  それは社会の教育です。 ○労側委員  事務局からのそもそもこの論点の説明に、「企業内の公正処遇の実現のルール」とい うご提案があったのです。そしてまた別の機会に、別のテーマとして就業調整問題があ るというお話があったのですが、今日ここで議論するということでなく、やはり企業内 にとどまらない公正処遇のルールもあるという意味で、先ほど少し配偶者手当の問題が 議論になりましたが、それに関連する、働き方に中立な税制や社会保険の確立のことも 、一つ必要であることや、先ほど労側委員から、きちんと職務評価を行う仕組みが、な かなか当事者の中では難しいという面もあって、それを、客観的に公正に評価する仕組 みなどがあると、もっと均等待遇というものが現実的に進んでいく。そういう意味で、 その社会システムをつくるということも必要だということと、例えば、今現在の最低賃 金を決める決定システムのあり方は、今のままでいいのかどうかということ、これはパ ート法との関連ともう1つ、育児・介護休業法のテーマでもあるのですが、やはり有期 契約労働者が育児や介護休業の、いわゆる両立を可能とするそういう仕組みから適用除 外にされている問題、こういったことも、一部企業内になると思いますが、今日提起い ただいた企業内の公正処遇ルール以外にも、今考えられるものとしてはあるというのは 、ちょっと申し上げておきたいと思いました。 ○分科会長  それでは、今日いろいろご意見をいただきましたので、これを基に労使の意見として 、事務局のほうで整理していただいて、各論点ごとに次回さらに議論を深めていきたい と思いますが、その進め方についてはよろしいでしょうか。                 (異議なし)                  では、そのようにさせていただきます。一応、議題の議論は今日のところはこれまで としますが、事務局から意見募集の結果についてのご報告があるようですので、説明を お願いします。 ○事務局  資料2です。分科会における議論の参考としていただくために、10月11日から11月10 日までの1カ月間、一般の個人、団体を広く対象として実施しました、「今後のパート タイム労働対策」についての意見募集の結果をまとめさせていただきましたので、報告 させていただきます。個人から25件、団体から33件、計58件もの意見を寄せていただき ました。ご意見をいただいた個人、団体の方に、この場を借りてお礼を申し上げたいと 思います。  ただ、ここで個人、団体と一応分けてありますが、1つの団体で肩書きの異なる複数 の方から、違う意見が提出されたケースもありまして、この場合、団体名とそこでの役 職名が記載されていた場合には、基本的には団体の範疇に入れさせていただきました。  意見募集の内容については、寄せられた意見には、基本的に手を加えずに、そのまま 資料として提供させていただいていますが、氏名、住所などの記載欄などに個人に関す る情報が含まれているものについては、意見募集を行う際にお示しさせていただいた募 集要領の趣旨に沿った形で、処理をさせていただいて消してあるものもございます。各 委員におかれましては、お目通しいただいて、今後の議論の参考にしていただきたいと 思います。以上です。 ○分科会長  ありがとうございました。時間も過ぎましたので、今日はこれで閉会させていただき ます。本日の署名委員ですが、片岡委員と志村委員にお願いしたいと思いますので、よ ろしくお願いします。あとは、次回の日程についてご説明をお願いします。 ○事務局  次回は12月6日(金)午後1時から3時ということで、場所は5階の共用第7会議室 です。 ○分科会長  それでは、これで閉会とします。どうも長時間ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 企画法規係(内線:7876)