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資料番号
No.3-2

「じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」
参考資料


 経緯
 結晶質シリカ(じん肺の主たる原因物質)に発がん性ありとの学会等による見解を踏まえ、厚生労働省では、平成13年7月に「肺がんを併発するじん肺有所見者の健康管理等に関する検討会」を設置し検討してきたところであるが、
平成14年8月に、
(1)  結晶質シリカそのものの発がん性を示す知見は得られなかったが、じん肺有所見者に肺がんリスクの上昇が認められるため、じん肺と原発性肺がんは医学的関連性を有しており、原発性肺がんをじん肺の合併症とすること
(2)  じん肺有所見者に胸部らせんCT検査及び喀痰細胞診を年1回行うこと等を内容とする提言を得たところである。
 この提言を踏まえ、肺がんの早期発見による重篤な健康障害の予防・軽減等、じん肺有所見者の健康管理を行うため、じん肺法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正することとする。

 改正内容
(1)  じん肺法施行規則の一部改正
(1)  じん肺の合併症として「原発性肺がん」を追加すること。
(2)  事業者は、常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理2の労働者について、年1回事業者が定期に行う一般健康診断において肺がんにかかっている疑いがないと診断されたとき以外のときは、定期外のじん肺健康診断(肺がんに関する検査)を行うこととすること。
(2)  労働安全衛生規則の一部改正
 健康管理手帳の交付対象者のうち粉じん作業に係る業務に従事していた者については、現在、じん肺管理区分が管理3であることを要件としているところであるが、この要件をじん肺管理区分が管理2又は管理3であることとすること。

 施行期日
 平成15年4月1日。ただし、2(2)については、公布日。


I じん肺法による健康管理の概要(現状)

 1  じん肺管理区分の決定

 事業者は、じん肺健康診断を行った結果、じん肺の所見のある労働者について、エックス線写真とじん肺健康診断結果証明書を都道府県労働局に提出しなければならないことになっており、都道府県労働局においては、地方じん肺診査医により診査が行われ、その労働者についてのじん肺管理区分が決定され、事業者に通知される。
 また、粉じん作業に従事する労働者又は労働者であった者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、エックス線写真とじん肺健康診断結果証明書を都道府県労働局に提出し、じん肺管理区分の決定を申請することができる。


 <じん肺管理区分>
じん肺管理区分 じん肺健康診断の結果
管理1 じん肺所見がないと認められるもの
管理2 エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3 エックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4
(1) エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認められるもの
(2) エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

 <胸部エックス線写真上のじん肺の異常陰影の程度区分>
型(PR) エックス線写真の像
第1型(PR1) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第2型(PR2) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第3型(PR3) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第4型(PR4) 大陰影があると認められるもの

 2  じん肺健康診断
 事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者に対してじん肺健康診断を実施することになっている。

1) じん肺健康診断の内容
(1) 粉じん作業についての職歴の調査
(2) 直接撮影による胸部全域のエックス線写真による検査
(3) 胸部に関する臨床検査
(4) 肺機能検査
(5) 結核精密検査
結核菌検査
エックス線特殊撮影による検査
赤血球沈降速度検査
ツベルクリン反応検査
(6) 肺結核以外の合併症に関する検査
結核菌検査
たんに関する検査
エックス線特殊撮影による検査

2) 定期のじん肺健康診断の頻度

じん肺管理区分 粉じん作業従事との関連 頻度
常時粉じん作業に従事 3年以内ごとに1回
常時粉じん作業に従事したことがあり、現に非粉じん作業に従事 3年以内ごとに1回
常時粉じん作業に従事 1年以内ごとに1回
常時粉じん作業に従事したことがあり、現に非粉じん作業に従事 1年以内ごとに1回
常時粉じん作業に従事

 * この他に就業時健康診断、定期外健康診断、離職時健康診断がある。

<じん肺の合併症>
  (1) 肺結核
  (2) 結核性胸膜炎
  (3) 続発性気管支炎
  (4) 続発性気管支拡張症
  (5) 続発性気胸


II  労働安全衛生法による健康管理手帳制度の概要(現状)
 健康管理手帳の交付対象としてがんその他の重度の健康障害を発生させるおそれのある業務を12業務規定しており、粉じん作業に係る業務もその一つとなっている。
 粉じん作業に係る業務に従事したことがあり、じん肺法の規定により決定されたじん肺管理区分が「管理3」である者については、離職の際又は離職後に、都道府県労働局長に申請することにより、健康管理手帳が交付される。
 健康管理手帳の交付を受けると、年1回、指定された医療機関又は健康診断機関で、定められた項目による健康診断を無料で受けることができる。


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