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フルタイム正社員とパートタイム労働者との間の
公正な処遇を実現するためのルールの考え方(案)


フルタイム正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を実現するためのルールの考え方


別添1

正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者か


職務の同一性いかんについて検討する場合の考え方

○「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告(平成12年4月)」(抄)

 「労働省編職業分類の細分類の区分を参考としつつ、通常従事する作業が同じかどうかで判断することとし、その際には作業の遂行に当たって求められている責任や付与されている権限の範囲についても考慮することが適切である。
 また、当該作業を遂行するための必要な最低限の能力や当該作業を実施する上での困難度などの「職務レベル」も、同一性の判断基準となる。
 このような職務の同一性が認められる場合には、臨時的ないし付随的な作業(例えば、作業後の清掃)の有無に違いがあっても、同じ職務として扱うことが適切である。
 一方、作業の幅や責任が大きく異なる場合、例えば、正社員がパートタイム労働者の行う作業に加えて生産計画の策定、顧客対応等も行うような場合などは、職務そのものが異なるとして扱うことが考えられる。
 いずれにしても、職務の同一性いかんについては、各企業の実態を踏まえ、労使において具体的に検討されることが適切である。」


○「パートタイム労働研究会報告(平成14年7月)」(抄)

 (「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告」について、以下のように整理しつつ考え方を踏襲)
 「職務(責任・権限を含む)の同一性を第一の判断基準とつつ、同じ職務であっても、能力や成果などの他の諸要素や、配置転換の有無等働き方によって処遇が違いうるわが国の実態に深く配慮・・」


○ 正社員と職務・責任が同じパートタイム労働者の有無及び割合別事業所数割合

(単位:%)
就業形態、主な産業 パートタイム労働者を雇用している事業所 職務・責任が正社員と同じパートタイム労働者がいる パート全体に占める割合 職務・責任が正社員と同じパートタイム労働者はいない 不明
1割未満 1割以上
3割未満
3割以上
5割未満
5割以上
パート                
  産業計 100.0 40.7(100.0) (38.7) (19.2) (9.6) (32.5) 55.7 3.6
製造業 100.0 8.1(100.0) (33.7) (22.6) (9.0) (34.7) 58.2 3.7
卸売・小売業、飲食店 100.0 41.8(100.0) (48.2) (19.3) (10.5) (22.0) 53.0 5.3
サービス業 100.0 42.0(100.0) (27.5) (20.4) (8.6) (43.5) 55.5 2.5

注: ( )内は、職務・責任が正社員と同じ「パート」がいる事業所を100とした割合である。
出典: パートタイム労働者総合実態調査(厚生労働省 平成13年)


(PDF:182KB)


別添2

処遇差の合理的理由について


参考1:「パートタイム労働に関する雇用管理研究会報告(平成12年4月)」(抄)

「3 正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者(Aタイプ)に係る均衡を考慮した雇用管理のあり方について

(1) 処遇や労働条件のあり方について

イ 処遇や労働条件に関し均衡を考えるに当たっての基本的視点について

 正社員と同じ職務を行うパートタイム労働者(Aタイプ)の処遇や労働条件について当該正社員との均衡を考えるに当たっては、まず、(1)これらに係るパートタイム労働者・正社員双方の決定方式を合わせていく方法があり、これが合わせられない場合には、(2)これらの水準について正社員とのバランスを確保する方法について検討する必要があるであろう。

ロ 決定方式を合わせる方法について

(イ)イの(1)については、例えば賃金に係る双方の決定方式を合わせていくやり方がある。具体的には、賃金の構成要素、支給基準、査定や考課の基準、支払い形態などの決定方式を合わせていくことが考えられる。このような場合には、結果的には、これらの水準について、正社員とのバランスが確保されることとなる。

(ロ)一方、雇用管理上の合理的な理由がある場合は、両者の決定方式を異にすることはあり得るところである。ここで合理的な理由がある場合としては、例えば、(1)異なる職務間の異動がある正社員については職能で賃金を決めるが、職務間異動がないパートタイム労働者については職務で賃金を決める場合、(2)毎月の所定労働時間がほぼ一定の正社員については月給制で、パートタイム労働者のうち、所定労働時間が様々に変動する者については時給制を採用する場合などが考えられる。

ハ 水準のバランスを確保する方法について

(イ)一般的には、雇用管理上の合理的な理由があるものとしてパートタイム労働者と正社員との間で処遇・労働条件の決定方式を異にすることが認められる場合が多いものと考えられるが、このような場合であっても、上記のイの(2)(p5)に示したように、パートタイム労働者の処遇や労働条件の水準、例えば時間当たり賃金について、正社員とのバランスを図っていく方法が考えられる。

(ロ)上記の(イ)において述べたところにより、水準についてバランスを図っていく場合において、例えば、正社員と比較してパートタイム労働者に残業や休日出勤がない又は少ないという事情があり、これらが労働協約、就業規則、労働契約等において明らかにされているようなときには、そのような事情については正社員との均衡を考える場合に考慮されることもあり得るところである。また、その結果として、処遇や労働条件の水準について、そのような事情が存在しない場合と比較して合理的な範囲で差を設けることもあり得るところである。
 この場合、いかなる差が合理的範囲であるといえるかについては、労使において具体的に決定されることが適切である。
 ただし、これらの事情について労働協約等において規定されている場合であっても、実態としての差がないようなときには、考慮すべき事情とはならないことはいうまでもない。

(ハ)このほか、例えば、正社員と比較してパートタイム労働者に配置転換や転勤がない又は少ないという事情があり、これらが労働協約、就業規則、労働契約等において明らかにされているような場合には、上記の(ロ)と同様に考えることができる。

(ニ)また、パートタイム労働者と同じ職務を行う正社員が複数いて、それらの賃金水準が勤続期間や職務遂行能力の違いなどによって異なっている場合に、どの正社員と比較するか、あるいはいずれの賃金水準を比較の対象とするかなどの具体的な比較の方法については、労使においてそれぞれ決定されることが適切である。」


参考2:「パートタイム労働研究会報告(平成14年7月)」(抄)

○ 「パートタイム労働研究会最終報告」

 この考え方は、正社員との職務(責任・権限を含む。以下同じ)の同一性を第一の判断基準としつつ、同じ職務であっても、能力や成果などの他の諸要素や、配置転換の有無等働き方の違いによって処遇が違いうるわが国の実態に深く配慮した均衡処遇ルールといえる。
 すなわち、第一に「同じ職務の場合に処遇の決定方式を合わせる」というルールは、同じ職務であっても、他の諸要素によって処遇が違うわが国の処遇制度の実態に配慮し、例えば、同じ職務についている正社員が職能給であればパートも職能給というように処遇の決定方式は合わせ、その決定方式の下で各人をどのように評価・処遇するかは企業のルールに委ねるという考え方である。
 「ただし、合理的理由がある場合は決定方式を異にすることはあり得る」というのは、例えば、いまは同じ職務に従事していても、正社員には幅広い配転があり、パートは職務限定というように雇用管理形態が異なる場合には、配転を前提とした正社員には職務との結びつきの相対的に薄い職能給、職務限定が前提のパートには職務給といったように賃金決定方式が異なることもあり得るということである。
 第二に「残業、休日出勤、配置転換、転勤がない等の場合、合理的な差を設けることもあり得る」というのは、例えば、現在、就いている職務が同じであっても、幅広い異動の多寡などキャリア管理の実態が明らかに違う場合には、パートと正社員との間に処遇差があるとしても合理的であると考えるということである。
 ただ、IIでみたように、今後、働く側のニーズの多様化の下で、フルタイム正社員でも、配転、転勤などを伴わない、より拘束性の少ない働き方が広がっていくことにより、そうしたフルタイムとパートとの間でキャリア管理の実態に差がなくなり、他の合理的理由もないということになれば、処遇の決定方式を合わせることが必要ということになる。要は、フルかパートかの違いだけで、職務も働き方も含めて同じであれば、同じ評価の枠組みの中で処遇するというルールである。

○ 「パートタイム労働研究会最終報告 別添
   短時間労働者の均衡処遇に関するガイドライン案」(抄)

「確認2 パート社員の処遇についてどう考えていますか。
☆ あなたの会社のパート社員の処遇についてあてはまるのはどれですか。
(1)常用フルタイム社員であれ、パート社員であれ、現在の仕事や責任に応じて隔てなく処遇している。
(2)現在の仕事や責任が同じでも、常用フルタイム社員とパート社員では転勤、配転の有無などキャリア管理が明らかに違うので、現時点の処遇も違う。
(3)現在の仕事や責任や同じだけでなく、キャリア管理もそれほど違わないが、とにかく雇用管理区分が違うので処遇が違う。

(注)ここで「キャリア管理の違い」とは、企業の雇用管理の考え方に基づき、パート社員と常用フルタイム社員の間で、異動の幅、頻度、あるいは同じ職場の中でも役割の変化の度合いが明らかに違うことを言います。」

☆もう一つ。あなたがもしパート社員だったとして、会社のために尽くそうと思えるのは上のどれでしょうか。
(1)の場合はパート社員だからといって分け隔てをしていないので、やる気を持てるでしょうし、(2)の場合も、常用フルタイム社員の今後の負担を考えると多少の違いなら納得できるかもしれません。
しかし、(3)の場合はどうでしょうか。「こんな不公平な会社のために尽くそうという気にはなれない」と思うのではないでしょうか。」


参考3

○ 正社員との賃金差がある場合の理由別事業所数割合

就業形態 賃金額に差がある  
理由(複数回答3つまで)
職務内容が違うから 責任の重さが違うから 勤務時間の自由度が違うから 残業時間・回数が違うから 配置転換の頻度が違うから 正社員には企業への貢献がより期待できるから もともとそういった契約内容で労働者も納得しているから 正社員の賃金を下げることはできないから その他
パート 100.0
(83.7)
62.6 65.0 45.1 7.4 5.2 11.4 32.3 2.3 8.9

注: ( )内は、「賃金額に差がある」事業所の割合である。
「賃金差」は、同じ職種の正社員の初任給1時間当たりの賃金とパートタイム労働者の採用時の1時間あたりの賃金の差をいう。
出典: パートタイム労働者総合実態調査(厚生労働省 平成13年)

○ 各種制度の実施状況別事業所割合

(複数回答)(単位:%)
就業形態 パートタイム労働者を雇用している事業所 昇進・昇格 配置転換 能力開発制度
職能資格制度 役職への登用 その他
平成13年            
  パート 100.0 5.4 9.2 4.2 2.6 1.2
正社員 100.0 59.7 49.6 31.1 40.0 6.5
平成7年            
  パート 100.0 14.8 14.5 3.1 3.1 0.9
正社員 100.0 68.5 49.5 28.4 42.5 5.0

注: 正社員はパートタイム労働者のいる事業所の割合であり、正社員のみの事業所は集計対象としていない。
出典: パートタイム労働者総合実態調査(厚生労働省 平成7、13年)


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