02/08/19 第3回新たな看護のあり方に関する検討会議事録 第3回新たな看護のあり方に関する検討会議事録 日時  平成14年7月24日(水)     10:00〜 場所  厚生労働省専用第22会議室 出席メンバー  井部俊子、上野桂子、内布敦子、川越厚、川村佐和子、國井治子、         西澤寛俊、平林勝政、藤上雅子、宮武 剛、柳田喜美子         (五十音順、敬称略) ○田村看護課長  定刻になりましたので、ただいまから「第3回新たな看護のあり方に関する検討会」 を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙な中、また、大変暑い中、 当検討会にご出席いただきまして、本当にありがとうございます。それでは、川村座 長、進行のほどよろしくお願いいたします。 ○川村座長  おはようございます。議事に入ります前に、事務局から資料のご確認をお願いしたい と思います。 ○勝又補佐  資料ですが、「検討会議事次第」、「新たな看護のあり方に関する検討会メンバー 表」と、資料を1から4まで準備しております。資料1が「看護師等による静脈注射の 調査結果」、資料2が「聖隷福祉事業団の運営する訪問看護ステーションの取り組 み」、資料3が「在宅ホスピスケア専門チーム(グループ・パリアン)による在宅ホス ピスケアの実践」、資料4が「看護師等による静脈注射の実施について」という4部の 資料です。 ○座長  皆様のお手元にいまのものがおありでしょうか。  それでは、議事に入らせていただきます。本日は、ご案内にもありましたように、 「看護師等による静脈注射の実施について」を検討していきたいと思います。まず、事 務局から、「看護師等による静脈注射に係る調査」について資料が提出されております ので、ご説明をお願いいたします。 ○武田企画官  資料1で説明させていただきます。一部第1回の資料と重複がありますので、ごく簡 単にお話申し上げたいと思います。  1頁目ですが、「看護師等が行う静脈注射についての調査結果」で、1つ目が「医師 の認識」」です。900病院から回答があった247の対象病院に勤務する医師に対する調査 です。この1頁目は第1回の本検討会で出させていただいたものと同じです。前にご説 明申し上げたとおりですが、94%の医師が看護師・准看護師に静脈注射を指示している こと、95%の医師が、看護職員の静脈注射実施は相対的行為と受け止めていること、静 脈注射の範囲は、静脈注射が88%、点滴静脈注射が93%、輸血が49%であること、静脈 注射を実施する看護職員の能力について、今後必要なものとして、薬剤知識、感染・安 全対策、法的責任という回答が多かったことなど、ご説明させていただいたとおりで す。  2頁目も同様に、「看護管理者の認識」ということで、前々回にお出しした資料と同 様ですが、看護管理者の認識としても、90%の看護師・准看護師が日常業務として静脈 注射を実施していること、60%の施設で静脈注射マニュアルを看護部で作成しているこ と、52%の看護管理者が、静脈注射は診療の補助業務の範囲というふうに認識している こと、今後の能力の問題については、基本的に医師の認識とそれほど大きな差はありま せんが、薬剤知識や法的責任、患者の状況の判断が必要という回答が多く寄せられまし た。  3頁目が「訪問看護ステーションの管理者の認識」で、300の訪問看護ステーションを 抽出して、その中から回答があった171の訪問看護ステーションの管理者の認識を集計し たものです。60%の訪問看護ステーションで静脈注射を実施しているということで、若 干、病院におけるパーセンテージよりも低くなっておりますが、これは、実際にやるべ きかどうか、ニーズがあるかどうかということでは、85%の訪問看護ステーションで は、そのニーズとして、利用者ニーズがあるという回答でした。法的・教育的条件の整 備がなされれば、看護師の静脈注射を実施することに賛成という回答が86%でした。こ れについては、後ろに出てきます。  4頁は、調査自体は同じ調査ですが、第1回の検討会の時点では集計が途中であった ため、今回新たにお出しする資料です。「静脈注射の実施前後の関連業務を個々に見た 場合に誰がやっているか」、医師、看護師、准看護師それぞれのパーセンテージをとっ たものです。グラフを見ていただきますと、左から「医師の指示受け」、「患者・家族 への説明」、「アセスメント」、「薬剤混合」、「注射刺入」と、大まかに申し上げれ ば、左から右のほうに時系列的に並んでいるようなことで、「注射刺入」から「経過観 察」、「抜針」、「記録をとる」とか、そのほか、「医師の介助」、「抗癌剤注射」、 「輸血」について、それぞれまた別途項目を立てているわけです。  冒頭の資料にありますように、ほとんどの現場で、看護師による静脈注射業務が行わ れているということがありますが、個々に見れば、いくつか看護師による行為が低く なっているものがあります。特徴的なところをいくつか箱の中に挙げております。いち ばん左の部分ですが、「医師の指示うけ」は看護師の90%が実施しておりますが、ほか と比べて、看護師と准看護師の実施率の差が比較的明らかに出ているのは、この分野 で、看護師の90%に比べて、准看護師の実施は44%になっております。右のほうの「抗 癌剤注射」については、36%の看護師、28%の准看護師により実施されておりますが、 医師の実施は61%で、非常に高い割合になっております。いちばん右の「輸血」の実施 は58%の看護師、46%の准看護師が実施しておりますが、医師により47%実施されてい ます。逆に申し上げれば、「抗癌剤注射」、「輸血」という領域についてであっても、 3割から4割、あるいは5割の現場で、看護師業務として実施される、というふうに見 ることもできるのではないかと思います。  それ以外については、看護師・准看護師により実施されている割合が非常に高くなっ て、准看護師による実施率が若干看護師よりも低いという共通の傾向が見られます。 「刺入」と「抜針」を見ると、入れる時は医師の関与が高い所もありますが、抜く時に は関与が低いとか、さまざま、それぞれ細かく見ていくと、興味深いデータなのかもし れません。  5頁は、「看護職員の静脈注射教育」で、先ほど薬剤知識その他について、看護師の 能力が問われるというデータもありましたが、同じ調査でして、306の対象病院に勤務す る看護実務管理者、301の対象病院に勤務する看護管理者などからご回答いただいたもの です。まず上のほうの「静脈注射の教育実施状況」ですが、ベッド数で分けてとったも のです。ベッド数が多くなるほど、院内教育の実施割合が高くなっております。400ベッ ド以上ですと、いつも教育実施をしているのは56.3%、大体が20.3%、時にというのが 12.5%で、400床以上で言えば、9割を超える病院が静脈注射の教育実施をやっている結 果です。  下のグラフは、「静脈注射を行うための望ましい教育」で、回答については、いちば ん左からいきますと、「看護基礎教育のみ」、いわゆる看護師になるまでの看護教育の 中で行うことが望ましいという回答が約4分の1、25%ぐらいですが、「卒後教育を行 い全員実施」ということで、学校を出たあと、看護師資格を取って現場に入ったあとで も、教育を行うべきだという回答が41%、52%、62%で、最も多い回答がここのところ にきております。「公的認定資格」または、「その他」、「無回答」という状況になっ ています。  6頁は、「訪問看護ステーションが静脈注射を実施するために必要と考えること」 で、「法的整備」という回答が多かったことのみを前回お示しさせていただいておりま すが、個々の項目に沿って見ますと、「法的整備」が171の回答のうち155、「医師との 連携整備」が141、「診療報酬への反映」が92で、先ほど見ていただきましたように、現 場では非常にニーズを感じているけれども、実施している訪問看護ステーションが若干 低くなっている。そのためには、「法的整備」、「医師との連携の整備」、「診療報酬 への反映」が課題となっていることが窺われるものと考えられます。そのほかとして は、「看護基礎教育」、「看護師の施設内教育」が課題となっているということで、私 どもとしても、検討項目、検討対象としては、こういうところが主要なポイントになる だろうと考えている次第です。  7頁ですが、これも第1回目の検討会でお出しした資料ですが、「医療保険における 取り扱い」として、「在宅医療で使用できる薬」が個別列挙になっているということ、 在宅医療が中心になる前の通知ですので、そういう時代背景もあってのことかと思いま すが、「非常に通院中心、また通院できない場合も内服薬が優先される云々」の記述が ありまして、こういった点を含めて、現時点で見直しの必要があるかどうかの議論が必 要ではないかということで、添付させていただきました。事務局から、資料1について は以上です。 ○座長  ありがとうございました。ただいまのご説明について、すぐご質問ということもある かと思いますが、その前に現場の状況について、上野委員と川越委員のお二方から資料 をいただいておりますので、このご意見を発表していただいて、そのあとに質疑応答に したいと思います。それぞれ両先生、15分程度でお願いいたします。初めに、上野先 生、よろしくお願いいたします。 ○上野委員  聖隷福祉事業団の上野です。              (スライド映写)  訪問看護ステーションの制度が始まった当所は、老人を対象に介護を中心とする訪問 看護といわれ、医療面が少なかったと思うのですが、平成6年の健康保険法の改正のあ と、やはり、医療依存の高い方が在宅に帰って来ている状況と、短期入院というところ で、ターミナルや医療依存度の高い方たちが在宅に帰って来ている状況があります。今 回は、私が実際運営しています聖隷福祉事業団の状況を通しながら、どういう取組みを しているかということをお話していきます。 ☆スライド  私は、いま、訪問看護ステーションを14箇所運営しています。関東地区に3箇所、従 業員数がトータルで132名ですが、浜松地区が7箇所、関西地区に4箇所という形で運営 しています。 ☆スライド  今日は特に浜松地区の訪問看護ステーション住吉を中心に述べたいと思います。訪問 看護ステーション住吉は平成5年に開設して、その後、利用者の増加に伴って、細江、 浅田という形で、市内に利用者100名ぐらいの単位ずつに開設を続けて、いま現在7箇所 という形になっています。  訪問看護ステーション住吉は、スタッフが当初は5名常勤で入ったのですが、いま現 在は21名のスタッフがいまして、PT、OTも常勤で抱えながら仕事をしています。 ☆スライド  これは平成12年度の実績ですが、平成13年度は若干利用者数が低くなりましたが、延 べ利用者数が年間で2,027名で、延べ件数が9,970件、新規が157件という状況で、医療機 関は、延べでいきますと、100の病院と開業医が516となっています。 ☆スライド  月によりますと、10病院で、病院の医師は50名、浜松市内の病院が、大きい所が10い くつと、45の開業医の先生から指示を受けて、毎月95人ぐらいの医師から指示を受けて います。この中で、特に、あとで述べますプロトコールで契約を交わしながらしている 先生は10%ほどです。それは大病院のほうが多いです。 ☆スライド  これは利用者数ですが、介護保険の利用者が110名、医療保険が24名で、月に134名の 709件の訪問看護を行っている状況です。 ☆スライド  皆様にお渡しているデータと、これは若干違うのですが、依頼経路ですが、当初は、 ここの「看護婦他」というところが非常に少なかったのですが、いまケアマネージャー が依頼経路の大きな主流になりますので、70%がケアマネージャーという形で、訪問看 護ステーションが始まったころは、開業医の先生と家族からの依頼が非常に多かったと いう状況です。看護師からの依頼が少なかったというのは、病院の看護婦に訪問看護ス テーションがあまり認知されていなかったという時代があったということです。 ☆スライド  これは利用者の性別、年齢別ですが、やはり女性が圧倒的に多くて、特に後期高齢者 が非常に多い状況で、70歳から90歳のところが非常に多くなっています。 ☆スライド  これは訪問内容ですが、病状観察は当然のことですが、医療処置14%になっていま す。あとは他機関の連絡調整とか、療養上の指導、世話が非常に多いという形になって います。  14%の内訳は、「中心静脈栄養」とか「点滴管理」、「注射」のところが0.4%とか0. 3%で、非常にわずかです。そんなにたくさんやっているわけではないのですが、データ で見ると、やはり行っているという実態があります。 ☆スライド  これは「訪問時間割合」ですが、60分から90分が86.64%、30分から60分が4.15%、30 分未満が9.21%になっています。 ☆スライド  これは「主たる介護者の層」ですが、この緑のところが夫の介護者で、非常に高齢者 が高齢者を見ているという状況で、25.1%が妻ですが、夫のほうが昨年度はそれをもう 上回っていると、夫のほうの介護者が非常に多いというのが浜松のほうの状況です。浜 松は、どちらかと言うと、介護者がいらっしゃる方が多いという状況がありますので、 それで在宅療養をしているという現状です。             (スライド映写終了)  ステーションの状況を簡単にお話しましたが、私の関連している訪問看護ステーショ ンにおいては、14のステーションともに静脈注射、点滴注射等は行っています。ただ、 それは、いずれに関しても、医師の指示の下にということですが、医師とのきちんとし た指示関係があって初めて行っているという状況です。  ただ単に、指示があれば全部行うというのではなくて、一応、実施に当たっては、取 り決め事項を決めているということで、まず第1点は、医師と利用者、ステーションの 関係の中で信頼関係があることということです。例えば、利用者や家族がどうしても在 宅で生活したいとか、在宅で死にたい、在宅で生活させてあげたいという思いがあっ て、それをサポートする医師からの指示があった場合行うということです。  第2点目は、医師との関係で、何らかの約束事をしているということです。プロト コールができる前は、点滴の依頼があって、医師との信頼関係の下に、「じゃあ、先 生、何かの時、責任もっていただけますか」などということを言いながら、きちんとお 話をして、指示を受けていた現状があったわけですが、いま実際にはプロトコールは、 老人保健健康増進推進等事業で、川村先生が主任研究者として行っていて、もう3年目 で、昨年度のまとめも出来上がったわけですが、そのプロトコールに基づきながら、実 際、医師と契約書と言いますか、協定書を交わして行っている状況です。  先ほどお話しましたように、プロトコールに関しては、10%ぐらいの先生と協定書を 結んで、点滴注射だけではなくて、褥瘡やいろいろなプロトコールの中身がありますの で、病院の先生方は、材料費の問題等もありまして、比較的結びやすいということと、 開業医の先生でも、2、3名の先生とは協定書を結びながら仕事をしている状況です。 プロトコールに関しては、資料の5頁の「在宅末梢点滴注射法管理協定書」と「在宅抹 梢点滴注射法に関する異常・トラブルと医師への報告基準」を住吉が作りました。もう 一つ、7頁に書いてあるのは、実際に医師と協定書を結んだものですが、この方は、癌 の末期の方で、12月ぎりぎりに在宅に戻っていらしたということです。それで、栄養補 給のためにということで、この方は病院からの依頼だったのですが、カテーテル感染の 既往とか経口摂取がどうかとか、薬剤内容と、滴下不良の場合はどうしようか、ペパリ ンフラッシュをしてくださいとか、8頁に書いてありますように、こういうような時に はドクターコールしてほしいとか、注入が時間どおりいかない場合は、1,000ml入ったら 中止してよろしいとかいう形を、具体的に指示いただいて実施する。この具体的な指示 は指示書で送られてくるのではなくて、こういう協定書を結ぶ場合は、医師の所に行っ て、医師と合議しながら、その場でお互いにサインを交わしながら書いてくるというこ とで、医師と訪問看護ステーションが1部ずつ協定書を持っています。  これは、ほとんど、この研究の報告書に基づいて作ったものですが、内容に関して は、これからやっていく中で、もう少し自分たちのステーションとか、医師との関係で 変えていくことがあるのかもしれませんが、報告書に基づきながら、ステーションで活 用している状況です。  3点目は、実施する場合は、初回は必ず医師と同行訪問して、必ず医師が実施し、そ の場で指示を受けて、注意事項とか安全性の確認をしていく、というふうにしていま す。指示があればすべて実施するのかと言うと、そうではなくて、どのような場合に指 示を受けるかということですが、本人、家族が最後まで在宅希望して、脱水だけの目的 で、入院を回避できるというところには実施しようと。やはり、これは本当に医師との 信頼関係がなければ駄目ですので、医師との信頼関係があって、プロトコールを提示し て、契約ができた場合と、介護者が、やはりキーになってきますので、判断できる介護 者がいる場合と、ステーションが状態をきちんとアセスメントして対応できると判断し た場合と一応決めています。  それでは、どういう場合に、指示を受けないかということですが、必ずしもそのとお りではないはもしれませんが、一応、私どもで進めているのは、例えば突然、「点滴だ けで行ってくれ」といって、何の信頼関係もない所から指示があった場合には、それを 受けていいかどうか非常に判断に迷うということがあります。そういう場合には、やは り内部でよく検討しなくてはいけないこととしてます。輸液とか抗癌剤等副作用が出現 する薬剤が混入している場合は、まずは、あまり受けないでいこうと、利用者の血管が もろくて、何回も針を刺入しなければいけないとか、非常に肥満であって刺しにくい、 非常に技術的に困難だという場合は受けない。介護者に介護能力がない場合とか、独居 老人の場合は、たとえステーションに人材がいて、独居でもずっと付いていることがで きる場合はまた別かもしれませんが、何かの時にすぐ連絡ができる体制がとれない場合 は受けないという方向でいこうということです。  では、実施しなかった場合は、どういう問題が起きるかということですが、昨今の医 療状況が、在院日数の短縮化で、非常に病状が不安定なままとか、ターミナルの方々が 在宅に帰って来ておりますので、例えば補液が必要だということで病院に入院します と、入院はさせてくれるのですが、退院直前まで補液をしたままで退院してくるという 状況がありますと、また帰って来て、また同じことを繰り返して、また入院するという 形をとってきますので、そういう場合はあまり望ましくはないのではないかと思いま す。  脱水のために、利用者が入院を希望しても、脱水のみでは入院させてくれないという 病院も実際には多いと思います。そうすると、外来に点滴のみで通院するという、利用 者にとっては非常に負荷がかかりますので、外来通院して病状が悪化する可能性がある とか、点滴をしない場合には、家族は必死に食べさせようと、ものすごく努力をするわ けです。食べさせたり飲ませたりということで、家族がものすごく不安になりますし、 ストレスが増大して、結局、在宅生活が長くできなくなってしまいます。  ターミナル期になりますと、在宅を選択できないで、入院を余儀なくされます。あ と、寝たきりの高齢者が徐々に食べれなくなって、本当に終末期になってきた時に、家 族が受け止めていけないというところで、何かしてあげれなかったのではないかという 思いがあります。そういう時に、例えば点滴500ccの補液で、「ああ、うちでちゃんと最 後まで見てあげた」という思いがありますので、そういうところには、やはり、やらな かった時に、家族にその悔いが残るという状況があると思います。  事例ですが、99歳の男性で、もうすぐ白寿を迎えるという方だったのですが、すごく 矍鑠老人だったのが、徐々に寝たきりになりまして、訪問依頼がありました。当初は褥 瘡の予防とか保清とか、介護相談とかという形でかかわっていたわけですが、徐々に食 べれなくなって、医師は、補液が必要だという判断をされたのです。当初、医師は、開 業医の先生ですが、「来たらすぐ順番を待たせないでやってあげるから、連れておい で」ということで、家族が一生懸命連れて行ったのですが、長いこと家から出ていない ご老人だったものですから、外来で点滴をして帰って来ると、何か行く前よりもグタっ とする状況になっていまして、体力の衰えが非常に強いということで、外来の往復は不 可だということで、医師から、依頼がありました。家族も、外来へ連れて行くのは大変 だというお話を医師にしまして、それから、訪問看護師さんがずっと入っているわけだ から、看護師さんにしてもらえないだろうかという家族の思いを医師に伝えて、医師が ステーションに依頼したという形で、先生と一緒に行って、補液をして、この方は白寿 を迎えられて、そのあと1週間後に亡くなられたというケースなのです。  そういう形で、少し補液のところで私たちがお手伝いすることで、在宅で少しでも長 く生活できるという状況がある思います。  「今後の課題」と言いますか、必ずしも全部が全部、輸液等も含めて看護がやるかど うかは別として、看護の責任の下に行うと。私は、訪問看護ステーションの運営の中 で、実施する者の責任は非常に大きいと捉えていますので、受けた以上は実施する側で 責任をもって行う、というふうに思いながら、仕事をいままでしてきました。「今後の 課題」としては、やはりプロトコールができましたので、このプロトコールをきちんと 普及させて、自分のステーションにそれをオリジナリティのようなものに変えながら、 自分のステーションのものをきちんと作って、スタッフ教育をしていくのが一つと、知 識、技術の習得と、研修は必要だと思います。医療現場はどんどん進んでいますので、 在宅では、そこに追い付かない状況がありますから、そこのところは、きちんと研修を していかなくてはいけないのではないかと思っています。  責任の所在に関しては、考えていかなければいけないと思います。先ほどの報告書の 中にありましたが、薬剤の入手、調剤薬局との関係、手技料をどうするかという課題が あると思います。  もう一つは、500ccだったら2時間ぐらいだと思うのですが、抜針する時に、受ける時 間の確保も必要かと思っています。例えば、一旦、帰ってもう一回訪問に行くという体 制がとれるかということと、その時間をどう確保するかということが大事ではないかと 思います。  癌末期等ですと、復数回訪問があるのですが、そうでない場合は、復数回訪問はあり ませんので、復数回訪問をどう考えていくかということも一つの課題かと思っていま す。点滴中、ずっと看護師が付いていられるかどうかというところも一つ考えていかな ければいけないのではないかと思っています。  いろいろな課題があると思いますが、訪問看護は在宅ケアの中核をなすと言われてい ますので、私たちも精一杯頑張っていきたいと思いますし、どう支援すれば、在宅療養 者が安全で安心な生活ができるかを考えていければと思っています。以上で終わりま す。 ○座長  大変ありがとうございました。続きまして川越委員からお話をお願いいたします。 ○川越委員  いま、一般的な訪問看護ステーションで行われている医療についてのお話がございま したけれども、私がこれからお話ししたいことは、ある意味で特殊な話だということを 理解していただければと思います。 ☆スライド  いまの仕事をする2年前まで、私はある病院の責任者をやっておりまして、そこで私 設ホスピスをつくりました。現在22床ございます。ただ、私設ホスピスの限界というも のをそのとき非常に感じまして、自分がもともとやっておりました在宅でのホスピスケ アをやりたいということで、2年前に開業したわけなのです。  私設ホスピスに負けない、それ以上の在宅ホスピスケアをどうやってできるか、とい うことを念頭に置きながらいまの仕事をやっております。そういう中で、点滴の問題な どのことをご紹介したいと思いますので、そのところをご理解いただきたいと思いま す。 ☆スライド  私たちのクリニックは墨田区両国のビルの3階にあります。ホームケアクリニック川 越という小さな、無床の診療所です。月曜から土曜まで、木曜を除いた午前中に外来診 療を行って、そのあと午後と木曜に往診をするというスタイルをとっております。  先ほどから申しますように、ある意味で非常に特殊なグループであるということです が、それは、末期がん患者の在宅ケアを中心にチームを組んでおります。  これをグループ・パリアンという名前でまとめておりますけれども、訪問看護、ホー ムヘルプ、ケアマネージメント、そしてクリニック。これは私の個人的なもので、医療 法人でも何でもございません。あとはパストラルケアを担当する者(ボランティア・グ ループとか研究)、そういうものをすべて含んだ形でやっております。 ☆スライド  簡単にお話しいたしますと、一昨年7月から保険診療を開始しておりますけれども、 今年6月までの間に、177人の末期がん患者が登録されました。そのうち、いま生きてい る方や中止したケースを除きますと、2年間で146例の方が亡くなっております。  146例中5例は緩和ケア病棟に行って亡くなっております。実は、この方々は最初から 緩和ケア病棟へ行くという前提のもとで、家にいる間の面倒を見てほしいということで 私たちが関わったケースなのです。1例だけ一般病棟に入っておりますけれども、これ は告知の問題で、どうしても駄目で、残念ながら、一般病棟に入ったのです。一般病棟 に入ったこの方を含めたとしましても、99%以上の方が家で最後まで過ごして亡くなっ ていることになります。がんの方が、月平均にしますと6名、多いときには12名ぐらい 亡くなります。  平均在宅ケア日数は39日です。1年間70人の死亡、平均在宅ケアの期間が39日という のがどういう意味を持つ数字なのかということをちょっとご紹介したいと思います。 ☆スライド  これは横軸に私設ホスピスの病床数が書いてあり、そこで何人くらいの方を1年間で 診るかということを書いてあります。全国平均は100名ちょっとですから、私たちの70名 という数は、1つの診療所としては非常に多い数で、大体15〜16床の私設ホスピスに匹 敵する働きをしていると思います。 ☆スライド  平均の在宅ケア日数は39日、つまり、ケアを始めて亡くなるまで平均39日なのですけ れども、PCUで言いますと、これが平均在院日数に相当するわけです。日本のいまの 平均が45日ぐらいですから、それと比べても、ものすごい速い患者さんの回転が起きて おりまして、その点においても私設ホスピスに決して劣ってないと自負しております。  現在私は20名ちょっとの患者さんを診ておりますが、たぶん、今年は100名くらいの方 が家で最後まで過ごされると思います。20名というのは、東京で言いますと、聖ヨハネ 会桜町病院ホスピスとか、聖路加のPCU等日本の代表的なホスピスと同じくらいの働 きを私たちのクリニック、あるいはグループ・パリアンでやっていると言えるわけで す。そういうことで、非常に特殊な所だということを念頭に置いて、これからの私の話 を聞いていただきたいと思います。 ☆スライド  まず、点滴というのが非常に有用だということを高齢者の例で1つご紹介したいと思 います。そして、医者がどのように関わってないかということを説明したいのです。  現在87歳の女性で、原疾患は特にないわけですけれども、一昨年7月に脱水になって 貴医院に脱水の治療ということで入院されたわけです。そして、よくなって帰ってこら れたのですが、また具合が悪くなって傾眠傾向が出てきたということで、9月20日から 私たちが入って29日まで、都合10日間、末梢点滴を、500だけですが、やったわけです。  この間医者が、私が何回往診したかというと、3回です。その代わり訪問看護のほう が頑張ってくださいまして、1日2回行ってくれて点滴の管理などをしてくれました。 この方はいま非常に元気になられました。資料に詳しく書いてあります。  脱水状態を放置しますと、お年寄りは非常に悪くなります。かと言って、その度ごと に入院するということは非常に無駄なわけですので、こういう形で我々が関わっていれ ば、こういうお年寄りの方も十分家でご自分の人生を全うできる、ということになるの ではないかと思います。 ☆スライド  私たちが末期がんの方の医療をどういう具合に行っているかという原則をこれからお 話ししたいと思います。  在宅において末期がんの方を診るときの、医療処置を行う上でのキーワードをここに 4つほど挙げました。1つは「日常生活を支援する医療」であるということです。それ から、これはホスピスケアの原則でもあるわけですけれども、できるだけ「自然な 形」。そして、患者、それから看取る家族が「安心」していること。  在宅というのは、我々にとってある意味で非常に厳しい場所です。在宅ケアの質がい いかどうかというのは、患者さんの在宅死の頻度を見ればすぐわかるわけです。悪けれ ば、必ず入院してしまいます。ですから、私たちが100%近い在宅死を抱えているという ことは、そういう意味だけでも評価されていいのではないかと私自身思っております。 実際、ほかの所を聞きますと、悪くなるとすぐ入院する。患者さんの方から家族の方か ら逃げていくということがありますので、この「安心」ということは非常に大事なので す。しかも「安全」にやらなければいけないということで、こういうキーワードが在宅 の方を診るときには大事にしております。 ☆スライド  具体的な話をします。59歳の乳がんの方で、18年くらい長い経過のある方なのですけ れども、膀胱と腰部の骨に転移しました。血尿が出て、膀胱カテーテル(フォーレのカ テーテル)が入って、それからエピドラのカテーテルが入った。病院では膀胱留置カ テーテル、それから硬膜外モルヒネの継続管理をしていたわけです。  家に帰るに当たって、普通はカテーテルをどうやって管理するかという発想でやるわ けですが、私たちはそういう発想はいたしません。こういうカテーテルをどうやって取 るか、ということを発想していくわけです。  皆さんが一度入れたらわかりますし、私は入れたことがあるから偉そうに言うのです けれども、こういうカテーテルは本当に邪魔なのです。日常生活をする上で、こんなも のはないほうがいいに決まっているのです。ですから、こういうものは取っていくとい うことになるわけです。  取るのは簡単なのですが、例えば硬膜外のモルヒネを簡単に取ってしまいますと、痛 みが出てきたら大変なことになりますので、これの取り方があるわけです。 ☆スライド  硬膜外の持続注入から、取りあえず皮下注にもっていきます。 ☆スライド  痛みの管理ですが、具体的にどうしたか。最初の1週間ぐらいは病院の医療の延長と いうことになります。その後皮下注にもっていって、経口にもっていった。最後にまた 食べられなくなってしまったので、また皮下注にもっていきました。  膀胱のほうは、取るのにちょっと時間がかかりました。6月19日にカテーテルを取り まして、9月6日、これは膀胱麻痺になりましたから致し方なくて再度カテーテルを入 れるということを行ったわけです。  それで何が変わったかと言いますと、お風呂に入れた。この方は入院中を含めて6カ 月間入っていませんでした。しかも、自宅の風呂に入れたということですごく喜んでお られました。  これは看護がいかに大事かということを示していることだろうと思うのですけれど も、疼痛管理にしろ、カテーテル管理にしろ、いわゆる看護のほうが頑張っていただけ たら、医療のほうとしても非常にやりやすい。協働して、いい医療ができるのではない かと思っています。 ☆スライド  娘さんたちがいて、お孫さんたちがいて、普通の小さなアパートに住んでいらっ しゃった方ですが、私たちが関わって4カ月後に、家族に看取られて、ご自宅で亡くな られた。こういうケースです。いまの話の中で、私たちがどういうことを大事にして医 療を行っているかがわかっていただけたと思います。 ☆スライド  私たちも、ケースによってはIVHなどをやらなければいけないケースがあるので す。ただし、食べないから簡単に入れるということではなくて、個々の医療処置に関し てはインディケーションを厳密に考えます。それは医者だけではなくて、看護婦さんも 含めてのことです。場合によっては、フォーレを入れるかどうかに関して1時間ぐらい ディスカッションすることもある。結局医者が負けて入れないことになる、ということ もあるのですが。  IVHのカテーテル、これは10年前に私が教科書の中で紹介させていただいたもので すけれども、こういうポートというものを使うと、生活面とか安全面とかいうことを含 めて、楽にできるわけです。ですから、基本的にIVHをやる場合、私たちはこういう ポートを使っています。 ☆スライド  これは私たちの具体的な例ですけれども、ポートを使っているのは末期がんの方の1 割ぐらい。いわゆる厳密にやる場合です。そして、通常のラインでやる方が146例の中の 5%。そして、Broviacのカテーテルを使ったのは2例で、非常に少ないのですが、1割 ぐらいの管理は末期がんの方でもIVH管理をやることになります。 ☆スライド  これは別のデータベースなのですが、実は、昨年、日本財団から補助金をいただきま して、末期がんの在宅医療を行っている診療所、病院などの全国調査をしまして、デー タベースをつくったのです。これはいまホームページの形で、どなたでもアクセスでき るような格好になっておりますので、是非ご覧ください。その中のデータの一部をここ に持ってきたものなのです。  実に、在宅で末期がんの方を診ている医療機関の8割以上の所でIVH管理、HPN とも言っておりますが、それができるのです。IVH管理というのは何か特殊なものだ と、あまり事情をご存じない方はおっしゃるわけですけれども、少なくとも末期がんの 患者さんを家で看るという医療機関では、8割以上の所で普通にIVH管理を行ってい るというデータです。 ☆スライド  私たちがIVH管理をするときにどうしているかということの具体的な手順点、誰が やるかというようなことをここに書きました。IVHラインは、もちろん、病院の医者 にやってもらいます。その後、実際の薬液の処方とか訪問服薬の指示は私、在宅の主治 医が行います。  薬液の配送、訪問服薬指導、基本的にこれは薬剤師が指導すべきことなのですが、こ のときには、必ずと言っていいほど訪問看護師と一緒にやることを原則としておりま す。  家族への説明、指導は、実際は訪問看護師がやっています。薬剤師ももちろんやりま すが、2回しか無理なので、こういう格好になっています。  日常的なHPN管理は私と訪問看護師ですが、実際は訪問看護師さんがほとんどやっ てくれています。ただ、緊急時、いろいろなトラブルが起きることがありますので、緊 急時の連絡体制はきっちり取っております。 ☆スライド  この方は卵巣がんのターミナル、60歳の方で、家で亡くなった方なのですが、37歳の 独身の息子さんがいました。卵巣がんで癌性腹膜炎を起こしておりましたので、IVH 管理をしなければいけませんでした。病院でやったやり方を基本的には引き継いで家で やったわけです。ところが、やっている途中でトラブルが発生しました。  この方はちょっと精神障害のある方で、実は心配していたのですが、案の定夜中に看 護師のほうに電話がかかってきて、血液が逆流しているということで、息子さんが非常 に焦って電話をしてきたのです。どう考えてもない。電話ではちょっとわからないとい うことで看護師が行っていろいろやった。そうしたら、ポンプを触ってはいけないと 言っておいたのを彼が触って、逆につないでしまったのです。だから、血液が逆流しま すけれども、フィルターがありますから全部出っぱなしということはない。途中で止 まったのですが。こういうことがあるのです。こういうことも踏まえて、いまIVHを やるときには、できるだけシンプル、かつ安全な方法でということをやっております。 ☆スライド  人によっては高度医療と言いますが、こういう医療がどうして日常的に在宅でできる かということを私なりにちょっと考えてみました。1つは医療哲学の共有ということが ある。これは私が非常に力を入れていることですけれども、フィロソフィーの共有とい うこと。  2つ目は専門職同士の協働。こういう医療でやるには薬剤師さんなどの力を借りなけ ればいけない。もちろん、医者の力も必要ですけれども、そういう協働ということ。  3つ目は看護師の資質、専門性ということがどうしても問題になってくると思いま す。それから、情報の共有、定期的に勉強すること。  それから、緊急時にいつでも医者と連絡がとれること。こういうものがないと、日常 的にIVH管理をすることは、当然不可能です。 ☆スライド  フィロソフィーの共有ということですが、私たちはときどき、どうしても私のほうで 手いっぱいということで、よその訪問看護ステーションと一緒にチームを組むことがあ ります。そういうときにお願いするのは、私が編集して書いた『在宅ホスピスケアを始 める人のために』というテキスト、これを是非読んでくださいということなのです。そ れから、もちろん、カンファレンスにはできるだけ来ていただくという形で協働してお ります。これがなくて、医者の言うことと看護婦の言うことが違ったりしたら大変なこ とになります。 ☆スライド  専門職同士の協働ということを言いましたが、これは訪問する前に、薬剤師と訪問看 護師とで打ち合わせをしております。 ☆スライド  看護師の資質、専門性ということです。私たちは、たぶん今年100例くらいの方を診る ことになると思うのですが、なぜそういうことができるかと言いますと、看護スタッフ の特殊性ということがあると思います。現在7.6人の常勤換算でやっておりますけれど も、7人の常勤看護師の中で、2名は看護のマスターを持った看護師です。あとの4名 は看護大学の卒業生です。そして、30歳前後の非常に若い看護師さんたちです。  特に大学卒の看護師さんは、言うことはすごいのですが、実際にやらせたら、ほとん どできないという方が非常に多いのです。しかも、病院で1年とか2年でやってきた人 が私のほうで在宅ホスピスケアをやりたいと言ってきてくれましたので、最初の数カ月 は苦労も多いのですが、もともと、しっかりしたものを持っていらっしゃる方々でした ので、ちょっとした教育をしますと、しっかりやってくれまして、いまは非常に楽をさ せていただいています。  いずれにしても、どういう形で資質、専門性を保証したらいいのかということは非常 に難しいわけですけれども、そういうものがないと、これだけの医療というものは難し いと思います。 ☆スライド  情報の共有ということで、毎週火曜日と木曜日の午前中30分間、いまは20数名の末期 がんの方を診ておりますから、その方々に関しての情報交換を行います。これは私が往 診に行く前に、看護婦さんから情報をいろいろ聞いているところですが、そういうもの がないと、難しいです。 ☆スライド  それだけでは駄目ですので、定期的にケース・カンファレンスを開く。それから、い ろいろな本を読む。そういう勉強をしないと、これだけのものができないわけです。  私はポケットベルと携帯電話を24時間いつでも持って、時に聞こえないことがある、 と看護婦さんに怒られることがあるのですけれども、私といつでも連絡がとれる体制が ないと無理です。 ☆スライド  何かまとめをやらないとまずそうなので書いたのですが、最初に書いてあるのは、現 実には点滴をやったり、静脈注射をやったりというのは、日常の診療でも普通にされて いることで、先ほど来、出ておりますように、是非そういう法整備をやっていただきた い。特に点滴に関しては、やっていいのだという形でしっかりやっていただきたいと思 います。  それから、この会に合っているかどうかわかりませんけれども、未来を見据えた法整 備ということでは、ここには出しませんでしたけれども、私たちの所では、モルヒネの 使い方について、厚生労働省の担当者が聞いたら怒られるのではないかと思われるよう なところもあると思うこともあります。そういうことも法整備をしていただきたい。  1つの例を申します。塩酸モルヒネは家で使っていいという薬の中に入っております けれども、使い方として、バルーン式のもの、患者や家族がつつけないような格好のも のだったらいい、ということになっているのですが、あの1つをやっていただいただけ で、どれだけ在宅での疼痛管理がやりやすくなったか。これは私たちの本当にうれしい ニュースだったのですけれども、そういうことを是非考えていただけたらと思っており ます。  医療供給サイドの質の保証ということはどうしても必要になるわけですが、在宅の場 合、もし患者さんが不満足、あるいは不安になったら、必ず入院しますから、見方とし ては非常に簡単で、在宅者の頻度を見れば簡単にわかるわけです。しかし、そういう 粗っぽいことだけではなくて、医療供給サイドの質をどのように保証するかということ が点滴、さらにIVHやHPNというようなことを考えていったときには大事になるの ではないかと思っております。ちょっと時間をオーバーいたしましたが、私のレポート はこれだけにしたいと思います。 ○座長  お二方の実践に基づいたお話、ありがとうございました。それでは、事務局からの調 査についてのご説明及びお二方の委員の現場でのお話、それに関係しましてご質問・ご 意見をいただきたいと思います。 ○宮武委員  上野先生の資料で、管理協定書と中心静脈栄養法の管理協定書のお話があり、大変勉 強になりました。これはあくまでも訪問看護ステーションの管理者とお医者さんとの間 で交わされるわけですね。逆に言うと、患者さん、利用者側との間にはどういうアプ ローチがあるのでしょうか。そこのところは特になさってないのでしょうか。 ○上野委員  利用者にも説明をします。できれば、本当は家族のいる所でやればいいのでしょうけ れども、なかなかそれはできませんので、医師とお話します。その後家族の所に行きま して、こんな形で先生とお約束もしました。こういうことをやっていきますよ、という 説明は家族にします。 ○宮武委員  例えば法的な責任ということになりますと、もし万が一の事故があったときを考えま すと、誰が責任をとるのかということが当然ながら出てくるわけです。この種の管理協 定書というものが訪問看護ステーションとお医者さんとの間で交わされるだけではなく て、利用者との間で交わされるという意味も込めて実践なさっているのかなと思ったの ですが、深読みですか。 ○上野委員  利用者との協定書まではやってないです。 ○宮武委員  逆に言うと、先行きは必要だという思いが現場の方におありになるのでしょうか。 ○上野委員  そうだと思います。訪問看護開始のときには、以前は契約書などと言ってなかったの ですが、いまは契約書を交わすことになっているのです。それで、訪問当初と変わった ときには、もう一度言うのが筋です。いまのところは口頭での説明ですが、できれば文 書を交わしたほうがいいのだろうとは思っています。まだ実施はしていません。 ○宮武委員  もう1つ教えてください。私が親しくしている訪問看護ステーションなどで聞きます と、静脈注射は立て前上やってはいけないことになっているわけですから、看護師さん が行って打っても、診療報酬上それは計上できない。持ち出しだと言うのですが、そう いうのは実態ですか。 ○上野委員  そうです。それは薬剤料の問題もありますし、それから手技料も、いまは訪問看護療 養費の中でみていると考えざるを得なくて、診療報酬は何も出ていません。  電話相談などもくるのですが、例えば病院の医師から指示があって薬剤をもらってき てやったとします。そうすると、医事課のほうが、請求をどうするのだという形でトラ ブルになっても受けられないということも聞いたりはいたします。 ○宮武委員  ありがとうございました。 ○座長  ほかにいかがでしょうか。 ○井部委員  川越先生に伺います。大変貴重なお話をありがとうございました。最後のまとめの2 つ目、未来を見据えた法整備が必要、という説明の中にモルヒネの話が出ました。その ほかに、未来を見据えてどんな法整備が現在考えられるでしょうか。 ○川越委員  私は一般的な話はできませんので、その点ご勘弁いただきたいのですが、例えば死亡 診断。現実に私は20人診ておりますと、月に平均7人、多いときは12〜13名について死 亡診断書を書かなければいけないのです。もちろん、いまの法的な規制に沿った形で死 亡診断書を書いております。悪くなったら必ず患者さんの所へ行くようにしております から、診察は24時間以内にしておりますが、この辺の死亡診断の規制というものを、も う少し緩和していただけたら、ありがたいなと思っております。  癌の方の在宅死は6%ですから、いま全国で年間、大体2万人亡くなっているわけで すが、このパーセントをもっともっと増やせば、医療経済的にも非常に効果があります し、患者さんもそう望んでおります。実際に私たちのような形の在宅ホスピスケアの提 供を考えていった場合には、やはり死亡診断をどうするかという1つのことでも、ある 意味で非常に大きなネックになっているわけです。そういうことも含めて、もちろんモ ルヒネのこともありますね。あとはどういうことかな。いま思い付くのは、そんなとこ ろですが、例えば在宅で公共機関でやるといったとき、その分野ではここを、もう ちょっとこうして欲しいなというものがあるのではないかと思って、そのようなことを 表現いたしました。 ○座長  ほかにいかがでしょうか。だいぶ薬の話も出ていますし。 ○藤上委員  90%以上が日常診療として、静脈注射が看護師さんによって実施されているという実 態があるということなので、私も静脈注射をすることに関しては、法的にきちんと整備 されるべきであろうと考えます。ただ静脈注射については、事務局からの資料の中にも ありましたが、静脈注射を実施するときにおいて、看護職員の方たちの薬剤に関する知 識不足についても、教育が必要となっています。もちろん看護師さんたち自身も、知識 向上に努められるのは、必要なことだと思います。  先ほど川越委員から、医療というものは、専門職同士の協働が必要だろうというお話 がありましたが、いま多発する医療事故を見ておりますと、6割か7割が何らかの薬剤 が関与していると言われております。にもかかわらず、薬剤師が関与していながら起 こったものばかりではないというところに、私は問題があるのではないかなと感じてお ります。もう少し薬剤に関する専門教育を受けた薬剤師が、活用されるべきではないの かなとも思っております。  病院薬剤師会としては、多発する医療事故の現状を考え、少なくとも薬剤にかかわる 医療事故対策のために、例えば注射薬に関しても医師が処方し、薬剤師がその処方内容 を、薬剤師の視点から考察を加えて混合調整まで行い、その後、医師あるいは看護師さ んたちが患者に投与する、そういう流れをつくるべきだと、いま提案しております。最 近は会員の中にも、そういう意識が高まってまいりました。取組みはまだまだ少ないの ですが、そこまで実施する医療機関も増えてきております。  薬剤師としては、患者さんが安心して医療を受けられる環境づくりの一環として、内 服や外用剤と同じように、注射に関しても混合調整までかかわり、薬剤師としての責任 を果たしていくべきだろうと考えております。ただマンパワーの問題も含めて、薬剤師 が薬剤師としての責任を果たせる環境整備も、これからは必要ではないでしょうか。こ の際、「新たな薬剤師のあり方に関する研究会」でもつくって検討していただければと 考えておりますが…。  当院では平成8年に医薬分業を実施したのを機会に、当院における薬剤に関しては、 すべて薬剤師がかかわっていこうと考えました。平成2年からはIVH液、あるいは抗 癌剤も含めて、一般の注射処方の95%以上を、薬剤師が混合調整まで行うことを実施し ております。その時点で必要最小限の薬剤が病棟にあればいいのではないかと考えまし た。例えばこの間、塩化カリウムによる事故などがありましたが。塩化カリウムに関し ても、救急に使うような薬ではありませんので、そのときに一切病棟から引き上げまし た。あれは原液で投与したことが、問題の原因にもなっておりますので、医師が処方な さったときには希釈して、安全な形にして病棟に提供しようと。そういう形を取ってき ております。  在宅に関しても、いま訪問薬剤管理指導は、月に40人ぐらいの患者さんにかかわって います。在宅で投与される諸薬も含めて、薬剤部で調整した後、患者宅を訪問するとい う形を取っております。薬にかかわる事故が多いということも含めて、是非、専門職同 士の協働が必要な所で、薬剤師の活用を考えていただきたいと考えております。 ○座長  大変貴重なご意見、ありがとうございました。いろいろ幅広い問題を扱っているご説 明だったと思いますが、そのほかにはいかがでしょうか。 ○井部委員  上野委員と川越委員の訪問看護ステーションでは、薬剤師を雇用する必要性、あるい は確率はどうなのでしょうか。 ○上野委員  ステーションは診療報酬でしか成り立たない所ですので、例えば事務職を入れても、 その中で賄わなくてはいけない状況ですから、薬剤師を雇えるだけの診療報酬の対価が あれば、当然雇えるものだと思っています。 ○川越委員  うちも非常に零細企業で、薬剤師さんを雇うだけの力がないのです。幸いなことに、 今はいわゆる保健調剤薬局が、非常に力を持ったと言いますか、私たちが要求すること に応えてくださる薬局が、いくつか出てきております。ですから例えば在宅でIVHを やるにしろ、モルヒネの皮下注射にしろ、硬膜下へ注入するにしろ、そういうものに関 しても処方箋1枚書きますと、彼らのほうで全部準備してくれて、看護師さんと一緒に やってくれるということがありますので、正直なところ、うちの経理的な問題はありま すが、必要性はあまり感じておりません。 ○藤上委員  もう12年ほど前ですが、アメリカに行ったことがあります。そのときに在宅医療が、 盛んに行われておりました。注射薬などに関しても医師が処方して、薬剤師が調整をし て、看護師さんが訪問して投与するという流れになっておりました。ですから調剤薬局 というか保健薬局においても、今後は医師の注射の処方に応えていくことも必要ではな いかと、最近思っております。 ○上野委員  大きい病院などでは、このごろは調剤薬局をというようになってきています。ただ開 業医の先生方の中には、院外処方でない所がありますので、開業の先生方も院外処方に なっていけば、それが非常に可能になってくるのかなという感じがいたしております。 ○内布委員  医療費の問題も考えなければいけないと思いますが、かかわればかかわるほど、専門 家というのは種類が数多くなってきます。私がアメリカで看護の研修をしていたとき、 リハの所でしたが、1人の患者さんに15人の専門家がかかわっていたのです。スケ ジュールが細かく決められていて、次々と15人の専門家が、患者とアポを取ってくるの ですが、ものすごい医療費なのです。ご覧のようにアメリカは、医療費の問題が非常に 深刻で、破綻しかけているわけです。やはり必要最低限というか、「安上がり」と言っ てしまうと、とても語弊がありますが、適切な医療費というのがすごく必要です。これ で保険の負担がものすごく増えていきますと、そのために国民が拠出するお金が、どん どん増えていくわけです。実は給料の半分が保険分に取られていたという状況になった ら困るので、やはりバランスというものが必要だと思います。  薬剤師の方々の専門性がどうしても必要なものに関しては、非常に大切だと思います し、かかわっていただいたほうが良いと思います。治療が高度先進医療のように、集中 して治療が行われるような病院の場合は、当然薬剤師の方にかなり加わっていただかな ければ、いけないと思いますし、効率も上がらないと思います。そういう所では入って いただいたほうが、むしろ安上がりで効率性も高くなると思いますが、例えば在宅で自 然な形でやっていく場合は、やはりどこかでバランスを考えないと。何でもかんでも薬 剤師を1回通らないと実施できないという状況では、反対に非常に縛ることになるだろ うと思います。 ○藤上委員  私もそう思います。ただ在宅の中で患者さんを診ていく、特に高齢者の方を診ていく 中では、自然にということがありながらも、薬はかなりのパーセントで使われていらっ しゃるのです。これは新聞にも出ているので問題がありますから、言っていいかどうか 分かりませんが、高齢者に対する処方の中に、薬剤師の目から見て必要ないのではない か、と思うような処方もあったという分析がなされていました。そういったところで薬 剤師が活用されていくことが、最終的には医療費の削減にも繋がっていくのではないか と、私は思っております。  例えば薬剤師の目で見て、この薬剤によって患者さんのADLの低下があるのではな いかというのがあれば、それを指摘することによって、その薬が使われなくなります。 それによってADLが上がれば、患者さんにとってみれば非常に良いことではないかな と思います。医師の見る目、看護師の見る目、薬剤師の見る目というように、いろいろ 違った視点から見ていくことによって、医療費が削減されるような面もあるのではない かと、私は思っております。 ○座長  的確に各専門家がチームを組んでサービスをしていくというのが、今後のあり方だと 思っておりますが、それを具体的にどうするかについては、またいろいろ詰めて考える 必要があるかと思います。いま薬の話について、大変深いご議論をいただきましたが、 ほかにはいかがでしょうか。また違った立場で、専門的なお考えがあるかと思います。 ○井部委員  資料1「看護師等が行う静脈注射の調査結果について」の4頁の図、「静脈注射関連 業務の実施状況」について私は、注射の刺入はもうちょっとパーセントが低いかなと 思っていたのですが、90.3%の看護師がやっているというのが出ています。患者アセス メント、ケアプラン、薬剤混合、注射刺入といったところは、対象は看護師だけに聞い ていたのでしょうか。つまりほかの職種に関しては、この回答の対象にはなっていない ということでしょうか。薬剤混合などについて、薬剤師には聞いていないということで すね。 ○看護課長  この調査の対象者は、看護管理者に対して聞いているだけで、薬剤師や医師には直接 お尋ねしておりません。 ○井部委員  今後、看護師も静脈注射がやれるように拡大していきますと、専門家がきちんとした チームを組んでやるといったことを、積極的に考えていく必要があります。医療事故 は、立て続けにKCLの問題が起こっております。業務が必要だからやるというのは、 もちろん必要ですが、一方、安全対策という点で、チーム医療が単に言葉だけではなく て、本当の意味での専門家がそれぞれの知識技術を出し合って、いい医療ができるよう な体制にしておく。そのようなことを考えながら進めていかなければならないのではな いかと思います。 ○川越委員  いまの井部委員のご意見に、全く賛成です。末期癌の方がいるときに、現場で危険な 薬というのは、多分モルヒネだろうと思います。しかし実際問題、モルヒネの量をかな り使うことがあります。私は投与のルートを変えたりすることがありますので、病院か ら家に帰ってきたときに、計算をし直したりすることがあるのです。そういうときに自 分が計算ミスをすることも、当然あり得るわけです。私たちは院外処方で全部出してお りますので、看護師さんがチェックをしてくれますから、本当に自分のうっかりミスが 救われたことが、多分1回はあります。1回は、確かに計算間違いをして、1桁間違え たことがあります。それは最終的に、看護師さんがチェックをしてくれていました。私 は看護師さんから信頼されているものですから、先生が間違えるはずがない、だけれど おかしいということで、その看護師さんが前の病院のほうまで問い合わせてくれて、 「先生、やっぱり間違えてます」と言ってくれたので、非常に助かったのです。やはり そういう協働ということが、絶対に必要です。安全ということから、チェック機能は是 非必要だろうと思います。 ○國井委員  同じく4番の4頁ですが、例えば注射刺入を90.3%の看護職がやっているというデー タは、看護職の90.3%がやっているという意味ではないと思うのです。看護師が刺して いるということで、刺している看護職の資質などには、もう1つ条件があるのではない かと思うのです。その辺はわからないのでしょうか。 ○看護課長  今回の調査では、そのあたりまでは言及していなかったと思っております。 ○座長  もし特にご意見がなければ、3つの資料に基づいた質疑はこれでうち切らせていただ きます。  では資料4「看護師等による静脈注射の実施について」、事務局からご説明いただき たいと思います。 ○武田企画官  資料4「看護師等による静脈注射の実施について」という表題の1頁目を出してくだ さい。私どもの昭和26年の通知では、「看護師等が静脈注射を実施できない」という解 釈が出されていますが、これまでいただいた議論を踏まえて、このように考えてはどう かということです。現行の厚生省医務局長通知、昭和26年9月15日、医収517号を改め、 「看護師等が静脈注射を実施できるものとする」と。  理由の所に4点書いてあります。1つ目として、資料でもお出ししているところです が、「現行の法解釈と実態の間に、大きな乖離がある」ということ、2つ目として、 「医療施設や在宅においても看護職員が静脈注射を実施することへの国民のニーズが高 まってきている」こと、3つ目として、「看護教育においては、すでに静脈注射に関す る原理原則、薬剤の作用及び特性、緊急時の対応等が習得され、緻密な観察に基づく的 確な判断力と技術力のある看護職員が育成されてきていること」、4つ目として、「昨 今の医療用器材の進歩が目ざましく、注射針の性能も向上し、テフロン製の静脈内留置 針や翼状針が開発され、血管内への薬剤の注入がより確実となり、技術的にも困難さが 薄れてきていること」ということで、実態、ニーズ、教育面、さらに技術、器具・器材 の向上といった環境変化も踏まえ、このような扱いとすべきではないかということで す。  ちなみに現在まで生きている、昭和26年の通知において、静脈注射が看護師の業務外 であると判断された理由は、その下に小さく2点書いてあります。1つは、薬剤の血管 注入というのは、ほかの業務に比べて身体に及ぼす影響が非常に大きいという問題があ ります。また技術的にも困難であるという問題があったわけです。しかし当時と現在と を比べると、さまざまな環境の変化などがあり、今回解釈を変更すべきではないかとい うことです。  これに合わせて、いくつかお諮りさせていただきたいと思います。2頁に「具体的対 応策(案)」というのがあります。これを今回改めることになりますと、1つには「静 脈注射の実施に関する解釈通知の変更」ということで、通知としてお出ししなければな りません。その場合、例えば安全に実施するための管理体制の確立、看護の手順書の作 成をどう考えるかということだろうと思います。2つ目としては、「看護の基礎教育に おける教育内容の提示」があります。調査結果にも出てまいりますが、その看護基礎教 育、卒後教育も重要だというご指摘をいただいておりますので、基礎教育においてどう いう教育内容をしなければならないかご議論いただければ、これを看護学校養成所に対 する通知などの形で、対応を図っていくことが考えられます。3つ目としては、「院内 での静脈注射教育内容の提示」です。それぞれの病院、診療所などで、実際に行われて いる卒後教育において、内容の提示をしていくことが考えられると思います。4の「そ の他」として、そのほかにもさまざまな対応策が考えられると思います。先ほどの委員 の先生方の間でのご議論も、診療報酬などに関する対応が求められる事項を、いくつか ご指摘いただいておりますので、そのほかにどういう対応策が必要になってくるのか、 解釈変更に伴って、私ども行政上、または医療保険上の問題点というものがあれば、ご 議論いただければと思う次第です。  3頁は、そのうち看護基礎教育で、今後静脈注射に関連して、充実すべき教育の例と して考えられる点です。1番は「薬理学の強化」ということで、薬剤が体内に吸収され てから排泄されるまでの生体の生理的変化、薬剤の適用、用法、禁忌、副作用、適用上 の注意、混合可否です。2つ目は「静脈注射に関するインフォームド・コンセントや患 者教育」です。3つ目は「静脈注射の実際の実技」ということで、必要物品の理解・種 類・選択、滅菌物の取扱い、静脈注射の実施、終了後の観察です。4は「感染・安全対 策」、手洗い、針刺し事故の防止、医療廃棄物の取扱いです。5は「救急時の対応」で す。静脈注射の実施に関して、概ね必要な知識、または求められる技能というものを勘 案いたしますと、例えばこういうことが考えられるのではないかということです。  4頁は卒後になると思いますが、「院内における教育」です。例えば充実すべき例と して、こういうことが求められるのではないかと。集合教育、全体で集まって行う教育 としては、与薬システムの問題、感染・安全対策の問題、緊急時の対応の問題というの があります。それぞれの病院医療機関ごとに、システムやリスクマネージメントの仕組 みも異なりますので、病院ごとに緊急時の対応を含めた教育が、必要になってくるもの と思われます。  2で書いておりますのは、「各病棟における個別指導の実施」です。それぞれの病棟 の特性を踏まえた技能というものが、必要になってまいります。これも例ですが、循環 器病棟で強心剤の使用法についての教育、または腫瘍病棟においての抗癌剤についての 教育、麻薬の取扱い、小児病棟についての微量点滴の実際の取扱いの問題、4の手術室 においての麻酔の管理・取扱い、副作用の問題などがあります。こういったそれぞれの 病棟における教育の必要性の違いを踏まえた院内教育が求められます。もちろん義務化 ではありませんが、こういった基準のようなものをお示しする必要が出てくるのではな いかということです。  2頁の「具体的対応策(案)」の2と3については具体例ということで、3頁と4頁 に付けさせていただきましたが、1番の「解釈通知の変更」の中にあるような、「管理 体制の確立、看護の手順書の作成」というのは、看護師の業務の手順についての手順書 のようなものが、多くの病院でそれぞれの院内において作られていると思います。そう いったものを整備していくことが、併せて求められるかどうかということになろうかと 思います。4の「その他」は、本日のプレゼンテーションなども含めて、ご議論いただ ければと思います。 ○座長  どうぞ、ご意見をいただきたいと思います。 ○内布委員  教育の立場から言わせていただきます。理由の3番に関して、看護教育というのがあ りますが、これは基礎教育+継続教育という意味での看護教育と考えてよろしいです ね。 ○看護課長  そうです。 ○内布委員  基礎教育として見せていただいた、3頁目の資料に関しては、私はこの内容でした ら、多分標準的に大学でも看護学校でも、ほとんど網羅していると思います。ここまで はかなり出来ますので、これはかなり正確に把握しておられるのではないかと思いまし た。  院内教育に関して個々の薬剤については、例えば消化器内科や外科では、こういう薬 剤の範囲というのがあると思いますが、それぞれそういうものを使ったら、患者さんが どんな反応を起こすかというのは、そこで教育されます。それがすごく大事なので、ア メリカのインジェクションナースとまではいかなくても、やはり卒後教育を幾ばくかす ると。3年生、4年生を出たら卒後すぐに、1頁目の3番に書いてあるような状況では ないのです。判断力と技術力のある看護職員が育成されているという点では、卒後教育 も踏まえて、そういうようにはなるのですが、ほとんどの先進国では、どこの国でもワ ンイヤープログラムで、大体1年なのです。  その領域に関しては、先輩のプリセプターがくっ付いて指導をして習得しますので、 1年間で、もうかなりのところまでいくのです。アメリカは最近、すごくお金の問題が あるので、1年間もやらないで、3カ月ぐらいで済ませているようですが、それぐらい の足枷は置いておかないと。それで静脈注射ができます、という法解釈の中に入るかど うかは分かりませんが、そのレベルでやればできますということでやっていただくの が、私としてはいいのではないかと思います。  1つの問題は、学生は教育の中では免許を持っていない状態ですよね。免許を持って いない状態で、実習や演習の中でそれを習得することに、大方の学生はいいのですが、 一部には自分の身体を演習に使うことに関して、異議を唱える学生もいるわけです。そ うすると実習が非常に困難になってくる場合が、現実としてあります。学生の保険で は、針刺し事故をカバーしていないということもあるので、私たちの大学ではその苦肉 の策として、実際には今はかなり精巧なモデルができていますので、正規の時間帯では そのモデルで練習をやっています。しかし正規の課外受業で、夏休みの初めごろに特別 枠で時間を作って、学生2に対して教員1ということで、全部学生にアポを枠で取らせ て実施させるときは、誓約書を書かせます。もし針刺し事故が起きたら、それに必要な 検査と予防のために、ワクチン等々を使うので、その処置と費用に関しては、すべて自 分が責任を持つという誓約書を学生に書かせないと、私たちがそれを授業の中で見てあ げることができない状況があるのです。  昔、私が実習していた当時は、注射もしていました。それは患者さんも「いいよ」と いうことで、やらせてくださっていたのですが、今やそういう状況はありません。病棟 に学生を連れて行きましても、免許がなくてもできる、例えば保清とか、体を拭いたり とか、髪を洗ったりとか、体位交換とか、移動などが中心で、病院で実習や訓練で注射 をやるということは、免許のない状態ではやはり非常に難しくなってきたのです。ここ 10年間ぐらいは、そういう傾向がすごく強くなってきています。今どれぐらいが実施し ているかどうかは分かりませんが、いまは多くの看護大学で、実習のときに患者さんで は実施していないという状況が、実際にあるようです。ですから通達を出される場合 は、卒業時点で期待されるものと、ワンイヤープログラムでも継続教育の中で期待され るものとを、きちんと示して出されると良いかなと思います。教育の現場では、そうい うところです。 ○武田企画官  法律解釈の問題ですので、必ずこのレベルをクリアしていなければ、一切やってはい けないのかどうかという、やや厳密な議論になってしまいます。私どもが今日お配りし ておりますのは、看護教育においてはすでにこれこれの知識や技能が、養成の課程であ るということです。例えば卒後3カ月でも1年でも、もしそういうことがない限り、看 護師は静脈注射ができないということですと、例えば認定をクリアして誰かが証明する までは、法律上、その看護師は業務としてやってはならないということになります。  そういうことをご提案しているのではなくて、看護師免許が出た段階で、皮下注射も 静脈注射も論理的、または法律的にも可能になるだろうと。ただそれが実際面、いまの 教育の中でどこまでの技能が出来ているのか、または判断能力を持つために、どこまで の卒後教育が出来ているのかと。混乱を避ける意味で言えば、卒前が「教育」で、卒後 が「研修」というように言葉を変えますが、むしろ法律上許されたとしても、研修では どこまでどういうレベルのことをやらなければならないかは、望ましいこととしてこう いう卒後、または院内研修をしたほうが望ましい、または院内における看護手順をきち んと作ることが望ましいというように、少しレベルを変えて結論を出して整理をしてい くことが、必要ではないかと思います。 ○内布委員  それで結構だと思います。 ○武田企画官  ご指摘いただいている点は、実は看護をめぐる問題の別の大きなトピックですので、 また別途。 ○看護課長  いまの内布委員のご指摘は、私どもも大変重く受けとめております。数年来、学生は 注射も実施できないといったような指摘があるわけです。言ってみれば看護師の臨床能 力が、以前に比べると低くなっているのではないかといったご指摘も踏まえて、看護職 員の臨床能力の向上に関する検討会というのを、今年の予算ですでに確保しており、基 礎教育、卒後研修も含めて、今年、来年と、いま検討を進めたいと考えておりますの で、いまご指摘いただいたことは、また別の場面で深めていきたいし、改善を進めたい と考えているところです。 ○内布委員  わかりました。 ○平林委員  先ほどの企画官のお話とも関連してくるのですけれども、おっしゃるとおり法律的に 言えば、こういうように一般的に解除すれば、看護師であれば誰でも静脈注射ができる ということになると思いますが、現実問題として本当にそれでいいのかしらという思い は、実は私も持っております。ただし、それを法律的に認定制度という形で、新たなも のを作っていくということになりますと、またそこですごい時間がかかってしまい、話 が進んでいかないだろうとも思います。そこら辺をどう解決するかというのが、やはり 我々に問われているのではないかと思っております。  1つには卒後研修も含めて、一定の教育あるいは研修を受けた者について、順次静脈 注射を解除していくというガイドラインのようなものを厚生労働省が出すことが考えら れます。非常に重篤な副作用を持つ薬剤もありますので、静脈注射をするについては、 特別の教育を受けた人でなければならないということもあろうと思いますから、そこら 辺の条件整備をどうやって作っていくかです。一般論としては私も今回の案に賛成で、 進めるべきだと思いますが、その後は言いっ放しではなくて、現実的な対応をどうして いくのかということを、さらに考えていかなければならないのではないかと思っており ます。  もう1つは、院内における静脈注射の問題と、在宅などの院外における静脈注射の問 題というように、看護師さんが業務を提供する場の違いによって、どこまでの静脈注射 を実際上していいかどうかという議論も、場合によってはしなければならないのかもし れません。この点はむしろ実際に現場にいらっしゃる先生方のご意見を、お伺いさせて いただきたいなと思っております。  今日のご報告で最初のほうの調査は、大よそ院内の調査であり、後のお2人の先生方 のご報告は、院外の問題だったわけですが、そこでは取扱う薬剤も自ずと違ってくるで しょう。例えば比較的安全性の高いと言いましょうか、危険性の少ないと言うべきで しょうか、脱水症状を改善するための薬剤を輸液するのは、すぐに解除しても比較的問 題ないだろうと思いますが、例えばここに出ている、院内の卒後教育の中での腫瘍病棟 とか、小児病棟とか、手術室とか、麻酔薬の管理ということになりますと、脱水症状を 改善するための輸液静脈注射や点滴とは、かなり変わってきているだろうと思いますの で、そこら辺をどう整理していくのが必要なのではないでしょうか。その根本的な考え 方は、やはり安全性の確保に尽きるわけです。安全性を確保するための枠組みを、これ からどう作っていくのかというのが、私は重要な問題として残されるのではないかなと 思います。 ○國井委員  私も臨床の所でそういう実態があることは認めますし、90%の看護職が静脈注射をし ているという現状はあると思いますが、静脈注射などを引き受けるときに、医師との信 頼関係とか、自分の能力といったところで、やはり安全を確保できるという、そういう 責任を持てるということがあって、そういう人たちにより行われているのではないかと 思います。資質に自信を持ってやっていると思うのです。ですから、それがこういう解 釈になってきて、そういう条件を全然求めないということになると、やはりサービスの 質を保証するということでは、非常に不安です。法的にそれを謳うことができないとし ても、何らかのガイドラインが必要です。  それからもう1つ。これは消極的なことですが、いまでも現場が忙しい状況で、ずる ずると看護業務の中に押し付けられて、行われているという実態があります。管理者は 安全性や法的な制度がないということで、非常に困っている状況があります。しかし私 たちがいちばん思うのは、これから在宅などで死を迎える方が増えてくるところで、訪 問看護ステーションのナースが活動できるためには、やはり実態に合わせて能力をきち んと評価して、解放していくことが要るなとは思っております。そこの難しい問題をど うするかということを、是非検討してほしいと思います。 ○武田企画官  例えば安全性の担保その他ということで、お2人の委員からご議論をいただいており ますが、例えば安全性と言えば、いま話題の医療安全、医療事故予防の問題で、「医療 安全対策会議」というものが別途ありまして、ずっと議論を続けております。そこでも 法規制でできることと、さらに法規制では出来ないことの両方があります。医療安全の ほうの議論をご紹介させていただければ、あくまでも医療機関に医療安全の義務を課す という議論をしているわけですが、むしろ院内管理体制、要するに院内のシステムを しっかり作ってもらうというのが、医療安全のためのいちばん大きな柱なのです。  そういう意味で言いますと、法律制度や法解釈でやるべき部分は、最低限手直しする ところはするとして、それ以外にどういうことが実際に医療機関、または現場に求めら れるかということについては、いろいろご指摘の点があろうかと思います。例えば最終 的にまとめる報告書の中に書き込んでいただくのか、いろいろな形があるのではないか と思います。それを受けて私どもとしては、解釈を直さなければいけない所は解釈を直 し、通知を流さなければいけない所は通知を流すと。しかし役所のやることがすべてで はありませんので、この検討会で出した結論を受けて、医療機関側としてもこういうこ とをやらなければいけないというように、各職種や専門職でも、自主的努力としてこう いうことをやっていかなければならないとか、そういうご議論を集約する形でまとめる のが、1つの考えかなと思いますので、ちょっとご紹介させていただきました。 ○座長  さらにご意見はありますか。 ○平林委員  少しきつく言えば、それで話が済むのであれば、この問題はもっと早く話が済んでい ただろうと思います。今回のこの問題は、いわゆる1つの行政解釈を厚生労働省が改め ましょうということであって、法律改正でも何でもないわけです。医療安全の問題は、 各病院の自助努力に委ねるというのが、厚生労働省の基本方針であるということは、私 も少しは承知しておりますが、今回の問題は事の良し悪しは別として、静脈注射には人 体に対する危険性があって、技術的に困難であるという理由で、保助看法の業務の範囲 には入らないという行政解釈を、厚生労働省が示したことによって、看護界が一方でそ の解釈に従って、静脈注射を看護師が行うことは違法であるというように認識しつつ、 他方、現実問題として静脈注射をやらざるを得ない状態にあって、あるいは押し付けら れる状態にあってやってきているという問題を、どう解決するかということにあるわけ です。  私自身の自論は、ここではあまり言わないほうがいいのかもしれませんから、差し控 えますが、厚生労働省としてそういう行政解釈を変更する場面において、これまでの状 況を考えると、私としてはいま少し踏み込んだ形での指針をこの中で出したほうが、問 題の解決はずっとスムーズにいくだろうと思っておりますから、先ほど言ったようなこ とを申し上げました。私がいつも言っていることの途中を抜かして、結論だけ申し上げ ましたので、分かりづらいと思いますが。 ○井部委員  2点質問があります。1つは、静脈注射の内容についてです。中心静脈と末梢静脈の 確保ということでは、最近ではIVHということで、中心静脈がかなり多く使われてい るという説明が先ほどありましたが、静脈注射には中心静脈の確保まで入るのかどうか が1点です。静脈注射というと、静脈点滴注射と、ワンショットで入れる静脈注射と、 中心静脈からの点滴注射というのが、現状ではあると思うのですが、それら3点を含ん でいるのかどうか。最後の中心静脈点滴注射というのが、もしこの中に含まれていると すると、かなりの技術教育をしなければならないのですが、その辺はいかがでしょう か。 ○看護課長  装着というか、中心静脈ルートの設定のことをおっしゃっているのですね。 ○井部委員  ええ。 ○看護課長  挿入して、ちゃんと確認もして、縫合もするということまで含めて考えていらっしゃ るわけですね。 ○井部委員  このままでいくと、中心静脈の刺入も入る可能性があるのです。 ○看護課長  ただ通常、切開をして縫合もしなければならないということを考えると、いまの段階 で私たちが、ここまでナースの仕事にしてもいいと考えているわけではありません。そ こは従来どおり医師がやるべきものではないでしょうか。またいろいろな技術レベルで の発展、あるいは看護教育や継続教育のあり方など、20年後、30年後にどのようなこと が起こるかは想像できませんが、そういうことも含めて、考えておくべきことかなとは 思っております。 ○井部委員  そのことは通知変更の範囲からは除外する、といったことは書かれるのでしょうか。 ○看護課長  明示はしません。 ○井部委員  そうすると私は、疑義照会があるのではないかと思うのですが。 ○武田企画官  そういうことは、何らかの形で明らかにしなければならないのかもしれませんが、静 脈注射という1つの業務があって、その中に先ほどご指摘いただいた、いくつかのパ ターンがあって、さらにその行為でIVHを分解して、ここからここまでいく手順のう ち、どれとどれが良くて、どれとどれが駄目だというような細かい議論を1つ1つして いくことが妥当かどうかということも、議論としてはあるのではないかと思います。ま た、そういう1つ1つの手順を通知の上で明確化しなくても、当然医行為に当たるもの は、絶対的医行為に当たるという認識です。先ほど「切開」とか「縫合」という言葉で 出ましたが、従来から考えられている医行為は除外しなくても、これまでの絶対的医行 為というジャンルに入るということで、整理は可能だと思いますが、現実にはQ&Aの ような形で出さなければいけないのかもしれません。基本的な考え方としては、そうい うことです。 ○中村審議官  平林委員からも井部委員からも、ほかの委員の方からも、いろいろなご意見をいただ いておりますが、基本的にいままでナースの方は、一切できないとされていたという解 釈問題で、黒か白かという話ですので、それを変えるとなりますと、資料4にあります ように、「看護師等が静脈注射を実施できるものとする」ということで、何ら身も蓋も ないじゃないかとお思いになるかもしれません。そういう解釈にきちんと立ったとし て、実際に看護の卒前の教育や国家試験を受けられて、実際に現場で研修されるという 問題もあると思いますし、そこのところがスムーズにいくということと、実際に今日も 現場でやられているということも踏まえた上で、解釈をこういうように改めたことによ り安全に。しかし解釈を変更することで、その実態が変わるわけではありませんので、 私は安全の問題は生じないと、個人的には思っていますが、厚生労働省としては、解釈 を改めるわけですから、それによって万が一、安全に欠けるようなことがあってはいけ ませんので、そういうことについて、きちんといろいろな意味での説明をするとか、体 制の整備を図るという努力は、精一杯しなければならないと思っております。ただ、そ れについては平林委員がおっしゃる意味での、ガイドラインという方法が適切なのか、 内布委員がおっしゃっていたように、例えば一定期間はやってはいけないというような 行政指導が適切なのか、という議論はあると思います。  先ほど企画官が申し上げたように、医療現場は非常に複雑多岐で、さまざまなレベル があり、さまざまな状況で行われておりますので、解釈通知なり、どんな解釈をしても 必ずその先の議論が出てきて、この場合はどうだ、この場合はどうだという話になると 思います。私どもの基本的なスタンスとしては、医療の現場の複雑性、それぞれの現場 で、まさに患者さんのために最善と思ってやっておられることは、基本的に尊重してや るべきではないかと思っております。ここまではどう、ここまではどうというように細 かくやればやるほど、常に静脈注射の次は何で、その静脈注射のAは良くてBはどう で、ある所ではBは良くてCはよくてというように、無限にいってしまうのではないか と考えております。  基本的な安全対策なり、今回の解釈の変更なりは、資料4の2頁にありますように、 「具体的対策」をやっていく中で、いま先生方から出たご意見を踏まえて、看護課のほ うで是非いちばんうまい形で、まとめてもらいたいと思っております。基本的な哲学と しては、事の性格上、黒か白かというところで、今まではそういうライン引きを黒とし ていたものを白とするということで、現象面から見ると、それでは何でもありなのだな ととらえてしまって、不安なり、ナースの方たちに対して、余分なプレッシャーがかか るのではないかというご懸念もあると思いますが、解釈通知の変更の際もそういうこと がないよう、基本的にそれを補充するような何らかの文言を入れるとか、それぞれの教 育内容の提示とか、そういうことを総合的に講ずる中で、いま委員の方々からいただい たようなご意見は、極力反映したいと思っているということを、ご説明させていただき たいと思い、発言させていただきました。 ○西澤委員  この案についてですが、「静脈注射」と言ったときのとらえ方が、まちまちだと思う のです。広く中心静脈までとらえる場合もありますし、例えばこの調査で見ても、静脈 注射、点滴静脈注射、輸液というように、静脈注射の範囲を分けているのですが、これ を広くとらえるか狭くとらえるかで、全く違うわけです。ここら辺は今回出すにして も、やはりもうちょっと定義付けをしたほうがいいと思います。というのは、昭和26年 ごろに中心静脈注射などはなかったわけですから、そういうことでは今の時期に合わせ たものが必要かなと思います。  そこでお聞きしたいのは、案の中の「看護師等」の「等」の意味です。文章の中で2 と3は、「看護職員」という言葉を使っております。この具体的な範囲内だけを教えて いただければと思います。 ○看護課長  私どもが「看護師等」と申しますときも、「看護職員」と申しますときも、保助看法 に定められている保健師、助産師、看護師、准看護師の4職種を指しております。 ○西澤委員  では、この「等」と「職員」は同じですね。 ○看護課長  同じです。「看護師等の人材確保の促進に関する法律」という法律がありますが、そ のときにも4職種を指しますし、それ以外に役所で出しているさまざまな文章に、「看 護職員」と書いてある場合も、全く同じです。 ○西澤委員  はい、わかりました。 ○内布委員  この委員会には直接関係ないのですが、いまは実習のときに注射ができない状況にあ るというお話を先ほどしました。外国の例を見ていますと病院に関しては、教員の指導 の下に、学生がやりますということをちゃんと明示して、実習している所も結構あっ て、ナースボードがそれをちゃんと書いている所もあるのです。ですから、そういうこ とがさきほどの「臨床能力の向上に関する検討会」のほうで、検討できないでしょう か。  薬理の時間に関しては、私は非常に少ないと認識していたのですが、あれはスペシャ リストの教育の時間だったので、ジェネラリストのほうをもう一度調べましたら、日本 は遜色ないどころか、大学での薬理の時間は少し多かったのです。私は、1回目にそう いう発言をしたので、ここで訂正させてもらいたいと思います。 ○座長  あと、柳田委員だけご発言がなかったのですが、何かございますか。 ○柳田委員  今日は川越委員、あるいは上野委員の大変貴重な取組みのご意見を拝聴させていただ きました。いろいろ考えてみますと、テーマは単純なように見えますが、非常に根深い 問題を含んでいます。必要な条件整備と同時に、医師を含めた医療界全体の問題とし て、慎重に検討しなければならないだろうという感じをまた深くいたしております。ガ イドライン、卒前基礎教育、卒後教育の教育システム、プログラムの検討なども必要で しょうけれど、ここに出されたものについては、少しスピードが速いようでした。例え ばあとで意見の追加・補充というようなものは、まだよろしいのでしょうか。 ○座長  また次回にでもどうぞ。 ○看護課長  全体をまとめるまでに、もう少し時間がありますので、そうしたところで追加してい ただければ、よろしいのではないかと思っております。 ○座長  柳田委員、是非早めにご発言いただけるように、よろしくお願いいたします。  それでは本日の討論は、これで閉めさせていただきたいと思います。事務局から何か ご説明はおありでしょうか。 ○勝又補佐  次回の検討会は8月19日の月曜日、午後2時から開催を予定しております。次回の議 題は「麻薬の取扱いについて」ご議論いただきたいと考えております。場所等は決まり 次第、別途正式なご案内を発送いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○座長  大変お忙しいところ、ここで2時間きっちりご検討いただきまして、大変ありがとう ございました。今回はこれで終わりにいたします。 照会先 厚生労働省医政局看護課 課長補佐  勝又(内線2599) 保健師係長 習田(内線2595) ダイヤルイン 03-3591-2206