複数の臨床研修病院で研修を行う場合の雇用関係について
○ 複数の臨床研修病院をローテートする場合に、研修医と各臨床研修病院の間でどのような雇用関係を形成するかについては、当事者間の契約に委ねられるが、その一例として以下の形態が考えられる。
○ なお、国立病院等が関与するローテートについては、職務専念義務、定員、予算などの問題がある。
<在籍型出向により、複数の病院をローテート>
○ 出向元と出向先で出向契約を締結し、出向労働者が、出向元との労働契約を維持したまま、出向先とも労働契約を締結し、出向先において、相当期間継続的に勤務する労働形態。(出向元は、出向労働者の同意を得ることが必要。)
○ 在籍出向の場合、労働基準法上の「使用者」の責任は、出向先か出向元かという二者択一ではなく、出向元と出向先との間の出向契約によって定められた権限と責任に応じて、出向先と出向元の双方が「使用者」の責任を負う。
○ この場合、社会保険・労働保険の適用については、
(1) 健康保険、厚生年金保険については、使用関係にある病院において適用(2つ以上の事業所において使用関係にある場合には、各事業所での賃金に比例して保険料を納付)
(2) 雇用保険については、主たる賃金の支払元において適用
(3) 労災保険については、労働の実態に基づき労働関係の所在を判断して、どちらかの病院において適用(通常は労務の提供先)
○ 例えば、出向契約(別添「出向契約書(例)」参照)において、
(1) 出向元は、賃金の支払い責任(この場合、出向先が、賃金相当額を出向元に戻入することとするのが一般的)
(2) 出向先は、労働時間・休日・年次有給休暇に関する責任、安全衛生確保に関する責任 を負うというように、「使用者」の責任を分担することが可能。
○ この場合、社会保険・労働保険の適用については、
(1) 健康保険、厚生年金保険、雇用保険については、出向元が保険料を納付
(2) 労災保険については、通常、出向先が保険料を納付
することとなる。
<在籍型出向のイメージ>
別添 |
出向契約書(例)
○○○病院(出向元。以下「甲」という。)と○○○病院(出向先。以下「乙」という。)とは、甲の研修医の出向について、次のとおり契約する。
(出向者)
第1条 甲は、乙に対し、甲の研修医○○○(出向者。以下「丙」という。)を出向させる。
(出向期間)
第2条 出向期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日までとする。
(指揮命令)
第3条 丙は、甲に在籍のまま、乙の指揮命令に基づき、乙の業務に従事するものとする。
(労働条件)
第4条 丙の労働条件については、特に定めるものを除き、乙の就業規則を適用する。
(年次有給休暇)
第5条 丙の年次有給休暇については、甲に勤務していた期間についても乙に継続勤務していたものとみなした上で、乙の就業規則を適用する。
(時間外勤務)
第6条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して時間外勤務を命ずることができる。
(休日勤務)
第7条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して休日勤務を命ずることができる。
(当直勤務)
第8条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して当直勤務を命ずることができる。
(賃金の支給)
第9条 丙の賃金については、甲の就業規則を適用し、甲が丙に直接支給する。
(賃金の負担)
第10条 時間外・休日・深夜勤務手当、当直手当、通勤手当及び出張旅費を除いた丙の賃金については、乙が○割を負担する。
2 丙の時間外・休日・深夜勤務手当、当直手当及び通勤手当については、乙が全額を負担する。
3 乙が業務の必要に基づいて丙に対して出張を命じたときは、その出張に要する旅費については、乙が全額を負担する。
(健康保険、厚生年金保険及び雇用保険)
第11条 丙の健康保険、厚生年金保険及び雇用保険については、甲における被保険者資格を継続する。保険料のうちの事業主負担分については、甲が負担する。
(労災保険)
第12条 丙に関する労災保険については、乙が加入し、保険料を負担する。
(懲戒処分)
第13条 乙は、乙の就業規則に基づいて、丙に対する懲戒処分を行うことができる。
(勤務状況の報告)
第14条 乙は、毎月5日までに、前月の丙の勤務状況を「勤務状況報告書」(別紙)により、甲に報告する。
(負担金の支払)
第15条 本契約によって、乙が負担することになった金額について、乙は、発生月の翌月末日までに甲の指定する口座に振り込む。
(復職)
第16条 出向期間終了後は、丙は、甲に復職するものとする。
(協議事項)
第17条 本契約書に定めのない事項及び本契約書の解釈について疑義が生じたときは、甲乙間において誠実に協議し解決する。
別紙
ローテーションの例 |