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第8回年金資金運用分科会議事要旨

1.日時平成14年7月30日〈火〉16時〜18時
2.場所厚生労働省省議室
3.参加者・内海委員 ・大和委員 ・杉田委員 ・高梨委員 ・竹内委員
・福井委員 ・向山委員 ・吉原委員 ・米澤委員 ・若杉委員
4.議事要旨(○は委員、●は事務局、△は年金資金運用基金の発言)

《第7回分科会の議事要旨について》
 第7回議事要旨については、配付資料のとおり確認。

1.年金資金運用基金の平成13年度資金運用業務概況書について
 年金資金運用基金の資金運用の結果について事務局より説明。
 年金資金運用基金の平成13年度資金運用業務概況書について年金資金運用基金より説明。

 (質疑応答)
 ○各勘定に按分される損益は6200億円とのことだが、厚生年金勘定、国民年金勘定に比べて、承継資金運用勘定への按分額が大きくなっている。按分の方法はどのようになっているのか。
 ● 按分方法は法令上明記されており、市場運用部分の各勘定における年間を通じた運用額の比で按分している。平成13年度においては、承継資金運用勘定においては、年度の初めから約26兆円を運用しており、年間を通じた運用額が大きかった一方、厚生年金勘定と国民年金勘定については、年度の初めの運用額は0であり、その後約17兆円が段階的に寄託され運用されたため、年間を通じた運用額は承継資金運用勘定と比較して小さくなった。そのため、このような按分結果となったものである。
 ○年金積立金全体で見た場合の収益状況がプラスとなっているのは、今年度においては過去の財投金利が高かったためであるが、今後は財投金利も実勢金利に近づいていくことから、今後とも多額の利子収入が見込めるものではないということは、資料においてきちんと説明されているか。
 ● 資料2「年金資金運用基金の資金運用の結果について」のP5「年金積立金全体で見た場合の収益状況について」の2の注3において記載している。また、P6の運用の仕組みの図においても、預託金の償還が平成20年度までで完了することを記載しており、金利水準的にも、時間的にも、平成13年度のように多額の預託金利収入があるのは限定的なことであるという説明を行っている。
 ○現在のように、金利低下局面では過去の高い金利による割高の預託利子収入を得ることができるが、逆に金利上昇局面では割安の預託利子収入しか得られないことになるのだから、マスコミ等に説明する際には、全額預託していれば確実に高い預託利子収入が得られるかのような印象を持たれないよう、金利と預託利子収入の関係をきっちり説明して欲しい。
 ● 過去の財投金利などにもふれながら、丁寧に説明していきたい。
 △国内株式・外国株式の運用成績について、アクティブがベンチマークを大幅に下回ったのは、載せてあるデータからマネジャー・ストラクチャーが成長株に偏っていたためと推量できるが、悪くないはずのパッシブでベンチマークを大きく下回っているのは何故か。
 △ 主な理由は、平成13年度は、年度前半にパッシブ運用機関の選定を行い、年度後半になってから資金投入を開始したため、ベンチマークとの乖離がこのように大きくなったものである。今後は、きちんと改善していく。
 ○運用の基本方針では、パッシブ運用を中心とすることが明記されており、年金資金運用基金もそのような方針で運用を行っていると思うが、平成13年度は、パッシブ運用比率の目標設定を行っていたのか。また、将来的に、パッシブ運用比率をいつまでに何割まで引き上げるのか。
 △ パッシブ運用比率は、最終的には7〜8割まで高めていくこととしているが、当面は国内株式については4〜5割、外国株式については5〜6割程度を目標としている。平成13年度は、国内株式は4割台、外国株式は5割台というところまでパッシブ比率を引き上げている。
 △パッシブ比率を国内株式については4〜5割、外国株式については5〜6割程度を当面の目標とすることはどこかに明記されているのか。また、どのような手続きを経て決定したのか。
 △ パッシブ比率は、年金資金運用基金の内部において方針を決定したものである。
 △パッシブ比率はいつまでに何割まで引き上げるのか、時期と割合を明確に決定すべきではないか。
 △ 最終的にいつの時点で7〜8割を達成できるのかは、時価変動などもあるので時期を特定することは出来ない。ただし、何年くらいで達成できるかの試算などは行いたいと考えている。
 ○パッシブ運用比率の上昇は、どのように行ったのか。新規寄託金をパッシブ運用に回したのか。
 △ 平成13年度の新規預託金は全額パッシブ運用に回している。平成14年度においてもパッシブ運用の比率を高めていくような資金配分を行っていく予定である。
 ○既存のアクティブ運用を行っている資金をパッシブ運用に回すことはしないのか。
 △ 平成13年度において、一部アクティブ運用の資金をパッシブ運用に回している。しかし、パッシブ比率の向上を図ることだけを目的として、アクティブ運用を解約して資金をパッシブ運用に回すことは必ずしも被保険者の利益にならない。なぜなら、資金の移動に伴いコストが発生するからである。平成13年度は、たまたま、現物移管を利用していくつかのアクティブファンドをあわせてパッシブファンドに組み替えることができ、コストをあまりかけずにファンドの組み替えを行うことが可能だったため、その部分については資金を移動した。
 また、相手はマーケットであり、時期等を厳密に設定すると、マーケットがそれを予測して行動するため、余分なコストがかかる恐れがあることにも注意しなければならない。
 ○国内株式の運用結果が、アクティブ運用がマイナス0.76%、パッシブ運用がマイナス0.48%であるのに、全体がマイナス0.86%と、アクティブ運用、パッシブ運用各々のマイナスより大きくなっているが、この理由は何か。
 △ アクティブ運用とパッシブ運用の収益率の計算に当たっては、単月の収益率を掛け合わせて年間の収益率を計算している。各月の資産規模の大小に関係なく、各月の収益率を同じウェイトで計算することにより、アクティブ運用とパッシブ運用の運用能力を表すためである。
 ファンド全体の各月の収益率は、アクティブ運用とパッシブ運用の収益率をアクティブファンドとパッシブファンドの各月の資産残高で加重した値である。この金額加重された後の収益率を月次で掛け合わせて年間の収益率を求めている。
 そのため、このような結果となっているものであり、数値は正確である。
 △ベンチマーク対比でマイナスとなっている部分については、謙虚に結果を受け止め、なぜそのようになったのかの理由を一般の人にも分かりやすく説明していく必要がある。
 △資料2「年金資金運用基金の資金運用の結果について」においては、例えばP3「平成13年度 年金積立金及び年金資金運用基金の運用資産の運用結果」において、単年度の損益合計に財投への借入利息額を含めているが、これは年金資金運用基金の市場運用におけるマイナスとは全く性質の異なるものである。借入利息という性質の異なるマイナスを、運用結果としての損失と合計して記載することは、マスコミなどに、運用で非常に大きな損失が出ているような誤解を与えかねないのではないか。
 ● 確かに、運用結果としての損失と借入利息によるマイナスの性質は全く異なる。資料においても、「運用損失」と「借入利息」と言葉を区別している。
 ただ、運用損失の6200億円だけを強調し、借入利息を合わせて表示しなかった場合に、逆に、損失を明示せず、隠しているかのような印象を与えかねないという面もあり、今回、このように合計額を出したものである。
 なお、このように運用損失と借入利息を合計して記載する処理は旧年金福祉事業団時代から行っており、それとの連続性も考慮したものである。
 しかし、御指摘のとおり、全く異なる性質のマイナスであるので、説明の際には、マイナス全体が運用から生じたかのような誤解を与えないよう、十分に注意して説明していきたい。
 △将来的には財政融資資金への借入利息の支払も小さくなっていき、やがては消滅するものである。やはり、運用損失と借入利息という全く性質の異なるものを合計して表示してしまうことには疑問がある。
 △一方で、預託分については、財投から割高の利子収入を得ている。従って、金利低下局面において、借入利息の支払いはこのように割高でありマイナスが立っているが、一方では預託分について割高の利子収入が入ってきている、というように、全体として説明するのがよいのではないか。
 △運用損失と借入利息を合計して表示することは、やはり、誤解を与える恐れがある。この説明は、非常に注意して行わなければならない。借入利息は制度上のマイナスであり、年金資金運用基金の市場運用とは何の関係もないことはきっちり説明してもらいたい。
 ● 全く異なる性質のマイナスであることは、御指摘のとおりであり、事務局もよく承知している。借入利息だけでなく、預託金の利子収入も部分もあわせて、年金積立金全体の運用の仕組みを、誤解のないように説明していく。
 ○年金積立金全体で見た場合の収益状況は、実質的な利回りで見るというのは納得できるが、実質利回りの計算方法として、賃金との関係を考慮することとしていることは妥当か。裁定後は物価スライドなのだから、物価との関係を考慮するという考え方もあるのではないか。
 ● 今までの財政再計算においては賃金スライドを基本としている。通常、物価上昇率より賃金上昇率が高いことを考えると、裁定後は物価スライドしか行わない中で賃金スライドを基本とするというのは、厳しめに年金財政を見通しているということになる。物価スライドを基本とすると、もう少し年金財政に楽な方向の見通しとなるが、現在は、あえて厳しく賃金スライドで見通しているものである。
 しかし、一方で、現在のデフレ経済の状況において、今までの推移を見ると、物価下落率の方が賃金下落率より大きくなっている。また、年金給付について、物価下落率に応じたマイナススライドも行っていない。ただし、このことについては、次期財政再計算時に、年金財政として調整する予定である。従って、今回、年金積立金全体で見た場合の長期的な見通しとしては、賃金スライドを基本とした年金財政の見通しを用いることとしたものである。

2.年金資金運用分科会における年金積立金の運用の在り方に係る検討について
 年金資金運用分科会における年金積立金の運用の在り方に係る検討について事務局より説明。

 (質疑応答)
 △予定運用利回りの検討のための参考資料を取りまとめて、年金部会に報告するとのことだが、これは、予定運用利回りの数値自体を決定するという趣旨か、資料を取りまとめるという趣旨か。
 ● 最終的な予定運用利回りの数値は年金部会で決定するが、その決定に当たっては、数値を含む参考資料が必要となると考えており、その参考資料を当分科会から提供することが不可欠であると考えている。
 平成11年財政再計算においては、預託制度も踏まえて、長短金利差などを参考に実質的な運用利回りを1.5%と設定したが、今後は、全額市場運用の仕組みへと移行することとなる。従って、市場運用を行っていく上での実質的な運用利回りがどの程度見込めるのかについて、長期的な経済見通しや市場動向、各資産のリスク・プレミアムなどを踏まえ、一定の幅を持つこととなると思うが、見極める必要がある。その視点から当分科会で検討していただきたいと考えている。
 ○年金積立金の運用の在り方について、「基本に立ち返った検討」というのは、どこまでの検討なのか。
 ● これまでは、長期的に維持すべき資産構成割合として、株式を組み込んだ資産構成割合である基本ポートフォリオを策定し、それに基づいて分散投資を行うという方針で運用を行ってきている。しかし、一方で、株式運用をやめるべきだという意見もあり、特殊法人改革の際にも、大きな議論となった。従って、株式を組み込んだ分散投資を行うことの是非という、運用の在り方の根本から御議論いただきたいと考えており、そのような趣旨で「基本に立ち返った検討」と資料に書かせていただいたところである。
 ○当分科会で、年金積立金の運用の在り方について検討を行う際の、分科会に期待されている役割を説明して欲しい。
 ● 審議会の場の持つ意味についてであるが、これまで審議会は政府の政策決定に当たっての諮問・答申を行うところとして政策決定に大きく関わっていたが、行政改革によって、政策決定は政府・与党で行い、審議会は国民に対して、どのような議論が行われ、それを踏まえて政府・与党がどのような決定を行ったのかという検討過程を明らかにする場であるとの整理が行われたと理解している。従って、当分科会は市場に影響を及ぼさないよう原則非公開とされているが、これから行おうとしている年金積立金の運用の在り方についての政策論議に当たっては、国民に開かれた場で、どのような議論が行われ、その議論を踏まえて政府・与党がどのような政策決定をしていくのかという過程を国民に分かるように示していただくというのが当分科会の役割と考えている。
 従って、次期財政再計算に向けて、実質運用利回りが1.5%市場運用でとれるのかどうかなどの基礎資料を、開かれた形で吟味していただくというのは、当分科会の非常に重要な役割であると考えている。
 当分科会で資産サイドからの実質的な運用利回りの見通しの検討を行っていただき、それを踏まえて、年金部会が保険料負担と給付水準を検討し、さらにその結果を踏まえて、政府・与党が最終的な決定を行うという流れになる。この意思決定に当たっての国民に開かれた議論の場というのが、審議会という位置付けである。
 ○株式を組み込んだ分散投資の是非についての議論を行う際には、外国の年金資金運用の実態についての資料を準備していただきたい。
 ● 準備させていただく。
 △各資産のリスク・リターンの推計は、従来超長期に妥当する値を出すためとして、過去25年実績値平均というように単純に過去実績を用いていたようだが、その従来の方法による数値に加えて、予測の方法論を考えて、今後10年ぐらいの資産ごとの収益率予想を出していただけないか。
 ● 各資産のリスク・リターンの推計についても、基本に立ち返った検討を行っていただきたいと考えており、資料も準備させていただく。
 ○実質運用利回りを検討する際の前提となる賃金上昇率の推計については、単純な過去のデータに基づく推計でなく、企業側の意思や労働力の構成変化の影響なども考慮した推計方法があれば資料を提出していただきたい。また、物価上昇率を基本とした運用利回りの設定もあり得るのではないかと思うので、物価上昇率についても幅広く資料を提出していただきたい。
 △次回の分科会開催予定はいつ頃か。
 ● 9月末から10月上旬に開催をお願いしたいと考えている。その際、年金積立金全体の運用状況についての報告書の提出を行うとともに、年金積立金の運用の在り方についての検討についても議題とさせて頂ければと考えている。

〜以上〜

〈照会先〉年金局運用指導課
 企画係長 下向(しもむかい)
 TEL 5253−1111(内線3350)
 夜間 3595−2868


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