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別紙

別紙1 「第2章 民間参入・移管拡大による官製市場の見直し」関係

別紙2 「第3章 活性化に資するビジネス・生活インフラ整備」関係   略

別紙3 「第5章『規制改革特区』の実現に向けて」関係


「第2章 民間参入・移管拡大による官製市場の見直し」における所管省の主な意見

1.消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大
事項(所管省) 意見
(1)医療分野における株式会社の参入
 (厚生労働省)
 医療の質の向上や効率化・重点化は、下記のような問題点が予想される営利法人参入による経営面での競争ではなく、医療法人制度の見直し等医業経営の近代化や適切な情報開示に基づく患者選択を通じた医療の質の面での競争を促進することによって図られるべきである。
 過去に、営利を目的に多数の患者に健康被害を生じさせ社会的非難を受けた病院の事例や、株式会社が衛生規制に違反する事件が最近再三にわたり報道されているこ と等を踏まえれば、生命・健康に関わる医療分野においては営利重視の結果生ずる患 者の事故の未然防止の考え方に特段の配慮を置くべき。
 1 医療というのは地域に密着し永続的に活動することを前提としたものであるため、利益を求めて活動し、目的達成とともに事業を廃止する可能性のあるような株 式会社の論理となじまない。
 2 株主は、議決権や株主総会での議案提案権を有するため、制度上、総会での議決や取締役選任等を通じて会社経営に影響を及ぼしうる地位にある。したがって、株式会社による医業経営については、利益の最大化を目的として、医療提供を歪めやすい構造になっていると考えられる(米国においても、地域に利益を還元・再投資していることが患者等に評価された結果、非営利法人が主流である。逆に、米国の営利法人経営の病院については、高配当を求めて、利益のあがる患者のみを選択したり、組織的な不正請求を行う等、地域による医療提供体制を歪めた事例が報告されている。)。
 3 金融機関からの借入金は、固定した「当然の支払いコスト」であるのに対し、株式会社の取締役は、株主の利益を最大化させる義務を有することから、株式会社の利益最大化目的の行動が地域医療に及ぼす影響の蓋然性は、借入金返済圧力のような債務弁済により消滅する事実上の影響より遙かに高いと考えられる。
 特に、株式会社が利益最大化行動を取ることにより、医療費高騰のリスクは大きく高まると考えられる。
 4 医療法人は利益の全てを再生産費用に充てることとしているが、株式会社経営の医療機関は、そうした費用に加えて、株主に配当する必要があり、その分は医業収益で確保する他ないことから、株式会社は医療法人に比較して高コストの性格を有すると考えられる。
 5 なお、持分を有する医療法人は、内部留保の蓄積を、解散時に出資者に対して分配することが可能であるが、基本的には、医療法人は永続性を前提としたものであり、解散による分配自体を目的とするものではなく、こうした例外的なケースを前提とした議論をするのは適切ではない。
 以上から、医療分野に株式会社参入を認めない積極的理由は存在する。
 なお、総合規制改革会議の考えでは、
 ・「徹底した患者ニーズの把握による患者サービスの向上等による患者満足度向上、経営効率化につながるシステム環境整備、経営マインドの発揮、管理・事務スタッフ等必要な人材投入による患者ニーズに直結した効率的な経営」が株式会社のメリットといわれているが、こうしたことは株式会社でなければ実現できないものではなく、現行の医療法人等においても達成可能である。
 ・医療においては、患者と医師との間に情報の非対称性が存在することを考えると、医療機関相互が完全な競争環境に置かれているとは言い難い。このような状況にもかかわらず、「問題は医療法人であれ株式会社であれ患者利益の向上に寄与しないものは淘汰されるだけである」との総合規制改革会議の論理には賛同できない。
(2)福祉分野における株式会社参入の推進
1)特別養護老人ホーム経営への株式会社の新規参入
 (厚生労働省)
 老人福祉分野においては、既に、在宅介護サービスをはじめ、老後の住まいである有料老人ホームやケアハウスについても株式会社の参入が可能となっている。
 しかしながら特別養護老人ホームは、これらとは異なり、寝たきりや痴呆などの要介護高齢者のみを対象に介護サービスを提供するための専用の入所施設であり、こうした入所者を保護するため、その経営主体には、良質な介護サービスを長期間安定した形で提供し続ける保証が求められる。このような性格は、障害者のための福祉施設など、他の入所型社会福祉施設と変わるところはない。
 * 入所者は、食事や排泄など生存の基本に関わる部分を含め、生活の全般にわたって介護を受ける。
 * 劣悪なサービス提供があった場合には、入所者に具体的な被害が発生し、事後チェックでは救済できない。
 * 入所者にとって特別養護老人ホームは、人生の最後の生活の場面を支える拠り所(終の棲家)である。
 老人福祉法が特別養護老人ホームの経営主体を自治体と社会福祉法人に限定しているのは、このような理由によるものであり、株式会社については、次のとおり入所者の保護に欠けるおそれがあることから参入を認めることはできない。
(1)株式会社は株主の利益の最大化を目的とする組織であり、例えば、身体的にも精神的にも弱い立場の入所者を「寝かせきり」にして、機械的で画一的な「手抜き」サービスにより人件費コストを削減し、利益を上げるおそれがある。(社会福祉法人には、社会福祉事業の公益性を担保する等の観点から、配当は認められていない。)
(2)株式会社は利益を求めて場所を選ばず活動し、目的達成とともに事業を廃止する組織であり、常に退出のおそれがある。(社会福祉法人には、社会福祉事業の実質的な継続性を担保する観点から、一方的な事情による安易な退出は認められていないほか、事業廃止の場合にあっても残余財産を自由に処分することは認められておらず、同様の事業を行っている社会福祉法人に引き継ぐか、国庫に帰属させることになっている。)
 さらに特別養護老人ホームは、市町村による措置の受け皿として老人福祉法に位置づけられており、こうした面からも、株式会社の参入はなじまない。
 サービスの向上や効率的な経営については、現在の仕組みの中で取組が進められており、多くの弊害が予想される株式会社の参入によって実現を図るという考え方は適当でない。
(2)福祉分野における株式会社参入の推進
2)株式会社のケアハウス参入要件の緩和
 (厚生労働省)
<前期利益に係る基準の撤廃について>
 株式会社がケアハウスを設置する場合の、社会福祉法第62条第2項の規定に基づく都道府県知事等の許可は「自治事務」であり、都道府県知事等は、同条第4項の基準に沿いつつ、自らの判断に基づいて許可を行うことが可能。これは、各都道府県に送付した本年1月の厚生労働省老健局計画課長通知にも、地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく「技術的助言」であると明記しているとおり。
 したがって、「参入を排除することになる」との主張はそもそも事実誤認に基づくものである。
 また、同課長通知においては、例えば、株式会社の子会社がケアハウスを設置・運営する場合には親会社の資産等も含めて勘案することのできる余地を明記するなど、柔軟な取扱いも示しているところである。
<資産基準の見直しについて>
 社会福祉法人には、
 ・ 事業収入は原則社会福祉事業にのみ充当することとし、配当や収益事業に支弁できないこと
 ・ 法人の適正な運営を担保するため、役員の解職請求や法人の解散命令などの強力な公的関与の手段が法律上設けられていること
 ・ 経営が思わしくないなどの一方的な事情による安易な撤退は認めないこと
 ・ 事業を実施するために供された財産はその法人の所有となり、事業を廃止した場合にはその財産は最終的には国庫に帰属させること
 など、株式会社にはない種々の規制が課されているところであり、これを全く視野に入れずに資産基準のみを取り出して不均衡とする主張は適当でない。
 また、上述のとおり、同課長通知は技術的助言であることを明記していること、さらに地域の証券取引所に上場している一定の場合には額の多寡は問わない旨を明記していることなど、柔軟な取扱いも示しているところである。

2.官民役割分担の再構築
事項(所管省) 意見
(3)同一市場における競争条件の均一化
1)教育・福祉分野における株式会社等への助成の取扱い
 (厚生労働省)
 憲法第89条後段の趣旨について、教育等の事業からの宗教性の排除が目的であるとしているが、政府は、憲法第89条の「公の支配」の目的を「宗教性の排除」に限定する考え方は採っておらず、原案の解釈は不適当。
 憲法第89条の「慈善・博愛事業」についても、時代の推移に伴い対象者が拡大するなど福祉の在り方は変容しているが(福祉の普遍化)、様々な理由から社会的支援を必要とする者に対し、その自立を支援するという社会福祉事業の理念は変わっておらず、その意味で、現在においても、社会福祉事業は「慈善・博愛事業」である。この憲法解釈は、これまで政府として一貫している。なお、憲法解釈の変更については、十分に慎重でなければならないと考える。
 また、福祉分野においては、民間の者については、社会福祉法人のみに施設整備費補助が行われるなど公的助成の在り方が異なっている。
 社会福祉法人に関しては、以下のような支援及び規制・監督を一体的に行い、質の高いサービスの継続的・安定的な提供を確保するための仕組みが制度に組み込まれている。
 (支援)
  1)施設整備費補助、2)税制上の優遇措置
 (規制・監督)
  3)事業収入は原則として社会福祉事業にのみ充当され、配当や収益事業に支弁できない。
  4)法人の適正な運営を担保するため、役員の解職請求や法人の解散命令などの強力な公的関与の手段が法律上与えられている。
  5)経営が思わしくないなどの一方的な事情による安易な撤退は認められない。
  6)事業に必要な資産を保有しなければならない。
  7)事業を実施するために供された財産はその法人の所有となり、事業を廃止した場合にはその財産は最終的には国庫に帰属する。
 一方、民間企業は、自由な経済活動を行い、利益を確保し、配当することを目的としており、社会福祉法人に対して課している制約の趣旨を踏まえた規制を課すことはできない。
 このため、憲法第89条及びサービス提供主体への一体的な支援、規制・監督の必要性の観点から、社会福祉法人のみを補助の対象としているところであり、株式会社について、財政援助のみ社会福祉法人と同様のものとすることはできない。
 また、最終的に利益として株主等に配分される民間企業に公金(国民の税金)を支出することについては、一般の国民の理解を得ることは困難と考える。
(3)同一市場における競争条件の均一化
2)補助金・税制におけるイコールフッティングの実現
 (厚生労働省)
 (3)の1)に対する意見のとおりであり、一律に公的助成等について、同様の取扱をすることはできない。

3.利用者選択の拡大
事項(所管省) 意見
 (厚生労働省)
 1 保育分野においては、平成10年の児童福祉法改正により、利用者が保育所を選択できる制度が既に導入されている。
 2 家庭や地域社会の子育て機能が低下し、子どもを巡る様々な問題が深刻化している中で、市町村を中心に、保育はもとより、子育て不安対策や児童虐待防止対策なども含めて地域における子育て機能を再構築することが必要になっている。このような状況の中で、保育サービスへの市町村の関与を薄めることとなる利用者補助制度を導入すべきではない。
 3 さらに、利用者補助制度を、保育分野に導入した場合には「子どものために保育を実施する」という考え方から「子どもを預けたい親がサービスの質に関わらず保育サービスを購入した場合に金銭的援助を行う」という考え方に変わり、下記のような問題が生じるため、現行システムを直ちに変更する必要はない。
1) 変化する保育需要に対応していこうとする保育の現場に混乱を生じさせる。
2) 質の悪い保育サービスの提供を公費で促進してしまう可能性がある。
3) 市町村による待機児童の把握やニーズへの対応が困難になる。
4) サービスの需給が逼迫している場合、利用者の自己負担が高騰する可能性がある。
5) 市町村及び保育所に大きな追加的コストが生じる。
6) 母子家庭等真に保育サービスを必要とする者が保育サービスを受けられなくなる可能性がある。

「第5章 『規制改革特区』の実現に向けて」における関係省庁の主な意見及びこれに対する当会議の見解

事項(関係省庁) 関係省庁の意見 当会議の見解
2.制度設計の方向
(2)特区制度に関わる法的論点
1)法の下の平等との関係
 (厚生労働省)
 医療や福祉など、国民の生命や身体・健康に関わる規制は、全国一律で遵守すべきそれ以上後退できない基準を定めたものであり、経済活性化を目的として一部地域の判断で規制を解除できるような性質のものではない。
 労働者保護に関する規制は、労働者が健康で文化的な生活を営むために必要な全国一律に適用すべきセーフティーネットであり、地域によって異なる規制を適用することは、法の下の平等の観点から不適当である。
 例えば、高度な医療研究体制を持つなど、地域の特性を活かした上で、必要な代替措置等を講ずることにより、規制の特例措置を講ずることは可能である。また、当該規制が「全国一律」であるべきか否かは、規制の目的に照らして検証されるべきであって、先験的に決定されるべきものではない。
 いずれにせよ、実際に特区制度が施行された後、個別具体的な案件について国が最終判断すればよく、あらかじめ制度化の段階で除外すべきではない。
2.
(2)
 2)試行的な制度の妥当性

 (厚生労働省)
 そもそも国民の生命や身体・健康、労働者保護に関する規制は、「実験」や「試行」に馴染まない。
 そのような規制であればこそ、「試行的」な制度も活用することにより、常に最善の規制の内容が求められるべきである。地方公共団体が当該地域に応じた最善の方法を採用することは、躊躇されるべきことではない。
 国民が注目する特区の中で行われる国民生命や身体・健康に係る規制緩和については懸念されるような国民の生命や身体・健康の危険に関わる問題が発生しないよう周到な配慮が講ぜられることが想定されるため、特区での「行」が成功したとしても、全国ベースの一般化された先例にはならない。
 代替措置等により、一定の「配慮」が講ぜられる範囲内で、規制の特例措置を全国に一般化することは可能である。
 規制緩和による低コスト化を目指し、医の質の低下をもたらすような改革の「試行」はもとより許されないものと考える。
 医療の質の低下を防ぐための十分な評価を前提に、「試行的」な制度も認められる。なお、コスト面からだけで医療の質は確保できない。
2.
(2)特区制度に関わる主な法的論点
 3)不可逆的な規制改革

 (厚生労働省)
 人の生命や身体・健康に関する「重大な題」は、事後的な取消によっては取り返しがつかないことから、特区の対象外とすべき。
 労働者の生命、健康、生活や労働条件を守る労働者保護に関する規制については、不可的で代替措置もないことから、特区の対象外とすべき。
 経済活性化の観点からの評価基準については、公共の安全と秩序の維持の視点も含まれる。
 各種規制ごとに、個別・具体的に検討されるべきである。
 「重大な問題」であればこそ、それに関する規制についても最善の内容が求められる。現行の規制が特例措置よりも「重大な問題」を引き起こさないとは言えないのであって、地方公共団体が当該地域に応じた最善の方法を採用することは、躊躇されるべきことではない。
(5)検討すべきその他の法的論点
 6)特例措置を講じた後の評価方法(体制)

 (厚生労働省)
 医療サービスについては、その特性として、
 提供される医療の内容そのものを公的に規制することは不可能(プロフェッショナルフリーダムの領域)であることから、医療従事者の一定の知識・技能の担保や、過剰検査、過剰診療などの患者との情報格差を利用した医療の質の低下やそれに伴う健康被害の防止のためには、医師国家試験(国家資格)の実施、医療経営主体規制、設備構造基準規制等の事故の未然防止のための包括的な事前規制が必要不可欠であり、「代替措置」による弊害除去は困難。
 あらゆる事前規制については、現行制度が必ずしも最適であるとは言えず、その目的の達成にとって最適な手段となっているか否か、常に検証される必要がある。また、代替措置の有無については、各種規制ごとに、個別・具体的に検討され、判断される必要がある。

事項(関係省庁) 関係省庁の意見 当会議の見解
2.
(4)特区制度の対象となる規制の選定基準
 2)規制の選定基準

 (厚生労働省)
 医療や福祉等国民の生命や身体・健康に関するサービスに係る規制については、次の理由から、特区制度の適用対象外とすべき。
 「試行」が失敗して事故等が生じた場合に事後的な対応は不可能であること
 一部地域の住民のみを危険に曝すことは問題であること
 生命や身体・健康に関する被害を防止するための代替措置を講ずることは困難であり、未然防止のための事前規制が必要不可欠であること
 医療サービスや医療保険に係る規制の特例措置を講じた場合には、全国の患者や保険者に影響を与えざるを得ず、地方公共団体の責任において特区内で完結させることは困難であること
 労働者保護に関する規制については、次の理由から、特区制度の適用対象外とすべき。
 労働者保護に関する規制は、労働者が健康で文化的な生活を営むために必要な全国一律に適用すべきセーフティーネットであり、地域によって異なる規制を適用することは、法の下の平等の観点から不適当であること
 労働者保護に関する規制を緩和した結果、労働者の生命や健康に危害が及んだ場合であっても適切な代替措置を講ずることは困難であり未然防止のための事前規制が必要不可欠であること
 「犯罪特区」を否定するため覚せい剤取締や児童労働保護など刑法以外の警察法規についても対象外とすべき。
 医療、福祉、労働、教育といった分野でも、地域の特性を活かした上で、必要な代替措置等を講ずることにより、規制の特例措置を講ずることが可能なものは存在し、これらを一律に排除するべきではない。
 また、生命などに関わる「重大な問題」であればこそ、「試行的」な制度も活用することにより、それに関する規制についても最善の内容が求められるべきである。現行の規制が特例措置よりも「重大な問題」を引き起こさないとは言えないのであって、地方公共団体が当該地域に応じた最善の方法を採用することは、躊躇されるべきことではない。
 いずれにせよ、実際に特区制度が施行された後、個別具体的な案件について国が最終判断すればよく、あらかじめ制度化の段階で除外すべきではない。
 そのような規制についても、特例措置を講ずることによって、全国の患者や保険者にも間接的な利益が及ぶとともに、代替措置等により影響を特区内に完結させることは可能と考える。
 「刑法」には警察法規も当然に含まれ、「犯罪特区」が是認されないことは自明である。また、実際に特区制度の対象とすべきか否かについては、個別の要請があった際に具体的な検討が行われるべきである。


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