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順天堂大学医学部臨床薬理学教授 伊藤 澄信


 前回の会議の席上では医師主導の治験の対象で「国内未承認薬を中心に検討」となっております。しかし、国内未承認薬の治験を医師主導で行うことは理想とすることではありますが、現行あるいは改正薬事法でも相当の困難が予想されると考えます。
 治験を進めていくためには非臨床成績の入手と把握、海外を含めての安全性情報の入手が不可欠です。GCP、GPMSPなどでも治験依頼者の安全性情報の入手が必須の要件ですが、医師チームあるいは大規模臨床試験ネットワーク事務局がその任にあたることは大変な労力を必要とするのではないかと思慮します。少なくとも、海外から医薬品を輸入し、その際に治験実施ができる程度の安全性情報を提供してもらえる契約をするなどのシステムを作り上げる必要があるかと思います。
 薬事法で承認されている医薬品の適応外使用であれば、安全性情報の入手などについての困難はないと考えます。
 臨床試験がなかなか進まない大きな理由は、臨床試験に参加しても大学の中では業績にならない問題があります。論文の著者にならなければ、大学では昇進につながらないし、大学の教官に応募することもできないのが現状です。治験のエントリーが多い治験分担医師が共著者となるようなあるいは、大学の教官の選考に際して、何人の治験患者を受け持ったかなどが評価される必要があるかと思います。
 海外で使われはじめている医薬品のうち、抗がん剤やオーファンドラックなどは、国内でも迅速な使用が要求されています。例えば、GISTに対するイマチニブ(グリベック)などは多く使用されているものと思います。これらのものは企業が治験契約を組んでエントリーをするとなると時間がかかりますが、実際の患者さんが現れてから、事務局と契約をするなどの市販後調査に近い方法をとることによって迅速に症例の集積ができるかもしれません。
 また、抗がん剤の適応外使用について例えばパクリタキセルの再発膀胱癌患者などに対する使用なども同様の仕組みで、データの迅速な集積が可能かもしれません。ただし、これらの診療に用いているデータでは一般臨床試験ですので安定したエンドポイントの設定ができなければ、評価が困難です。

 一方、サリドマイド(多発性骨髄腫)や亜ヒ酸(急性前骨髄性白血病)などのように海外から輸入をしなければならない薬剤もあり、国内未承認薬への対応が必要になることも事実だと思います。
 こうした、抗悪性腫瘍領域などでは海外などで用いられ始めている薬剤を迅速に評価できる仕組みを考えることができるかもしれませんが、一方、試験期間が長く必要な生活習慣病改善薬などはこうした仕組みが困難かもしれません。1つには従来の治験では1症例あたりの費用が膨大になりすぎて、企業が負担しきれないこともあります。EBMといわれながら、わが国でのEvidenceがない状況を改善するためには、わが国の医師が主体的に治験を進めていかなければならないかと思います。
 単に薬剤だけでなく、投与量の違いがoutcomeに影響を与えていないかどうかは検証の必要がありそうです。例えば、DCCT研究のBG剤の投与量やWOSなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤などの投与量はわが国の投与量よりもはるかに多いことを認知すべきだと思います。しかし、メトホルミンなどは1錠が10円ぐらいなので、企業主体の治験などは不可能と思います。


平成14年7月8日

第2回 大規模治験ネットワーク懇談会資料
領域別治験候補医薬品・医療機器
東京大学医学部附属病院アンケート集計結果

東京大学医学部附属病院臨床試験部部長 小俣政男


東大病院の中でアンケートをとり集計しました。提案内容について正確さに欠ける部分があるかも知れませんが、ご容赦願います。

<代謝・内分泌・消化器領域>

I.国内未承認薬品

(1)adefovir

1)販売会社:グラクソ・スミスクライン、国内の治験を行うという情報あり。

2)提案する適応症:YMDD変異HBV感染症

3)提案する理由:HBV感染症に対し、ラミブジンが保険適応され国内で広く使用されているが、ラミブジン長期投与によりYMDD変異株感染症が惹起されることが知られている。ラミブジ ンはYMDD変異株には無効である。香港や米国でphase study II-III。

4)参考文献:Xiong X, et al. Mutations in hepatitis B DNA polymerase associated with resistance to lamivudine do not confer resistance to adefovir in vitro. Hepatology 1998 Dec;28(6):1669-73

(2)budesonideまたはbeclomethasone dipropionate(経口製剤、直腸投与製剤)

1)販売会社(国内外用剤):budesonide (アストラゼネカ)、beclomethasone dipropionate(シェーリング・プラウ、GSK、帝人)

2)提案する適応症:潰瘍性大腸炎、クローン病

3)提案する理由:これら疾患に対し局所投与、経口投与とも有効でかつ利用可能な経口のステロイドに比べて副作用が非常に軽いことがわかっているが、薬価が安くもうからないため日本では製剤化されていない。どちらの製剤も同様に有用である。経口製剤(回腸放出)、直腸投与製剤ともあると便利である

4)参考文献:Campieri M. New steroids and new salicylates in inflammatory bowel disease: a critical appraisal. Gut. 2002 May;50 Suppl 3:III43-6.

(3)燐酸ナトリウム(経口製剤)

1)販売会社:Fleet Pharmaceutical, Inc.

2)提案する適応症:大腸検査前処置

3)提案する理由:現在日本で主に使われているpolyethyleneglycol・塩類溶液は、清浄化の点では良いが、2−4lも飲まなくてはならず、大変である。燐酸ナトリウム下剤は、polyethyleneglycol・塩類溶液と同等以上の有効性があり、かつ飲む量も少なく、被験者にはpolyethyleneglycol・塩類溶液より耐用性も高い。このため欧米、アジア諸国では広く使われているが、薬価が安くもうからないため日本では製剤化されていない。剤型としては、水溶液が使われているが、錠剤とすることにより不快な味を避けることができるので、錠剤として作るのが望ましい。

4)参考文献:(1)Vanner SJ, MacDonald PH, Paterson WG, Prentice RS, Da Costa LR, Beck IT. A randomized prospective trial comparing oral sodium phosphate with standard polyethylene glycol-based lavage solution (Golytely) in the preparation of patients for colonoscopy. Am J Gastroenterol. 1990 Apr;85(4):422-7.(2)Aronchick CA, Lipshutz WH, Wright SH, Dufrayne F, Bergman G. A novel tableted purgative for colonoscopic preparation: efficacy and safety comparisons with Colyte and Fleet Phospho-Soda. Gastrointest Endosc. 2000 Sep;52(3):346-52.


II.効能追加薬品

(1)インターフェロンとリバビリン(内科領域)

「経皮的肝細胞癌治療後の再発防止のためのインターフェロン療法」

 薬剤:インターフェロンα製剤ないしインターフェロンβ製剤およびリバビリン

1)販売会社:特定せず

2)提案する適応:肝細胞癌治療後のC型肝炎・肝硬変患者における肝細胞癌再発防止

3)提案する理由:肝細胞癌の多くは、現在では手術ないし焼灼により局所的には根治可能であるが、年15%にのぼる再発がみられ、予後は決してよくない。これは残存肝が肝硬変などの癌好発状態にとどまるためである。本邦肝細胞癌患者の8割はHCV感染を有するが、C型慢性肝炎に対してはインターフェロンが有効であり、約3割の患者でHCVが排除される。さらに、最近ではribavirinとの併用により著効率が上昇した。慢性C型肝炎に対するインターフェロン療法により肝細胞癌発生が抑制されることは既に報告されているが、肝細胞癌治療後の患者においても再発抑制効果が期待され、小規模の研究は既に報告されている。本邦におけるHCV関連肝細胞癌による死亡は年間3万人と推測され、これを抑制することは急務である。肝硬変を除くC型慢性肝炎に対するインターフェロン療法は既に承認され、数種の薬剤が市販されているが、目的は「ウィルス血症の改善」であって、肝細胞癌再発防止ではない。製薬会社主導の治験では個々の薬剤について検討することになるであろうが、本来の目的はHCV排除が肝細胞癌再発防止に結びつくかどうかを検討することであり、薬剤を限定する必要はない。従って、医師主導の臨床研究が望ましいと考える。また、肝細胞癌患者の多数が肝硬変であることから、肝機能が比較的良好な肝硬変患者をも投与対象とするべきであると考えられ、適応拡大の検討も必要である。

4)参考文献:(1)Nishiguchi S, et al. Randomized trial of effects of interferon alpha on incidence of hepatocellular carcinoma in chronic active hepatitis with cirrhosis. Lancet 346:1051-1055, 1995(肝硬変患者を対象としたRCT)(2)Yoshida H, et al. Interferon therapy reduces the risk for hepatocellular carcinoma: National surveillance program of cirrhotic and noncirrhotic patients with chronic hepatitis C. Ann Intern Med 131:174-181, 1999(慢性肝炎・肝硬変患者を対象とした2900人のコホート研究)(3)Kubo S, et al. Randomized clinical trial of long-term outcome after resection of hepatitis C virus-related hepatocellular carcinoma by postoperative interferon therapy. Br J Surg 89422, 2002(肝癌患者を対象としたRCT)

(2)インターフェロンとリバビリン(外科領域)

「C型肝炎由来の肝癌切除後症例に対する、インターフェロンおよびリバビリン投与による肝癌再発予防効果の検討」

1)販売会社:特定せず

2)提案する適応症:C型肝炎由来の肝癌治療後に対する、インターフェロンおよびリバビリン投与による肝癌再発予防効果の検討

3)提案する理由:インターフェロンはC型慢性肝炎症例に対して投与することにより、高いウィルス排除率を達成することが知られている。またその排除率はリバビリンと組み合わせることにより高まる事も知られている。ただしその排除率は背景肝の線維化の進行と共に減少し肝硬変症に至ったような症例では落ちることが知られている。現行の日本の保険医療では、非肝硬変の慢性肝炎に限り、リバビリンはインターフェロンとの併用で6ヶ月間投与、インターフェロンはその後の長期投与が認められている。一方、C型肝炎罹患症例は経年で高い発癌率を示す事が知られており、肝硬変症に至った症例では年率7%と報告されている。これらの症例に対しインターフェロンを長期投与することによって累積発癌率を低下させることが可能であるとの報告が今までいくつかなされており、これはウィルスの排除による肝炎症の程度の低下によって達成されると考えられる。興味深いことにこの発癌抑制効果は、完全にウィスルが排除されたとは考えられない、transient responderやまた肝硬変症例でも認められている。切除治療は肝癌に対する標準治療とされているが、術後の高い異時多中心性発癌がその治療法の問題点であり、治癒切除後2年を経過した後も年時再発率は20%を超えこれらの多くが異時多中心性発癌による肝内再発であるとされる。上記の理由と同様に、肝癌治癒切除後にインターフェロン及びリバビリンを投与することにより、理論的には、残肝の二次発癌の率を低下させる事が可能になると推測されるわけであるが、これに関してはこれを指示するデータはhistorical dataの範囲にとどまっている。また肝癌治療後の症例に対しては保険は一般に適応されない。以上の理由により、C型肝炎由来肝癌治癒切除症例後の症例に対して、インターフェロン及びリバビリンの併用投与による肝癌二次発癌の抑制効果を検討する事は意味のあることと考えられる。
 ここまでのプロトコールの概略は治癒切除後の症例の検討としたが、近年Radio frequencyが肝癌局所療法の新しい手段として従来のアルコール注入療法を超える局所制御能を達成することが可能であるとの報告がされており、切除治療とRF後の症例を層別化して、インターフェロン、リバビリンを投与し、検討するのも興味深いと考えられる。

4)参考文献: (1)Lancet 1996; 346:1051-1055、(2)Lancet 2001; 357: 198-197、(3)Ann Intern Med 1999; 131:174-81、(4)Ann Intern Med 2001; 134:963-967.

(3)グリベック(STI571、imatinib mesylate)

1)販売会社:ノバルティス

2)提案する適応症:進行性・転移性消化管GIST(Gastrointestinal stromal tumor)

3)提案する理由:進行性・転移性で外科切除困難なGISTにはこれまで有効な治療薬がなかった。白血病治療薬である Glivecが、分子標的治療の概念から本疾患に対し有効であることが明らかとなり、欧米ではGISTに対する使用が承認された。

4)参考文献:N Engl J Med 2001; 344:1052-6

(4)白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン)

1)販売会社名:日本化薬、ブルストルマイヤーズスクイブ

2)提案する適応症:胆道癌、膵臓癌

3)提案する理由:白金製剤で、抗癌剤として用いられるシスプラチン、カルボプラチンは胆道癌、膵癌には保険適応となっていない。しかし、同じ腺癌が主体である消化器領域の他の悪性腫瘍(胃癌、大腸癌)では有効性が認められ、適応となっている。胆膵癌では有効な抗腫瘍剤が少なく、試行錯誤で薬剤投与を行っている。欧米では投与されており、5FUとの併用療法も行われている。必ずしも良好な成績が出ているわけではないが、2nd lineとしての投与や、局所投与における有効性(腹腔内、胆管内)を期待し、使用している。具体的には胆管癌、膵癌に対するFP療法(5FUとの併用療法)、FP療法と放射線照射の併用、膵癌腹膜播種症例への腹腔内投与(単独)、胆嚢癌に対する動注FP療法を施行している。

5)参考文献:(1)Rothmann H, Cantrell Jr JE, Lokich J, et al. Continuous infusion 5-fluorourasil plus weekly cisplatin for pancreatic carcinoma. A mid-Atlantic Oncology Program Study. Cancer 1991: 68:264-268. (2)Rougier P, Zebra JJ, Ducreux M, et al. Phase II study of cisplatin and 120-hour continuous infusion of 5-fluorourasil in patients with advanced pancreatic adenocarcinoma. Ann Oncol 1993; 4: 333-336.

(5)塩酸ゲムシタビン

1)販売会社名:日本イーライリリー

2)提案する適応症:胆嚢癌、胆管癌

3)提案する理由:国内で保険適応となっている非小細胞肺癌や膵癌のみならず胆嚢癌、胆管癌に対する有効性が報告されている。

4)参考文献:(1)Gallardo JO, Rubio B, Fodor M, Orlandi L, Yanez M, Gamargo C, Ahumada M. A phase II study of gemcitabine in gallbladder carcinoma. Ann Oncol. 2001;12:1403-6.(2)Verderame F, Mandina P, Abruzzo F, Scarpulla M, Di Leo R. Biliary tract cancer: our experience with gemcitabine treatment. Anticancer Drugs. 2000 ;11:707-8.(3)Castro MP. Efficacy of gemcitabine in the treatment of patients with gallbladder carcinoma: a case report. Cancer. 1998 ;82:639-41.

(6)TS-1

1)販売会社:大鵬

2)提案する適応症:膵臓癌

3)提案する理由:国内で保険適応となっている胃癌、頭頸部癌のみならず膵臓癌にも効である可能性があり、Phase II trialが進行中。

4)参考文献:ASCO 2002 Abstract

(7)プロポフォール

1)販売会社:アストラゼネカ

2)提案する適応症:ERCP、EUS、CFなどの内視鏡検査前投薬として

3)提案する理由:現在、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やEUS(超音波内視鏡)の前投薬としては、ジアゼパムや塩酸ペチジン(麻薬)の投与がおこなわれている。近年、特に欧米を中心にERCPや大腸ファイバー、処置内視鏡の前投薬としてプロポフォールが広く用いられており、その高い鎮静効果と安全性が報告されているが、本邦では全身麻酔の導入および維持、人工呼吸中の鎮静にしか適応が認められていない。

4)参考文献:(1)Brian W. Sipe, Douglas K. Rex, Danielle Latinovich, Chris Overley, Karen Kinser, Lisa Bratcher, David Kareken; Propofol versus midazolam/meperidine for outpatient colonoscopy: Administration by nurses supervised by endoscopists. Gastrointest 2002、815 - 825(2)Till Wehrmann, Sepideh Kokabpick, Bernhard Lembcke, Wolfgang F. Caspary, Hans Seifert; Efficacy and safety of intravenous propofol sedation during routine ERCP: a prospective, controlled study. Gastroint Endosc 1999 , 677 - 683. (3) Daniel Kulling, Amedeo C. Fantin, Peter Biro, Peter Bauerfeind, Michael Fried; Safer colonoscopy with patient-controlled analgesia and sedation with propofol and alfentanil. Gastroint 2001 , 1 - 7. (3) Mike J. Gillham, Rachael C. Hutchinson, Ross Carter, Gavin N. C. Kenny, Patient-maintained sedation for ERCP with a target-controlled infusion of propofol: A pilot study. Gastrointest Endosc 2001 , 14 - 17.

(8)抗HBs免疫グロブリン(へブスブリンIH)

1)販売会社:三菱ウエルファーマ

2)提案する適応症:HB肝炎肝硬変に対する肝臓移植後の再感染予防

3)提案する理由:その有効性は93年ごろから欧米では明らかになっているのに保険が認められていない。保険適応は針刺し事故の際の予防的投与(2000単位まで)のみ。

4)参考文献:Samuel D, et al. Liver transplantation in European patients with the hepatit is B surface antigen. N Engl J Med 1993 Dec 16;329(25):1842-7


III.医療用具(適応拡大)

(1)切除不能悪性消化管狭窄(食道を除く)に対する金属ステントを用いた拡張術

1)販売会社名:ボストンサイエンティフィック社

2)提案する適応症:切除不能悪性消化管狭窄

3)提案する理由: 切除不能悪性消化管狭窄症例の予後は不良で、QOLは著しく損なわれている。このような症例には死亡するまで経鼻胃管を挿入する場合もある。悪性胆道閉塞症例で当初は外科的バイパス術が施行されていたのがステント留置術に取って変わったように、今後消化管狭窄に対するステント術が発達してくるものと考えられる。食道に関しては保険適応となっているが、その他の消化管では非適応であり、国内ではdeviceは市販されていない。欧米では2年前より市販されており、国内でも早期に保険適応となることが望まれる分野である。

4)参考文献:(1)Maetani I, Ogawa S, Hoshi H, et al. Self-expanding metal stents for palliative treatment of malignant biliary and duodenal stenoses. Endoscopy 1994; 26: 701-704.(2)Feretis C, Benakis P, Dimopoulos C, et al. Duodenal obstruction caused by pancreatin head carcinoma: Palliation with self-expandable endoprostheses. Gastrointest Endosc 1997; 46: 161-165.

(2)ESWL(体外衝撃波結石破砕療法)による膵石症の治療

医療機器名:ドルニエリソトリプターS

1)開発または販売会社名:ドルニエメディカルシステム株式会社

2)提案する適応症:膵石症

3)提案する理由:国内で保険適応となっている尿管結石や胆石のみならず、膵石の破砕に関しても有効である。ESWLによる膵石破砕は膵石症患者の疼痛除去に極めて効果的である。

4)参考文献:(1)Karasawa Y, Kawa S, Aoki Y, Ochi Y, Unno H, Kiyosawa K, Watanabe T. Extracorporeal shock wave lithotripsy of pancreatic duct stones and patient factors related to stone disintegration. J Gastroenterol. 2002;37:369-75.(2)Adamek HE, Jakobs R, Buttmann A, Adamek MU, Schneider AR, Riemann JF. Long term follow up of patients with chronic pancreatitis and pancreatic stones treated with extracorporeal shock wave lithotripsy. Gut. 1999 ;45:402-5. (3)Costamagna G, Gabbrielli A, Mutignani M, Perri V, Pandolfi M, Boscaini M, Crucitti F. Extracorporeal shock wave lithotripsy of pancreatic stones in chronic pancreatitis: immediate and medium-term results. Gastrointest Endosc. 1997 ;46:231-6.



<がん領域>(消化器領域を除く)

I.国内未承認薬品

(1)carmustine (BCNU)

1)販売会社:Brystol-Myers Squibb

2)提案する適応症:悪性リンパ腫

3)提案する理由:BCNUを含む大量化学療法は、欧米での大量化学療法・自家造血幹細胞移植の際には標準的な治療となっている。大量化学療法・自家造血幹細胞移植が、再 発の後化学療法に感受性を保っている悪性リンパ腫の予後を改善することを示した Parma studyでは大量化学療法としてBEAC (BCNU, VP16, araC, CY)を用いている。しかし国内ではBCNUが未発売である為、この治療を行うことができない。大量化学療法だけでなく、通常量のサルベージ治療としてもBCNUはしばしば用いられる。

4)参考文献:(1)N Engl J Med 1995;333:1540-1545, (2)J Clin Oncol 1995;13:588-595

(2) Alemtuzumab

1)販売会社:Berlex

2)提案する適応症: 同種造血幹細胞移植の前処置(GVHD予防)

3)提案する理由:造血幹細胞移植を必要としながら、HLA型の一致するドナーが見つからないために移植を受けられない患者さんは多数存在する。一方、HLA型の異なる血縁ドナーは99%の患者さんに見つかるが、重症のGVHDを発症するため、移植は成功しなかった。近年になり、Alemtuzumabの予防投与によって重症GVHDを予防できることが示されている。

4)参考文献:(1)Blood 96:2419-2425 (2000)、(2)Blood 99:1071-1078 (2002)


II.効能追加薬品

(1)fludarabine

1)販売会社:Berlex (シェーリング)

2)提案する適応症:悪性リンパ腫

3)提案する理由:悪性リンパ腫(特に濾胞性リンパ腫のようなインドレントリンパ腫)の再発後の治療は、各種抗癌剤に対する耐性がみとめられる為、非常に困難である。それを克服するべく、交叉耐性のないfludarabineの有用性が指摘されfludarabineとcyclophosphamideあるいは、fludarabineとmitoxantroneを併用する治療法が標準的な二次治療薬として欧米では臨床応用されはじめている。国内では、 CLLに対する適応があり、薬剤としての使用実績も少なくないが、悪性リンパ腫に対する保険適応が認められていない為、この疾患の患者が恩恵をうけることができない。

4)参考文献:(1)Ann Oncol. 2000;11:861-86,(2)J Clin Oncol. 1994;12:575-579,(3)J Clin Oncol. 2000;18:987-994



<循環器領域>

I.効能追加薬品

(1)トラジロール(アプロチニン)

1)販売会社:バイエル

2)提案する適応症:人工心肺後の止血機能保持



<感染症・呼吸器領域>

I.効能追加薬品

(1)cidofovir

1)販売会社:Gilead

2)提案する適応症:アデノウィルス感染症

3)提案する理由:国内に有効な薬剤がない。

4)参考文献: Biology of Blood and Marrow Transplantation 7:388-394 (2001)


平成14年7月10日

第2回 大規模治験ネットワーク懇談会資料(当日追加分)
領域別治験候補医薬品・医療機器
東京大学医学部附属病院アンケート集計結果(追加分)

東京大学医学部附属病院臨床試験部部長 小俣政男


東大病院の中でアンケートをとり集計しました。提案内容について正確さに欠ける部分があるかも知れませんが、ご容赦願います。

<代謝・内分泌・消化器領域>

I.国内未承認薬品

(4)Diazoxide

1)販売会社名:シェリングプラウ

2)提案する適応症:インスリン産生膵腫瘍、及び膵外腫瘍、転移性インスリン産生腫瘍にともなう高インスリン血症による低血糖症

3)提案する理由:上記疾患の治療には、外科的切除が治療の手段となるが、手術困難例や転移例では内科的治療に頼るしか方法がない。本症の低血糖は生命の危険を生じるほどの重度なもののことが多く、内科的治療が成功しない場合の患者の不利益は計り知れないものがある。内科的治療としてサンドスタチン注射があるが、有効例が少なく、有効でも途中で無効になる場合も多い。diazoxideの治療は多くの場合に有効であり、経口で使えることからも使いやすい。海外とくに欧米では治療薬として用いているが、本邦では現在承認がおりていないため個人輸入などの方法で治療に用いている状況である。小児内分泌学会や内分泌学会でも臨床に使用可能となるような方向での要望を行っている。

4)参考文献: 日本小児内分泌学会薬事委員会Diazoxide研究会2002年報告


国立国際医療センター提出(1)

工藤 宏一郎

大規模治験ネットワーク懇談会資料-----薬品候補名



* アンカロン(大正) (静注薬)新規採用:不整脈
(経口薬)適応拡大:心房細動、心不全
  グリコプロテインIIb/IIIaレセプターインヒビター 新規採用:抗凝固療法
  ニトプロ(丸石) 適応拡大:異常高血圧の救急処置
  ソタコール(ブリストル) (静注薬)新規採用:不整脈
  サンディミュン(ノバルティス) 適応拡大:慢性関節リウマチなどの膠原病
  エンドキサン(塩野義) 適応拡大:ループス腎炎
  G-CSF製剤 適応拡大:薬剤による骨髄抑制
  メソトレキセート(ワレスレダリー-武田) 適応拡大:筋炎症候群
* フラジール(塩野義) 適応拡大:ヘリコバクターの除菌、クローン病
* ペンタサ(日清キョーリン-杏林) (注腸薬)新規採用
* プロトンポンプ阻害薬 適応拡大:胃食道逆流症
  硫酸ポリミキシンB(ファイザー) 適応拡大:肝性脳症の治療薬
  アンチトロンビンIII 適応拡大:肝不全の進行阻止
  プロスタグランディンE1製剤 適応拡大:肝不全の激症化の予防
* ジスロマック(ファイザー) 適応拡大:慢性呼吸器感染症
* ペルジピン(山之内) 脳出血急性期、脳梗塞急性期の禁忌事項の再検討
  クロナゼパム (注射薬)新規採用:難治性けいれん発作のため
* ドルミカム(山之内) 適応拡大:てんかん重積発作
  ディプリバン(アストラゼネカ) 適応拡大:てんかん重積発作
  シンメトリル(ノバルティス) 適応拡大:嚥下障害
  アスピリン 適応拡大:ラクナ梗塞
  グリセオール 適応拡大:ラクナ梗塞
  低分子デキストラン(大塚) 適応拡大:脳硬塞
  ソルメドロール 適応拡大:(多発性硬化症)に対するステロイドパルス療法
* プログラ(藤沢) 適応拡大:難治性の免疫アレルギー疾患
* トラジロール(バイエル) 適応拡大:心臓バイパス手術時の出血量減少や輸血量減少のための予防的使用
* 血栓溶解薬(t-PA製剤) 適応拡大:脳硬塞、肺梗塞時の血栓溶解


国立国際医療センター提出(2)


* ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
  適応拡大:心不全、糖尿病性網膜症、2型糖尿病性腎症
* AII阻害薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
 
適応拡大: 心不全、冠血管再建術後再狭窄、動脈硬化症(ASO、冠、脳)、急性心筋梗塞後心臓リモデリング、心房細動の電気的リモデリング、慢性糸球体腎炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症
* 2型糖尿病で顕性腎症患者に対するACE阻害薬とAII阻害薬の併用
* HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
 
適応拡大: 冠血管再建術後再狭窄、動脈硬化症(ASO、冠、脳)、急性心筋梗塞後心臓リモデリング、糖尿病性腎症、高脂血症を有する腎障害(糖尿病性腎症、慢性腎不全、透析)
  骨代謝改善薬(ビスフォスフォネート系)
 
適応拡大: 小児骨粗鬆症(骨形成不全症など)、骨折予防、(ダイドロネル以外、たとえばビスフォナール)骨ページェット病
  エビスタ(イーライリリー) 新規採用:閉経後骨粗鬆症
  フルタラビン(日本シェーリング) 新規採用:移植時の拒絶反応予防
  クラドリビン(ヤンセンファーマ) 新規採用:移植時の拒絶反応予防
  サリドマイド(セルジーン) 新規採用:難治性の骨髄腫


その他

(海外で発売していて国内で発売されていない医薬品)

  オルメサルタン(三共) 適応:高血圧症
  エノキサパリン(アベンティス) 適応:肺塞栓症など
  テレスロマイシン(アベンティス) ケトライド系抗菌薬
  レフルノミド(アベンティス) 抗リウマチ薬
  オーグメンチンES(グラクソ) 小児用抗菌薬
  塩酸パロキセチン水和物(グラクソ) 適応:全般性不安障害
  プロザック(イーライリリー) 適応:うつ病
  ザイグリス(イイライリリー) 適応:重症敗血症
  ゼロダ(ロッシェ) 適応:乳癌、大腸癌、胃癌


大規模治験ネットワーク懇談会
小児領域治験候補品目案

国立成育医療センター 佐伯守洋


I国内未承認品目

1)ジアゾキサイド:高インスリン血性低血糖症

国内未販売。平成13年度の国内での使用は新規35例、継続210例。
発生頻度は低いものの極めて重篤な転帰をとる小児の高インスリン血性低血糖症の有用な治療薬。日本小児内分泌学会の早期承認プライオリティリストにあげられている。


2)アミオダロン:心室性頻脈、接合部性異所性頻脈

国内未販売。本邦で2002年5月にオーファンドラッグに指定され現在成人を対象とした第II相試験が行われようとしている。先天性心疾患術後の致死的不整脈の治療に小児における適応も必要である。現在日本小児救急学会ならびに日本小児循環器学会が早期承認の要望書を作成中。


3)メチルフェニデート:注意欠陥/多動性障害(ADHD)

ADHDの第1選択薬として国内外で認められている。
ADHDの患者数は小児の3−5%と高く、本剤の需要は大きい。


4)ミダゾラム:痙攣重積および鎮静

小児の痙攣重積の治療や鎮静の目的で一般的に用いられているが本邦では適応がない。日本小児神経学会の早期承認プライオリティリストにあげられている。
I施設あたりの痙攣重積患者数は多くないことから大規模治験の対象として適当と思われる。


5)メソトレキセート:若年性関節リューマチ

リュウマチに対する世界的な標準治療薬であるが、本邦では成人にのみ適応が認められている。米国の統計ではリュウマチ患者の5%程度が小児期に発症するとされ、需要は大きい。


II国内開発品

1)モサプリド:逆流性食道炎

1998年に成人への薬価収載。国内開発品であるため国外での小児に関するデータもない。小児では同種同効薬であるシサプリドが適応外使用されていたが、薬物相互作用による致死的副作用を生じることが判明して本邦では現在出荷停止中である。胃食道逆流は乳児突然死の一因とも考えられておりその治療薬は欠かせない。


資料 6-5
2002 January
  New Drug Approvals In 2001

(1〜10ページ(PDF: 426KB)、11〜21ページ(PDF: 346KB))


資料 6-6
大規模治験ネットワーク懇談会
  大規模治験ネットワーク候補薬

(PDF: 48KB)


資料 6-7

(PDF: 56KB)


資料 6-8

大規模治験ネットワークの資料(循環器疾患)

(PDF: 395KB)



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