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多施設臨床試験における中央治験審査委員会
Central institutional review board for multi-institutional trials:CIRB

Christian MC, et al. N Engl J Med. 1405-08; 346: 2002


CIRBの概要

 各IRBで行っていた治験審査を一括してNCIに設けるCentral IRBで実施し、各IRBは迅速審査によりCIRBの受け入れを決定する。より多くの患者・医師の参加及び治験審査の迅速化を主目的とする


CIRBの生ずる背景

現在の治験審査の問題点

Review too much, too quickly, with too little expertise

  • 議論が不十分、いい加減
  • 手順が煩雑
  • 承認を得るのに長時間(平均5〜14時間)
  • 金銭的負担

なぜこのような事態を招いたか

1970年代以降、時代の進歩に乗り遅れ

  • 国主導から国・私的機関両者の主導へ
  • 1施設から多施設共同の治験へ

 

参考


NIHの現状

  • IRB数 :491
  • 審査数:284,000件
    (初期審査:105,000件、年次審査:116,000件、修正:63,000件)

NCIの現状

  • 治験責任医数:10,000人 (3,000施設)
  • フェーズ3治験:160件/年(30件は新規)
  • 治験参加施設:平均100/治験(4〜809)
  • 審査数:フェーズ3約16,000件(新規3,000件、残り継続)
  • プロトコールの修正:2000件
  • 副作用報告の審査:多数


CIRBの利点・業務

利点(迅速審査の登場)

  • 専門的、公正、効率的な審査
  • 査時間の大幅短縮 (月単位から日の単位へ)
    各IRBの長・委員及び小委員会が承認を決定できる(迅速審査)
  • 治験に参加する患者・医師数を増加

NCI治験プロトコールの特徴

  • CIRB、NCI、あるいはFDAによる審査
  • 十分な科学的根拠
  • 十分な治験計画の検討

CIRBの業務

  • プロトコールの初期審査
  • 資金、協力団体、審査委員長に関する議論・承認
  • 年次審査
  • プロトコールの修正
  • データ・安全性評価委員会からの報告及びその他

各IRBの役割

迅速審査によるプロトコールの承認判定

  • 各プロトコールごとに判定する
  • IRBの長・委員あるいは小委員会が承認を決定できる
  • 計画の基本事項は変更不可
  • 計画・インフォームドコンセントの微細な文面変更は可

各IRBの役割

 治験が安全かつ適切に実施されているかどうかを確認

  • 治験環境が適切であるか
  • 治験責任医あるいは担当医が実施基準に見合っているか
  • 治験の実施をモニタリング
  • 重篤な副作用の報告・審査
  • 苦情への対処


CIRBの構成

  • 全国から選ばれた癌にかかる専門家16名(NCI職員を含まず)
  • 医師、看護師、薬剤師、倫理学者、患者代表からなる
  • 経験豊富なNCIのコーディネーターと常勤スタッフ5名
    (月1回の会合を実施)

CIRBの現状・実績

  • 当初22の医療機関が参加登録、数ヶ月以内に100施設に拡張
  • 2001年以後、成人を対象としたNCIの癌治験全てを対象

初年度の状況:

  • 月に約2,3例のペースで審査
  • 20件の治験審査を実施(17例は修正後採用、2例は内容変更後採用1例については現在継続審査中)

2002年3月時点での現況:

  • 迅速審査は6施設で15回実施

CIRBの将来

CIRBを行う上での困難さ・複雑さ

 各IRB、データ・安全性評価委員会、治験責任医、協力団体、NCIとCIRB間の連携が極めて重要

CIRB成功へのかぎ

  • IRBの迅速審査の受け入れ程度
  • 現在、各IRBがどの程度の同意を得て、迅速審査を受け入れているのか不明瞭

将来の課題

 治験に参加した患者の安全に関する責任の所在を明確にすること



従来の審査方法

  • 各IRBが
     施設ごとの判定基準で
     施設ごとのタイムテーブルで
    プロトコール承認を決定

  • 最終判定、修正を得るまでに長時間
  • 審査の信頼性が低い
  • 医師・患者が治験を敬遠しがち
  • 患者へのフィードバックが遅い

従来の審査方法の図

CIRB

  • 迅速審査により短時間でプロトコールを判定
  • 公正・質の高い審査が得られる
  • 医師・患者が治験参加しやすい
  • 患者へのフィードバックが早い


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