02/06/11 第5回社会保障審議会年金部会議事録              第5回社会保障審議会年金部会                   議 事 録                平成14年6月11日 第5回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日  時:平成14年6月11日(火) 10:00〜12:30 場  所:富国生命ビル28階会議室 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      岡本委員、翁委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、山口委員      山崎委員、若杉委員 ○ 福井総務課長  それでは、ただいまから、第5回社会保障審議会年金部会を開催をいたします。議事 に入ります前に、お手元の資料を確認させていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。  資料1−1、資料1−2、資料1−3は、私ども事務局から提出をさせていただいて いる資料でございますが、年金制度とその財源という本日のテーマに関するものでござ います。資料2から資料5までございますが、これにつきましては、お願いをいたしま して、岡本委員、矢野委員、神代委員、堀委員、山崎委員の各委員から、本日のテーマ に関しましてご提出をいただたいた資料でございます。  それから、この議事次第に書いてなくて恐縮ですが、資料6ということにさせていた だきたいと思いますが、同じテーマにつきまして、大澤委員からも資料が提出されま す。これにつきましては、今コピーをとっておりますので、でき上がり次第お配りさせ ていただきます。  以上のほか、参考資料を四点お配りをいたしておりますので、ご紹介申し上げたいと 思います。参考資料1は、去る5月21日、小泉総理大臣から坂口厚生労働大臣に対して 行われました、少子化対策の取りまとめについての指示の要旨でございます。メリハリ のある対策を九月頃までに取りまとめよ、というご指示でございまして、特に育児休業 の取得などにつきまして、具体的な目標を定めるといったことも含めまして、子どもを 安心して産み育てられるような職場づくりへの努力といった点に言及がなされておりま す。これが一点目でございます。  参考資料2は、去る6月5日に第1回目を開催をいたしました「雇用と年金に関する 研究会」の要綱と参集者名簿でございます。当部会の神代代理にこの研究会の座長をお 願いをいたしておりますが、この研究会の成果につきましては、いずれこの部会におい て雇用との関わりにつきまして論じる際の議論に生かしていただくことを予定いたして おるところです。  これらのほか、前回及び前々回の議事録をお配りをしております。  次に委員の出欠ですが、本日は矢野委員、渡辺委員はご都合によりまして欠席でござ います。まだお見えになっておられない委員もおられますが、特段ご連絡をちょうだい いたしておりませんので、追っつけお見えになるものと理解いたしております。ご出席 いただきました委員の皆様方が三分の一を超えておりますので、会議は成立いたしてお りますことをご報告申し上げます。  なお、年金局長は、本日、これから参議院財政金融委員会に出席することとなってお りますので、中座をさせていただくことをあらかじめお断り申し上げます。  それでは、以後の進行につきまして、宮島部会長、よろしくお願いいたします。 ○ 宮島部会長  本日、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。既にご案 内をしていることでございますけれども、本日は年金制度と財源の問題についてご議論 いただきたいと思っております。具体的には年金制度に対する国庫負担のあり方につい てと、年金に対する税制に関する議論でございます。  なお、年金制度に対する国庫負担については少し広い意味で捉えておりまして、給付 財源に保険料以外の財源が投入されることもその中に含まれておりますので、必ずしも 制度的な意味での国庫負担ということだけではございません。  前回も、また、初めの時にも申し上げたと思いますが、この年金部会はできるだけ委 員相互のプレゼンテーションに対する議論という形で進め、その中で年金制度、年金財 政に関する様々な論点を浮かび上がらせることが主な目的でございまして、本日も何人 かの方にペーパーのご提出をいただいているところです。  なお、このような年金部会の進め方につきまして、皆さん若干ご感想があるようには 伺っておりますけれども、これは私自身の強い希望でもございまして、第1回のときに も申し上げましたが、改めてもう一度申し上げておきたいと思います。  ご存じかと思いますが、中央省庁等再編に伴い審議会の性格が従来の審議会とは変 わったものと理解をしております。特に所管官庁を中心として立案をし、それに対して 審議会がいわば一本の答申をまとめ上げるということが従来の役割であったと理解して おりますが、そのためには相当無理をして意見の調整をしたり、場合によっては、ミニ 国会のようなことを審議会がやってきた。それは意味がなかったというわけではござい ませんけれども、むしろ様々な論点が浮かび上がらないこともございます。  年金制度は国民の長期の生活設計に関わる非常に重要な意味を持つ社会制度でござい まして、しかもそれが個人のみならず、社会、財政にも非常に大きな影響を及ぼす観点 から申しますと、私たちのこの部会の役割は、もちろんこの部会だけだと私は思ってお りませんが、できるだけその論点をオープンな形で、とにかくあらゆる論点をこの部会 の中で議論をして、今日もマスコミ関係者はじめ多くの方が出席していただいておりま すけれども、ここでどういう議論がされたか、どこに論点があるのかということを、む しろ国民の方に知っていただくことが一番重要な部会の役割であろうと考えておりま す。  特にご承知のとおり、現在、年金制度につきましては、様々な国民各層から不安が表 明されるという点もございますし、今後の議論については非常に注目されるところでも あります。当部会は、特に大変スペクトラムの幅の広い委員の方にお集まりいただいて おりますので、ご参加いただきました委員の先生方のそれぞれのご意見を伺い、議論を していただいて、そこで論点を明らかにすることが基本でございまして、そこから国民 的な合意は形成されていくものだと考えております。そのような意味で、前回もそうで したが、今回も事務局を通じまして議題のご案内をすると同時に、各委員には、簡潔な ものでも結構ですので、できればご意見をご用意してペーパーとして提出いただきたい とお願い申し上げました。  今後もこういう形でこの部会を運営していきたいと考えておりますけれども、無論全 員の方に、毎回毎回強制的に出せという趣旨では必ずしもございません。それぞれの論 点につきまして関心のある点についてはペーパーを出していただきたいと考えておりま す。従来のように議事録に残るとしても、言いっぱなしではない形にしたいと思います し、また委員相互で議論する際にも、何か書かれたものがあるというのは良い手がかり にもなると思います。もちろん公式見解でありますと、なかなかきつくなるとは思いま すけれども、できれば論点を明らかにする観点から、今後もペーパーを出していただき たいと考えております。  今日は、先ほどお話しましたように、年金の財源と年金の税制についてご議論いただ きますが、先ほど総務課長から紹介があった総理大臣からの指摘事項、神代部会長代理 が座長されております「雇用と年金に関する研究会」のご紹介がございましたが、何か それにつきまして、もしご質問があれば、審議の前に伺っておきたと思いますが、いか がでございましょうか。  総理の指摘事項は、具体的な目標を定めろということですか。 ○ 福井総務課長  育児休暇、看護休暇等につきまして、取得率ということになるのかもしれませんが、 一つの例示ではございますが、これにつきまして、具体的な目標を定めるべしというこ とでのご指示があったということでございます。少子化対策につきましては、各省にま たがるものもあるわけですが、とりあえず九月頃までにということでご指示をいただい ておりますので、私ども厚生労働省の中におきましては、それぞれ担当の部局におきま して既に議論・検討を行っているところでございますし、また、厚生労働大臣が主催い たします少子化をテーマとした懇談会を、既に数回開催いたしておるところですが、そ こにおきましても、各委員から様々なご意見やご提言があるわけでございまして、そう いったことも参考にしながら対応をしていきたいと考えております。 ○ 宮島部会長  総理からのご指摘要旨は、今日は参考資料として配付されたわけですが、これはどこ に対して出されたものですか。 ○ 福井総務課長  厚生労働大臣に対してなされた指示であると理解しております。 ○ 宮島部会長  そうですか。何かご質問ございますでしょうか。 ○ 今井委員  質問ではないのですが、昨日の日経の新聞を見ますと、そういうことが決まってない のに、あたかも決まっていたかのような記事が出ていたものですから、今この文章を見 たときに、既に我々の知らないところで、そこまで行っているのかというのが疑問だっ たものですから、その辺のところをちょっとお願いしたいのですが。 ○ 宮島部会長  今井さんのもっともな疑問だと思いますので。 ○ 福井総務課長  昨日、日刊紙の朝刊で、これは版によって違うかもしれませんが、多分一面のトップ だったかと思いますけれども、年金制度の体系におきまして、少子化対策を行うこと を、いくつか具体的な項目が出ておりました。厚生労働省が方針として決めたという報 道がなされております。これはちょっとオーバーでございまして、先ほど申し上げまし たように、私ども、今いわば事務方として検討いたしているわけでございますし、また 先ほど申しました大臣の主催する少子化についての有識者会議でもご議論いただかなく てはなりません。  特に申し上げれば、年金制度体系において、少子化対策云々ということでございます れば、これは既に、当部会の議論、テーマを整理をしていただいたわけですが、今後秋 以降になろうかと思いますが、各論の段階でこれは当部会においてもいろいろとご議論 をしていただく必要があると考えております。  なお、さらに申し上げますと、昨日の報道に書かれておりましたいくつかの個別的な 項目につきましては、実は、先般の「女性と年金検討会」の報告に記述がなされている ことでございます。申し上げましたように、当部会でもご議論をいただきまして、どう していくかということについて決めていきたいと考えております。現時点で厚生労働省 の方針として決定したということではございません。 ○ 宮島部会長  「女性と年金検討会」でそういう議論がなされていたことは我々も承知しております けれども、それを実際に年金制度改正という形でどういう形で行うかについては、まだ 議論がここで行われておりませんけれども、そういう意味ではいずれ議論をさせていた だくということにしていただきたいと思います。他に何かございますでしょうか。  それでは、神代先生、できましたら「雇用と年金に関する研究会」について何かご紹 介することがございましたら。 ○ 神代部会長代理  まだオフィシャルに始まったばかりでありまして、非常に細かい統計的な事実の確認 や、その分析を必要とする問題でありますので、かなり込み入った議論をしておりま す。基本的には厚生年金保険の「支え手」をできるだけ拡大したいという視点で議論を しておりまして、統計的な分析だけでなく、仮にパートタイマー等への厚生年金の適用 を拡大しますと、労働の供給サイドと需要サイド、労働者本人と企業の両方にかなり大 きな影響を与えることが予想されますので、どういう影響が出るかということを、具体 的な企業のヒアリング等も含めて検討を続けているところでございます。まだそれほど はっきりした結論が出ているわけではございませんが、できるだけ秋までにまとめたい と思っています。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。前回もお話しましたように、年金制度の議論ではございま すけれども、年金制度というのは孤立して存在しているわけではございません。もちろ ん今お話した雇用もそうでありますし、先ほどの少子化対策もそうであると思います し、今日ご議論いただく税制の議論も、従来年金制度という狭い意味の中では議論の対 象に必ずしもならなかった点であります。今回は、よく言われる年金モンロー主義とい うことにならないように、これは初めから何回も申し上げておりますが、議論の対象は そういう意味で広がってくるということは避けられない、それが重要ではないかと思っ ておりますので、今後いくつかの、他で検討されている論点等も含めまして適宜ご紹介 いただきながら、年金制度の議論を進めていきたいと考えております。  それでは、時間がかかってしまいましたが、まず事務局が整理いたしました資料につ いて説明をしていただきます。それをベースにいたしまして、本日ペーパーを出してい ただきました委員の方々から、それぞれご説明いただくことにいたします。なるべく簡 潔にご説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○榮畑年金課長   資料の1−1、1−2、1−3を簡潔にご説明させていただきます。座らせていただ きます。1−1が中心となる説明資料でございまして、あと数字や経過については1− 2、1−3に付けさせていただいております。  まず資料1−1ですが、一番最初に、現行の年金制度に対してどういう考え方で国庫 負担が入っているかを整理させていただいております。(1)ですが、アンダーライン部 分に書いてございますが、公的年金制度の運営についての国の責任の具体的表明とし て、給付水準の改善、保険料負担の軽減などの観点から、費用の一部に対して国庫負担 がなされているということが、大体これまでの議論の整理かと思ってございます。  その経緯や他の医療保険制度、介護保険制度における国庫負担等につきましては、資 料1−2の(資料1)、(資料2)の1ページから3ページに簡単に整理しております ので、後でご覧いただければと思っております。  「2」でございますが、諸外国でどうなっているかということでございます。いろん な形があるのですが、資料1−2の4ページをご覧いただきますと、(資料3)で、社 会保険方式の公的年金制度を採っている国、ドイツ、スウェーデン、アメリカといずれ も違うタイプの国を掲げさせていただいておりますが、それぞれご紹介させていただい ております。  各国ごとに考え方が違うのですが、まさにこれから上がってまいります年金保険料が 余りに高く上がり過ぎないようにしていくという観点から国庫負担を入れている国、あ るいは所得比例年金を基本としているが、それだけですと低い年金額となるときに、そ こをいわば全額国庫負担による最低保障年金といった形で整理している国、あるいは、 また後でも出てまいりますが、年金給付に対して課税をし、その課税して得られた収入 をもう一回年金財源の中に還元していくというようなことをしている国、ドイツ、ス ウェーデン、アメリカのいろんなタイプのやり方がございます。それを(資料3)で簡 単に整理させていただいております。  そこまでが国庫負担の基本的な考え方、タイプでございますが、資料1−1の2ペー ジを見ていただきますと、今回改正の大変大きな課題である基礎年金に対する国庫負担 割合の二分の一への引上げという問題をどう考えるかということが2ページ以降に書い てございます。現在、国庫負担割合は三分の一ですが、これを二分の一、半分に引上げ たときにどれぐらいの財源がかかるか、ということを2ページの最初の方の箱の中に整 理させていただいております。平成14年度、平成37年度、それぞれ平成11年度価格で書 いてございますが、平成37年度になりますと大体金額にいたしまして3.8 兆円ぐらいが かかることになります。  これを三分の一から二分の一に引上げさせていただいたときに、各個人個人からいた だいております年金の保険料がどれぐらい下がるかを、2ページの下の箱二つで整理さ せていただいております。平成11年財政再計算ベースで、大体国民年金の方で7,000 円 から8,000 円ぐらい下がる。サラリーマンの方で、平成11年財政再計算ベースで百分の 二ぐらい下がるというような試算が箱の中にされてございます。  この国庫負担割合の引上げ問題の経緯ということを、3ページ以降に簡単に書かせて いただいております。前々回の平成6年改正から本格的な議論がされておりまして、平 成6年改正の中で、3ページの頭の箱の中に書いてございますが、基礎年金の国庫負担 割合を引き上げることを総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる という規定がつけられたところでございます。この当時の議論を振り返りますと、国庫 負担割合引上げの議論は、将来の各個人個人の保険料負担増をどう対応していくか、下 げられないか、将来の保険料負担の水準を念頭において国庫負担割合引上げの議論がさ れてきたというのがその経過でございます。  前回の12年改正の経過が4ページですが、結果といたしまして、基礎年金の国庫負担 割合の引上げについては、12年改正でも二分の一というわけにはいかなかったわけです が、頭の箱の中にも書いておりますが、平成12年改正法の中でも、アンダーラインを付 けさせていただいておりますが、当面「平成16年までの間に、安定した財源を確保し、 国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」と法律上はっきり書かれた ところでございます。  その後、平成12年の改正後、いくつかのところから、ここの問題について、次の制度 改正の大きな課題としてお話がございました。代表例としましては、5ページを見てい ただきますと、真ん中に昨年三月に政府・与党社会保障改革協議会で決められた「社会 保障改革大綱」がございますが、ここにおきましても、先ほどの平成12年年金改正法の 規定、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るというのを 具体的にどのように進めていくか、安定した財源確保の具体的方策と一体として鋭意検 討するとされたところでございます。これをまさにどういうふうにやっていくか、大き な課題でございます。  そこまでが経過でございますが、6ページで、どういう点をご議論いただくべきか、 何点か整理させていただいております。一つは、基礎年金の国庫負担割合引上げの趣旨 ですが、先ほどもご説明させていただきましたが、将来世代の年金保険料負担の引上げ が避けられない中で、それが余りにも高くならないよう、将来世代の保険料水準の上昇 を抑え、基礎年金制度の将来の安定を確保することであると整理されてきております が、この点をどう考えるか、こういった趣旨で考えて良いものかどうか。  二つ目が、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げるということは、あくまでも、 年金受給者各々の保険料納付実績に応じて年金が給付され、年金給付のうちの一定部分 に対して国庫負担がついてくるという構成でございます。したがって、あくまで国庫負 担は基礎年金給付費用の一部に充てられて、それがつけられるかどうかというのは、年 金受給者各々の保険料納付実績によって変わってくる。加入してないとか、滞納してい る期間分については、国庫負担分も含めて将来の年金給付はなされない。このこと自体 は三分の一から二分の一になっても変わりはないと思っています。  他方、前々回、前回でご議論いただいた、一般財源を財源とする全額税方式につきま しては、そういう基礎年金の国庫負担三分の一、二分の一という議論ではなくて、個々 人の保険料の納付実績に連動することなく給付が行われる仕組みである、ということに なりますと、基礎年金に対する国庫負担の引上げの程度の問題ではなく、この二つの間 には本質的な違いがあると考えますが、この辺をどうご議論いただくかどうかというの が二つ目。  三つ目、社会保険方式の公的年金制度につきましては中心は社会保険料負担です。そ う考えると、国庫負担の割合は二分の一が概ね上限となるのではないかということとと もに、三分の一から二分の一に引き上げる際に、いったん保険料負担を引き下げるかど うか。いずれにしても、現行の保険料水準は将来に向けて引き上げていかなければなら ない中で、国庫負担割合引き上げに伴い保険料を下げるのかどうかというご議論があろ うかと思っております。  最後ですが、引上げのための安定した財源をどう確保するか。まさに前回改正法でも 安定した財源を確保し、と書かれておりますが、そこをどう考えるかということがあろ うかと思います。どういうふうな財源を確保していくかは、社会保障、公的年金制度だ けではなくて、ほかの政策分野も含め、財政・税制全般にわたる問題として、広く国家 的見地から議論されるべきものであろうという中で、安定財源をどのように確保するか という議論があろうかと思っております。そこまでが国庫負担関係でございます。  二つ目で、年金課税を7ページ以降で書かせていただいております。これも簡潔にご 説明させていただきます。  現状の仕組みは、恐縮でございますが、資料1−3「年金に関する税制をめぐる動向 関係資料」を見ていただきますと、1ページ、現行の課税の仕組みでご説明しておりま す。各個々人に年金給付がなされたら、個人にとりますとそれは年金収入になります。 年金収入に対してどう課税がなされるかというと、公的年金等控除、老齢者控除、その 他の所得控除等々があって、それを差し引いた後に必要な課税額が決まってくるという 仕組みでございます。そのうち、特に議論になっているのは公的年金等控除で、箱の中 に書かれております。この仕組みは3ページに公的年金等控除の仕組みを線グラフで書 いてございます。その図を見ていただければおわかりのように、最低保障額が140万円な り70万円なりであって、そこからあとは何パーセントという形で定率で控除額が決まっ ていく。  恐縮ですが、資料1−3の1ページにお戻りいただきますと、課税最低限というのを 端の方につけております。所得税で見ていただきますと、現役世代の給与所得者と公的 年金受給者につきましては、ご覧なっていただけるように、かなり大きな課税最低限の 差があります。339 万なり354 万なりの年金受給者の課税最低限に比べて、現役世代の 方は大分低く、かなり大きな差があるのをどう受けとめるか。現行制度としてはこうい う仕組みになっておるところでございます。  恐縮ですが、資料1−1の7ページにお戻りいただきますと、仕組みが一つ目で書い ております。この仕組みは、従前は違う制度だったのですが、現行制度は昭和62年から スタートしております。どういう経過かというのも資料編の4ページから5ページに書 いてございますので、また後でお読みいただければと思います。63年以降から公的年金 等控除がスタートしたということで、資料編の4ページにその辺は書かせていただいて おります。  公的年金等控除の評価ですが、資料1−1の8ページの(3)で書いておりますが、いろ んなところから、世代間、世代内の公平を確保するために年金税制を考え直すべきでは ないかというご指摘がございます。(3)の最初の箱ですが、昨年六月の「今後の経済社会 の構造改革に関する基本方針」の中でも、世代間の公平や拠出・運用・給付の各段階を 通じた負担の適正化の観点から年金税制のあり方をもう一回検討していくべきだという ような指摘がされております。それはその他のところからも同じようなご指摘がござい ます。  9ページでございますが、これをご議論いただくときの論点をいくつか書いてござい ます。  一つは、先ほども少し申し上げましたが、現役世代との均衡をどう考えるか、どの程 度の年金水準を非課税とするか、公的年金収入のみの受給者を考えたときに、そこをど う考えるか。  二つ目は、公的年金等控除を変えていくこと自体は、今、受給しておられる方に対す る給付調整になります。まさに実質的な給付水準のあり方をもう一回考えていくことに なりますが、そうなったときにどのような層の方を念頭に置いてその議論をしていただ くか。ともかく現在公的年金を受給しておられる人全体を対象とするのか。そうではな く、一定額以上の年金を受給しておられる方、もしくは一定額以上の公的年金以外の収 入のある受給者を対象とするのか等々あろうかと思いますが、どのような方を念頭に置 くのか。  もう一つ、先ほど申しました中で、公的年金以外の収入がある方を念頭に置いて考え ていく場合、その収入の範囲をどう考えるか。ほかの一切の収入を考えるのか等々でご ざいます。  それからもう一つ、この検討をしていくときのスケジュールをどう考えるか。先ほど 申しましたような公的年金等控除を考え直していくことは、年金の給付水準自体を実質 的に変えていくことになりまして、まさに年金の負担と給付そのものでございますか ら、むしろ次期年金改革のスケジュールの中で議論・検討していくことが適当なのでは ないか、そこをどう考えるか等々論点がございます。  もう一つ、資料1−3の11ページをご覧になっていただきますと、諸外国の社会保障 給付に対する税等々がどうかかっているかを、対GDP比で大きく見ているような資料 を付けさせていただいております。公的年金に対する課税の機能は、まさに給付調整と いう機能だけでなくて、アメリカの例でご紹介いたしますと、公的年金給付に一定の課 税をかけることで費用の一部を回収するという機能もございます。デンマークやス ウェーデンなどはそういうことをかなりしている国ですが、いわば課税後の水準で実質 的に考えるとともに、そういった公的年金の費用回収機能を年金課税の中で行っている 国もある。そういう点の留意も必要ではないかということで、資料1−3の11ページを 付けさせていただいております。  10ページですが、年金課税を強化した場合、公的年金等控除を全部なくしたら一兆円 ぐらいの増収があるとされてございます。この時に公的年金の給付時の課税強化をしま すと、実質的な年金給付水準の引下げに相当するものですが、公的年金への課税によっ て国としての増収がされた分について、どのような扱いを考えるか。ちなみにアメリカ では、1983年年金改革におきまして、高額所得者に対して年金に課税し、その税収を年 金給付の財源にもう一回返してきて、そのことによって、現役世代の保険料を一部下げ るというような機能も果たしている扱いがございます。  最後ですが、これまでお話してきたものと違いまして、障害年金、遺族年金等々の非 課税措置をどう考えるかという議論がもう一つございます。10ページの下の(参考)に 書いておりますが、現行の年金法では、障害年金、遺族年金につきましては公租公課の 禁止規定がございます。これを障害年金、遺族年金だけこういう扱いをするのが良いの かどうか、特別扱いをする必要があるのかどうか。さらにそこをご議論いただく時に あっても、検討スケジュールについては、年金改正の中であわせてご議論していただく ことが大事なのではないかという指摘でございます。  11ページですが、ご参考までにということで、今申しました障害年金、遺族年金が公 租公課を禁止されていることから、介護保険料が取れないというようなご指摘がござい ます。全国市長会、町村会等々から、公的年金から介護保険の保険料を特別徴収(天引 き)しているけれども、年金法上の公租公課禁止規定があるから、障害年金、遺族年金 の受給者たる高齢者(65歳以上)から特別徴収(天引き)ができないということについ て、全国市長会、町村会、保険料を取る保険者の立場としての市町村から、そこを特別 徴収(天引き)の対象とするように変えてくれないかというようなご要望もあるところ です。ご紹介させていただきます。  とりあえず簡潔で恐縮でございますが、1−1から1−3までざっとご説明させてい ただきました。以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。適宜、参考資料はご覧いただきながらということにいたし ます。ただ今、実は大きく二つのテーマを扱われておりまして、両方一緒に扱うのはや や無茶かなという気がしないでもありませんけれども、時間の都合がありまして、あと 二時間近くございますが、二つのテーマの仕切り、国庫負担の話と年金税制の話は余り はっきりとは仕切らずに、それぞれ少し自由にご議論していただきたいと思います。  それでは、本日それぞれこれにつきまして、わざわざレポートを提出いただきました 委員の方から、お手元に書いたものがございますので、五分ほどということで、なるべ く要点を絞ってご説明をいただき、一わたりご説明いただきましてから、委員相互の議 論をしていきたい。私もその中に加わらせていただきます。それでは岡本委員、神代委 員、堀委員、山崎委員、今日、席上配付になりました大澤委員は一番最後ということで お願いいたします。それでは、岡本委員から、よろしくお願いいたします。 ○ 岡本委員  ペーパーの提出が大変遅れまして、事務局の皆さん方に多大なご迷惑をおかけいたし まて失礼いたしました。おわび申し上げます。  今日は矢野委員と連名になっておりますが、今日のレポートは、矢野委員と私と意見 の一致するところだけをまとめたという格好のレポートになっております。したがいま して、後の議論は私個人という立場で議論に参加させていただくということでよろしく お願いしたいと思います。  内容でございますが、簡単でございますので読ませていただきますが、一枚目のとこ ろにつきましては、前回私が個人の名前で出させていただきましたペーパーとほとんど 重複しておりますが、年金税制のところにつきましては、新しいテーマでもございます ので、今日初めてお話しをさせていただくということでご理解をちょうだいしたいと思 います。それでは、また後でご議論いただくということで読ませていただきますのでよ ろしくお願いいたします。  「公的年金制度に対する国庫負担と年金税制のあり方について」。「1.基礎年金制 度の国庫負担のあり方について」。  基礎年金の国庫負担のあり方を考えるにあたっては、以下の諸点を考慮する必要があ る。四点並べておりますが、これは前回、私が申し上げたのと全く同じでございますの で、かえって失礼するかと思いますが、第一に、基礎年金が全国民の老後の基礎的生活 の一部を等しく保障する役割があること。  第二に、経済のグローバル化に伴うわが国経済を取り巻く厳しい環境、雇用形態の多 様化による従来型の雇用システムの変化などを勘案すると、保険料の賦課ベースが長期 的かつ安定的に伸びることは期待しがたく、この場でもご報告がございました、生産年 齢人口比率の低下を併せ考えると、現役世代の所得に対する直接的な負担だけで財源を 賄い続けることは大変問題が多くて、経済社会の活力を大きく損ないかねないと心配さ れるところであります。  第三に、年金の給付方法は全国民共通でございますが、保険料の負担方式がそれぞれ 職業によって異なっておりますことに加えまして、現在給付費の三分の一に対して国庫 負担が投入されておりますので、社会保険方式とは称しておりますけれども、給付と負 担の関係が曖昧となって非常にわかりにくく、また一部不公平ではないか、こういう意 見が層によってはあるという仕組みになっているのが現状であろうかと思います。それ で直す必要があるのではないかと思っております。  第四に、国民の間に制度に対します不信感が高まっておりまして、これは不信感と言 いますか不安感と言いましょうか、両方あると思いますが、特に第1号被保険者に相当 数の未納者・未加入者が存在しています。これは厚生労働省でも随分とご努力いただい て、その数を減らすように懸命に取り組んでおられることは、十分私は承知しておりま すが、制度の本来の姿である国民皆年金とは現在なっていないのではないかと思われま す。  以上を踏まえまして、現行制度を公平でわかりやすいと言いますか、国民に納得され やすいという仕組みに変えていくことが先決でございまして、国庫負担のあり方につき ましても、現在の仕組みを前提に考えるのではなくて、制度そのものの見直しを視野に 入れた幅広い議論を行っていくべきでなかろうかと思っております。  そういう意味で、基礎年金の財源のあり方としましては、国民が広く薄く負担する間 接税方式に移行していくのが良いのではないか。是非とも議論したいと思っておりま す。国庫負担の二分の一の引上げもそういう税方式への移行過程といいますか、移行プ ロセスの一つとして位置付けていくというようなことではいかがなものかと思っており ます。  次に、現在の厳しい経済情勢を考えると、国庫負担引上げの財源を安易に増税に求め ることは厳に慎むべきであることは承知しております。前回の部会でも、今後国債等の 増発ができないというような厳しい状況のご指摘もありまして、現在のそういう財政状 況を考えますと、私はそのとおりである思いますが、それであるが故に、私は、今不要 不急な歳出削減を今後5年間、10年間あるいは20年かけて、政策努力、政治努力をする ことによって歳出の合理化によって財源を捻出していくことを基本とすべきではなかろ うかと思っております。  ここには書いておりませんが、高齢化で社会保障費がどんどんと必要になってくると いう状況であればあるほど、そういう社会の構造変化に対して財政の支出内容、国庫の 支出内容というものを変えていく必要があると。そういう中で歳出の削減というものも 努力するというようなことが、国の形を決める上で必要ではなかろうかと思っておるわ けであります。その上で、中長期的に持続可能な制度を構築していく観点から、安定し た財源を確保するために、国民が年金受給者も含めて広く負担する消費税を活用してい くというのも一つの方法ではなかろうかと思っております。  国庫負担の1/2 の引上げ後、さらに間接税方式のウエイトを高めていくに当たりまし ては、基礎年金の給付水準の見直しと言いますか、現行水準で良いのかどうか、こうい うことも含めまして、制度の抜本的な改革を議論していきたい。あくまでも基礎年金と いうのは老後の基礎的な生活の一部を等しく保障すると、こういう立場で水準の見直し も議論してはどうかと思っております。  なお、国庫負担の二分の一への引上げ時の社会保険料の取扱いにつきましては、中長 期的に見て現役世代に対して過度な負担を求めることのない制度を構築していくことを 前提に、給付水準のあり方をはじめとする公的年金制度全体の抜本的な改革と整合的な 議論をしていきたいと思っております。  前回申し上げたことと特段、今回新しくお話しさせてもらうことはございません。  「2.年金税制のあり方について」。  公的年金等の受給者の課税最低限が現役世代よりも著しく高くなっていることは、世 代間における課税の公平性を確保する観点から問題があると一般論で私は考えておりま す。既に1,400兆円の国民の預金があるという中で、その過半は高齢者であると言われて おりまして、そういう意味で前回申し上げたように、いろんな人がいらっしゃいます が、一般論として高齢者なり年金受給者が弱者であるというふうな位置付けはしていな いわけでございます。年金税制につきましては、拠出時と運用時は非課税というのが税 の原則ではなかろうか。それで受給時課税の原則を徹底し、現役世代の課税最低限を上 回らない水準にまで課税最低限を引き下げるのが良いのではないかと思っております。  また、課税最低限見直しに当たりましては、給与所得控除が給与所得者の必要経費の 概算控除としての性格を有していると、こう理解しておりますが、先ほど事務局から改 正の経緯のご説明ございましたように、私は、公的年金等控除は年金受給者に対する税 制優遇の性格を有しており、この税制優遇というのは弱者であり、相対的に優遇すべき である、そういう価値観が前提にあるという性格でなかろうかと思っておりますが、私 は現在の現状を考えますと、これは縮小・廃止すべきであると思っております。  ただ、これは一般原則で申し上げていることでありまして、一億人の国民の中にはい ろんな方がいらっしゃいますから、特別措置という格好で非課税の議論があっても、当 然私は否定すべきではないと思っておりますので付け加えておきます。  公的年金のスリム化が避けられない状況の中で、国民の老後の所得の確保を図るため には、今後、前回も申し上げました社会的インフラとして私的年金の一層の充実に向 け、税制面からの支援を行うことが求められますし、また、特別法人税につきまして は、私は性格上、運用時非課税の原則から廃止すべきであろう。  なお、年金税制の見直しの時期については、公的年金制度改革だけでなく、現在、政 府・与党で検討されております税制のいろんな抜本的な改革のスケジュールと整合性を 持たせるような議論を十分していくべきであると思っております。  以上でございます。ありがとうございました。 ○ 宮島部会長  それでは、続きまして神代委員、お願いいたします。 ○ 神代部会長代理  資料3に意見が提出してありますから見ていただければ良いのですが、要点だけ少し 説明させていただきます。  まず基本的な考え方として、この出生率の低下が予想以上に激しいということと、二 行目の括弧の中に「人口政策」と書きましたが「少子化政策」とご訂正をいただきたい と思いますが、私は総理のご指示もありますから、少子化対策をやることに賛成ですけ れども、ただ、効果が出てくるのはかなり時間がかかりますから、今回の年金改正にす ぐに間に合う性質のものでもないということもあります。出生率の低下の影響、マクロ 経済のグローバル化に伴う国内需要の海外流出、そういう中で前回出された名目国民所 得の伸びを当面2%程度と想定していますが、この想定の水準に戻るかどうか、そのも のが非常に危惧されているわけで、そうした二つのことを前提にして、世代間の公平を 従来以上に重視をしていかなければいけない。世代間の公平というのは単なる損得勘定 ではありませんので、そういう意味で使う方もいらっしゃいますが、私の場合はそうい う狭い損得の話とは違ってもう少し広い立場で考えているつもりであります。  前回の資料の中にも出ておりましたが、そういうかなり楽観的と思えるような推定に 基づいても、2025年度にかけて名目国民所得が1.5 倍しか伸びない中で、社会保障費全 体は2.1 倍、年金は1.9 倍に伸びることが予想されるわけですから、常識的に考えれ ば、相当に給付の抑制をせざるを得ないかと思います。特にこれも前回出されておる資 料で見ますと、平成11年度の財政再計算時には総報酬ベースで19.8%という、20%を切 る見通しでやっていたものが、新しい人口推計の下では国庫負担二分の一で22.4%、三 分の一ですと、24.8%という大変な負担になるわけですから、私は前回の議論とのコン システンシーから言っても、このような高負担は将来世代にとっては非常に困難なもの ではないかと危惧いたします。  したがって、単に年金だけではないわけですが、将来世代の年金保険料その他の社会 保険料、これは税に振り替えても広い意味の税負担としては同じことですから、将来世 代に対する広義の税負担全体を負担可能な限度に抑えるために、給付システムの相当思 い切った改革をせざるを得ない。その際にスウェーデンの改革等、これは次回以降議論 されると思いますが、参考にして考えるべきだということです。  そういう趣旨で書いておりますが、年金の財源については、ただいま岡本委員からご 説明がありましたが、私は税方式は適当でないと考えております。その理由は既に前回 提出された資料の中でるる述べられているところでありまして、目的消費税に切り替え ることは適当でないと考えます。  基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる問題は、実は前回の審議会では三分の一 で答申したのに、政治的な判断で二分の一ということが先ほどご説明あったように修正 をされたわけですが、その所要財源2兆5,000 億円については、いまだに目途がついて ない。仮に消費税でやるとしますと、全部が国税収入になるわけではありませんので、 大体アバウトで2%近い消費税の引上げをしないとできないわけですが、私は目的消費 税論そのものに余り賛成でありませんので、財源として消費税を採ることの妥当性にか なり懐疑的であります。  そういう財源の見通しがなかなかつかない中で、とにかく現行でも三分の一は国庫負 担しているわけですが、その理由は基本的には低所得者を含む国民皆年金の制度を我が 国は採っておりますので、保険料を免除された低所得者に対しても一定限度の基礎年金 を払うことになっておりますから、それに必要な財源を賄うというのが本来基本的な目 的であったと思います。それをあえて二分の一に引き上げるのは、最終保険料率を20% 以内に抑えるという政治的な判断に基づいた行われたものであったと思います。  そういう財源の手当がつかない中で、財源の一部として年金税制を見直したらどうか ということが考えられるわけでありますが、これについては従来の議論の経過を見直し てみる必要があると思いますが、昭和61年の政府税調の答申等があるわけですが、当時 はまだ合計特殊出生率が1.76という、今日から見ると非常に高い水準にあったために見 通しを誤ったのではないかというふうに感じます。ただ、私は基本的には先ほど岡本委 員からもご指摘があったように、こういう中でありますから、世代間の公平のためにも 給与所得と同水準に年金税制を下げるべきだと思いますが、その際に2ページの最後の ところに書いてありますように、所得階層別に差をつけて、かつ経過措置を置いて実施 することが望ましいかと考えます。  ただ、そのようにいたしましても、非常に低年金の人が多いですから、年金税制の改 正によってもたらされる税収は、全体としては大した税収にならなくて、5,000 億円も いけば良いのかなという感じがいたしますのて、国庫負担の二分の一の引上げに必要な 財源には及ばない。あとどうするかという問題をさらに考える必要がありますが、これ は私の余り専門の領域ではないので今日は控えておきます。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。続きまして、堀委員。 ○ 堀委員  1ページが国庫負担について、2ページが年金税制について述べております。  最初の国庫負担についてですが、将来の保険料を負担可能な範囲におさめるために は、国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げるのが望ましいと考えております。  引上げの財源ですが、年金税制の適正化と消費税引き上げによる増税分を充てるのが 望ましいと考えております。  保険料額・率につきましては、国庫負担率引上げによる保険料引下げの要請と、段階 保険料制復活による保険料引上げの要請を総合勘案して定めるのが妥当ではないかと思 います。  「(参考)」のところですが、社会保険への国庫負担の意義と諸外国の動きを若干書 いてあります。社会保険へということで必ずしも年金保険に限らない。また、理論的に どういうことが考えられるかを書いています。  社会保険の国庫負担については、極端な意見では全部税にしろという意見、高齢者の 社会保障については税でやれという意見、あるいは国家責任の考えからできるだけ税を 入れろ、というような議論がある一方で、少なくとも若者の社会保険については給付と 負担を明確化するために国庫負担を入れるべきではない、といった両極端の意見があり ます。社会保険への国庫負担については、意義がないわけではないというふうに私は思 います。  そこに(1)から(3)まで、財政的理由、政治的理由、それから国家責任の観点から国庫 負担の理由が書いてあります。国家責任の観点から国庫負担すべきだということがしば しば言われるわけですが、これについては私は若干疑問に思っております。  諸外国における社会保険への国庫負担ですけれども、社会保険に国庫負担しない国が あります。それはそこに書いてありますように、保険運営の労使自治・自主管理とかそ ういったことが背景にあります。ただ、最近では社会保険への国庫負担を導入・強化す る動きがありますが、これは保険料負担の増大による国際競争力の低下を防止するため です。ただし、日本の保険料負担は、こういった国と比べるとはるかに低いという現状 を踏まえる必要があると思います。  2ページの年金税制ですが、公的年金等控除を縮減する必要がある理由を、最初の 「*」で五点ほど書いております。  (1)はいわゆる入口・出口論で、入口が非課税なので出口で課税する必要があるという ことです。賦課方式の下で入口・出口論が成立するのかどうかという問題があると思い ますが、給付段階では課税するのが望ましいと思っています。  (2)ですけれども、給与所得等他の所得と比べて優遇しすぎているということです。こ れは単に若い世代との比較ということではなくて、高齢者であっても給与所得者と年金 所得者で課税最低限の額が違うという、同じ世代の中での不公平もある。  (3)は、社会保障の他の制度に悪影響を与えているということです。先ほど介護保険に ついての説明がありましたけれども、それ以外の制度にも悪影響を及ぼしている。  (4)と(5)ですが、現在の高齢者はかつての高齢者と違って、所得・資産が多いという ことです。  二番目の「*」ですけれども、激変緩和策として、公的年金等控除額を徐々に縮減す ることも可能ではないか。(2)ですが、縮減に伴う負担の軽減策として、老年者控除を引 上げることも可能ではないかということです。老年者控除は高齢者すべてについて控除 するということで、この仕組みは公平なのですが、高齢者であっても年金所得だけを優 遇する理由は余りない。優遇するとすれば老年者控除ということではないか。ただ、所 得控除は逆進的であるという問題がありますので、こういったものは税額控除にしてい く必要があるのではないか。  (3)ですが、年金についても給与所得控除と同じにしたらどうかという意見もあるので すが、先ほど岡本委員からもありましたように、給与所得には経費の概算控除という意 味があるのですが、年金所得にはない。  遺族年金・障害年金についても基本的には公的年金等控除と同じようなことが言えま す。要するに年金所得という形で優遇する必要は必ずしもない。障害者、遺族というこ とで特別の出費要因がある場合には、年金についての控除ではなくて、障害者控除であ るとか、寡婦控除という形で考慮すれば足りるのではないか。  ただ、一般的に社会保障の給付というのは、昔から恩給の時代から非課税で、老齢年 金だけ特例的に課税するということになっていた。現在でもほとんどすべての社会保障 法で、給付は非課税となっています。しかし、現在の遺族年金・障害年金は老齢年金と 区別する必要はないと思っています。  企業年金について若干書いてあります。特に一番下の「・」ですが、公的年金等控除 を縮減すると、現在もある退職金一時金との課税の不均衡が拡大するという問題が生じ ますので、退職一時金課税を是正する必要があるのではないかということを述べてあり ます。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは次は山崎委員でございますが、よろしくお願いし ます。 ○ 山崎委員  お手元のペーパーに基づいてお話しします。堀委員のペーパーにもありましたけれど も、私自身は社会保険の原点は、地域保険であれば住民自治、職域保険であれば労使自 治を基本にする制度だと思っておりますから、それに対する国庫負担等の公費が入るこ とについては必ずしも積極的になれないものでございます。ただ、現実にはいろんな理 由から国庫負担が入っている。それを前提にしてお話ししたいと思うわけでございます が、我が国の場合にはいずれにしましても幅広く社会保険の適用をし、そして一定の給 付を保障するための、政策的な配慮から国庫負担が行われていると見ております。  ただ、個別制度毎に見ますと、医療保険の場合には割とすっきりしていて、共済組合 なり健康保険組合という自立可能な保険集団というものを基準にして、それよりも財政 力が劣る集団にそれなりの国庫負担を配分しているというわけでございます。  ところが全国単一あるいは共通の制度であります雇用保険、基礎年金、老人医療、介 護保険では、定率で国庫負担が行われ、結果的に一律に保険料が軽減されているという わけですが、これをどのように考えるかということになりますと、本来は一定の保険料 負担能力を前提にして成立する保険システムの中に、低所得者を含めて幅広く包括した ということに伴う政策コストというふうに理解できるかと思います。  今後の基礎年金における国庫負担の在り方ですけれども、先ほど言いましたように、 医療保険の場合の国庫負担は割と測定可能だと思います。つまり財政力の格差をつかむ ことが可能だと思うのですが、一本の共通の制度に国庫負担を入れる場合に、その中に 低所得者が入っているからだと言いましても、具体的に低所得者の負担能力を積み上げ て、現在で言えば三分の一入っているわけでもないわけでして、神代先生の話にもあり ましたけれども、非常に曖昧だと思うわけでございまして、今後基礎年金の国庫負担割 合を上げるということになりますと、国民の理解を得る上で、低所得者個人に着目して 国庫負担をつけるという要素を組み込んではどうかというふうに考えております。  「ちなみに」と書いておりますが、介護保険では生活保護の被保護者の保険料につい ては生活扶助費の加算で対応しておりますし、今提案されています健保法の改正では、 老人医療費に係る公費負担を3割から5割に引き上げる一方で、その対象者を一定所得 以下の高齢者に限定しているわけで、一律にはつけないという改正案になっておりま す。いずれも、基礎年金における国庫負担の配分方法を考える上でヒントになると思い ます。  「例えば」として書いておりますが、第1号被保険者のうちの保険料免除対象者や第 2号被保険者のうちの低賃金労働者、これは現実に低賃金の人がおりますが、今後パー ト労働者への適用拡大をするということになるとさらに増えると考えておりますが、そ ういった低所得者について保険料の拠出段階や年金の給付段階で、国庫負担を傾斜的に 配分するということが考えられるのではないかということでございます。  それから次のページですが、当面国庫負担割合を引き上げることが課題になっている わけですが、将来世代の保険料が今後相当に上がっていくかなりの部分は、過去期間分 の債務の償却に充てられる。つまりこれまで十分に保険料を負担してこなかった世代の 積み残し分を将来世代がかぶるという格好になっているわけでして、仮に過去分が清算 されたとすると、例えば厚生年金の場合には既に将来期間分の給付に要する保険料とし ては相当なものを現実に負担しているわけでございまして、国民年金については年金局 の数理リポートにもはっきり出てきておりませんが、国民年金でも相当そういう要素が あるわけでございまして、過去期間分の債務がなければ、保険料負担増は大幅に緩和さ れるわけであります。  したがって、国庫負担割合の引上げに当たっては、まず過去期間分の債務の償却に重 点を置いて配分するという観点を重視すべきではないかと思います。そうすることに よって財政規律を回復するという意味もあるのではないかと思います。つまり将来期間 分についてはきちんと保険料で対応する。過去分についてはある程度国庫負担を重点的 に配分するということであります。ここには書いておりませんが、その場合の国庫負担 の財源ですが、結局過去分の債務の償却に相当部分充てることになりますと、高齢者も 相当な財源を負担していただくのが妥当ではないかということでございます。つまり今 の高齢者が負担してこなかった分ということであります。したがって、年金課税の見直 しによる財源、あるいは相続税というのも有力な財源だと思いますし、仮に消費税を引 き上げるということになりますと、現在の消費税と物価スライド制との関係で言えば、 消費税が上がり、物価が上がれば年金が改定されるということで、高齢者の相当部分は 消費税の負担増を免れる構造になっておりますから、したがって消費税財源をあてにす るのであれば、消費税の引上げによる物価上昇分は年金スライドの対象から一部又は全 部控除するといった対応が必要だと思います。  次に年金税制のあり方ですが、公的年金等控除というのは見直すべきだと思います。 当面給与所得控除程度にまでは引き下げる必要があると思いますが、先ほど来のご意見 にもありますように、サラリーマンの控除と高齢者の控除、おそらくそれぞれの控除水 準があるにしても、別途考えなければいけないのではないかと思います。  それから、一部でありますが、給与所得があり、かつ年金所得がある方については、 それぞれ控除がついているわけで、これは余りにも過剰な優遇措置ではないかと思いま す。主たる所得を決めていただいて一本に整理すべきである。そして両所得を合算して 累進課税すべきだと思います。「その場合には」と言っておりますが、今後の議論の テーマになると思いますが、場合によれば在老は廃止する、あるいは大幅に支給制限を 緩和して、そしてそのかわり年金税制で、相当な所得がある方には重い課税をするとい うことも考えられるのではないか。  それから、遺族年金・障害年金の非課税ですが、堀委員もお話になりましたように、 基本的に社会保障は非課税ということになっております。したがって医療保険の傷病手 当金、出産手当金、雇用保険の失業給付等々とのバランスがありますから、有子遺族と 障害者については非課税でも良いと思いますが、高齢者の遺族年金は基本的に配偶者の 老齢年金が転化したものですから、老齢年金並びで考えて良いと思います。  それから、年金課税を強化した場合の増収分は、年金の財源に充てるとか、育児支援 に充てていただきたいと思います。長くなりましたけれども、以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。それでは最後に大澤委員ですが、よろしくお願いします。 ○ 大澤委員  後から配られました資料6でございます。ちょっと印刷がかすれていてお見苦しく申 し訳ありません。  今まで堀委員や山崎委員がおっしゃったこととほとんど重なります。表現の仕方が 違っているということだけですので簡潔に申し上げたいと思うのですけれども、一般に 社会保険に国庫負担を行う意義については強制加入であることが大きいかと思います。 強制加入というのは保険対象事故の発生確率が低い人にも加入を強制するということ で、例えば医療保険から見ますと、頑健で医者知らずの人も入って高い保険料を払うと いうことです。頑健で医者知らずというようなことはある程度は予期もできるし、奨励 もできることですから、そういうクリームだけすくい取って独自保険を作ろうという誘 因はあるわけです。  保険者から見ると「バッド・リスク」の加入を拒否できなくて、保険料率もそれを反 映して高いものになる。そういうところに国庫負担をやるというのは、保険原理よりも 市民の連帯を重視して、その制度的な表現として公費負担をするということだと思いま すから、保険料率を一律軽減する方式がなじむと思います。ただし、例えば失業保険な どで急に大量失業が出た場合に保険料収入が給付費をカバーしない、こういう場合の国 庫負担も見られるわけですが、これは保険料率の急変を避けて制度を安定化させるとい う意味があろうかと思います。  これらは、いずれも短期保険について言えることでございまして、年金保険の場合に は、保険財政から見たクリームというのは、例えば高所得で継続就業して、退職後は遺 族を残さずすぐ死ぬ人であるわけですから、こういう類型というのは予期もできなけれ ば、奨励もできないので、クリーム・スキミングをする誘因はないわけです。  そうすると保険料率を軽減するという方式で、被保険者全体に国庫負担を均てんする 必要は必ずしもない。むしろ、国庫負担の意義は、一つは早期成熟化で制度定着を促す ということだと思いますし、二番目には制度の持続可能性を担保する。そして三番目に 低所得層への対応ということだと思います。  この早期成熟化については、完全積立方式であっても、その年金について国庫負担が 行われていたことについての理由として理解できるかと思います。しかし、修正積立方 式や賦課方式となりますと、この理由としては(2)の保険料率の変動をならすことで世代 間連帯を担保する、というところにあろうかと思います。この点が近年の国庫負担引上 げ論で主たる理由とされてきたと思います。しかし、保険料率を調整するということ は、何も国庫負担を入れるということでなく他の方法でも可能である。例えば積立金を 取り崩すということもあり得るわけですから、これだけではなかろう。  そうなりますと、(3)の低所得層への対応。これは今日の資料1−1の4ページから5 ページに出てまいります「21世紀に向けての社会保障」、「社会保障構造の在り方を考 える有識者会議報告」に見られる低所得層への対応ということで、今後はむしろこの意 義が重要になってくるのではないかと考えます。  それから、三番目の基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に上げるに際しての 安定した財源ですけれども、これも皆様おっしゃったことと重なります。ちょっと角度 が違うのは、単に高所得、低所得というだけではなくて、もう少し世帯類型というもの をきめ細かく見る必要がある。消費性向が高い世帯というのは一体どういう世帯である かというと、比較的低所得で子どもが多い世帯。重なりますけれども、母子世帯、そし て何よりも高齢無職世帯というのは消費性向が200 %を超えております。こういう人た ちが消費税率が上がれば、不当にと言いますか、余りにも大きなしわ寄せを受けるわけ でして、比較的低所得で子どもを育てている世帯に対して負担をしわ寄せするというの は、少子高齢化の下で安定した財源を考えなければいけないと言っているときに大変矛 盾に満ちたものではないかと思う次第です。  最後に、年金に対する課税ですけれども、これも皆さんおっしゃったことと重なりま す。何より注意したいのは、高齢者は現役よりも非常に多様な所得構成を持っていて、 なおかつ所得の分布がばらけているということでして、しばしば見られる高齢者は年金 生活者で、勤労所得者というのは現役世代だというような単純な図式というのは適当で ない。同じ所得階層の内部でも年金収入と給与収入の組み合わせの在り方によって所得 税負担というのは異なるわけでして、これはいわゆる水平的公平の原則に反するものが 見られます。また、所得水準が低い人、かつ年金収入が低くて、勤労収入に依存しなけ ればならない人ほど税負担率が高くなっているという実態があるのではないか。これは 垂直的公平の原則からも問題だと思います。  方向性としては、山崎委員が仰った、合算課税というのでしょうか、そういうことが 言えますけれども、単に制度の特徴、制度で税率がこうなっているとか、控除がこう なっているとかということではなくて、所得の階層や世帯類型というところをきめ細か く見て、家計に対する負担の帰着というところまで見てやらないと不当なことが起こる のではないか。それはとりわけ女性、母子世帯や高齢無職世帯というのはほとんど女性 であるわけですから、単に所得階層ということだけではなく、ジェンダーというところ にも敏感な制度改革を考えるべきだというふうに申し上げたいと思います。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。岡本委員の場合には矢野委員との共同ということでござい ますけれども、五人からご報告いただきまして、今あわせて議論していただきました。  国庫負担と税制の問題というのは、性格が両方つながる面もありますけれども、同じ 議論をするのは少し難しい面もあるかもしれません。ただし、国庫負担の問題は、前回 の議論とある意味では重複している面がございまして、大体論調も今お聞きしておりま して、ある程度は承知はいたしました。  おそらく税方式を中心にお考えの方は、当面附則に書かれている三分の一から二分の 一へということは、そこに至るプロセスとして位置付けることになるのだろうと思いま すし、他の方のご議論は、社会保険という仕組みの中での国庫負担と言いますか、その 給付財源に他の税収財源等を投入する根拠は何かということで、今ご議論がございまし て、いろいろ表現はあったと思いますが、おそらく皆保険制度を維持するための政策コ ストと、広い意味で言えば、そういうようなことで皆さんのご議論があったと思いま す。  この後で議論していただきますが、一、二点お聞きしたいことは、一つは、山崎委員 が過去期間債務の償却を中心に考えるということを国庫負担の議論として述べられまし たけれども、それについて場合によっては後で少しご議論していただきたいと私は思っ ております。  年金税制につきましては、この議論は大体趣旨としては、皆さんお話されたとおりだ ろうと思いますけれども、これは先ほど事務局から説明がありましたように、実はこの 持っている意味は極めて大きいと思っております。一つは既裁定者を含めて実質的な給 付調整をやる仕組みが入ってくるということと、もう一つは、山崎委員からありました ように、これは在職老齢年金の仕組みが事実上これで必要なくなるとか、制度上の問題 にも波及してくる面が場合によってはございまして、その影響というか広がりは税収規 模をどう見積もるかという以外にもかなり大きな点があるだろうと私は思っておりま す。  その他いろいろございますけれども、とりあえず今ご報告いただきました以外の方 で、今のペーパーの説明について何かご質問なり、ご議論があれば、まずそれを伺いた い。杉山委員、どうぞ。 ○杉山委員  若い世代というか、子育て現役世代ということで、いろいろ発言をさせていただきた いと思っているのですけれども、例えば消費税を引き上げるというような話が出ました ときに、育児ですとか教育にかかる負担はご存知のように相当なものがございまして、 それが子どもを産み育てていることに対する負担・不安にもつながっている部分があり ます。もし消費税を引き上げるのであれば、例えば育児ですとか教育にかかる商品や サービスなど子どもにかかる消費税はすべて据え置いておくというような配慮をしてい ただければと思います。事務的な面倒が広がるばかりかもしれないのですが、「こう いったところでも国は子育てを支援しているのだよ」というようなメッセージが伝わる ようなものがあっても良いのではないかと思います。  また、年金課税の方ですけれども、資料のグラフなどを見て、こんなに高齢者の方々 に優遇制度があったのかと改めて驚いたのですが、せめてこの不況下に賃金も下がる心 配はあっても上がる期待は持てないなかで、必死で働いて、子どもを養って、かつ年金 という形で高齢者の皆さんに仕送りをしている若い世代が不公平感を持たないような制 度に見直していくことは必要ではないかと思います。 当然、大澤先生ですとか各先生が仰っておられたように、きめ細かく見ていくことはと ても大事だと思います。国民生活白書などのデータなど見ますと、収入はなくても資産 や貯金を相当お持ちの高齢の方もおいでになるようで、高齢者間で随分格差が広がって いるというようなこともあります。そのあたりをもう一度よく調べて、どういう課税の 仕方が良いのかというような議論はまた必要かと思います。 そして、課税をした増収分なのですけれども、山崎先生も仰っいましたけれども、ぜひ 育児等の次世代育成支援に回していただけないだろうかというふうに思っております。  昨日の日経新聞にも、年金制度を使った子育て支援のことが出ていましたが、女性が 仕事を辞めて子育てに専念すると年金の負担が免除されるといった、仕事を続けるか辞 めるかといった親の選択で差が出るような、女性と子どもを一体化するような支援の在 り方はやめていただきたい。本当に「子育て支援」というのであれば、子どもに対して どういう支援を行うかというような観点からお考えをいただければというふうに思って おります。  それにはやはり、女性が仕事も子育てもできる社会、子育て中でも働きやすい社会の 実現を考えて行きたいと思います。先ほどもお話がありました神代先生が座長をしてい らっしゃいます働き方の研究会の方も、傍聴させていただいたのですけれども、その時 に、「支え手を増やすということは、その人たちの年金権を確立することだ」といった お話もございました。今のような年金権のない「パートタイマー」ではなく、自分たち も厚生年金をもらう、そして払うというような制度が必要かと思います。それには、女 性が能力いっぱい働けて、子育てもできる職場環境の整備が一方で必要。そして、子ど もは子どもでちゃんと支援するといった方向性が必要になるのではないかというふうに 思っております。以上です。 ○岡本委員  今の話、大切なご指摘です。  それから、私、大澤委員のペーパーで、消費税の問題が大きい、逆進性があるとい う、ここの三行のご指摘はまさにこのとおりであると考えております。しかし、現在の 基礎年金を硬直的というか前提に考えれば、こういうことであるのですけれども、これ からの議論は、10年、20年のレンジで基礎年金とはいかなるものか、基礎年金はどうす るのかという議論も、私は今回時間のある範囲でやるべきだと思いますから、そういう 中で、基礎年金の性格というものについて、あるいは支給対象のいろんなバリエーショ ンというもの、ダイバーシフィケーションを考えながら、もし所得税という問題につい てさらに議論を深めるのであれば、言われたこういう比較、低所得者の問題、その他 諸々ご指摘の問題についてどうするかというのを、年金の制度といいますか、年金の仕 組みとして議論していくことは不可欠だと考えております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございます。他に特に報告に対するご議論、ご意見ございますでしょう か。 ○ 大澤委員  発言もしておいて質問もしたいのですけれども、山崎さんは具体的な制度設計まで踏 み込んでくださっていますので、1ページ目の下の下線部、ここには1号と2号は出て くるのですが、3号は一体どうするのか。低所得のところに集中して国庫負担を入れて いくというときに、第3号をどうしていくかということを抜きには問題は解決しないと 思うのですけれども、どうお考えなのか。 ○ 山崎委員  前回のペーパーにもありますように、またいずれテーマに取り上げられると思います が、女性と年金についてはある程度結論を出さなければいけないのだろうと思いますけ れども、私自身は考え方としては所得分割による個人単位化。ただ、税制がそのように すぐつき合ってくれるかどうかということになりますと、年金独自で実質所得分割的な 仕組みを次の改正でできたら入れていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょ うか。 ○ 宮島部会長  それは年金制度そのものの議論として、おそらく出てくるものだと思いますけれど も。他に。若杉委員どうぞ。 ○ 若杉委員  私の意見は前回メモで出させていただいたのですが、今日、皆さんの意見と関連させ て言いますと、神代委員と山崎委員の意見に近いと思うのですが、改めて確認させてい ただきます。  まず公的年金の財源ですけれども、基本的には保険料方式ということで、保険料免除 等の低所得者に対しては、そういう部分に対する扶助があるので、基礎年金部分の国庫 負担が必要であるという考え方に賛成したいと思います。そういう意味で言いますと、 国庫負担ですけれども、保険料の負担を抑えるために国庫負担を引き上げるという考え 方には反対でございます。  それから、本質的な問題は、国民の多くが健康で長生きするようになったということ が大きな、一つの問題ですから、受給年齢の引上げということを改めて考える必要があ るのではないか。例えば70歳までにして、どうしても必要がある人にはもっと早くから 支給するとか、そういうふうにすべきではないかというのが一つです。  それから、社会も発達した国であるわけですから、自助努力を大きくすべきで、給付 水準の引上げというような形で公的年金の縮小というのをさらに考える必要があるので はないかと思うのです。そういう意味で言いますと、確か神代委員のご意見にもありま したように、公的年金の制度の在り方、基本的なことを議論すべきではないかと思いま す。  あと、年金の課税のことについては、これも皆さんと同じですけれども、現役世代の 所得と同じように扱うべきだと考えております。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 翁委員  国庫負担に関しましても年金課税に関しましても、いずれも経済的弱者でない高齢者 に一定の負担を求める形で所得再分配政策を行っていくという方向で、もう一度これを 検討してみるという方向に私も賛成です。  一つ山崎先生にお伺いしたいのですが、過去期間分の債務の償却というのは、基礎年 金に関しまして大体どのぐらいのボリュームを考えておられるのでしょうか。 ○ 山崎委員  大体の勘ではつかめますが、それは年金数理レポートにも出ておりませんから、正確 さが大事なことですから、坂本課長にお願いします。 ○ 坂本数理課長  11年財政再計算の結果でございますけれども、厚生年金の二階の部分で大体330兆円の 未積立債務があるというふうに推定されております。この場合、予定利率が4%と仮定 されておりますので、これを利息分だけ永久に賄っていくといたしますと、単年度14兆 円ぐらいの規模の財源が要るということになろうかと思います。 ○ 山崎委員  今のは厚生年金の過去期間分の債務という話ですよね。第1号被保険者も含めた国民 年金の過去期間分の債務については、確か出ていないように思うのですが。 ○ 宮島部会長  財政検証で、国民年金の分は出ていませんか。 ○ 坂本数理課長  レポートにそれは掲載しておりません。 ○ 宮島部会長  そうですか。 ○ 山崎委員  つまり基礎年金の過去期間分ということで、厚生年金の過去期間分の債務のうち基礎 年金部分が120 兆円あるんですよね。 ○ 坂本数理課長  そうでございます。 ○ 山崎委員  あと、1号あるいは共済の部分が明らかにならないのですが、おそらく加入者数で按 分すると80兆円ぐらい。全部で200 兆円ぐらいではないかと思いますが、いかがでしょ うか。 ○ 坂本数理課長  規模としてはそれぐらいではないかと考えられるところでございます。ちょっと正確 なところは不明でございます。恐れ入ります。 ○ 堀委員  過去勤務債務というのは積立方式の考え方だと思うのですが、賦課方式の基礎年金に ついて、過去勤務債務分を国庫負担するというのはちょっと意味がよくわからない。そ れとも二階部分の厚生年金の過去勤務債務を国庫負担するという意味なのでしょうか。 その辺がよくわからないのですが。 ○ 山崎委員  厚生年金の民営化論、積立方式への移行を主張される先生方が、しばしば厚生年金の 過去期間分の債務を税で、特に具体的には消費税で償却するという提案をされているの ですが、これは私は納得できないのです。と言いますのは、厚生年金はサラリーマン独 自のものでございますから、その過去の債務の償却の財源として国民一般から税負担を 求めるというのは、自営業者からも求めるわけですから、これは無理ではないか。  むしろ、そういう発想をするのであれば、全国民共通の基礎年金の過去期間分の債務 の償却に国民が皆で負担する税を充てるというのが妥当ではないかということでござい ます。 ○ 宮島部会長  堀委員、要するに過去勤務債務というのは考え方自身が国民年金の場合にはあり得な いということですね。 ○ 堀委員  ええ。 ○ 宮島部会長  例えば保険率を段階的に上げていく場合に、給付水準は決めたけれども、保険料率を 上げ遅れたために、後の世代にその分を負担してもらうというのとは、ちょっと性格が 違うんですか。 ○ 堀委員  賦課方式というのは、年金の費用を現在の被保険者が賄うというわけですから、過去 勤務債務かどうかというのはあまり関係のないことではないかと思います。 ○ 吉武審議官  私どもこれまで計算上はそういうものを出してきているのですが、例えば昭和20年代 の保険料率が3%だったわけです。今17.35%に上がっているわけですけれども、昭和20 年代のような戦争の後の非常に混乱期にある経済で移行する時の3%の重みと今の重み は全然違うわけです。ですから過去勤務債務の問題は確かにあるのですけれども、この 過去勤務債務の問題をどういうふうにして考えるか、もう少し日本の経済社会全体の歴 史的な発展過程の中で捉えないと、現在の17.35%について、例えば20年前は低かったか ら、その時の現役は非常に楽だったというだけでは必ずしも済まない問題がある。そこ は私的な年金でありますとか、個人の積立方式の年金とは違うところですので、負担に ついても、単なる保険料率だけの数字ではなくて、社会経済全体の中で負担の重みみた いなことを検証していかないと、なかなか名目的な数字だけで、ある部分の過去勤務債 務というふうに果たして決めつけられるかという問題はあるのではないかと思っていま す。 ○ 宮島部会長  この議論は積立金という概念が存在していない場合には、積立不足という概念も元々 存在しないということですので、過去勤務債務的な発想については、確かにそうです ね。全くそう思います。ただ、そうではなくて、ポリティカル・リスクなどで保険料の 引上げが遅れたりとか、給付水準がある程度引上げられたときに、それに十分に対応し てないとか、そういうことから起こってくる積立不足というよりも、何というのでしょ うか、将来にその分が転化されているような分というのはおそらく考えられると思うの で、そのことを山崎委員は仰ったのかと思っていたのですが、数量的な把握は私もよく わからないのですが、これは堀委員が多分一番詳しいので、堀委員の言っていることが 多分間違いないだろうと思います。  今、伺っていまして、さっき若杉委員から、保険料率を引き下げるために国庫負担を 投入するというような考え方はあまり筋が通っていないのではないかという議論があり ました。他の委員からもそういう議論が一方であったと思います。他方で、実績の話な のか政策論の話か、例えば年収ベースでこれぐらいは一応上限だと考えようというとき に、例えばある委員からは、それなりの国庫負担を投入するというような考え方も望ま しいということも一方で言われていたわけですね。その辺のところは委員の間で少し意 見の食い違いがあると思います。  もう一つは、二分の一という数字は一体どういうふうに考えるのかということがあり まして、それはキリが良いけれども、論拠があるのかということは、また別の議論には なるのだろうと思います。それは特に社会保険ということを重視された場合には、社会 保険というのは、特に給付財源については、保険料と税財源のようなものについて、質 的なものと量的なものと、きちんとした一つの考え方があるのかどうかということなん ですが、この点はどうなのでしょうか。もし何かご意見があれば。どうぞ、大山委員。 ○ 大山委員  安心した年金といった場合に給付の安定という問題があると思うんです。そういう点 から、今部会長が指摘をされたように、持続可能な年金制度にするという観点から、当 然社会保険料ではいろいろ問題が起こってきているというのであれば、そこに財政的な ものを投入するというのが一つの根拠になると思うんです。それから皆年金制度を維持 するためということもそうだと思います。  ただ、同時に、年金制度は社会保障制度でありますから、社会保険制度という部分 で、確かにサラリーマンの報酬比例部分などについては、これは共助ということでよろ しいかと思うのです。しかし基礎年金になった場合に国の社会保障制度といった場合に はいわゆる公助ですから、そういう観点からも基礎年金については、財政問題について 一定の意見交換をする必要があるのではないかと思います。  そういう点では、今日の意見交換の中で、安定した給付という関係からいった場合の 持続可能な年金制度をつくる、あるいは年金制度の見通しを持つという点では、当然そ の面からの財政的な負担と言いますか、財政的な国庫負担、これは必要なことだと思い ます。  それから、年金税制の在り方なんですが、先ほど税制改革がどうなるかという問題と の兼ね合いがありますという発言もありましたけれども、私もそう思います。ですから 高齢者といった場合も、それは年金収入もあるでしょうし、勤労所得もあるでしょう し、資産所得もあるわけでありますから、そういう総合的な収入に対する課税がどうな るかという問題がある程度見通しが立つならば、様々な税負担の問題について議論がで きると思いますけれども、一方では給付の水準の問題もあるわけですから、そういう点 では基礎年金について根本的な議論をする必要があるという岡本委員の意見に私も賛成 ですが、税制問題を議論する場合に、生計費非課税という原則がありますので、今の年 金の水準がそういう点から見たらどうなのかという点もありますので、税制がどうなる かということについて、総合課税というものがどうなるかということが見えない段階で は、私としましては、年金制度の中でこれはどういうふうに扱われるのかという問題か ら意見交換した方が良いのではないかと思います。  例えば、どこまで所得捕捉ができるかという問題もありますけれども、資産所得も含 めて捕捉をした場合に、場合によれば基礎年金について控除という側面を強くするなら ば、当然一定の収入を得ている高齢者の年金については場合によれば減額をする、いわ ゆる資産所得も含めて1,000万円、2,000万円の収入のある方についての年金はどうする かということについては議論をする必要があるのではないかと思います。ただ、税金で どうするかといった場合には、どうしても生計費非課税の問題や年金の給付の問題が出 てきますので、それとの兼ね合いも出てきますので、税制の関係の方についても見通し が、ある程度はっきりした時点でかなり突っ込んだ議論ができるのではないかと思いま す。 ○ 宮島部会長  今、ご指摘のように、この議論は年金部会で議論をしているわけでありますが、一方 では、今税制調査会でありますとか、他のところでも年金税制を含めた全体の在り方を 議論しているわけです。大山委員ご指摘のように、例えば最低生活費の免除は、年金水 準そのものの話があると思いますが、もう一つは税制の人的控除、基礎控除等、これを どうするかということに関わっていることで、実はその控除の話で公的年金等控除の話 がこの中に入ってきているということでありますので、税制と年金両方に関わるところ は我々としてもきちんとした議論をしていきたいと思っております。 ○向山委員  私たち三名は、前回ペーパーを出させてもらって基本的な考え方を述べているわけで ございますが、一番大きな問題としては、日本は全国民共通の基礎年金の部分は、今 「皆年金」というふうに主張しているわけでございます。ただ、アメリカやフランスな どの社会保険を中心とした国においては、低所得者等で社会保険に加入できない人はや むを得ないというふうなことで、その人たちは基本的には生活保護で対応すると、こう いう基本的な考え方を採っている国であります。しかしながら日本は皆年金、こういう ことを主張しているのに、そこで社会保険方式が良いのか、税方式が良いのかという議 論ではなくて、真の国民皆年金というものをきちんと確保していくのかどうなのか。こ この論点が非常に重要であろうかと思っています。  そのための財源はどうなのかということになろうと思うのですが、そういった中で、 これは基礎年金も含めた公的年金でございますので、国庫負担・国の負担は当然入るべ きであろうと思います。ただ、その理由というか意義はいくつかが錯綜してあると思い ます。一つは過剰な保険料の引上げを抑制するような形、また保険料が支払えない低所 得者の人たちに対しての給付、こういった問題や、さらには現在言われております国民 年金に対する信頼回復というためには年金財政をいかに安定化していくかということが まず必要であろう。そういった中では現在未納・未加入者があるために若干空洞化によ る影響リスクというものがあるわけでございまして、そういったものをできるだけ少な くしていくということも国庫負担を投入する意義であろうかと思っています。  さらに年金に関する課税の問題ですが、基本的には皆様のおっしゃっていることと同 じような気持ちでおります。特に65歳以上の年金受給者の年金控除額というものが非常 に大きい。その課税最低限は現役のサラリーマンよりも高くなっている。こういう現実 をどう改善していくかということだろうと思います。  ただ、年金受給者の生活費の負担の実態というものが様々ありまして、高齢者世帯の 所得格差というのは現役以上に大きいということもありますし、前回も主張させていた だきました、公的年金のみを収入源としている高齢者世帯もやはり6割いるということ で、これらの人たちへの影響をどう考えるのか。さらには老齢年金というものが退職後 の所得保障というふうに考えるならば、年金以外に、先ほどからいろいろ出ていますよ うに、家賃収入なり給与所得、そういったものを合算して公的年金等控除を見直す必要 があるだろう、こういうふうに考えます。以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。年金改正法の附則で、国庫負担割合を三分の一から二分の 一にするということがうたわれておりますけれども、私が知っている限りにおいては、 具体的にはそういうところがあまり進んでいるようには思えない。おそらくそれは二つ 議論があって、今までもございますように、一つは社会保険という基本的な制度におけ る国庫負担の理屈は何かということが一つ問われている。それを増やす場合に、今お話 のようにどういう理屈なのかということが問われている面。もう一つは、また別の次元 で、今の日本の財政状況そのものをからめて、ここで公費とか税収という言葉は使いま すけれども、財政用語で言えば、おそらく一般会計の中の社会保障関係費の中の社会保 険費になりましょうが、一般歳出を増やすという議論と同じことなのですね。ですから そういう財政面からのもう一つの問題があって、その二つをクリアーしない限りは、簡 単に三分の一から二分の一ということを附則で書いてあっても、それを実現するのはな かなか難しい。  今回、特にご議論をお願いしているのは、どういう根拠が国庫負担にあるのかという ことをかなり明確にしておく必要がありまして、今出ているのは、向山委員からもお話 がありましたように、もちろん皆保険というものを維持していくための広い意味でのコ ストということもあるでしょうし、もちろん高齢化が急速に進む中での年金制度の信頼 性の確保にということもあるでしょうし、強制加入する人たちに対するインセンティブ ということもあり、いろんな考え方が出てきているわけですが、これについてはレポー トされた委員の他に、堀さん何かございますか。 ○ 堀委員  国庫負担の意義についてですが、保険料というのは給与所得だけを賦課ベースにして いるため狭いのですね。それに対して、税は、消費とか資産に対しても課税しているた めに、賦課ベースが広いわけですね。  フランスは基本的には労使自治ということで社会保険に国庫負担を入れてなかったの ですが、資産所得等に対しても課されるCSG(contribution sociale generalisee) を社会保険に入れるようになった。これは被用者の保険料の賦課ベースが狭いのを広げ るという意味があるので、日本の国庫負担もそういう意味があるのかという感じはいた します。  ただ、さっきから議論が出ているのですが、一般的な社会保険に対する国庫負担とい うのは、私も山崎委員と同じように望ましくないと考えています。給付と負担が不明確 になるからです。ただ保険料負担、特に第1号被保険者の保険料が将来とても負担でき なくなる、そういう意味で国庫負担率を二分の一に引き上げることが必要だと言ってい るのです。  もう一点、一般的な国庫負担という形でなくて、低所得者に着目した国庫負担という のは本来望ましいのですが、現在の日本の制度でそういうのをどういうふうにしてやる か。これは山崎委員のペーパーで、1号と2号で書いてあるのですが、1号については 保険料の免除と二分の一減額の仕組みがあるわけですね。そもそも1号被保険者という のは所得把握が難しいから定額にしている。例えば保険料を免除しても、給付は減額せ ずに全額支給するというのでしょうか。しかもその財源は国庫負担とするというので しょうか。そうすると所得把握の問題はクリアーできるのかという感じがします。すな わち、十分な所得があるのに保険料免除申請をした者にも、国庫負担で満額給付してよ いのかということです。  それから、第2号被保険者については、現在標準報酬月額が9万8,000円以下の者の保 険料は、9万8,000円とみなして17.35%の保険料率を乗じて算出しています。短時間勤 務者にも厚生年金を適用するようになると、この最低額を当然下げて、例えば6万円の 給料なら6万円に17.35%の保険料率を乗じることになると思うのですが、これは基本的 には応能負担であるわけですね。これに対して国庫負担をどういった形で入れるのか。 技術的になるかもわかりませんけれども、その辺をどういうふうにするのかという疑問 がありますので、お考えがあったら聞かせていただきたいと思います。 ○ 宮島部会長  私も今何かアイディアあるかと言われても困るのですが、どなたか、もう少し国庫負 担のことで何かご議論があれば、少し伺っておきたいと思いますけれども。これは、実 は、どっちだというような割り切りにはいかない議論でありまして、もちろんいくつ か、先ほど外国の例も少し紹介していただきましたけれども、すっきりさせているケー スもあります。今度のスウェーデンの新しい年金制度のように、最低保障みたいなもの に限定して足りない分は埋めるということで、何割とかなんかという目途というより も、仕組みとして明確にしておくというような考え方もあるのだろうと思います。アメ リカの場合には、これは国庫負担というよりも、さっき言った年金税制の税収を、それ を目的税化して年金のトラスト・ファンドに戻すというやり方を採っているということ ですね。いろんな考え方・やり方があるわけです。ただ、我が国の場合には、とにかく 少子化と言いますか、人口の高齢化が非常に速く、経済もこの間非常に良くないという こともあって、年金制度へのインパクトが非常に大きい。そういうことに対する、先ほ ど山崎委員が言われたように、ある状況の中でやや恒常的な形にしなければいけないと いう面もあるかもしれない。大変曖昧な言い方をして申し訳ないのですけれども、安易 に国庫負担、国庫負担というのも、これは理屈が立たない。さっき言いましたように、 一応社会保険制度としてのそれなりの理念や考え方があるわけですし、財政状況を見て も簡単にはいかない。かといって、今の年金制度の持続可能性を高めるという中で、こ れを国庫負担で考えるのか、年金税制も一部に組み込むような形で一つのやり方にだけ 負担を行かせないような形で全体にうまく組み込んでいくことができないのか、その程 度のアイディアというか考え方は持っているわけですけれども、もう少し何かこれにつ いてご議論があれば伺っておきたいと思います。 ○ 山口委員  堀先生のペーパーの中で、国庫負担の意義という部分と、また別に効果というところ で、「制度未加入者の加入・保険料未納者への納付のインセンティブを強める」と記載 されているのですが、ここをもう少しお伺いしたいと思うのですが。 ○ 堀委員  国庫負担が三分の一から二分の一に上がれば、今損だと思って国民年金に加入しない とか、あるいは保険料を払っていない人も、得だと思うようになって加入したり保険料 を払うようになるのではないかということです。これは国庫負担率引上げの副次的な効 果で、本来、納めない人や加入しない人を優遇するような措置は好ましくないので、あ まり強調したくないのですけれども、そういう人も加入・納付をするのではないか、た だ、それだけのことです。 ○ 山口委員  ありがとうございました。 ○ 宮島部会長  山崎委員、何かありますか。 ○ 山崎委員  まず最初に、私のペーパーでミスがありますので訂正していただきたいのですが、一 枚目の下から七行目に、「老人医療費に係る国庫負担」とありますが、「公費負担」で ございます。地方負担も含めた公費負担を3割から5割上げるという改正案でございま す。  それから堀委員からのご質問があったのですが、かなり技術的な問題を含みますか ら、もしこういう方向で次の改正を考えるというときには、またお互いに智恵を出し合 うこととしたいのですが、一番単純なケースをお話ししますと、今生活保護の生活扶助 を受けている方は保険料が全額免除でございます。生涯生活扶助を受けて、また追納す る余力もなかったとしますと、老齢基礎年金が6万7,000円の三分の一ということになり ます。こういったケースについては、例えば保険料拠出段階で1万3,300円の国庫補助を してはどうか。あるいは給付の段階で過去全期間法定免除であった方について、6万7, 000円の10割給付をする、例えばこんな感じでございます。  それから、ここには書いておりませんが、例えば一定所得以下の方については保険料 を貸し付けると、そういうのもあるのではないかという感じもしております。 ○ 若杉委員  今の山崎委員の考え方に近いのですが、前回メモで書いたのですけれども、結局年金 というのは現役世代の所得を老齢世代に移転するということから言いますと、生活扶助 を受けているような低所得者にも、年金の保険料を払えるような、そういう生活補助を して、そういう人たちも保険料を納めるという、そういう考え方もあると思うんです ね。そういう場合には低所得者に対する国庫負担の問題はなくなってくると思うんです ね。ですから概念的に言えば、非常にすっきりとした仕組みになると思うので、そうい うことも考える価値があるのではないかと思います。 ○ 吉武審議官  私から現状をご説明申し上げたいと思います。現実に保険料の免除制度は、36年に国 民年金を作りました時から入っております。それから前回の改正で半額免除というのを やっております。設計はどうなっているか申し上げますと、介護保険、医療保険と違っ て長期保険であるというのが設計に入っておりまして、追納ということを考えているわ けです。例えば保険料免除になった方でも、必ずしもほとんどの方が生涯保険料免除と いうことにはならないのではないかという前提を置いているわけです。  したがいまして、免除になった後10年間、仮に事業をされてご自分の収入が増えれ ば、後から遡って10年前の保険料を納めることができるというような仕組みを採ってい ます。そこは短期保険と長期保険の少し違うところだろうと思います。  現実に私どもデータ持っているわけではありませんが、仮に40年間の拠出期間ですべ ての期間が免除という方がどの程度おられるかということになりますと、必ずしもそん なにウエイトは高くないかもしれない。あるいは自営業をやっておられて、途中からサ ラリーマンになられて厚生年金の被保険者資格を持つという方がおられるということも あります。  それからもう一つ、給付の方ですが、これは今の制度で申しますと、完全に割り切っ ておりまして、免除期間を持った方には、三分の一の国庫負担分を給付として出すとい うことをやっております。これも理論的に申し上げれば、例えばそういう方がその後サ ラリーマンの生活を送られて、仮に5年の免除期間があっても、その後30年間、サラ リーマンの生活を持っておられれば、6万7,000円に相当する5年の期間の分、40年に対 しますと2万円ぐらいなんですけれども、それも期間比例ですから非常に短い分なの で、それが非常に大変かというと必ずしも大変ではないというようなことがあります。 ですから、年金の中での基礎的な最低保障的なものをどう考えていくか、組み合わせで 非常に複雑な問題が出てくることだろうと思います。論理的には外国である時期議論が ありましたような負の所得税みたいなことを高齢者だけ作るかというような問題に、多 分帰着してくる可能性があるのではないかと思っております。 ○ 宮島部会長  審議官の話のように、国庫負担とかこういうものだって、別に特別会計やなんかに、 必ずしも一括してボンと入れる必要もなくて、まさに保険料を払えない一人一人につい て、もっと個人ベースで考えてやることも、それは理屈の上では可能ではあるというこ とです。おそらくそれは手間の問題があるのかなという気がしますけれども。先ほどの を繰り返しますけれども、これは制度の議論の積み重ねですから、今の三分の一国庫負 担を二分の一に引き上げていくという、その時に一体何が根拠として我々がそれを主張 すべきことなのか。ご意見を伺っていると必ずしもそうでもないよという人もいらっ しゃるようですし、もう少し制度の見直しを含めた上で考えるべきだという意見も当然 ありますでしょうし、あるいはもう少し長い目標への一里塚だと考えていらっしゃる方 もおられると思うのですね。  今は論点を挙げていただいている段階ですが、実際の年金財政や給付の問題、負担の 問題などを細かく考える中で、国庫負担については具体的な意味合いをどう議論をする か、今後もう少し詰めた議論をしなければいけないだろう。今のところいろんな形で挙 がってきている議論については、それぞれ各委員の方々からのご説明がありましたよう な論点になり得るだろうと思いますが、ただ、それぞれをもう少し詰めなければいけな いだろうと私は思っております。  それから、年金税制につきましては、今日、実は、この部会にこういう議論を持ち出 すことに対しては、私自身は持ち出したいと思いながらも、しかし皆さんの中から相当 強い反論も出るのではないかということを予測していたのですが、あまり今日は反論は ありませんでした。  今まで日本の税法では、老齢年金以外は全部非課税という規定をしていて、老齢年金 についても、事実上、公的年金等控除や老年者控除、基礎控除の組み合わせでほとんど 非課税にするという仕組みになっていたわけですね。それに対して、この議論はかなり そこに踏み込む議論になりますから、これもまた改めてきちんと議論をしていただきた いと思いますけれども、既に皆さんからご説明がありましたように、一つはもちろん世 代間の問題があります。先ほど何度も委員からご指摘がありましたように、高齢者層と いうのは所得の種類が多様化していく面と、その中で非常に所得格差とか資産格差が大 きくなるという面があって、そういう世代の中の問題をどう対処するかという話があ り、それは従来から議論されてきた問題だと思います。  それプラス、実質的な、さっき言った既裁定者を含めて給付調整を何かの所得に応じ てやるという、所得制限をかける代わりのような役割を実質的に考えるというのも、も う一つの意味です。同じ社会保障給付でも、医療とか介護のように現物給付の場合には 課税対象にするというのはほとんど不可能です。あくまでも現金給付というものだから 可能となります。我々の言葉で言えば、それは消費者主権といって、現金であれば何で も買うことができるわけですね。それに対して医療や介護の現物給付というのは強制的 に消費されますので、我々はそれに対して直接な支配権を持っていない。ですから現金 給付に対しては、さっき言った他の所得との関係などで課税の対象にすることは考えら れるし、そういう議論もしてきたわけですけれども、ただ、日本の従来の税法では老齢 年金以外は全部非課税所得だという規定をし、先ほどもありましたように、遺族年金な どは、元々手を突っ込むこと自身を禁止しているということもあります。ですから、場 合によってはかなり大きく考え方を変えることになるので、この辺のところは議論とし てはかなり重要な議論になると私は思っております。  しかも、これから日本で唯一、日本経済がどんなになろうと間違いなく毎年2〜3% の割合で増えていく所得は、年金所得だけでございます。給与所得や法人所得は変動い たしますけれども、この10年間ぐらい国税庁の統計を見ておりますと、年金所得だけは 毎年ほぼ2%から多い年によっては3%近い割合で増えている。そういう性格もあると いうことであります。もう少し時間がありますので、若杉委員。 ○ 若杉委員  今、部会長が言われたことは大変重要なことだと思うのですが、かつてのように、貧 しい経済では、みんな年を取るまで働けるだけ働いていたわけです。したがって、働け なくなった時には社会的に弱者だったと思うんですね。ところが今はみんな健康に年を 取っているわけですから、年寄りが必ずしも社会的弱者とは限らない。だけど、もう一 方で、年取った人の中には弱い人も実際いるわけですから、弱い年寄りと健常な年寄り とを社会的にきちんと認識することが大事だと思うわけです。  そういう意味で、この部会でもその辺のところをきちんと考えながら議論していかな ければいけないのではないかと思います。今、部会長の言葉から、そういうことを思い ついたので、付け加えさせていただきました。 ○ 岡本委員  今、若杉委員のお話と全く同じ方向なのですが、これから、この前のお話では2035年 でしょうか、女性の平均寿命が90歳になるということで、結局これからは、元気に働け る人は幸せなのだ、そういう人は、ノーブレス・オブリージュじゃありませんが、日本 人としての価値観として、社会に貢献していくのだとか、そういう社会の在り方として の価値観に変えていきませんと。ある年が来たら年金で生活するのだというのではなく して、働ける者は働いていく、所得がある人は国に税金を納めて貢献する、というよう に新しい高齢化の中で求められる価値観というものを年金の時にも、時間のある限り議 論しながら、そういう中から基礎年金の在り方とか、そういうものも議論していくべき ではないか。それは時間がかかると思うのですが、だから「皆年金」という言葉につい ても、私は必ずしも皆年金前提の議論ばかりする必要もないのではないかと思います。 私はそれが良いという意味ではなくて、そういう視点も含めて基礎年金の在り方につい ても、平均年齢が85歳とか90歳になっていくという中で、高齢化層の生活のバリエー ションが、かつてなく世界で一番複雑な構造になっていくのだという前提の中から、何 かエッセンスを抜き出して改革につなげていく議論が、一つでも二つでもあれば、今回 の年金部会の意義はそれなりにあるのではないか、こんなふうに、抽象的でありますけ れども、思っております。 ○ 堀委員  国庫負担の問題で先ほどから部会長も言われたように、なぜ三分の一から二分の一な のか、この辺の議論が深まってないような感じもます。これは基本的には資料にもある ように、改正法の附則で規定されているからです。このように附則に規定されたという ことは極めて政治的なプレッシャーが相当あったのだと思うのですが、その理由という のは一体何なのか。国家責任を果たすべきだということなのか、それとも保険料負担が できなくなるからということなのか。保険料負担についても、神代委員は第2号の保険 料率を20%に抑えるためだと仰っていましたが、私はむしろ第1号の保険料負担が困難 になるからではないかと思うのです。その辺、どういう経緯で二分の一とすることに なったのか。二分の一とする理論的根拠はそんなにないわけです。第1号被保険者の保 険料負担が、前回改正で言うと、将来一人2万6,400円、二人で5万3,000円(現在価 値)となり、私はこのような負担はできないということだったと思うのです。定額保険 料というのは、私何回も言うのですが、ビバレッジ報告で、均一保険料で均一給付が提 案されたのですが、結局これは失敗した。均一保険料に固執する限り、保険料を引き上 げるのは困難になる。第1号被保険者の定額保険料の元となっているのは所得把握の問 題です。所得把握ができれば、自営業者についても所得比例保険料にすることができる のですが、それができれば問題は解決する。国庫負担に頼らなくても解決できる面はあ ると思うのですが、それがなかなか難しい。税制改正に期待をして所得把握ができるよ うに期待をしたい。国庫負担率引上げの経緯を少し説明していただいたらと思うのです が。 ○ 榮畑年金課長  確かに今のお話のように、各与党政党内部でのご議論がかなり中心にありましたか ら、細部までどこまでフォローできているかというのはやや疑問がございますが、本編 の資料1−1の3ページあたりなどを見ていただきましても、元々平成6年改正から、 この国庫負担割合引上げの議論は本格化しておるわけでして、その時も一番のメイン は、将来の保険料負担増にどう対応していくかというようなご議論が出発点としてあっ たのだろうと思っております。したがいまして、将来の現役の保険料負担をそれほど引 き上げることはできないのではないかとするなら、そこを国庫負担を入れていくことに よって緩和できないのかというご議論が中心であったと聞いております。  それは、今日お配りしております資料の5ページ、社会保障構造の在り方を考える有 識者会議のご議論の中でも、三行目あたりでございますが、「保険料水準の上昇幅が大 きいと見込まれる年金制度に関し…国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るもの とする」とされているということからも、そういう流れの中で、この二分の一への引上 げ規定が設けられていたことがあろうかと思います。ただ、その時に保険料負担の引上 げが、第1号の人、第2号の人どちらを主として想定していたかということにつきまし ては、そこは基礎年金で、かなり共通な議論でございますから、1号の人も2号の人も 含めて当たるのではないかというようなことで、特にどちらの人を念頭に置いてという ことではなかったのではないかと推察しておるところでございます。 ○ 堀委員  ちょっと一言だけ。結局保険料負担を可能な範囲にするための国庫負担率引上げとい うことですが、これは保険料負担を税負担に変えるという、見せかけだけ保険料負担の 軽減です。税負担を含めた全体の負担は変わらないわけですね。むしろ国庫負担を増や すということは、保険料負担が見せかけだけ減るみたいな感じになるので、本当に良い ことなのかどうか、もう少し議論する必要はあると思いますね。 ○ 宮島部会長  マクロ的に言えば、社会保険料と税は、同じ国民負担という言葉で一括されているわ けで、そのレベルの問題とその種類を振り替える問題というのがありますが、何かござ いますか。 ○ 神代部会長代理  堀委員からさっきご質問があったので少し補足しますが、私がペーパーに書いたのは 確かに2号のところしか書かなかったのですけど、これは省略をしたということで、前 回の年金審議会の議論の時には両方出ていたと思います。年金課長がおっしゃったよう に、どっちにウエイトがあったかということではなかったように記憶していますが、た だ、20%以下ということは相当ポリティカルな議論として出てきていたので、特に言及 したということです。 ○ 大山委員  年金に関する税制は、先ほど部会長がまとめられた件なのですけれども、税制改革の 方で、いわゆる総合課税化とか累進税率を強化をするということの方向性が出れば、こ こで議論されている高齢者でも多様な収入があるということに関連することについて、 解決する部分もあるわけです。そこの部分について明確なものが出てこない段階で、中 期的に年金制度をどうしようか議論する場合には、報酬比例部分は保険料ですから違う と思いますけれども、私は当然基礎年金部分については、いわゆる年金の給付をどうす るのかということがここの議論になると思うんです。  もし税制の改革の問題に関して、ここが年金の控除の問題も含めて議論できるとなれ ば、当然税制改革の方に対して総合課税の問題だとか、累進課税の問題について、ここ で私たち自身もどういうふうに考えるのかということを議論をする必要があると私は思 いますけれども。 ○ 宮島部会長  それは私もそう思っています。先ほど杉山委員から、消費税を引き上げるならば、教 育とか育児に関する方は、消費税でもう少しきちんと取り扱いをしろという意見がござ いましたから。もちろん、一応各種審議会にはそれぞれの縄張りがあるのかと思います が、私はあまりそれを気にしておりませんで、必要なことは議論をすると。ただし、 我々には一体、意思表明する場があるかどうかは別にして、私はなるべくそういう場は 作るですし、それは厚生労働大臣から言ってもらうこともあるかと思います。  税制について、税調など向こうのフレームワークが決まるのを待って、というのは私 はおかしいと思います。むしろ、今後並行して進めていく重要な議題になるのだろうと 思います。  それから、先ほど堀委員からも少しご指摘がありましたように、私も実はもう一つ、 今回の議論でお聞きしたいことがございまして、例えば負担可能性とか、そういった時 に、実際問題としては、定額保険料の場合には徴収可能かどうかという問題にかかわっ てくること、金額の大小よりもそういう徴収制度そのものがうまく機能するかどうかと いうことがかなり重要な点であることは言うまでもないことでございます。そういう意 味で言えば、今のところまだはっきりしておりませんが、多分次回、次々回ぐらいに、 今度は年金制度全体の体系の話の中で議論していただきたいと考えております。ドイツ ですとかスウェーデンのものを読みますと、保険料の徴収制度にほとんど問題がないと 書いてあるのですよね。いわゆる第1号に当たる人を、スウェーデンではいっぺんに所 得比例年金に変えてしまうわけですけれども。だから、もちろん財源の問題があるとい う話と同時に、その辺のところが、仕組み、制度があり、それを支える行政ですとか徴 収体制ですとか、その実態がどうなっているかというようなことも同時に考えないと、 まさにフィージブルな制度改革などの議論は非常に難しいということがありますので、 これらについても、あまり聖域を設けずに議論したいというように考えております。  時間の方が、大体概ね予定された時間に近づきましたが、まだ若干何かご意見あれ ば。 ○ 神代部会長代理  資料1−3の3ページの「公的年金等控除」の図がありますが、横軸は給与所得だけ ですか。 ○ 榮畑年金課長  横軸は年金収入と給与収入です。 ○ 神代部会長代理  年金と給与だけ。その他のは入ってないわけですか。これに対応した所得分布という のは出るのですか。 ○ 榮畑年金課長  お尋ねのご趣旨ですけれども、年金受給者の年金額に応じた分布とか給与収入者の給 与額に応じた分布ということでございますか。 ○ 神代部会長代理  はい。 ○ 榮畑年金課長  それは少なくとも年金ならそういう分布はございますし、給与も恐らくあると思いま す。 ○ 神代部会長代理  あったら欲しいんですが。 ○ 宮島部会長  この表はもちろん公的年金だけで何万円、給与だけ何万円ということですね。ただ、 今のデータの話ですけれども、年金なら年金だけの方はわかるかもしれないけれども、 他の所得と合わせた、そういうデータがあるかといったら、例えば国民生活基礎調査な どのデータとか、税制のデータでいくと申告所得税についてだけはわかるのですよね、 ある程度は。だけど、ほかに一緒になった分布みたいな話はなかなかわからない。 ○ 吉武審議官  給与所得は別になっていますから、社会保険庁で源泉徴収やっていますけど、こちら は公的年金収入だけでやっていますから、両方ミックスしたのは非常に難しい。 ○ 榮畑年金課長  確かに今、部会長が仰る、総合的にと言われますと、年金なら年金、給与なら給与と いうのはございますけれども、全体となるとそこは少し考えさせていただければと思っ ております。 ○ 宮島部会長  多少時間がかかっても、家計調査とか国民生活基礎調査、申告所得税の実態というの がありますから、いくつか他の所得と合わせたのを見られるものを少しそちらでも考え てください。厚生労働省の人は厚生労働省の統計の個票を使えるのですか。我々、整理 されたものは見られるけれども、個票はなかなか見せてくれないのだけれども。 ○ 福井総務課長  神代代理のお話の件につきましても、部会長から今いろいろお話があった点につきま しても、今の時点でどうだということは申し上げられませんが、いろいろ探すなりし て、可能な限り努力をさせていただきます。 ○ 宮島部会長  それは私と神代委員の方でも責任は持てませんが、できるだけ努力はさせていただき たいと思います。  それでは、本日二つテーマが分かれていて、一緒にやったのがあまり良くなかったの かもしれませんが、一応今日の議論はこれで終わりにさせていただきます。これからさ らに、当面まだ議論していただく問題が少し山積しておりまして、できれば秋口には いったんこれまで議論していただきました点、論点整理を行いたいと考えております。 もちろんこれまでのいろんな議論の中で、特に新人口推計をどう受けとめるか、先ほど 出てきた少子化対策の問題あり、雇用の問題あり、今の税制の問題あり、おそらく財政 の問題、そういうことも背景に置きながら、あと大きく残っている点と言いますか、こ れは一つは年金制度の全体の体系、先ほど若杉委員からお話がございましたような、公 的年金と私的年金との関係ですとか、公的年金の中の仕組みの問題というのが一つ残っ ていると思います。  それから、おそらく一般の関心がもう少し高いのかもしれませんが、給付と負担との 関係をどのように考えるかということがまだ残っておりまして、そういう議論をできる だけ夏前には済ませておきたいと思います。もちろんそこで結論を出すわけではなく て、いろんな論点を出していただくということが主体でございます。  これからの日程ですとか、テーマにつきまして、私はおおよそこんなようなことを考 えておりますけれども、事務局の方からございますか。 ○ 福井総務課長  ただいま部会長から、次回、次々回ということになろうかと思いますが、一つは、年 金制度の体系、仕組みということでございましょうか、それから給付と負担の関係の基 本的な在り方ということについてのご議論、というお話があったわけでございます。私 ども、部会長あるいは部会長代理ともよく連絡調整をさせていただきながら進めたいと 思っておりますが、次回以降の点につきまして少し申し上げますと、私どもの希望とい たしましては、八月はこの部会はお休みということにさせていただいて、大変恐縮です が、来月でございますけれども、七月には、二回ほどこの部会を開催をさせていただけ ればと思っております。したがいまして、七月の二回ということで申し上げますと、次 回は先ほど部会長からお話のございました年金制度の体系、給付と負担の基本的な在り 方、この二つテーマにつきまして、一括して、私ども事務局から、これは少しお時間を ちょうだいすることになろうかと思いますけれども、資料を提出をさせていただきまし て、ご説明をさせていただく。そして、七月の次々回につきましては、委員の皆様方 に、大変恐縮でございますが、ご意見、ご主張をペーパーなりでご提出をいただきまし てご議論をしていただければと考えております。  今日、冒頭、部会長からもお話があったわけでございますが、私ども事務局といたし ましては、例えば資料の作成、論点をお示しをするといったことにつきまして、可能な 限り努力をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げ ます。繰り返しになりますが、本日お求めの資料につきましても、可能な限り努力をさ せていただきたいと思っております。  私からは以上でございます。 ○ 宮島部会長  前回、今回とやや本格的な詰めに入ってきたわけでありますけれども、論点は行きつ 戻りつになりますので、同じことをテーマを変えてやっているところもあったりして、 つまり論点はそれなりに明確であるりますが、切り口を少し変えながら議論をしてまい りたいと思います。特にこれからは少し外国の制度改革の話なども丁寧に取り上げなが ら議論をしていきたいと思っております。  それでは今日はこれで終わりにいたしますが、あと七月になると思いますが、次回、 次々回ということで二回あるということですので、その日程調整、細かいことにつきま しては、事務局からそれぞれご案内と調整をさせていただきますので、よろしくお願い 申し上げます。                                    (以上) (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係  (代)03-5253-1111(内線3364)