02/06/05 第1回「雇用と年金に関する研究会」議事録            第1回「雇用と年金に関する研究会」                   議事録           第1回 雇用と年金に関する研究会議事録   日時  :平成14年6月5日(水)14:00〜16:00   場所  :中央合同庁舎5号館専用21会議室   出席委員:神代座長、樋口委員、佐藤委員、清家委員、岩村委員、大沢委員   議事  :○雇用と年金について(全般的な議論)        ○短時間労働など非典型労働の増加への対応 ○中原企画官  定刻になりましたので、ただいまから「雇用と年金に関する研究会」を開催いたしま す。  開会に当たりまして、辻年金局長よりご挨拶申し上げます。 ○辻年金局長  年金局長の辻でございます。まずもって、皆様におかれましては、大変お忙しい中、 当研究会委員をお願いいたしましたところ快くお引受けいただきまして、また、本日ご 参集いただきまして、心より御礼申し上げます。  開催の趣旨でございますけれども、少子高齢化、特に新人口推計が公表され、少子化 が進行している中で、我が国の社会の支え手を増やすということは非常に大きなテーマ になっていると思います。そういう中で多様就業型と申しましょうか、ワークシェアリ ングというものを一層推進すべきだろう、あるいは子育てと両立しやすい働き方をより 進めていくべきだというような中で、多様な働き方も選択できるような環境整備が求め られております。  このような環境の中で、公的年金制度改革におきましては、そのような流れに沿い、 また雇用というものに対して必ずしも中立的ではないというような影響を持っている年 金をはじめとする社会保険の適用のあり方につきまして検討いただく、あるいは高齢者 の就労の促進と年金についても検討いただく、こういったことが非常に重要な課題にな っております。この点につきましては、社会保障審議会年金部会で年金改革の議論が行 われますが、特に労働経済をはじめとする専門家の方々の下で、まず開かれた討論・議 論を行っていただき、そしてご報告をできましたらおまとめいただきまして、それを踏 まえた上で年金部会での全体の検討に入っていただくと。そういった意味で、この研究 会に私ども大きな期待を寄せてお願いいたした次第でございます。  そういうことから今後の改革の議論、16年に向けて年金改革の議論が年金部会で始め られておりますけれども、私どもといたしましては、研究会の最終報告書の取りまとめ を、年金部会の今後の議論の進捗状況を見ながらでございますけれども、恐縮でござい ますが年末ぐらいまでにおまとめいただき、それを踏まえて年金部会でより良い改革の ために議論をいただきたいと思っております。  そういうことでございますので、雇用政策と年金をはじめとする社会保険政策との関 係という意味で、雇用政策との連携は非常に重要でございますが、本日事務局側としま しても、年金部局だけではなくて、労働部局の関係者にも出席いただいております。私 ども省挙げて、研究会の成果をもとに努力をいたしたいと思っておりますので、何とぞ どうぞよろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。 ○中原企画官  本研究会につきましては、座長を放送大学教授の神代先生にお願いすることにいたし ております。それでは、神代座長よろしくお願いいたします。 ○神代座長  それではご指名でございますので、進行役を務めさせていただきます。  最初に事務局から、この研究会のメンバーのご紹介をお願いいたします。 ○中原企画官  本日ご出席のメンバーの皆さんをご紹介させていただきますが、僣越ながら私からご 紹介をさせていただきます。メンバーの総数は7名でございますが、本日は、玄田有史 先生が御欠席で、6名の方にご出席いただいております。五十音順にご紹介申し上げま す。  岩村正彦先生でいらっしゃいます。  大沢真知子先生でいらっしゃいます。  座長の神代和俊先生でいらっしゃいます。  佐藤博樹先生でいらっしゃいます。  清家篤先生でいらっしゃいます。  樋口美雄先生でいらっしゃいます。  以上でございます。  次に、事務局の幹部のみ紹介させていただきます。  年金局長の辻でございます。  審議官の吉武でございます。  このほか、年金局並びに関係部局の担当課長等が出席しておりますが、お手元の座席 図をもって紹介にかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。  なお、あらかじめ申し上げますが、ご発言の際には、お手元のマイクのスイッチを押 してご発言いただけますようお願いを申し上げます。以上でございます。 ○神代座長  それでは、次に当研究会の開催の趣旨について、事務局からご説明お願いします。 ○中原企画官  資料1−1をごらんいただきたいのですが、「雇用と年金に関する研究会 開催要綱 」でございます。 1 趣旨  少子高齢化が今後一層進展する中で、女性や高齢者をはじめとする「支え手」の拡大 を図ることは、我が国経済社会全体にとって重要な課題となっている。 一方、多様就 業型ワークシェアリングを推進し、多様な働き方を選択できるようにするための環境整 備も求められている。  このような中で、雇用政策と相まって「支え手」を増やしていくための公的年金制度 としての方策について、労働経済をはじめとする専門的な観点からの調査・検討を行う ため、学者・研究者の参集を求めて、「雇用と年金に関する研究会」を開催することと する。 その成果については、次期年金制度改正に向けた今後の議論に活用するものと する。 2 検討事項  研究会においては次に掲げる事項を中心として調査・検討を行う。  (1) 短時間労働等非典型労働の増加への対応     −短時間労働者等に対する厚生年金の適用拡大のあり方、その雇用への影響・      効果    等  (2) 高齢者層における支え手の拡大に向けた取組の方向     −高齢者雇用と年金制度の関係、在職老齢年金制度等のあり方  (3) その他 3 研究会の運営  (1)研究会は、厚生労働省年金局長が学者・研究者の参集を求めて開催する。  (2)研究会の議事については、別に研究会において申し合わせた場合を除き、公開と    する。  (3)研究会の庶務は、関係部局の協力を得て、厚生労働省年金局年金課において行う    。  以上でございます。 ○神代座長  ありがとうございました。  それでは次に、当研究会の会議の公開について、事務局からお願いします。 ○中原企画官  資料1−3をごらんいただければと思います。  「会議の公開について(案)」という資料でございます。  雇用と年金に関する研究会の会議を原則公開とする。  ただし、個別企業等に係る情報を取り扱う場合その他座長が必要と認めるときは、非 公開とする。  このような取扱いとさせていただきたいと考えております。 ○神代座長  会議の公開については、今の事務局の方針でよろしいですか。               (「異議なし」と声あり) ○神代座長  ご異議がありませんので、そのようにさせていただきます。  次に社会保障審議会年金部会における検討状況等につきまして、事務局からご説明を お願いします。 ○中原企画官  資料2−1をごらんいただきたいと思います。これは社会保障審議会年金部会の委員 名簿でございますが、この年金部会は平成16年に予定されます次期年金制度改正に向け た審議のために設置され、これまで4回にわたり開催をされております。構成員はこの 資料のとおりでございます。  そこで、この部会における検討作業とこの雇用と年金研究会の関係についてでござい ますが、これにつきましては、次の資料2−2をごらんいただければと思います。これ は年金部会に提出されました年金部会における当面の議論の進め方についての資料でご ざいますが、この2ページ目をごらんいただきたいと思います。  2ページ目のIV6「具体的な制度設計運営の論点(各論)についての検討」の段の真 ん中の欄に、「短時間労働者等に対する厚生年金の適用など雇用と年金に関する論点に ついては、厚生労働省に別途「雇用と年金研究会」(仮称)を設けて、学者・研究者に よる専門的な研究を行い、年金部会における議論に活かしていただく。」とございます 。年金部会においてはこのような整理がなされたところでございます。すなわちこの研 究会は、年金部会とは別に専門的な研究を行っていただくべく、行政として開催をさせ ていただくということでございます。  なお、右の欄に各論における検討事項例が掲げられておりますので、後ほどご参照い ただければと存じます。年金部会では秋頃からこの各論の議論が行われる予定とされて いるところでございます。  次の資料2−3をごらんいただきたいと思います。この研究会において、「支え手」 を増やしていくための公的年金制度としての方策についての専門的観点からの調査・検 討をお願いするわけでございますが、その背景、さらに次期年金制度改正と支え手の拡 大とのかかわりについてでございます。この資料2−3はそのことに関わるものでござ いまして、この資料は、本年1月に新人口推計が公表されて、出生率の低下、平均寿命 の延びなど年金制度の基礎となる人口の将来見通しに大きな変化があることが示された ことを受けまして、新人口推計の年金財政への影響を明らかにすることを目的に試算を 行ったものでございまして、これを年金部会に5月17日に報告したところでございます 。  その内容につきましては既に幅広く報道等がなされておりますので、2ページ目の3 .の(1)の試算結果につきましては、後ほどご参照いただくことといたしまして、2 ページ目の3.の(2)をごらんいただきたいと思います。  (2)留意点として、第1に、従来にも増した本格的な少子化対策を推進することが 求められていること。  第2に、今回の年金制度の改革において、新人口推計をどう受けとめるかについては 、今後の少子化対策の検討を見つつ、国民に開かれた形で幅広い観点に立った十分な検 討が必要であること。  第3に、その際、雇用政策と相まって高齢者や女性など支え手を増やす方策を検討す ることが重要であること。 が述べられているものでございます。  以上が、年金部会における検討状況についてのご説明でございます。 ○神代座長  ありがとうございました。  それでは、次に雇用と年金に関する論点につきまして、事務局から説明をお願いしま す。 ○中原企画官  横長の資料3をごらんいただきたいのでございますが、ここでは論点についてという ことで、これまでの雇用と年金の問題に関連する主要な政府方針なり提言等についてま とめたものでございます。  大きく3つ、「支え手」を増やす取組及び個人の選択に中立的な社会保障制度への見 直し関連、これが1、2ページ。それから、短時間労働等関連が3、4ページ、高齢者 雇用等関連が5、6ページということでまとめているものでございまして、その概要に ついてご説明を申し上げます。  まず最初の「支え手」を増やす取組あるいは個人の選択に中立的な社会保障制度の見 直し関連ですが、例えば平成12年の社会保障有識者会議におきましては、21世紀に向け ての社会保障という報告で、「21世紀が『人口減少の世紀』となる中で、意欲に応じ働 くことができる社会としていくことは、社会保障の負担の担い手を増やし、給付と負担 のバランスをとっていくことに寄与することになる。」とされております。  また2ページ目の女性と年金検討会報告書におきましても、今後の年金制度のあり方 として、「急速な少子高齢化の中で安定的な運営を行っていくことができるよう、女性 の就労の拡大や将来の年金制度を支える次世代の育成の支援につながるような年金制度 であることが求められている。」とされているところでございます。  一方、1ページ目の中段の、政府・与党でまとめられました社会保障改革大綱の中で は、「就労形態の多様化や女性の生活形態の変化などに対応し、個人の生き方の選択に よって不合理な取扱いが生じない公平な社会保障制度を目指す。」、  「社会保障制度について、パートタイマー等雇用形態の多様化に対応した制度の見直 し、女性の就労など個人の選択に中立的な制度への見直しを進める。」ということがう たわれております。  また、平成13年6月に閣議決定された、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革 に関する基本方針におきましても、「個人のライフスタイル、就労形態、家族形態の多 様化…に現在の社会保障制度は十分に対応しきれておらず、働く意欲のある女性や高齢 者の就業、パート労働、派遣労働などに不利な面が残されている。現行制度の持つ『非 中立』的な効果を緩和し、国民にとって多様な選択を可能にする制度への転換を進め、 国民の能力発揮を支えることが、男女共同参画社会、生涯現役社会への道を拓く。」と されているところでございます。  次に3ページ、短時間労働等関連では、中段でございますが、平成13年6月の閣議決 定、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針の中で、「パートタ イム労働者、派遣労働者については、年金保障が十分でないなどの指摘があり、年金適 用の在り方を見直していく。」とされております。  このほか、3ページでは、政府・与党の社会保障改革大綱、総合規制改革会議の重点 6分野における最終とりまとめ、4ページの女性と年金検討会報告書、パートタイム労 働研究会中間とりまとめ、ワークシェアリングに関する政労使合意においても、パート 等への厚生年金の適用に関する検討や見直しが盛り込まれているところでございます。  次に、5、6ページですが、高齢者雇用との関連では、6ページの平成13年6月の閣 議決定におきまして、勤労収入のある高齢者に対する年金給付の在り方を検討すること とされており、また政府・与党の社会保障改革大綱においても、「所得や資産を有する 者など負担能力のある者は、年齢にかかわらず、その能力に応じ公平に負担を分かち合 う。なお、高額の所得や資産を有する者に対する社会保障給付の在り方などについて検 討する」といった記述が盛り込まれております。  一方、5ページの旧年金審議会の意見書や社会保障有識者会議の報告におきましては 、在職老齢年金制度について、高齢者の就労を阻害したり、抑制する効果があるとして 、その見直しを求める見解などに関し、さまざまな意見の整理が行われているところで ございます。  以上でございます。 ○神代座長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、何かご質問やご意 見がありましたらどうぞ。 ○清家委員  基本的には特に異論はないのですけれども、最初の開催要綱から今ずっとお話を伺っ ておりますと、1つのポイントが「支え手」を増やすということで、これは年金制度を 維持していくためにとても大切だと思うのですが、支え手を増やす中で、例えばパート タイマー等の非典型労働者に対する適用を拡張していくかどうかということが1つポイ ントになるかと思いますが、支え手を増やすというと、単に費用を負担してくれる人を 増やすというイメージになりますが、もっと大切なことは、非典型労働者にも年金権を 確保するといいますか、そういう人たちがきちんと年金のカバレッジの中に入って年金 制度の恩恵を受けられるという点がもちろん第一義的には大切なわけで、その点をもう 少し強調していただけたらと思います。  高齢者についても同じわけでして、働く意思と仕事能力のある高齢者が年金制度をで きるだけ長く支える側に入れるようにする。これは働く意思を尊重し、その人たちの就 労意欲を実現する意味ではとてもいいことですし、また年金の負担のすそ野を広げると いう意味で意味があるわけですが、同時にそれはそういう形で、結果としてはその人た ちが本当に年金が必要になったときにきちんとした年金が確保されるということが大切 で、そのためにすそ野を広げるということです。  「支え手」を増やすというのは、我々も自分たちで言っているのであれですけれども 、それだけを強調すると、年金制度を支えるためだけの話が前面に出ますので、一番大 切なのは、多くの人にきちんとした年金権が確保され、また、年を取った人も本当に年 金が必要のときにはちゃんとした額の年金が確保されるということが大切で、そのため に支え手を増やすという発想があるのだというような理解が得られるような形にした方 がいいのではないか。 ○樋口委員  清家さんと全く同じ意見ですが、「支え手」と同時に、こういう年金権が発生すれば 、それに伴う給付の方も時間のずれを持ちながら起こってくるわけですね。ですから支 え手、負担のところだけではなくて、給付のところもどうなっていくのかというような ことを考慮しながら年金設計をしていかなくてはいけないだろうということであります 。 ○大沢委員  短時間労働とかパートタイマーという言葉がよく使われるわけですが、一体どういう 人たちをパートタイマーと呼んでいるのかというので今非常に議論が錯綜しているよう に思います。例えばオランダのワークシェアリングを想定して、ここで多様な働き方が できる社会を目指すということですが、オランダのパートタイムというのは現在の日本 のパートタイマーとは、全然違うことはないですが、違った労働者ではないかと思いま す。  つまり私たちのイメージとして見ると、育児休業法、介護法など、今年改正されまし たが、そういう人たちが労働市場に戻ってくるときに短時間の労働が請求できると。短 時間勤務を請求したときに事業主は断っては……断ってはいけないという表現がいいか わかりませんが、それに沿う義務があるというような法律ができたと思いますが、例え ば女性が子育てをするときに、正社員の身分の人が短時間の勤務を選べるような働き方 、それが私の理解では、アメリカでもほかの国でもパートタイマーができた起源のよう に思っております。働き方の中に時間の選択肢を入れる働き方を「短時間就労」という ふうに呼んでいて、非典型雇用と呼ばれるのは、9時〜5時で働いている者を基準に置 いたときに非典型雇用、労働時間が短いから非典型雇用ではあるけれども、身分として は年金権その他すべて確保された労働者であるという認識に立っていると思います。  それに対して日本の場合は、非正社員という分け方において、今まではこういった社 会保障の枠組みの中に入ってこなかったわけでして、そこの2つを混乱して議論してし まうと、結果として10年後を見たときには異なった社会ができてくるのではないかと思 います。つまり短時間の労働者を、短時間勤務を選んだから何かペナルティーが科され るということではなくて、普通の働き方をしている人たちが、自分たちの多様なライフ スタイルに合わせて労働時間なり働き方が選べる社会をこれからつくっていくことであ って、私の理解ではそれが21世紀の私たちが目指している社会ではないか。そこをはっ きりと押さえた上で、こういった社会に向けて、どういう制度改革をしていくのかとい うことを考える必要があると思います。  そうではなくて、パートタイマーという現在のパートタイマーを原則として、それを 前提に10年後の制度設計を考えていけば、不安定就労の人たちが増えていく労働市場の 二極分化ということが起きてしまうと思いますので、そこら辺の定義についてぜひこの 研究会で明らかにしていただきたいと思います。だからパートタイマーという定義を本 当に使っていいのか、むしろ新しい時間選考型働き方とでもいいましょうか、そういう 形で分けていって、現在のパートタイマーの中でも期間的に働いている人がいるわけで すし、そういう人が中に入って、支え手として年金を支える人たちが増えていくのが理 想ではないかと思います。 ○神代座長  岩村委員、何かないですか。オランダが少し美化されているのではないかという気も しますけど。 ○岩村委員  私はオランダのことは余り存じ上げないので何ともコメントのしようがないのですが 、1つだけ気になったのは、先ほどご紹介いただいたこの研究会での開催要綱で、基本 的には(1)では、短時間労働者等に対する厚生年金の適用拡大の在り方と雇用への影響 の効果ということが1つ検討事項で、もう1つも、高齢者雇用と年金制度ですが、これ も基本的には多分厚生年金というのが念頭にあるのだと思うのです。  やや気になったのは、どちらにしても、例えば短時間労働者についても雇用の影響や 効果を考えたときに、我々が議論するのは厚生年金だけを念頭に置いて議論していいの か、それとも先ほどの社会保障審議会のところに出てきたり、ほかのところにも出てき ましたが、健康保険までもある程度念頭に置いて議論する必要があるのか。それによっ て議論するベースは全然違ってくるのではないかという気がします。  それともう1つは、企業年金との関係はどうなのかというのがやや気になっていて、 今記憶がはっきりしないのですが、厚生年金は多分自動的に連動すると思うのですが、 確定給付基金の方がどうだったか。その辺がどう絡んでくるかによって制度設計を考え る上でのインパクトが違ってくる。  だからその辺のところまで検討した上で、我々は何か意見を書いていいのか、それと も厚生年金に限って議論せよということなのか、その議論の場というのは考えておく必 要があるという気がいたしました。 ○神代座長  大事なご指摘だと思うので、私もそれに関連して、さっきの大沢委員のご発言との関 連で言うと、オランダはワークシェアリングでは非常に今有名になっているのですけれ ども、他方でオランダは、ドイツやスウェーデンと並んで50歳代、60歳代の初めの公的 年金の受給資格になる前の高齢者で、障害年金でぶら下がっている人がめちゃめゃち多 い国です。そういう意味では全然理想的ではない。ですから1つの制度のスポットだけ 見ると全体像を見誤る危険があるんですね。  今、岩村委員がご指摘になったように、私はできるだけ関連の制度は一般均衡的に全 体を視野に入れて議論しないと政策判断として間違えるのではないかと思いますけど、 事務局の方はどういうふうにお考えでしょうか。 ○辻局長  基本的な事項ですので、私の方から。私ども年金との関係なのでこういう要綱の書き 方をさせていただいていますが、勉強すればするほどこの問題は全体の姿の中の1つだ と。すなわち例えばパートタイム労働研究会中間とりまとめを私も読ませていただきま したが、そういう働き方をこれから質的にも見直ししていくと。そういう一環で、こう いう社会保険の適用も見直すべきだと、こう位置づけがされていると承知していますが 、こちらから見たら、支え手を増やすということになるわけですけれども、楯の両面で あって、私どもは短時間就労の質というもの、年金サイドから言うのはおこがましいと 思いますけれども、厚生労働省の研究会の全体の動きを見ておりましても、その一環の 中に位置づけて厚みのある議論をお願いしたいと思います。そういう意味では、当然整 合的に政策が行われなければ目的は達せられないので、社会保険全体の問題であるとい う認識を持っております。  したがいまして、私ども全体の議論をいただくことは何ら差し支えないわけであって 、私どもその点は、例えば健保であれば、健保の方の部局にも十分議論の状況を伝えた いと思います。  それから、企業年金の関係では、今の確定拠出あるいは新企業年金法の企業年金は、 厚生年金の被保険者であることが適用の条件になっておりまして、したがって、適用拡 大がそのような企業年金の適用の道にストレートにつながると理解しております。 ○佐藤委員  検討事項についてはこれでいいと思うのですけれども、それを検討するとき、どの辺 まで視野に置いてこの2つの課題を議論するかということなんですが、1つは趣旨に「 女性や高齢者をはじめ」とあるのですから、女性、高齢者だけではないのだと思うので すが、短時間労働者のことを考えますと、特に支え手の拡大とか年金権というようなこ とを考えますと、若年を問題の視野に入れておく必要があると思います。余り女性、高 齢者というふうに対象層を限定するのは問題かと思っております。ですから検討事項自 体はいいのですけれども、対象層は余り女性、高齢者というふうに限定しない方がいい のではないか。  もう1つ、これは雇用と年金ということなので、雇用者を想定することになるのでし ょうけれども、しかし、社会全体として支え手、広い意味では働く人たちを増やす、就 業者を増やしていくことが非常に大事になっていくと思いますので、そういう意味では 、雇用だけではなくて、広い意味で就業者というものを考えておく。そういう意味では 就業政策と年金との兼ね合いというふうに少し視野を広げておくことが必要なのではな いかと思います。 ○神代座長  何か事務局ありますか。 ○辻局長  私どもどうしても立場上こういう文章になっていますけど、誠に仰せのとおりだと思 いますので、むしろ年金部会でご議論いただく前提として、こういう専門家の皆様にお 願いする趣旨は、そういう厚みのある議論をぜひお願いしたいという気持ちも私ども正 直ありますので、幅広い議論をいただきたいと思います。 ○大沢委員  私が言ったことが余りうまく伝わっていないようには思うのですが。 ○神代座長  いや、そんなことない。 ○大沢委員  そうですか。じゃ、繰り返しません。ただ、一言だけ言いますと……後でまた。 ○辻局長  私、あのレポートもよく読みましたし、今の短時間就労というものがどのような質の ものであってほしいか。それから要綱で、子育てと両立する仕事の仕方、趣旨ではご説 明として入っていませんでしたが、ただ単に厚生年金の適用拡大するというだけではな くて、そのような短時間労働がどのような形のものでこれから展開するのかということ は、当然議論の中で行われることは想定しているということを申し上げたかったわけで ございます。 ○大沢委員  例えば高齢者雇用にしても、労働時間を選べるようになると、自分らしい働き方がで きるわけですので、ですから別にオランダのように疾病障害保険のようなものを使わな くても、60歳、65歳になって能力に合わせて働くときに、私は週3日働きたいという働 き方があってもいいのではないかということです。  それから、また女性の話に戻って恐縮ですが、今諸外国と比べて、特に30代の前半で 就業率が大きく下がっております。この傾向が全然変化していないわけですね。ここの 部分が出生率の低下にも大きくかかわっているわけですが、オランダの例を見ますと、 M字型就労が台形型に移っていくのではなくて、まず若いときにだけ働いてやめてしま うパターンから、短時間就労が増えたことによって、それが台形型に移っていくわけで すね。ですから、将来的に見たときに、現在の日本の労働力不足を考えていけば、高齢 者も母親も小さい子どもを持っても働けるような働き方であるという面で、こういった 時間の選択肢を働き方の中に入れるということは日本のこれからの労働力不足の中では 非常に有効な手段なのではないかと思いますので、オランダモデルということを私は言 っているわけではなくて、10年後の日本の姿を考えて今何ができるかといったときに、 例えば1つのあり方として、既に短時間勤務で働いている女性もいるわけですし、これ から介護労働になっていけば男性も短時間で週3日の就労ということをせざるを得ない ような状況になっているわけです。  そういうときに、そういう働き方ができるのだと。今まではまだそういう例がなくて 、広がっていないわけですけれども、それが広がった形になっていけば、より有効に人 的な資本が活用できて、しかも税収入も担保できるということで、そういったモデルを 念頭において、現実問題としてどうするのかということをまた次のステップとして考え るべきだと思うのですが、この見るべき姿は今議論しておくべきなのではないか。  申し訳ありません、ちょっと長くなりましたが、失礼いたしました。 ○中原企画官  技術的な点だけ、大沢先生にということなんですが、資料1−1の中で、「短時間労 働」、「短時間労働者」という用語を使ってございますが、厚生年金がどうしても念頭 にございますので、厚生年金の関係で言えば、現在ご存じのように4分の3の要件とい うのがございますが、労働力調査と同様の、一定の時間以下の労働者というイメージに なろうかと思うんです。ですからパートや、それに類する名前で呼ばれている方という ことに限らず、一定の時間以下の方であれば、当然正社員的な処遇受けている方でも、 いわゆるパートタイマーとは違うような、嘱託とかいろんな働き方があるかと思います が、そういう方も含めて検討してまいる必要があるだろうということで、「短時間労働 」という表現を、こちらの方が若干よろしいかと思って使わせていただいているという ことでございます。 ○大沢委員  わかりました。 ○神代座長  それでは、まだご議論あったら、後で追加していただくことにしまして、資料がたく さんありますので先に進ませていただきたいと思いますが、次の議題は、短時間労働な どの非典型労働の増加への対応ということであります。これにつきまして、事務局から 説明をしてください。 ○中原企画官  資料4ですが、枝番が振ってありまして、4−1から4−7までございます。これに ついてのご説明でございますが、まず4−1は、年金制度とのかかわりにおける短時間 労働の現状ということでございます。  まず1でございますが、短時間労働者の数ということでさまざまな定義がありますが 、週35時間未満ということで言えば、13年の労働力調査で約1,200 万人、パートタイム 労働者と呼称されるということであれば、13年8月の労働力調査特別調査で701 万人と いうことでございます。  それから、通常の労働者よりも所定労働時間等が短いということであれば、918 万人 、これは毎月勤労統計調査でございますが、このような状況です。  短時間労働者数の推移、増加の背景については、それぞれ4−7で必要な資料を付け てございますので、後ほどご参照いただければと存じます。  厚生年金の被保険者の推移につきまして、資料4−7の中から資料を3つほどご紹介 をさせていただきたいと思います。まず16ページでございまして、これは人口に対する 厚生年金の被保険者比率などの推移をまとめたものでございます。これは男女計でござ いまして、男女別のものも以下に続けてございます。これで一番上の表が人口に対する 就業者の比率、2段目が人口に対する雇用者の比率、1つ飛ばしまして3つ目が人口に 対する厚生年金の被保険者の比率ということでございます。  これを見ていただきますと、まずこの3つの指標の動きですが、10年前(平成2年) と比較した場合ということで言えば、就業率と厚生年金の被保険者の比率は落ちていま す。61.9%から59.5%へ、あるいは30.6%から29.2%へと。一方、雇用者の比率は42.6 %から44.1%へと上昇しております。これが1点。  それから、支え手を増やすという観点から申し上げれば、ご覧のように人口と就業者 の間、あるいは就業者と雇用者との間、雇用者と厚生年金の被保険者との間、それぞれ の度合いにはそれぞれ大きな差があるわけでございまして、これらが縮小し、最終的に 被保険者の比率が高まるということが量的に支え手を増やすということにつながるとい うことがございます。これが2点目でございます。  19ページをご覧いただきたいのですが、今度は雇用者を分母にとりまして、雇用者に 対する厚生年金の被保険者の比率をとってみた図表でございます。これで見た場合、近 年における厚生年金の適用される労働者の割合の低下が顕著にうかがえるわけでござい まして、平成2年の71.7%から66.2%へと5ポイント以上低下しているということでご ざいます。その主たる要因、背景といたしましては、短時間労働者をはじめとする非典 型労働者の割合の増加があろうかと思います。  下の方の2本のグラフですが、実線の方は35時間未満雇用者の全雇用者に占める比率 でございます。点線はパート・アルバイトと呼称されている方が雇用者の中で占めてい る比率ということでございますが、この両者はほぼ同様の動きを示しておるところです が、これら2つの指標とも、近年増加傾向が明らかにうかがえるわけでございます。  22ページをご覧いただきたいのですが、これはそれぞれの年齢階層毎に厚生年金の被 保険者である方の比率をとったものです。これも男女計でして、男女別のものは後ろの 方に付けてございます。  3年間隔でとってございますが、これを見た場合に非常に顕著なことは、特に、15歳 〜19歳、20歳〜24歳、25歳〜29歳層といった若年層における被保険者の低下が近年著し いということでございます。これは幾つか要因があろうかと思いますが、例えば高学歴 化やあるいは若年層における非正規労働の進行ということが考えられようかと思われま す。 ○清家委員  すいません、確認ですけど、縦軸の方は15歳以上人口ですね。総人口ではなくて、人 口に占める割合のところですけれど。 ○樋口委員  何ページ。 ○清家委員  16ページぐらいからご説明いただいた人口に占める割合というのは、就業者率が59% だから失業率足すと労働力率が63ぐらいですよね。 ○中原企画官  15歳以上人口でございます。  資料4−1に戻っていただきまして、3 短時間労働者に対する年金制度の適用状況 でございますが、2ページ目、一番直近の調査によりますれば、21世紀職業財団の「多 様な就業のあり方に関する調査」によれば、この調査におけるパートは、所定労働時間 が正社員より短いという定義ですが、社会保険に加入している者が約4割(39.4%)と いう結果が出ております。  それから、厚生年金が適用されていない短時間労働者の数ですが、これは平成10年の 「公的年金加入状況等調査」によれば、約490 万人、そのうち現在厚生年金任意加入と なっておる5人未満個人事業所に勤務する者は約70万人という状況でございます。また 、これらのものについて、第1号被保険者と第3号被保険者の比率は37:63程度となっ ております。  資料4−2に移らせていただきます。女性と年金研究会報告書の抜粋ですが、女性と 年金研究会の報告書におきましては、短時間労働者等に対する厚生年金の適用の問題に つきまして、拡大を図る方向でさまざまな論点について検討していくべきであるとのま とめががなされたところでございます。そのまとめに至るまでの議論の経緯につきまし ては、この資料にて後ほどごらんいただきたいと存じますが、この検討すべきものとさ れたさまざまな論点について振り返ってみたいと思います。  5ページを開いていただきたいと思いますが、ここで6として「短時間労働者に対す る厚生年金適用を行う際の論点」という章がございまして、その(2)で、「短時間労 働者に対する厚生年金の適用拡大については、今後、以下に掲げる論点を踏まえた議論 を重ねていくべきものと考える。」とされ、その(1)「保険料負担の増加」の中で、「 短時間労働者を雇用していた事業主について……保険料負担の増加について理解が得ら れるかどうかという論点がある。」とされております。  7ページを見ていただきたいのですが、(4)の「就業調整が残る可能性」のところで 、「現在の厚生年金の適用基準及び被扶養者認定基準を引き下げる場合には……新たな 基準を免れるための調整行動も、なお一部残るのではないかという論点がある。」とさ れております。  それから(5)の「企業行動や労働市場への影響・効果」におきまして、「短時間労働 者に対して厚生年金の適用を拡大することは、雇用コストの増加を伴うものであること から、就労形態、企業行動に与える影響等について、今後さらに詳細な分析、検討を行 うことが必要である。  他方、短時間労働者の雇用管理の改善、短時間労働者の能力の有効な発揮、企業にお ける計画的な人員配置が図れるといった、企業、さらに社会全体としてのメリットにつ いても、分析、検討が必要である。」とされているところでございます。  ここで、資料4の目次の部分に戻っていただきたいのですが、ここにございますよう に、本日の検討会におきましては、  【論点1】厚生年金の適用拡大が企業の行動や労働市場に及ぼす影響・効果について 。具体的には、1−1 年金制度と短時間労働者の就業行動等との関わりについて。1 −2 適用拡大に伴う労働市場への影響等について、1−3 適用拡大の意義・効果等 について。  【論点2】新たな基準点において就業調整が生ずる可能性について。  この2つの論点についてご議論をお願いしたいと考えているところでございます。  資料4−2の説明は以上でございまして、資料4−3「厚生年金の適用基準について 」という資料ですが、1ページから2ページにかけての現行基準及び外国の年金制度に おける短時間労働者への適用の状況、あるいは我が国雇用保険の状況につきましては、 後ほどご覧いただければと思っております。省略をさせていただきます。  そこで、2ページの(3)「女性と年金検討会における検討」という項目がございま すが、昨年12月に報告書が取りまとめられました女性と年金検討会におきましては、短 時間労働者に対して厚生年金の適用を拡大する場合の具体的な新しい適用基準について 、本日ご出席いただいております樋口先生から以下の2つの基準を設けてはどうかとい う提案がなされて議論が行われました。以下、「A案」と称させていただきますが、(1 )時間要件として「週の所定労働時間が20時間以上の者」。(2)収入要件として、「週所 定労働時間にかかわらず年収が65万以上の者」のいずれかに該当する場合には、厚生年 金の被保険者とするというものでございます。  なお、(2)の収入要件における年収の水準の設定については、時間要件の下限時間で ある20時間と最低賃金額の水準が考慮されているものでございます。  この新しい基準についての考え方でございますが、  イ 個人が意欲と能力に応じて力を発揮できる社会を目指し、個人が主体的に多様な 働き方を選択できるよう、その制約となるような仕組みはできるだけ除去する方向を目 指すことが必要。  ロ あわせて、短時間をはじめ就業形態の多様化が進展する中で、年金保障の範囲を 拡充することで、これら働き方をより魅力あるもきとするとともに、年金制度への信頼 を高めていく。  また、制度の支え手の拡大を通じた財政基盤の強化や、負担の公平性の一層の確保を 図る。  ハ このため……厚生年金の適用基準及び国民年金の被扶養者認定基準を見直し、短 時間労働者が自らの意欲と能力に応じ安心して働くことを可能とすることが必要。  ニ このため、具体的には……厚生年金の適用基準及び国民年金の被扶養者認定基準 (いわゆる130 万円基準)を就業調整の原因とならないような水準まで引き下げること が必要なのではないか。  ホ また、ニの「時間基準」の引下げに加え、厚生年金の適用基準に「収入基準」を 加える方向で検討してはどうか。  収入基準を加える場合には、「時間要件」のみでは対応困難な事項についての確保が 可能となるのではないか。  すなわち厚生年金が適用される労働者と同等ないしそれ以上の収入を得ている者が、 所定労働時間が短いというだけで報酬比例の負担を免れることのないようにすること。  「時間基準」の引き下げに伴う、新たな就業調整行動が起きないようにすること。  次に資料4−4でございますが、「厚生年金の適用拡大に伴う保険料負担とその影響 等について」でございます。  先ほどのA案のカバーし得る範囲を統計上検討すれば、次のようになろうかと思いま す。  「短時間パート」のうち、「20時間未満」の者と「20〜30時間未満」の者、これらは ともに現在は厚生年金非適用でございますが、この比率はおよそ3:7ということで、 すなわち20時間以上にした場合に、これらのうち7割がカバーできるのではないか。  一方、パートのうち、年間賃金が60万円未満の者は11.5%にとどまっている。これは 平成7年のパート実態調査でございます。  したがって、この結果による限り、A案によって、現在非適用となっている短時間労 働者のかなりの部分をカバーし得るのではないかと想定されます。  被保険者数の見通しにつきましては、6年ぶりのパート総合実態調査が秋ごろにまと まりますので、それを待って検討する必要があるのではないかと考えております。  なお、雇用保険における短時間労働被保険者数は、13年3月現在で約140 万人でござ います。A案による場合に新たに被保険者となる者の数は、これよりも相当程度多くな るものと推定されます。理由については(注2)に述べてございますが、後ほどご参照 いただければと思います。  それから、この場合に想定される企業の対応ということですが、コスト増への対応に ついては、多様なものが想定されるのではないかということで、以下述べてございます 。例えば、(イ)の商品やサービス価格への転嫁ということがあるのではないかと思い ます。  あるいは、(ロ)の労務コストの見直しということで、その場合、(1)新たに適用が 行われる短時間労働者に限った見直し、あるいは(2)正社員も含めた業務の進め方を全 般的に検討する中でのコストの見直しといったことがあろうかと思いますが、(1)につ いては、人材確保上の困難が増大する可能性があるのではないか。  (ハ)の短時間労働者の処遇や配置の見直し、意欲の喚起等による生産性向上への取 組み。  (ニ)の短時間労働者数の見直し。この場合も、生産性の向上が伴わなければ必要な 要員の確保ができず、業務が縮小する等の可能性があるのではないか。  (ホ)の所定労働時間の短縮による適用回避や、(ヘ)の短時間労働者の業務や外注 化による適用回避。ただ、これらについても、人材確保上の困難、費用対効果の問題な どが想定されるところでございます。  それから、21世紀職業財団が最近行いました「多様な就業形態のあり方に関する調査 」によりますと、仮に適用基準が「4分の3」から「2分の1」に拡大された場合に、 半数近くの事業所が「適用をさけるために特段の措置は講じない」としております。こ れに対し、極力適用回避しようとするのは1割ぐらいです。  また、増加するコストへの対応として最も多いのは、「労務コスト全体での中で調整 」、次いで「生産性の向上、価格転嫁等で対応」などでございます。  調査の詳細については資料4−7のp31以下で掲げております。また、この中では業 種あるいは企業規模別の集計も行っておりますので、後ほどご参照いただければと思い ます。  こういった調査の結果などに照らせば、各業種、企業毎の短時間労働者の雇用割合な どによる影響の差異は想定されますが、全般的に見れば、対応可能な範囲と見ることが できるのではないだろうか。また、今後のパート対策の進展や就業調整の縮小により、 短時間労働者の意欲の喚起、能力の一層の発揮が図られ、生産性が向上するならば、こ れらコストについて一層円滑な吸収が図られることも期待されるのではないかというこ とでございます。  そこで、資料4−5で【論点1】に入りますが、「厚生年金の適用拡大が企業の行動 や労働市場に及ぼす影響・効果等について」ということです。  まず、これをさらに細分化した「I−1 年金制度と短時間労働者の就業行動等との 関わりについて」ですが、まず就業調整を行っているパートは、最近の調査によれば、 約4割ぐらいであるという結果が出ております。  また年末の繁忙期等において、調整ラインが年収を超えないようにするために短時間 労働者が一斉に休暇を取得する等により、円滑な企業活動上支障となっている例につい てはかねてより報告されているところです。  事業側の状況等については、(2)に掲げてございますので後ほどご覧いただければ と思いますが、労働時間に差をつけて適用パートと被保険者適用パートを区分し、選択 させる例が比較的多いという結果が出ております。  そこで、短時間労働者の就業行動と年金制度の関わりについてでございますが、次の 3ページの図表を併せてご参照いただきたいのでございますが、次のように整理できる のではないかと思います。  多くの企業において、短時間労働者の全部又は多数に厚生年金が適用されないよう、 その所定労働時間を通常の労働者の4分の3未満(週40時間労働であれば30時間未満) に設定することが行われている。この場合には厚生年金から外れることになります。  そのような枠組みを前提に、短時間労働者本人が被扶養者認定基準の130 万円未満に 年収を抑えることを希望する場合に、時間外労働を抑制したり休暇を取得する等によっ て総労働時間を抑制し、もって年間賃金を抑制しようという行動が生じているのではな いか。 また、企業が、このような短時間労働者の調整行動を念頭に賃金の水準を設定 することで、賃金の抑制という結果が生じているのではないだろうかということを図表 でまとめてございます。  このような場合には、(2)の(1)、(2)に掲げてありますように、短時間労働者の意 欲や能力を活かす上での支障になっているのではないだろうか。  さらには、賃金について正社員との格差にもつながっているのではないだろうかとい うことでございます。  年金制度の就業行動への影響については、ともすれば、年末の要員確保の問題に限定 して論じられがちですが、税制や社会保険制度等を考慮して、労働時間や賃金水準を抑 制しようとする企業や労働者の行動として幅広く捉えることができるのではないかとい うことで3ページの表としてまとめたものです。  次に4ページの「I−2 適用拡大に伴う労働市場への影響について」ということで 、企業の雇用行動と短時間労働者の就業行動に分けて整理を試みております。  まず企業の側ですが、(1) 適用拡大をした場合に、所定労働時間を「週30時間未満 」程度に抑える必要性が縮小することや、後ほど申し上げますが、短時間労働者の就業 ニーズが変化することに伴って、短時間労働者の職務等の在り方と併せて、より業務の 実態に沿った形で労働時間や賃金のあり方を見直そうとの機運が高まるのではないか。  (2) フルタイム労働者との間で雇用コスト差が相対的には縮小することに伴い、契 約社員などのフルタイム労働者や、より長い時間働く短時間労働者へのニーズが拡大す るのではないだろうか。  (3) 中長期的に、正社員を短時間労働者等の非典型労働者に代替しようとする動き が緩和されるのではないだろうか。  ただし、これについては、短時間労働者の増加に係る他の要因や、均衡処遇等に係る 施策の今後の動向にも関わってくるのではないか。  (4) 一方、コスト増への対応として、雇用の縮減等を図ろうとする動きも想定され るところですが、そのような選択については制約も大きいのではないか。例えば、雇用 の縮小による人件費の縮減については、生産性の向上が伴わなければ、業務そのもの縮 小につながりかねないという問題があり、あるいは派遣や個人請負の利用などについて は、費用対効果や人材確保上の制約があるのではないだろうか。  (5) 短時間労働者の就業行動に関しましては、本人の保険料負担の増加や追加的な 就労で手取りを増やす途が拡がることに伴って、収入の増加を希望する者が増加するの ではないか。  (6) 具体的には、追加的な就労や、より責任が重い職務を受け入れようとする者の 割合が相対的に高まり、短時間労働の多様化が一層進展するのではないか。  一方で、短時間労働者の現在の働き方への満足度が比較的高いということにも留意が 必要ではないか。  (7) 年末の繁忙期等における就業調整は、年金制度との関係では、解消するのでは ないか。  (8) このように、通常の労働者の働き方に近接した働き方が相対的に増加してくる とすれば、短時間労働者の適正な労働条件の確保や雇用管理の改善に向けた取組がより 一層重要になるのではないか。  (9) なお、追加的な就労が困難な労働者に対する雇用機会や労働条件面での影響の 可能性も想定されるが、現在の一般労働者に比べて高い水準にある短時間労働者の求人 動向や、今後見込まれる労働力供給の減少に照らせば、人的資源を確保していく上で、 企業の対応はかなり制約される可能性があるのではないか。  6ページの「I−3 適用拡大の意義・効果等について」ですが、まず「1 現状認 識」ということで、  (1) 現行の税制や社会保険の仕組みを意識して、あるいは被扶養者認定基準の範 囲内で働きたいというパートのニーズを考慮した所定労働時間や賃金水準の設定が行わ れていることが、短時間労働者の能力の有効な発揮を図る上での阻害要因となっている のではないか。  また、計画的、柔軟な人員配置や、短時間での就労を希望する有為な人材の確保の上 での妨げとなっているのではないか。  (2) 年収を抑えようとする就業調整行動が、低賃金を助長している面があり、能 力向上意欲にもマイナスになっているのではないか。  (3) 一方で、今後の少子高齢化の一層の進展、厳しい国際経済環境の下で、こう いった短時間労働の現状の改善が急務ではないか。  (4) また、今後、パート労働力の主たる供給源である中高年女性の高学歴化とか 、正社員としての勤務経験を有する者の割合の高まりの中で、人的資源の戦略的な活用 が重要となってくるのではないか、 ということがございます。  (5) そういった中で、短時間労働者への厚生年金の適用が拡大された場合には、 企業においてさまざまな動き、対応が想定されるところですが、コスト増への対応ある いは職務や処遇賃金設定の見直しなどの取組を契機として、短時間労働者の一層の能力 の発揮や生産性向上、処遇の改善などにつなげていくことが企業や労働者、さらに社会 としての課題となるのではないかという認識でございます。  次に「2 適用拡大の意義・効果等」ということでございますが、  (1) 短時間労働者に対し被用者の一員としての負担を求めつつ、等しく年金保障 が行われることで、より、仕事や働き方の実態に即した柔軟な賃金・労働時間管理が進 むのではないか。  多様な労働者の能力・経験を有効に発揮できる雇用機会としての短時間労働を整備・ 拡充する重要な契機となるのではないか。  (2) さらには、企業による短時間労働者に対する人的資源投資の促進等にもつな がることが期待されるのではないか。  (3) また、厚生年金による老後の保障が等しく行われることによって、短時間労 働者の就業意欲の向上や正社員も含めた職場の意識改革も期待できるのではないか。  (4) さらに就労や就業形態の選択に対し、より中立的で公正な仕組みの実現にも 寄与するのではないか。  (5) 正社員型の短時間勤務など、正社員も含めた多様な働き方の下での能力発揮 の基盤を整えて、多様就業型のワークシェアリングを早期に具体化する上でも、適用拡 大が重要となるのではないか。  (6) このような中で、多様な雇用機会の創出は、年金制度における支え手を増や す上で大きな意義があるのでないか。  そこで、「3 労働政策との連携の必要性」ということでございますが、  (1) このような短時間労働者の戦略的な活用、処遇の改善等は現在非常に大きな課 題となっている中で、厚生年金の適用拡大は本格的な少子高齢化社会の到来に向けた社 会保障のみならず労働政策上の取組の一環として重要なものとなるのではないか。  (2) ただ、これらの具体的に向けては、短時間労働者に対して、その就業の実態や 、通常の労働者との均衡等を考慮した適正な労働条件の確保、雇用管理の改善等を通じ た能力の有効発揮を図るための労働政策上の取組が極めて重要であり、その進捗が強く 望まれるのではないか。  (3) なお、税制等における配偶者控除等の見直しの動きにも留意が必要。  以上、述べたようなことにつきまして、年金制度の関わりにおいて図に示したものが 8ページの図でございます。支え手の量的な拡大と質的な拡大と分けて論じておりまし て、量的な拡大といったことでは被保険者数の増加、質的な拡大との関係では負担能力 の拡大、それぞれとの関わりにおいて労働政策上の取組との連携が重要ではないかとい うことを示しているものでございます。  最後になりますが、資料4−6「新たな基準点において就業調整が生ずる可能性につ いて」ということでございますが、検討の前提としては、先ほどの時間基準の引き下げ のみを行った場合の可能性ということで検討をしたいと思っております。  これに加えて、新たに収入基準を設ける場合につきましては、就業調整が生じる可能 性は一層小さくなることに留意が必要であろうと思っております。その理由としては、 2(2)に記述してありますように、  (1) 収入基準を設けた場合には、賃金水準を含めた見直しが必要となるということ で人材確保上の問題が生じること。  (2) 市場賃金にて短時間労働者を雇用しようとする場合には、所定労働時間を週20 時間ラインよりもかなり短くする必要が生じること。  (3) 現在の短時間労働者の年収分布、資料を付けてございますが、現在の年収分布 から見て、労働者にとって大幅な手取りの減少につながってしまうこと。 がございます。  そこで時間基準のみの引き下げを前提に以下検討をいたしますが、「3 労働者側に おける調整行動へのニーズ」については、かなり限定されるのではないかと思われます 。  (1) 平均的な短時間労働者における総報酬導入後の月収換算の実質的な保険料負担 を約7%程度と仮定した場合に、「所定労働時間」別に、納付すべき保険料をどの程度 の就労で得られる稼得に相当するかを見た表が次の表ですが、これを見ていただければ 、賃金の減少よりも免れる保険料の方が大きいケースは、実は所定労働時間が週20時間 ちょうどの場合に限られるということでございます。それ以上の場合であれば、労働時 間に換算して短くすることに伴う収入の減少の方が大きいということでございます。  (2) それから、厚生年金が適用されることによる報酬比例部分の給付あるいは障害 厚生年金等の保障が及ぶという点がございます。  (3) 所定労働時間・日数の設定は基本的に事業主側の決定事項でありますので、労 働者側から主導的にその長短を設定することは、現在の130 万ラインでの追加的な就労 に係る就業調整とは違って難しいのではないか。  (4) 時間基準を大幅に引き下げた場合には、追加的に就労し、あるいは時間当たり 賃金水準の改善を求めようとする者が多くなるのではないか。  また、その結果として、現在指摘されておる調整パートと非調整パートとの間の労働 時間や時間当たり賃金の差が縮小することとなれば、そのことも本人負担分の保険料コ ストの緩和につながるのではないか。  「4 事業主側における調整行動へのニーズ」ですが、事業主側についても、以下の ような理由で、実際にはコスト面で見合わないことが多いものと考えられ、21世紀職業 財団の調査結果に照らしても、調整行動は限定的なものとなるのではないか。  その理由ですが、  (1) 所定労働時間の短縮による調整については、かえって管理コスト、例えば採用 コストですとか、代替要員の確保、通勤費、こういったコストがかさむおそれがあるこ と。  (2) 先ほど見たように多くの労働者にとって、所定労働時間の短縮が賃金総額その ものの減少に直結するため、その納得を得ることが難しい。あえて短縮を行った場合に は、就業意欲や帰属意識の低下、人材の確保等での混乱を招くおそれがあるのではない か。  (3) 週20時間未満の勤務については、一般化できる職務等は限定されるのではない か。  (4) 所定労働時間の短縮による保険料負担を免れる途以外にも、先ほど御説明しま したように、さまざまな選択肢があり得る中で、いずれをとるかは費用対効果の問題で はないか。  最後に「5 二重就労との関係」でございますが、厚生年金の適用範囲が拡大された 場合には、現に二重就労、2つの事業所にまたがってそれぞれ適用基準に満たない時間 で就労している方についても、新たに厚生年金の適用対象となる可能性が高まり、労働 者としての年金保障の機会が拡がることとなるのではないか。  以上でございます。 ○神代座長  大変大量な資料でしたので、十分に理解できたかどうかよくわかりませんが、ご質問 、ご意見ありましたらどうぞ。 ○樋口委員  図の方から、直接的なことではないのですが、資料4−7の22ページのところに年齢 階層別の厚生年金被保険者比率で雇用者に占める比率がございますね。例えば20〜24歳 が76.6〜56.8まで下がってきているわけですが、これ以外の人たちは、本来国民年金に ここのところは入るはずだと考えられますが、無年金者、20〜24歳の人口に占める無年 金者が増えてきているのかどうか。要するに厚生年金に入らないのだけど、国民年金に 入っているというような人たちが逆に増えてきているのか。 ○中原企画官  趨勢としては、若い方における国民年金の未納・未加入者の割合は増加をしていると いうことがございます。  もう1つ、制度が改正になっておりまして、学生については猶予措置が設けられたと いう点がございます。 ○樋口委員  それともう一点ですが、最後にご説明いただいた資料4−6で、時間についての基準 を検討なさっていらっしゃる。年収については趣旨がはっきりしなかったので確認した いのですが、年収についてはどういう考え方なのでしょうか。例えば現行の130 万円の ままというようなことを考えていらっしゃるのか、それとも年収については基準を設け ないという場合を想定しているのか。 ○中原企画官  まず資料4−3をもう一度見ていただきたいのですが、ここで新しい基準についての 考え方ということで、3ページ目のホで、時間基準の引き下げに加え、厚生年金の適用 基準に収入基準を加える方向で検討してはどうかといった考え方に立っております。  その上で、資料4−6につきましては、収入基準を設けた場合にはかなり就業調整を 抑制する効果が見込まれるところですので、それについては資料4−6の1ページの2 の(2)で書いてございますが、ここでは議論の整理のためにあえて時間基準のみで引 き下げを行った場合にどの程度新たな就業調整が起こり得るであろうかということで議 論を以下組み立てておるところでございます。 ○榮畑年金課長  若干補足いたしますと、厚生年金の適用基準につきましても、今答弁がありましたよ うに、資料4−3の3ページで書かれておりますが、従来の時間基準だけではなくて収 入基準も新たに加える方向で検討したらどうかというつもりでおります。ただ、その場 合に収入基準を幾らに設定していくか、これはまたこれから十分議論させていただかな ければならないだろうと思っておりますが、基本的には就業調整ができるだけ起こらな いような範囲まで下げていくという方向で大いに考えていかなければならないのではな いか。具体的にどうするかはまた十分ご議論いただければと思っております。 ○清家委員  私もこの収入要件で下げていくのはいいと思うのですが、1つ技術的なことを伺いた いのですが、現在の制度をよく覚えてないのですが、たしか厚生年金の標準報酬月額に ついては上限と下限が設けられていますよね。下限ですと、今、月当たり……。 ○中原企画官  9万8,000 円です。 ○清家委員  9万8,000 円ですか。それを例えば12倍すると、もちろん65万円よりもずっと高くな るのですが、例えば仮に65万円とした場合の65万円の関係はどのようになるのでしょう か。 ○榮畑課長  収入要件を下げていくというふうにすれば、標準報酬月額の下限を仮に9万8,000 円 と置いておくと、そこはいろんな点で不合理が出てきますので、当然そこは併せて考え ていくべきことなのだと思っております。 ○岩村委員  余り細かい技術的なことを議論するのはよくないのかもしれませんが、法律家なので どうしてもひっかかるところが幾つかあります。今の収入の点に関係して1点は、「収 入」という言葉を使っていることがひっかかる。要するにこれは被保険者であるかどう かですから、本来だと「報酬」という言葉なのではないか、厚生年金の用語からすれば 。収入ということになると、例えばその人が家を持っていて家賃収入があるとか、全部 入ってくることになっておかしくないか。だから「収入」ではなくて「報酬」なのでは ないか。  それから、技術的で申し訳ないのですが、今までの仕組みだと、雇い入れの時点でど ういう労働条件になっているかということでもって被保険者資格の有無を判断するわけ ですね。ですから従来の所定労働時間で判断するというのは、雇い入れ時でどう約束し ているかということで判断できますから非常に楽なのですが、収入という形でやってい くとすると、雇い入れ時の約束では、例えば64万であったというときには、途中で時間 外労働とか入って、最終的には年間65万を超えていたときが出てきたときにどうするか 。技術的にどっちかにすればいいのですけれども、そういう問題があるのかなというこ とです。  それともう1つは、これはどの程度あるかどうか知りませんが、つい最近、私もたま たま知った例があるのですが、結局こういった非典型的なスタイルで働いている就業者 の場合、手取りを増やしたいということで厚生年金と健康保険は入りたくない、従来ど おり国民健康保険と国民年金で結構だから社会保険料は引かないでくれと希望すること があり、事業主もそれを受け入れる。本来はこれは違法で、あり得ないはずなのですが 、実際には生じ得る。  ほかの例でも結構同じことは生じるのですが、特に賃金額が下がってきたときにはそ ういう要望が出てくる可能性があって、ご承知のように保険料徴収債権が2年で時効に かかってしまう。そうすると問題は、労働者本人が資格請求をすることは非常に考えに くいので、その2年の時効が順次来る前にきちんと監査でそういう事態を捕捉できると いうことは大丈夫なのだろうかということです。特に2年間で時効にかかってしまいま すと、厚生年金の給付額にもはね返ってきてしまいますので、その辺の問題はどうなの だろうか。直観的に気になったところです。別にまだこの法律をつくろうとかという話 ではないので、技術的にはそんなところがあるのかなという気がしました。  特にすぐ今答えてほしいという話ではないので結構です。 ○吉武審議官  私の方から概要を少し申し上げますと、基本的には標準報酬というのは定時決定であ ります。ですから通常のベースを申し上げますと、春闘後の賃金を前提にして決定しま すけれども、賃金がある程度変動しますと随時改定を行います。ですから制度的には変 動したものに合わせていく形であります。これは現在の厚生年金の適用になっている被 用者の方々はもちろんそうですし、新たに適用される方についても同じ。  2番目ですが、仮にそういうケースが起きても、厚生年金の場合には適用の問題と保 険料徴収の問題は別ですので、適用をきちんとやっておけば、仮に事業主が被保険者負 担分の保険料も源泉徴収して支払うわけですけれども、仮に保険料を納められない、納 めてないという場合に、最終的には強制徴収しますけれども、強制徴収してもなお時効 で取れない分についても、適用がきちんとされておれば給付には必ず反映するという仕 組みです。  保険料の問題は、厚生年金を管掌する政府と支払義務者は事業主ですから、事業主と の関係で強制徴収をしても、なお2年分以上取れなかった場合には、政府としては保険 料が取れなかったということになるのですが、そのことが被保険者の年金の給付に対し て影響を与えないようにするという基本的な仕組みでやっております。ただ、適用の時 点で、本来適用されるべきものを事業主がきちんと届出がなくて、適用できないという ことになりますと、年金給付の問題も出てまいりますけれども、事業主の保険料の支払 いが不十分だというようなことが、実際に適用されているサラリーマンの年金給付に影 響を与えないという仕組みでやっています。これは国民年金の自営業の方の場合の保険 料納付をしないと年金給付と結びつかないというものと違いがございまして、一応仕組 みとしては年金受給者に最大限配慮できる仕組みを現行法制上はとっております。 ○榮畑課長  今のに補足させていただいた方よろしいかと思いますが、岩村先生ちょっと首傾げて おられますので。今の厚生年金の仕組みで申し上げますと、被保険者が保険料納めてお られて、ただ、企業の側が何らかの事情で、保険料を厚生年金の保険者に納めてない場 合は、当然のことながら保険者である国の権限として強制徴収を行うことは当然ござい ますが、仮にそういうのがなかったとしましても、適用さえきちんとされておれば、そ の被保険者の方の将来の年金給付は事業主が納めていないことをもってして影響される ものではないという仕組みになっています。 ○岩村委員  わかりました。後でもう一回調べてみます。 ○松井職業安定局総務課長  岩村先生の法律的な質問の解釈ですけれども、今まで労働時間ですとそんな目立たな かったのですけれども、年収要件で適用するかどうかという定義した途端に、契約当初 、例えば65万ということであったけど、結果60万となったときに、この方には適用する かどうかという問題だと思います。ある年65万でした。ところが次の年60万になりまし た、次、70万になりましたとか、年収が動いたときに、そのたびに適用するのですか、 しないのですかという問題があるということを言われたのではないかと思うんです。そ れは制度として割り切りがいると思うんです。その辺は仕組みの上で考えるという、要 注意点ではないかというふうに思うのですが、じゃないでしょうか。 ○岩村委員  そういうことも、ありがとうございます。 ○佐藤委員  労働時間も同じだ。 ○吉武審議官  標準報酬の把握の仕組みがありますので、つまり保険料を賦課する標準報酬の把握の 仕組みがありますので、基本的にはそれをベースにしていけば、多分解決できると思い ます。 ○佐藤委員  働く人たちの働き方に中立的な年金制度にするということで、現行の適用基準を見直 すということなのですけれども、私は事務局が提案されましたように、時間と併せて収 入条件はどうしても必要だろうと思います。それは資料4−6に関わるのですけれども 、時間の条件だけでもかなり就業調整は起きないだろうというような感じで書かれてい るのだと思うのですが、かなり楽観的だと思っています。それは2つありまして、1つ は、大沢さんが言われたことにも関わるのですけれども、これから新しい働き方を開発 するときに何が大事かというと、短時間勤務をつくっていくことは大事なのですけれど も、短時間勤務には実は2つあって、1つは1日の労働時間が短いもので、もう1つは 、1日はかなり長いのだけど、短日数なんですね。  現状の短時間労働者の働き方を見ると短日数勤務というのは非常に少ない。日本のパ ートタイマーは週5日が一番多く、週としては40時間を切っているという人が多いわけ ですけれども、私はこれから大事なのは短日数勤務を開発していく。つまり1日はかな りフルタイムに近いのだけれども、週3日働くとか、子育て期についてはなかなか難し いのですが、ある程度お子さんが育ってくると週3日ぐらい働きたいというような働き 方はニーズがあると思います。  企業も短時間の仕事というのは業務変動などがあって、繁忙期だけ雇うというように 限定されるのですけれども、1日フルで働いてくれれば週3日というような仕事は実は つくれる。  そういうものを想定しますと、例えば通勤費の問題がいろいろ出てくるとか、業務開 発が難しいという議論があるのですが、それは現状のパートタイマー、いわゆる1日が 比較的短くて週5日働くのを想定しているのであって、短日数勤務がこれから増えてく ると、時間を週20時間、つまり1日6時間ちょっと、7時間弱で週3日、そうすると週2 0時間ですね。それで収入条件がないとすると、今100 万前後が多いわけですから、100 万ぐらいというようなものは十分あり得ると思うんですね。決して20時間という条件 だけで企業側がそういう仕事をつくるのが難しいということはないでしょう。  それと現状、例えば資料4−6の2ページの絵があります。現在30時間ぐらい働いて いる人が時間を短くする想定ですが、今、非労働力化している、例えば高学歴女性が新 たに出てくるというのを想定するとこれは当てはまらないわけですね。今働いている人 が時間を変更するときにどっちが得かという議論なんですね。そうではなくて、新しく 労働市場に出てくるという人を想定すると、こういう計算で出てくるわけではないだろ う。週20時間弱で収入が100 万とか120 万となったとき、どういう行動をとるかという ことだと思うんですね。そうすると20時間弱で働こう。フルタイムでかなり内容のある 仕事が増えてくるのでないかと思いますので、収入条件というのは不可欠ではないかと 思います。 ○樋口委員  私も少し意見を述べさせていただきたいのですが、今の佐藤さんの発言と関連するの ですが、資料3で「雇用と年金に関連する主要な政府方針、提言等」の中で個人の選択 に中立的な制度というのがいろんなところで登場しますね。  その一方で、どうも企業の働かせ方についての中立性といいますか、例えばパートタ イマーのときには、企業の負担がなくて一般労働者の場合には負担が発生する。その結 果としてパートタイマーを増やした方が人件費が安くて済むではないかというような、 ある意味ではそこのところにバランスが逆に今度働かせ方について崩れているのではな いかというような感じがしまして、個人にとっての中立性と同時に、企業にとってのど ういうような就業形態で働いてもらうのかということについては中立的である必要が私 はあるのではないだろうかと思っております。  それと関連しまして、きょう説明はなかったのですが、業種によってパートタイマー の比率は相当違っていますね。短時間と呼ぶのか、それとも呼称で呼ぶのかにもよりま すが、流通業あたりでは8割近くがパート就業者だと。そのうちのかなりの部分は保険 料を企業側もしているのだろうと思いますが、してないパートタイマーもこういった業 種ではかなり多いだろう。  その一方で、従来型の製造業等々においてはパートタイマーの比率は少ない。ここで はほとんどが負担していくということになりますと、同じ産業界一枚岩で平均値と考え るのではなくて、業種によって人件費負担に大分差が出てきてしまっているのではない か。そういうことを考えると、産業間のリソース・アロケーションというようなことか ら考えても、現行のままでは問題が起こっているのではないかと思います。 ○大沢委員  私も樋口さんの意見に賛成ですが、今起きている非典型雇用の増大の一番大きな要因 が、樋口さんのおっしゃったように、非正社員を雇うか正社員を雇うかで人件費負担に かなり差があるという、この壁がある限りは非正社員化がどんどん進んでいくという流 れを変えることはできないと思います。ですからここでは厚生年金の負担についてだけ 論じられていますが、これをまず平準化するような医療保険ですとか、先ほどもお話が ありましたように、どういうところで壁ができているのか、その壁をどれだけ低くでき るのかというのが多様就業型に移行できるかどうかの鍵になっていきますので、その点 はぜひこの研究会でも押さえておく必要があると思いました。 ○岩村委員  今の問題に関連してですけれども、パートに適用拡大したときの適用の回避というの が、ここで検討されているような、例えば労働時間を短くするとか、あるいは収入ない し報酬を調整するという形でのみ行われるとは限らない。今とにかくいろんな名前でい ろんな就業形態がありますから、その辺もどれが厚生年金の被保険者資格に該当するの かどうかというのは一回調査をして何かの形で整理する必要があるのではないかという 気がするのですね。  労働法の領域では、例えば労基法の適用は大問題で数年前に研究会をやって整理した ことがあったと思いますが、新しいいろんなのが出てきたのですね。私のうる覚えの記 憶で恐縮ですが、厚生年金などの社会保険関係の通達等は結構古いものが多いのではな いか、新しいものには必ずしもうまく対応してない部分があるのではないかという気が します。逃避が起こると形態というのは、今ここで検討されているような形態だけでは ないということは考えて幅広く検討する必要があるのではないか。  それともう一点は、同じ逃避の問題ですが、本当にこういうことをとるかどうかとい うのは経済的合理性によって企業によって違うと思います。今は短期雇用が適用除外で すけれども、それを使うという可能性もあるわけですね。短期雇用は、反復継続しちゃ うとだめですけれども、反復継続しなければ適用除外ですから、それをうまく組み合わ せることによって適用を逃れるということもあり得る。そうすると短期雇用などの適用 除外の問題をどう考えるかということも1つ検討しておかなければいけないのではない かという気がします。  いずれにしろ税金と同じで保険料の賦課の範囲を拡大すれば、とにかく賦課を何とか して逃れようということをみんなあの手この手で考えるわけですから、それをいろいろ 先回りして埋めておかなくてはいけないということになるのではないかと思います。  あともう1つ、先ほど企業年金と言ったのは、結局厚生年金の被保険者と連動します と、例えば厚生年金基金は当然連動するのですが、確定給付も連動するという話になる と、企業がどういう企業年金の設計をするか、企業の行動に影響を与える可能性がある のだと思うのですね。確定給付にすると、結局パートも全部それでやらなくてはいけな いという話になったら、確定給付じゃなくて、やめちゃおうということになり得るので 、企業年金のあり方にも影響を及ぼすのではないか。  それはひょっとすると厚生労働省で考えている企業年金政策自体にも何らかのインパ クトを及ぼす可能性がある。そういう趣旨です。 ○吉武審議官  企業年金の導入とともに退職金も出てきます。 ○佐藤委員  退職金も。 ○吉武審議官  日本の企業年金の場合には、基本的には退職金との調整的な性格を持っていますから 、401kであれ、確定給付企業年金であれ、その適用をどこまで拡大するかを考える と退職金の問題につながってきます。 ○松井課長  先生方に研究してもらうということで今いろいろ出ていると思うので、雇用保険との 整合性みたいな話もしていただけるかなという期待を持っていまして、これは私の理解 ですからひょっとして違うかわからないのですけれども、厚生年金の枠組みが、自ら生 活を支えるのと、生活を支えてもらうというパートがある。支えるグループが1号、2 号保険者で3号は支えられると。支えられるかどうかのところで年収要件を使って区分 していると、こう整理しているのではないかと思うのですね。1号と2号、つまり自分 で支えるときに、雇用契約という労働者になるというところで自らの生活を支える方と 、それ以外の働き方で自分を支えるというふうに分けようとして、そしてさらに雇用の 中で、多分その雇用で自らの生活のほとんどを支えているというふうにみなすために多 分今の労働時間要件があるのではないかと思うんですね。  雇用保険は幸い、いわゆる雇用関係の範疇だけをとらえて整理しようとするものです から、今までの要件を単に20時間要件だけでスパッと割り切って20時間以上働けば、主 要な働き、雇用だと。それで適用とそれ以外の方はごめんねという形で排除したのです けれども、厚生年金は皆年金ですから、報酬で対象となる2号ですか、ここでカバーし きれないと理論的に1号に入っちゃうと、支えられる方でないとすると、自動的になっ ているのですけれども、そこでの水準をうまく設定しないと、横着者がおって、強制適 用だけど逃げちゃうという議論だと思うんですね。  そこで、今言われたように使用者側も労働者側も逃げないための水準設定をどう巧妙 に設定するかということでありますので、1つ、今までの整理は、労働時間というとこ ろで雇用契約が主たる生活を支えているのか、その他で支えているのかということをや っていたということの組替えを、今言った年収を使って本当にやるのかどうか。年収の 方は多分被扶養者であるかどうかの物差しだったのではないかと思うのですけれども、 その辺を整理していただくと、もう少し雇用保険の非常に乱暴な整理以上に緻密な整理 ができるのではないかと思うのですね。  そうしないと、社会保障全体としてのコンセプトがどうも統一できない。各省別々で すという説明は今までついたのですけど、今後はそうはいかないと思いますので、ぜひ よろしくお願いしたいということであります。 ○吉武審議官  ただ、雇用保険の場合には失業に対応する、どちらかというと短期的なテーマですね 。年金の場合には、女性と年金の問題でも非常に議論になっていますように、老齢年金 と遺族年金がある意味で機能が一緒で、トータルとして高齢期をどうするかという機能 があって、しかも相当長い期間という問題がありますので、そこがある意味で申し上げ れば、雇用保険は非常にドライに割り切って、自分の賃金との関係で調整をして、しか も短期の調整でしょうから、雇用保険で10年の失業給付というのは普通は考えられない ということだろうと思いますから、そういう中で調整される。そこの問題の違いは、同 じ社会保障制度でも違っているのであって、女性と年金の検討会の報告書でも、なかな かその問題について、必ずしも1つにご議論がまとまらない問題があるということだと 思います。 ○佐藤委員  年金は長期の保障、雇用保険は短期のというお話あったんですが、最初、岩村さんか ら社会保障全体の制度設計として医療保険への言及がありましたが、医療保険は短期な んですね。年金の適用基準を変えると、医療保険も多分リンクさせてということになる と思うのですが、こちらは短期の問題だということと、ご存じのように、保険料と給付 といったときに、給付の方はどういうような病気になっても同じわけですね。保険料と そこはリンクしないわけです。  あと、もう1つは被扶養者認定のところをどうするかということがあって、使用者側 がいろいろ回避するといったとき、実は医療保険の問題が非常に大きいのではないかと いうことで、今回は年金を取りあげるわけですけれども、一応視野には入れておく必要 があるのではないかと思います。 ○榮畑課長  ただいまの佐藤先生のご指摘については、私どもそこは十分考えていかなければなら ないのだろうと思っておりますから、健康保険と厚生年金の関係で、厚生年金だけでき るのか、それともこれまでやってきたように健康保険・厚生年金対ということで考えて いくのか。そのこと自体を十分念頭に置きながら議論させていただかなければならない 。これは難しい問題ですけれども、十分考えて結論を出さなければならないだろうと思 っております。 ○樋口委員  厚生年金に限っても3号との問題をどうするのかというのがどうしても出てくるわけ で、それによってこの扱いというのも変わってくると思うのですね。幾らに、例えば65 万以上とかというふうにやったときに、現在の3号のままだというような想定を置いて 考えるのか、それともそこについても3号などの負担をお願いするというようなことで 考えていくのかによって、65万の水準自身が変わってくる可能性があると思います。 ○神代座長  経済学の先生方がいらっしゃるので、できたら議論していただけないかと思うのは、 今の制度だと、130 万円以下、65万円以上とか、労働時間で短時間で働いている人たち に関して、企業の方は合法的に社会保険の適用を免れているわけですね。そういう意味 ではコストが安く上がっているわけですね。  他方で、今グローバリゼーションで、企業が非常にピンチに立っているところが増え ていますね。そういうときに、さらに理屈はいろいろあるにしても、社会保険のコスト を余計にかけてくるのだったら、もうやめるわという企業も可能性としては出てきます ね。その中の1つの選択肢としては、岩村委員が指摘されているような、何かうまい工 夫をして適用を逃れるという、合法的に逃れる方法を考えていく。それは十分起こり得 ると思うのですね。  もう1つの選択肢は、廃業に追い込まれる中小企業がかなり増える危険性、その辺は どういうふうに考えたらいいですか。 ○清家委員  単純技術的な話からいえば、つまり労働者負担分とか企業負担分といいますけれども 、それはもともと賃金のところを原資にしているわけですから、一番根本のところは、 いわゆる労働供給の賃金弾性に依存しますけれども、もし企業が負担分のかなりの部分 を労働者の負担に帰着させることができるような状況であれば余り影響がないし、ほと んど帰着できなくて、そうではなくて、労働者に帰着できなくて負担が増えることにな れば、当然労働需要に影響が出てくると、理論的に言えばそのように整理できるかと思 います。 ○大沢委員  賃金が下がる、賃金水準を下げるなどの調整行動できることがあるかも……。 ○清家委員  どの程度できるかということです。 ○大沢委員  労働者にそれを転嫁してしまう。 ○神代座長  現状は一般のパートの相場賃金は最低賃金より相当上ですから、仮の話で、もし最低 賃金まで下がっても、労働者の方ががまんして働こうというのだったら余り影響が出な いという答えですね、今のは。 ○樋口委員  神代先生がおっしゃるのは、現行の保険料率を一定にして、新たにまたそこにパート の加入者を増やすことによって企業負担が多くなるのではないかというようなことをお っしゃっているのだろうと思うんですね。その結果として、日本では営業をやっていく ことができないから海外に出るとか、あるいは廃業するというようなことだろうと思う のですね。  ところが現行は、例えば一般労働者でも、ここで言うと支え手が非常に少ないために 、1人当たりの負担額が非常に多くなってきている。ですから企業としても、そこの負 担額が多くなっているというようなことで、逆に支え手の数を増やしていくことによっ て、1人当たりの負担額を減らしていくという考え方もあるのだろうと思うんですね。 それによって大分企業側の行動は違ってくるのではないか。  これは税金と全く同じ議論で、税の負担者の数を限定していくと、どうしても1人当 たりの負担額が増えていくというようなことで、逆に今度負担している人と負担してな い人の間のアンバランスという問題がどうしても起こってくる。これに類似したことが 年金についても私は言えるのではないかと思っていまして、ここで「支え手」を増やす という概念がいいかどうかというのは、最初問題が出たのですが、そういったところが 、特定の人たちに集中するのはまずいのではないかという意識として、これは企業負担 としては、総額がやらない場合に、支え手を増やさない場合に比べて拡大するのかどう かというようなところとの関連になってくるのではないかと思います。 ○坂本数理課長  今の樋口先生のご議論でございますが、年金財政の長期的な運営という観点から見ま すと、保険料を納めた方には必ず将来給付が出てまいりますので、現在と将来の財政状 況でどういう財政計画を立てていくか、それとも関連してくる事柄ではないかと思いま すので、その辺は検討がいろいろ要るのではないかと。 ○樋口委員  最初、清家さんの発言について私が発言させてもらったのはまさにそこのところを申 し上げたわけですね。時間的なずれというのが、負担と給付の間に発生する。この問題 をどうするのかということを考えないと、ただ単に負担が、支え手が増えるだけではな くて、長期的に考えれば、その人たちだって、受給していくわけですから、そこのとこ ろは時間的なずれがある。時間的なずれを無視して、長期で例えば100 年でどうだとい うようなことを議論しても、なかなかこの問題は解決できないのであって、もう少し時 間的に、例えば2010年、2004年からこういう制度を新しくしたときに、まず2004年、200 5年のところというのは負担する方が増えていくわけですね。給付の方はもっとずっと 後になってくるわけで、そういう時間の、タイムスケジュールを考えていかないと、こ の問題は解決できないだろうと。タイムレスでの議論ではまずいのではないかというの が申し上げたかったわけです。 ○吉武審議官  先ほどご説明申しました新しい人口推計の資料の2ページに書いてあるわけですけれ ども、新しい人口推計の影響で申しますと、先生がおっしゃるとおり、当面は寿命の延 びは年金としては影響が出てくる。少子化の問題は、実は先の問題でございまして、202 0年ぐらいから先に出てくる。つまり今年生まれる子どもさん、来年生まれる子どもさ んが、実際に社会において生産に入られるという時期から影響が出てくる。したがいま して、今の問題は、将来の、例えば少子化対策がどういうふうになっていくかという問 題にもある意味で絡む問題ですが、一方でおっしゃるとおり、今の高齢者の雇用、女性 の雇用の問題はもっと直近の、これから2010年、2020年、2030年に向けて、年金財政と いう意味では負担の面では必ず効果は出てくる。そういう組み合わせで考えていくとい うことになると思うんです。 ○大沢委員  もう1つ、先ほどコスト削減のために非正社員が今まで使われてきたわけですけれど も、それで今度非正社員にもコストが増えるということで企業側は負担がもっと増える のではないかということをおっしゃって、確かにそういう議論があって、企業も頭を悩 ましていると思うんですね。ただ、今の日本の企業が抱えている問題は、正社員の人件 費が非常に高くなっているところにあるわけで、今までとは違った考え方で事業主も人 材を育成していかなければいけないのではないか。結局はコストに対してホワイトカラ ーの生産性が低いと言われていますけれども、何か今の制度が余りうまく機能していな いがゆえに非常にコストが高くなって、それが非正社員を雇うインセンティブになって いるというのは、全体的な日本経済から見て、非常に機会コストが大きい、私たちが負 担しているマイナスのコストが大きいと思うのですね。  本当にいい人材をうまく活用していって、生産が上がるための多様就労型ワークシェ アリングをこれからしていこうと、それがここで掲げられている理念ではないかと思い ます。ですから、こういう形で制度設計をしていくことが、事業主にとってこれではい けないと。もう少し違った人材育成のあり方を考えるべきで、実際に事業主の方はそう いうことを考えていらっしゃると思いますが、そういう意味では、こういう改正が日本 にとってマイナスの影響に、短期的にはいろいろ調整コストがかかるかもしれませんが 、制度が整っていけば、むしろ生産性を上げて労働時間が短くなって、働きやすい社会 になっていくという面で非常にいい転機と考えることもできるのではないかというふう に思います。 ○樋口委員  今、大沢さんのおっしゃったこととプラスして、先ほど私、業種によって短時間雇用 者の比率は相当違っているということを申し上げました。今想定しているような短時間 雇用者の適用拡大というようなことになったときに、例えば国際競争に直面しているよ うな産業とか、生産拠点を海外に移すような産業、そういったところではもともと短時 間雇用者の比率が低いですよね。どちらかというと国内産業の流通であるとか、そうい ったところの短時間雇用者の適用による負担額は増える可能性があると思いますが、そ れは必ずしも海外に逃げることが逆にできない産業が多いわけですね。  であるとすると、それはもしかしたら価格の転嫁の方に影響……料金の転嫁といいま すか、流通コストの上昇といったところに影響が出てくるかもしれない。しかも企業間 でバランスが、ある企業には課税して、あるところにはしないということではなくて、 一律に短時間雇用者ということでかけていくわけですから、そこの企業間のアンバラン スは生じないはずだろうというふうに思うので、消費税と似たようなところがあると。 ○神代座長  非常に厄介な問題を承知で出したのですけど、この研究会は研究者だけの研究会で、 利害当事者が入ってないですよね。ところが親の年金部会の方は労使が入っていますか ら、企業の代表する委員の前で報告する立場にあるものですから、そういう質問が出た ときに答えられるようにひとつ議論して……。 ○清家委員  神代先生、今いいこと言われたので、最初の研究会ですから少し大きなポイントにつ いて申し上げたいのですが、きょうの議論でもそうなわけですけれども、今ここで検討 しようとしていることは、今までの年金制度の中に十分組み込まれないような働き方が 出てきたので、それをできるだけ年金制度の中に組み込んでいくようにしようと、そう いう考え方ですよね。私は基本的にはそれは正しいと思うのですが、ところが雇用法制 などもそうですけれども、雇用法制や社会保険制度というのは基本的には産業社会の産 物というか、要するに常用フルタイム労働者を前提として、そういう労働者を念頭に制 度がつくられていて、今何が起きているかというと、そういう形ではない働き方の人が 増えていて、そこにカバーできない人たちが増えている。今我々はできるだけそのカバ レッジを広げていこうとしているわけですが、多分そういうときにもう1つ出てくる議 論は、そもそもそういう産業社会の労働者を前提につくった制度そのものをずっと維持 していこうということ自体が無理なんだと。新しい働き方に合わせて新しい仕組みを、 つまり古い仕組みに今の労働のあり方を微調整して合わせていくのではなくて、もっと 違う仕組みが必要なのだという考え方も多分出てくると思うのですね。  特にこれは雇用の規制緩和などではよく出てくる議論なんですが、私は別にそっちの 方の論者ではないですけれども、それに対してどういうふうに説明するか。つまり今我 々が基本的には従来型の社会保険制度を念頭に置いてそのカバレッジを広げようとして いるのだけれども、それはどのような理由で正当化されるかということは一度しっかり 考えた方がいいのではないかと思っています。 ○岩村委員  言わなくてはと思っていたことを言われてしまったのですが、先ほど申し上げたよう に、いろんなところにいろんな形で雇用形態というか就業形態が広がっていって、さっ きの話ですと、逃げていくからそれをつかまえようと、それを考える必要があるのでは ないかというのですが、それに対しては、今、清家さんがおっしゃったような逆の形の 反論というのが出てくる可能性が高いので、それに対する回答というのは考えておく必 要があるだろうと思います。 ○中原企画官  実は今までご議論いただいた点については、資料4−4の1ページ(2)のところで 記述をさせていただいているところに関わるのですが、今回まだ新しいパート実態調査 の結果も出てないということで、具体的な数字をお出しできていないわけでございます けれども、パートの平均月収は大体10万円位ではないかと思われます、各調査で。これ に対し、厚生年金の男女合わせた平均標準報酬月額が大体31万円位ですので、実は3分 の1でございます。かつ、パートの中で議論になるのは、収入要件の話は別にしまして 、だいたい20時間から30時間未満層ということで、すべてのパートではないわけです。 パートのうちで4割位は既に適用がされておって、さらに今後とも時間が非常に短いな り、収入が低いなりで適用されずに残る部分もあるとした場合において、仮に企業の保 険料負担が大体時給の7%ぐらいと仮定した場合には、例えば14人いる適用対象となる パートを13人にすれば、それで捻出できるぐらいの額に相当するわけなんですね。  ですから余りそれをもってパートの業務を外注するとか、あるいは転・廃業するとか 、そう大きくとらえるほどのインパクトがあるかどうかについてはまた次回以降、具体 的な数字をお示ししてご議論いただきたいと思いますけれども、そういう面も含めた議 論が必要になってくるのではないかと思っているところでございます。  この資料4−4の(2)におきましては、先ほどお話が出た商品やサービス価格への 転嫁、労務コスト、場合によっては正社員も含めた労務コストの見直しの問題、あるい はこれを機会に短時間労働者の生産性向上に取り組んで対応する、さらには雇用者数の 見直し、外注などによる適用回避と幾つかの選択肢をお示しして、それについて伴う困 難などについても論じさせていただいたところでございまして、この辺りについて、さ らにご議論いただければありがたいと考えております。 ○松井課長  先生方へ注文ですけれども、岩村先生が言われた点はすごく心配しているところであ りまして、かつ清家先生が言われた点についてもほかの部会等でも心配している点であ ります。政策を練る上で、今や産業政策的なアプローチでどういう政策をするかという 視点で議論いただくのは、我が国を活力ある社会にするために欠かせない視点だという ことであることは十分承知しておりますが、産業政策を支えるのは何といっても、我が 国においては人的構成、人でありまして、この人をケアするための社会保障政策として この厚生年金をどうするのだという視点でぜひお願いしたいのですね。  余りにも産業政策的なアプローチでやり切ってしまうと、人をケアする社会保障とい うものはどういうふうにあるべきかというところが非常に短期的な活力維持のためだけ の視点で切り込まれる。先ほど言われたように、使用者側は当然競争社会生き残らなけ ればいけませんから、自分たちにとって非合理的な負荷がかかるものは避けたいといい ますが、ロングスパンで見て、我が国国民を使って生産をし産業活動をしなければいけ ないわけですから、少しロングスパンで見たときの合理性をある意味で説得すると。今 納得しないとしても少し行くと合理性が出ますよという言葉をぶつけて、少しむちゃか もわかりませんが、お説教するというような論理を先生方に用意していただければ我々 心強いのでありまして、そうしないと負けちゃいますので、よろしくお願いします。 ○神代座長  まだ、いろいろご議論があると思いますが、一応予定の時間が参りましたので、本日 のところはこれで一応終わらせていただきたいと思いますが、次回の開催について、事 務局から。 ○中原企画官  次回でございますが、「高齢者層における支え手の拡大」等を議題とさせていただき たいと思いますが、開催日時、開催場所につきましては、今後調整の上でご連絡をさせ ていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○神代座長  どうもありがとうございました。                                    −以上− (照会先) 厚生労働省年金局年金課企画法令第4係 (代表)03-5253-1111(内線3334)