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臨床研修病院の指定基準及び指定基準の運用

臨床研修病院の指定基準

 臨床研修を行う病院のうち、一般病院については以下に掲げる内容を備えたことが原則とされること。ただし、病院群による指定については、「病院群による臨床研修病院の指定基準」による。

第一 施設、人員等に関する基準

一般病床約300床以上、又は年間の入院患者実数が3000名以上であり、かつ、病床数及び患者実数が診療各科に適当に配分されていること。
 内科、精神科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、ひ尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、及び放射線科の各診療科がそれぞれ独立して設置されていること。
常勤医師が医療法上の定員を満たしていること。
2の各診療科について、それぞれ適当数の常勤医師が配置されていること。
2の各診療科毎に十分な指導力を有する指導医が配置されていること。
年間の剖検例が20体以上であり剖検率が30%以上であること、又はその他剖検に関する数値が相当数以上あること。
救急医療の研修が実施できること。
臨床検査室、放射線照射室、手術室、分娩室等の機能を示す数値が相当数以上であること。
研究、研修に必要な施設、図書、雑誌の整備及び病歴管理等が十分に行われていること、かつ、研究、研修活動が活発に行われていること。


第二 研修プログラムに関する基準

研修目標、研修計画、指導体制及びその他必要な事項を定めた研修プログラムを有すること。
研修プログラムの管理及び評価を行うため、臨床研修全体についての教育責任者及び委員会を置いていること。


病院群による臨床研修病院の指定基準

 「病院群による指定」とは、臨床研修を行う複数の病院病院群として指定するものである。病院群による指定は、臨床研修において中心となる病院(以下「主病院」という。)と、主病院の機能を補う病院(以下「従病院」という。)について併せて行い、従病院の補う分野を特定する。

第一 施設、人員等に関する基準

1 病院群に関する基準

(1)主病院と従病院は、相互に診療について機能的な連携があること。

(2)従病院の数は2以下であり、主病院の機能を補う分野が特定されていること。

2 主病院の基準

 以下に掲げる内容を備えた総合的な病院であること。

(1)一般病床約300床以上、又は年間の入院患者実数が3000名以上であり、かつ、病床数及び患者実数が診療各科に適当に配分されていること。

(2)常勤医師が医療法上の定員を満たしていること。

(3)年間の剖検例が20体以上であり剖検率が30%以上であること、又はその他剖検に関する数値が相当数以上あること。

(4)研究、研修に必要な施設、図書、雑誌の整備及び病歴管理等が十分に行われていること、かつ、研究、研修活動が活発に行われていること。

3 従病院の基準

 常勤医師が医療法上の定員を満たしている病院であること。なお、大学病院は従病院としない。

4 主病院及び従病院を併せて以下に掲げる内容を備えていること。ただし、従病院は主病院を補う分野に限ること。

(1)内科、精神科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、ひ尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、及び放射線科の各診療科がそれぞれ独立して設置されていること。

(2)(1)の各診療科について、それぞれ適当数の常勤医師が配置されていること。

(3)(1)の各診療科毎に十分な指導力を有する指導医が配置されていること。

(4)救急医療の研修が実施できること。

(5)臨床検査室、放射線照射室、手術室、分娩室等の機能を示す数値が相当数以上であること。


第二 研修プログラムに関する基準

1 病院群に関する基準

(1)研修目標、研修計画、指導体制及びその他必要な事項を定めた合同の研修プログラムを有すること。

(2)研修プログラムの管理及び評価を行うため、合同の研修委員会を持ち、主病院の研修における責任が明確であること。

2 主病院及び従病院の各々が満たさなければならない基準

 研修プログラムに基づく臨床研修についての教育責任者及び委員会を置いていること。


臨床研修病院の指定基準及び病院群による臨床研修病院の指定基準の運用

第一 総合的な病院の定義

 基準における「総合的な病院」は、病院全体として研修の場にふさわしい病院の機能と研修の機会を有していること。


第二 施設、人員等に関する基準の運用

1 医師数

(1)基準において、「常勤医師(当該病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務し、かつ、1週間当たり40時間以上を当該病院で勤務するもの)が医療法上の定員を満たしていること」としているのは、診療のみに追われることのない充実した臨床研修の確保を図ろうとするものであるから、ここでいう常勤医師数には研修中の医師(卒後2年間に限る)は算入しないこと。常勤医師のみでは医療法上の定員を満たさない場合においては、非常勤医師を常勤換算して医療法上の定員を満たすことにより、暫定的に基準を満たしているものとする。その場合には常勤医師で概ね医療法上の定員を満たしていること。

(2)基準において、「各診療科それぞれに適当数の常勤医師の配置が必要」としているのは診療上のほか、研修指導体制の確立を図るためのものであり、その適当数は内科については5名以上、外科については4名以上、産婦人科については3名以上、精神科、整形外科、小児科、皮膚科、ひ尿器科、眼科、耳鼻いんこう科及び放射線科については2名以上とする。しかしながら、現状から見て医師の確保が難しい診療科(精神科、皮膚科、ひ尿器科、眼科、耳鼻いんこう科、放射線科)については常勤医師1名のほかに非常勤医師を適切に配置することにより適正な研修指導体制が一応確保されていると認められる場合には暫定的に基準を満たしているものとすること。

(3)麻酔科及び検査部門については、臨床研修を行う上で、重視すべきものであるので、これらについても専任医師が配置されていることが望ましい。

(4)臨床研修を行う上で病理機能が欠くことのできない重要な役割を果たしていることに鑑み、専任の常勤病理医を配置すること。その確保が難しい場合にも、非常勤医師を適切に配置することにより適正な体制が確保されていること。

2 指導医の資格

 基準において、各診療科毎に十分な指導力を有する指導医を置くことを規定しているが、指導医の資格は原則として次のいずれかの条件に該当するものであること。

(1)少なくとも10年前後の臨床経験を有し、十分な指導力と最近の2年間においても相応の業績発表を有するもの。

(2)各専門学会が認定している認定医等の資格を有するもの。

(3)特定科(精神科、皮膚科、ひ尿器科、眼科、耳鼻いんこう科、放射線科)については少なくとも5年の臨床経験を有し、かつ、その経験、訓練、業績発表等から十分な指導力があると認められるもの。

3 剖検

(1)基準において、「剖検率が30%以上であること」としているが、その算定に当たっては、精神病床、ホスピス病床又は入院48時間以内の死亡退院例で剖検を行わなかったものについては、対象から除くことができること。

(2)基準において、「その他剖検に関する数値が相当数以上あること」とは、年間の剖検例が病床数の数値の10%以上であること。ただし、精神病床又はホスピス病床については、算定の対象から除くことができること。

(3)剖検症例が臨床病理カンファレンス(CPC)等を通じて臨床上十分活用され、また、手術症例に対する病理学的検査が十分行われていること。
 なお、当該病院に病理部門が設置され、臨床上剖検等が集中的に実施することが適当な場合は、一定期間病理診断に係る研修を行うことができる。

4 設備

(1)基準おいて、「研究、研修に必要な図書、雑誌の整備が行われていること」としているが、その内容は、内外の専門図書及び雑誌を有し、かつ、年間少なくとも200万円以上の図書を購入していること。また、十分な図書、雑誌の活用を図るためには専任の職員を置くことが望ましい。

(2)十分な病歴管理が行われるためには、中央病歴管理室が設置され、組織的な病歴管理が行われていること。また、専任の病歴管理者がいることが望ましい。

(3)充実した臨床研修を図るためには宿舎の整備が望ましい。

5 病院群指定

(1)基準において、「相互に診療について機能的な連携があること」としているのは医師の往来、医療機器の共同利用、合同カンファレンス等が組織的に行われている等、具体的に診療について機能的な連携が行われている状態をいう。

(2)主病院と従病院の距離は特に制限するものではないが、地域医療のシステム化を図る趣旨、緊密な連携を保つ必要性等との関係から著しく距離の離れたものは適当ではない。


第三 研修プログラムに関する基準の運用

1 研修目標

 基準において、研修プログラムに研修目標を定めることを規定しているが、研修目標については、平成元年6月の臨床研修部会の意見書に示された到達目標が達成されること。
 また、研修方法については、昭和48年12月、昭和50年10月、昭和53年3月の医師研修審議会の建議書及び意見書の趣旨に則り、救急医療、初期診療等、プライマリ・ケアの研修が行われるよう関連各科にわたるローテーション方式による研修を行うことが望ましい。

2 研修計画

 基準において、研修プログラムに研修計画を定めることを規定しているが、この研修計画には研修目標を達成できるに足る臨床研修全体及び各診療科毎の具体的な実施計画を定めていること。なお、各診療科毎の研修における到達目標を定めることが望ましい。

3 指導体制

 基準において、研修プログラムに指導体制を定めることを規定しているが、指導医の氏名、資格及び指導医数等を含めて各診療科毎の指導体制について定めていること。

4 その他研修プログラムに定める事項

 基準において、研修プログラムにその他必要な事項を定めることを規定しているが、その内容としては次のとおりとすること。

(1)6研修の評価及び評価に基づいて具体的な研修医の評価方法について定めていること。

(2)7研修施設群に基づいて研修施設群を導入する場合には、当該施設の概要、具体的な実施計画等を定めていること。

5 研修プログラムの公表

 研修プログラムは公表することを原則とすること。

6 研修の記録及び評価

 研修プログラムに基づいた臨床研修を実施するに当たりその記録及び評価を行うことは、研修医の到達目標の達成の程度を判断するために重要な意義を持つものであり、次のような方法により記録及び評価を行うこと。

(1)教育責任者は、研修医について研修内容の記録及び評価を残すこと。

(2)研修医手帳を作り、研修医に研修内容を記入させ、病歴や手術の要約等を作成するよう指導すること。

(3)研修の評価にあたっては、日本医学教育学会の「卒後初年度臨床研修目標案」も参考にすること。

7 研修施設群

(1)臨床研修病院が、研修施設群として専門病院、中小病院、診療所、老人保健施設、保健所及び社会福祉施設と研修プログラムを組む場合においては、研修施設群全体についての教育責任者及び合同委員会を置き、かつ各施設毎の研修計画等具体的な実施計画を定めること。
 その場合、臨床研修病院の研修における責任が明確であること。

(2)研修施設群の各施設毎に第二の2指導医の資格に準ずる資格を有する指導医がいること。なお、保健所においては、所長の他に少なくとも3年以上公衆衛生の実務に従事した経験を有する医師が常勤していること。
 設備については、研修を行うのに十分な機能を備えていること。

8 病院群指定

 病院群指定において、研修プログラムに基づいた臨床研修を実施するに当たり、2以上の主病院の従病院になることはできるが、その場合は、それぞれの合同研修委員会が十分機能すること、研修医を受け入れる体制に十分な余裕があること等が前提であること。
 なお、研修プログラムは、研修モデルプログラム(平成5年3月25日医事第31号厚生省健康政策局医事課長通知)を参考にして定めること。



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